説明

陰イオン交換膜およびポリマーイオノマーを含む電気化学的装置

ポリマーのイオン交換膜およびイオノマーを含む抵抗、熱安定性および伝導率について高い機能を認める電気化学的装置を記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学的装置、および特に、イオノマーとしてイオンポリマーを含む電気化学的装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学的装置は、電気を生み出すために電気化学反応が使用される装置である:たとえば、燃料電池(fuel cell)、電解質電池(electrolytic cell)、バッテリー、電解槽(electrolyser)などの装置である。
【0003】
特に、燃料電池は、2つのシステムに分割され得る:燃料電池システムへ導入する前に燃料を処理する「改変基礎型(reformer−based)」、または、個別の内部または外部の処理を必要とせずに電池に燃料を直接供給する「直接酸化型」。後者のシステムは、今後数年間に電気自動車および携帯用電子機器に対する有望な動力源であると思われる。
【0004】
「直接酸化型(direct< oxidation)」(DAFC、つまり、直接アルコール燃料電池ともよぶ)の主な利点は、メタノール、エタノール、エチレングリコールなどの、体積エネルギー密度が高く、かつ、エネルギー効率が良好である液体燃料の使用に関係がある;さらに、それらは、気体燃料より格納および輸送が容易になされる。
【0005】
通常80℃を下回る温度および環境気圧で作動するDAFCにおいて、液体燃料および酸素は電気化学的に電力、熱、二酸化炭素および水へと変換するものである。電池は、反応が起こる2つの電極、陽極および陰極および2つの電極間にある電気的に非導電性のポリマー膜から成る。これには3つの機能がある:電池の2つの部分の間にイオン接触をもたらし、陽極および陰極の間の電気接触を防ぎ、および電極に供給した試薬を個別に維持することもまた保証する。2つの異なるポリマー膜カテゴリーをDAFCにおいて使用し得る:プロトン交換膜(PEM)およびアルカリ交換膜(AEM)。
【0006】
ナフィオン(登録商標)(デュポン)などのPEM膜を使用する直接アルコール燃料電池および貴金属触媒は、広範囲に研究されているが、その開発はいくつかの重大な問題により妨げられている:電極におけるゆっくりとした動力学、燃料の損失および陰極の潜在的な減少を引き起こす物理的な拡散および電気浸透プロトン抗力による膜を通過したアルコール交差(crossover)、電極のCO被毒;膜および触媒のコスト高(一般的に、白金を使用する)。
【0007】
特別の利点は、DAFC技術のAEM膜の使用から生じる:両電極への素早い動力学、より安価な非貴触媒を使用する可能性、電気浸透抗力によるアルコール交差の低下、CO被毒へのより高い抵抗およびコストの減少。
【0008】
同様の種類の膜もまた、水素生産用の電解質電池に使用される(特許文献1)。この場合、膜は陽極および陰極のコンパートメント間の隔膜として作用し、処理の間に生じるガスを分離し、および、純度の高い水素をもたらし、またはさらなる精製を要求しない。
【0009】
DAFCを適用するためのAEMの現在の技術は、存在する妥当な低コストの膜を得る可能性に関連するいくつかの限界を示す:高度なイオン伝導率、pHの高い媒体(media)における化学的安定性、アルコール交差に対する低度の透過性、および良好な機械的性質。
【0010】
AEMは2つの異なる分類に分けられ得る:ポリマー−塩複合体およびイオノマー。
【0011】
ポリマー−塩複合体は、異種原子(一般的に、酸素または窒素)およびイオン性塩を含むポリマーの混合体である。構造内のイオン伝導の原理は、ポリマー−陽イオン間の相互作用、および非晶質高分子相における対応する陰イオンの可動性に基づく。いくつかの活動は、文献内で報告されているが、焦点の大多数は燃料電池以外の適用について集まっている。
【0012】
ポリエチレンオキシド(PEO)を有するKOHの合成物は、非特許文献1にて、亜鉛−ニッケル電池用の膜として報告されている。
【0013】
水酸化テトラメチルアンモニウムとポリ(アクリル酸ナトリウム)との混合体は、非特許文献2にて製造されており、その著者は潜在的な適用としてAEMに言及した。
【0014】
しかしながら、上記の前記膜は、一般的に、それらの高度な結晶化度の結果として、非常に高温(100℃またはそれより高温)でのみ、高pH媒体および高度なイオン伝導率において、貧弱な化学的安定性を示す。これらの材料のフィルムを形成する特性は、必要以上に典型的に低い。さらに、COが電極で生成されるアルカリ燃料電池中の可動性陽イオン(K、Na)の存在は、従来の水性KOH電解質アルカリ燃料電池に関する重大な問題として、電極層を遮断する、不要な炭酸塩の沈殿を生じ得る。
【0015】
モノマーのイオン性単一体を使用することによって、非イオン性の交換膜におけるように、炭酸塩の沈殿の問題は回避される。実際、陽イオン性の部位(典型的には、ベンジルトリメチルアンモニウムを基礎とする)をポリマー骨格上で共有結合する。前記イオノマーは、第四級アンモニウム部位に存在するスチレン骨格(たとえば、ジビニルベンゼン/スチレン共重合体、ジビニルベンゼン/4−ビニル−ピリジン共重合体)によって構成されたポリマーを含む。しかしながら、これらの材料は機械的に脆く、高pH媒体において耐久性が貧弱である。ベンジルトリアルキルアンモニウムイオンで官能基化された膜に共通する安定性の不足は、2つの異なる機構によって、主としてOH陰イオンを有するアンモニウムイオンの反応による:β水素がアルキルアンモニウムイオンにおいて存在する場合、ホフマン脱離;水酸化物イオンによるメチルおよび/またはアミンの直接的な求核置換。
【0016】
最近の研究は、AEMの安定性は、pHが高い環境において、2つの異なる方法によって増加され得ることを実証した:ジアミンを使用したポリマー架橋;ベンゼン環と四価窒素との間のアルキレンまたはアルキルエンオキシメチレンスペーサー鎖の導入。
【0017】
非特許文献3は、最近、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサン−1,6−ジアミンヘキサンで官能基化されたポリビニルベンジル塩化物に基づくアルカリ性膜を合成し、直接メタノール燃料電池への適用におけるAEMとしての材料を試験した。
【0018】
陰イオン交換への適用に対する膜は、ポリオレフィン性のマトリックス内のイオノマーを包含することにより製造された。2つのコンポーネントの最も適した性質を組み合わせたこの膜:イオノマー(たとえば、第四級アンモニウムで官能基化されたポリビニルベンジル塩化物またはポリ−4−ビニルピリジン)のイオン交換の特性およびポリオレフィン性の基質(通常、ポリプロピレンまたはポリエチレン)の機械的性質および化学的安定性。AEM膜の製造のための別の方法は、ポリマー基礎フィルムへの適切なモノマーの放射線誘導型グラフト重合に基づく。ポリ(ビニリデンフッ化物−[CHCF−)などの部分的にフッ素化されたフィルムおよびポリ(テトラフルオロエチレン−コ−ヘキサフルオロプロピレン−[CFCF[CF(CF)CF−)などの完全にフッ素化されたフィルムへの、γ線を使ったビニルベンジル塩化物のグラフト化。非特許文献4は、後のアミネーション(ammination)に官能基化されたポリマーを提案した。
【0019】
特許文献2において、シュテンツェルら(Stenzel et al.)は、メタノール燃料電池用の膜として陰イオン交換体の固体ポリマーの使用を開示した。
【0020】
特許文献3において、スガヤら(Sugaya et al.)は、化学的に不活性な熱可塑性材料において支持されたイオノマーで構成される、陰イオン交換膜の生産を開示した。イオノマーは、ベンゼン環と四価窒素との間のアルキレンまたはアルキルエンオキシメチレンスペーサー鎖を有するスチレン骨格を有するポリマーから構成される。イオン導電性ポリマーは、熱可塑性マトリックス上のモノマーの吸着、次いでラジカル重合「インサイチュ(in situ)」によって、製造される。
【0021】
特許文献4において、タカハシら(Takahashi et al)は、アルキル第四級アンモニウム塩およびある塩を有するポリマーで構成されるポリマー電解質の製造を開示した。該塩は、四価窒素原子およびハロゲン化アルミニウムを含む複素環式化合物の反応生成物である。
【0022】
特許文献5において、ヤオら(Yao et al.)は、アルカリ型燃料電池における膜として使用されるポリマー電解質の生産を開示した。組成は、四価窒素原子、第四級アンモニウムを含むエテロサイクル(eterocycle)および金属水酸化物を含むユニットを有するポリマーを含む。
【0023】
アルカリ条件下で作動する陰イオン交換膜の開発は、明白に高機能電気化学的装置の製造のための基本的な過程に見える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】独国特許第2380055号明細書
【特許文献2】米国特許第4,828,941号明細書
【特許文献3】米国特許第7,081,484号明細書
【特許文献4】米国特許第5,643,490号明細書
【特許文献5】米国特許第6,183,914号明細書
【非特許文献】
【0025】
【非特許文献1】Arof et el., Solid State Ionics, 156 (2003) 171
【非特許文献2】Sun et al., Electrochimica Acta, 48 (2003) 1971
【非特許文献3】Varcoe et al., Chem. Commun., (2006) 1428
【非特許文献4】Danks et al., J. Mater. Chem. 13 (2003) 712
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明は、上記の前記問題を解消することを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明は、強度なアルカリ環境における非常に高い安定性、良好な機械特性および高度なイオン伝導率を有する新たな陰イオン交換膜の結果、耐性(resitance)、熱安定性、伝導率において機能性が高い利用可能な電気化学的装置を作製する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に記載の膜は、式(I):
【化1】

(I)

(式中、Pは化学的に安定した有機ポリマーであり;および、Rは式(II)
【化2】

(II)

(式中、AおよびBはC1−4のアルキル基、RおよびRは同一または異なるC1−6のアルキル基またはC1−6のアルキレン基、およびRは上記で定義されているさらなるR基によって官能基化されたC1−6のアルキル基であり;Xは陰イオンである)
を有する置換基である)
の、官能基化された不活性な熱可塑性エラストマーの二相のマトリックスからなる。
【0029】
発明によれば、化学的に安定した有機ポリマーは、巨大分子骨格上に弱いC−H結合を有する既知の熱可塑性エラストマーである。
【0030】
上記ポリマー、市販品、は、必要であれば2相系をもたらすために、ブロック共重合体またはグラフト共重合または相溶性混合体によって通常製造される。ポリマーPの特別の例は、本発明によれば、ブロックポリマー、ポリ(スチレン)−b−(ブタジエン)−b−(スチレン)(SBS)である。
【0031】
本発明によれば、アルキル基は、メチル、プロピル、ブチル、ペンチルおよびヘキシルである;アルケニル基は、好ましくは、n=2、3、4および5を有する式(CHのポリメチレン(それぞれ、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレンおよびヘキシレン)である;一方、ハロゲン化物または水酸化物イオンは好ましい陰イオンである。
【0032】
好ましくは、−N−B−N基(陰イオン交換部位を示す)は、次のものからなる群で選ばれる:1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、N,N,N’,N’−テトラメチルメタンジアミン (TMMDA)、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン(TMPDA)、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−ブタンジアミン(TMBDA)、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン(TMHDA)、N,N,N’,N’−テトラエチル−1,3−プロパンジアミン(TEPDA)。
【0033】
R置換基は、ポリマーP上でグラフトされ、好ましくはエラストマーポリマーの100個のモノマー単位についてモルで4〜15%で含まれる量にある。
【0034】
本発明に記載の膜の製造方法は、式(III):
【化3】


(III)

(式中、Aは以前に定義される通りであり、およびYは良好な脱離基、たとえば、塩素、臭素、ヨウ素、p−トルエンスルフォナートまたはメチルスルフォニル基である)
のビニルモノマーのラジカルグラフト化(radical grafting)によるポリマーの官能基化を含む。
【0035】
ポリマーマトリクスとイオン部位との間の結合は、非加水分解性の共有結合によって保証される。
【0036】
その後、所望のアミンを有する官能基化が達成される。
【0037】
詳細には、該方法は次の工程を含む:ポリマーを、アルゴンまたは窒素雰囲気下で予備的に蒸留して得た不活性溶媒に最初に溶かす。次いで、式(III)のモノマーを室温で溶かす。
【0038】
溶媒は、テトラヒドロフランもしくはジオキサンのように全て脂肪族であるかもしれないし、またはトルエン、ベンゼンまたはキシレンのように芳香族であるかもしれない。
【0039】
好ましくは、この最終体が反応条件下で液体である場合、ポリマーをモノマー(III)へ直接溶かしてもよい。
【0040】
ポリマーおよびモノマー溶解の後、適当な量のラジカル開始剤(initiator)を加える(好ましくはポリマーの繰り返し単位に関してモルで0.5〜1%)。
【0041】
穏やかな熱条件下で均一に(homolitically)壊された弱い結合を含むラジカル開始剤は、過酸化ベンゾイル(BPO)もしくは過酸化ジクミルのような有機性過酸化物またはアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)のようなアゾ化合物であるかもしれない。開始剤は、巨大分子骨格へのラジカル形成を生じ得る2つの活性ラジカルへの温度で分解する。この巨大ラジカルは、大量の(bulk)ポリマー上にその化学的グラフト化を促進する、機能的なスチレンに基づいたモノマーに向かう高度な反応作用の結果をもたらす。
【0042】
ポリマー官能基化は、60℃より高い温度、より好ましくは60〜100℃の範囲内で、1時間、より好ましくは1から2〜3時間、不活性ガス雰囲気下で、100〜300の間の範囲にある毎分回での機械的な攪拌下で、達成される。
【0043】
確立される範囲における反応の進捗を遮断するために、試薬混合体に3,4−ジ−ターシャリ−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)、イルガノックス(Irganox)1010またはイルガノックス1076のようなラジカル反応抑制剤化合物を加えることは可能である。
【0044】
メタノール中の反応混合体の沈殿後に粗生成物が得られ、およびそれは未反応ポリマー、反応性モノマーのラジカル重合に由来するホモポリマーおよび標的官能基化ポリマーの混合体でなる。
【0045】
スチレンに基づいた反応性モノマーのラジカル重合に由来するホモポリマーは、約6時間、ジアルキルエーテル、またはより好ましくはアセトンであり得る選択溶媒を用いて、固形混合物の抽出によって粗生成物から取り除かれる。得られた生成物は、最初の量のラジカル開始剤に依存するポリマーの100繰り返し単位あたり4〜10モルの間の量において、反応性官能基部を共有結合で結合させた連続的なポリマーマトリクスからなる。
官能基化ポリマーには、一般構造式(IV):
【化4】


(IV)

(式中、AおよびYは、以前に定義される)
を有する。
【0046】
次いで、Y基を陰イオン交換部位に変換するために、官能基化ポリマーを、質量で1%の濃度で、ベンゼンまたはトルエンになり得る適切な溶媒内で溶解する。易溶の第三級アミン、第三級ジアミン、またはより好ましくは、第三級環式ジアミンもしくは混合体を、官能基化ポリマーのY基について、モルで1.5を越える過剰のモルを有する溶液に加える。次いで、混合体を、50℃より高い温度、より好ましくは50〜80℃の範囲内で、2時間を超える時間、より好ましくは2〜4時間、攪拌下で、ウォーミング・アップする。次いで、混合体を一晩60℃でオーブン内に置き、アミノ化反応を完了し、かつ該溶媒を完全に除去して、厚さが30〜90μmの範囲にある陰イオン導電性のポリマー性の薄いフィルムを供給する。
【0047】
あるいは、アミノ化処理を、官能基化ポリマーのフィルム上にて実施する。したがって、ポリマーを、ジクロロメタンまたはクロロホルムであり得る適切な溶媒、およびペトリ皿へ注いだ溶液へ、質量で1%の濃度で溶解する。溶媒蒸発後、30〜90μmの範囲の厚さの1紙片として得られる薄いフィルムを除去する。夜間80℃のオーブン内で溶媒を完全に除去した後、次いで、Y基を陰イオン交換基と置き換えるためにフィルムを1M ジアミン溶液に浸す。
【0048】
選択した溶媒は、アミン反応体を完全に可溶化するものであるが、官能基化ポリマーフィルムを溶かす必要はない。たとえば、メタノール、アセトニトリルまたはジメチルホルムアミドを使用し得る。反応を、24時間を超える時間、より好ましくは24〜72時間の時間、50℃より高い温度、より好ましくは50〜80℃の範囲の中で実施する。次いで、フィルムを、アミン溶液から除き、新鮮な量の溶媒および水で繰り返し洗浄し、および連続的に80℃のオーブンで乾燥して、溶媒を完全に除去し、厚さが30〜90μmの範囲内にある陰イオン導電性のポリマー性の薄いフィルムをもたらす。
【0049】
次いで、一晩室温で、1M KOH水溶液にフィルムを浸し、および連続的に約12時間80℃でオーブン内へ置いた。
【0050】
上記の通りに調製された膜において、KOHへのアンモニウム塩を、高度な立体障害を有するジアミンを使用することにより得られた高度の四級化によってもたらされる。安定性を、高温で強アルカリ性溶液を用いた処理前後に、ポリマーフィルムの伝導率および電気抵抗および温度特性を比較することにより確認する。
【0051】
調製された膜の高陰イオン伝導率は、エラストマーのポリマーマトリクスの官能基化に厳密に関連する。
【0052】
陰イオンの伝導率を、異なるKOH濃度で2度蒸留して得た水およびアルカリ性溶液内で、評価している。
【実施例】
【0053】
例1
5モルのp−クロロ−メチルスチレン(VBC)、1モルのブロック共重合体SBSのモノマーユニットおよび質量で0.3%(SBSに対する)の過酸化ベンゾイルを不活性雰囲気下で混合し、3時間80℃で撹拌した。次いで、混合物をクロロホルムで希釈し、メタノールおよび/またはアセトン内で繰り返し沈殿することにより精製した。得られたポリマーの1モルのモノマーユニットをクロロホルムで溶解し、クロロホルムで飽和した雰囲気中でゆっくりとした溶媒蒸発によってテフロン(登録商標)上で膜化した。次いで、得られたフィルムを、72時間60℃で、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(デブコ(Dabco))1M メタノール溶液内へ浸漬した。
【0054】
【表1】

【0055】
例2
例1において報告されている通りに調製されたフィルムを、二度蒸留して得た水またはKOH 1、5および10質量%溶液において、電気化学的抵抗および電気抵抗(impedence)測定によってそれぞれ特徴づけた。結果をフマテク有限会社(Fumatech GmbH)(ドイツ)による基準膜に対して同じ条件で得られた値と比較して、表2および3で報告する。
【表2】

【表3】

【0056】
例3
調製した膜の熱安定性を、示差走査熱量測定法(DSC)によって評価した。ポリマーフィルムSBSF9を、1時間80℃で5% KOHおよび10% エタノールを含む水溶液内で浸漬した前後で分析した。該溶液は、直接アルコール燃料電池内で潜在的に使用した燃料の例である。さらに、窒素雰囲気下で熱劣化分析を、膜の熱安定性間隔を評価するために実施した。データはすべて表4に報告した。
【表4】

【0057】
強アルカリ性溶液中の熱処理前後のガラス転移および分解温度は、DABCOで得られたポリマー骨格構造も網目度も前記処理によって影響を受けなかったことを示す値において類似しているように見えた。
【0058】
陰イオン交換FAA(フマテク)膜の使用と関係する技術的な注記が、40℃より高い温度での使用について教示していないことに注目すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

(I)

(式中、Pは化学的に安定した有機ポリマーであり;および、Rは式(II)
【化2】

(II)


(式中、AおよびBはC1−4のアルキル基、RおよびRは同一または異なるC1−6のアルキル基またはC1−6のアルキレン基、およびRは上記で定義されているさらなるR基によって官能基化されたC1−6のアルキル基であり;Xは陰イオンである)
を有する置換基である)
を有する電気化学的装置のための膜。
【請求項2】
化学的に安定した有機ポリマーPは、巨大分子の骨格上に弱いC−H結合を有する熱可塑性エラストマーである、請求項1に記載の膜。
【請求項3】
前記は、5%を越える不飽和および飽和結合間の比率を含むスチレン/脂肪族ポリマーである、請求項2に記載の膜。
【請求項4】
前記ポリマーは、ポリ(スチレン)−b−(ブタジエン)−b−(スチレン)SBSである、請求項3に記載の膜。
【請求項5】
前記アルキル基は、メチル、プロピル、ブチル、ペンチルおよびヘキシルであり、前記アルキレン基は、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレンおよびヘキシレンであり;陰イオンはハロゲン化物または水酸基である、請求項1〜5に記載の膜。
【請求項6】
−N−B−N基は、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、N,N,N’,N’−テトラメチルメタンジアミン (TMMDA)、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン(TMPDA)、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−ブタンジアミン(TMBDA)、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン(TMHDA)、N,N,N’,N’−テトラエチル−1,3−プロパンジアミン(TEPDA)から選ばれる、請求項1〜5に記載の膜。
【請求項7】
R置換基は、エラストマーポリマーの100回繰り返し単位についてモルで4〜15%で含まれる量でグラフトされる(grafted)、請求項6に記載の膜。
【請求項8】
一般式(I)を有する膜の製造のための方法であって、ポリマーを、式(III)
【化3】


(III)


(式中、Aは以前に定義される通りであり、およびYは良好な脱離基である)
のビニルモノマーを用いたラジカル誘導型グラフト化により官能基化し、次いでそのように得られたポリマーを適当なアミンで官能基化する、前記方法。
【請求項9】
− ポリマーを、はじめに不活性溶媒において、または、直接式(III)のモノマーにおいて溶解し、次いでラジカル開始剤を加え、および第1の場合では、モノマー(III)を室温で加え;
− 得られた粗生成物は一般式(IV)
【化4】

(IV)
(式中、AおよびYは以前に定義される通りである)を有し、官能基化されたポリマーのY基について、モルで1.5を越える過剰なモルで加えられたアミンおよび適当な溶媒において溶解し;
− 混合物を、50℃より高い温度での攪拌下、および連続的に60℃、オーバーナイトで加熱し、アミノ化工程を完了し、かつ、完全に溶媒を取り除く
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
− 式(IV)
【化5】

(IV)
の官能基化されたポリマーを、
− 適切な溶媒に溶解し、およびその後溶媒を蒸発させて
− フィルムを得て、次いでY基を陰イオン交換部に変換するためにジアミン溶液に浸漬し;
− 次いで得られたフィルムを、アミン溶液から除き、純粋な溶媒、水で広範囲に洗浄し、および80℃のオーブン内で乾燥し、すべての揮発性物質を除去し;
− 次いで、フィルムを、一晩、室温で1M KOH水溶液内へ浸漬し、次いで乾燥する、
一般式(I)を有する膜の製造のための方法。
【請求項11】
電気化学的装置における請求項1〜7に記載の膜の使用。
【請求項12】
請求項1〜7に記載の膜を含む電気化学的装置。
【請求項13】
燃料電池、電解質電池、バッテリー、電解槽:からなる群で選ばれる、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記装置が燃料電池である、請求項13に記載の装置。

【公表番号】特表2010−533222(P2010−533222A)
【公表日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−515646(P2010−515646)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【国際出願番号】PCT/IB2008/052763
【国際公開番号】WO2009/007922
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(507006260)アクタ ソシエタ ペル アチオニ (6)
【Fターム(参考)】