説明

集合光ファイバケーブル

【課題】光ファイバケーブルの識別や分岐作業やメンテナンス等を作業性良く簡単且つ確実に行わせると共に製造を容易化する。
【解決手段】スロットロッド2の外周面に複数の溝4を設け、溝に光ファイバケーブル5を係合させた集合光ファイバケーブル1で、溝4に係合した光ファイバケーブル5がスロットロッド2の外周面15よりも外側に突出して位置する。溝4の深さDが光ファイバケーブル5の厚さTの半分ないしそれ以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の光ファイバケーブルをスロットロッドに配線して構成される集合光ファイバケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4は従来の集合光ファイバケーブルの一形態を示すものである(特許文献1参照)。
【0003】
この集合光ファイバケーブル31は、抗張力鋼等で形成された中央のテンションメンバ32と、テンションメンバ32の外側に位置し、テンションメンバ32と共に心材を構成する保護被覆層33と、保護被覆層33の外周面に沿って並列に配置された複数本の二心光ファイバケーブル34とで構成されている。
【0004】
二心光ファイバケーブル34はポリエチレン製のシース45と、シース内に並列に配置された二本の光ファイバ素線36とで構成されている。複数の二心光ファイバケーブル34は保護被覆層33の外周で撚り合わされている。
【0005】
二心光ファイバケーブル34の外側に押さえ巻きテープを巻いて各二心光ファイバケーブル34のばらけを防ぐことも行われる。所要の二心光ファイバケーブル34を分岐させることも行われる。この集合光ファイバケーブル31は例えば集合住宅等に配線され、電話線等として用いられる。
【0006】
図5は従来の集合光ファイバケーブルの他の形態を示すものである(特許文献2参照)。
【0007】
この集合光ファイバケーブル41は、テンションメンバ42の外側に設けられ、複数の深いファイバ収容溝43を等配に有するスロットロッド44と、各ファイバ収容溝43に収容される複数のテープ巻きされた光ファイバケーブル45と、スロットロッド44の外側に設けられた外被46とで構成されている。
【0008】
ファイバ収容溝43は断面矩形状でスロットロッド44の半径の半分程度ないしそれ以上の深さを有して、螺旋状に形成されている。ファイバ収容溝内には光ファイバケーブル45が複数層に収容されている。光ファイバケーブル45は複数本の光ファイバ47をテープで並列に巻いて固定したものである。
【0009】
スロットロッド44の外周面には各ファイバ収容溝43の間で識別用のトレーサ(細溝)48が各々数を違えて設けられている。作業者は分岐等に際して外被46を皮剥きし、所要のファイバ収容溝43をトレーサ48で認識してその収容溝48から光ファイバケーブル45を取り出して分岐させる。
【0010】
光ファイバの分岐に関しては例えば特許文献3において、撚り合わされた複数本の光ファイバケーブルのなかから所要の光ファイバケーブルを分岐させ、光ファイバケーブルの保護部材を皮剥きしてコネクタを露出させて、コネクタで光ファイバケーブルの接続を行う構造が記載されている。
【特許文献1】特開平11−202173号公報(第2〜3頁、図1)
【特許文献2】特開平11−271579号公報(第2頁、図2)
【特許文献3】特開平11−194250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、図4に示す従来の集合光ファイバケーブル31にあっては、各光ファイバケーブル34の識別に色分け等の手段を用いるために製造に多くの工数やコストがかかるという問題があり、また、図5に示す集合光ファイバケーブル41にあっては、外被46を皮剥きしないと識別用のトレーサ48が目視確認できないために、分岐作業やメンテナンス等に多くの工数がかかるという問題があった。また、光ファイバケーブル45を例えば螺旋状の溝43内に深く収容するために、スロットロッド44への光ファイバケーブル45の組付作業が面倒で、分岐時やメンテナンス時等に所要の光ファイバケーブル45を取り出すのにも多くの手間がかかるという問題があった。
【0012】
本発明は、上記した点に鑑み、光ファイバケーブルの識別や分岐作業やメンテナンス等を作業性良く簡単且つ確実に行うことができ、しかも製造が容易で低コストな集合光ファイバケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る集合光ファイバケーブルは、スロットロッドの外周面に複数の溝が設けられ、該溝に光ファイバケーブルが係合した集合光ファイバケーブルにおいて、前記溝に係合した前記光ファイバケーブルが前記スロットロッドの外周面よりも外側に突出して位置することを特徴とする。
【0014】
上記構成により、スロットロッドの各溝に各光ファイバケーブルが挿入又は嵌合されて正確に位置決めされつつ抜け出しなく保持される。光ファイバケーブルは溝からスロットロッドの径方向外側に突出して位置する。中間分岐やメンテナンス等に際しては光ファイバケーブルを溝から容易に離脱させることができる。
【0015】
請求項2に係る集合光ファイバケーブルは、請求項1記載の集合光ファイバケーブルにおいて、前記溝の深さが前記光ファイバケーブルの厚さの半分ないしそれ以下であることを特徴とする。
【0016】
上記構成により、溝への光ファイバケーブルの装着性及び溝からの光ファイバケーブルの離脱性が一層高まる。
【0017】
なお、請求項1又は2記載の集合光ファイバケーブルにおいて、前記光ファイバケーブルを前記溝に嵌め込むことも可能であり、この構成により、溝に対する光ファイバケーブルの保持力が高まり、例えば車両走行中の振動等によっても溝から光ファイバが抜け出し難くなる。この保持力は作業者が手作業で光ファイバケーブルを溝から容易に離脱させることができる程度であることが好ましい。
【0018】
また、請求項1又は2記載の集合光ファイバケーブルにおいて、前記光ファイバケーブルにテンションメンバを設けることも可能であり、この構成により、テンションメンバで各光ファイバケーブルの強度がアップし、スロットロッドの溝から突出した光ファイバケーブルが外部と干渉する等した場合でも、光ファイバケーブル内の光ファイバが安全に保たれる。
【0019】
また、請求項1又は2記載の集合光ファイバケーブルにおいて、前記光ファイバケーブルを集束帯で前記スロットロッドに粗巻きすることも可能であり、この構成により、各光ファイバケーブルが集束帯でスロットロッドの各溝に係合した状態にしっかりと保持され、集束帯は粗巻きされるから、外側から各光ファイバケーブルの状態等を目視で容易に確認可能である。
【0020】
また、請求項1又は2記載の集合光ファイバケーブルにおいて、前記スロットロッドの外周面に光ファイバ識別マークを設けることも可能であり、この構成により、光ファイバ識別マークを目視確認して所要の光ファイバケーブルを容易に認識することができる。識別マークは光ファイバケーブルではなくスロットロッドに一体的に設けられる。
【発明の効果】
【0021】
請求項1記載の発明によれば、中間分岐やメンテナンス等に際して光ファイバケーブルをスロットロッドの浅めの溝から容易に離脱させることができるから、分岐作業やメンテナンス等を作業性良く簡単且つ確実に行うことができる。また、光ファイバケーブルを浅めの溝に容易に装着することができるから、製造が容易化、低コスト化される。
【0022】
請求項2記載の発明によれば、溝への光ファイバケーブルの装着性及び溝からの光ファイバケーブルの離脱性が一層高まり、請求項1記載の発明の効果が促進される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1〜図3は、本発明に係る集合光ファイバケーブルの一実施形態を示すものであり、図1は全体図、図2は要部拡大図、図3は正面図をそれぞれ示している。
【0024】
この集合光ファイバケーブル1は、図1の如く合成樹脂製ないし合成ゴム製の断面円形のスロットロッド2の中心に抗張力鋼等の断面円形のテンションメンバ3を有すると共に、テンションメンバ3の外周面15に複数の浅めのケーブル支持溝(溝)4を並列に有し、各ケーブル支持溝4に各光ファイバケーブル(インドアケーブル)5の基半部(下半部)を挿入して(嵌め込んで)、光ファイバケーブル5の外周に巻き崩れ防止用の集束帯6を粗巻きして成るものである。
【0025】
テンションメンバ3とスロットロッド2と光ファイバケーブル5と集束帯6とは共に可撓性を有して屈曲自在なものである。集束帯6はビニタイやナイロンテープといった合成樹脂製の薄肉帯状のもので、本例の集束帯6は幅方向中央において上下に突出した部分6a(図2)を有しており、この突出部6a内に例えば屈曲自在な金属線を有していてもよい。突出部6aは二枚のテープ材を重ね合わせて接合する際、又は一枚のテープ材を折り返して接合する際に形成される。集束帯6は螺旋状に粗く巻かれる。
【0026】
スロットロッド5はスロットすなわち溝4を有するのでそのように呼称される。このケーブル支持溝4は図2,図3の如く光ファイバケーブル5の厚さTの1/2ないしそれ以下(例えば1mm程度)の深さに形成されている。ケーブル支持溝4は幅広で平坦な底面4a(図3)と、底面4aから直交する方向に立ち上げられた両側面4bとで構成され、底面4aと両側面4bとの交差部4cは光ファイバケーブルの角部に合わせてアール状(湾曲状)に形成されている。
【0027】
ケーブル支持溝4に光ファイバケーブル5の基半部すなわち底面側の部分が挿入係合され、ケーブル支持溝4の底面4aに光ファイバケーブル5の底面5aが接し(密着し)、ケーブル支持溝4の両側面4bに光ファイバケーブル5の両側面5bが若干の隙間を存して接して位置している。この隙間はゼロであってもよく、ケーブル支持溝4に光ファイバケーブル5を容易に外れることなく保持できる程度であることが好ましい。光ファイバケーブル5はケーブル支持溝4からスロットロッド2の径方向に大きく突出している。その状態で集束帯6が光ファイバケーブル上に粗巻きされている。
【0028】
本例でケーブル支持溝4はスロットロッド2の周方向に六つ並列に且つ等ピッチで形成され、且つ図1の如くスロットロッド2の外周に沿って螺旋状に形成されている。各ケーブル支持溝4の深さDはケーブル支持溝4の全長に渡って同一である。なお、ケーブル支持溝4の数は六つに限らず、それ以下ないしそれ以上とすることも可能である。
【0029】
ケーブル支持溝内に係合する光ファイバケーブル5は、断面略長方形状の合成樹脂製ないし合成ゴム製のシース7(図2)と、シース7の中央に配置された光ファイバ8と、シース7の左右両側に配置された抗張力鋼又は硬質樹脂製の二本のテンションメンバ9とで構成されている。
【0030】
シース7の表裏両側にはV字状の溝10が形成され、溝10の深さは溝底10aから中央の光ファイバ8までの距離と同程度ないしそれ以上であり、溝10を中心としてシース7が板厚方向に屈曲可能である。これにより、螺旋状のケーブル支持溝4に沿って長手方向に光ファイバケーブル5がスムーズ且つ確実に配索される。光ファイバケーブル5の底面5aはケーブル支持溝4の底面4aに密着し、それにより光ファイバケーブル5が安定に支持される。また、ケーブル支持溝4が浅いことによって光ファイバケーブル5の組付性が高められている。
【0031】
また、両側のテンションメンバ9によって光ファイバケーブル5の曲げ強度や引張強度や圧縮強度や座屈強度等が高められており、これによって、従来のように光ファイバケーブル5を深い収容溝内で外部との干渉等から保護することが不要となっている。
【0032】
中央の光ファイバ8は長円形の部分12の内側に二本の素線11を並列に有している。長円形の部分12の径と両側のテンションメンバ9の短径とは同程度である。テンションメンバ9は光ファイバ8とシース7の外側面5bとのほぼ中間に位置している。シース7はケーブル支持溝4の深さDよりも長い突出長さHでスロットロッド2の径方向外側に突出している。
【0033】
なお、光ファイバケーブル5の形態は上記構成に限らず、例えばスロットロッド2の矩形状ではなく円弧状のケーブル支持溝(4)に係合する断面円形の光ファイバケーブル(図示せず)等を用いることも可能である。
【0034】
各ケーブル支持溝4の間でスロットロッド2に略扇状の突出部分13が形成され、突出部分13の外面に図3の如く光ファイバ識別用のトレーサマーク(光ファイバ識別マーク)14が設けられている。トレーサマーク14は断面V字状又はその他の形状の細溝であり、本例では隣接の突出部分13に一条と二条の細溝14を設け、その他の識別は一条,二条の細溝14と回転方向の順位によって光ファイバケーブル5の識別を行っている。トレーサマーク14は細溝だけではなく、下地と異色の樹脂を一体に押し出して形成される。
【0035】
光ファイバの分岐やメンテナンス等に際しては、集束帯を部分的に切断して、あるいは切断せずに装着したままの状態で、光ファイバケーブル5を例えば中間から切断する等してケーブル支持溝4から容易に外すことができる。これはケーブル支持溝4が浅いことと、集束帯6が粗巻きされていることとの二重の作用による。また、集束帯6を外さなくとも外側からスロットロッド外周のトレーサマーク14を目視確認できるから、光ファイバケーブル5の識別を容易に且つ確実に行うことができる。
【0036】
また、長さの異なる光ファイバケーブル5を螺旋状のケーブル支持溝4に沿って撚り合わせて用い、光ファイバケーブル5の本数が減少した場合でも、ケーブル支持溝4に光ファイバケーブル5を挿入して(嵌め込んで)いるから、光ファイバケーブル5の位置が変化することなく良好な撚り上がり形状を得ることができる。
【0037】
従来においては、中間分岐後の光ファイバケーブルの無駄な部分を減少させるため、長さの異なる光ファイバケーブルを集合させることが多く、撚り合わせる光ファイバケーブルの数が減少して適切な撚り合わせができない場合があったが、本実施形態によってそのような不具合は解消されている。
【0038】
なお、上記実施形態においては、光ファイバケーブル5を撚り合わせて使用したが、撚り合わせずに真直に光ファイバケーブルを配索することも無論可能である。この場合、ケーブル支持溝4は螺旋状ではなく真直に形成されることは勿論である。
【0039】
但し、集合光ファイバケーブル1を敷設する際に、数カ所において曲げが生じる場合には、局所的に引張や圧縮の荷重が個々の光ファイバケーブル5に作用しやすいために、上記のように光ファイバケーブル5を撚り合わせて用いることで、敷設環境を拡大することができる。図1の如く集束帯6の巻き方向は光ファイバケーブル5の螺旋方向とは反対の方向であることが、光ファイバケーブル5の押さえ性を高める上で好ましい。
【0040】
また、スロットロッド2の中心のテンションメンバ3を用いずに、各光ファイバケーブル5のテンションメンバ9のみで強度を確保させることも可能である。また、本発明の集合光ファイバケーブル1は住宅以外にも各種車両等に適用できるものである。また、光ファイバ識別マーク14は細溝状のトレーサマークに限らず、突条や連続した複数の突起等であってもよい。これら光ファイバ識別マークはスロットロッド2に一体に形成される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る集合光ファイバケーブルの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】同じく集合光ファイバケーブルの要部を示す拡大斜視図である。
【図3】同じく集合光ファイバケーブルを示す正面図である。
【図4】従来の集合光ファイバケーブルの一形態を示す断面図である。
【図5】従来の集合光ファイバケーブルの他の形態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 集合光ファイバケーブル
2 スロットロッド
4 ケーブル支持溝(溝)
5 光ファイバケーブル
6 集束帯
9 テンションメンバ
14 トレーサマーク(光ファイバ識別マーク)
15 外周面
T 厚さ
D 深さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スロットロッドの外周面に複数の溝が設けられ、該溝に光ファイバケーブルが係合した集合光ファイバケーブルにおいて、前記溝に係合した前記光ファイバケーブルが前記スロットロッドの外周面よりも外側に突出して位置することを特徴とする集合光ファイバケーブル。
【請求項2】
前記溝の深さが前記光ファイバケーブルの厚さの半分ないしそれ以下であることを特徴とする請求項1記載の集合光ファイバケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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