説明

防食剤、端子付き被覆電線およびワイヤーハーネス

【課題】電線の導体と端子との接続部分に防食処理したときにベタつきがなく取り扱い性に優れるとともに、この接続部分を確実に覆ってこの接続部分の腐食を防止できる防食剤と、これを用いた端子付き被覆電線およびワイヤーハーネスを提供すること。
【解決手段】JIS K6922−1に準拠して測定される190℃、21.18Nにおけるメルトフローレイトが200g/10min.以上のエチレン−αオレフィン共重合体を含有し、前記エチレン−αオレフィン共重合体におけるαオレフィンの共重合比率が10質量%以上である防食剤とする。上記防食剤を、電線導体18と端子14との接続部分に塗布してなる端子付き被覆電線10とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防食剤、端子付き被覆電線およびワイヤーハーネスに関し、さらに詳しくは、端子付き被覆電線における導体と端子との接続部分の防食に好適な防食剤と、これを用いた端子付き被覆電線およびワイヤーハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車等の車両に配索される電線としては、タフピッチ銅の軟質材などからなる導体の外周に絶縁体を被覆してなる被覆電線が良く用いられている。被覆電線の端末では、絶縁体が皮剥ぎされて導体が露出され、この露出された導体に端子が接続されている。被覆電線の端末に接続された端子は、コネクタに挿入係止される。
【0003】
このような被覆電線が複数本束ねられて、ワイヤーハーネスが形成される。被覆電線は、通常、ワイヤーハーネスの形態で自動車等の車両に配索される。
【0004】
ワイヤーハーネスが、例えば被水領域のエンジンルームや室内環境などに配索される場合には、熱および水の影響を受けて、導体と端子との接続部分に錆が発生しやすくなる。そのため、このような場所にワイヤーハーネスを配索する場合には、導体と端子との接続部分における腐食を防止する防食処理を施す必要がある。
【0005】
また、近年では、自動車等の車両の軽量化により燃費効率の向上を図る動きが進められており、その一環で、電線材料の軽量化が求められている。そのため、電線導体にアルミニウムを用いる検討がなされている。この場合には、端子材料として一般的に用いられている銅または銅合金との組み合わせにより、導体と端子との接続部分で異種金属接触腐食が起こり、同種金属よりなる接続部分よりも錆の発生が起こりやすい。そのため、アルミニウム導体を用いる場合には、より一層、導体と端子との接続部分における防食処理の必要性が高い。
【0006】
そこで、導体と端子との接続部分における腐食を防止するため、例えば特許文献1には、電線端末の導体に接続された端子が挿入係止されたコネクタ内にグリースを注入することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平05−159846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の処理方法では、コネクタ内にグリースを注入するため、コネクタや電線が非常にベタついて、取り扱い性が悪いという問題があった。そのため、防食処理を行なうに際し、グリースに代わる材料が望まれる。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、電線の導体と端子との接続部分に防食処理したときにベタつきがなく取り扱い性に優れるとともに、この接続部分を確実に覆ってこの接続部分の腐食を防止できる防食剤と、これを用いた端子付き被覆電線およびワイヤーハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明に係る防食剤は、JIS K6922−1に準拠して測定される190℃、21.18Nにおけるメルトフローレイトが200g/10min.以上のエチレン−αオレフィン共重合体を含有し、前記エチレン−αオレフィン共重合体におけるαオレフィンの共重合比率が10質量%以上であることを要旨とするものである。
【0011】
この際、αオレフィンとしては、ビニルエステル、α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル、および、カルボキシル基含有モノマから選択された1種または2種以上を好適に用いることができる。
【0012】
そして、本発明に係る端子付き被覆電線は、上記防食剤により電線導体と端子との接続部分が覆われてなることを要旨とするものである。
【0013】
この際、電線導体はアルミニウムまたはアルミニウム合金よりなる素線を含有してなり、端子は銅または銅合金よりなることが望ましい。
【0014】
そして、本発明に係るワイヤーハーネスは、上記端子付き被覆電線を含むことを要旨とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る防食剤によれば、特定のエチレン−αオレフィン共重合体を含有するものであるため、電線の導体と端子との接続部分に防食処理したときにベタつきがなく取り扱い性に優れるとともに、この接続部分を確実に覆ってこの接続部分の腐食を防止できる。
【0016】
この際、αオレフィンが上記種類のモノマからなる場合には、αオレフィンの極性官能基により、防食剤は電線導体および端子との親和性に優れる。そのため、特に防食性に優れる。
【0017】
そして、本発明に係る端子付き被覆電線およびこれを含むワイヤーハーネスによれば、上記防食剤により導体と端子との接続部分が覆われているため、腐食が発生しにくい。そのため、被水領域のエンジンルームや室内環境などに好適に配索される。また、アルミニウムまたはアルミニウム合金よりなる素線を含有する電線導体と、銅または銅合金よりなる端子とからなる異種金属接続の場合においても、上記防食剤により導体と端子との接続部分が覆われているため、防食性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第一実施形態に係る端子付き被覆電線を表す模式図である。
【図2】図1におけるA−A断面図である。
【図3】腐食試験方法を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態について図を参照して詳細に説明する。
【0020】
本発明に係る防食剤は、エチレン−αオレフィン共重合体を主に含有するものからなる。本発明に係る防食剤は、エチレン−αオレフィン共重合体単独で構成されていても良いし、必要に応じて、物性を損なわない範囲で、添加剤、他のポリマを含有していても良い。
【0021】
本発明に係る防食剤においては、エチレン−αオレフィン共重合体は、JIS K6922−1に準拠して測定される190℃、21.18Nにおけるメルトフローレイト(MFR)が200g/10min.以上である。エチレン−αオレフィン共重合体のMFRが200g/10min.未満では、流動性が低く、防食処理を行なう部分を十分に覆うことができないため、防食効果が十分に発揮できない。また、エチレン−αオレフィン共重合体のMFRとしては、より好ましくは500g/10min.以上、さらに好ましくは1000g/10min.以上である。
【0022】
また、本発明に係る防食剤においては、エチレン−αオレフィン共重合体は、αオレフィンの共重合比率が10質量%以上である。αオレフィンの共重合比率が10質量%未満では、電線導体および端子との親和性(濡れ性)が十分でなく、防食効果が十分に発揮できない。また、防食効果に優れるなどの観点から、αオレフィンの共重合比率としては、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。
【0023】
エチレン−αオレフィン共重合体におけるαオレフィンとしては、好ましくは、ビニルエステル、α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル、カルボキシル基含有モノマを挙げることができる。これらのαオレフィンは、特に、電線導体および端子との親和性(濡れ性)を高める効果に優れる。エチレン−αオレフィン共重合体は、エチレンと1種のαオレフィンとの共重合体であっても良いし、エチレンと2種以上のαオレフィンとの共重合体であっても良い。
【0024】
ビニルエステルとしては、例えば、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリフルオル酢酸ビニルなどを挙げることができる。
【0025】
α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、メタアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタアクリル酸エチルなどを挙げることができる。
【0026】
カルボキシル基含有モノマとしては、例えば、無水マレイン酸などを挙げることができる。
【0027】
好適なエチレン−αオレフィン共重合体としては、具体的には、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン−メタアクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン−アクリル酸メチル−無水マレイン酸変性共重合体(無水マレイン酸変性EMA)などを挙げることができる。
【0028】
本発明に係る防食剤において、必要に応じて添加可能な添加剤としては、一般的に樹脂成形材料に使用される添加剤であれば特に限定されるものではない。具体的には、例えば、無機充填剤、酸化防止剤、金属不活性化剤(銅害防止剤)、紫外線吸収剤、紫外線隠蔽剤、難燃助剤、加工助剤(滑剤、ワックスなど)、カーボンやその他の着色用顔料などを挙げることができる。
【0029】
また、本発明に係る防食剤においては、必要に応じて、エチレン−αオレフィン共重合体以外の重合体成分が配合されていても良い。
【0030】
エチレン−αオレフィン共重合体および必要に応じて配合される重合体成分は、耐熱性や機械的強度を上げるなどの目的で、必要に応じて架橋されていても良い。架橋方法は、熱架橋、化学架橋、シラン架橋、電子線架橋、紫外線架橋等、その手段は特に限定されるものではない。なお、防食剤の架橋処理は、本発明に係る防食剤により防食処理を行なう部分を覆った後、行なえば良い。
【0031】
本発明に係る防食剤は、例えば、自動車等の車両に配索される被覆電線の導体と端子との接続部分などの腐食防止のために好適に用いることができる。
【0032】
次に、本発明に係る端子付き被覆電線について説明する。
【0033】
図1および図2に示すように、本発明の一実施形態に係る端子付き被覆電線10は、電線導体18の外周に絶縁体20が被覆されてなる被覆電線12と、被覆電線12の電線導体18の端末に接続された端子14とを備えている。
【0034】
被覆電線12は、端末で絶縁体20が皮剥されて電線導体18が露出されており、この露出された電線導体18の端末に端子14が接続されている。電線導体18は、複数本の素線18aが撚り合わされてなる撚線よりなる。この場合、撚線は、1種の金属素線で構成されていても良いし、2種以上の金属素線で構成されていても良い。また、撚線は、金属素線以外に、有機繊維よりなる素線などを含んでいても良い。なお、1種の金属素線で構成されるとは、撚線を構成する全ての金属素線が同じ金属材料よりなることをいい、2種以上の金属素線で構成されるとは、撚線中に互いに異なる金属材料よりなる金属素線を含んでいることをいう。撚線中には、被覆電線を補強する補強線(テンションメンバ)が含まれていても良い。
【0035】
金属素線の材料としては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、もしくはこれらの材料に各種メッキが施された材料を例示することができる。また、補強線としての金属素線の材料としては、銅合金、チタン、タングステン、ステンレスなどを例示することができる。また、補強線としての有機繊維としては、例えば、ケブラー(デュポン社の登録商標)などのアラミド繊維を挙げることができる。
【0036】
絶縁体20の材料としては、例えば、ゴム、ポリオレフィン、PVC、熱可塑性エラストマーなどを挙げることができる。これらは単独で用いても良いし、2種以上混合して用いても良い。絶縁体20の材料中には、適宜、各種添加剤が添加されていても良い。添加剤としては、難燃剤、充填剤、着色剤等を挙げることができる。
【0037】
端子14は、相手側端子と接続されるタブ状の接続部14cと、接続部14cの基端より延設形成され、被覆電線12の電線導体18の端末を加締めるワイヤバレル14aと、ワイヤバレル14aよりさらに延設形成され、被覆電線12の端末の絶縁体20を加締めるインシュレーションバレル14bとを備えている。
【0038】
端子14の材料(母材の材料)としては、一般的に用いられる黄銅の他、各種銅合金、銅などを挙げることができる。端子14の表面の一部(例えば接点)もしくは全体には、錫、ニッケル、金などの各種金属によりメッキが施されていても良い。
【0039】
電線端末における電線導体18と端子14との接続部分においては、電線導体18の一部が露出されている。本発明に係る端子付き被覆電線10は、上記防食剤によりこの露出部分が覆われている。具体的には、防食剤の塗膜16が、端子14の接続部14cの基端と電線導体18の先端との境界を跨いで接続部14cの基端まで覆うとともに、端子14のインシュレーションバレル14bと絶縁体20との境界を跨いで絶縁体20まで覆っている。
【0040】
防食剤は、電線導体18の材料と端子14の材料との組み合わせに応じて適宜選択すれば良い。防食剤の塗膜16の厚さは、適宜調整すれば良いが、好ましくは、0.01mm〜0.1mmの範囲内である。塗膜16の厚さが厚すぎると、端子14のコネクタへの挿入が行ないにくい。また、塗膜16の厚さが薄すぎると、防食効果が低下しやすい。
【0041】
防食剤は、電線端末で端子14を加締めて電線導体18と端子14とを接続した後、電線導体18と端子14との接続部分の表面、すなわち、端末の絶縁体20の表面と、インシュレーションバレル14bの表面と、ワイヤバレル14aの表面と、露出している電線導体18の表面と、接続部14cの基端の表面とに塗布される。これにより、電線導体18と端子14との接続部分の表面に塗膜16が形成される。
【0042】
なお、電気接続に影響を与えないのであれば、端子14のワイヤバレル14aから突出するタブ状の接続部14cの裏面側、ワイヤバレル14aおよびインシュレーションバレル14bの裏面側にも塗膜16を形成しても良い。
【0043】
防食剤を塗布するにあたっては、防食剤が塗布可能な程度に流動できれば良い。したがって、塗布するにあたっては、防食剤を適宜加熱しても良いし、適宜溶媒を用いて液状にしても良い。また、防食剤を塗布するにあたっては、滴下、塗布、押出などの方法を用いることができる。
【0044】
防食剤の塗膜16は、耐熱性や機械的強度を上げるなどの目的で、必要に応じて、架橋処理が施されても良い。架橋方法は、熱架橋、化学架橋、シラン架橋、電子線架橋、紫外線架橋等、その手段は特に限定されるものではない。
【0045】
上記防食剤は、特定のエチレン−αオレフィン共重合体を主に含有するものであるため、加熱することにより流動性に優れる。そのため、塗布しやすい性質を有する。これにより、目的の場所に的確に塗布を行なうことができる。そうすると、例えば、被覆電線12が細い電線(例えば、φ0.8)であり、端子14が小さい(例えば、タブ幅0.64mm)場合においても、電線導体18と端子14との接続部分のみに正確かつ確実に塗布できる。
【0046】
また、上記防食剤は、塗布後には冷却されて固化するので、取り扱い時にベタつくおそれがないことはもとより、長期にわたって塗布した場所に定着できる。そのため、長期にわたって防食効果を維持できる。さらに、αオレフィンが極性基を有する場合には、金属材料との親和性が高いため、電線導体18および端子14に対する濡れ性や密着性にも優れる。これによっても、長期にわたって防食効果を維持できる。
【0047】
次に、本発明に係るワイヤーハーネスについて説明する。
【0048】
本発明に係るワイヤーハーネスは、上記端子付き被覆電線10を含む複数本の端子付き被覆電線を束ねたものからなる。本発明に係るワイヤーハーネスにおいては、複数本の端子付き被覆電線のうちの一部の端子付き被覆電線が上記端子付き被覆電線10であっても良いし、複数本の端子付き被覆電線の全部の端子付き被覆電線が上記端子付き被覆電線10であっても良い。
【0049】
本発明に係るワイヤーハーネスにおいては、複数本の端子付き被覆電線は、テープ巻きにより結束されていても良いし、あるいは、丸チューブ、コルゲートチューブ、プロテクタ等の外装部品により外装されていても良い。
【0050】
本発明に係るワイヤーハーネスは、自動車等の車両に配索されるものとして好適であり、特に、被水領域のエンジンルームや車内に配索されるものとして好適である。このような場所では、熱および水の影響を受けやすいため、ワイヤーハーネスがこのような場所に配索されると、電線導体18と端子14との接続部分に錆が発生しやすいが、本発明に係るワイヤーハーネスによれば、上記端子付き被覆電線10における電線導体18と端子14との接続部分における錆の発生を抑えることができる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は実施例により限定されるものではない。
【0052】
(被覆電線の作製)
ポリ塩化ビニル(重合度1300)100質量部、可塑剤としてジイソノニルフタレート40質量部、充填剤として重炭酸カルシウム20質量部、安定剤としてカルシウム亜鉛系安定剤5質量部をオープンロールにて180℃で混合し、ペレタイザーにてペレット状に成形して、ポリ塩化ビニル組成物を調製した。次いで、50mm押出機にて、得られたポリ塩化ビニル組成物で、アルミ合金線を7本撚り合わせたアルミニウム合金撚線よりなる導体(断面積0.75mm)の周囲を0.28mm厚に押出被覆して、被覆電線(PVC電線)を作製した。
【0053】
(端子付き被覆電線の作製)
作製した被覆電線の端末を皮剥して電線導体を露出させた後、自動車用として汎用されている黄銅製のオス形状の圧着端子(タブ幅0.64mm)を被覆電線の端末に加締め圧着した。次いで、電線導体と端子との接続部分に、下記の各種エチレン−αオレフィン共重合体を塗布して、露出している電線導体および端子のバレルを各種エチレン−αオレフィン共重合体で覆った。これにより、端子付き被覆電線を作製した。なお、エチレン−αオレフィン共重合体を塗布する際には、エチレン−αオレフィン共重合体を230℃に加熱して液状にした。また、塗膜の厚さは0.05mmとした。
【0054】
(エチレン−αオレフィン共重合体)
・EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)[三井デュポンポリケミカル製、エバフレックスEV205W(コモノマー14質量%、MFR800)]
・EEA(エチレン−アクリル酸エチル共重合体)[日本ユニカー製、NUC−6090(コモノマー30質量%、MFR1250)]
・EMA<1>(エチレン−アクリル酸メチル共重合体)[三井デュポンポリケミカル製、ニュクレル N2050H(コモノマー20質量%、MFR500)]
・EMMA(エチレン−メタアクリル酸メチル共重合体)[住友化学製、アクリフト CM5021(コモノマー28質量%、MFR450)]
・変性EMA(エチレン−アクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体)[アルケマ製、ボンダイン HX8210(コモノマー10質量%、MFR200)]
・EMA<2>(エチレン−アクリル酸メチル共重合体)[日本ポリエチレン製、レクスパールEMA EB440H(コモノマー20質量%、MFR18)]
・EAA(エチレン−アクリル酸共重合体)[三井デュポンポリケミカル製、ニュクレル N1560(コモノマー15質量%、MFR60)]
・LDPE(低密度ポリエチレン)[東ソ−製、ペトロセン 354(コモノマー0質量%、MFR200)]
【0055】
(防食試験方法)
図3に示すように、端子付き被覆電線1を12V電源2の+極につなぐとともに、純銅板3(1cm×2cm×1mm)を12V電源2の−極につなぎ、端子付き被覆電線1の電線導体と端子との接続部分および純銅板3を300ccのNaCl5%水溶液4に浸漬し、12Vで2分間通電した。通電後、NaCl5%水溶液4のICP発光分析を行ない、端子付き被覆電線1の電線導体からのアルミニウムイオンの溶出量を測定した。溶出量が0.1ppm未満の場合を「○」とし、溶出量が0.1ppm以上の場合を「×」とした。
【0056】
実施例および比較例における防食剤の種類、MFRの値、コモノマーの共重合比率、および、防食試験結果を表1に示す。なお、MFRは、JIS K6922−1に準拠して測定される190℃、21.18Nにおける値である。
【0057】
【表1】

【0058】
比較例1、2では、防食剤のエチレン−αオレフィン共重合体のMFRが比較的小さいため、流動性が悪く、露出している電線導体および端子のバレルを覆うように塗布することができなかった。そのため、防食性に劣っていた。また、比較例3では、防食剤が低密度ポリエチレンからなるため、防食剤の金属表面への塗れ性あるいは密着性が悪い。そのため、防食性に劣っていた。
【0059】
これに対し、実施例では、防食性に優れていることが確認できた。また、防食剤がエチレン−αオレフィン共重合体を含むため、ベタつきがないことも確認できた。
【0060】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0061】
例えば、上記実施の形態に表わされている端子付き被覆電線10では、端子14として、タブ状の接続部14cを有するオス端子が示されているが、これに限定されるものではなく、例えば、オス端子と嵌合可能なメス端子であっても良いし、音叉端子などであっても良い。また、端子14は、インシュレーションバレル14bを有しないで、ワイヤバレル14aのみで圧着されるものであっても良い。さらに、電線導体12と端子14との接続方法としては、バレルによる圧着に限られず、圧接抵抗溶接、超音波溶接、ハンダ付け等の方法であっても良い。また、上記実施形態においては、撚線よりなる導体18が示されているが、導体18は単芯線であっても良い。
【符号の説明】
【0062】
10 端子付き被覆電線
12 被覆電線
14 端子
16 防食剤(塗膜)
18 電線導体
20 絶縁体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
JIS K6922−1に準拠して測定される190℃、21.18Nにおけるメルトフローレイトが200g/10min.以上のエチレン−αオレフィン共重合体を含有し、前記エチレン−αオレフィン共重合体におけるαオレフィンの共重合比率が10質量%以上であることを特徴とする防食剤。
【請求項2】
前記αオレフィンは、ビニルエステル、α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル、および、カルボキシル基含有モノマから選択された1種または2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の防食剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載の防食剤により電線導体と端子との接続部分が覆われてなることを特徴とする端子付き被覆電線。
【請求項4】
前記電線導体は、アルミニウムまたはアルミニウム合金よりなる素線を含有してなり、前記端子は、銅または銅合金よりなることを特徴とする請求項3に記載の端子付き被覆電線。
【請求項5】
請求項3または4に記載の端子付き被覆電線を含むワイヤーハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−111632(P2011−111632A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266527(P2009−266527)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】