説明

陳列システムおよび陳列装置

【課題】容器に付された標記を特定の方向により確実に向ける。
【解決手段】下流側第2ローラ群312Bの各ロール状部材314の幅方向の長さd4の方が、上流側第2ローラ群312Aの各ロール状部材314の幅方向の長さd2よりも大きくなっている。また上流側第2ローラ群312Aの各ロール状部材314、および、下流側第2ローラ群312Bの各ロール状部材314は、回転ができないように固定されている。上流側第2ローラ群312Aの各ロール状部材314と下流側第2ローラ群312Bの各ロール状部材314とが固定されることにより、容器の右方側且つ底部に抗力が付与される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の陳列を行う陳列システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばコンビニエンスストアなどにおいては、飲料缶やペットボトルなど飲料が充填された容器が、例えば陳列ケースに収容された陳列装置に縦置きに載せられて販売される。そしてこのような陳列装置は、例えば、容器自身の自重により陳列ケースの前方に容器が移動するように傾斜した状態で配置される。そして、手前側(最前列)の1つの容器を抜き取ると、後続の容器が自重で手前側に移動する。
ここで陳列装置の容器が載せられる箇所には、容器の滑りの良さから例えばプラスチックの平板が設けられる。また、近年では回転可能なローラを多数配置した陳列装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、容器の補充は陳列装置の後方側から行うのが一般的であるが、手前側からの容器の投入を可能とするとともに、奥側に移動した容器が、再度手前側に移動し陳列される陳列装置も提案されている(例えば、特許文献2参照)。さらに、容器に関するものとして、缶底に形成された環状凸部の内周壁に、内側凹部と縦リブとが円周方向に交互に形成された缶が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−155701号公報
【特許文献2】米国特許第6502408号
【特許文献3】特開2000−211624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、容器の外面には、商品名や商標などの標記が設けられるが、この標記が購入者の取り出し方向に向いていないと、商品の識別がしにくくなるとともに、商品の陳列時の見栄えが悪くなる。このため、容器を陳列する陳列装置では、容器を周方向に回転させ容器の標記を前方などの特定の方向に向けることが好ましくなる。
【0005】
ここで、容器の外周面に対し滑りやすい領域と滑りにくい領域の2つの領域を形成することで、容器を周方向に回転させ容器の標記を前方などの特定の方向に向けることが可能となる。より具体的には、2つの領域を形成することで、容器の周方向における回転が可能になるとともに、意図した箇所でこの回転を停止可能となり、容器に付された標記をある特定の方向に向けることが可能となる。さらに具体的に説明すると、上記滑りにくい領域と陳列装置に設けられたガイド等との接触によって容器を周方向に回転させることができる。そして、この回転に伴い、上記滑りやすい領域とガイドとが対峙するようになり、両者の間で滑りが生じ、容器の回転が停止する。そしてこの際に、標記をある特定の方向に向けることができる。
【0006】
ところで、容器が載置される載置部の傾斜角度が大きい場合などに、容器の回転力が大きくなる場合がある。そしてこの場合、上記滑りやすい領域とガイドとが接触したとしても、容器の慣性によって容器の回転が継続され、標記が上記特定の方向以外の方向を向くようになってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明が適用される陳列システムは、外周面に標記が付されるとともに摩擦係数および周方向における位置が互いに異なる第1の領域および第2の領域を外周面に有する容器と、容器を陳列する陳列装置と、を備え、陳列装置は、容器を予め定められた移動経路に沿って移動させる移動手段と、移動経路の一方の側方側および他方の側方側のうちの一方の側方側に設けられ、移動経路を移動する容器の第1の領域と接触した際に第1の領域に抗力を与え容器を周方向に且つ一方向に回転させるとともに、回転に伴い接触する第2の領域との間で滑りを生じさせる容器接触部と、第2の領域が容器接触部に接触した状態にある容器のうちの他方の側方側に位置する部位に接触することで他方の側方側に位置する部位に抗力を付与し、一方向とは反対の方向に容器を回転させる回転部と、を有していることを特徴とする陳列システムである。
【0008】
ここで、回転部は、移動経路の下方に設けられ容器の底部に接触し底部に対し抗力を付与することを特徴とすることができる。また、移動手段は、移動経路の下方に回転可能なロール状部材を複数有し、ロール状部材を利用することで容器の移動を行い、複数設けられたロール状部材のうちの一部のロール状部材は、固定され、回転部は、固定された一部のロール状部材によって構成されていることを特徴とすることができる。また、回転部が他方の側方側に位置する部位に付与する抗力は、容器接触部が第1の領域に与える抗力よりも小さいことを特徴とすることができる。さらに、容器の標記は、第2の領域が容器接触部に接触し両者の間で滑りが生じた際に陳列装置の前方側を向くように容器に付されていることを特徴とすることができる。また、容器は、容器本体部と、容器本体部に装着された装着部材とから構成され、第1の領域および第2の領域は、装着部材に形成されていることを特徴とすることができる。
【0009】
また、本発明を陳列装置と捉えた場合、本発明が適用される陳列装置は、外周面に標記が付されるとともに摩擦係数および周方向における位置が互いに異なる第1の領域および第2の領域を外周面に有する容器を予め定められた移動経路に沿って移動させる移動手段と、移動経路の一方の側方側および他方の側方側のうちの一方の側方側に設けられ、移動経路を移動する容器の第1の領域と接触した際に第1の領域に抗力を与え容器を周方向に且つ一方向に回転させるとともに、回転に伴い接触する第2の領域との間で滑りを生じさせる容器接触部と、第2の領域が容器接触部に接触した状態にある容器のうちの他方の側方側に位置する部位に接触することで他方の側方側に位置する部位に抗力を付与し、一方向とは反対の方向に容器を回転させる回転部と、を含む陳列装置である。
【0010】
ここで、容器接触部は、移動経路に沿って配置された基材と、基材の表面に取り付けられ基材よりも軟質に形成され第1の領域および第2の領域に接触する接触材と、により少なくとも構成されていることを特徴とすることができる。また、容器接触部のうちの第1の領域および第2の領域に接触する面は、面の高さ方向における中央部から上方に向かうに従いおよび下方に向かうに従い容器の移動経路から離れるように曲率を有した状態で形成されていることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、容器に付された標記を特定の方向により確実に向けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係る陳列システム等の概略構成を示した図である。
【図2】陳列システムを前方から眺めた場合の図である。
【図3】陳列装置を説明するための図である。
【図4】容器を説明するための図である。
【図5】陳列装置における容器の動作を説明するための図である。
【図6】陳列装置における容器の動作を説明するための図である。
【図7】陳列装置における容器の動作を説明するための図である。
【図8】陳列装置における容器の動作を説明するための図である。
【図9】陳列装置の他の構成例を示した図である。
【図10】陳列装置の他の一形態を示した図である。
【図11】容器に対して印刷を行う印刷機を説明するための図である。
【図12】容器の他の形態を示した図である。
【図13】容器の他の形態を示した図である。
【図14】容器の他の形態を示した図である。
【図15】容器の他の一形態を示した図である。
【図16】装着部材を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1(A)は、本実施形態に係る陳列システム100の概略構成を示した図である。図1(B)は、陳列システム100がコンビニエンスストア、スーパーマーケットなどに設置された場合を示した図である。また、図2は、陳列システム100を前方から眺めた場合の図である。
【0014】
陳列システム100は、図1(A)、図2に示すように、識別標記23が付されるとともに飲料などの内容物が充填された容器20と、容器20を陳列する陳列装置30とを有している。また、陳列装置30は、容器20が載せられるとともにこの容器20を移動させる載置部31(移動手段の一例)と、容器20の移動経路を形成するとともに容器20の移動を案内するガイド32と、ガイド32に設けられるとともに容器20の外周面に接触しこの外周面に摺動抵抗(摩擦抵抗)を付与する抵抗付与部33(容器接触部の一例)と、透明に形成されるとともに載置部31の一側辺に沿って配置され容器20の移動を停止させる停止板34とを備えている。
【0015】
ここで陳列システム100は、図1(B)に示すように、例えば、コンビニエンスストア、スーパーマーケットなどに設置される陳列ケース10に収納される。この陳列ケース10は、ケース本体部10Aと、ケース本体部10Aの手前側に設けられケース本体部10Aに対して開閉可能に取り付けられたドア10Bと、ケース本体部10Aの奥側に設けられケース本体部10Aに対して開閉可能に取り付けられたドア10Cとを有している。そして、容器20はドア10C側より陳列装置30に投入することができるようになっている。即ち、陳列ケース10の奥側(後方側)および陳列装置30の奥側(後方側)に容器20の投入部が設けられた構成となっている。
【0016】
ここで、陳列装置30は、陳列ケース10に設けられた棚(不図示)の上に載せられる。この際、陳列装置30は、停止板34が設けられた側がドア10B側に位置するように設置される。また、載置部31は、手前側(前方側)が奥側(後方側)よりも下方に位置するように傾斜して配置される。より詳細には、載置部31は、陳列ケース10の奥側(後方側)から手前側(前方側)に向かって傾斜した状態で配置される。そして、陳列ケース10の投入部より投入された容器20は、載置部31上をドア10C側からドア10B側に向かって移動する。尚、本明細書では、以下、ドア10B側を手前側(前方側、取り出し部側)と称し、ドア10C側を奥側(後方側、投入部側)と称する場合がある。また、陳列装置30の前後方向(容器20が移動する方向)に直交する方向を左右方向、幅方向と称する場合がある。
【0017】
陳列装置30について詳細に説明する。
図3は、陳列装置30を説明するための図である。尚、同図(A)は陳列装置30の上面図であり、同図(B)は陳列装置30の右側面図であり、同図(C)は陳列装置30の正面図である。
【0018】
陳列装置30のガイド32は、容器20の移動経路の両側に且つこの移動経路に沿って配置されている。このガイド32は、容器20の搬送経路の一方の側(同図(A)の左側)に左ガイド32Aを有し、容器20の搬送経路の他方の側(同図(A)の右側)に右ガイド32Bを有している。ここでガイド32は、例えばアルミニウムなどの金属材料や樹脂材料などにより形成される。また、本実施形態では、左ガイド32Aに対し詳細は後述する抵抗付与部33が設けられている。尚、本実施形態では、左ガイド32Aおよび右ガイド32Bが設けられ、容器20の移動経路の両側にガイド32が設けられた構成となっているが、右ガイド32Bは省略することができる。
【0019】
載置部31は、陳列装置30の左右方向(幅方向)において傾斜して配置されている。より詳細には、載置部31と左右方向の水平面とが角度θHをなすように、左ガイド32A側が右ガイド32B側よりも下方に位置するように傾斜して配置されている。また、載置部31は、上述のように前方側が後方側よりも下方に位置するように傾斜して配置されている。より詳細には、載置部31と前後方向の水平面とが角度θVをなすように、手前側が奥側よりも下方に位置するように傾斜して配置されている。
【0020】
さらに載置部31は、容器20が置かれる側の面に、載置部31の左右方向(幅方向)に並列配置された第1ローラ群311と、第2ローラ群312とを備えている。ここで、各ローラ群は、容器20の移動方向に沿った回転が可能であり且つ前後方向に並べられた複数のロール状部材314を有している。尚、第1ローラ群311は左ガイド32A側に設けられ、第2ローラ群312は右ガイド32B側に設けられている。
【0021】
ここで、第1ローラ群311は、載置部31の投入部側から容器20の移動経路に沿って配置される上流側第1ローラ群311Aと、この上流側第1ローラ群311Aよりも容器20の移動方向における下流側に配置され且つ容器20の移動経路に沿って配置される下流側第1ローラ群311Bとを備えている。また、第2ローラ群312は、載置部31の投入部側から容器20の移動経路に沿って配置される上流側第2ローラ群312Aと、上流側第2ローラ群312Aよりも容器20の移動方向における下流側に配置され且つ容器20の移動経路に沿って配置される下流側第2ローラ群312B(回転部の一例)とを備えている。
【0022】
なお本明細書では、以下、上流側第1ローラ群311Aと上流側第2ローラ群312Aとが配置された上流側の領域を上流側領域31Aと称する場合がある。また、下流側第1ローラ群311Bと下流側第2ローラ群312Bとが配置された下流側の領域を下流側領域31Bと称する場合がある。
【0023】
ここで本実施形態では、上流側第1ローラ群311Aの各ロール状部材314の幅方向の長さd1の方が、上流側第2ローラ群312Aの各ロール状部材314の幅方向の長さd2よりも大きくなるように、上流側第1ローラ群311Aおよび上流側第2ローラ群312Aは構成されている。また、下流側第1ローラ群311Bの各ロール状部材314の幅方向の長さd3と、下流側第2ローラ群312Bの各ロール状部材314の幅方向の長さd4とが等しくように、下流側第1ローラ群311Bおよび下流側第2ローラ群312Bは構成されている。
【0024】
また本実施形態では、上流側第1ローラ群311Aの各ロール状部材314の幅方向の長さd1の方が、下流側第1ローラ群311Bの各ロール状部材314の幅方向の長さd3よりも大きくなるように、上流側第1ローラ群311Aおよび下流側第1ローラ群311Bは構成されている。また、上流側第2ローラ群312Aの各ロール状部材314の幅方向の長さd2の方が、下流側第2ローラ群312Bの各ロール状部材314の幅方向の長さd4よりも小さくなるように、上流側第2ローラ群312Aおよび下流側第2ローラ群312Bは構成されている。付言すると本実施形態では、下流側第2ローラ群312Bの各ロール状部材314の幅方向の長さd4の方が、上流側第2ローラ群312Aの各ロール状部材314の幅方向の長さd2よりも大きくなっている。
【0025】
また上記では説明を省略したが、本実施形態では、上流側第2ローラ群312Aの各ロール状部材314、および、下流側第2ローラ群312Bの各ロール状部材314は、回転ができないように固定されている。ここで、上流側第2ローラ群312Aの各ロール状部材314と下流側第2ローラ群312Bの各ロール状部材314とが固定されることにより、容器20の右方側且つ底部に抗力が付与されるようになる(詳細は後述)。なお、上流側第2ローラ群312Aの各ロール状部材314、および、下流側第2ローラ群312Bの各ロール状部材314に替えて、ロール状部材314と同様の形状を有する凸部を設けることもできる。
【0026】
また上述のように、本実施形態では、左ガイド32Aに、容器20に接触して摺動抵抗(摩擦抵抗、抗力)を付与する抵抗付与部33が設けられている。ここで抵抗付与部33は、容器20の移動経路に沿って配置されている。また、本実施形態における抵抗付与部33は、容器20の移動経路の一方の側方側に設けられている。また抵抗付与部33は、図2に示すように、断面が円形の棒状部材33A(基材の一例)に対し、塩化ビニルなどにより構成され棒状部材33Aよりも軟質のビニールテープ33B(接触材の一例)を貼付することで形成している。なおビニールテープに替えて、EPDM(エチレン−プロピレンゴム)などのゴム部材を用いることもできる。
【0027】
また本実施形態における抵抗付与部33は、断面が略円形となるように構成している。付言すると、抵抗付与部33のうちの容器20に接触する接触面(容器20の移動経路と対峙する面)は、高さ方向における中央部から上方に向かうに従いおよび下方に向かうに従い容器20の移動経路から離れるように曲率を有した状態で形成されている。このような形状とした場合、容器20が上下方向や左右方向に変動したとしても、容器20と抵抗付与部33との接触面積が一定となりやすい。
【0028】
次に、容器20について詳細に説明する。
図4は、容器20を説明するための図である。なお、同図(A)は容器20を一方側から図示したものであり、同図(B)は、容器20を他方側から図示したものである。また、同図(C)は同図(A)のS部における断面を示し、同図(D)は同図(A)のT部における断面を示している。
【0029】
本実施形態における容器20には、飲料などの内容物が充填されるとともに、プルタブ(不図示)が取り付けられた蓋部材(不図示)が固定されている。また本実施形態では、同図(A)および(B)に示すように、容器20の外周面に、第1領域R1と第2領域R2とが形成されている。ここで、表面における摩擦係数は、第1領域R1>第2領域R2となっている。また、本実施形態における容器20は、その外周面に、商品名、商標など他の商品と識別するための識別標記23を有している。
【0030】
なお識別標記23は、後述するインキ層51によって第1領域R1内に形成されている。また本実施形態では、第1領域R1と第2領域R2との境界線KYと、識別標記23とが所定の位置関係を有するように、第1領域R1、第2領域R2、および識別標記23が配置されている。より具体的に説明すると、本実施形態では、容器20を識別標記23が付された側から眺めた場合に(同図(A)の矢印A方向から容器20を眺めた場合に)、境界線KYが容器20の側部に位置するように、第1領域R1、第2領域R2、および識別標記23が配置されている。
【0031】
ここで、同図(C)を参照し、第2領域R2の表面状態についてまず説明する。同図(C)に示すように、第2領域R2には、容器本体50の表面にインキ層51が設けられている。また、インキ層51の表面にクレーター状の凹凸を有したトップコート層(最外層)52が設けられている。
【0032】
ここで、インキ層51に用いるインキには、例えば金属印刷用のものを用いることができる。ここで、インキの顔料(色量)としては、各種の有機顔料や無機顔料が用いられる。また、インキのビヒクルは、熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂等の樹脂を主成分としている。ここで熱硬化性樹脂としては、アルキッド型又はポリエステル型の樹脂等が用いられる。また、紫外線硬化性樹脂としては、紫外線ラジカル重合型、紫外線カチオン重合型の樹脂等が用いられる。さらに、インキには添加剤が含有されていても良い。添加剤としては、艶消し剤、ワックス類(天然系、石油系、合成系)、乾燥剤、分散剤、湿潤剤、架橋剤、ゲル化剤、増粘剤、皮張り防止剤、安定剤、消泡剤、光重合開始剤等が用いられる。
【0033】
また、インキ層51は、いわゆるはじきインキにより形成されている。即ち、インキ層51は、このインキ層51の表面にトップコート層52を形成する塗料が塗られた場合にこの塗料をはじくインキにより形成されている。ここでトップコート層52における上記凹凸は、トップコート層52を形成する塗料がこのインキ層51によりはじかれることにより形成されたものである。
【0034】
なお、トップコート層52を形成する塗料をインキ層51によりはじくためには(上記凹凸を形成するためには)、インキ層51の形成に用いるインキの表面張力を、トップコート層52の形成に用いる塗料の表面張力よりも5mN/m以上低く設定することが望ましい。換言すると、インキの表面張力が塗料の表面張力よりも低く、且つ、インキと塗料との間の表面張力の差が5mN/m以上であることが望ましい。ここでインキの表面張力の低下は、例えば、通常のインキにシリコーンを添加することにより行うことができる。
【0035】
一方、トップコート層52に用いる塗料は、熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂等の樹脂を主成分とするものであり、必要に応じてワックス成分を含有している。熱硬化性樹脂としては、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、フラン−ホルムアルデヒド樹脂、キシレン−ホルムアルデヒド樹脂、ケトン−ホルムアルデヒド樹脂、アミノ樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂(例:ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスマレイミド樹脂、トリアリルシアヌレート樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、シリコーン樹脂、油性樹脂等が用いられる。
【0036】
さらに、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との組成物を用いても良い。この場合、熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル−マレイン酸−酢酸ビニル共重合体、アクリル重合体、飽和ポリエステル樹脂等が用いられる。これらの樹脂は、単独でも2種以上を組み合わせても使用できる。また、これらの樹脂組成物には、必要に応じて、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の公知の酸触媒が添加されていても良い。酸触媒を用いる場合は、酸触媒は樹脂に対して0.5〜1質量%添加するのが望ましい。また、これらの樹脂のうち、特に、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂と飽和ポリエステル樹脂との組成物や、熱硬化性アクリル樹脂とメラミン−ホルムアルデヒド樹脂との組成物を用いることが塗膜性能面で望ましい。
【0037】
一方、紫外線硬化性樹脂としては、例えば、カチオン硬化型樹脂、ラジカル硬化型樹脂等が用いられる。カチオン硬化型樹脂としては、紫外線硬化型エポキシ樹脂と光カチオン重合触媒との組成物等が用いられる。
【0038】
また、トップコート層52に用いる塗料において、上記の樹脂に架橋剤や増感剤を必要に応じて添加しても良い。架橋剤としては、種々のポリオール類(例:ε−カプロラクトントリオール)等が用いられる。増感剤としては、チオキサントン誘導体等が用いられる。さらに、トップコート層52に用いる塗料に、滑りを補うために、ワックス成分として天然系、石油系、合成系のワックス剤を単独で又は複合して添加しても良い。さらに、トップコート層52の表面のレベリング剤として、あるいは/更に、塗料状態での安定性を高めるためや初期滑り性をトップコート層52に付与するために、各種のシリコーンオイルを添加しても良い。
【0039】
尚、インキ層51およびトップコート層52の組成等の一例を挙げると以下のようになる。
[トップコート層52]
樹脂成分:ポリエステル30%、アクリル13%、アミノ55%、エポキシ2%
ワックス:石油系0.3%、天然系1%、合成系0.2%(樹脂成分に対し)
シリコーンオイル(混合):0.15%(樹脂成分に対し)
表面張力:33mN/m
厚さ:5μm
[インキ層51](はじきインキ)
主樹脂:アルキッド樹脂
顔料:TiO
表面張力:28mN/m
厚さ:2μm
【0040】
尚、上記は、第2領域R2の形成方法の一例を説明したものであり、例えば特開2002−361172号公報に開示されている技術を用いて第2領域R2を形成してもよい。即ち、トップコート層52を形成する塗料をインキ層51の表面で斑状に凝集させることで凹凸を形成し第2領域R2を形成してもよい。尚、本実施形態にて塗布材料により生じさせる上記第2領域R2の凹凸は、最大深さで3〜10μm程度のオーダーであり、通常のコーティング塗料では、深さ1μm程度或いはそれ未満の程度の平滑面を第1領域R1と言っている。
【0041】
次いで、同図(D)を参照し、第1領域R1の表面状態について説明する。
同図(D)に示すように第1領域R1には、上記と同様、容器本体50の表面にインキ層51が設けられている。また、インキ層51の表面に、上記第2領域R2におけるトップコート層52よりも表面が平滑に形成されたトップコート層(最外層)52が設けられている。
【0042】
ここで、第1領域R1におけるインキ層51は、トップコート層52を形成する塗料をはじかないインキ(通常インキ)を用いて形成している。付言すれば、インキ層51を形成するインキは、表面張力がトップコート層52を形成する塗料の表面張力と等しいか又はそれよりも高いインキが用いられている。このため、第1領域R1では、トップコート層52を形成する塗料がはじかれず、トップコート層52の表面は、第2領域R2におけるトップコート層52に比べ平滑となる。尚、インキ層51を形成するインキの基本的な組成等は上記と同様である。トップコート層52を形成する塗料の基本的な組成等は上記と同様である。
【0043】
次に、容器20が陳列装置30に投入された場合の容器20の動作について説明する。
図5〜8は、陳列装置30における容器20の動作を説明するための図である。なおこれらの図では、第1ローラ群311、第2ローラ群312等の図示を省略している。
【0044】
図5(A)のように、陳列装置30の上流側領域31Aに対して容器20が投入されると、容器20は前方に向かって移動するとともに左ガイド32A側に向かって移動する。即ち、容器20は斜め左前方に向かって移動する。これは、上記のように、前方側が後方側よりも下方に位置するように載置部31が傾斜し、また左ガイド32A側の方が右ガイド32B側よりも下方に位置するように載置部31が傾斜しているためである。
【0045】
その後、容器20は抵抗付与部33に接触する。そして、容器20が抵抗付与部33に接触すると、容器20は抵抗付与部33に接触しながら陳列装置30の前方に向かって移動する。そしてこの際、図5(A)に示すように、第1領域R1が抵抗付与部33に接触する状態にあると、第1領域R1と抵抗付与部33との間における滑りが抑制され(第1領域R1に抗力F1が付与され)、容器20は、時計回りの回転を行いながら前方へ移動する。
【0046】
そして、図5(B)のように、第2領域R2が抵抗付与部33に接触する状態になると、第2領域R2と抵抗付与部33との間で滑りが生じる。これにより容器20の回転が停止するとともに識別標記23が陳列装置30の前方側を向いた状態となる。尚、第2領域R2が抵抗付与部33に接触した場合、第2領域R2と抵抗付与部33とは点接触に近い状態で接触する。付言すれば、第2領域R2と抵抗付与部33とは接触面積が低下する状態となる。このため、第2領域R2と抵抗付与部33との間で上記滑りが生じるものと考えられる。その後、容器20は、図6(A)に示すように、下流側領域31Bに進入する。
【0047】
ここでこの下流側領域31Bでは、図3(A)に示したように、第2ローラ群312におけるロール状部材314の幅が、上流側領域31Aに配置されたロール状部材314の幅よりも大きくなっている。付言すると、図3(A)に示すように、上流側第2ローラ群312Aにおけるロール状部材314の幅はd2であったが、下流側第2ローラ群312Bにおけるロール状部材314の幅はこのd2よりも大きいd4となっている。このため、容器20が下流側領域31Bに侵入すると、容器20の底部に対し第2ローラ群312から付与される抗力が大きくなる。図6(A)を参照して説明すると、容器20の右方側の部位(容器移動経路の他方の側方側に位置する部位)に対して作用する抗力が大きくなる。さらに説明すると、容器20の右方側の部位に対して作用する抗力が上流側領域31AにてF0(不図示)であった場合に、下流側領域31BではこのF0よりも大きい抗力F2(図6(A)参照)が容器20の右方側の部位に対して作用するようになる。
【0048】
この結果、今まで回転を停止していた容器20は、図6(A)に示すように、反時計回り方向の回転を開始する。この結果、図6(B)に示すように、抵抗付与部33に対して第1領域R1が再度接触するようになり、この第1領域R1に対し、上記抗力F2よりも大きい抗力F1が抵抗付与部33から作用するようになる。そしてこの場合、容器20は図6(B)に示すように時計回り方向の回転を再び行う。
【0049】
その後、図7(A)に示すように、容器20の第2領域R2が抵抗付与部33に再び接触する。そして、容器20の右方側に対して第2ローラ群312から付与される抗力F2によって、図7(A)に示すように、反時計回り方向の回転を容器20は再び行う。その後、図7(B)に示すように、第1領域R1と抵抗付与部33とが再び接触するようになる。以後、第2領域R2と抵抗付与部33との接触、第1領域R1と抵抗付与部33との接触が繰り返し行われる。このため容器20は、反時計回り方向の回転、時計回り方向の回転を繰り返し行いながら陳列装置30の前方に向かって移動していく。そして最終的に、容器20は、図8に示すように、識別標記23が陳列装置30のほぼ前方を向いた状態で陳列されるようになる。
【0050】
ここで、例えば、設置スペース等の関係から、陳列装置30の奥行き寸法を十分に確保できず陳列装置30の奥行き寸法を小さくせざるを得ない場合がある。このような陳列装置30にて、識別標記23を陳列装置30の前方に向けるためには、ある一定距離を移動した際における容器20の回転量を、奥行き寸法が大きい陳列装置30を用いる場合に比べ、大きくする必要がある。容器20の回転量が小さいと識別標記23が陳列装置30の前方を向かず、識別標記23が陳列装置30の側方などを向いてしまうためである。
【0051】
ここで容器20の回転量の増加は、例えば、載置部31の幅方向(左右方向)における傾き(図3(C)における角度θH)を大きくするとともに、載置部31の前後方向における傾き(図3(B)の角度θV)を大きくすることにより行うことができる。この場合、抵抗付与部33から容器20に対し作用する抗力が大きくなるため、容器20の回転量が増加する。なお載置部31の前後方向における傾きも大きくするのは、幅方向における傾きを大きくしただけでは容器20の移動速度の低下などが起きやすいためである。
【0052】
ところで上記のように容器20の回転量を増加させた場合、容器20が過度に回転し、識別標記23が陳列装置30の前方以外の方向を向いてしまう可能性がある。付言すると、抵抗付与部33と第2領域R2が接触しているにも関わらず、容器20の慣性によって容器20が回転するようになり、例えば図9(陳列装置30の他の構成例を示した図)に示すように、識別標記23が斜め前方を向く可能性がある。
【0053】
そこで本実形態では、下流側領域31Bにて、容器20の右方側に作用する抗力を増加させ、容器20の逆回転を行っている。この場合、容器20が過度に回転し、識別標記23が前方以外の方向を向いていたとしても、上記逆回転によって識別標記23が前方を向くようになる。付言すると、本実施形態における構成を採用した場合、陳列装置30の奥行き寸法が小さいなどの理由により容器20の回転量を増加させたとしても、識別標記23が陳列装置30の前方を向くようになる。また本実施形態における構成によって、容器20に付された識別標記23が斜め方向を向くなどの不具合が生じにくくなり、識別標記23を前方に向ける際の精度を高めることができる。
【0054】
なお本実施形態では、陳列装置30の上流側領域31Aに上流側第1ローラ群311Aおよび上流側第2ローラ群312Aが設けられた構成となっているが、上流側第2ローラ群312Aは省略することができる。また本実施形態では、左ガイド32Aに抵抗付与部33を設けたが、右ガイド32Bに抵抗付与部33を設けても良い。その場合は、右ガイド32B側の方が左ガイド32A側よりも下方に位置するように載置部31は配置される。
また、上流側第1ローラ群311Aの各ロール状部材314の幅方向の長さd1(図3(A)参照)と、下流側第1ローラ群311Bの各ロール状部材314の幅方向の長さd3とを等しくするとともに、上流側第2ローラ群312Aの各ロール状部材314の幅方向の長さd2と、下流側第2ローラ群312Bの各ロール状部材314の幅方向の長さd4とを等しくすることもできる。なおこの場合、例えば、下流側第2ローラ群312Bに含まれるロール状部材314の表面にゴム部材を貼付するなどし、下流側第2ローラ群312Bにおけるロール状部材314から容器20の右方側に付与される抗力を大きくする必要がある。
【0055】
また上記では説明を省略したが、本実施形態では、時計回り方向の容器20の回転、および、反時計回り方向の容器20の回転が繰り返される。このため識別標記23が揺動し識別標記23がより目立つようになる。この結果、容器20の購入者が容器20の存在を認識する可能性が高まり、容器20が購入される可能性が高まるようになる。また、上記では、載置部31に対し陳列装置30の幅方向(左右方向)における傾斜を付与することで容器20を抵抗付与部33に接触させたが、幅方向における傾斜を付与しないでも容器20を抵抗付与部33に接触させることができる。例えば、ロール状部材314を利用して容器20を抵抗付与部33に接触させることができる。
【0056】
図10は、陳列装置30の他の一形態を示した図である。
同図に示す陳列装置30では、陳列装置30の幅方向における傾斜は付与されていない。また同図に示す陳列装置30では、載置部31に設けられた複数のロール状部材314が、陳列装置30の前後方向に対し傾斜して配置されている。
【0057】
より詳細に説明すると、ロール状部材314の回転軸と直交する仮想線9Aを想定した場合に、ロール状部材314の各々は、この仮想線9Aが陳列装置30の前後方向と交差するように傾斜して配置されている。付言するとロール状部材314の各々は、上記仮想線9Aが陳列装置30の前後方向に対して傾斜するように配置されている。さらに説明すると、ロール状部材314の各々は、上記仮想線9Aが向かう方向が左ガイド32A側(抵抗付与部33が設けられた側)となるように傾斜して配置されている。
【0058】
このため、図10に示した陳列装置30では、容器20は、陳列装置30の前方に向かって移動しようとするものの傾斜して配置されたロール状部材314によって抵抗付与部33へ向かうこととなる。付言すれば、図10で示す陳列装置30では、抵抗付与部33と容器20との接触は、ロール状部材314により容器20が誘導されることで行われる。
【0059】
ここで、容器20に形成された上記第1領域R1および第2領域R2の形成方法について説明する。第1領域R1および第2領域R2は、例えば、容器20の製造工程に含まれる印刷工程において形成することができる。より詳細には、印刷工程に設置された印刷機を用いて形成することができる。
【0060】
図11は、容器20に対して印刷を行う印刷機を説明するための図である。
同図に示す印刷機500は、いわゆるオフセット印刷を行う印刷機である。印刷機500は、一方向に回転するブランケットシリンダ510と、図柄に対応した印刷版を有し上記インキ層51を形成するインキをブランケットシリンダ510に塗布するインキ塗布装置520と、支持ロール530と、上記トップコート層52を形成する塗料を塗布する塗料塗布装置540とを備える。
【0061】
ブランケットシリンダ510は、円盤状に形成されるとともに外周面に複数のブランケット(被転写部)511を有している。また、ブランケットシリンダ510は、インキ塗布装置520における上記印刷版からブランケット511に転写されたインキを、転写部Teにて容器20の基体となる素缶体に対して転写しこの素缶体に上記識別標記23を含む図柄を形成する。
【0062】
インキ塗布装置520は、ブランケットシリンダ510の周方向に沿って色毎に複数設けられている。各インキ塗布装置520は、ブランケットシリンダ510のブランケット511に接触する印刷用シリンダ522と、印刷用シリンダ522の外周面にインキを供給するインキ供給装置521とを備えている。ここで、印刷用シリンダ522は、外周面に上記印刷版を有しインキ供給装置521により供給されたインキをブランケット511に転写する。これにより、各ブランケット511の表面にインキが載せられる。詳細には、各ブランケット511の表面であって印刷用シリンダ522毎に割り当てられた各領域に、印刷用シリンダ522の各々からインキが順次載せられる。この結果、各ブランケット511の表面には、図柄に対応したインキ像が形成される。そして、このインキ像は、ブランケットシリンダ510の回転に伴い、転写部Teまで移動し、周方向に回転している素缶体の外周面に転写される。これによって上記インキ層51が形成される。
【0063】
支持ロール530は、ブランケットシリンダ510の対向位置に配置されるとともに一方向に回転し、不図示のウォッシャー工程から移動してきた素缶体を上記転写部Teまで搬送する。また、支持ロール530は、ウォッシャー工程から移動してきた素缶体を回転させた状態で上記転写部Teまで搬送する。塗料塗布装置540は、上記インキ像が転写された素缶体(インキ層51が形成された素缶体)の外周面に対して塗料を塗布する。これによって上記トップコート層52が形成される。なお塗料塗布装置540により塗料が塗布された素缶体(トップコート層52が形成された素缶体)は、その後、不図示のオーブン工程(加熱工程)にて200℃〜220℃で加熱される。
【0064】
ここで、このような印刷機500を用いる場合、第2領域R2におけるインキ層51を担当する印刷用シリンダ522から塗料をはじく機能を有したインキをブランケット511に載せることにより、第2領域R2と、この第2領域R2に隣り合う第1領域R1との間に表面の違いを形成することができる。
【0065】
ところで、容器20の外周面における同色の箇所は、通常、共通の(一つの)印刷用シリンダ522からインクが供給される。しかしながら、本実施形態では、第1領域R1、第2領域R2に同色の箇所があったとしても、異なる印刷用シリンダ522からインキの供給が行われる。即ち、第1領域R1における同色の箇所は、一の印刷用シリンダ522からインキが供給され、第2領域R2における同色の箇所は、この一の印刷シリンダ522とは異なる他の印刷用シリンダ522(はじきインキを供給する印刷用シリンダ522)からインキが供給される。
【0066】
ここで、複数色を用いた模様が容器20の周方向の全周にわたり広範囲に存在する場合には、通常の印刷に比べ、印刷用シリンダ522を多数用意する必要がある。即ち、例えば、第1領域R1における模様を形成するために、まず複数の印刷用シリンダ522を用意する必要がある。そして、第2領域R2における模様を形成するための複数の印刷用シリンダ522をさらに用意する必要がある。
【0067】
ここで、上記のような印刷用シリンダ522の増加を防ぐため、図12(容器20の他の形態を示した図)に示すような形態とすることもできる。なお、同図(A)は容器20の正面図を示し、同図(B)は容器20の背面図を示している。
同図に示すように、例えば、第2領域R2は、容器20の下部に設けることができる。より詳細には、容器20の周方向に沿って且つ抵抗付与部33の幅よりもわずかに大きい幅を有した帯として形成することができる。このような形態とする場合、複数色を用いた模様が容器20の周方向の全周にわたり存在していても、第2領域R2を形成するための一つの印刷用シリンダ522を追加するだけで済む。付言すれば、上記のように多数の印刷用シリンダ522を用意しないで済む。
【0068】
また、上記ではいわゆるはじきインキを用いて、第2領域R2に凹凸を形成したが、例えば発泡剤を含有したいわゆる発泡インキを用いてインキ層51を形成し、第2領域R2に凹凸を形成してもよい。さらに、第2領域R2におけるトップコート層52を形成する塗料をいわゆるマット塗料とすることで第2領域R2に凹凸を付与し、摺動抵抗を減じてもよい。ここで、マット塗料とは、ガラス、シリカ、樹脂等の光を散乱させる粒子が含有され、通常の塗料よりも光沢度が低下する塗料である。マット塗料には、上記のようにガラス、シリカ、樹脂等の粒子が含まれているため、その表面に凹凸が形成される。尚、この場合は、塗料の塗り分けが必要となる。即ち、第2領域R2に対してはマット塗料を塗布し、第1領域R1に対してはマット塗料ではない塗料を塗布する必要がある。
【0069】
また、第2領域R2におけるトップコート層52の表面に更にマット塗料を塗布することで第2領域R2に凹凸を付与し、この領域における摺動抵抗を減じてもよい。また、第2領域R2におけるインキ層51をはじきインキにより形成するとともに、このインキ層51の表面にマット塗料を用いてトップコート層52を形成してもよい。また例えば、第1領域R1および第2領域R2におけるトップコート層52をマット塗料により形成した後、第1領域R1に対して、表面を平滑にする塗料(例えば、上記ガラス等が含まれていない塗料)を塗布してもよい。即ち、マット塗料を塗布することで容器20の全周を滑りやすくした後、第1領域R1に表面を平滑にする塗料を塗布し、第1領域R1を滑りにくくしてもよい。
【0070】
なお上記では、第1領域R1における表面を第2領域R2における表面よりも平滑にすることで識別標記23を前方に向けた。ところで、容器20の回転/非回転には、例えばトップコート層52を構成する材料なども影響する。このため、第1領域R1における表面よりも第2領域R2における表面が平滑に形成される場合であっても、識別標記23を前方に向けることが可能な場合がある。即ち、上記実施形態に限られず、例えば摩擦係数の異なる少なくとも2つの領域を識別標記23に対応させて形成しておけば、識別標記23を前方に向けることが可能となる。
【0071】
また上記では、第2領域R2に凹凸を付与することで摺動抵抗を減じたが、フッ素樹脂などを第2領域R2に貼付したり塗布したりして摺動抵抗を減じてもよい。例えば、図13(容器20の他の形態を示した図)に示すように、テフロン(登録商標)加工などが施されたテープ部材TAを容器20の識別標記23と位置関係を合わせて貼付することにより、容器20の塗装状況に関係無く、上記と同様の効果を容器20に付与することができる。尚、フッ素系の樹脂(PTFE、PFA、PVDF等)及びそれらのテープ部材、あるいは、超高分子量ポリエチレンフィルム等の摩擦抵抗の小さいフィルムテープ部材も使用することができる。尚、容器20の外周面の全体が摩擦係数の小さいもので塗装されている場合は、第1領域R1に相当する箇所に対し摩擦係数の大きな樹脂テープ等を貼ることにより同様な効果を出すことも出来る。
【0072】
また、容器20がペットボトルや金属製ボトル缶等のように、識別標記23が形成されたフィルムF(ラベルシール(シュリンクフィルムが多い))が容器本体部の外周面に装着される場合であっても、容器20に上記と同様の機能を付与することができる。
【0073】
図14は、容器20の他の形態を示した図である。
図14に示すように、容器20の容器本体部の外周面に装着される前のフィルムFに対して上記第1領域R1および第2領域R2を予め形成しておき、このフィルムFを容器20の容器本体部に装着することもできる。このような場合、装着するフィルムFに対して、フィルムF自体の摩擦係数とは異なる摩擦係数を有するようになる塗料を部分的に塗布することで、上記第1領域R1および第2領域R2を形成することができる。また、フィルムFの全域に塗料を塗り分けて塗布することにより、上記第1領域R1および第2領域R2を形成することもできる。
【0074】
また、ペットボトルの外周面に装着されたフィルムでは、自販機などにおいて詰まりを発生させないようにするため、印刷面(外周面)に、滑性を持たせるための外面塗料が塗られている場合がある。そこで、この種のフィルムを利用して、上記第2領域R2に相当する領域を形成することができる。
【0075】
図15は、容器20の他の一形態を示した図である。なお同図(A)は正面図であり、同図(B)は背面図であり、同図(C)は底面図である。
同図に示す容器20は、いわゆるペットボトルであり、容器本体部の外周面には滑性を持たせたフィルム62が装着されている。このフィルム62は、容器20の容器本体部60の外周面に巻き付くように装着されるとともに、識別標記23の下部に、容器本体部60の外周面の一部を露出させ上記第1領域R1に相当する露出部621を備えている。
【0076】
ここで、識別標記23が陳列装置30の側方を向いている場合には、露出部621が抵抗付与部33に接触する状態となり、この露出部621を通じて容器20に回転力が付与される。この結果、識別標記23が陳列装置30の前方側を向くようになる。その一方で、識別標記23が陳列装置30の前方側を向いている場合には、抵抗付与部33とフィルム62とが接触する状態となり、抵抗付与部33とフィルム62との間で滑りが生じる。このため、容器20は、識別標記23がほぼ前方を向いた状態で陳列装置30の前方まで移動していく。
【0077】
また、上記では、容器20に第1領域R1および第2領域R2を形成する場合について説明したが、図16(装着部材を説明するための図)に示すように、容器20には第1領域R1および第2領域R2を形成せず、容器20に装着する装着部材70に対し第1領域R1および第2領域R2を形成することができる。
【0078】
ここで装着部材70は、図16に示すように、円柱状部材により構成され上面に容器20に装着される装着部71が設けられている。また、装着部材70は、外周面に、第1領域R1および第2領域R2を有している。ここで装着部71は、装着部材70の内側に凹む穴として形成されるとともに、容器20の断面形状に倣った形状を有している。本実施形態では、装着部71を上方から眺めた場合の形状は円形となっている。
【0079】
ここで、装着部材70の第1領域R1および第2領域R2は、上記と同様に、塗布材料を塗布することやシール部材或いはテープ部材を貼付することにより形成することができる。なお図16では、第1領域R1および第2領域R2が形成されたテープ部材TAを貼付した場合を例示している。なお装着部材70は、容器20と装着部材70との装着位置がずれないようにゴム等の摩擦係数が大きい部材で形成することが好ましい。
【符号の説明】
【0080】
20…容器、23…識別標記、30…陳列装置、31…載置部、33…抵抗付与部、33A…棒状部材、33B…ビニールテープ、70…装着部材、312B…下流側第2ローラ群、314…ロール状部材、R1…第1領域、R2…第2領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に標記が付されるとともに摩擦係数および周方向における位置が互いに異なる第1の領域および第2の領域を当該外周面に有する容器と、
前記容器を陳列する陳列装置と、
を備え、
前記陳列装置は、
前記容器を予め定められた移動経路に沿って移動させる移動手段と、
前記移動経路の一方の側方側および他方の側方側のうちの当該一方の側方側に設けられ、当該移動経路を移動する前記容器の前記第1の領域と接触した際に当該第1の領域に抗力を与え当該容器を周方向に且つ一方向に回転させるとともに、当該回転に伴い接触する前記第2の領域との間で滑りを生じさせる容器接触部と、
前記第2の領域が前記容器接触部に接触した状態にある前記容器のうちの前記他方の側方側に位置する部位に接触することで当該他方の側方側に位置する部位に抗力を付与し、前記一方向とは反対の方向に当該容器を回転させる回転部と、
を有していることを特徴とする陳列システム。
【請求項2】
前記回転部は、前記移動経路の下方に設けられ前記容器の底部に接触し当該底部に対し前記抗力を付与することを特徴とする請求項1記載の陳列システム。
【請求項3】
前記移動手段は、前記移動経路の下方に回転可能なロール状部材を複数有し、当該ロール状部材を利用することで前記容器の移動を行い、
複数設けられた前記ロール状部材のうちの一部のロール状部材は、固定され、
前記回転部は、固定された前記一部のロール状部材によって構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の陳列システム。
【請求項4】
前記回転部が前記他方の側方側に位置する前記部位に付与する前記抗力は、前記容器接触部が前記第1の領域に与える前記抗力よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の陳列システム。
【請求項5】
前記容器の前記標記は、前記第2の領域が前記容器接触部に接触し両者の間で前記滑りが生じた際に前記陳列装置の前方側を向くように当該容器に付されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の陳列システム。
【請求項6】
前記容器は、容器本体部と、当該容器本体部に装着された装着部材とから構成され、
前記第1の領域および前記第2の領域は、前記装着部材に形成されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の陳列システム。
【請求項7】
外周面に標記が付されるとともに摩擦係数および周方向における位置が互いに異なる第1の領域および第2の領域を当該外周面に有する容器を予め定められた移動経路に沿って移動させる移動手段と、
前記移動経路の一方の側方側および他方の側方側のうちの当該一方の側方側に設けられ、当該移動経路を移動する前記容器の前記第1の領域と接触した際に当該第1の領域に抗力を与え当該容器を周方向に且つ一方向に回転させるとともに、当該回転に伴い接触する前記第2の領域との間で滑りを生じさせる容器接触部と、
前記第2の領域が前記容器接触部に接触した状態にある前記容器のうちの前記他方の側方側に位置する部位に接触することで当該他方の側方側に位置する部位に抗力を付与し、前記一方向とは反対の方向に当該容器を回転させる回転部と、
を含む陳列装置。
【請求項8】
前記容器接触部は、前記移動経路に沿って配置された基材と、当該基材の表面に取り付けられ当該基材よりも軟質に形成され前記第1の領域および前記第2の領域に接触する接触材と、により少なくとも構成されていることを特徴とする請求項7記載の陳列装置。
【請求項9】
前記容器接触部のうちの前記第1の領域および前記第2の領域に接触する面は、当該面の高さ方向における中央部から上方に向かうに従いおよび下方に向かうに従い前記容器の前記移動経路から離れるように曲率を有した状態で形成されていることを特徴とする請求項7または8に記載の陳列装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−19956(P2012−19956A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160090(P2010−160090)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【出願人】(000186854)昭和アルミニウム缶株式会社 (155)
【Fターム(参考)】