説明

集合導体及びそれを用いたコイル

【課題】複数の導体線の集束性が優れる集合導体を提供する。
【解決手段】集合導体10は、各々、絶縁被覆された複数の導体線110が無撚り状態に束ねられた導体線束11と、導体線束11に、その長さ方向に沿って螺旋状に巻き付けられるように設けられた金属線12とを有する。上記金属線が、複数である集合導体が好ましい。より好ましくは、上記複数の金属線が無撚り状態に束ねられている集合導体である。更に好ましくは、上記複数の金属線のそれぞれが絶縁被覆されている集合導体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は集合導体及びそれを用いたコイルに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の導体線が無撚り状態で束ねられた導体線束からなる集合導体がモーターのコイル等の用途で用いられている。
【0003】
特許文献1には、各々、全体横断面形状を分割した一部分の形状の横断面を有する複数の導体線が結着層を介して無撚り状態で一体化した導体線束からなる集合導体が開示されている。
【0004】
特許文献2には、導体線束が絶縁層で被覆された集合導体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−227241号公報
【特許文献2】特開2010−55806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、複数の導体線の集束性が優れる集合導体及びそれを用いたコイルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、各々、絶縁被覆された複数の導体線が無撚り状態に束ねられた導体線束と、該導体線束に、その長さ方向に沿って螺旋状に巻き付けられるように設けられた金属線とを有する集合導体である。
【0008】
本発明は、本発明の集合導体を巻いてなるコイルである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、導体線束の長さ方向に沿って金属線が螺旋状に巻き付けるように設けられているので、導体線束を構成する複数の導体線について優れた集束性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態に係る集合導体の斜視図である。
【図2】実施形態に係る横断面形状が平角形状の集合導体の横断面図である。
【図3】(a)〜(c)は横断面形状が平角形状の集合導体の横断面概略図である。
【図4】導体線の線間に空間を有さない集合導体の横断面図である。
【図5】(a)及び(b)は横断面形状が平角形状である従来の集合導体をエッジワイズ曲げ加工したときの課題を示す説明図である。
【図6】実施形態に係る集合導体の製造方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係る集合導体10を示す。本実施形態に係る集合導体10は、例えば、巻かれる加工が施されることにより、電気自動車用のインダクションモーターのステータコアに取り付けられるコイルとして用いられるものである。
【0013】
本実施形態に係る集合導体10は、導体線束11の長さ方向に沿って金属線12が螺旋状に巻き付けるように設けられ、そして、その金属線12が巻き付けられた導体線束11を被覆するように絶縁被覆材13が設けられた構成を有する。
【0014】
本実施形態に係る集合導体10の横断面形状としては、例えば、図1に示すような円形や図2に示すような平角形状の他、正方形、扇形等が挙げられる。横断面形状が円形の場合、外径は例えば0.15〜15mmである。横断面形状が平角形状の場合、幅は例えば0.15mm以上及び厚さは例えば0.15〜15mmである。なお、本出願における平角形状には、図3(a)に示すような角部を有する矩形の他、図3(b)に示すような角部が丸くなった略矩形や図3(c)に示すような上下の辺が直線で且つ両側の辺が円弧状である陸上競技用トラック形状の偏平な断面略矩形も含まれる。
【0015】
なお、集合導体10の横断面形状は、円形や四角形で作製後、正方形、長方形或いはその他のあらゆる断面形状に加工してもよい。その場合、成形加工方法に特に制限はないが、2方向圧延、ローラーダイス等による4方向圧延、引抜加工、スエージング加工などが好適である。
【0016】
導体線束11は、各々、絶縁被覆された複数の導体線110が無撚り状態に束ねられると共に平行に引き揃えられて構成されている。かかる構成の導体線束11により、高周波電流を通電したときの渦電流損失を小さくすることができる。
【0017】
導体線束11の横断面形状としては、集合導体10の場合と同様、例えば、円形や平角形状の他、正方形、扇形等が挙げられる。導体線束11を構成する導体線110の本数は例えば、5本以上、好ましくは、7本以上である。導体線束11は、横断面形状が円形の場合、外径が例えば0.1〜10mmであり、横断面形状が平角形状の場合、幅が例えば0.1mm以上及び厚さが例えば0.1〜10mmである。
【0018】
導体線束11を構成する複数の導体線110は、図1に示すように線間に空間を有していてもよく、また、図2及び4に示すように線間に空間を有していなくてもよい。導体線束11を構成する複数の導体線110は、線間が結着剤や接着剤により密着していてもよい。かかる結着剤としては、例えば、熱融着性のポリビニルブチラール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。接着剤としては、例えば、EVA系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、クロロプレン系樹脂、シアノアクリレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ニトリル系樹脂、PVC系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等が挙げられる。結着剤や接着剤の層厚は例えば0.5μm〜3μmである。
【0019】
導体線110の横断面形状としては、例えば、円形、正方形や長方形の矩形、その他の多角形の他、導体線110の束を外側から圧縮して形成される不定形な形状等が挙げられる。但し、低コストであるという観点からは、導体線110の横断面形状は円形、正方形或いは、長方形であることが好ましい。導体線束11を構成する複数の導体線110が線間に空間を有しない場合、各導体線110の横断面形状は、導体線束11の全体横断面形状を分割した一部分の形状であってもよい。複数の導体線110は、同一の材質及び横断面形状を含む寸法構成を有するもので構成されていてもよく、また、異なる材質や横断面形状を含む寸法構成を有するものが混在して構成されていてもよい。導体線110は、横断面形状が円形の場合、外径が例えば0.01〜3mmであり、矩形の場合、一辺が例えば0.01〜3mmである。但し、表皮効果を抑制する効果を考慮すると外径或いは一辺の長さは0.01〜1mmであることが好ましい。
【0020】
各導体線110は、導体線本体111とその外周表面の絶縁被覆層112とを有する。
【0021】
導体線本体111を形成する金属材料としては、例えば、タフピッチ銅や無酸素銅などの銅の他、アルミニウム、金、銀、鉄、或いはそれらの合金等が挙げられる。導体線本体111の横断面形状及び寸法構成は実質的には導体線110のものと同一である。絶縁被覆層112を形成する絶縁材料としては、例えば、ポリアミドイミド系樹脂(AIW)、ポリエステルイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂(PEW)、ウレタン系樹脂(UEW)、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリビニルホルマール系樹脂等が挙げられる。絶縁被覆層112は、ディップ塗装により形成されたものであってもよく、また、エナメルワニス等を用いた電着塗装により形成されたものであってもよい。さらに、絶縁被覆層112は表面酸化被膜で構成されていてもよい。絶縁被覆層112の厚さは例えば0.001〜0.5mmである。
【0022】
金属線12の横断面形状としては、例えば、円形や矩形の他、外側から圧縮して形成される不定形な形状等が挙げられる。金属線12は、導体線110の横断面形状と同一の横断面形状であってもよく、また、導体線110の横断面形状とは異なる横断面形状であってもよい。金属線12は、導体線110よりも細くてもよく、また、導体線110よりも太くてもよく、さらに、導体線110と同一の太さであってもよい。
【0023】
このため、金属線12には導体線束11の全体の形状を保持するとともに、後の加工で圧延などにより成形された場合、塑性変形して全体としての形状を保持する効果も有する。
【0024】
金属線12を形成する金属材料としては、導体線本体111と同様、例えば、タフピッチ銅や無酸素銅などの銅の他、アルミニウム、金、銀、鉄、或いはそれらの合金等が挙げられる。金属線12は、導体線本体111を形成する金属材料と同一の金属材料で形成されていてもよく、また、導体線本体111を形成する金属材料とは異なる金属材料で形成されていてもよい。後者の場合、例えば、導体線本体111をタフピッチ銅や無酸素銅で形成する一方、金属線12をそれよりも強度の高い黄銅で形成してもよい。金属線12は、絶縁被覆されていてもよく、導体線110と同様、金属線本体とその外周表面の絶縁被覆層とを有してもよい。金属線12は、横断面形状が円形の場合、外径が例えば0.01〜3mmであり、矩形の場合、一辺が例えば0.01〜3mmである。
【0025】
金属線12は、導体線束11の外周に線材の単一層を形成するように設けられていてもよく、また、線材の複数層の積層構造を形成するように設けられていてもよい。金属線12が巻き付けられて形成された線材の層の総厚さは例えば0.01〜3mmである。
【0026】
金属線12は、単一線で構成されていてもよく、また、複数線で構成されていてもよい。後者の場合、金属線12の本数は例えば1〜100本である。複数の金属線12は、同一の材質及び横断面形状を含む寸法構成を有するもので構成されていてもよく、また、異なる材質や横断面形状を含む寸法構成を有するものが混在して構成されていてもよい。複数の金属線12は、撚り線に構成されていてもよい。
【0027】
金属線12の導体線束11への巻き付け螺旋方向は、右螺旋方向であってもよく、また、左螺旋方向であってもよい。金属線12が複数の場合、複数の金属線12は、右螺旋方向及び左螺旋方向のうちいずれか一方の方向のみに導体線束11に巻き付けられていてもよく、また、右螺旋方向及び左螺旋方向の両方の方向が混在して導体線束11に巻き付けられていてもよい。
【0028】
金属線12の導体線束11への巻き付け螺旋ピッチは例えば0.1〜100mmである。金属線12は、螺旋ピッチを密にして導体線束11を被覆するように設けられていてもよく、また、螺旋ピッチを疎にして金属線12間から導体線束11が露出するように設けられていてもよい。金属線12が複数の場合、複数の金属線12は、単一の巻き付け螺旋ピッチで導体線束11に巻き付けられていてもよく、また、複数の巻き付け螺旋ピッチが混在して導体線束11に巻き付けられていてもよい。
【0029】
絶縁被覆材13としては、例えば、金属線12が巻き付けられた導体線束11を被覆するように螺旋状に巻き付けた樹脂テープ、金属線12が巻き付けられた導体線束11を被覆する絶縁樹脂層等が挙げられる。
【0030】
絶縁被覆材13を構成する樹脂テープとしては、例えば、ポリイミド樹脂製のもの等が挙げられる。樹脂テープは、裏面側にアクリル系等の粘着層を有していてもよく、また、かかる粘着層を有していなくてもよい。絶縁被覆材13は、樹脂テープの単一層で構成されていてもよく、また、樹脂テープの複数層の積層構造で構成されていてもよい。樹脂テープの幅は例えば1〜20mm及び厚さは例えば0.01〜0.2mmである。樹脂テープで構成された絶縁被覆材13の厚さは例えば0.01〜0.5mmである。
【0031】
絶縁被覆材13を構成する絶縁樹脂層としては、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂組成物、ポリエチレン樹脂組成物で形成されたもの等が挙げられる。絶縁樹脂層は、単一の樹脂材料で形成されていてもよく、また、複数の樹脂材料がブレンドされた材料で形成されていてもよい。絶縁樹脂層の絶縁被覆材13の厚さは例えば0.01〜2mmである。
【0032】
以上の構成の本実施形態に係る集合導体10によれば、導体線束11の長さ方向に沿って金属線12が螺旋状に巻き付けるように設けられているので、導体線束11を構成する複数の導体線110について優れた集束性を得ることができる。
【0033】
また、一般に、横断面形状が平角形状の集合導体の場合、コイルを形成するためにエッジワイズ巻き加工を施すと、曲げ外側に引張変形及び曲げ内側に圧縮変形がそれぞれ加わることとなる。図5(a)に示すように、複数の導体線11’を束ねただけの従来の集合導体10’では、エッジワイズ巻き加工を施した際、曲げ外側の導体線11’が引張変形し、仮に結着剤等により密着していたとしても、それに抗して他の導体線11’から外れて外方に飛び出したような形態を呈することがある。また、図5(b)に示すように、エッジワイズ巻き加工を施した後に不具合等の理由から一旦真っ直ぐに戻して再加工しようとしても、曲げ外側の導体線11’が引張変形から完全に復帰できず、他の導体線11’から剥離して弓形に膨出したような形態を呈し、そのためそれを再使用することができない。しかしながら、本実施形態に係る横断面形状が平角形状の集合導体10によれば、エッジワイズ巻き加工を施しても、導体線束11に巻き付けられた延性及び展性を有する金属線12によって曲げ外側の引張変形及び曲げ内側の圧縮変形が吸収されるので、曲げ外側の導体線110が他の導体線110から外れて外方に飛び出すのを抑制することができる。また、エッジワイズ巻き加工を施した後に一旦真っ直ぐに戻しても、曲げ外側の導体線110が他の導体線110から剥離して弓形に膨出することが抑制されるので、それを再加工して再利用することができる。
【0034】
本実施形態に係る集合導体10の製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、図6に示すように、複数の導体線110を無撚り状態に束ねると共に平行に引き揃えて導体線束11を形成した後、その外周に粘着層を有さない紙テープ或いは樹脂テープ等のテープ材Tを螺旋状に仮巻きし、そして、その仮巻きしたテープ材Tを外しながら金属線12を螺旋状に巻き付け、最後に、金属線12を巻き付けた導体線束11に対し、樹脂テープを巻き付ける加工、押出成形加工、或いは電着塗装加工を施すことにより絶縁被覆材13で被覆する方法が挙げられる。横断面形状が平角形状の集合導体10の場合には、例えば、横断面形状が正方形等の矩形の導体線110をm行×n列(m≧1,n≧1,m=n≠1)に配列させて横断面形状が平角形状の導体線束11を形成し、その外周に金属線12を螺旋状に巻き付けて製造してもよく、また、横断面形状が円形の導体線110を束ねて導体線束11を形成した後、それに型ロールによる圧延加工やダイスを用いた引き抜き加工を施して横断面形状を平角形状に形成し、その外周に金属線12を螺旋状に巻き付けて製造してもよく、さらに、横断面形状が円形の導体線110を束ねて導体線束11を形成し、その外周に金属線12を螺旋状に巻き付けた後、それに型ロールによる圧延加工やダイスを用いた引き抜き加工を施して横断面形状を平角形状に形成して製造してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は集合導体について有用である。
【符号の説明】
【0036】
10 集合導体
11 導体線束
110 導体線
111 導体線本体
112 絶縁被覆層
12 金属線
13 絶縁被覆材
T テープ材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々、絶縁被覆された複数の導体線が無撚り状態に束ねられた導体線束と、該導体線束に、その長さ方向に沿って螺旋状に巻き付けられるように設けられた金属線と、を有する集合導体。
【請求項2】
請求項1に記載された集合導体において、
上記金属線が複数である集合導体。
【請求項3】
請求項2に記載された集合導体において、
上記複数の金属線が無撚り状態に束ねられている集合導体。
【請求項4】
請求項2又は3に記載された集合導体において、
上記複数の金属線のそれぞれが絶縁被覆されている集合導体。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載された集合導体において、
上記金属線が上記導体線束を被覆するように設けられている集合導体。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載された集合導体において、
横断面形状が平角形状である集合導体。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載された集合導体において、
上記金属線が巻き付けられた上記導体線束を被覆するように設けられた絶縁被覆材をさらに有する集合導体。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載された集合導体を巻いてなるコイル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−69562(P2013−69562A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207732(P2011−207732)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【Fターム(参考)】