説明

除染方法、及び、その除染方法の実施に使用する除染システム

【課題】乾式除染対象に対する乾式除染と湿式除染対象室に対する湿式除染とを同時に行えるようにする。
【解決手段】準備運転において、乾式除染対象室1の室内を過酸化水素蒸気の凝縮が生じ難い乾式除染用の温湿度状態に調整するとともに、湿式除染対象室2の室内を過酸化水素蒸気の凝縮が生じ易い湿式除染用の温湿度状態に調整し、この準備運転の完了に続く除染運転において、各除染対象室1,2に対する除染用ガスGの供給量を個別に調整することで、乾式除染対象室1において乾式湿除染状態Jdryを現出させるとともに、湿式除染対象室2において湿式除染状態Jwetを現出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリア気体に過酸化水素蒸気を混合して過酸化水素蒸気濃度が所定濃度の除染用ガスを生成し、この除染用ガスを2室以上の除染対象室に並列的に分配供給して、それら除染対象室を同時に除染する除染方法、及び、その除染方法の実施に使用する除染システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、除染方法に関して特許文献1には、過酸化水素蒸気濃度が所定濃度の除染用ガスを用途の異なる2室以上の除染対象室に並列的に分配供給して、それら用途の異なる2室以上の除染対象室を同時に除染する同時除染と、それら除染対象室の中から選択した1つの除染対象室にのみ除染用ガスを供給して、その1つの除染対象室のみを除染する単独除染とのいずれかを選択的に実施する除染方法が示されている。
【0003】
この除染方法では、同時除染を選択した場合、先ず、空調機で所定温湿度に調整した調整用空気を用途の異なる2室以上の除染対象室に並列的に分配供給することで、それら除染対象室の室内を除染に好適な共通の温湿度状態(例えば、温度25℃、相対湿度30%)に調整する。
【0004】
そして、この温湿度状態の調整後、それら2室以上の除染対象室に除染用ガスを並列的に分配供給して、それら除染対象室における室内の過酸化水素蒸気濃度を共通の目標濃度(例えば、300ppm)まで高め、これにより、それら用途の異なる2室以上の除染対象室を同時に除染する。
【0005】
一方、単独除染を選択した場合、選択した1つの除染対象室にのみ所定温湿度の調整用空気を供給することで、その除染対象室の室内を除染に好適な上記共通の温湿度状態に調整し、その後、その1つの除染対象室にのみ除染用ガスを供給して、その除染対象室の室内過酸化水素蒸気濃度をその除染対象室の用途に応じた目標濃度(例えば、800ppm)まで高め、これにより、その除染対象室のみを単独に除染する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−11926
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、過酸化水素蒸気を用いる除染には、大別して、除染用ガスに含まれる過酸化水素蒸気を除染対象室の室内において凝縮させない乾式除染と、除染用ガスに含まれる過酸化水素蒸気を除染対象室の室内において凝縮させる湿式除染とがあり、乾式除染は、室内物品の腐食を招き難い利点があるものの湿式除染に比べ除染効果が低く、一方、湿式除染は、高い除染効果を得られるものの室内物品の腐食を招き易い問題がある。
【0008】
このことから、医薬品や食品の生産施設などにおいて過酸化水素蒸気を用いた除染を行なう場合、除染対象室の用途や構造などに応じて乾式除染か湿式除染かのいずれかを選択することが必要な場合が多く、例えば、種々の機器類や物品が存在する腐食トラブルの可能性の高い製造室などでは乾式除染が採用され、その乾式除染の実施において過酸化水素蒸気の室内凝縮が不測に生じないようにすることが要求される。
【0009】
また、製造室に対する物品の搬出入に用いるパスボックスなどでは、外部からの製造室汚染を防止するため十分な除染が必要であるものの腐食トラブルの可能性は低いことから湿式除染が採用され、その湿式除染の実施において過酸化水素蒸気の室内凝縮が確実に生じるようにすることが要求される。
【0010】
しかし、特許文献1に示される前述の除染方法において同時除染を採用した場合、用途の異なる2室以上の除染対象室を同時に除染し得ることで、施設全体としての除染管理を容易にする、あるいはまた、施設全体としての除染に要する時間を短縮し得るなどの利点が得られるものの、それら同時除染を行なう除染対象室の夫々について乾式除染を採用するか湿式除染を採用するかを個別に選択することができない制約が生じる。
【0011】
そして、この制約の為、腐食トラブルの防止上、同時除染を行なう除染対象室の全てを除染効果の低い乾式除染で同時除染することが必要になり、そのことで、十分な除染が要求される一部の除染対象室(例えば、前記パスボックスなど)について除染が不十分になり易い、また結局は、その一部の除染対象室について単独除染の追加実施が必要になるなどの問題が生じ、この点、未だ同時除染について改善の余地があった。
【0012】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、合理的な除染方法をもって同時除染を行なうことにより、上記の如き問題を効果的に解消する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1特徴構成は除染方法に係り、その特徴は、
キャリア気体に過酸化水素蒸気を混合して過酸化水素蒸気濃度が所定濃度の除染用ガスを生成し、
この除染用ガスを2室以上の除染対象室に並列的に分配供給して、それら除染対象室を同時に除染する除染方法であって、
前記2室以上の除染対象室は、室内に供給される除染用ガスに含まれる過酸化水素蒸気を室内で凝縮させない乾湿除染を実施する乾式除染対象室と、室内に供給される除染用ガスに含まれる過酸化水素蒸気を室内で凝縮させる湿式除染を実施する湿式除染対象室とに組み分けし、
除染用ガスを各除染対象室に並列的に分配供給するのに先立ち、温湿度調整された調整用空気を各除染対象室に並列的に分配供給して、各除染対象室の室内を除染に適した温湿度状態に調整する準備運転を実施し、
この準備運転では、各除染対象室に対する調整用空気の供給量を個別に調整することで、前記乾式除染対象室の室内を過酸化水素蒸気の凝縮が生じ難い乾式除染用の温湿度状態に調整するとともに、前記湿式除染対象室の室内を過酸化水素蒸気の凝縮が生じ易い湿式除染用の温湿度状態に調整し、
この準備運転の完了に続き、除染用ガスを各除染対象室に並列的に分配供給する除染運転を実施し、
この除染運転では、各除染対象室に対する除染用ガスの供給量を個別に調整することで、前記乾式除染対象室において乾式除染状態を現出させるとともに、前記湿式除染対象室において湿式除染状態を現出させる点にある。
【0014】
つまり、除染対象室の室内が高温低湿で過酸化水素蒸気の濃度が低いほど、過酸化水素蒸気の室内凝縮は生じ難く、逆に、除染対象室の室内が低温高湿で過酸化水素蒸気の濃度高いほど、過酸化水素蒸気の室内凝縮は生じ易い。
【0015】
このことから、この除染方法では、温湿度調整した調整用空気を各除染対象室に並列的に分配供給する準備運転において、各除染対象室に対する調整用空気の供給量を個別に調整することで、乾式除染対象室の室内を過酸化水素蒸気の室内凝縮が生じ難い温湿度状態に予め調整しておくとともに、湿式除染対象室の室内を過酸化水素蒸気の室内凝縮が生じ易い温湿度状態に予め調整しておく。
【0016】
そして、このように室内の温湿度状態を調整した上で、除染用ガスを各除染対象室に分配供給する除湿運転において、各除染対象室に対する除染用ガスの供給量を個別に調整することで、各除染対象室における過酸化水素蒸気の室内濃度を所要濃度まで高めて、乾式除染対象室では乾式除染状態を現出させ、また、湿式除染対象室では湿式除染状態を現出させる。
【0017】
即ち、この除染方法によれば、2室以上の除染対象室の夫々について、その用途等に応じ乾式除染を採用するか湿式除染を採用するかを個別に選択して、それら2室以上の除染対象室を同時に除染することができ、これにより、十分な除染が要求される一部の除染対象室について除染が不十分になり易い、また結局は、その一部の除染対象室について単独除染の追加実施が必要になるなどの先述の問題を効果的に解消することができ、特許文献1に示される除染方法の同時除染に比べ、除染処理の確実性や機能性、施設状況に対する対応性、採用分野に対する汎用性などを一層高めることができる。
【0018】
なお、準備運転において、各除染対象室に対する調整用空気の供給量を個別に調整することで各除染対象室の室内を所要の温湿度状態に調整するのに、各除染対象室に個別に装備した室内加熱手段や室内冷却手段あるいは室内加湿手段や室内除湿手段を併用するようにしてもよい。
【0019】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成による除染方法において、
過酸化水素蒸気の室内凝縮が生じない状態で室内の過酸化水素蒸気濃度が所定の乾式除染濃度となる状態を目標乾式除染状態として設定するとともに、
過酸化水素蒸気の室内凝縮が生じた状態で室内の過酸化水素蒸気濃度が所定の湿式除染濃度となる状態を目標湿式除染状態として設定し、
前記目標乾式除染状態を前記乾式除染対象室において現出させるのに必要な乾式除染対象室の温湿度状態、及び、前記目標湿式除染状態を前記湿式除染対象室において現出させるのに必要な湿式除染対象室の温湿度状態を、準備運転時における乾式除染用の調整目標温湿度状態及び湿式除染用の調整目標温湿度状態として、実験又はシミュレーションにより予め選定しておく点にある。
【0020】
つまり、この除染方法では、準備運転において、乾式除染対象室の室内を乾式除染用の温湿度状態に調整するとともに、湿式除染対象室の室内を湿式除染用の温湿度状態に調整するのに、実験又はシミュレーションにより上記の如き乾式除染用の調整目標温湿度状態及び湿式除染用の調整目標温湿度状態を予め選定しておく。
【0021】
そして、準備運転において、乾式除染対象室の室内を乾式除染用の調整目標温湿度状態に調整するとともに、湿式除染対象室の室内を湿式除染用の調整目標温湿度状態に調整する。
【0022】
従って、この準備運転に続く除染運転において、各除染対象室に対する除染用ガスの供給量を個別に調整すれば、過酸化水素蒸気の室内凝縮が生じない状態で室内の過酸化水素蒸気濃度が所定の乾式除染濃度となる目標乾式除染状態を乾式除染対象室において精度良く的確に現出させることができ、また、過酸化水素蒸気の室内凝縮が生じた状態で室内の過酸化水素蒸気濃度が所定の湿式除染濃度となる目標湿式除染状態を湿式状態対象室において精度良く的確に現出させることができる。
【0023】
即ち、この除染方法によれば、このように目標乾式除染状態及び目標湿式除染状態を精度良く的確に現出させ得ることで、乾式除染対象室において不測に過酸化水素蒸気の室内凝縮が生じたり、また逆に、湿式除染対象室において過酸化水素蒸気の室内凝縮が生じなかったりするなどの不都合を一層確実に防止することができ、除染処理の信頼性を一層高めることができる。
【0024】
本発明の第3特徴構成は、第2特徴構成による除染方法において、
前記除染運転において、前記乾式除染対象室については、室内過酸化水素蒸気濃度の監視に基づき除染用ガスの供給量を調整して、室内過酸化水素蒸気濃度を前記所定乾式除染濃度に調整することで、前記目標乾式除染状態を現出させ、
前記湿式除染対象室については、室内過酸化水素蒸気濃度の監視に基づき除染用ガスの供給量を調整して、室内過酸化水素蒸気濃度を前記所定湿式除染濃度に調整することで、前記目標湿式除染状態を現出させる点にある。
【0025】
つまり、この除染方法では、除染運転において、乾式除染対象室で目標乾式除染状態を現出させるとともに、湿式除染対象室で目標湿式除染状態を現出させるのに、室内過酸化水素蒸気濃度の監視に基づき除染用ガスの供給量を調整して、室内過酸化水素蒸気濃度を所定乾式除染濃度や所定湿式除染濃度に調整することで、目標乾式除染状態や目標湿式除染状態を現出させるから、各除染対象室に対する除染用ガス供給量の過不足により実際の現出除染状態が目標乾式除染状態や目標湿式除染状態からずれたものになることを防止することができる。
【0026】
即ち、この除染方法によれば、乾式除染対象室及び湿式状態対象室の夫々において目標乾式除染状態及び目標湿式除染状態を一層精度良く的確に現出させることができ、除染処理の信頼性をさらに高めることができる。
【0027】
本発明の第4特徴構成は、第1特徴構成による除染方法の実施に使用する除染システムに係り、その特徴は、
キャリア気体に過酸化水素蒸気を混合して過酸化水素蒸気濃度が所定濃度の除染用ガスを生成する除染用ガス生成手段と、
この除染用ガス生成手段により生成した除染用ガスを2室以上の除染対象室に並列的に分配供給する除染用ガス給送手段と、
空調機により温湿度調整した調整用空気を前記2室以上の除染対象室に並列的に分配供給する調整用空気給送手段と、
前記調整用空気給送手段により調整用空気を各除染対象室に並列的に分配供給して、各除染対象室の室内を除染に適した温湿度状態に調整する準備運転、及び、この準備運転の完了に続き、前記除染用ガス給送手段により除染用ガスを各除染対象室に並列的に分配供給して、各除染対象室を同時に除染する除染運転の夫々を自動的に実行する運転制御手段を備え、
前記2室以上の除染対象室は、室内に供給される除染用ガスに含まれる過酸化水素蒸気を室内で凝縮させない乾湿除染を実施する乾式除染対象室と、室内に供給される除染用ガスに含まれる過酸化水素蒸気を室内で凝縮させる湿式除染を実施する湿式除染対象室とに組み分けしてあり、
前記運転制御手段は、
前記準備運転において、各除染対象室に対する調整用空気の供給量を個別に調整することで、前記乾式除染対象室の室内を過酸化水素蒸気の凝縮が生じ難い乾式除染用の温湿度状態に調整するとともに、前記湿式除染対象室の室内を過酸化水素蒸気の凝縮が生じ易い湿式除染用の温湿度状態に調整し、
かつ、この準備運転の完了に続く前記除染運転において、各除染対象室に対する除染用ガスの供給量を個別に調整することで、前記乾式除染対象室において乾式除染状態を現出させるとともに、前記湿式除染対象室において湿式除染状態を現出させる構成にしてある点にある。
【0028】
つまり、この除染システムによれば、運転制御手段に実施指令を付与するだけで、準備運転及びそれに続く除湿運転を運転制御手段に自動的に実行させて、第1特徴構成による除染方法を全自動的に容易かつ安定的な状態で実施することができる。
【0029】
本発明の第5特徴構成は、第4特徴構成による除染システムにおいて、
過酸化水素蒸気の室内凝縮が生じない状態で室内の過酸化水素蒸気濃度が所定の乾式除染濃度となる状態を目標乾式除染状態とするとともに、過酸化水素蒸気の室内凝縮が生じた状態で室内の過酸化水素蒸気濃度が所定の湿式除染濃度となる状態を目標湿式除染状態とするのに対して、
前記目標乾式除染状態を前記乾式除染対象室において現出させるのに必要な乾式除染対象室の温湿度状態、及び、前記目標湿式除染状態を前記湿式除染対象室において現出させるのに必要な湿式除染対象室の温湿度状態を、準備運転時における乾式除染用の調整目標温湿度状態及び湿式除染用の調整目標温湿度状態として、前記運転制御手段に予め設定してある点にある。
【0030】
つまり、この除染システムでは、準備運転において、乾式除染対象室の室内を乾式除染用の調整目標温湿度状態に調整するとともに、湿式除染対象室の室内を湿式除染用の調整目標温湿度状態に調整することを運転制御手段が自動的に実行する。
【0031】
即ち、この除染システムによれば、第2特徴構成による除染方法を全自動的に容易かつ安定的な状態で実施することができる。
【0032】
本発明の第6特徴構成は、第5特徴構成による除染システムにおいて、
前記運転制御手段は、前記除染運転において、
前記乾式除染対象室については、室内過酸化水素蒸気濃度の監視に基づき除染用ガスの供給量を調整して、室内過酸化水素蒸気濃度を前記所定乾式除染濃度に調整することで、前記目標乾式除染状態を現出させ、
前記湿式除染対象室については、室内過酸化水素蒸気濃度の監視に基づき除染用ガスの供給量を調整して、室内過酸化水素蒸気濃度を前記所定湿式除染濃度に調整することで、前記目標湿式除染状態を現出させる構成にしてある点にある。
【0033】
つまり、この除染システムでは、除染運転において、室内過酸化水素蒸気濃度の監視に基づき各除染対象室に対する除染用ガスの供給量を個別に調整することで、乾式除染対象室で目標乾式除染状態を現出させるとともに、湿式除染対象室で目標湿式除染状態を現出させることを運転制御手段が自動的に実行する。
【0034】
即ち、この除染システムによれば、第3特徴構成による除染方法を全自動的に容易かつ安定的な状態で実施することができる。
【0035】
本発明の第7特徴構成は、第5又は第6特徴構成による除染システムにおいて、
前記乾式除染対象室については、その乾式除染対象室の前記目標乾式除染状態を入力情報として入力するとともに、前記湿式除染対象室については、その湿式除染対象室の前記目標湿式除染状態を入力情報として入力する入力手段と、
この入力手段に入力した入力情報に基づき、所定の演算プログラムに従って、前記目標乾式除染状態を前記乾式除染対象室において現出させるのに必要な乾式除染対象室の温湿度状態、及び、前記目標湿式除染状態を前記湿式除染対象室において現出させるのに必要な湿式除染対象室の温湿度状態を演算する演算手段と、
この演算手段による演算結果を所定の出力形態で出力する出力手段とを備える演算装置を装備してある点にある。
【0036】
つまり、この除染システムであれば、目標乾式除染状態を乾式除染対象室において現出させるのに必要な乾式除染対象室の温湿度状態や、目標湿式除染状態を湿式除染対象室において現出させるのに必要な湿式除染対象室の温湿度状態を実験やシミュレーションにより求めるのに比べ、入力手段に目標乾式除染状態や目標湿式除染状態を入力情報として入力するだけで、目標乾式除染状態を前記乾式除染対象室において現出させるのに必要な乾式除染対象室の温湿度状態や、目標湿式除染状態を前記湿式除染対象室において現出させるのに必要な湿式除染対象室の温湿度状態を簡便に求めることができる。
【0037】
従って、それら乾式除染対象室の必要温湿度状態や湿式除染対象室の必要温湿度状態を、準備運転時における乾式除染用の調整目標温湿度状態及び湿式除染用の調整目標温湿度状態として運転制御手段に設定することを容易にすることができる。
【0038】
なお、この演算装置は、演算した乾式除染対象室の必要温湿度状態や湿式除染対象室の必要温湿度状態を運転制御手段に対して自動的に設定するものにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】空調運転状態を示すシステム構成図
【図2】準備運転状態を示すシステム構成図
【図3】除染運転状態を示すシステム構成図
【図4】準備運転及び除湿運転の制御フローチャート
【図5】別実施形態を示す演算装置の構成図
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、無菌清浄雰囲気下での製造が要求される医薬品や食品などの製品の製造施設を示し、この製造施設には製品の製造を行なう製造室1と、この製造室1への入退室において通過するパスルーム2とが設けられている。
【0041】
製造室1とパスルーム2との間には製造室1への入退室に用いるドア3が設けられ、パスルーム2と外部との間にはパスルーム2への外部からの入退室に用いるドア4が設けられており、これらドア3,4は製造室1及びパスルーム2の汚染を防止するため常閉式の気密ドアにしてある。
【0042】
また、製造室1には、種々の製造用機器が配備されるとともに、特に清浄度の高い局所清浄域を製造室1内に形成するクリーンブース5が配備されている。
【0043】
このクリーンブース5は、ブース内部5aの空気RAを床部の排気口5bから排出して、この排出空気RAを循環ファン5cにより循環路5dを通じブース天井裏部のチャンバ部5eに送り、このチャンバ部5eに送り込まれた空気RAをブース天井部の高性能フィルタ5fを通じてブース内部5aに下向き層流状に吹き出しことで、ブース内部5aを清浄度の高い局所清浄域にするものである。
【0044】
製品の製造を行なう操業時間帯において製造室1及びパスルーム2の夫々を換気するとともに温湿度調整する空調システムについては、各室1,2の夫々に給気口6及び排気口7を設け、各室1,2の給気口6には高性能フィルタFを装備し、これら給気口6は、空調機8から送出される空調用空気SAを導く空調用の主給気路9に対して空調用の分岐給気路9aを通じ並列的に接続してある。
【0045】
一方、各室1,2の排気口7は、空調用の分岐排気路10aを通じて空調用の主排気路10に並列的に接続してある。
【0046】
空調用の主給気路9には空調用の給気ファン11を介装し、空調用の主排気路10には空調用の排気ファン12を介装してあり、空調用主排気路10の下流側部分からは空調用の還気路13を分岐し、この空調用の還気路13は空調用の外気導入路14とともに空調機8の空気入口部に接続してある。
【0047】
そして、各室1,2に対する空調用分岐給気路9aの夫々には、各室1,2に対する空調用空気SAの供給量qを調整する空調用の給気側風量調整ダンパ15を介装し、各室1,2に対する空調用分岐排気路10aの夫々には、各室1,2から排出する室内空気RAの排出量q′を調整する空調用の排気側風量調整ダンパ16を介装してある。
【0048】
また、空調用の主給気路9及び空調用の主排気路10には、それら空調用の主給気路9及び空調用の主排気路10を遮断する気密ダンパ17,18を介装してある。
【0049】
つまり、この空調システム(図1参照)では、気密ダンパ17,18を開いて、空調用の給排気ファン11,12及び空調機8を運転することで、空調用外気導入路14を通じて外気OAを空調機8に導入するとともに、空調用還気路13を通じて各室1,2からの排出室内空気RAの一部を還気空気RA′として空調機8に導入し、これら導入外気OAと導入還気空気RA′との混合空気を空調機8で温湿度調整して所定温湿度(温度ts,rs)の空調用空気SAを生成し、この空調用空気SAを空調用主給気路9、空調用分岐給気路9aを通じて各室1,2に対し並列に分配供給する。
【0050】
そして、これら空調用空気SAを給気口6から各室1,2の室内に供給する際に、給気口6に装備の高性能フィルタFにより供給空気SAを清浄化するとともに、各室1,2に供給する空調用空気SAの供給量qを空調用の給気側風量調整ダンパ15により調整し、これにより、各室1,2の室内清浄度を高めるとともに、各室1,2の室内を各室1,2について設定してある空調用の設定温湿度状態(温度t1,湿度r1),(温度t2,湿度t2)に調整する。
【0051】
また、空調用空気SAの供給に伴い排気口7を通じて各室1,2から排出される室内空気RAの排出量q′を空調用の排気側風量調整ダンパ16により調整し、これにより、各室1,2の室圧pを各室1,2について設定してある設定室圧p1,p2に調整し、この設定室圧p1,p2として製造室1の設定室圧p1をパスルーム2の設定室圧p2より高くしておくことで、パスルーム2から製造室1への空気侵入による製造室1の汚染を防止する。
【0052】
なお、空調用空気SAの供給量調整については、空調用分岐給気路9aに装備した風量センサの検出情報に基づき空調用給気側風量調整ダンパ15の開度を自動調整して各室1,2に対する空調用空気SAの供給量qを各室1,2について設定してある設定供給量q1,q2に調整する方式を採用する。
【0053】
また、各室1,2の空調負荷の変動が比較的大きい場合は、各室1,2に装備した温湿度センサ19の検出情報に基づき空調用給気側風量調整ダンパ15の開度を自動調整して各室1,2に対する空調用空気SAの供給量qを変更調整することで、各室1,2の室内温湿度状態(t,r)を各室1,2の空調用設定温湿度状態(t1,r1),(t2,r2)に調整する方式を採用してもよい。
【0054】
一方、各室1,2の室圧調整については、各室1,2に装備した室圧センサの検出情報に基づき空調用排気側風量調整ダンパ16の開度を自動調整して各室1,2の室内空気RAの排出量q′を微調整的に変更調整することで、各室1,2の室圧pを各室1,2の設定室圧p1,p1に調整する方式を採用する。
【0055】
この製造施設には、上記の空調システムに加え除染システムを装備してあり、この除染システムにより製造室1及びパスルーム2の室内を定期的に除染処理する。
【0056】
この除染システムによる除染処理では、先ず、所定温湿度の調整用空気SA′を各室1,2に対し並列的に分配供給して各室1,2の室内を除染に適した温湿度状態(温度tx,rx),(ty,ry)に調整する準備運転を実施し、この準備運転の完了に続いて、過酸化水素蒸気Vを含む除染用ガスGを各室1,2に対し並列的に分配供給して各室1,2の室内を除染する除染運転を実施する。
【0057】
除染システムは(図3参照)、キャリア気体生成手段と除湿用ガス生成手段とを備え、キャリア気体生成手段としては、外気OAを除湿するとともに、その除湿に続き加熱(再熱)して所定温湿度に調整し、この調整外気をキャリア空気CA(キャリア気体)として送出する除染用空調機20を装備してある。
【0058】
そして、除染用ガス生成手段としては、過酸化水素水を蒸発させることでキャリア空気CAに過酸化水素蒸気Vを混合して、過酸化水素蒸気濃度dが所定濃度の除染用ガスGを生成する除染用ガス生成装置21を装備してある。
【0059】
また、除染システムは、準備運転において所定温湿度の調整用空気SA′を除染対象室としての製造室1及びパスルーム2に並列的に分配供給する調整用空気送給手段、及び、除染運転において除染用ガス生成装置21で生成した除染用ガスGを製造室1及びパスルーム2に並列的に分配供給する除染用ガス給送手段を備えており、調整用空気送給手段としては前述の空調システムを兼用利用する。
【0060】
一方、除染用ガス送給手段については、各室1,2及びクリーンブース5の循環路5dにガス供給口22を設け、これらガス供給口22は、除染用ガス生成装置21で生成した除染用ガスGを導く除染用の主給気路24に対して除染用の分岐給気路24aを通じ並列的に接続してある。
【0061】
また、除染用の主排気路25から並列的に分岐した除染用の分岐排気路25aを各室1,2に対する空調用分岐排気路10aの夫々に接続してある。
【0062】
除染用主排気路25の下流端は除染用主給気路24の上流側端部に接続して、除染用主給気路24と除染用主排気路25とで除染用ガスGの循環路を構成するようにしてあり、除染用の主給気路24には循環ファン26と高性能フィルタ27を介装してある。
【0063】
また、除染用主給気路24の下流端と除染用主排気路25の上流端とを接続するバイパス路28を設け、このバイパス路28には、このバイパス路28を通じて除染用主給気路24の側から除染用主排気路25の側へバイパスさせる除染用ガスGの風量を調整するバイパス風量調整弁29を介装してある。
【0064】
そして、各室1,2及びクリーンブース5に対する除染用分岐給気路24aの夫々には、各室1,2及びクリーンブース5に対する除染用ガスGの供給量gを調整する除染用の給気側風量調整ダンパ30を介装し、各室1,2に対する除染用分岐排気路25aの夫々には、各室1,2から排出する室内除染用ガスVの排出量g′を調整する除染用排気側風量調整ダンパ31を介装してある。
【0065】
この除染システムを用いた各室1,2の除染処理について、過酸化水素蒸気Vによる腐食トラブルの可能性がある製造室1は、室内に供給される除染用ガスGに含まれる過酸化水素蒸気Vを室内で凝縮させない乾湿除染を実施する乾式除染対象室とし、一方、高い除染効果が要求されるとともに、過酸化水素蒸気Vによる腐食トラブルの虞のないパスルーム2は、室内に供給される除染用ガスGに含まれる過酸化水素蒸気Vを室内で凝縮させる湿式除染を実施する湿式除染対象室とする。
【0066】
そして、乾式除染対象室としての製造室1については、過酸化水素蒸気Vの室内凝縮が生じない状態で室内の過酸化水素蒸気濃度dが所定の乾式除染濃度ddryとなる状態を目標乾式除染状態Jdryとして設定し、この目標乾式除染状態Jdryを製造室1において現出させるのに必要な製造室1の室内温湿度状態(温度tx,湿度rx)を実験やシミュレーションにより予め検証し、この検証により製造室1において目標乾式除染状態Jdryを現出できることが確認された製造室1の室内温湿度状態(tx,rx)を,準備運転時における乾式除染用の調整目標温湿度状態trxとして予め選定してある。
【0067】
同様に、湿式除染対象室としてのパスルーム2については、過酸化水素蒸気Vの室内凝縮が生じた状態で室内の過酸化水素蒸気濃度dが所定の湿式除染濃度dwetとなる状態を目標湿式除染状態Jwetとして設定し、この目標湿式除染状態Jwetをパスルーム2において現出させるのに必要なパスルーム2の室内温湿度状態(温度ty,湿度ry)を実験やシミュレーションにより予め検証し、この検証によりパスルーム2において目標湿式除染状態Jwetを現出できることが確認されたパスルーム2の室内温湿度状態(ty,ry)を,準備運転時における湿式除染用の調整目標温湿度状態tryとして予め選定してある。
【0068】
32は運転制御手段としての制御装置であり、この制御装置は、製造施設の操業時間帯には製造室1及びパスルーム2に対する空調運転において空調システムの運転制御を司り、一方、除染処理の実行指令が付与されると製造室1及びパスルーム2に対する除染処理を自動的に実行する。
【0069】
具体的には図4に示すように、この制御装置32は、除染処理の実行指令が付与されると、先ず、準備運転として図2に示す如く、空調運転と同様に、気密ダンパ17,18を開いて、空調用の給排気ファン11,12及び空調機8を運転することで、空調用外気導入路14を通じて外気OAを空調機8に導入するとともに、空調用還気路13を通じて各室1,2からの排出室内空気RAの一部を還気空気RA′として空調機8に導入し、これら導入外気OAと導入還気空気RA′との混合空気を空調機8で温湿度調整して所定温湿度(ts′,rs′)の調整用空気SA′を生成し、この調整用空気SA′を空調用主給気路9、空調用分岐給気路9aを通じて各室1,2に対し並列に分配供給する。
【0070】
そして、この準備運転において、制御装置32は、各室1,2に装備した温湿度センサ19の検出情報に基づき、各室1,2に対する空調用給気側風量調整ダンパ15の開度を調整して各室1,2に対する調整用空気SA′の供給量qを個別に調整することで、制御室1については、その室内を上記乾式除染用の調整目標温湿度状態trx(tx,rx)に調整し、また、パスルーム2については、その室内を上記湿式除染用の調整目標温湿度状態try(ty,ry)に調整する。
【0071】
なお、空調用の排気側風量調整ダンパ16については空調運転時と同様、その開度の調整により各室1,2の室圧pを設定室圧p1,p2に調整する。
【0072】
また、この準備運転では、空調用外気導入路14に介装のダンパDa及び空調用主排気路10に介装のダンパDbを閉じるとともに、空調用還気路13に介装のダンパDcを開いた状態で、空調用の給排気ファン11,12及び空調機8を運転して、調整用空気SA′を全循環させるようにしてもよい。
【0073】
この室内温湿度の調整で、製造室1の室内が乾式除染用の調整目標温湿度状態trx(tx,rx)になり、パスルーム2の室内が湿式除染用の調整目標温湿度状態try(ty,ry)になったことが温湿度センサ19により確認されると、制御装置32は、空調用給排気ファン11,12及び空調機8の運転を停止して準備運転を終了する。
【0074】
次に、制御装置32は、気密ダンパ17,18を閉じて空調用の主給気路9及び空調用の主排気路10を遮断し、その遮断状態において除染用空調機20、除染用ガス生成装置21、循環ファン26を運転し、除染用ガス生成装置21で生成した過酸化水素蒸気濃度dが所定濃度で所定温湿度の除染用ガスGを除染用主給気路24、除染用分岐給気路24aを通じてガス供給口22から各室1,2及びクリーンブース5の循環路5dに対し並列的に分配供給する除染運転を開始する。
【0075】
この除染運転において、制御装置32は、各室1、2に装備した濃度センサ33の検出情報に基づき、各室1,2及びクリーンブース5に対する除染用給気側風量調整ダンパ30の開度及び各室1,2に対する除染用排気側風量調整ダンパ31の開度を自動調整して、各室1,2及びクリーンブース5に対する除染用ガスGの供給量gを調整する。
【0076】
そして、このガス供給量の調整により、製造室1及びその内部のクリーンブース5については、過酸化水素蒸気Vの室内凝縮が生じない範囲で室内過酸化水素蒸気濃度dを前記所定乾式除染濃度ddryに調整し、これにより、準備運転で乾式除染用の調整目標温湿度状態trx(tx,rx)に調整した製造室1及びその内部のクリーンブース5において前記目標乾式除染状態Jdryを現出させ、その目標乾式除染状態Jdryを所定時間継続させる。
【0077】
また、このガス供給量の調整により、パスルーム2については、室内過酸化水素蒸気濃度dを徐々に高めて、過酸化水素蒸気Vの室内凝縮を伴う状態で室内過酸化水素蒸気濃度dを前記所定湿式除染濃度dwetに調整し、これにより、準備運転で湿式除染用の調整目標温湿度状態try(ty,ry)に調整したパスルーム2において前記目標湿式除染状態Jwet現出させ、その目標湿式除染状態Jwetを所定時間継続させる。
【0078】
つまり、この除染システムでは、製造室1の乾式除染とパスルーム2の湿式除染とを同時に行なうようにしてある。
【0079】
除染運転が終了すると、制御装置32は、除染用空調機20、除染用ガス生成装置21、循環ファン26の運転を停止して各室1,2に対する除染用ガスGの供給を停止した後、気密ダンパ17,18を開くとともに、空調用還気路13に介装のダンパDcを閉じた状態で空調用給排気ファン11,12及び空調機8を運転して各室1,2の室内に残る除染用ガスGを排除する希釈運転を実施する。
【0080】
そして、この希釈運転において各室1,2の濃度センサ33により各室1,2の室内過酸化水素蒸気濃度dが十分に低下したことが確認されると、希釈運転を終了して各室1,2に対する除染処理を完了し、製品の製造及び空調運転の実施が可能な状態に戻る。
【0081】
なお、制御装置32は除染処理の実行において、除染運転の開始前に、除染用ガス生成装置21を停止し、かつ、各室1,2に対する除染用給気側風量調整ダンパ30及び除染用排気側風量調整ダンパ31を閉じた状態で、除染用空調機20及び循環ファン26を運転して、除染用空調機20で生成した高温のキャリア空気CAのみを除染用主給気路24,バイパス路28、除染用主排気路25を通じて循環させる立ち上げ運転を所定時間だけ実施する。
【0082】
即ち、この立ち上げ運転により、除染運転に先立ち除染用主給気路24,バイパス路28、除染用主排気路25の路内温度を高めておくことで、除染運転の際に除染用ガスGに含まれる過酸化水素蒸気Vが除染用主給気路24やバイパス路28あるいは除染用主排気路25において凝縮してしまうことを防止する。
【0083】
上記除染システムでは、制御装置32に対する指令により、製造室1あるいはパスルーム2を単独に除染処理することも可能であり、また、制御装置32に対する設定により各室1,2について、乾式除染を採用するか湿式除染を採用するかの選択も個別に行なうことができる。
【0084】
〔別の実施形態〕
次に、別実施形態を列記する。
【0085】
準備運転において乾式除染対象室1の室内温湿度状態を過酸化水素蒸気Vの凝縮が生じ難い乾式除染用の温湿度状態に調整するとともに、湿式除染対象室2の室内温湿度状態を過酸化水素蒸気Vの凝縮が生じる湿式除染用の温湿度状態に調整するのに、各除染対象室1,2に対する調整用空気SA′の供給量を個別に調整することに加え、各除染対象室1,2に個別装備した室内加熱手段や室内冷却手段あるいは室内除湿手段や室内加湿手段を併用するようにしてもよい。
【0086】
前述の実施形態では、空調用空気SAの給排路とは別に除染用ガスGの専用給排路を設ける例を示したが、場合によっては、空調用空気SAの給排路を除染用ガスGの給排路に兼用するシステム構成を採用してもよい。
【0087】
また、前述の実施形態では、準備運転及びそれに続く除染運転を運転制御手段32により全自動的に実施する例を示したが、準備運転及び除染運転における一部を運転制御手段32により自動的に行ない、他部を人為的な操作で行なうようにしたり、準備運転及び除染運転の全部を人為的な操作で行なうようにしてもよい。
【0088】
前記した目標乾式除染状態Jdryを乾式除染対象室1において現出させるのに必要な乾式除染対象室1の温湿度状態trx(乾式除染用の調整目標温湿度状態)や、前記した目標湿式除染状態Jwetを湿式除染対象室2において現出させるのに必要な湿式除染対象室2の温湿度状態try(湿式除染用の調整目標温湿度状態try)を求めるのに、実験やシミュレーションに代えて簡易には、それら必要温湿度状態trx、tryを演算する演算装置を用いてもよい。
【0089】
即ち、図5に示す如く、乾式除染対象室1については、その乾式除染対象室1の目標乾式除染状態Jdryを入力情報として所定の入力操作により入力し、また、湿式除染対象室2については、その湿式除染対象室2の目標湿式除染状態Jdryを入力情報として所定の入力操作により入力する入力手段34aと、この入力手段34aに入力した入力情報に基づき所定の演算プログラムに従って乾式除染対象室1の必要温湿度状態trx(tx,ry)や湿式除染対象室2の必要温湿度状態try(ty,ry)を自動的に演算する演算手段34bと、この演算手段34bによる演算結果を所定の出力形態で出力する出力手段34cとを備える演算装置34を用いるようにしてもよい。
【0090】
また、この演算装置34は、演算した乾式除染対象室1の必要温湿度状態trx(tx,rx)や湿式除染対象室2の必要温湿度状態try(ty,ry)を、準備運転時における乾式除染用の調整目標温湿度状態及び湿式除染用の調整目標温湿度状態として運転制御手段32に対して自動的に設定するものにしてもよい。
【0091】
乾式除染対象室1の乾式除染と湿式除染対象室2の湿式除染とを同時に行なうことにおいて、乾式除染対象室1として組み分けする除染対象室の室数、及び、湿式除染対象室2として組み分けする除染対象室の室数は夫々、一室に限られるものではなく、複数室であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明による除染方法及び除染システムは、過酸化水素蒸気を用いた除染処理が必要な2室以上の除染対象室を有する施設であれば、各種分野における種々の用途の施設に対して適用することができる。
【符号の説明】
【0093】
CA キャリア気体
V 過酸化水素蒸気
d 過酸化水素蒸気濃度
G 除染用ガス
1 乾式除染対象室
2 湿式除染対象室
SA′ 調整用空気
q 調整用空気の供給量
trx 乾式除染用の温湿度状態(調整目標温湿度状態)
try 湿式除染用の温湿度状態(調整目標温湿度状態)
g 除染用ガスの供給量
ddry 所定の乾式除染濃度
Jdry 目標乾式除染状態
dwet 所定の湿式除染濃度
Jwet 目標湿式除染状態
21 除染用ガス生成手段
24,24a 除染用ガス給送手段
25,25a 除染用ガス給送手段
26 除染用ガス給送手段
30,31 除染用ガス給送手段
8 空調機
9,9a 調整用空気給送手段
10,10a 調整用空気給送手段
11,12 調整用空気給送手段
15,16 調整用空気給送手段
32 運転制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア気体に過酸化水素蒸気を混合して過酸化水素蒸気濃度が所定濃度の除染用ガスを生成し、
この除染用ガスを2室以上の除染対象室に並列的に分配供給して、それら除染対象室を同時に除染する除染方法であって、
前記2室以上の除染対象室は、室内に供給される除染用ガスに含まれる過酸化水素蒸気を室内で凝縮させない乾湿除染を実施する乾式除染対象室と、室内に供給される除染用ガスに含まれる過酸化水素蒸気を室内で凝縮させる湿式除染を実施する湿式除染対象室とに組み分けし、
除染用ガスを各除染対象室に並列的に分配供給するのに先立ち、温湿度調整された調整用空気を各除染対象室に並列的に分配供給して、各除染対象室の室内を除染に適した温湿度状態に調整する準備運転を実施し、
この準備運転では、各除染対象室に対する調整用空気の供給量を個別に調整することで、前記乾式除染対象室の室内を過酸化水素蒸気の凝縮が生じ難い乾式除染用の温湿度状態に調整するとともに、前記湿式除染対象室の室内を過酸化水素蒸気の凝縮が生じ易い湿式除染用の温湿度状態に調整し、
この準備運転の完了に続き、除染用ガスを各除染対象室に並列的に分配供給する除染運転を実施し、
この除染運転では、各除染対象室に対する除染用ガスの供給量を個別に調整することで、前記乾式除染対象室において乾式除染状態を現出させるとともに、前記湿式除染対象室において湿式除染状態を現出させる除染方法。
【請求項2】
過酸化水素蒸気の室内凝縮が生じない状態で室内の過酸化水素蒸気濃度が所定の乾式除染濃度となる状態を目標乾式除染状態として設定するとともに、
過酸化水素蒸気の室内凝縮が生じた状態で室内の過酸化水素蒸気濃度が所定の湿式除染濃度となる状態を目標湿式除染状態として設定し、
前記目標乾式除染状態を前記乾式除染対象室において現出させるのに必要な乾式除染対象室の温湿度状態、及び、前記目標湿式除染状態を前記湿式除染対象室において現出させるのに必要な湿式除染対象室の温湿度状態を、準備運転時における乾式除染用の調整目標温湿度状態及び湿式除染用の調整目標温湿度状態として、実験又はシミュレーションにより予め選定しておく請求項1の除染方法。
【請求項3】
前記除染運転において、前記乾式除染対象室については、室内過酸化水素蒸気濃度の監視に基づき除染用ガスの供給量を調整して、室内過酸化水素蒸気濃度を前記所定乾式除染濃度に調整することで、前記目標乾式除染状態を現出させ、
前記湿式除染対象室については、室内過酸化水素蒸気濃度の監視に基づき除染用ガスの供給量を調整して、室内過酸化水素蒸気濃度を前記所定湿式除染濃度に調整することで、前記目標湿式除染状態を現出させる請求項2記載の除染方法。
【請求項4】
請求項1記載の除染方法の実施に使用する除染システムであって、
キャリア気体に過酸化水素蒸気を混合して過酸化水素蒸気濃度が所定濃度の除染用ガスを生成する除染用ガス生成手段と、
この除染用ガス生成手段により生成した除染用ガスを2室以上の除染対象室に並列的に分配供給する除染用ガス給送手段と、
空調機により温湿度調整した調整用空気を前記2室以上の除染対象室に並列的に分配供給する調整用空気給送手段と、
前記調整用空気給送手段により調整用空気を各除染対象室に並列的に分配供給して、各除染対象室の室内を除染に適した温湿度状態に調整する準備運転、及び、この準備運転の完了に続き、前記除染用ガス給送手段により除染用ガスを各除染対象室に並列的に分配供給して、各除染対象室を同時に除染する除染運転の夫々を自動的に実行する運転制御手段を備え、
前記2室以上の除染対象室は、室内に供給される除染用ガスに含まれる過酸化水素蒸気を室内で凝縮させない乾湿除染を実施する乾式除染対象室と、室内に供給される除染用ガスに含まれる過酸化水素蒸気を室内で凝縮させる湿式除染を実施する湿式除染対象室とに組み分けしてあり、
前記運転制御手段は、
前記準備運転において、各除染対象室に対する調整用空気の供給量を個別に調整することで、前記乾式除染対象室の室内を過酸化水素蒸気の凝縮が生じ難い乾式除染用の温湿度状態に調整するとともに、前記湿式除染対象室の室内を過酸化水素蒸気の凝縮が生じ易い湿式除染用の温湿度状態に調整し、
かつ、この準備運転の完了に続く前記除染運転において、各除染対象室に対する除染用ガスの供給量を個別に調整することで、前記乾式除染対象室において乾式除染状態を現出させるとともに、前記湿式除染対象室において湿式除染状態を現出させる構成にしてある除染システム。
【請求項5】
過酸化水素蒸気の室内凝縮が生じない状態で室内の過酸化水素蒸気濃度が所定の乾式除染濃度となる状態を目標乾式除染状態とするとともに、過酸化水素蒸気の室内凝縮が生じた状態で室内の過酸化水素蒸気濃度が所定の湿式除染濃度となる状態を目標湿式除染状態とするのに対して、
前記目標乾式除染状態を前記乾式除染対象室において現出させるのに必要な乾式除染対象室の温湿度状態、及び、前記目標湿式除染状態を前記湿式除染対象室において現出させるのに必要な湿式除染対象室の温湿度状態を、準備運転時における乾式除染用の調整目標温湿度状態及び湿式除染用の調整目標温湿度状態として、前記運転制御手段に予め設定してある請求項4記載の除染システム。
【請求項6】
前記運転制御手段は、前記除染運転において、
前記乾式除染対象室については、室内過酸化水素蒸気濃度の監視に基づき除染用ガスの供給量を調整して、室内過酸化水素蒸気濃度を前記所定乾式除染濃度に調整することで、前記目標乾式除染状態を現出させ、
前記湿式除染対象室については、室内過酸化水素蒸気濃度の監視に基づき除染用ガスの供給量を調整して、室内過酸化水素蒸気濃度を前記所定湿式除染濃度に調整することで、前記目標湿式除染状態を現出させる構成にしてある請求項5記載の除染システム。
【請求項7】
前記乾式除染対象室については、その乾式除染対象室の前記目標乾式除染状態を入力情報として入力するとともに、前記湿式除染対象室については、その湿式除染対象室の前記目標湿式除染状態を入力情報として入力する入力手段と、
この入力手段に入力した入力情報に基づき、所定の演算プログラムに従って、前記目標乾式除染状態を前記乾式除染対象室において現出させるのに必要な乾式除染対象室の温湿度状態、及び、前記目標湿式除染状態を前記湿式除染対象室において現出させるのに必要な湿式除染対象室の温湿度状態を演算する演算手段と、
この演算手段による演算結果を所定の出力形態で出力する出力手段とを備える演算装置を装備してある請求項5又は6記載の除染システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−152380(P2012−152380A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14139(P2011−14139)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000002934)武田薬品工業株式会社 (396)
【出願人】(000149790)株式会社大気社 (136)
【Fターム(参考)】