説明

除塵布

【課題】静電気の発生を抑制して除塵効率を向上させ得る除塵布を提供する。
【解決手段】自動車用バンパー1に用いられるポリプロピレンからなる樹脂製品の被清浄面を拭いて清浄化するために用いられる除塵布2に、自動車用バンパー1と同じ樹脂のポリプロピレンからなるものを用いて、静電気の発生を抑制し除塵効率を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製品の被清浄面、例えば自動車の樹脂バンパーや内装・外装部品、或いは家電製品やパーソナルコンピュータのケースなどの塗装面を塗装前に拭いて清浄化するために用いられる除塵布に関する。
【背景技術】
【0002】
上述した除塵布として、可撓性を有する基布からなるものが知られている(例えば特許文献1等参照)。この除塵布にあっては、糸くずが脱落し難いように布端部が処理されていて、拭き取りにより被清浄面に付着していた塵埃を除去することができるとともに、除塵布自身から抜け出る虞がある糸くずも付着しないようにすることができる。
【特許文献1】特開2008−13021号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述した自動車のバンパーや内装・外装部品、或いは家電製品やパーソナルコンピュータのケースなどは、近年樹脂により作製されている。このような樹脂製バンパーなどの塗装面を塗装前に清浄化するために、上述した除塵布を使用して拭いても、前記塗装面から塵埃を効率よく除去することができないでいた。つまり、樹脂製バンパーなどを除塵布で拭くと、樹脂製バンパーなどに発生する静電気により、除塵布で拭き取った筈の塵埃が再び樹脂製バンパーなどに戻ってしまったり、或いは塗装装置における塵埃が樹脂製バンパーなどに付着したりするという難点があった。
【0004】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためのもので、静電気の発生を抑制して除塵効率を向上させ得る除塵布を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の本発明に係る除塵布は、樹脂製品の被清浄面を拭いて清浄化するために用いられる除塵布であって、前記樹脂製品と同じ樹脂を含む繊維からなることを特徴とする。
【0006】
請求項2の本発明に係る除塵布は、請求項1に記載の除塵布において、前記樹脂製品及び前記繊維がポリプロピレンからなることを特徴とする。
【0007】
請求項3の本発明に係る除塵布は、請求項1に記載の除塵布において、前記樹脂製品がポリプロピレンからなり、かつ前記繊維がポリプロピレンとポリエステルまたはポリエチレンとを、ポリプロピレンが50wt%以上となるように混合したものからなることを特徴とする。
【0008】
請求項4の本発明に係る除塵布は、請求項1乃至3のいずれかに記載の除塵布において、前記繊維に粘着剤が含まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明による場合には、樹脂製品とこれを拭く除塵布がともに同じ樹脂から構成されているので、樹脂製品に静電気が発生することを抑制することが可能となり、一旦拭き取った塵埃や後処理工程における塵埃が樹脂製品に付着することを防止して除塵効率を向上させ得るという効果が得られる。この効果は、請求項2のように、樹脂製品がポリプロピレンからなる場合には、除塵布の繊維にも同じポリプロピレンを用いれば確保される。或いは、請求項3のように、樹脂製品がポリプロピレンからなる場合には、除塵布の繊維にも同じポリプロピレンを50wt%以上で含み、残りがポリエステルまたはポリエチレンからなるものを用いれば確保される。
【0010】
また、請求項4による場合には、粘着剤が含まれていなくても請求項1の効果が得られるが、更に粘着剤が含まれることにより、樹脂製品から拭き落とす塵埃を除塵布に確実に付着させることができ、これにより樹脂製品に付着していた塵埃を樹脂製品へ戻り難くすることができ、除塵効率を更に向上させ得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態を具体的に説明する。
【0012】
(樹脂製品がポリプロピレンからなる場合)
この樹脂製品に対して用いる除塵布は、樹脂製品と同じポリプロピレンからなる繊維の長繊維または加工糸のみで製織したものが好ましい。その理由は、この除塵布を用いた場合には、樹脂製品の帯電電圧を小さくすることができるからである。
【0013】
また、除塵布は、織物でも、経編物(ラッセルまたはトリコット)または丸編みでもよい。織物の場合の原糸の太さと打ち込み密度に関しては、例えば原糸の太さが200dtexでは、インチ当たり縦・横とも各20本〜50本の打ち込み密度がよく、原糸の太さが600dtexでは、インチ当たり縦・横とも各12本〜30本の打ち込み密度がよい。また、織物の場合の畳み方とサイズについては、織り幅90cm〜120cmの織物を両端が中心部に位置するように四つ折りして20cm〜30cmの幅にし、インパルス溶断により長さ10cm〜100cmにする。或いは、織り幅30cm〜40cmの織物を二つ折りして15cm〜20cmの幅にし、インパルス溶断により長さ10cm〜100cmにし、或いは、織り幅20cm〜30cmの織物をインパルス溶断により長さ10cm〜100cmにする。
【0014】
一方、経編物または丸編みの場合の原糸の太さと打ち込み密度に関しては、例えば原糸の太さが50dtex〜600dtexでは、編みゲージ6〜32の密度がよい。また、経編物または丸編みの場合の畳み方とサイズについては、編み幅90cm〜120cmの編物を両端が中心部に位置するように四つ折りして20cm〜30cmの幅にし、インパルス溶断により長さ10cm〜100cmにする。或いは、編み幅30cm〜40cmの編物を二つ折りして15cm〜20cmの幅にし、溶断により長さ10cm〜100cmにし、或いは、広幅の編物を幅15cm〜30cmに溶断し、カットまたは溶断により長さ10cm〜100cmにする。或いは、筒状丸編みであって、筒円周が40cm(平面上に置いた場合には20cmのダブル幅)〜80cm(平面上に置いた場合には40cmのダブル幅)のものを、インパルス溶断により長さ10cm〜100cmにする。
【0015】
【表1】

【0016】
表1に、本実施形態に係る実施例1の除塵布での帯電電圧と、他の素材からなる従来例1、比較例1〜4の除塵布を用いた場合の帯電電圧と比較した結果を纏める。なお、実施例1の除塵布は、ポリプロピレン100%の織物で、太さが150dtex、縦30本、横30本、粘着剤が付いたものである。従来例1の除塵布はポリエステル100%の織物で、太さが200dtex、縦23本、横21本、粘着剤が付いたものである。比較例1の除塵布は従来例1の除塵布の横糸に導電繊維を用いたもので、比較例2の除塵布は従来例1の除塵布の粘着剤に導電剤を8wt%添加したもの、比較例3の除塵布は粘着剤付きのラッセル品でゲージ(G)が9のもの、比較例4の除塵布は粘着剤付きのラッセル品でゲージ(G)が13のものである。
【0017】
また、試験条件としては、以下の通りである。図1に示すようにポリプロピレン100%の自動車用バンパー1の表面における幅約15cm、長さ約25cmの範囲を、10cm×25cmの大きさの各種の除塵布2で10回摩擦し、摩擦後直ちに物体帯電プローブにより10箇所の帯電電圧を測定して平均値を求めた。測定温度は20℃、湿度は20%RHである。また、測定は、各種の除塵布2のそれぞれで摩擦する前に、先に用いた除塵布2による摩擦の影響を消して行った。
【0018】
この表1より理解されるように、実施例1の除塵布以外の除塵布、つまり従来例1の除塵布および比較例1〜4の除塵布では塵埃が樹脂製品に付着し難い帯電電圧にすることができないが、実施例1の除塵布による場合には帯電電圧を、塵埃が樹脂製品に付着し難い1000Vよりも低い値にすることができる。
【0019】
したがって、本実施形態による場合には、樹脂製品に静電気が発生することを抑制することが可能となり、一旦拭き取った塵埃や後処理工程における塵埃が樹脂製品に付着することを防止して除塵効率を向上させ得るという効果が得られる。加えて、本実施形態では、除塵布が粘着剤を含むものであるので、樹脂製品から拭き落とす塵埃を除塵布に確実に付着させることができ、これにより樹脂製品に付着していた塵埃を樹脂製品へ戻り難くすることができ、除塵効率を更に向上させ得る。
【0020】
なお、上述した実施形態ではポリプロピレン100%からなる試験片に対し、ポリプロピレン100%の織物からなる除塵布を用いたが、本発明はこれに限らない。例えば、樹脂製品がポリプロピレンからなる場合には、除塵布の繊維にも同じポリプロピレンを50wt%以上で含み、残りがポリエステルまたはポリエチレンからなるものを用いれば、同様の効果を得ることができる。
【0021】
(樹脂製品がポリプロピレン以外のものからなる場合)
本発明は、樹脂製品がポリプロピレン以外のものからなる場合においても、前同様に、除塵布の繊維に樹脂製品と同一の材料またはその材料を多量に含むものを用いればよい。例えば、樹脂製品がポリエチレンの場合には除塵布の基布として同じポリエチレンやポリエチレンを多量に含むものでもよく、樹脂製品がポリエチレンテレフタレートの場合には除塵布の基布として同じポリエチレンテレフタレートやポリエチレンテレフタレートを多量に含むものでもよい。
【0022】
なお、上述した実施形態では明言していないが、除塵布に含ませる粘着剤の含有量は、除塵布の基布の重量の25%重量部〜130%重量部が好ましい。また、本発明において粘着剤は省略してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】試験条件の説明図である。
【符号の説明】
【0024】
1 自動車用バンパー
2 除塵布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製品の被清浄面を拭いて清浄化するために用いられる除塵布であって、前記樹脂製品と同じ樹脂を含む繊維からなることを特徴とする除塵布。
【請求項2】
請求項1に記載の除塵布において、前記樹脂製品及び前記繊維がポリプロピレンからなることを特徴とする除塵布。
【請求項3】
請求項1に記載の除塵布において、前記樹脂製品がポリプロピレンからなり、かつ前記繊維がポリプロピレンとポリエステルまたはポリエチレンとを、ポリプロピレンが50wt%以上となるように混合したものからなることを特徴とする除塵布。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の除塵布において、前記繊維に粘着剤が含まれていることを特徴とする除塵布。

【図1】
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【公開番号】特開2009−219614(P2009−219614A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−66327(P2008−66327)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(390031923)協和産業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】