説明

限流器

【課題】超電導状態の保護性能を確保しつつ小型の超電導薄膜限流器を提供する。
【解決手段】絶縁性基板11を介して互いに対向する位置に超電導体12が配置されていることを特徴とする超電導限流器1とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、限流器に関する。
【背景技術】
【0002】
短絡時に生じた過大電流を瞬時に抑制し得る超電導薄膜限流器の研究開発が進められている。
例えば、非特許文献1によれば超電導薄膜素子は直列、あるいは並列に複数枚接続され、それらが、3相分用意されている。
特許文献1によれば、超電導薄膜素子の端部に集中して電流が流れることを防止する超電導薄膜限流器の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−198577号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】電学論B、124巻11号、2004年P.1336
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
超電導薄膜素子の製造工程において、製造する全ての超電導薄膜素子の臨界電流を完全に同一とすることは困難であり、実際はばらつきが生じる。
そのため、特許文献1の超電導薄膜限流器に過電流が流れた場合、複数の超電導薄膜素子のうち、臨界電流の高い何れか一の超電導薄膜素子に集中して過電流が流れるおそれがある。この結果、超電導状態を破壊してしまう問題がある。
また、特許文献1の超電導薄膜限流器は複数の超電導薄膜素子を備えて構成され、複数の超電導薄膜素子は多角形状を形成するため、サイズが大きくなる問題がある。
【0006】
本発明の課題は、超電導状態の保護性能を確保しつつ小型の超電導薄膜限流器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、絶縁性基板を介して互いに対向する位置に超電導体が配置されていることを特徴とする超電導限流器が提供される。
【0008】
また、本発明によれば、絶縁性基板の一側の面に超伝導体が形成された二個一対の超電導素子を含み、前記各超電導素子の絶縁性基板の他側の面同士が接着されてなることを特徴とする超電導限流器が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の超電導限流器によれば、超電導素子に流れる電流分布を均一とすることができ、十分な熱容量を確保することができるため、超電導状態の破壊に対する保護性能を維持することができる。
また、コンパクトな超電導限流器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の超電導薄膜素子の概略断面図である。
【図2】第2の超電導薄膜素子の概略断面図である。
【図3】第1の超電導薄膜限流器を示す図である。
【図4】第2の超電導薄膜限流器を示す図である。
【図5】第3の超電導薄膜限流器を示す図である。
【図6】接続態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態における超電導薄膜限流器の最適な構成及び動作について、図面を用いて詳細に説明する。
【0012】
図1に、第1の超電導薄膜素子10Aの概略断面図を示す。
第1の超電導薄膜素子10Aは、支持絶縁体である板状の基板11、超電導薄膜12を備えて構成される。
基板11は、サファイア等の絶縁素材が用いられる。
超電導薄膜12は、基板11上に形成される。本実施形態における超電導薄膜の形成方法としては、例えば蒸着法、スパッタ法、レーザー蒸着法、CVD法、MOD法、LPE法などの各種薄膜及び厚膜形成法を適用することが可能である。
【0013】
図2に、第2の超電導薄膜素子10の概略断面図を示す。
第2の超電導薄膜素子10は、第1の超電導薄膜素子10Aの構成に加え、常電導体13を備えて構成される。
常電導体13は、超電導薄膜12上に形成される。
【0014】
以下、第2の超電導薄膜素子10を用いた超電導薄膜限流器の構成について説明するが、第1の超電導薄膜素子10Aを用いても同様の作用効果を有する。
【0015】
図3に、第1の超電導薄膜限流器1を示す。
第1の超電導薄膜限流器1は、第2の超電導薄膜素子10、超電導薄膜12、常電導体13を備えて構成される。
第1の超電導薄膜限流器1は、基板11の両面上に超電導薄膜12を形成し、超電導薄膜12上に常電導体13をそれぞれ配置して構成される。
【0016】
超電導薄膜12間は並列接続され、第1の超電導薄膜限流器1内の構成配置が実質的に対称となる。これにより、第1の超電導薄膜限流器1内の電流分布を均一化することができ、電流容量を増加させることができる。
【0017】
図4に、第2の超電導薄膜限流器2を示す。
第2の超電導薄膜限流器2は、第2の超電導薄膜素子10を2つ備えて構成される。
【0018】
基板11は互いに接触して配置される。
第2の超電導薄膜素子10間の熱的接触をよくするため、接触部分にグリース又は樹脂等を適度な厚さで塗布するとしてもよい。
【0019】
図5に、第3の超電導薄膜限流器3を示す。
第3の超電導薄膜限流器3は、第2の超電導薄膜素子10を2つと、基板14を備えて構成される。
【0020】
第2の超電導薄膜素子10は、基板14を挟んで配置され、基板14と接触して配置される。基板11と基板14との間の熱的接触をよくするため、接触部分にグリース又は樹脂等を適度な厚さで塗布するとしてもよい。
【0021】
基板14は、基板11と異なる材質が用いられる。例えば、アルミナのようなセラミックス、銅、アルミ等の純金属、ハステロイ、又はニッケル合金等の金属基板が用いられる。
【0022】
基板14を基板11間に挿入することで、第3の超電導薄膜限流器3の熱容量を増加させることができ、限流動作時に熱的な安定性を確保することができる。
【0023】
図6に、接続態様の一例を示す。
なお、図6では第3の超電導薄膜限流器3を用いた接続態様を示しているが、これに限らず第1の超電導薄膜限流器1又は第2の超電導薄膜限流器2を用いても同様である。
【0024】
第3の超電導薄膜限流器3は、平面状に配置され、並列に接続される。
並列接続することにより、第3の超電導薄膜限流器3内の配置が実質的に対称となる。そのため、第3の超電導薄膜限流器3間の電流分布を均一化することができ、電流容量を増加させることができる。
【0025】
以上のように、本実施形態によれば、超電導状態の破壊に対する保護性能を確保することができ、超電導薄膜限流器のサイズを小型化することができる。
【0026】
また、第1の超電導薄膜素子10A又は第2の超電導薄膜素子10を2つ用いることで、電流容量を増加させることができ、超電導状態の破壊に対する保護性能を強化することができる。
【0027】
また、基板11と基板14で異なる絶縁部材を2種類用いることで、熱容量を増加させることができ、超電導状態の破壊に対する保護性能を強化することができる。
【0028】
また、常電導体13を用いることで、電流容量を増加させることができ、超電導状態の破壊に対する保護性能を強化することができる。
【0029】
また、2組の超電導薄膜限流器(1〜3)を並列に配置することで、超電導薄膜限流器(1〜3)間の電流分布を均一にでき、電流容量を増加させることができるため、超電導状態の破壊に対する保護性能を強化することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 第1の超電導薄膜限流器
2 第2の超電導薄膜限流器
3 第3の超電導薄膜限流器
4 第4の超電導薄膜限流器
10A 第1の超電導薄膜素子
10 第2の超電導薄膜素子
11 基板
12 超電導薄膜
13 常電導体
14 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性基板を介して互いに対向する位置に超電導体が配置されていることを特徴とする超電導限流器。
【請求項2】
絶縁性基板の一側の面に超伝導体が形成された二個一対の超電導素子を含み、
前記各超電導素子の絶縁性基板の他側の面同士が接着されてなることを特徴とする超電導限流器。
【請求項3】
前記各超電導素子の絶縁性基板の間に、介挿剤が介在されていることを特徴とする請求項2に記載の超電導限流器。
【請求項4】
前記超伝導体に沿って常電導体が形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の超電導限流器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−238943(P2010−238943A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85821(P2009−85821)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】