説明

除電方法及び除電装置

【課題】移動するシート状の帯電物体の電荷分布が不均一な場合でも、電荷を確実に中和して除電することができる除電方法及び除電装置を提供する。
【解決手段】除電方法は、帯電物体1の移動方向に沿った第1の位置2で、第1放電電極部3及び第2放電電極部4に正及び負の直流高電圧を印加して、正の空気イオンを面1aに照射すると共に負の空気イオンを面1bに照射する第1の直流除電ステップと、第2の位置5で第3放電電極部6及び第4放電電極部7に負及び正の直流高電圧を印加して、負の空気イオンを面1aに照射すると共に正の空気イオンを面1bに照射する第2の直流除電ステップとを1組の工程として、工程が1回又は複数回行われた後、第3の位置42で帯電物体1を挟んで対向した第5,第6放電電極部9,10とにそれぞれ高周波高電圧を印加して生成された正及び負の空気イオンを帯電物体1の面1a,1bに供給する高周波除電ステップを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中でコロナ放電を発生させて生成した正、負の空気イオンを帯電物体に照射し、帯電物体の静電気を中和して除電する除電方法及び除電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動するプラスチックフィルム等のシート状の帯電物体の静電気を除電する装置として、放電針を有する放電電極部に直流あるいは交流の高電圧を印加して、放電針の先端で発生する正、負のコロナ放電により正、負の空気イオンを生成し、この空気イオンにより帯電物体の電荷を中和して除電する除電装置が知られている。
【0003】
このような除電装置では、生成された正、負の空気イオンが、帯電物体の周辺に形成された電界に導かれ、帯電物体に吸引されて中和が達成される。このとき、帯電物体の全体的な電界が正となるときは負の空気イオンのみが吸引され、逆に帯電物体の全体的な電界が負となるときには正の空気イオンのみが吸引される。従って、シート状の帯電物体において、電荷分布が不均一で、局所的な帯電領域が複雑に混在しているような場合には、各帯電領域に必要な極性の空気イオンが供給されず、帯電物体を除電することが困難であった。
【0004】
これに対して、シート状の帯電物体の表面に、生成された正、負の空気イオンを強制的に照射する除電装置が提案されている(例えば、下記特許文献1)。特許文献1の除電装置では、移動するフィルム等の帯電物体の一方の面(表面)に対向して正、負の空気イオンを生成するイオン発生電極を配置し、帯電物体の他方の面(裏面)に対向して正、負の空気イオンを吸引するイオン吸引電極を配置する。イオン吸引電極には、例えばイオン発生電極に印加される電圧と逆極性の電圧が印加される。これにより、生成された正、負の空気イオンを帯電物体の表面に強制的に照射させる。
【0005】
しかし、シート状の帯電物体で、電荷分布が不均一な場合に、帯電物体の表面と裏面とで電荷分布が相違することがある。このとき、特許文献1の除電装置のように、帯電物体の一方の面に正、負の空気イオンを強制的に照射しても、帯電物体の他方の面が除電前に有していた電荷分布とバランスする状態までしか空気イオンが吸引されず、帯電物体を除電することが困難であった。
【0006】
そこで、シート状の帯電物体に対して、シートの両面にそれぞれ正、負の空気イオンを強制的に照射する除電装置が提案されている(例えば、下記特許文献2)。特許文献2の除電装置では、シートの移動方向に間隔をおいて設けられた複数の除電ユニットを有し、各除電ユニットは、シートを挟んで対向して配置された第1の電極ユニットと第2の電極ユニットとを有する。第1及び第2の電極ユニットは、それぞれ、針電極列である第1及び第2のイオン生成電極と、接地された第1及び第2のシールド電極とから構成される。第1のイオン生成電極と第2のイオン生成電極とには、互いに逆極性の電圧が印加され、生成された正、負の空気イオンがシートの両面に照射される。このとき、特許文献2の除電装置では、各除電ユニットにおける正、負の空気イオンの生成量のバランス(イオンバランス)を取るため、低周波の交流高電圧を各イオン生成電極に印加している。
【特許文献1】特開平7−263173号公報
【特許文献2】特開2005−222925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献2の除電装置では、イオン生成電極に交流高電圧を印加するため、生成された正、負の空気イオンが帯電物体に到達するまでに再結合する度合が大きい。また、電界分布が正、負に時間的に変化するため、空気イオンの帯電物体への移動速度が遅くなる。従って、帯電物体の帯電状態によっては、十分な空気イオンが供給されず、電荷が中和されない恐れがある。このため、例えば、特許文献2の除電装置では、多数の除電ユニットを配置すると共に、帯電状態に応じて印加する電圧の大きさ等を切り替えるといった調整を行う必要があり煩雑であるという不都合がある。さらに、特許文献2の除電装置で、除電ユニット間に空気イオンの生成能力のばらつきがある場合には、帯電物体の各面に帯電物体の移動方向に交互に正と負の帯電が生じ、各面の電荷を確実に中和して除電するのは困難であるという不都合がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、移動するシート状の帯電物体の電荷分布が不均一な場合でも、電荷を確実に中和して除電することができる除電方法及び除電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の除電方法は、移動するシート状の帯電物体に、正及び負のコロナ放電により生成された正及び負の空気イオンを供給して除電する除電方法において、以下の第1の直流除電ステップと、第2の直流除電ステップと、高周波除電ステップとを備えたことを特徴とする。
【0010】
第1の直流除電ステップでは、前記帯電物体の移動方向に沿った第1の位置で前記帯電物体の一方の面に対向して設けられた第1放電電極部と、該第1の位置で該帯電物体の他方の面に対向して設けられた第2放電電極部とに、正及び負の直流高電圧を印加して、該第1放電電極部で生成された正の空気イオンを該帯電物体の該一方の面に照射すると共に、該第2放電電極部で生成された負の空気イオンを該帯電物体の該他方の面に照射する。
【0011】
第2の直流除電ステップでは、前記第1の位置から前記帯電物体の移動方向に所定間隔離れた第2の位置で該帯電物体の前記一方の面に対向して設けられた第3放電電極部と、該第2の位置で該帯電物体の前記他方の面に対向して設けられた第4放電電極部とに、負及び正の直流高電圧を印加して、該第3放電電極部で生成された負の空気イオンを該帯電物体の該一方の面に照射すると共に、該第2放電電極部で生成された正の空気イオンを該帯電物体の該他方の面に照射する。
【0012】
高周波除電ステップでは、前記第1の直流除電ステップと前記第2の直流除電ステップとを1組の工程として、該工程が前記帯電物体の移動方向に沿って1回又は複数回行われた後、該帯電物体の移動方向に沿った第3の位置で、該帯電物体を挟んで対向して設けられた第5放電電極部と第6放電電極部とに、それぞれ高周波高電圧を印加して、該第5及び第6放電電極部でそれぞれ生成された正及び負の空気イオンを、該帯電物体の一方及び他方の面に供給する。
【0013】
本発明の除電方法によれば、第1の直流除電ステップで、第1の位置で帯電物体を挟んで対向した第1放電電極部と第2放電電極部とに、逆極性(正及び負)の直流高電圧を印加するので、第1放電電極部と第2放電電極部との間に形成された電界により、第1放電電極部で生成された正の空気イオンは帯電物体の一方の面に強制的に照射され、第2放電電極部で生成された負の空気イオンは帯電物体の他方の面に強制的に照射される。
【0014】
このとき、第1放電電極部と第2放電電極部との間には、直流高電圧により一定の電界が形成されるので、例えば交流高電圧により電界分布が時間的に変化する場合に比べて、空気イオンの移動速度は速いものとなる。また、第1及び第2放電電極部では、直流高電圧により各極性の空気イオンがそれぞれ連続的に生成されるので、帯電物体に到達するまでに空気イオンが再結合等により減少する度合は小さい。よって、生成された正、負の空気イオンは、それぞれ帯電物体の各面に効率良く照射される。このように正及び負の空気イオンが帯電物体の各面に強制的に効率良く照射されるので、各面に局所的な帯電領域が存在している場合でも、該帯電領域の電荷を中和して除電することができる。これにより、一方の面上の負の帯電領域が、局所的な帯電領域も含めて除電され、他方の面上の正の帯電領域が、局所的な帯電領域も含めて除電される。
【0015】
次に、第2の直流除電ステップで、第2の位置で帯電物体を挟んで対向した第3放電電極部と第4放電電極部とに、逆極性(負及び正)の直流高電圧を印加するので、第3放電電極部と第4放電電極部との間に形成された電界により、第3放電電極部で生成された負の空気イオンは帯電物体の一方の面に強制的に照射され、第4放電電極部で生成された正の空気イオンは帯電物体の他方の面に強制的に照射される。
【0016】
このとき、第1の直流除電ステップと同様に、正及び負の空気イオンが帯電物体の各面に強制的に効率良く照射されるので、各面に局所的な帯電領域が存在している場合でも、該帯電領域の電荷を中和して除電することができる。これにより、一方の面上の正の帯電領域が、局所的な帯電領域も含めて除電され、他方の面上の負の帯電領域が、局所的な帯電領域も含めて除電される。
【0017】
そして、第1及び第2の直流除電ステップを1組の工程として、該工程を帯電物体の移動方向に沿って1回又は複数回行うことで、帯電物体の各面の電荷密度が不均一で、例えば静電マーク(スタチックマーク)等の正、負の局所的な帯電領域が複雑に混在している場合でも、該帯電領域の電荷を中和して除電することができる。ここで、第1〜第4放電電極部における正、負の空気イオンの生成量は、例えば、汚れの付着等によりばらつき、帯電物体に照射される正、負の空気イオンの照射量のバランス(イオンバランス)が偏ることが考えられる。よって、帯電物体は、イオンバランスの偏りに応じて、一方の面に一方の極性の電荷が付着し、その電荷に対応して他方の面では逆極性の電荷が付着した状態となる。このとき、帯電物体の見かけ上の電荷密度(両面の電荷密度の和)はほぼゼロである。また、各面の電荷密度は、イオンバランスの偏りにより生じる全体的な帯電なので、局所的な強い帯電とは異なり、通常は小さいものである。
【0018】
そこで、このような状態の帯電物体に対して、高周波除電ステップで、第5及び第6放電電極部でそれぞれ生成された正、負の空気イオンを、帯電物体の一方及び他方の面に供給する。このとき、高周波高電圧が印加されるので、正、負の空気イオンは混在した状態で帯電物体の各面に供給される。また、高周波高電圧は交流であり、正、負の空気イオンが同一の放電電極部で交互に生成されるので、供給される正、負の空気イオンはイオンバランスが取れた状態となっている。
【0019】
このとき、第5及び第6放電電極部に印加される高周波電圧は同極性であるので、生成された正、負の空気イオンは、強制的に照射されるのではなく、帯電物体の一方及び他方の面の電荷により形成される電界により引き寄せられて供給される。すなわち、帯電物体の各面は全体的に一方の極性に帯電しているので、第5放電電極部で生成された正、負の空気イオンが拡散して一方の面の近傍に到達すると、一方の面近傍の電界により空気イオンが引き寄せられ、一方の面の電荷が中和されて除電される。同様に、第6放電電極部で生成された正、負の空気イオンが拡散して帯電物体の他方の面の近傍に到達すると、他方の面近傍の電界により空気イオンが引き寄せられ、他方の面の電荷が中和されて除電される。このとき、空気イオンの供給は強制的な照射ではなく、また、供給される空気イオンのイオンバランスが取れているため、逆帯電は生じにくい。従って、高周波除電ステップで、帯電物体の両面に正、負のイオンを供給することにより、逆帯電を防止しつつ、各面の電荷を確実に中和して除電することができる。
【0020】
以上により、本発明の除電方法によれば、移動するシート状の帯電物体の電荷分布が不均一な場合でも、電荷を確実に中和して除電することができる。
【0021】
また、本発明の除電装置は、移動するシート状の帯電物体に、正及び負のコロナ放電により生成された正及び負の空気イオンを供給して除電する除電装置において、前記帯電物体の移動方向に沿って設けられた、正及び負の直流高電圧が印加される1又は複数の直流除電ユニットと、該直流除電ユニットより該帯電物体の移動方向の進行側に設けられた、高周波高電圧が印加される高周波除電ユニットとを有するものであって、以下を特徴とする。
【0022】
前記直流除電ユニットは、前記帯電物体の移動方向に沿った第1の位置で該帯電物体の一方の面に対向して設けられた第1放電電極部と、該第1の位置で該帯電物体の他方の面に対向して設けられた第2放電電極部と、該第1の位置から該帯電物体の移動方向に所定間隔離れた第2の位置で該帯電物体の該一方の面に対向して設けられた第3放電電極部と、該第2の位置で該帯電物体の該他方の面に対向して設けられた第4放電電極部とを備える。
【0023】
さらに、前記直流除電ユニットは、前記第1及び第2放電電極部への正及び負の直流高電圧の印加によって、前記第1放電電極部で生成された正の空気イオンを前記帯電物体の前記一方の面に照射すると共に、前記第2放電電極部で生成された負の空気イオンを該帯電物体の前記他方の面に照射し、前記第3及び第4放電電極部への負及び正の直流高電圧の印加によって、前記第3放電電極部で生成された負の空気イオンを該帯電物体の該一方の面に照射すると共に、前記第4放電電極部で生成された正の空気イオンを該帯電物体の該他方の面に照射する。
【0024】
前記高周波除電ユニットは、前記帯電物体の移動方向に沿った第3の位置で、該帯電物体を挟んで対向して設けられた第5放電電極部と第6放電電極部とを備える。前記高周波除電ユニットは、前記第5及び第6放電電極部への高周波高電圧の印加によって、前記第5及び第6放電電極部でそれぞれ生成された正及び負の空気イオンを、前記帯電物体の一方及び他方の面に供給する。
【0025】
本発明の除電装置によれば、直流除電ユニットで、第1の位置で帯電物体を挟んで対向した第1放電電極部と第2放電電極部とに、逆極性(正及び負)の直流高電圧を印加するので、第1放電電極部と第2放電電極部との間に形成された電界により、第1放電電極部で生成された正の空気イオンは帯電物体の一方の面に強制的に照射され、第2放電電極部で生成された負の空気イオンは帯電物体の他方の面に強制的に照射される。
【0026】
このとき、本発明の除電方法の第1の直流除電ステップについて説明したように、正及び負の空気イオンが帯電物体の各面に強制的に効率良く照射されるので、各面に局所的な帯電領域が存在している場合でも、該帯電領域の電荷を中和して除電することができる。これにより、一方の面上の正の帯電領域が、局所的な帯電領域も含めて除電され、他方の面上の負の帯電領域が、局所的な帯電領域も含めて除電される。これにより、一方の面上の負の帯電領域が、局所的な帯電領域も含めて除電され、他方の面上の正の帯電領域が、局所的な帯電領域も含めて除電される。
【0027】
また、第2の位置で帯電物体を挟んで対向した第3放電電極部と第4放電電極部とに、逆極性(負及び正)の直流高電圧を印加するので、第3放電電極部と第4放電電極部との間に形成された電界により、第3放電電極部で生成された負の空気イオンは帯電物体の一方の面に強制的に照射され、第4放電電極部で生成された正の空気イオンは帯電物体の他方の面に強制的に照射される。
【0028】
このとき、本発明の除電方法の第2の直流除電ステップについて説明したように、正及び負の空気イオンが帯電物体の各面に強制的に効率良く照射されるので、各面に局所的な帯電領域が存在している場合でも、該帯電領域の電荷を中和して除電することができる。これにより、一方の面上の正の帯電領域が、局所的な帯電領域も含めて除電され、他方の面上の負の帯電領域が、局所的な帯電領域も含めて除電される。
【0029】
従って、1又は複数の直流除電ユニットにより、帯電物体の各面の電荷密度が不均一で、例えば静電マーク等の正、負の局所的な帯電領域が複雑に混在している場合でも、該帯電領域の電荷を中和して除電することができる。ここで、第1〜第4放電電極部における正、負の空気イオンの生成量は、例えば、汚れの付着等によりばらつき、帯電物体に照射される正、負の空気イオンの照射量のバランス(イオンバランス)が偏る。よって、帯電物体は、イオンバランスの偏りに応じて、一方の面に一方の極性の電荷が付着し、その電荷に対応して他方の面では逆極性の電荷が付着した状態となる。このとき、帯電物体の見かけ上の電荷密度(両面の電荷密度の和)はほぼゼロである。また、各面の電荷密度は、イオンバランスの偏りにより生じる全体的な帯電なので、局所的な強い帯電とは異なり、通常は小さいものである。
【0030】
そこで、高周波除電ユニットにより、第5及び第6放電電極部でそれぞれ生成された正、負の空気イオンを、帯電物体の一方及び他方の面に供給する。このとき、本発明の除電方法の高周波ステップについて説明したように、高周波高電圧が印加されるので、正、負の空気イオンは混在した状態で帯電物体の各面に供給される。また、高周波高電圧は交流であり、正、負の空気イオンが同一の放電電極部で交互に生成されるので、供給される正、負の空気イオンはイオンバランスが取れた状態となっている。
【0031】
このとき、第5及び第6放電電極部に印加される高周波電圧は同極性であるので、生成された正、負の空気イオンは、強制的に照射されるのではなく、帯電物体の一方及び他方の面の電荷により形成される電界により引き寄せられて供給される。すなわち、帯電物体の各面は全体的に一方の極性に帯電しているので、第5放電電極部で生成された正、負の空気イオンが拡散して一方の面の近傍に到達すると、一方の面近傍の沿面電界により空気イオンが引き寄せられ、一方の面の電荷が中和されて除電される。同様に、第6放電電極部で生成された正、負の空気イオンが拡散して帯電物体の他方の面の近傍に到達すると、他方の面近傍の沿面電界により空気イオンが引き寄せられ、他方の面の電荷が中和されて除電される。このとき、空気イオンの供給は強制的な照射ではなく、また、供給される空気イオンのイオンバランスが取れているため、逆帯電は生じにくい。従って、高周波除電ユニットで帯電物体の両面に正、負のイオンを供給することにより、逆帯電を防止しつつ、各面の電荷を確実に中和して除電することができる。
【0032】
以上により、本発明の除電装置によれば、移動するシート状の帯電物体の電荷分布が不均一な場合でも、電荷を確実に中和して除電することができる。
【0033】
本発明の除電装置において、前記第1放電電極部は1又は複数の第1放電針を有し、前記第2放電電極部は1又は複数の第2放電針を有し、前記第3放電電極部は1又は複数の第3放電針を有し、前記第4放電電極部は1又は複数の第4放電針を有する。さらに、前記第1放電針と前記第2放電針とは、それぞれ、前記帯電物体の幅方向に沿って該帯電物体から所定間隔を取って延びる列上に配置され、該列には、それぞれ、該第1放電針と第2放電針とが、各放電針の軸心を該帯電物体と対向する方向に向けて、交互に並ぶように配置されている。また、前記第3放電針と前記第4放電針とは、それぞれ、前記帯電物体の幅方向に沿って該帯電物体から所定間隔を取って延びる列上に配置されており、該列には、それぞれ、該第3放電針と第4放電針とが、各放電針の軸心を該帯電物体と対向する方向に向けて、交互に並ぶように配置されていることが好ましい。
【0034】
この除電装置によれば、第1放電針と第2放電針とが、シート状の帯電物体の幅方向(帯電物体のシート面と平行で、且つ帯電物体の移動方向と直交する方向)について交互に配置される。例えば、複数の第1放電針が、帯電物体の幅方向に沿って該帯電物体から所定間隔を取って延びる列上に、その軸心を帯電物体の一方の面と対向する方向に向けて、等間隔に配置されている。また、複数の第2放電針が、帯電物体を挟んで第1放電針が配置されている列に対向した他の列上に、その軸心を帯電物体の他方の面と対向する方向に向けて、等間隔に配置されている。このとき、各第2放電針は、帯電物体の幅方向について、各第1放電針と半ピッチ(各第1及び第2放電針の間隔の半分)ずつずらして(各第2放電針が、連続する2つの第1放電針の中間に配置されるように)配置される。これにより、空気イオンが帯電物体の各面に照射される際に、第1の位置の近傍で、空気イオンが帯電物体の幅方向に広がって均一に分配されて照射される。
【0035】
同様に、第3放電針と第4放電針とが、シート状の帯電物体の幅方向について交互に配置される。これにより、空気イオンが帯電物体の各面に照射される際に、第2の位置の近傍で空気イオンが、シート状の帯電物体の幅方向に広がって均一に分配されて照射される。
【0036】
従って、空気イオンがシート状の帯電物体の両面に満遍なく照射されるので、より効率良く除電が行われる。
【0037】
また、本発明の除電装置において、前記第1の位置と前記第2の位置との間隔を、前記第1放電電極部と前記第2放電電極部との間の最短距離及び前記第3放電電極部と前記第4放電電極部との間の最短距離とに比べて大きくとることが好ましい。
【0038】
すなわち、直流除電ユニットでは、第1放電電極部と第2放電電極部との間、第3放電電極部と第4放電電極部との間で電界が形成されると共に、隣接する放電電極部の間(第1放電電極部と第3放電電極部との間、第2放電電極部と第4放電電極部との間)でも電界が形成される。このとき、第1の位置と第2の位置との間隔(隣接する放電電極部の間の間隔)が、第1放電電極部と第2放電電極部との間の最短距離、及び、第3放電電極部と第4放電電極部との間の最短距離に比べて大きくとられていれば、第1放電電極部と第2放電電極部との間で形成された電界、及び、第3放電電極部と第4放電電極部との間で形成された電界の方が、隣接する放電電極部の間で形成された電界よりも強くなる。よって、隣接する放電電極部に吸引される空気イオンが低減され、より多くの空気イオンが対向する放電電極部に向かって移動してシート状の帯電物体に照射される。よって、シート状の帯電物体の除電をより効率良く行うことができる。
【0039】
前記第1放電電極部と前記第2放電電極部との間の最短距離及び前記第3放電電極部と前記第4放電電極部との間の最短距離は、例えば、前記第1放電針の先端と前記第2放電針の先端との間の最短距離及び前記第3放電針の先端と前記第4放電針の先端との間の最短距離とすればよい。
【0040】
さらに、本発明の除電装置において、前記第1放電電極部と前記第3放電電極部との間に絶縁体からなる第1電界遮蔽壁を設けると共に、前記第2放電電極部と前記第4放電電極部との間に絶縁体からなる第2電界遮蔽壁を設けることが好ましい。
【0041】
この除電装置によれば、第1及び第2電界遮蔽壁により、第1及び第2放電電極部により形成される電界と、第3及び第4放電電極部により形成される電界とが、それぞれ遮蔽されるので、隣接する放電電極部の間の電界の干渉を防止することができる。よって、電界の干渉を低減するために隣接する放電電極部の間隔を大きくする必要がなく、隣接する放電電極部の間隔を小さくして、除電装置を小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
[第1実施形態]
図1に示すように、本実施形態の除電装置の除電対象であるフィルム(シート状の帯電物体)1は、複数箇所に設置されたローラ11,12の回転により、矢印の示す方向に、所定速度(例えば10〜100m/分)で連続的に移動する。なお、フィルム1は、例えば、プラスチックフィルム等の電気絶縁性シートである。
【0043】
本実施形態の除電装置は、フィルム1の移動方向に沿って、正及び負の直流高電圧が印加される1又は複数(本実施形態では2つ)の直流除電ユニット8,8aと、高周波高電圧が印加される高周波除電ユニット43とを備えている。
【0044】
第1の直流除電ユニット8は、コロナ放電を発生して空気イオンを生成する第1〜第4放電電極部3,4,6,7により構成されている。第1放電電極部3は、フィルム1の移動方向に沿った第1の位置2で、フィルム1の一方の面1aから所定の距離を隔てて対向して設けられている。また、第2放電電極部4は、第1の位置2でフィルム1の他方の面1bから所定の距離を隔てて対向して設けられている。このとき、第1放電電極部3と第2放電電極部4との距離を距離D1とする。また、第3放電電極部6は、第1の位置2からフィルム1の移動方向に所定の間隔L1離れた第2の位置5で、フィルム1の一方の面1aから所定の距離を隔てて対向して設けられている。また、第4放電電極部7は、第2の位置5でフィルム1の他方の面1bから所定の距離を隔てて対向して設けられている。このとき、第3放電電極部6と第4放電電極部7との距離を距離D2とする。
【0045】
図1で白三角で示した第1,第4放電電極部3,7は、それぞれ、接続線14,15を介して、正の直流高圧電源13に接続されている。これらの第1,第4放電電極部3,7では、正の直流高圧電源13から出力される正の直流高電圧(例えば+7kV)が印加されて正のコロナ放電が発生し、正の空気イオンが生成される。また、図1で黒三角で示した第2,第3放電電極部4,6は、それぞれ、接続線19,20を介して、負の直流高圧電源18に接続されている。これらの第2,第3放電電極部4,6では、負の直流高圧電源18から出力される負の直流高電圧(例えば−7kV)が印加されて負のコロナ放電が発生し、負の空気イオンが生成される。なお、正、負の直流高圧電源13,18の構成は、公知の構成でよい。
【0046】
第2の直流除電ユニット8aは、第1の直流除電ユニット8と同様に、コロナ放電を発生して空気イオンを生成する第1〜第4放電電極部3a,4a,6a,7aにより構成されている。第1放電電極部3aは、第2の位置5からフィルム1の移動方向に所定の間隔L2離れた第1の位置2aで、フィルム1の一方の面1aから所定の距離を隔てて対向して設けられている。また、第2放電電極部4aは、第1の位置2aでフィルム1の他方の面1bから所定の距離を隔てて対向して設けられている。このとき、第1放電電極部3aと第2放電電極部4aとの距離を距離D3とする。また、第3放電電極部6aは、第1の位置2aからフィルム1の移動方向に所定の間隔L3離れた第2の位置5aで、フィルム1の一方の面1aから所定の距離を隔てて対向して設けられている。また、第4放電電極部7aは、第2の位置5aでフィルム1の他方の面1bから所定の距離を隔てて対向して設けられている。このとき、第3放電電極部6aと第4放電電極部7aとの距離を距離D4とする。
【0047】
図1で白三角で示した第1,第4放電電極部3a,7aは、それぞれ、接続線16,17を介して、正の直流高圧電源13に接続されている。これらの第1,第4放電電極部3a,7aでは、第1,第4放電電極部3,7と同様に、正の直流高圧電源13から出力される正の直流高電圧が印加されて正のコロナ放電が発生し、正の空気イオンが生成される。また、図1で黒三角で示した第2,第3放電電極部4a,6aは、それぞれ、接続線21,22を介して、負の直流高圧電源18に接続されている。これらの第2,第3放電電極部4a,6aでは、第2,第3放電電極部4,6と同様に、負の直流高圧電源18から出力される負の直流高電圧が印加されて負のコロナ放電が発生し、負の空気イオンが生成される。
【0048】
また、高周波除電ユニット43は、コロナ放電を発生して空気イオンを生成する第5,第6放電電極部9,10により構成されている。第5放電電極部9は、第2の位置5aからフィルム1の移動方向に所定の間隔L4離れた第3の位置42で、フィルム1の一方の面1aから所定の距離を隔てて対向して設けられている。また、第6放電電極部10は、第3の位置42でフィルム1の他方の面1bから所定の距離を隔てて対向して設けられている。
【0049】
図1で白丸で示した第5,第6放電電極部9,10は、それぞれ、接続線24,25を介して、高周波高圧電源23に接続されている。これらの第5,第6放電電極部9,10では、高周波高圧電源23から出力される高周波(例えば68kHz)の高電圧(例えば±2kV)が印加されて、正、負のコロナ放電が交互に発生し、正、負の空気イオンが交互に生成される。なお、高周波高圧電源23の構成は、公知の構成でよい。
【0050】
なお、各直流除電ユニット8,8aの2つの放電電極部間の間隔L1,L3は、例えば同じ間隔とする。また、第1の直流除電ユニット8と第2の直流除電ユニット8aとの間隔L2は、例えばL1,L3以上の間隔とする。また、第2の直流除電ユニット8aと高周波除電ユニット43との間隔L4は、例えばL1〜L3以上の間隔とする。また、各放電電極部の距離D1〜D4は、例えば全て同じ距離とする。
【0051】
第1〜第4放電電極部3,4,6,7,3a,4a,6a,7aは、例えば、後述の第2実施形態で説明するように、それぞれ、導体からなる複数の放電針と、放電針が配置される棒状の導体からなる放電針支持部材とを備えたものとする。なお、このとき、第1,第3放電電極部3,6,3a,6aの有する各放電針は、第2,第4放電電極部4,7,4a,7aの有する各放電針と、それぞれフィルム1を挟んで対向して配置する。対向する放電電極部の距離D1〜D4は、各放電電極部の放電針の先端と、対向する放電電極部の放電針の先端との間の最短距離とする。また、第5,第6放電電極部9,10は、同様に、後述の第2実施形態で説明するように、それぞれ、導体からなる複数の放電針と、放電針が配置される棒状の導体からなる放電針支持部材と、複数の接地電極部とを備えたものとする。
【0052】
次に、本実施形態の除電装置の作動(除電作動)について説明する。
【0053】
まず、第1の直流除電ユニット8において、第1の直流除電ステップS1として、正の直流高圧電源13から出力された正の直流高電圧が、接続線14を介して第1放電電極部3に印加される一方、負の直流高圧電源18から出力された負の直流高電圧が、接続線19を介して第2放電電極部4に印加される。この正及び負の直流高電圧の印加によって、第1放電電極部3と第2放電電極部4との間に一定の電界が形成される。これにより、第1放電電極部3で正のコロナ放電が発生して正の空気イオンが連続的に生成されると共に、第2放電電極部4で負のコロナ放電が発生して負の空気イオンが連続的に生成される。このとき、第1放電電極部3で生成された正の空気イオンは、第2放電電極部4に吸引されて、第1の位置2の近傍において、フィルム1の面1aに強制的に照射される。また、第2放電電極部4で生成された負の空気イオンは、第1放電電極部3に吸引されて、第1の位置2の近傍において、フィルム1の面1bに強制的に照射される。
【0054】
また、第2の直流除電ステップS2として、負の直流高圧電源18から出力された負の直流高電圧が、接続線20を介して第3放電電極部6に印加される一方、正の直流高圧電源13から出力された正の直流高電圧が、接続線15を介して第4放電電極部7に印加される。この正及び負の直流高電圧の印加によって、第3放電電極部6と第4放電電極部7との間に一定の電界が形成される。これにより、第3放電電極部6で負のコロナ放電が発生して負の空気イオンが連続的に生成されると共に、第4放電電極部7で正のコロナ放電が発生して正の空気イオンが連続的に生成される。このとき、第3放電電極部6で生成された負の空気イオンは、第4放電電極部7に吸引されて、第2の位置5の近傍において、フィルム1の面1aに強制的に照射される。また、第4放電電極部7で生成された正の空気イオンは、第3放電電極部6に吸引されて、第2の位置5の近傍において、フィルム1の面1bに強制的に照射される。
【0055】
次に、第2の直流除電ユニット8aにおいて、第1の直流除電ステップS3として、除電ユニット8aで、正の直流高圧電源13から出力された正の直流高電圧が、接続線16を介して第1放電電極部3aに印加され、負の直流高圧電源18から出力された負の直流高電圧が、接続線21を介して第2放電電極部4aに印加される。この正及び負の直流高電圧の印加によって、前記第1の直流除電ユニット8における第1の直流除電ステップS1と同様に、第1放電電極部3aで正のコロナ放電が発生して正の空気イオンが連続的に生成されると共に、第2放電電極部4aで負のコロナ放電が発生して負の空気イオンが連続的に生成される。第1放電電極部3aで生成された正の空気イオンは、第2放電電極部4aに吸引されて、第1の位置2aの近傍において、フィルム1の面1aに強制的に照射される。また、第2放電電極部4aで生成された負の空気イオンは、第1放電電極部3aに吸引されて、第1の位置2aの近傍において、フィルム1の面1bに強制的に照射される。
【0056】
また、第2の直流除電ステップS4として、負の直流高圧電源18から出力された負の直流高電圧が、接続線22を介して第3放電電極部6aに印加され、正の直流高圧電源13から出力された正の直流高電圧が、接続線17を介して第4放電電極部7aに印加される。この正及び負の直流高電圧の印加によって、前記第1の直流除電ユニット8における第2の直流除電ステップS2と同様に、第3放電電極部6aで負のコロナ放電が発生して負の空気イオンが連続的に生成されると共に、第4放電電極部7aで正のコロナ放電が発生して正の空気イオンが連続的に生成される。第3放電電極部6aで生成された負の空気イオンは、第4放電電極部7aに吸引されて、第2の位置5aの近傍において、フィルム1の面1aに強制的に照射される。また、第4放電電極部7aで生成された正の空気イオンは、第3放電電極部6aに吸引されて、第2の位置5aの近傍において、フィルム1の面1bに強制的に照射される。
【0057】
なお、第1〜第4放電電極部3,4,6,7,3a,4a,6a,7aでは、正又は負の空気イオンがそれぞれ連続的に生成されるので、生成された正、負の空気イオンは、フィルム1に到達するまでに再結合等により減少する度合は小さい。また、一定の電界が形成されるので、空気イオンの移動速度が電界分布の時間的な変化等により遅くなることはない。よって、直流除電ステップS1〜S4で生成された正、負の空気イオンは、それぞれフィルム1に効率良く照射される。
【0058】
さらに、高周波除電ユニット43において、高周波除電ステップS5として、高周波高圧電源23から出力された高周波高電圧が、接続線24を介して第5放電電極部9に印加されると共に、接続線25を介して第6放電電極部10に印加される。高周波電圧は交流電圧であるので、第5放電電極部9,10には、それぞれ正と負との高電圧が交互に印加される。この高周波高電圧の印加によって、第5放電電極部9,10で、それぞれ高周波のコロナ放電が発生して、正、負の空気イオンが交互に生成される。このとき、正、負の空気イオンが同一の第5,第6放電電極部9,10で、それぞれ交互に生成されるので、第5,第6放電電極部9,10に付着した汚れ等によらずに、第5,第6放電電極部9,10でそれぞれ生成される正の空気イオンと負の空気イオンとの生成量のバランス(イオンバランス)が取れた状態となっている。
【0059】
第5放電電極部9で生成された正、負の空気イオンは、第3の位置42の近傍において、フィルム1の面1aに供給される。また、第6放電電極部10で生成された正、負の空気イオンは、第3の位置42の近傍において、フィルム1の面1bに供給される。このとき、第5,第6放電電極部9,10に印加される高周波電圧は同極性であるので、第5,第6放電電極部9,10で生成された正、負の空気イオンは、面1a,1bに強制的に照射されるのではなく、フィルム1の面1a,1bの電荷により形成される電界に応じて面1a,1bに引き寄せられる。
【0060】
次に、上述の各ステップS1〜S5に従って、フィルム1の除電について説明する。なお、除電前のフィルム1は、例えば静電マーク(スタチックマーク)等の、局所的な両面両極性帯電(正極性と負極性との局所的な帯電領域が両面1a,1bに混在している帯電状態)にある。
【0061】
まず、第1の直流除電ユニット8における第1の直流除電ステップS1で、移動するフィルム1の所定部分が第1の位置2にくると、所定部分周辺の面1aに、面上の電荷分布によらずに、第1放電電極部3で生成された正の空気イオンが強制的に照射される。これと同時に、所定部分周辺の面1bに、面上の電荷分布によらずに、第2放電電極部4で生成された負の空気イオンが強制的に照射される。
【0062】
面1aに照射された正の空気イオンは、面1a上の負の帯電領域に引き寄せられて負の電荷を中和する。このとき、正の空気イオンは強制的に照射されるので、局所的な帯電領域にある電荷も中和することができる。なお、照射された正の空気イオンは、面1b上に負の帯電領域があるときには、該負の帯電領域に引き寄せられて面1a上に付着する。また、面1bに照射された負の空気イオンは、面1b上の正の帯電領域に引き寄せられて正の電荷を中和する。このとき、負の空気イオンは強制的に照射されるので、局所的な帯電領域にある電荷も中和することができる。なお、照射された負の空気イオンは、面1a上に正の帯電領域があるときには、該正の帯電領域に引き寄せられて面1b上に付着する。
【0063】
これにより、面1a上の負の帯電領域が、局所的な帯電領域も含めて除電される。また、面1b上の正の帯電領域が、局所的な帯電領域も含めて除電される。
【0064】
次に、第1の直流除電ユニット8における第2の直流除電ステップS2で、移動するフィルム1の所定部分が第2の位置5にくると、所定部分周辺の面1aに、面上の電荷分布によらずに、第3放電電極部6で生成された負の空気イオンが強制的に照射される。これと同時に、所定部分周辺の面1bに、面上の電荷分布によらずに、第4放電電極部7で生成された正の空気イオンが強制的に照射される。
【0065】
面1aに照射された負の空気イオンは、面1a上の正の帯電領域に引き寄せられて正の電荷を中和する。このとき、負の空気イオンは強制的に照射されるので、局所的な帯電領域にある電荷も中和することができる。なお、照射された負の空気イオンは、面1b上に正の帯電領域があるときには、該負の帯電領域に引き寄せられて面1a上に付着する。また、面1bに照射された正の空気イオンは、面1b上の負の帯電領域に引き寄せられて負の電荷を中和する。このとき、正の空気イオンは強制的に照射されるので、局所的な帯電領域にある電荷も中和することができる。なお、照射された正の空気イオンは、面1a上に負の帯電領域があるときには、該負の帯電領域に引き寄せられて面1b上に付着する。
【0066】
これにより、面1a上の正の帯電領域が、局所的な帯電領域も含めて除電される。また、面1b上の負の帯電領域が、局所的な帯電領域も含めて除電される。
【0067】
次に、第2の直流除電ユニット8aにおける第1の直流除電ステップS3で、移動するフィルム1の所定部分が第1の位置2aにくると、第1の直流除電ユニット8における第1の直流除電ステップS1と同様に、所定部分周辺の面1aに、第1放電電極部3aで生成された正の空気イオンが強制的に照射され、面1bに、第2放電電極部4aで生成された負の空気イオンが強制的に照射される。
【0068】
面1aに照射された正の空気イオンは、面1a上の負の帯電領域に引き寄せられて負の電荷を中和する。このとき、負の空気イオンは強制的に照射されるので、局所的な帯電領域にある電荷も中和することができる。なお、照射された正の空気イオンは、面1b上に負の帯電領域があるときには、該負の帯電領域に引き寄せられて面1a上に付着する。また、面1bに照射された負の空気イオンは、面1b上の正の帯電領域に引き寄せられて正の電荷を中和する。このとき、負の空気イオンは強制的に照射されるので、局所的な帯電領域にある電荷も中和することができる。なお、照射された負の空気イオンは、面1a上に正の帯電領域があるときには、該正の帯電領域に引き寄せられて面1b上に付着する。
【0069】
これにより、フィルム1の所定部分周辺で、面1a上の負の帯電領域は、局所的な帯電領域も含めて除電され、局所的な帯電領域がなくなり全体的に正に帯電された状態となる。また、面1b上の正の帯電領域は、局所的な帯電領域も含めて除電され、局所的な帯電領域がなくなり全体的に負に帯電された状態となる。
【0070】
次に、第2の直流除電ユニット8aにおける第2の直流除電ステップS4で、移動するフィルム1の所定部分が第2の位置5aにくると、第1の直流除電ユニット8における第2の直流除電ステップS2と同様に、所定部分周辺の面1aに、第3放電電極部6aで生成された負の空気イオンが強制的に照射され、面1bに、第4放電電極部7aで生成された正の空気イオンが強制的に照射される。
【0071】
面1aに照射された負の空気イオンは、面1a上の正の帯電領域に引き寄せられて、正の電荷を中和する。また、面1bに照射された正の空気イオンは、面1b上の負の帯電領域に引き寄せられて、負の電荷を中和する。これにより、フィルム1の所定部分周辺で、面1aと面1bとのいずれもが除電される。
【0072】
このとき、第1〜第4放電電極部からフィルム1に照射される正、負の空気イオンの照射量のバランス(イオンバランス)が取れている場合には、フィルム1の電荷は全て中和された状態となる。ただし、一般に、第1〜第4放電電極部における正、負の空気イオンの生成量は、例えば、第1〜第4放電電極部への汚れの付着等によりばらつくと考えられる。このため、第1〜第4放電電極部からフィルム1に照射される正、負の空気イオンの照射量のバランスが偏ることとなる。よって、第1,第2直流除電ステップS1〜S4の結果、フィルム1では、イオンバランスの偏りに応じて、一方の面に一方の極性の電荷が付着し、その電荷に対応して他方の面では逆極性の電荷が付着した状態となる。例えば、面1aに負の電荷が付着し、面1a上の負の電荷の付着部分に対応した面1b上の部分に、正の電荷が付着した状態となる。
【0073】
従って、以上の第1,第2直流除電ステップS1〜S4により、フィルム1の所定部分周辺は、面1a全体が一方の極性(例えば負)に帯電し、面1b全体が逆極性(例えば正)に帯電した状態となる。以下では、面1aが負に帯電し、面1bが正に帯電する場合を例にして説明する。このとき、フィルム1の所定部分周辺における見かけ上の電荷密度(両面1a,1bの電荷密度の和)はほぼゼロである。また、各面の電荷密度は、イオンバランスの偏りにより生じる全体的な帯電なので、局所的な強い帯電とは異なり、通常は小さいものである。
【0074】
次に、高周波除電ステップS5で、フィルム1が移動して所定部分が第3の位置42の近傍にくると、所定部分周辺の面1aに、第5放電電極部9で生成された正、負の空気イオンが供給され、面1bに、第6放電電極部10で生成された正、負の空気イオンが供給される。なお、正、負の空気イオンは、混在した状態で供給される。
【0075】
このとき、面1aは全体的に負に帯電しているので、第5放電電極部9で生成された正の空気イオンが拡散してフィルム1の面1aの近傍に到達した場合、面1a近傍の電界により、この正の空気イオンが引き寄せられる。一方、面1aは全体的に負に帯電しているので、第5放電電極部9で生成された負の空気イオンは引き寄せられない。これにより、面1aに引き寄せられた正の空気イオンが吸引されて、面1a上の負の電荷が中和される。
【0076】
また、面1bは全体的に正に帯電しているので、第6放電電極部10で生成された負の空気イオンが拡散してフィルム1の面1bの近傍に到達した場合、面1b近傍の電界により、この負の空気イオンが引き寄せられる。一方、面1bは全体的に正に帯電しているので、第6放電電極部10で生成された正の空気イオンは引き寄せられない。これにより、面1bに引き寄せられた負の空気イオンが吸引されて、面1b上の正の電荷が中和される。
【0077】
高周波除電ステップS5おいて、正、負の空気イオンの供給は、強制的な照射ではないため、面1a,1bへの逆帯電は生じ難い。また、例えば、面1a側の負の電荷が中和されて除電されると、該負の電荷に対応して面1b側に付着していた正の電荷に、負の空気イオンが引き寄せられ易くなる。同様に、例えば、面1b側の正の電荷が中和されて除電されると、該正の電荷に対応して面1a側に付着していた負の電荷に、正の空気イオンが引き寄せられ易くなる。このようにして、両面から正、負のイオンを供給することにより、見かけ上の電荷密度が大きく偏ることなく各面の除電が進む。従って、高周波除電ステップS5により、逆帯電を防止しつつ、面1aの負の電荷と面1bの正の電荷とを確実に中和して除電することができる。
【0078】
以上の処理により、フィルム1の電荷が確実に中和されて除電される。
【0079】
本実施形態によれば、正及び負の直流高電圧による直流除電ステップにより、フィルム1の面1aと面1bとに逆極性で強制的に空気イオンを照射するので、面1a,1bの局所的な帯電領域の電荷を中和して除電することができる。さらに、直流除電ステップの後に、高周波高電圧による高周波除電ステップにより、フィルム1の両面1a,1bに同極性の空気イオンを供給するので、フィルム1への逆帯電を防止しつつ、各面1a,1bの電荷を確実に中和して除電することができる。
【0080】
なお、本実施形態では、第1の直流除電ユニット8における第1,第2直流除電ステップS1,S2の組、及び第2の直流除電ユニット8aにおける第1,第2直流除電ステップS3,S4の組が、それぞれ1組の工程に相当する。本実施形態は、この工程がフィルム1の移動方向に沿って2回行われた後に、高周波除電ステップが行われる場合に相当する。なお、この工程は、1回又は3回以上行うようにしてもよい。例えば、第1の直流除電ユニット8における第1,第2直流除電ステップS1,S2で照射される正、負の空気イオンの照射量が、フィルム1の局所的な帯電領域の電荷量に比べて十分多い場合には、1回の工程でも局所的な両面両極性帯電を除電することができる。
【0081】
なお、本実施形態では、第1〜第4放電電極部3,3a,4,4a,6,6a,7,7aは、それぞれ、放電針と放電針支持部材とを備えたものとし、第5,第6放電電極部9,10は、それぞれ、放電針と放電針支持部材と接地電極部とを備えたものとしたが、これに限らず、その構成は変更可能である。
[第2実施形態]
図2〜図4に示す第2実施形態は、第1実施形態における第1の直流除電ユニット8のみをフィルム1の移動方向に沿って設けたものである。以下の説明では、第1実施形態と同一の構成については、第1実施形態と同一の参照符号を用いて説明を省略する。
【0082】
図2及び図3に示すように、本実施形態における除電装置の第1〜第4放電電極部3,4,6,7は、それぞれ、複数の第1〜第4放電針27,29,31,33と、第1〜第4放電針27,29,31,33が配置される第1〜第4放電針支持部材26,28,30,32とを備えている。なお、第1〜第4放電針27,29,31,33は、それぞれ同数である。
【0083】
第1〜第4放電針支持部材26,28,30,32は、それぞれ、棒状の導体からなり、その軸心を、フィルム1の幅方向(フィルム1の面1a,1bに平行で且つフィルム1の移動方向に直交する方向)に向けて配置されている。第1放電針支持部材26と第2放電針支持部材28とは、第1の位置2でフィルム1を挟んで所定間隔を隔てて対向して設けられており、第3放電針支持部材30と第4放電針支持部材32とは、第2の位置5でフィルム1を挟んで所定間隔を隔てて対向して設けられている。第1,第4放電針支持部材26,32は、それぞれ、接続線14,15を介して、正の直流高圧電源13に接続されている。第2,第3放電針支持部材28,30は、それぞれ、接続線19,20を介して、負の直流高圧電源18に接続されている。また、第1〜第4放電針支持部材26,28,30,32の長手方向には、それぞれ、複数の第1〜第4放電針27,29,31,33が所定の間隔P1で等間隔に1列に配置されている。
【0084】
複数の第1〜第4放電針27,29,31,33は、それぞれ、導体からなり、その基端部が第1〜第4放電針支持部材26,28,30,32に固定されている。そして、各第1〜第4放電針27,29,31,33は、軸心をフィルム1の面1a,1bに垂直な方向に向け、その先端がフィルム1に対向するように配置されている。
【0085】
このとき、図3に示すように、第1放電針27と、第2放電針29とは、フィルム1の幅方向(図2のIII−III線方向)について交互に並ぶように配置されている。詳細には、第1放電針27と第2放電針29とは、半ピッチ(P1/2)ずつずらして配置されている。また、同様に、第3放電針31と第4放電針33とは、フィルム1の幅方向について交互に並ぶように配置されている。
【0086】
また、第5,第6放電電極部9,10は、それぞれ、複数の第5,第6放電針35,38と、第5,第6放電針35,38が配置される第5,第6放電針支持部材34,37と、複数の(本実施形態では2つの)第5,第6接地電極部36,39とを備えている。なお、第5,第6放電電極部9,10に備えられた第5,第6放電針35,38は、それぞれ同数である。
【0087】
第5,第6放電針支持部材34,37は、それぞれ、棒状の導体からなり、その軸心を、フィルム1の面1a,1bに平行で且つフィルム1の移動方向に直交する方向に向けて配置されている。第5放電針支持部材34と第6放電針支持部材37とは、第3の位置42でフィルム1を挟んで所定の間隔を隔てて対向して設けられている。第5,第6放電針支持部材34,37は、それぞれ、接続線24,25を介して、高周波高圧電源23に接続されている。また、第5,第6放電針支持部材34,37の長手方向には、それぞれ、複数の第5,第6放電針35,38が等間隔に1列に配置されている。
【0088】
複数の第5,第6放電針35,38は、それぞれ、導体からなり、その基端部が第5,第6放電針支持部材34,37に固定されている。そして、各第5,第6放電針35,38は、軸心をフィルム1の面1a,1bに垂直な方向に向けて配置されている。このとき、各第5放電針35と各第6放電針38とは、それぞれ、その先端がフィルム1を挟んで所定の間隔を隔てて対向するように設けられている。
【0089】
2つの第5接地電極部36は、それぞれ、棒状の導体からなり、第5放電針35の列の両脇に対向して配置されている。これらの第5接地電極部36は、全ての第5放電針35に対して共通の接地電極部である。同様に、2つの第6接地電極部39は、それぞれ、棒状の導体からなり、第6放電針38の列の両脇に対向して配置されている。これらの第6接地電極部39は、全ての放電針38に対して共通の接地電極部である。第5接地電極部36と第6接地電極部39とは、フィルム1を挟んで所定の間隔を隔てて対向するように設けられている。また、各第5,第6接地電極部36,39は、それぞれ、図示しない接続線を介して接地されている。以上説明した以外の構成は、第1実施形態と同じである。
【0090】
なお、第1〜第6放電電極部3,4,6,7,9,10において、各第1〜第6放電針27,29,31,33,35,38は、第1〜第6放電針支持部材26,28,30,32,34,37に直接結合しているものとしたが、例えば、絶縁部材を介して容量結合しているものや、保護抵抗を介して抵抗結合しているものでもよい。
【0091】
次に、本実施形態の除電装置の作動(除電作動)について説明する。まず、直流除電ユニット8において、第1の直流除電ステップS1で、正及び負の直流高電圧の印加によって、第1放電電極部3における第1放電針27と第2放電電極部4における第2放電針29との間に電界が形成されると、各第1,第2放電針27,29の先端に電界が集中する。これにより、各第1放電針27の先端で正のコロナ放電が発生して正の空気イオンが生成され、各第2放電針29の先端で負のコロナ放電が発生して負の空気イオンが生成される。
【0092】
各第1放電針27の先端で生成された正の空気イオンは、各第2放電針29との間で形成された電界に従って、フィルム1の面1aに向かって移動する。また、各第2放電針29の先端で生成された負の空気イオンは、各第1放電針27との間で形成された電界に従って、フィルム1の面1bに向かって移動する。
【0093】
このとき、図4(b)に示すように、各第1放電針27と各第2放電針29とを半ピッチずつずらして配置しているので、正の空気イオンは、各第1放電針27と近傍の2本の第2放電針29との間で形成された電界に従って面1aに向かって移動する。同様に、負の空気イオンは、各第2放電針29と近傍の2本の第1放電針27との間で形成された電界に従って面1bに向かって移動する。よって、フィルム1の移動方向に沿った第1の位置2において、空気イオンがフィルム1の幅方向に広がって均一に分配されて照射される。これにより、空気イオンが第1の位置2の幅方向について満遍なく照射され、フィルム1の面1a,1b上の電荷が効率良く中和される。なお、図4(a)に示したように、各第1放電針27と各第2放電針29とを対向させて配置した場合には、フィルム1の第1の位置2の幅方向について、各第1,第2放電針27,29と対向した部分に空気イオンが集中して照射される。
【0094】
また、第2の直流除電ステップS2についても、上述の第1の直流除電ステップS1と同様に行われる。
【0095】
また、本実施形態では、第1の直流除電ユニット8のみが設けられているので、第1実施形態のように直流除電ステップS3,S4は行われず、そのまま高周波除電ステップS5に進む。高周波除電ステップS5で、除電ユニット43の作動において、高周波高電圧が印加されると第5放電電極部9における第5放電針35と第5接地電極部36との間で電界が形成され、各第5放電針35の先端に電界が集中する。これにより、各第5放電針35の先端で正、負のコロナ放電が発生して正、負の空気イオンが生成される。同様に、第6放電電極部10における第6放電針38と第6接地電極部39との間で電界が形成され、各第6放電針38の先端に電界が集中する。これにより、各第6放電針38の先端で正、負のコロナ放電が発生して正、負の空気イオンが生成される。
【0096】
以上説明した以外の作動は、第1実施形態と同じである。
【0097】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、直流除電ステップにより、フィルム1の面1a,1bの局所的な帯電領域の電荷を中和して除電することができる。さらに、直流除電ステップの後に行う高周波除電ステップにより、フィルム1への逆帯電を防止しつつ、各面1a,1bの電荷を確実に中和して除電することができる。
【0098】
これと共に、本実施形態によれば、各第1放電針27と各第3放電針29とが交互に半ピッチずらして配置されるので、空気イオンが面1a,1bに照射される際に、第1の位置2の近傍で空気イオンが、フィルム1の幅方向に広がって均一に分配されて照射される。また、各第3放電針31と各第4放電針33とが交互に半ピッチずらして配置されるので、空気イオンが面1a,1bに照射される際に、第2の位置5の近傍で空気イオンが、フィルム1の幅方向に広がって均一に分配されて照射される。これにより、空気イオンがフィルム1の面1a,1bに満遍なく照射されるので、より効率良く除電が行われる。
【0099】
なお、本実施形態では、直流除電ユニットを1つ備えるものとしたが、第1実施形態と同様に2つ、さらに3つ以上の直流除電ユニットを複数備えるものとしてもよい。
[第3実施形態]
図5に示す第3実施形態は、第1実施形態と、第1〜第4放電電極部3,4,6,7,3a,4a,6a,7aの配置のみが相違するものである。以下の説明では、第1実施形態と同一の構成については、第1実施形態と同一の参照符号を用いて説明を省略する。
【0100】
本実施形態における除電装置では、第1〜第4放電電極部3,4,6,7は、フィルム1の移動方向に沿った第1,第2放電電極部3,4の第1の位置2と、第3,第4放電電極部6,7の第2の位置5との距離L1が、第1放電電極部3の第1放電針27の先端と第2放電電極部4の第2放電針29の先端との最短距離D1と、第3放電電極部6の第3放電針31の先端と第4放電電極部7の第4放電針33の先端との最短距離D2よりも大きくなるように配置されている。第1放電電極部3a,4a,6a,7aも、第1放電電極部3,4,6,7と同様に配置されている。以上説明した以外の構成は、第1実施形態と同じである。
【0101】
そして、本実施形態の除電装置の除電作動では、第1放電電極部3で生成された正の空気イオンは、第2放電電極部4に吸引されて、第1の位置2の近傍において、フィルム1の面1aに強制的に照射される。また、第2放電電極部4で生成された負の空気イオンは、第1放電電極部3に吸引されて、第1の位置2の近傍において、フィルム1の面1bに強制的に照射される。
【0102】
このとき、図5(a)(b)に示すように、第1放電針27の先端と第2放電針29の先端との間、第3放電針31の先端と第4放電針33の先端との間で電界が形成されると共に、第1放電針27の先端と第3放電針31の先端との間、第2放電針29の先端と第4放電針33の先端との間でも電界が形成される。
【0103】
よって、例えば、第1放電針27のうちの1つの放電針Aについて、放電針Aの先端と、第2放電針29のうちの放電針Aに対向した放電針Bの先端との間で電界が形成される。また、放電針Aの先端と、第3放電針31のうちの放電針Aに隣接した放電針Cの先端との間で電界が形成される。そして、放電針Aの先端で生成された正の空気イオンは、放電針Aの先端と放電針Bの先端との間で形成された電界に従って、放電針Bに向かって移動すると共に、放電針Aの先端と放電針Cの先端との間で形成された電界に従って、放電針Cに向かって移動する。
【0104】
このとき、図5(a)に示すように、放電針Aの先端と放電針Bの先端との距離(=距離D1)が、放電針Aの先端と放電針Cの先端との距離(=間隔L1)よりも大きい場合には、放電針Aの先端と放電針Bの先端との間で形成された電界の方が、放電針Aの先端と放電針Cの先端との間で形成された電界よりも弱くなる。よって、放電針Aの先端から放電針Bの先端に向かって移動してフィルム1に照射される空気イオンが、放電針Aの先端から放電針Cの先端に向かって移動する空気イオンよりも少なくなる。これに対して、図5(b)に示すように、距離D1が間隔L1よりも小さい場合には、放電針Aの先端と放電針Bの先端との間で形成された電界の方が、放電針Aの先端と放電針Cの先端との間で形成された電界よりも強くなる。よって、放電針Aから放電針Bに向かって移動してフィルム1に照射される空気イオンがより多くなるので、空気イオンをフィルム1により効率良く照射することができる。
【0105】
第1〜第4放電電極部3a,4a,6a,7aについても、第1〜第4放電電極部3,4,6,7と同様である。以上説明した以外の作動は、第1実施形態と同じである。
【0106】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、直流除電ステップにより、フィルム1の面1a,1bの局所的な帯電領域の電荷を中和して除電することができる。さらに、直流除電ステップの後に行う高周波除電ステップにより、フィルム1への逆帯電を防止しつつ、各面1a,1bの電荷を確実に中和して除電することができる。
【0107】
これと共に、本実施形態によれば、放電針の距離よりも放電電極部の間隔が大きくなるように設けられているので、隣接する放電電極部に吸引される空気イオンが低減され、より多くの空気イオンがフィルム1に照射される。よって、より効率良くフィルム1の除電を行うことができる。
【0108】
なお、本実施形態では、第1実施形態の除電装置において、第1放電電極部3,4,6,7,3a,4a,6a,7aの配置が相違するものとしたが、他の実施形態として、第2実施形態の除電装置において、第1放電電極部3,4,6,7の配置が相違するものとしてもよい。このとき、対向する放電電極部の距離は、例えば、一方の放電電極部の放電針の先端と、他方の放電電極部における該放電針の近傍の2本の放電針の先端との最短距離とする。
[第4実施形態]
図6に示す第4実施形態は、第1実施形態において電界遮蔽壁を設けたものである。以下の説明では、第1実施形態と同一の構成については、第1実施形態と同一の参照符号を用いて説明を省略する。
【0109】
図6に示すように、本実施形態における除電装置では、フィルム1の面1a側に、第1,第3放電電極部3,6,3a,6aをそれぞれ覆うように、絶縁体からなる第1電界遮蔽壁40が設けられている。第1電界遮蔽壁40は、第1,第3放電電極部3,6,3a,6aの面1a側は開口し、第1,第3放電電極部3,6,3a,6aのフィルム1の移動方向に直交する方向の両側と、第1,第3放電電極部3,6,3a,6aの背面側とを覆っている。また、フィルム1の面1b側に、第2,第4放電電極部4,7,4a,7aをそれぞれ覆うように、絶縁体からなる第2電界遮蔽壁41が設けられている。第2電界遮蔽壁41は、第2,第4放電電極部4,7,4a,7aの面1b側は開口し、第2,第4放電電極部4,7,4a,7aのフィルム1の移動方向に直交する方向の両側と、第2,第4放電電極部4,7,4a,7aの背面側とを覆っている。以上説明した以外の構成は、第1実施形態と同じである。
【0110】
これにより、電界遮蔽壁40,41によって、第1放電電極部3と第2放電電極部4との間で形成される電界と、第3放電電極部6と第4放電電極部7との間で形成される電界との干渉を低減することができる。同様に、第3放電電極部6と第4放電電極部7との間で形成される電界と、第1放電電極部3aと第2放電電極部4aとの間で形成される電界との干渉を低減することができる。同様に、第1放電電極部3aと第2放電電極部4aとの間で形成される電界と、第3放電電極部6aと第4放電電極部7aとの間で形成される電界との干渉を防止することができる。よって、隣接する放電電極部の間隔を小さくすることができるので、除電装置を小型化することができる。
【0111】
本実施形態によれば、直流除電ステップにより、フィルム1の面1a,1bの局所的な帯電領域の電荷を中和して除電することができる。さらに、直流除電ステップの後に行う高周波除電ステップにより、フィルム1への逆帯電を防止しつつ、各面1a,1bの電荷を確実に中和して除電することができる。
【0112】
これと共に、本実施形態によれば、電界遮蔽壁40,41により、各放電電極部で形成される電界が遮蔽されるので、隣接する放電電極部の間の電界の干渉を低減することができる。よって、電界の干渉を緩和するために隣接する放電電極部の間隔を大きくする必要がないので、隣接する放電電極部の間隔を小さくして除電装置を小型化することができる。
【0113】
なお、本実施形態では、第1実施形態の除電装置において、電界遮蔽壁を設けるものとしたが、他の実施形態として、第2実施形態の除電装置において、電界遮蔽壁を設けるものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明の第1実施形態における除電装置の概略構成図。
【図2】本発明の第2実施形態における除電装置を示す構成図。
【図3】図2のIII−III線端面図。
【図4】図2の除電装置における除電作動の説明図。
【図5】本発明の第3実施形態における除電装置の除電作動の説明図。
【図6】本発明の第4実施形態における除電装置の概略構成図。
【符号の説明】
【0115】
1…フィルム、1a…フィルム1の一方の面、1b…フィルム1の他方の面、2,2a…第1の位置、3,3a…第1放電電極部、4,4a…第2放電電極部、5,5a…第2の位置、6,6a…第3放電電極部、7,7a…第4放電電極部、8,8a…直流除電ユニット、9…第5放電電極部、10…第6放電電極部、27,29,31,33,35,38…放電針、40,41…電界遮蔽壁、42…第3の位置、43…高周波除電ユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動するシート状の帯電物体に、正及び負のコロナ放電により生成された正及び負の空気イオンを供給して除電する除電方法において、
前記帯電物体の移動方向に沿った第1の位置で前記帯電物体の一方の面に対向して設けられた第1放電電極部と、該第1の位置で該帯電物体の他方の面に対向して設けられた第2放電電極部とに、正及び負の直流高電圧を印加して、該第1放電電極部で生成された正の空気イオンを該帯電物体の該一方の面に照射すると共に、該第2放電電極部で生成された負の空気イオンを該帯電物体の該他方の面に照射する第1の直流除電ステップと、
前記第1の位置から前記帯電物体の移動方向に所定間隔離れた第2の位置で該帯電物体の前記一方の面に対向して設けられた第3放電電極部と、該第2の位置で該帯電物体の前記他方の面に対向して設けられた第4放電電極部とに、負及び正の直流高電圧を印加して、該第3放電電極部で生成された負の空気イオンを該帯電物体の該一方の面に照射すると共に、該第4放電電極部で生成された正の空気イオンを該帯電物体の該他方の面に照射する第2の直流除電ステップと、
前記第1の直流除電ステップと前記第2の直流除電ステップとを1組の工程として、該工程が前記帯電物体の移動方向に沿って1回又は複数回行われた後、該帯電物体の移動方向に沿った第3の位置で、該帯電物体を挟んで対向して設けられた第5放電電極部と第6放電電極部とに、それぞれ高周波高電圧を印加して、該第5及び第6放電電極部でそれぞれ生成された正及び負の空気イオンを、該帯電物体の一方及び他方の面に供給する高周波除電ステップとを備えたことを特徴とする除電方法。
【請求項2】
移動するシート状の帯電物体に、正及び負のコロナ放電により生成された正及び負の空気イオンを供給して除電する除電装置において、
前記帯電物体の移動方向に沿って設けられた、正及び負の直流高電圧が印加される1又は複数の直流除電ユニットと、該直流除電ユニットより該帯電物体の移動方向の進行側に設けられた、高周波高電圧が印加される高周波除電ユニットとを有し、
前記直流除電ユニットは、前記帯電物体の移動方向に沿った第1の位置で該帯電物体の一方の面に対向して設けられた第1放電電極部と、該第1の位置で該帯電物体の他方の面に対向して設けられた第2放電電極部と、該第1の位置から該帯電物体の移動方向に所定間隔離れた第2の位置で該帯電物体の該一方の面に対向して設けられた第3放電電極部と、該第2の位置で該帯電物体の該他方の面に対向して設けられた第4放電電極部とを備え、
前記第1及び第2放電電極部への正及び負の直流高電圧の印加によって、前記第1放電電極部で生成された正の空気イオンを前記帯電物体の前記一方の面に照射すると共に、前記第2放電電極部で生成された負の空気イオンを該帯電物体の前記他方の面に照射し、前記第3及び第4放電電極部への負及び正の直流高電圧の印加によって、前記第3放電電極部で生成された負の空気イオンを該帯電物体の該一方の面に照射すると共に、前記第4放電電極部で生成された正の空気イオンを該帯電物体の該他方の面に照射するものであり、
前記高周波除電ユニットは、前記帯電物体の移動方向に沿った第3の位置で、該帯電物体を挟んで対向して設けられた第5放電電極部と第6放電電極部とを備え、
前記第5及び第6放電電極部への高周波高電圧の印加によって、前記第5及び第6放電電極部でそれぞれ生成された正及び負の空気イオンを、前記帯電物体の一方及び他方の面に供給するものであることを特徴とする除電装置。
【請求項3】
請求項2記載の除電装置において、前記第1放電電極部は1又は複数の第1放電針を有し、前記第2放電電極部は1又は複数の第2放電針を有し、前記第3放電電極部は1又は複数の第3放電針を有し、前記第4放電電極部は1又は複数の第4放電針を有し、
前記第1放電針と前記第2放電針とは、それぞれ、前記帯電物体の幅方向に沿って該帯電物体から所定間隔を取って延びる列上に配置され、該列には、それぞれ、該第1放電針と第2放電針とが、各放電針の軸心を該帯電物体と対向する方向に向けて、交互に並ぶように配置され、
前記第3放電針と前記第4放電針とは、それぞれ、前記帯電物体の幅方向に沿って該帯電物体から所定間隔を取って延びる列上に配置されており、該列には、それぞれ、該第3放電針と第4放電針とが、各放電針の軸心を該帯電物体と対向する方向に向けて、交互に並ぶように配置されていることを特徴とする除電装置。
【請求項4】
請求項2又は3記載の除電装置において、前記第1の位置と前記第2の位置との間隔を、前記第1放電針の先端と前記第2放電針の先端との間の最短距離及び前記第3放電針の先端と前記第4放電針の先端との間の最短距離とに比べて大きくとったことを特徴とする除電装置。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれか記載の除電装置において、前記第1放電電極部と前記第3放電電極部との間に絶縁体からなる第1電界遮蔽壁を設けると共に、前記第2放電電極部と前記第4放電電極部との間に絶縁体からなる第2電界遮蔽壁を設けることを特徴とする除電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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