説明

除塵装置

【課題】製作コストが比較的に安く済み、コンパクト化も容易な除塵装置を提供する。
【解決手段】回転操作される帯電ローラ12と、除塵の対象物Pと帯電ローラ12とを、同帯電ローラ12が対象物Pと対向した状態で相対移動させる搬送機構3とを備え、帯電ローラ12が、同帯電ローラ12と帯電傾向の異なる補助部材14との摩擦によって帯電されるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転操作される帯電ローラと、除塵の対象物と帯電ローラとを、同帯電ローラが前記対象物と対向した状態で相対移動させる搬送機構とを備えた除塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の除塵装置に関連する先行技術文献情報として下記に示す特許文献1がある。この特許文献1に記された除塵装置は、CCDイメージセンサなどの固体撮像素子の受光面に付着した塵埃を除去することを目的としており、回転操作される2つの帯電ローラと、除塵の対象物であるCCDイメージセンサと2つの帯電ローラとを、各帯電ローラが対象物と対向した状態で相対移動させる搬送機構とを備え、一方の帯電ローラは−に、他方の帯電ローラは+にそれぞれ帯電制御部によって電荷量を制御された帯電部によって帯電されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−73877号公報(0015段落、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記された除塵装置では、高電圧発生回路を含むと推測される帯電部と帯電制御部とを少なくとも2組設ける必要があるため、除塵装置の製作コストが高く、また、除塵装置のコンパクト化も困難であった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、上に例示した従来技術による除塵装置が与える課題に鑑み、製作コストが比較的に安く済み、コンパクト化も容易な除塵装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による除塵装置の第1の特徴構成は、
回転操作される帯電ローラと、
除塵の対象物と前記帯電ローラとを、同帯電ローラが前記対象物と対向した状態で相対移動させる搬送機構と、を備え、
前記帯電ローラが、同帯電ローラと帯電傾向の異なる補助部材との摩擦によって帯電されるように構成されている点にある。
【0007】
本発明の第1の特徴構成による除塵装置では、対象物と対向配置された帯電ローラが、同帯電ローラと帯電傾向の異なる補助部材との摩擦によって+−いずれか設定された極性に帯電され、逆の極性に帯電した状態で対象物の表面に位置する塵埃は帯電ローラによって吸着除去される。したがって、帯電ローラを帯電させるために、高電圧発生回路を備えた複雑な帯電装置を配置する必要がなくなる。その結果、除塵装置の製作コストを削減でき、さらに、除塵装置もコンパクト化も容易となる。尚、例えば、対象物の表面に位置する塵埃が一般的に屋内に存在する(+)に帯電された塵埃であれば、帯電ローラが(−)に帯電されるように、帯電ローラと補助部材の各材質を公知の帯電列から選択すればよい。
【0008】
本発明の他の特徴構成は、前記帯電ローラが帯電ブラシローラからなる点にある。
【0009】
本構成であれば、帯電によってブラシローラを構成する個々の毛状体の先端に静電気による強力なクーロン力を集中的に発生させることができるため、平坦な或いはスポンジ状の周面を備えたローラに比して、より吸着能力の高い除塵装置が得られる。帯電ローラに吸着された塵埃を高い収率で回収できるので、対象物に再付着する傾向も抑制される。
【0010】
本発明の他の特徴構成は、前記帯電ブラシローラは前記対象物に対して非接触状態で回転操作される点にある。
【0011】
本構成であれば、帯電ブラシローラは対象物と接触しない状態で塵埃を吸着する形態が採られるため、対象物との接触によって帯電ブラシローラの帯電状態が塵埃の吸着にとって不都合な向きに変化する虞が抑制される。また、帯電ブラシローラに一旦吸着された塵埃が帯電ブラシローラの回転によって、対象物に再付着する虞や、帯電ブラシローラが対象物に機械的な損傷を与える虞も抑制される。
【0012】
本発明の他の特徴構成は、前記対象物に対して対向配置された第2帯電ローラを備え、前記第2帯電ローラは前記帯電ローラと異なる極性に帯電される点にある。
【0013】
本構成であれば、+に帯電された塵埃と−に帯電された塵埃とが対象物の表面に混在している場合も、双方の塵埃を除去できる。
【0014】
本発明の他の特徴構成は、前記第2帯電ローラが、同第2帯電ローラと帯電傾向の異なる第2補助部材との摩擦によって帯電される点にある。
【0015】
本構成であれば、第1の帯電ローラで除去できなかった帯電傾向の塵埃も、帯電傾向の異なる補助部材との摩擦によって帯電された第2帯電ローラによって除去できるので、高電圧発生回路などの複雑な装置を全く用いることなく、+に帯電された塵埃と−に帯電された塵埃との双方の塵埃を除去できる。
【0016】
本発明の他の特徴構成は、前記第2帯電ローラがコロナ放電装置によって帯電される点にある。
【0017】
本構成であれば、第2帯電ローラについてはコロナ放電装置によって任意のレベルに帯電させることができるので、非常に強い吸着力で対象物の表面に付着している塵埃も除去でき、しかも、第1の帯電ローラについては飽くまで帯電傾向の異なる補助部材との摩擦によって帯電させるので、コロナ放電装置を構成する高電圧発生回路は一つだけ設ければよく、従来技術に比して簡易な構成の除塵装置が得られる。
【0018】
本発明の他の特徴構成は、前記帯電ローラと前記補助部材との間に生じる摩擦力を調整する摩擦力調整機構が設けられている点にある。
【0019】
本構成であれば、補助部材との摩擦によって帯電ローラに得られる帯電性およびクーロン力を、対象物や対象物上の塵埃の特性に適した大きさに制御することが可能となる。その結果、例えば、対象物上の塵埃を吸着除去することが可能で、且つ、対象物自体を引き寄せるなどの不都合を与え難い除塵装置を提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による除塵装置を備えた被覆装置を示す概略側面図である。
【図2】除塵装置の構成と作用を示す説明図である。
【図3】被覆装置の要部を示す拡大図である。
【図4】被覆装置の他の要部を示す拡大図である。
【図5】別実施形態による除塵装置の構成と作用を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、インクジェットプリンタなどから排出されたプリントの画像面に透明な保護膜を貼り付けるための被覆装置150を示し、この被覆装置150の一部として本発明に係る除塵ユニット50(除塵装置の一例)が設けられている。被覆装置150はインクジェットプリンタの下流側に隣接配置される。
【0022】
(被覆装置)
被覆装置150は、インクジェットプリンタの排出部80aから排出されたプリントPを受け取り、プリントPの画像面から塵埃1a,1bを除去する除塵ユニット50と、除塵ユニット50による除塵操作を受けた直後のプリントPに保護膜Sを貼り付けるラミネータ部100とを備えている。プリントPは画像面が上を向いた姿勢で除塵ユニット50に送り込まれる。図2に例示するように、プリントPの画像面側には+に帯電された塵埃1aと−に帯電された塵埃1bとの双方が混在している場合が考えられるが、一般に、+に帯電された塵埃1aが主体である場合が多い。
【0023】
(除塵装置)
除塵ユニット50は、主に+に帯電された塵埃1aを主に吸着除去する第1除塵部D1と、−に帯電された塵埃1bを主に吸着除去する第2除塵部D2とを有する。第2除塵部D2はプリントPの搬送方向に関して第1除塵部D1の下流側に配置されている。
【0024】
(第1除塵部)
第1除塵部D1は、外周面がゴムなど摩擦力の大きな材料で構成された搬送ローラ3と、外周面がゴムなどの絶縁体で構成された第1帯電ローラ4とを有する。搬送ローラ3は、接地された板金製などの搬送ガイド2の下方に配置されている。搬送ガイド2の上方に配置された第1帯電ローラ4は、バネなどを用いた圧着機構によってプリントPを搬送ローラ3に押付ける構成となっている。搬送ローラ3はモータなどの駆動原によって基本的にインクジェットプリンタによるプリントPの排出速度と同期した速度で駆動される。
【0025】
搬送ローラ3は、プリントPをラミネータ部100に向けて搬送するためにモータなどの駆動源(不図示)によって回転駆動される。第1帯電ローラ4は搬送ローラ3と共通の駆動源によって同期駆動されてもよいが、搬送ローラ3によって搬送されるプリントPとの摩擦によって転動される構成でもよい。尚、搬送ローラ3と第1帯電ローラ4とを全く同一材質で構成すれば、両ローラ3,4どうしの摩擦によって除塵操作に不都合な静電気が生じる虞が少なくなるため好都合である。但し、第1帯電ローラ4を−に帯電され易く、且つ、除電された状態における塵埃に対する吸着力の弱い素材、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などで構成してもよい。
【0026】
第1帯電ローラ4の外周付近には、第1帯電ローラ4の表面を−に帯電させるためのコロナ放電装置6が配置されている。したがって、プリントPの画像面側に存在する+に帯電された塵埃1aは、−に帯電された第1帯電ローラ4のクーロン力によって第1帯電ローラ4の表面に移動する。コロナ放電装置6によって第1帯電ローラ4の表面は高電圧(一例として約300V強)に帯電されている。
【0027】
第1帯電ローラ4の外周付近で、第1帯電ローラ4の回転方向に関してコロナ放電装置6よりも下流側には、第1帯電ローラ4の表面の帯電状態を一旦中和させるか弱めるための除電装置8が配置されている。したがって、第1帯電ローラ4の表面に吸着された塵埃1aに対する吸着力が除電装置8によって弱められる。
【0028】
さらに、第1帯電ローラ4の外周付近で、第1帯電ローラ4の回転方向に関して除電装置8よりも下流側で、コロナ放電装置6よりも上流側には、真空ポンプまたはブロワーによって形成された負圧によって第1帯電ローラ4から塵埃1を回収する第1集塵装置10aが配置されている。すなわち、除電装置8によって吸着力が弱められた塵埃1は、この第1集塵装置10aによって塵埃回収ボトル(不図示)などに回収される。
【0029】
(第2除塵部)
第2除塵部D2は、第1除塵部D1によって送り込まれるプリントPの画像面と対向するように配置された第2帯電ローラ12と、第2帯電ローラ12の上方に配置された補助ローラ14とを有する。第2帯電ローラ12と補助ローラ14とはいずれも樹脂製のブラシローラからなり、両ローラのブラシの先端どうしは互いに少なくとも2〜5mm程度重なり合うように配置されている。第2帯電ローラ12は、搬送ローラ3と共通の駆動原によってプリントPの搬送速度と同期した周速度で回転駆動されている。
【0030】
第2帯電ローラ12はナイロン製のブラシローラによって構成され、他方、補助ローラ14は帯電列においてナイロンよりも−側に序列されるアクリル製のブラシローラによって構成されているので、第2帯電ローラ12は補助ローラ14との摩擦によって+に帯電され、補助ローラ14は−に帯電される。したがって、プリントPの画像面側に−に帯電された塵埃1bが存在する場合、これらの塵埃1bは第2帯電ローラ12の各ナイロン毛の先端を中心に発生するクーロン力によってナイロン毛の先端付近などに吸着される。
【0031】
第2帯電ローラ12は、プリントPから少なくとも3〜5mm程度離間され、且つ、第1除塵部D1の第1帯電ローラ4からも下流側に数cm程度離間するように配置されている。補助ローラ14の回転速度、回転方向、第2帯電ローラ12との重なり量などは、第2帯電ローラ12が、プリントPの画像面側に位置する−に帯電された塵埃1bを3〜5mm程度離間した位置から引き寄せて吸着可能で、且つ、プリントP自体を引き寄せない程度のクーロン力を有するように構成されている。
【0032】
例えば、補助ローラ14を駆動源によって側面視で第2帯電ローラ12と逆向きに且つ第2帯電ローラ12と等しい周速度で回転させれば、両ローラ間の摩擦は少なく、第2帯電ローラ12に生じるクーロン力は小さい。補助ローラ14を駆動源から切り離し、遊転自在にした場合も摩擦は少なくなる。他方、図1の矢印で例示するように、補助ローラ14を側面視で第2帯電ローラ12と同じ向きに回転させれば、両ローラ間の摩擦は増し、一般に第2帯電ローラ12に生じるクーロン力は増大する。
【0033】
第2帯電ローラ12の外周付近で、第2帯電ローラ12の回転方向に関して補助ローラ14よりも上流側には、第1集塵装置10aと同様の第2集塵装置10bが配置されている。すなわち、第2帯電ローラ12の周面付近に吸着された塵埃、或いは、補助ローラ14のアクリル毛によって第2帯電ローラ12の周面付近から掻き落とされた塵埃は、この第2集塵装置10bによって塵埃回収ボトル(不図示)などに回収される。
尚、第2帯電ローラ12と補助ローラ14を構成するブラシローラとしては、該当する材質の毛状体を2本以上の金属芯材の間に挾み込ませて、その金属芯材に捩りをかけて固定することで、多数の毛状体が金属芯材から放射状に延びた状態に形成したものなどを用いることができる。
【0034】
(ラミネータ部)
図3に例示するように、ラミネータ部100では、プリントPの画像面側に被覆シートTを被せ、一対の加圧ローラ22a,22bによる上下からの押し付け力によって貼り付ける操作が行われる。被覆シートTは、透明な保護膜Sと、保護膜Sの背面側に一時的に接着されている離型シートBとで構成されており、保護膜Sは耐光性などを備えた保護層S1と、保護層S1の内側に設けられた接着層S2とを備える。保護膜Sが接着層S2によってプリントPに貼付される際に離型シートBは保護膜Sから剥がされて別途回収される。被覆シートTには、プリントPの幅よりも若干大きい幅を有する長尺シートが用いられる。尚、保護層S1と接着層S2との間に両層どうしの結合状態を保つためのアンカー層を設けてもよい。
【0035】
上記の貼り付け操作では、プリントPを上方の被覆シートTと下方の補助シートRとの間で挟み込んだ状態で、これら3部材に対して加圧ローラ22a,22bからの押し付け力が加えられる。保護膜Sの接着層S2はプリントPの画像面側に対して永久的な接着力を発揮するが、補助シートRは接着層S2の接着力が働き難い材質で構成されている。
【0036】
ラミネータ部100を構成する部材のうちで、未使用のロール状の被覆シートTを回転自在に支持する被覆シート保持軸16と、被覆シートTから剥離された離型シートBをロール状に回収するための離型シート回収軸17とが、プリントPの搬送経路Lよりも上方に配置されている。
他方、プリントPの搬送経路よりも下方には、未使用のロール状の補助シートRを回転自在に支持する補助シート保持軸18aと、保護膜SをプリントPの画像面側に転写するために使用された補助シートRの部位をロール状に回収する補助シート回収軸18bとが配置されている。
被覆シート保持軸16および補助シート保持軸18aの内部には、被覆シートTおよび補助シートRに所定の張力を保持するための回転制限機構としてトルクリミッタなどが設けられている。
【0037】
被覆シート保持軸16とプリントPの搬送経路Lとの間には、加圧ローラ22a,22bのニップに対する被覆シートTの進入角度を加圧ローラ22a,22bの接線方向に近づけるための第1偏向プーリ20aが回転自在に設けられている。
同様に、補助シート保持軸18aとプリントPの搬送経路Lとの間には、加圧ローラ22a,22bのニップに対する補助シートRの進入角度を加圧ローラ22a,22bの接線方向に近づけるための第2偏向プーリ20bが回転自在に設けられている。
【0038】
離型シート回収軸17とプリントPの搬送経路との間には、離型シートBの搬送経路をプリントPの搬送経路から分岐させるための第1分岐ガイド24aが配置されている。同様に、補助シート回収軸18bの上方には、補助シートRの搬送経路をプリントPの搬送経路から分岐させるための第2分岐ガイド24bが配置されている。
【0039】
一対の加圧ローラ22a,22bの内部には、プリントPと被覆シートTと補助シートRとを加圧しながら加熱するためのハロゲンランプ等からなるヒータ23a,23bが設けられている。ヒータ23a,23bの作用で、駆動源によって回転駆動される下方の駆動ローラ22bの表面は50〜70℃程度に、バネなどの圧着手段によって駆動ローラ22bに圧着される上方の圧着ローラ22aの表面は90〜110℃程度に加熱される。すなわち、被覆シートTの接着層S2がローラ22a,22bによって加熱されることで活性化され、加圧による接着作用が強化される。
【0040】
加圧ローラ22a及び駆動ローラ22bは、ともに中空の金属ローラの表面をシリコンゴム等の弾性部材により覆った構成としている。この金属ローラの表面を覆う弾性部材の厚さは、ヒータ23a,23bからの熱の伝導性を損なうことがなく、かつ、加圧ローラ22aと駆動ローラ22bの間を搬送される被覆シートTとプリントPとを十分に圧着できる程度の弾性を有する厚さとすることが好ましい。
【0041】
加圧ローラ22a,22bから与えられる熱と圧力の作用で画像面側の全面に保護膜Sが被覆(ラミネート)されたプリントPは、駆動ローラ22bと等しい周速度で回転駆動される一対の排出ローラ26によってラミネータ部100から排出される。プリントPの外側にはみ出た余分な保護膜Sを除去したものは完成プリントとなる。
【0042】
(樹脂シートの材質)
被覆シートTの保護層S1は、プリントPとの密着性に優れ、透明性が高く、熱や光で変色し難く、化学的・物理的バリヤ性に優れていることが好ましく、例えば、アクリル系樹脂や酢酸ビニル系樹脂等が好適である。
被覆シートTの接着層S2には、透明性を有し、加熱によってプリントPとの強い接着力を発揮する、例えばポリエステル系樹脂等の熱可塑性樹脂を用いると好適である。
被覆シートTの剥離シートBは、加圧及び加熱条件下で形状を安定して維持できるような耐熱性及び機械的強度と、保護層S1からの良好な剥離性を備えていることが好ましいため、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレンナフタレート等のフィルムを用いると好適である。
補助シートEとしては、被覆シートTの接着層S2が一時的に適度な接着力による接着状態を維持できる材質が好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のフィルムを用いると好適である。
【0043】
〔別実施形態〕
〈1〉第2帯電ローラ12に生じるクーロン力は補助ローラ14との摩擦レベルによって調整することができる。そこで、塵埃の吸着力を維持しながらも、第2帯電ローラ12に生じるクーロン力によってプリントPが第2帯電ローラ12に引き寄せられて損傷を受けることのないように、ローラどうしの間で生じる摩擦力を調節する摩擦力調節機構を設けることができる。摩擦力調節機構の具体的な構成としては、両ローラ12,14間の速度差を調節する機構、または、両ローラ12,14間の重複長さを調節する機構によって実現することができる。速度差を調節する機構としては、補助ローラ14と駆動源との間に変速機構を設ければよい。重複長さを調節する機構としては、例えば、補助ローラ14のシャフトを長孔内に支持させて、補助ローラ14の軸心の位置を第2帯電ローラ12に対して変位させる機構を設ける形態で実現可能である。
【0044】
〈2〉図5は、コロナ放電装置のような高電圧回路を必要としない第2実施形態による除塵ユニット60を示す。
除塵ユニット60は、前述した実施形態と同様に、主に+に帯電した塵埃1aを除去する第1除塵部D11と、主に−に帯電した塵埃1bを除去する第2除塵部D12とを有するが、これらの除塵部は全てブラシローラで構成されている。
上流側に配置された第1除塵部D11は、プリントPの画像面と対向するように配置されたアクリル製の第1帯電ローラ32aと、第1帯電ローラ32aの上方に配置されたナイロン製の第1補助ローラ34aとを有する。両ローラ32a,34aのブラシの先端どうしは互いに少なくとも2〜5mm程度重なり合うように配置されている。
下流側に配置された第2除塵部D12は、プリントPの画像面と対向するように配置されたナイロン製の第2帯電ローラ32bと、第2帯電ローラ32bの上方に配置されたアクリル製の第2補助ローラ34bとを有する。両ローラ32b,34bのブラシの先端どうしは互いに少なくとも2〜5mm程度重なり合うように配置されている。
【0045】
第1帯電ローラ32aと第2帯電ローラ32bとの間には、プリントPをラミネート部100に向けて搬送する手段として、モータなどの駆動源によって駆動操作される搬送ローラ対40a,40bが設けられている。
第1除塵部D11の第1帯電ローラ32aと、第2除塵部D12の第2帯電ローラ32bとは、プリントPから少なくとも3〜5mm程度上方に離間して配置され、搬送ローラ対40a,40bを構成する駆動ローラ40aと共通の駆動原によってプリントPの搬送速度と同期した周速度で回転駆動されている。
【0046】
第1除塵部D11の第1帯電ローラ32aはアクリル製のブラシローラによって構成され、他方、第1補助ローラ34aは帯電列においてアクリルよりも+側に序列されるナイロン製のブラシローラによって構成されているので、第1帯電ローラ32aは第1補助ローラ34aとの摩擦によって−に帯電される。したがって、プリントPの画像面側に存在する+に帯電された塵埃1aは、第1帯電ローラ32aの各アクリル毛の先端を中心に発生するクーロン力によって吸着される。
【0047】
他方、第2除塵部D12の第2帯電ローラ32bはナイロン製のブラシローラによって構成され、第2補助ローラ34bは帯電列においてナイロンよりも−側に序列されるアクリル製のブラシローラによって構成されているので、第2帯電ローラ32bは第2補助ローラ34bとの摩擦によって+に帯電される。したがって、プリントPの画像面側に存在する−に帯電された塵埃1bは、第2帯電ローラ32bの各ナイロン毛の先端を中心に発生するクーロン力によって吸着される。
【0048】
第1補助ローラ34aの回転速度、回転方向、第1帯電ローラ32aとの重なり量などは、第1帯電ローラ32aが、プリントPの画像面側に位置する+に帯電された塵埃を3〜5mm程度離間した位置から引き寄せて吸着可能で、且つ、プリントP自体を引き寄せない程度のクーロン力を有するように構成されている。第2補助ローラ34bの回転速度、回転方向、第2帯電ローラ32bとの重なり量も、同様に、プリントPの画像面側に位置する−に帯電された塵埃を3〜5mm程度離間した位置から引き寄せて吸着可能で、且つ、プリントP自体を引き寄せない程度のクーロン力を有するように構成されている。
【0049】
第1帯電ローラ32aの外周付近で、第1帯電ローラ32aの回転方向に関して第1補助ローラ34aよりも上流側には、第1集塵装置10cが配置されている。すなわち、第1帯電ローラ32aの周面付近に吸着された塵埃、或いは、第1補助ローラ34aのナイロン毛によって第1帯電ローラ32aから掻き落とされた塵埃は、この第1集塵装置10cによって塵埃回収ボトル(不図示)などに回収される。第2帯電ローラ32bの外周付近で、第2帯電ローラ32bの回転方向に関して第2補助ローラ34bよりも上流側にも、第1集塵装置10cと同様の第2集塵装置10dが配置されている。
【0050】
〈3〉第2実施形態の第1補助ローラ34aおよび第2補助ローラ34bの一方または双方を一般的なゴムローラ、或いは、ゴム製のブレードなど、回転操作されない固定部材として構成してもよい。この場合、第1除塵部D11の第1帯電ローラ32aはアクリル製ではなく帯電列においてゴムよりも−側に位置するポリエチレン製または塩化ビニル製のブラシローラにする必要がある。
【0051】
〈4〉+−のいずれか一方に帯電された塵埃のみを吸着除去する除塵装置でも十分に目的を達する場合もあるため、例えば、第1実施形態から第1除塵部D1を省略し、第2除塵部D2のみを備えた形態、或いは、第2実施形態から第1除塵部D11と第2除塵部D12のいずれかを省略した形態など、帯電傾向の異なる補助部材との摩擦によって+−のいずれか一方に帯電される帯電ローラを一つだけ備えた形態で実施することも可能である。
【0052】
〈5〉搬送機構がプリントPなど除塵の対象物を移動させるのではなく、一対の帯電ローラの方を除塵の対象物に対して移動させる形態で実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
回転操作される帯電ローラと、除塵の対象物と帯電ローラとを、同帯電ローラが対象物と対向した状態で相対移動させる搬送機構とを備えた除塵装置を、製作コストが比較的に安く済み、コンパクト化も容易なものに改善する技術として利用可能である。
【符号の説明】
【0054】
B 離型シート
D1 第1除塵部
D2 第2除塵部
D11 第1除塵部(第2実施形態)
D12 第2除塵部(第2実施形態)
L 搬送経路
P プリント
R 補助シート
S 保護膜
S1 保護層
S2 接着層
T 被覆シート
1a 塵埃(+に帯電)
1b 塵埃(−に帯電)
2 搬送ガイド
3 搬送ローラ
4 第1帯電ローラ
6 コロナ放電装置
8 除電装置
10a 第1集塵装置
10c 第1集塵装置(第2実施形態)
10d 第2集塵装置(第2実施形態)
12 第2帯電ローラ
14 補助ローラ
10b 第2集塵装置
32a 第1帯電ローラ
32b 第2帯電ローラ
34a 第1補助ローラ
34b 第2補助ローラ
50 除塵ユニット(除塵装置)
60 除塵ユニット(除塵装置、第2実施形態)
80a 排出部(インクジェットプリンタ)
100 ラミネータ部
150 被覆装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転操作される帯電ローラと、
除塵の対象物と前記帯電ローラとを、同帯電ローラが前記対象物と対向した状態で相対移動させる搬送機構と、を備え、
前記帯電ローラが、同帯電ローラと帯電傾向の異なる補助部材との摩擦によって帯電されるように構成されていることを特徴とする除塵装置。
【請求項2】
前記帯電ローラが帯電ブラシローラからなることを特徴とする請求項1に記載の除塵装置。
【請求項3】
前記帯電ブラシローラは前記対象物に対して非接触状態で回転操作されることを特徴とする請求項2に記載の除塵装置。
【請求項4】
前記対象物に対して対向配置された第2帯電ローラを備え、前記第2帯電ローラは前記帯電ローラと異なる極性に帯電されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の除塵装置。
【請求項5】
前記第2帯電ローラが、同第2帯電ローラと帯電傾向の異なる第2補助部材との摩擦によって帯電されることを特徴とする請求項4に記載の除塵装置。
【請求項6】
前記第2帯電ローラがコロナ放電装置によって帯電されることを特徴とする請求項4に記載の除塵装置。
【請求項7】
前記帯電ローラと前記補助部材との間に生じる摩擦力を調整する摩擦力調整機構が設けられていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の除塵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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