説明

集合住宅の玄関の袖壁

【課題】共用廊下に面する玄関まわりに、袖壁を容易に取り付け及び取外しができるようにする。
【解決手段】袖壁1を軽量発泡コンクリートからなる第1側面部材11、第2側面部材12及びL字断面部材13とで構成し、これらの部材の上端面11b等及び下端面11e等を、それぞれ上金具14及び下金具15を介して、玄関31の外側の天井31b及び床面31cにボルト止めする。第2側面部材12は、中間金具16を介して、第1側面部材11とL字断面部材13とにボルト止めする。第1側面部材11、第2側面部材12及びL字断面部材13の外側面には、それぞれ化粧パネル18を貼着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合住宅の玄関の袖壁に関する。
【背景技術】
【0002】
マンション等の集合住宅では、図7に示すとおり、共用廊下402に面して各住戸403の玄関431および窓が配置されるのが一般的で、これらの住戸が、この共用廊下に面して連続的に配列されると、単調でかつ隣戸との見分けが付きにくいという問題がある。また、共用廊下402に面する居室の空調用の室外機を窓下に置いたりすると見栄えが好ましくないといった問題もある。
【0003】
そこで、図8に示すとおり、玄関531の扉の一側辺の近傍に、袖壁501を設ける手法が用いられる。この手法によれば、袖壁501によって玄関前スペースを空間的に創出でき、合わせてこの袖壁に装飾することで、個性を表現することが可能になる。また、袖壁501によって空調用の室外機置場を空間的に創出でき、実際に空調用室外機を居室の窓下に置いても見栄え良く配置できる。なお図8に示す袖壁501は、玄関531や窓を構成する外壁532と一体的に設けられるものであり、通常は鉄筋コンクリートで形成される。
【0004】
ところで今日における需要者のニーズの多様化に伴い、マンション等の集合住宅においても、住戸の形状やデザイン等について、個々の居住者の希望に適うものを選択できることが強く求められている。このため各住戸の顔ともいえる玄関まわりの形状やデザイン等についても、個々の居住者の希望に適うものを選択できることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに集合住宅においては、床、天井、柱、梁、外壁、境界壁、及び共用廊下等の基本構造は、建物の耐震性など基本性能にかかわる部分であり、施工着手後の変更は多大な困難を伴うため、通常は変更できない。そして、建物の耐震性等に影響のない袖壁であっても、外壁と一体的に形成された袖壁は、形状やデザインの変更が困難である。
【0006】
そこで本発明の目的は、共用廊下に面する玄関まわりに、容易に取り付け及び取外しができる袖壁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、本発明による集合住宅の玄関の袖壁は、共用廊下に面する住戸の玄関の扉の側部に設けられる袖壁であって、この袖壁は、この玄関の外側の天井と床面との間において、この住戸の外壁に突設される。上記袖壁は、それぞれ軽量発泡コンクリートからなる平板状の第1側面部材と、この第1側面部材に所定の間隔を隔てて対向する平板状の第2側面部材と、これらの第1側面部材及び第2側面部材の先端面にそれぞれ対向するL字断面部材とを備えている。
【0008】
上記第1側面部材及びL字断面部材の上端面は、この第1側面部材の上端部の内側面及びL字断面部材の足部の上端部の内側面に設けた上金具を介して、上記玄関の外側の天井にボルト止めされる。上記第1側面部材及びL字断面部材の下端面は、この第1側面部材の下端部の内側面及びL字断面部材の足部の下端部の内側面に設けた下金具を介して、上記玄関の外側の床面にボルト止めされる。そして上記第2側面部材は、上記第1側面部材の内側面と上記L字断面部材の足部の内側面とにボルト止めされた中間金具を介して、この第2側面部材の外側面から貫通する貫通ボルトによって取り付けられることを特徴とする。
【0009】
上記上金具と下金具とは、次のように構成することが望ましい。すなわち上記上金具は、上記第1側面部材及びL字断面部材の足部の上端面と内側面との角部に位置する上定規アングル材と、この第1側面部材及びL字断面部材の足部の内側面に、それぞれボルト止めされた上稲妻プレートとを備えている。上記上定規アングル材の垂直部分は、上記上稲妻プレートと上記第1側面部材及びL字断面部材の足部の内側面との間に挟持されると共に、この上稲妻プレートに溶接止めされる。上記上定規アングル材の水平部分は、上記玄関の外側の天井にボルト止めされている。
【0010】
上記下金具は、上記第1側面部材及びL字断面部材の足部の下端面と内側面との角部に位置する下定規アングル材と、この第1側面部材及びL字断面部材の足部の内側面に、それぞれボルト止めされた下稲妻プレートと、上記玄関の外側の床面にボルト止めされたベースアングル材とを備えている。上記下定規アングル材の垂直部分は、上記下稲妻プレートと上記第1側面部材及びL字断面部材の足部の内側面との間に挟持されると共に、この下稲妻プレートに溶接止めされる。また上記定規アングル材の水平部分は、上記床面に突設された突条部の上面に搭載され、この定規アングル材の垂直部分は、上記ベースアングル材の垂直部分に溶接止めされる。
【0011】
上記第1側面部材、第2側面部材、及びL字断面部材の外側面には、それぞれ化粧パネルが貼着されているように構成することがより望ましい。
【0012】
ここで「玄関の扉の側部」とは、玄関の扉を正面から見たときの、この玄関の扉の左脇又は右脇を意味する。「第1側面部材及び第2側面部材の先端面」とは、袖壁を構成する第1側面部材及び第2側面部材において、住居の外側に向かう端面を意味する。「L字断面部材」とは、この部材を垂直に立てたときの水平断面が、L字形状をしている部材を意味する。「L字断面部材の足部」とは、相互に直交してL字を構成する2辺のうちの1辺であって、第1側面部材の先端面に対向する1辺を意味する。なおここで、上記足部と直交する他の1辺を腕部と呼ぶことにする。
【0013】
「第1側面部材の上端部の内側面及びL字断面部材の足部の上端部の内側面」の「内側面」とは、第1側面部材及びL字断面部材の足部において、袖壁の内部を構成する面を意味する。「上定規アングル」及び「下定規アングル」の「定規アングル」とは、長方形の平板を、長手方向に沿う直線を折り曲げ線として、直角に折り曲げた部材を意味する。「上稲妻プレート」及び「下稲妻プレート」の「稲妻プレート」とは、相互に平行な二面の間を斜めの直線で連結した断面形状を有する部材を意味する。
【発明の効果】
【0014】
集合住宅の玄関の扉の側部に袖壁を設けることによって、玄関まわりに立体感を醸し出して、一戸住宅のような満足感を与えることができる。
【0015】
袖壁を軽重量の軽量発泡コンクリートによる組立構造とすると共に、ボルトによって玄関の外側の天井と床面とに取り付け可能とすることによって、取付け及び取外しが容易になる。このため住戸の購入契約後においても、個々の居住者の希望に応じて袖壁を取り付けることができる。また多くの居住者の日々の生活等に多大な影響を与えることなく、短期間に取外しや取替え工事を行なうことができる。
【0016】
袖壁の外側面に化粧パネルを貼着することによって、玄関まわりを、更に個性豊かに表現することができる。特に色合いやデザインの異なる複数の化粧パネルを準備しておけば、個々の居住者の好みによってカスタマイズすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】集合住宅の玄関まわりの斜視図である。
【図2】集合住宅の玄関まわりの水平断面図である。
【図3】袖壁の水平断面図である。
【図4】袖壁の垂直断面図である。
【図5】第2側面部材を取り外したときの袖壁の内側の側面図である。
【図6】袖壁の構成例を示す図である。
【図7】従来例による集合住宅の玄関まわりの水平断面図である。
【図8】従来例による他の集合住宅の玄関まわりの水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1〜図5を参照しつつ、本発明による集合住宅の玄関の袖壁を説明する。さて図1及び図2に示すように、本発明による袖壁1は、共用廊下2に面する住戸3の玄関31の扉31aの左脇に設けられる。すなわち袖壁1は、玄関31の外側の天井31bと、床面31cとの間において、住戸3の外壁32に突設されている。
【0019】
次に図3〜図5に示すように、袖壁1は、それぞれ軽量発泡コンクリートからなる平板状の第1側面部材11と、この第1側面部材に所定の間隔を隔てて対向する平板状の第2側面部材12と、これらの第1側面部材及び第2側面部材の先端面11a、12aに、それぞれ対向するL字断面部材13とを備えている。第1側面部材11及びL字断面部材13の上端面11b、13bは、この第1側面部材の上端部の内側面11c、及びL字断面部材の足部13dの上端部の内側面13cに設けた上金具14を介して、玄関31の外側の天井31bにボルト14aによって取付けられる。
【0020】
第1側面部材11及びL字断面部材13の下端面11e、13eは、この第1側面部材の下端部の内側面11c、及びL字断面部材の足部13dの下端部の内側面13cに設けた下金具15を介して、玄関31の外側の床面31cにボルト15aによって取付けられる。第2側面部材12は、第1側面部材11の内側面11cと、L字断面部材13の足部13dの内側面とに、ボルト16aによって固定された四角断面形状の中空パイプからなる中間金具16を介して、この第2側面部材の外側面から貫通する貫通ボルト16bによって取り付けられる。
【0021】
次に袖壁1を構成する第1側面部材11、第2側面部材12、及びL字断面部材13の組立構造を詳述する。すなわち第1側面部材11及びL字断面部材13を天井31bに取り付ける上金具14は、この第1側面部材及びL字断面部材の足部13dの上端面11b、13bと、内側面11c、13cとの角部に位置する上定規アングル材14bと、この第1側面部材及びL字断面部材の足部の内側面に、それぞれボルト14cによって固定された上稲妻プレート14dとを備えている。
【0022】
図4に示すように、上定規アングル材14bの垂直部分、すなわち第1側面部材11の内側面11cに平行な部分は、上稲妻プレート14dと、この第1側面部材及びL字断面部材13の足部13dの内側面11c、13cとの間に挟持されると共に、この上稲妻プレートに溶接止めされる。また上定規アングル材14bの水平部分、すなわち第1側面部材11の上端面11bに平行な部分は、玄関31の外側の天井31bに、ボルト14aによって取付けられる。
【0023】
次に第1側面部材11及びL字断面部材13を床面31cに取り付ける下金具15は、この第1側面部材及びL字断面部材の足部13dの下端面11e、13eと内側面11c、13cとの角部に位置する下定規アングル材15b、この第1側面部材及びL字断面部材の足部の内側面に、それぞれボルト15cによって固定された下稲妻プレート15dと、玄関31の外側の床面31cにボルト15aによって固定されたベースアングル材15eとを備えている。
【0024】
図4に示すように、下定規アングル材15bの垂直部分、すなわち第1側面部材11の内側面11cに平行な部分は、下稲妻プレート15dと、この第1側面部材及びL字断面部材13の足部13dの内側面11c、13cとの間に挟持されると共に、この下稲妻プレートに溶接止めされる。また下定規アングル材15bの水平部分、すなわち第1側面部材11の下端面11eに平行な部分は、玄関31の外側の床面31cに突設したモルタルによる突条部31dの上面に搭載される。床面31cに固定されたベースアングル材15eの水平部分は、このベースアングル材をこの床面に固定するボルト15aの頭部と共に、モルタルによる突条部31dに埋設される。またベースアングル材15eの垂直部分の先端部分は、下定規アングル材15bの垂直部分に溶接止めされる。
【0025】
なお第2側面部材12を、第1側面部材11とL字断面部材13とに取り付けるための中間金具16は、図5に示すように、上下2本からなる水平部材16cと、この水平部材に溶接結合された垂直部材16dとからなり、それぞれねじ穴16eが形成してある。第2側面部材12は、ねじ穴16eに螺合する貫通ボルト16bによって、中間金具16に固定される。
【0026】
なお図5に示すように、第1側面部材11及び第2側面部材12と、住戸3の外壁32、天井31b及び床面31cに突設した突条部31dとの隙間には、耐火目地材17が充填されている。また図示しないが、L字断面部材13と、天井31b及び床面31cに突設した突条部31dとの隙間にも、耐火目地材17が充填されている。さらに第1側面部材11及び第2側面部材12と、L字断面部材13との隙間にも、耐火目地材17が充填されている。
【0027】
また図3及び図4に示すように、第1側面部材11、第2側面部材12及びL字断面部材13の外側面には、それぞれタイル18が貼着されている。
【0028】
なお図6に示すように、上述した第1側面部材11、第2側面部材12、及びL字断面部材13を、適宜、配列を変更することも容易にでき、あるいはこれらの部材の外側面は、上述したようなタイルを貼る構造のみならず、表面に凹凸模様のある部材としたり、表面の色彩を変えたりすることも容易にでき、様々な組合せパターンを提案することが可能となる。ここで図6(A)は、上述した袖壁1の構造を示しており、図6(B)に示す袖壁101は、第1側面部材111、及びL字断面部材113を、表面に凹凸模様のある部材としたものを示している。また図6(C)に示す袖壁201は、第1側面部材211、第2側面部材212、及びL字断面部材213を、図6(A)に示したものと左右逆に配列したものを示しており、さらに図6(D)に示す袖壁301は、また図6(C)に示す第2側面部材212を、表面に波状の凹凸模様のある部材としたものを示している。
【産業上の利用可能性】
【0029】
共用廊下に面する玄関まわりに、袖壁を容易に取り付け及び取外しができるため、集合住宅に関する産業に利用可能である。
【0030】
1、101〜301、501 袖壁
11、111〜311 第1側面部材
11a 先端面
11b 上端面
11c 内側面
11e 下端面
12、112〜312 第2側面部材
12a 先端面
12b 上端面
12e 下端面
13、113〜313 L字断面部材
13c 内側面
13d 足部
13e 下端面
14 上金具
14a ボルト
14b 上定規アングル材
14c ボルト
14d 上稲妻プレート
15 下金具
15a ボルト
15b 下定規アングル材
15c ボルト
15d 下稲妻プレート
15e ベースアングル材
16 中間金具
16a ボルト
16b 貫通ボルト
16c 水平部材
16d 垂直部材
16e ねじ穴
17 耐火目地材
18 (タイル)化粧パネル
2、402、502 共用廊下
3 住戸
31、431、531 玄関
31a 扉
31b 天井
31c 床面
31d 突上部
32、132〜532 外壁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
共用廊下に面する住戸の玄関の扉の側部に設けられる袖壁であって、
上記袖壁は、上記玄関の外側の天井と床面との間において、上記住戸の外壁に突設され、
上記袖壁は、それぞれ軽量発泡コンクリートからなる平板状の第1側面部材と、この第1側面部材に所定の間隔を隔てて対向する平板状の第2側面部材と、これらの第1側面部材及び第2側面部材の先端面にそれぞれ対向するL字断面部材とを備え、
上記第1側面部材及びL字断面部材の上端面は、この第1側面部材の上端部の内側面及びL字断面部材の足部の上端部の内側面に設けた上金具を介して、上記玄関の外側の天井にボルト止めされ、
上記第1側面部材及びL字断面部材の下端面は、この第1側面部材の下端部の内側面及びL字断面部材の足部の下端部の内側面に設けた下金具を介して、上記玄関の外側の床面にボルト止めされ、
上記第2側面部材は、上記第1側面部材の内側面と上記L字断面部材の足部の内側面とにボルト止めされた中間金具を介して、この第2側面部材の外側面から貫通する貫通ボルトによって取り付けられる
ことを特徴とする集合住宅の玄関の袖壁。
【請求項2】
請求項1において上記上金具は、上記第1側面部材及びL字断面部材の足部の上端面と内側面との角部に位置する上定規アングル材と、この第1側面部材及びL字断面部材の足部の内側面に、それぞれボルト止めされた上稲妻プレートとを備え、
上記上定規アングル材の垂直部分は、上記上稲妻プレートと上記第1側面部材及びL字断面部材の足部の内側面との間に挟持されると共に、この上稲妻プレートに溶接止めされ、
上記上定規アングル材の水平部分は、上記玄関の外側の天井にボルト止めされており、
上記下金具は、上記第1側面部材及びL字断面部材の足部の下端面と内側面との角部に位置する下定規アングル材と、この第1側面部材及びL字断面部材の足部の内側面に、それぞれボルト止めされた下稲妻プレートと、上記玄関の外側の床面にボルト止めされたベースアングル材とを備え、
上記下定規アングル材の垂直部分は、上記下稲妻プレートと上記第1側面部材及びL字断面部材の足部の内側面との間に挟持されると共に、この下稲妻プレートの上端部に溶接止めされ、
上記下定規アングル材の水平部分は、上記床面に突設された突条部の上面に搭載され、
上記下定規アングル材の垂直部分は、上記ベースアングル材の垂直部分に溶接止めされる
ことを特徴とする集合住宅の玄関の袖壁。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかにおいて、上記第1側面部材、第2側面部材、及びL字断面部材の外側面には、それぞれ化粧パネルが貼着されている
ことを特徴とする集合住宅の玄関の袖壁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−285790(P2010−285790A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−139807(P2009−139807)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(000150615)株式会社長谷工コーポレーション (94)
【出願人】(390018717)旭化成建材株式会社 (249)
【Fターム(参考)】