説明

除細動装置による緊急呼び出しのための登録情報

除細動装置によって位置決めされる緊急呼び出しのための情報を記録する技術が開示される。除細動装置は、除細動器を含み、さらに、除細動ベースも含む。ユーザは、除細動装置が設置された位置といった情報を入力し、その情報は、除細動装置のメモリに格納される。除細動装置は、ユーザに情報の入力を促す。除細動装置は、ユーザによって話された言葉を受け取り、且つ、その話された言葉を、情報を含む音声録音として格納する。除細動装置は、緊急応答センターに対して、音声の録音を含む登録された情報を提供する。除細動装置は、例えば、除細動器が患者を治療するために始動されている指示を受け取るのに応答して、音声録音を含む情報を緊急応答センターに提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除細動器に関し、特に、自動および半自動の体外式除細動器に関する。
【背景技術】
【0002】
心室細動(ventricular fibrillation)は、心臓の心室(ventricle)の急速な、不規則な、調和の取れていない脱分極によって特徴付けられる。特に、心室細動は、心臓の心室内の動作が不調和となって殆ど血液を送り出すことができなくなるため、生死に関わる。もし、治療をしなければ、細動になっている患者は、数分の内に死に至るであろう。
【0003】
体外式除細動器(external defibrillator)は、細動になっている心臓に電気パルスを加えるために使用される。パルスは、心臓を脱分極化(depolarize)して心臓に通常の洞調律(sinus rhythm)を回復させる。心室細動の始まりと治療との間の時間を削減するために、スポーツ会場,コンサートホール,美術館,ゴルフコース,ショッピングモール,レストラン,職場等といった場所で、自動または半自動の体外式除細動器の導入がますます進められている。そのような除細動器が始動および設けられることによって、訓練されていない普通の人や最小限の訓練を受けただけの最初に対応する人が、心室細動を起こしている患者に対してすぐに除細動の治療を行うことになるかも知れない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、緊急応答センターと敏速にコンタクトされ、患者に対してより十分な治療を行うために医療補助員(paramedics)等を送ってもらうことも大切である。除細動器のユーザは、除細動治療を行う前に、電話のある場所まで行き、または、緊急応答センターに電話するのに時間が掛かるかも知れず、除細動治療を行った後に電話をしたり、或いは、見物人が新たに電話をするかも知れない。医療補助員の到着を待っていたのでは、医療の施しを遅延させることになる。さらに、緊急応答センターに電話した誰かが患者が居る場所を十分に説明する能力がない場合、或いは、緊急応答センターに連絡する電話の位置を示す緊急応答センターの様々な表示は、患者が居る場所と相互に関連していないかも知れず、さらに、医療補助員の到着を遅らせることになる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一般的に、本発明は、除細動装置によって位置決めされる緊急呼び出しのための情報を記録する技術に関する。除細動装置は、除細動器を含み、さらに、除細動ベースも含むかも知れない。除細動ベースは、除細動器を支持するためのものであり、除細動器を壁に取り付けるのを可能にする。いくつかの実施例において、除細動器または除細動ベースの何れかは、緊急呼び出し情報を記録し、そして、緊急呼び出しを行う。
【0006】
ユーザは、例えば、除細動装置が特別な場所に設置されると、その除細動装置が設置された位置といった情報を登録し、その情報は、除細動装置のメモリに格納される。除細動装置は、設置専門家のようなユーザに情報の登録を促す。除細動装置は、ユーザによって話された言葉を受け取り、且つ、その話された言葉を、情報を含む音声として録音する。
【0007】
除細動装置は、緊急応答センターに対して、音声の録音を含む登録された情報を提供する。除細動装置は、例えば、除細動器が患者を治療するために始動されている指示を受け取るのに応答して、情報を提供する。この除細動器の始動は、ベースからの除細動器の移動、除細動器の電源投入、除細動器に繋がれた電極セットの患者への装着、或いは、使用を示す他のイベントによって示される。
【0008】
1つの実施態様において、本発明は、情報が除細動装置から緊急応答センターに伝達される方法に適用される。予め登録された音声メッセージは、伝達される情報に含まれる。その音声メッセージは、除細動装置の設置場所を特定する情報を含む。
【0009】
別の実施態様において、本発明は、メモリおよびプロセッサを含む装置に適用される。メモリは、予め録音された音声メッセージを格納する。プロセッサは、除細動装置から緊急応答センターに、予め録音された音声メッセージを含む情報を伝達する。その音声メッセージは、除細動装置の設置場所を特定する情報を含む。
【0010】
別の実施態様において、本発明は、緊急呼び出し情報を含むユーザによって話された言葉が受け取られる方法に適用される。話された言葉の少なくとも幾つかは、緊急呼び出し情報を含む音声メッセージとしてメモリに格納される。この方法は、ユーザに対して緊急呼び出し情報を含む声音応答を提供するのを促すことを含む。その言葉は、受け取られる除細動装置の場所の説明を含み、また、音声メッセージは、その説明を含む。
【0011】
別の実施態様において、本発明は、マイクロフォン、プロセッサおよびメモリを含む装置に適用される。マイクロフォンは、ユーザによって話された言葉を検出する。プロセッサは、マイクロフォンを介した緊急呼び出し情報を含むユーザによって話された言葉を受け取る。メモリは、緊急呼び出し情報を含む音声メッセージを格納する。装置は、ユーザに対して音声プロンプトを提供するスピーカも含むかも知れない。プロセッサは、ユーザに対してスピーカを介した緊急呼び出し情報を含む声音応答を提供するのを促す。プロセッサにより受け取られた話された言葉は、除細動装置の場所の説明を含み、また、音声メッセージは、その説明を含む。
【0012】
別の実施態様において、本発明は、除細動器および除細動ベースを含むシステムに適用される。除細動器は、患者に除細動治療を提供する。除細動ベースは、除細動器が始動されている指示を受け取り、予め登録された音声メッセージを含む情報を緊急応答センターに伝達する。音声メッセージは、システムの設置場所を特定する情報を含む。
【0013】
別の実施態様において、本発明は、除細動装置が設置される場所における方法に適用される。場所に関する情報は、装置のメモリに入力される。
【0014】
本発明は、1つ以上の長所を提供する。例えば、緊急応答センターに対して登録された情報、特に、位置情報を提供することによって、除細動装置は、該除細動装置が使用される医療の緊急性により素早く応答して医療補助員を許容することができる。除細動装置を使用する人は、電話の場所に行ったり、位置情報を伝えたりといった時間や努力を使うよりも、一層患者の治療に集中することができる。もし、登録された緊急呼び出し情報が位置情報を含めば、医療補助員に対する応答時間は、さらに改善される。
【0015】
ユーザに対して緊急呼び出し情報を与えることは、ユーザの観点から使用の工程を簡略化する。ユーザに対して音声応答を与えることは、使用の工程をさらに簡略化する。ユーザによって提供される全てまたは幾つかの情報は、除細動装置が始動されたときに緊急応答センターに伝えられる。緊急呼び出し情報を音声録音の形式により緊急応答センターに提供することで、除細動装置は、音声呼び出しを処理するためだけの緊急応答センターの存在とより一層一致協力することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は本発明に係る除細動装置12が緊急応答センター14に緊急呼び出しを行う環境10を示すブロック図である。除細動装置12は、除細動装置の位置といった情報を緊急応答センター14に提供するために緊急呼び出しを行う。緊急応答センター14は、緊急医療システム(EMS)の派遣センターであり、該緊急応答センター14に情報を提供することによって、除細動装置12は、該除細動装置12が使用される医療の緊急性により素早く応答して医療補助員を可能とすることができる。除細動装置12は、緊急呼び出しを行って、情報を、公衆電話交換ネットワーク(PSTN:public switched telephone network)、および/または、移動電話ネットワークを含む電話回線16を介して緊急応答センター14へ提供する。
【0017】
ユーザ(図示しない)は、除細動装置12を使用する緊急呼び出し情報を入力し、除細動装置12は、その緊急呼び出し情報を格納する。ユーザは、例えば、除細動装置12をその場所に設置し、その設置の間に、該除細動装置12の位置に関する情報を含む緊急呼び出し情報を入力する。幾つかの実施例において、除細動装置12は、設置専門家のようなユーザに緊急呼び出し情報の入力を促す。除細動装置は、ユーザに対して緊急呼び出し情報を入力する処理を介してユーザに一連の案内を提供し、ユーザの観点から使用の工程を簡略化する。
【0018】
除細動装置12の幾つかの実施例において、ユーザは、緊急呼び出し情報を言葉で入力する。除細動装置12は、ユーザによって発せられた言葉を音声録音し、緊急応答センター14に対して再生する。そのような除細動装置12の実施例は、さらに、ユーザの観点から使用の工程を簡略化し、例えば、オペレータが電話に応答して医療補助員を派遣する緊急応答センター14といった音声呼び出しだけを処理するのに適した現存する緊急応答センター14に対して緊急呼び出し情報を提供することができる。
【0019】
図2は本発明の一実施例に係る除細動装置12の例を示す斜視図である。除細動装置12は、除細動器20を含んでいる。除細動器20は、電極セット22を介して心臓の除細動を受ける患者に電気パルスの形式で治療を施すために使用される。除細動器20は、自動または半自動の外部除細動器である。
【0020】
除細動装置12は、除細動ベース24も含んでいる。除細動ベース24は、除細動器20が使用されていないとき、該除細動器20を支持し、或いは、別な方法で物理的に除細動器20と相互に作用する。除細動ベース24は、図2に描かれるように、除細動装置12が壁等に取り付けられるように、除細動器20の支持を提供する。
【0021】
しかしながら、図2に示される除細動ベース24の構成は、単なる典型的なものである。例えば、幾つかの実施例において、除細動ベース24は、除細動器20にアクセス可能とするドアや壊すことのできるガラスパネルを有するケースを含む。他の実施例において、除細動装置12は、垂直構造では取り付けられないかも知れない。さらに、他の実施例では、除細動ベース24は、もはや除細動器20と物理的に相互に作用しないかも知れない。代わりに、幾つかの実施例において、除細動ベース24は、除細動器20のために通信リンクを提供するかも知れない。
【0022】
除細動ベース24は、除細動器20が患者を治療するために始動されていることを示す指示を受け取るのに応答して緊急応答センター14に呼び出しを行う。ユーザは、患者を治療するために除細動器20を除細動ベース24から移動するかも知れない。除細動ベース24は、除細動器20が除細動ベース24に支持されているときは押圧されるフックスイッチ26を介して除細動器20が除細動ベース24から移動されたことを検出する。しかしながら、本発明は、フックスイッチ26を介して除細動器20の移動を検出するのに限定されるものではない。例えば、除細動器20および除細動ベース24の両方は、電気的な接触、光学的または磁気的な近接センサ等の様々な検出機構を含むかも知れない。いずれの場合においても、除細動ベース24は、除細動器20の移動を検出し、自動的に緊急応答センター14に呼び出しを開始する。
【0023】
さらに、除細動ベース24は、除細動器20の移動を検出することによって、除細動器20の始動を検出する必要はない。例えば、幾つかの実施例において、除細動ベース24は、除細動器20に設けられた無線通信を介して除細動器が始動されている指示を受け取る。除細動ベース24と除細動器20との間の無線通信は、無線周波数による通信であり、また、802.11やブルートゥース(Bluetooth(登録商標))仕様のようなローカル無線通信規格の幾つかに従ったものである。除細動器20は、例えば、電源投入または電極セットが患者に装着されたことの検出により始動を示すメッセージを送信する。このように除細動器の始動を検出することによって、除細動ベース24は、除細動器20が除細動ベース24から移動された状態において緊急応答センター14に呼び出しを行うのを避けることができる。
【0024】
緊急応答センター14に呼び出しを行うために、除細動ベース24は、電話ジャック28およびケーブル30を介して電話回線16とネットワーク接続する。他の実施例において、除細動ベース24は、移動電話送受信機(図示しない)を介して電話回線16とネットワーク接続する。除細動ベース24のそのような実施例は、据え付けのために電話ジャック28の存在を必要としないため、幅広い場所に設置することが可能になる。
【0025】
除細動装置12は、除細動ベース24が緊急呼び出しを行う実施例に限定されるものではない。むしろ、除細動器20は、緊急応答センター14を呼び出して緊急呼び出し情報を提供するために移動電話送受信機(図示しない)を含んでいる。除細動器20は、フックスイッチ26等を含み、除細動ベース24からの移動を検出することにより始動を検出する。さらなる例として、除細動器20は、電源投入、或いは、患者に対する電極セット22の接触によって該除細動器の始動を検出する。これに応答して、除細動器20は、それ自身で緊急応答センター14に対する呼び出しを開始する。除細動器20または除細動ベース24のどちらかは、セットアップの間に、ユーザからの緊急呼び出し情報を受け取るように構成される。従って、幾つかの実施例において、除細動装置12は、もはや除細動ベース24を含まない。
【0026】
図3は本発明の一実施例に係る除細動ベース24の例を示すブロック図である。除細動ベース24は、該除細動ベース24をここで記述されるように機能させるためのプロセッサ40を含む。プロセッサ40は、マイクロプロセッサ,ASIC,DSP,FPGA,独立した論理回路等を含んでいる。
【0027】
除細動ベース24は、ユーザに情報を伝えるためのLEDやLCDディスプレイといったディスプレイ42、および/または、スピーカ44を含む。プロセッサ40は、ディスプレイ42およびスピーカ44の一方または両方を介して、セットアップ中にユーザに対して緊急呼び出し情報の提供を促す。除細動ベース24は、アルファベットと数字を組み合わせたキーパッドであって、ユーザがセットアップ中に緊急呼び出し情報を入力するキーパッド46を含むかも知れない。
【0028】
除細動ベース24は、付加的に、或いは、代替的に、ユーザによって話された言葉を検出するマイクロフォン48を含む。プロセッサ40は、マイクロフォン48を介した緊急呼び出し情報を含むユーザによって話された言葉を受け取る。緊急呼び出し情報は、除細動器20または除細動ベース24の大体の位置を特定するのに役立つ位置情報や他の情報を含み、それにより患者の位置も特定される。プロセッサ40は、セットアップ中にユーザから受け取った、話された言葉の幾つかまたは全てを保存する音声録音を含む緊急呼び出し情報をメモリ50に格納する。メモリ50は、RAM,ROM,CD−ROM,磁気ディスクまたはEEPROMといった様々なソリッドステート,磁気または光学メディアの何れかを含む。
【0029】
図3の例において、除細動ベース24は、電話回線16とインターフェース接続するPSTNインターフェース回路52を含む。プロセッサ40は、緊急応答センター14を呼び出すためにPSTNインターフェース回路52を制御し、インターフェース回路52を介して緊急応答センター14に緊急呼び出し情報を提供する。代替的に、除細動ベース24は、移動電話送受信機(図示しない)を含み、プロセッサは、緊急応答センター14を呼び出し、そして、移動電話送受信機を介して緊急応答センター14に緊急呼び出し情報を提供する。
【0030】
プロセッサ40は、フックスイッチ26を含む接続検出器54を介して除細動ベース24からの除細動器20の移動を検出することによって、除細動器20の始動を検出する。プロセッサ40は、付加的に、または、代替的に、上述した除細動器20に設けられた無線通信を介して、除細動器20の始動の指示を受け取る。除細動ベース24は、除細動器20と無線通信を行うためのローカル無線送受信機56を含む。ローカル無線送受信機56は、無線周波数通信を介して無線通信を容易に行うためのアンテナを含み、802.11やブルートゥース(Bluetooth(登録商標))仕様の一方または両方のようなローカル無線通信規格の1つ以上に従ったものである。
【0031】
図4は本発明の一実施例に係る除細動器20の例を示すブロック図である。除細動器20は、除細動器20をここで述べるように機能させるように制御するプロセッサ60を含む。プロセッサ60は、マイクロプロセッサ,ASIC,DSP,FPGA,独立した論理回路等を含んでいる。
【0032】
除細動器20は、電極セット22を介して除細動パルスを患者に届ける回路を含む治療デリバリー回路62を含んでいる。例えば、治療デリバリー回路62は、キャパシタを含み、エネルギーを蓄積して除細動パルスの形式で患者に届けるエネルギー蓄積回路を含んでいる。治療デリバリー回路62は、活性化されたときに、電極セット22に対してエネルギー蓄積回路を繋ぐスイッチも含んでいる。プロセッサ60は、治療デリバリー回路62によって治療の施しを制御する。
【0033】
上述したように、プロセッサ60は、除細動ベース24の無線通信を介して除細動器20の始動の指示を除細動ベース24に提供する。除細動器20は、除細動ベース24との無線通信のためのローカル無線送受信機64を含んでいる。ローカル無線送受信機64は、無線周波数通信を介して無線通信を容易に行うためのアンテナを含み、802.11やブルートゥース(Bluetooth(登録商標))仕様の一方または両方のようなローカル無線通信規格の1つ以上に従ったものである。
【0034】
プロセッサ60は、除細動器20の電源投入によって除細動器20の始動の指示を除細動ベース24に提供する。治療デリバリー回路62は、電極セット22間のインピーダンスの変化に基づいて該電極セット22の患者への装着を検出する。このようにして、プロセッサ60は、治療デリバリー回路による検出に基づいて、除細動器20の始動の指示を除細動ベース24に提供する。いくつかの実施例において、除細動器20は、フックスイッチ26を含む接続検出回路66を含んでいる。プロセッサ60は、接続検出回路66を介して除細動器20が除細動ベース24から移動したのを検出することによって、該除細動器20の始動を検出し、この検出に基づいて、除細動器20の始動の指示を除細動ベース24に提供する。
【0035】
除細動器20または除細動ベース24は、緊急応答センター14を呼び出して緊急呼び出し情報を該緊急応答センターに提供する。図4の例において、除細動器20は、移動電話送受信機68を含み、プロセッサ60は、緊急応答センター14を呼び出すために移動電話送受信機68を制御する。このとき、除細動器20は、移動電話送受信機68を介して緊急応答センター14に緊急呼び出し情報を提供する。プロセッサ60は、上述した手法の何れかによって除細動器20の始動の検出に応答して、緊急応答センター14を呼び出すために移動電話送受信機68を制御する。
【0036】
除細動器20は、セットアップの間に緊急呼び出し情報を受け取って格納する。除細動器20は、ユーザに情報を伝えるためのLEDやLCDディスプレイといったディスプレイ70、および/または、スピーカ72を含む。プロセッサ60は、ディスプレイ70およびスピーカ72の一方または両方を介して、セットアップ中にユーザに対して緊急呼び出し情報の提供を促す。除細動器20は、アルファベットと数字を組み合わせたキーパッドであって、ユーザがセットアップ中に緊急呼び出し情報を入力するキーパッド74を含むかも知れない。除細動器20は、付加的に、または、代替的に、ユーザによって話された言葉を検出するマイクロフォン76を含む。プロセッサ60は、マイクロフォン76を介した緊急呼び出し情報を含むユーザによって話された言葉を受け取る。プロセッサ60は、セットアップ中にユーザから受け取った音声録音を含む緊急呼び出し情報をメモリ78に格納する。メモリ78は、RAM,ROM,CD−ROM,磁気ディスクまたはEEPROMといった様々なソリッドステート,磁気または光学メディアの何れかを含む。
【0037】
図5は本発明の一実施例に係る緊急呼び出し情報を受け取るために除細動装置12によって使用される方法の一例を示すフローチャートである。特に、図5は、セットアップ中にユーザによって話された言葉としての緊急呼び出し情報を受け取るために、除細動装置12によって使用される方法の一例を示している。除細動装置12によって実行されるものとして記述された機能は、除細動器20または除細動ベース24の何れかによる様々な実施例において実行される。
【0038】
除細動装置12は、ユーザに緊急呼び出し情報を促す(80)。除細動装置12は、ディスプレイ42,70を介して表示し、或いは、スピーカ44,72を介して音声プロンプトを提供する。除細動装置12は、緊急呼び出し情報を提供するために、組み立てられた手法で、直接ユーザに一連のプロンプトを提供する。例えば、除細動装置12の据え付け場所に関連する緊急呼び出し情報を収集するために、除細動装置12は、ユーザに対して除細動装置12が据え付けられた施設の名前、その施設の街番地、その施設内の除細動装置12の場所の記載、および、緊急の場合にダイヤルする電話番号を促す。
【0039】
その後、除細動装置12は、マイクロフォン48,76を介した要求された緊急呼び出し情報を含むユーザによって話された言葉を受け取る(82)。例えば、ユーザは、除細動装置12によって提供された各プロンプトに対して、該各プロンプトが提供された後、言葉によって応答する。ここで、除細動装置12は、上述したように、位置情報を要求する一連のプロンプトを提供し、ユーザは、例えば、施設名のプロンプトに対して『メトロドーム』と答え、施設番地のプロンプトに対して『ミネアポリス,サウス・フィフス・ストリート900』と答え、場所の記載のプロンプトに対して『セクションLLの入り口に近いセカンド・レベル・コンコース』と答え、そして、緊急番号のプロンプトに対して『9−911』と答える。除細動装置12は、ユーザの確認のために、各応答を復唱し、或いは、表示する。
【0040】
除細動装置12は、この技術分野で知られている音声認識や翻訳技術、或いは、緊急番号のプロンプトに応答して電話番号のディジタル表示に変換する商業的に入手できるソフトウェアを使用する(84)。代替的に、ユーザは、プロンプトに応答して、キーパッド46,74を介して電話番号を入力する。さらに、幾つかの実施例において、除細動装置12は、キーパッド46,74を介して全ての緊急呼び出し情報を受け取る。音声応答および緊急電話番号のディジタル表示は、メモリ50,78に格納される。
【0041】
図6は本発明の一実施例に係る緊急呼び出しを行う除細動装置12によって使用される方法の一例を示すフローチャートである。なお、除細動装置12によって実行されるものとして記述した機能は、除細動器20または除細動ベース24の何れかによって様々な実施例において実行される。
【0042】
除細動装置12は、除細動器20が上述した方法の何れかの方法によって始動されているかどうかを決定する(90,92)。除細動器20が始動されているとの決定に応答して、除細動装置12は、緊急応答センター14を呼び出すためにメモリ50,78に格納されている緊急電話をダイヤルする(94)。PSTNインターフェース52または移動電話送受信機68は、緊急応答センター14との接続が確立されるまで、繰り返し緊急番号をダイヤルする(96)。
【0043】
緊急応答センター14との接続が確立されると、除細動装置12は、メモリ50,78に格納された緊急呼び出し情報を緊急応答センター14に提供する(98)。緊急呼び出し情報は、音声記録の形式で格納され、除細動装置12は、接続を介して緊急応答センター14に音声記録を再生する。例えば、除細動装置12がセットアップの間に上述した例のプロンプトを提供し、セットアップの間に上述した例の応答を受け取ると、除細動装置は、緊急応答センター14に対して音声メッセージ『ここは、メトロドームに位置するAEDです。』を再生する。これは、起こり得る心臓・呼吸の緊急(cardio-respiratory emergency)が進行している場合である。番地は、ミネアポリス,サウス・フィフス・ストリート900である。場所は、セクションLLの入り口に近いセカンド・レベル・コンコースである。ここで、『メトロドーム』、『ミネアポリス,サウス・フィフス・ストリート900』および『セクションLLの入り口に近いセカンド・レベル・コンコース』は、除細動装置12によって格納された音声録音である。
【0044】
音声メッセージは、緊急応答センター14による承認があるまで繰り返される(100)。例えば、緊急応答センター14のオペレータは、そのメッセージが受け取られて理解されたときに該緊急応答センター14のタッチトーン式電話インターフェースを介して承認コードを入力する。そのコードは、『*7』といった単なるキーの組み合わせである。
【0045】
本発明の様々な実施例が記述されたが、いわゆる当業者であれば、これらの実施例に対して様々な追加または変形が可能なことが理解される。例えば、除細動装置12が緊急応答センター14との接続を確立し、緊急呼び出し情報を緊急応答センター14に提供した後、除細動装置12は、除細動装器20のスピーカ72およびマイクロフォン76を介して該除細動装器20で患者に療を行うユーザとの間に音声チャネルを開設するかも知れない。
【0046】
この音声チャネルは、例えば、緊急応答センター14がユーザに対して場所や患者の状態に関するより一層詳しい情報を尋ねることを可能とする。また、音声チャネルは、緊急応答センター14がユーザに対して、除細動装器20の適切な使用または適切なCPR技術といった患者の適切な治療を指導することを可能とする。緊急応答センター14を呼び出す除細動ベース24を含む除細動装置12の実施例において、音声チャネルは、除細動装器20と除細動ベース24との間の無線通信を介して提供されるかも知れない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る除細動装置が緊急応答センターに緊急呼び出しを行う環境を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施例に係る除細動装置の例を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施例に係る除細動ベースの例を示すブロック図である。
【図4】本発明の一実施例に係る除細動器の例を示すブロック図である。
【図5】本発明の一実施例に係る緊急呼び出し情報を受け取るために除細動装置によって使用される方法の一例を示すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施例に係る緊急呼び出しを行う除細動装置によって使用される方法の一例を示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
除細動装置からの情報を緊急応答センターに伝達し、且つ、
前記伝達される情報に予め登録された音声メッセージを含むのを備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記音声メッセージは、前記除細動装置の設置場所を特定する情報を含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、伝達する情報は、
前記除細動装置の除細動器が始動されている指示を受け取り、且つ、
前記指示に応答して情報を伝達することを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、除細動器が始動されている指示を受け取るのは、前記除細動装置の除細動ベースからの前記除細動器の移動を検出するのを備えることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項3に記載の方法において、除細動器が始動されている指示を受け取るのは、該除細動器が電源投入されている指示、および、該除細動器の電極が患者に装着されている指示の少なくとも1つを備えることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、伝達する情報は、
公衆電話交換ネットワークおよび移動電話ネットワークの少なくとも一方を介して前記緊急応答センターと電話通信を確立するのを備えることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、伝達する情報は、
前記緊急応答センターからの確認を受け取るまで前記音声メッセージを繰り返すのを備えることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、さらに、
緊急呼び出し情報を含むユーザによって話された言葉を受け取り、且つ、
該話された言葉の少なくとも幾つかを、予め録音された音声メッセージとしてメモリに格納するのを備えることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、さらに、
前記ユーザに対して前記緊急呼び出し情報を含む声音応答の提供を促すのを備えることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項8に記載の方法において、ユーザによって話された言葉を受け取るのは、前記緊急応答センターに対する電話番号を含む言葉を受け取るのを備え、該方法は、さらに、
前記電話番号を含む話された言葉を該電話番号のディジタル表現に変換し、且つ、
該ディジタル表現を前記メモリに格納するのを備え、そして、
伝達する情報は、前記ディジタル表現を使った前記電話番号をダイヤルすることによって前記緊急応答センターと電話接続を確立するのを備えることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法を実行する装置であって、
予め登録された音声メッセージを格納するメモリと、
除細動装置からの情報を前記予め登録された音声メッセージを含む緊急応答センターに伝達するプロセッサと、を備えることを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項11に記載の装置において、さらに、
前記除細動装置の除細動ベースから前記除細動装置の除細動器の移動を検出する検出回路を備え、前記プロセッサは、前記検出回路を介して、前記除細動器が前記ベースから移動された指示を受け取ることにより該除細動器が始動されていることの指示を受け取ることを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項11に記載の装置において、該装置は、除細動器および前記除細動装置の除細動ベースの一方を備えることを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法を実行するシステムであって、
患者に除細動治療を提供する除細動器と、
該除細動器が始動されている指示を受け取る除細動ベースと、を備え、
該装置は、緊急応答センターに予め登録された音声メッセージを含む情報を伝達することを特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項14に記載のシステムにおいて、前記除細動ベースは、検出回路を含み、該検出回路を介して、前記除細動器の前記除細動ベースからの移動を検出することによって該除細動器が始動されている指示を受け取ることを特徴とするシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−525050(P2007−525050A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508860(P2006−508860)
【出願日】平成16年2月26日(2004.2.26)
【国際出願番号】PCT/US2004/005802
【国際公開番号】WO2004/078259
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(504412886)メドトロニック イマージェンシー レスポンス システムズ,インコーポレイティド (2)
【Fターム(参考)】