説明

集合住宅用コージェネレーションシステム

【課題】個々の装置を小型化し、集合住宅における商用電力の消費を少なくし、効率の良い状態で稼働し続ける。
【解決手段】全住戸101〜303の戸毎に、燃料電池5と、燃料電池5の排熱を回収して得られたお湯を所定量貯える住戸用貯湯槽6とを設置する。各フロア1F〜3Fに、フロア貯湯槽71〜73を設置する。各住戸用貯湯槽6に貯えられたお湯を相互に受け渡し可能とする第1貯湯移送手段12を介して、各住戸用貯湯槽6の間を連結する。住戸用貯湯槽6、6・・及びフロア貯湯槽71〜73に貯えられたお湯を相互に受け渡し可能とする第2貯湯移送手段13を介して、住戸群11〜31の住戸用貯湯槽6、6・・とフロア貯湯槽71〜73との間を連結する。フロア貯湯槽71〜73に貯えられたお湯を相互に受け渡し可能とする第3貯湯移送手段14を介して、各フロア貯湯槽71〜73間をそれぞれ連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の住戸からなる集合住宅等に導入され、燃料電池による発電の際の熱を他のエネルギー源とする集合住宅用コージェネレーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、燃料電池による発電の際の熱を他のエネルギー源とするコージェネレーションシステムとして、特許文献1〜3等の種々のものが案出されている。
先ず、特許文献1には、複数階層を有する集合住宅の2以上の各フロア毎に燃料電池発電装置を有する個別システムを設置し、各フロアの個別システムを互いに補完するように運転制御する制御装置を設置してなるコージェネレーションシステムが記載されている。各フロアの個別システムは、熱及び電力を発生させる熱電併給装置と、この熱電併給装置からの出力電力を蓄電し対応するフロアにある各住宅内の電力負荷に給電する給電手段と、熱電併給装置から発生する熱を回収し給水との熱交換により温水に変換して貯湯する貯湯タンクと、この貯湯タンクから各住宅に給湯する給湯回路と、貯湯タンクの貯湯状況を検出する貯湯状況検出手段と、給電手段から給電状況を検出する給電状況検出手段とを備え、各フロアの熱電併給装置を各住宅内の電力負荷状態、給湯状態に合わせて運転制御し、システムの稼働効率を高めるように構成されている。
【0003】
次に、特許文献2には、複数の住戸で構成される集合住宅の一つのフロアに対して1台の燃料電池と1台の貯湯タンクが設置されてなる燃料電池コージェネレーションシステムが記載されている。燃料電池は、独立運転可能な1kWの発電モジュール5台で構成され、必要電力に応じて発電効率、排熱回収効率などが最大となる様に運転制御されている。
【0004】
また、特許文献3には、複数の住戸で構成される集合住宅に導入され、燃料電池、貯湯タンク、インバータを各住戸に設置してなる燃料電池コージェネレーションシステムが記載されている。このシステムは、各住戸に対して、電力線網をそれぞれ分配し、そしてインバータによって電力負荷に燃料電池と電力線網とを連係させ、さらに電力線網と電力系統とを連係させる連係装置を設置して構成されている。よって、燃料電池の余剰電力が電力線網に送電される一方で、電力不足分が電力線網から供給され、住宅群の一住宅において、当該住宅に設置された燃料電池の発電電力が不足した場合には、当該住宅以外の住宅に設置された燃料電池の余剰電力で賄うことが可能となる。
【0005】
【特許文献1】特開2004−156820号公報
【特許文献2】特開2004−327160号公報
【特許文献3】特開2004−327144号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のものは、各フロア毎に設けられた1台の燃料電池発電装置によって1フロアの全住戸の電力を賄う構成上、燃料電池発電装置が大型となり、電力需要の少ない時に効率が悪化する問題点があった。またフロア毎に1台であるので、その燃料電池発電装置が故障すると1フロア全体の燃料電池発電機能が停止してしまう問題点があった。また、特許文献2、3のものは、熱需要の少ないときには、貯湯タンクにお湯が最大貯湯量まで貯えられてしまい、燃料電池の排熱の回収が行えず、発電を停止させることが起こり易い点で問題があった。
【0007】
そこで、本発明は上記課題を鑑み、個々の装置を小型化でき、集合住宅における商用電力の消費を少なくし、効率の良い状態で稼働し続ける事ができる集合住宅用コージェネレーションシステムの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1の発明に係る集合住宅用コージェネレーションシステムは、複数の住戸からなる集合住宅内の住戸毎に、燃料電池と、その排熱を回収して得られたお湯を所定量貯える住戸用貯湯槽と、を設置し、各住戸用貯湯槽に貯えられたお湯を相互に受け渡し可能とする第1貯湯移送手段を介して、各住戸用貯湯槽間を連結してなる、ように構成される。
【0009】
請求項2の発明に係る集合住宅用コージェネレーションシステムは、集合住宅内の複数の住戸を複数の住戸群に区分けし、各住戸群で貯えられたお湯を所定量貯える住戸群用貯湯槽を少なくとも1基設置し、住戸用貯湯槽及び住戸群用貯湯槽に貯えられたお湯を相互に受け渡し可能とする第2貯湯移送手段を介して、住戸用貯湯槽と住戸群用貯湯槽との間を連結し、住戸群用貯湯槽が複数設置された場合には、各住戸群用貯湯槽に貯えられたお湯を相互に受け渡し可能とする第3貯湯移送手段を介して、各住戸群用貯湯槽間を連結してなる、ように構成される。
【0010】
請求項3の発明に係る集合住宅用コージェネレーションシステムは、住戸群用貯湯槽が、住戸群毎に1基設置されてなる、ように構成される。
【発明の効果】
【0011】
請求項1〜3の発明によれば、住戸毎に燃料電池と住戸用貯湯槽を設置したので、1戸の消費電力分を供給可能な発電能力を備えるものであればよく、発電に係わる個々の装置をより小型化できる。また、集合住宅内の各住戸に設置された燃料電池の排熱を回収して得られたお湯を、集合住宅内の各住戸で互いに受け渡し可能としたので、集合住宅内の一の住戸用貯湯槽が最大貯湯量までお湯を貯えた状態となる前に、他の住戸用貯湯槽にお湯を移送させることが可能となり、排熱の回収不能に起因する発電の停止を回避可能となる。従って、1基の燃料電池に対してより大きな電力負荷を与え続けることが可能となり、高効率での連続稼働が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係る集合住宅用コージェネレーションシステムの一実施形態について図面に基づき説明する。
図1は、本集合住宅用コージェネレーションシステム(以下、単に「システム」とする)の一実施形態を示すブロック構成図である。このシステム1aが導入される集合住宅は、3階建ての各フロア1F,2F,3Fに3戸の住戸を設けて、計9戸の住戸101〜103,201〜203,301〜303から構成されるものである。また集合住宅内の9戸は、各フロアの3戸を1つの住戸群として、3つのフロア1F〜3Fが3つの住戸群11,21,31にそれぞれ対応するように区分けされている。
【0013】
全住戸101〜303には、戸毎に最大1kWの電力を発電出力可能な燃料電池5と、燃料電池5の排熱を回収して得られたお湯を所定量貯えるように構成された住戸用貯湯槽6と、からなる燃料電池発電装置が設置されている。燃料電池5で発電された電力は、各フロアに設けられたフロアインバータ8でAC200Vのシステム電力に変換される。このシステム電力は、集合住宅に引き込まれた商用電力とを連係させる商用連係変換器9に送られる。商用連係変換器9では、商用電力またはシステム電力のいずれか一方が単相三線のAC100/200Vに変換され、各住戸に送電されるように構成されている。
【0014】
各フロア1F〜3Fにおいて、フロア毎の各住戸用貯湯槽6は、3つの住戸用貯湯槽6にそれぞれ貯えられたお湯を相互に受け渡し可能とする第1貯湯移送手段12を介して連結されている。例えば第1貯湯移送手段12は、住戸用貯湯槽6に設けられた開閉弁と、それらの開閉弁同士を接続するパイプと、パイプ内のお湯を所定方向へ送り出す送出ポンプとからなり、住戸用貯湯槽6間でお湯の受け渡しが自由に出来る様に構成されている。
【0015】
また各フロア1F〜3Fには、住戸群用貯湯槽としてフロア貯湯槽71〜73がフロア毎に1基ずつ設置されている。フロア貯湯槽71については、住戸用貯湯槽6、6・・及びフロア貯湯槽71に貯えられたお湯を相互に受け渡し可能とする第2貯湯移送手段13を介して、住戸群11の住戸用貯湯槽6、6・・とフロア貯湯槽71との間が連結されている。同様に、フロア貯湯槽72については住戸群21の住戸用貯湯槽6、6・・との間が、そして、フロア貯湯槽73については住戸群31の住戸用貯湯槽6、6・・との間が第2貯湯移送手段13を介してそれぞれ連結されている。
【0016】
さらに、フロア貯湯槽71〜73については、フロア貯湯槽71〜73に貯えられたお湯を相互に受け渡し可能とする第3貯湯移送手段14を介して、各フロア貯湯槽71〜73間がそれぞれ連結されている。ここで、第2及び第3貯湯移送手段13,14は、第1貯湯移送手段12と同様に、開閉弁、パイプ及び送出ポンプからなるように構成されている。
【0017】
集合住宅に対する商用電力網の引き込みは、商用連係変換器9における一点としている。基本的には、各住戸101〜303で必要とされる電力は、各住戸の燃料電池5で発電した電力で賄っている。ただし、全住戸101〜303の燃料電池5、5・・による総発電電力量で賄いきれない場合には、商用連係変換器9の連係動作によって、不足電力分が商用電力網から供給される。
【0018】
本システム1aでは、各住戸101〜303の燃料電池5及び住戸用貯湯槽6、フロア貯湯槽71〜73、第1〜3貯湯移送手段12〜14、及び商用連係変換器9を、より効率の良い状態で協働するように動作制御するシステム制御装置16が設けられている。
【0019】
システム制御装置16による貯湯移送制御を説明する。
例えば、住戸101において、燃料電池5の発電状態が続いた場合、住戸用貯湯槽6には排熱回収を利用して生成されたお湯が刻々と貯えられていく。さらに発電を継続させることで住戸101の住戸用貯湯槽6が満杯になった場合、第1貯湯移送手段12によって残量の少ない住戸102、103の住戸用貯湯槽6へ、または、住戸103の住戸用貯湯槽6を通過させ第2貯湯移送手段13によってフロア貯湯槽71へお湯を移送する。さらにフロア貯湯槽71が満杯になった場合には、第3貯湯移送手段14によって、残量の少ないフロア貯湯槽72,73へお湯を移送する。そして、他の住戸201〜303の残量の少ない住戸用貯湯槽6へお湯を移送し、最終的には住戸用貯湯槽6及びフロア貯湯槽71〜73の全てが満杯になるまでお湯を移送する。
【0020】
逆に、住戸101において、お湯の使用によって住戸用貯湯槽6内のお湯が不足してきた場合には、第1貯湯移送手段12によって残量の多い住戸102、103の住戸用貯湯槽6や、第1〜第3貯湯移送手段12〜14の組み合わせによって他住戸201〜303の住戸用貯湯槽6、フロア貯湯槽71〜73からお湯の移送を受ける。
このように、システム制御装置16は、必要に応じてお湯の移送を行い、各住戸の燃料電池5が高効率で稼働出来る様に集合住宅全体の設備の制御を行う。
【0021】
上記構成の本システム1aによれば、住戸毎に燃料電池5と住戸用貯湯槽6を設置したので、1戸の消費電力分を供給可能な発電能力を備えるものであればよく、発電に係わる個々の装置をより小型化できる。
また、集合住宅内の各住戸に設置された燃料電池5の排熱を回収して得られたお湯を、集合住宅内の各住戸間で互いに受け渡し可能としたので、各住戸の住戸用貯湯槽6のお湯の使用量、残量を監視しながら、お湯を適切な貯湯場所に移送して貯湯する事で、燃料電池5の発電効率を上げて発電量を増やし、商用電源からの買電を最小限とすることができる。さらに、集合住宅内の一の住戸用貯湯槽6が最大貯湯量までお湯を貯えた状態となる前に、他の住戸用貯湯槽6にお湯を移送させることが可能となり、貯湯量の超過によって排熱の回収が不能となることに起因する発電の停止を回避可能となる。従って、1基の燃料電池5に対してより大きな電力負荷を与え続けることが可能となり、高効率での連続稼働が可能となる。
また、電力需要の少ない時は、各住戸に設置された燃料電池5を最大効率で運転できる様に、燃料電池5の台数を限定して運転し集合住宅全体における発電効率を高く維持できる。
【0022】
次に、図2は、本発明に係る集合住宅用コージェネレーションシステムの他の実施形態を示すブロック構成図である。このシステム1bが導入される集合住宅は、図1と同様であり、共通する構成には同一符号を付している。このシステム1bは、1基のフロア貯湯槽73をフロア3Fにのみ設けて構成されている。また、このシステム1bは、住戸用貯湯槽6及びフロア貯湯槽73に貯えられたお湯を相互に受け渡し可能とする第2貯湯移送手段13を介して、住戸用貯湯槽6と住戸群用貯湯槽73との間を連結して構成されている。このシステム1bによっても、システム1aと同様の作用効果を得ることができる。
【0023】
次に、図3は、本発明に係る集合住宅用コージェネレーションシステムの他の実施形態を示すブロック構成図である。このシステム1cが導入される集合住宅は、図1と同様であり、共通する構成には同一符号を付している。このシステム1cでは、住戸群110,210,310は、各フロアにおける住戸の位置を基準に上下方向に区分けされている。このシステム1cによっても、システム1aと同様の作用効果を得ることができる。
【0024】
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下列挙するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各部の形状並びに構成を適宜に変更して実施することも可能である。
(1)本システムは、3階建て各フロアに3住戸からなる集合住宅に限らず、他の階数建てや、フロア毎の住戸数を変更して構成された集合住宅に導入可能である。
(2)本システムは、左右方向に区分けした住戸群11,21,31や、上下方向に区分けした住戸群110,210,310に限らず、前後方向に区分けした住戸群で構成しても良い。また住戸群に含まれる住戸数は、同数に限るものではない。
(3)本システムは、住戸群用貯湯槽を取り除き、住戸群同士の住戸用貯湯槽間を第1貯湯移送手段を介して連結して構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態を示すブロック構成図である。
【図2】本発明の他の実施形態を示すブロック構成図である。
【図3】本発明の他の実施形態を示すブロック構成図である。
【符号の説明】
【0026】
1a,1b,1c・・集合住宅用コージェネレーションシステム、5・・燃料電池、6・・住戸用貯湯槽、11,21,31,110,210,310・・住戸群、12・・第1貯湯移送手段、13・・第2貯湯移送手段、14・・第3貯湯移送手段、71〜73・・住戸群用貯湯槽、101〜103,201〜203,301〜303・・住戸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の住戸からなる集合住宅内の住戸毎に、燃料電池と、その排熱を回収して得られたお湯を所定量貯える住戸用貯湯槽と、を設置し、
各住戸用貯湯槽に貯えられたお湯を相互に受け渡し可能とする第1貯湯移送手段を介して、各住戸用貯湯槽間を連結してなる、
ことを特徴とする集合住宅用コージェネレーションシステム。
【請求項2】
集合住宅内の複数の住戸を複数の住戸群に区分けし、
各住戸群で貯えられたお湯を所定量貯える住戸群用貯湯槽を少なくとも1基設置し、
住戸用貯湯槽及び住戸群用貯湯槽に貯えられたお湯を相互に受け渡し可能とする第2貯湯移送手段を介して、住戸用貯湯槽と住戸群用貯湯槽との間を連結し、
住戸群用貯湯槽が複数設置された場合には、
各住戸群用貯湯槽に貯えられたお湯を相互に受け渡し可能とする第3貯湯移送手段を介して、各住戸群用貯湯槽間を連結してなる、
請求項1に記載の集合住宅用コージェネレーションシステム。
【請求項3】
住戸群用貯湯槽が、住戸群毎に1基設置されてなる、
請求項2に記載の集合住宅用コージェネレーションシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−101004(P2007−101004A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−288491(P2005−288491)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000124591)河村電器産業株式会社 (857)
【Fターム(参考)】