説明

集塵機用防爆型フィルタ及び防爆型集塵機

【課題】 発火のきっかけを作る微細粉塵に着火・加熱の伝播が引き起こされず、粉塵爆発に至らないように工夫しつつ、粉塵の堆積による圧損の増加を回避する逆洗動作を安全に実現できるようした防爆型のフィルタならびに集塵機を提供する。
【解決手段】 フィルタ濾材2の内部に3次元的な気孔部5Aを持つ金属多孔体5を配置して成る防爆型フィルタ1を、防爆型集塵機10の内部に設置して、ブロアー20の吸引力によって含塵空気を当該フィルタ濾材2の内側から外側に向けて流通させることにより、ダストをフィルタ濾材2の内側に捕集する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばチタンやマグネシウムやアルミニウムといった素材を機械加工する際に生じる発火性の高い粉塵や切粉を集塵する集塵機の技術分野に属するものであって、具体的には、これ等の粉塵や切粉によって引き起こされる粉塵爆発の危険性を解消させることができるように工夫した集塵機用防爆型フィルタ及び防爆型集塵機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
防爆型の集塵機並びにフィルタに関しては、本出願人によって開示された特許文献1に記載の「火災対策機能を備えた集塵装置」と、特許文献2に記載の「集塵装置」が存在する。
【0003】
特許文献1においては、プレダスト分離器によって遠心分離された質量の大きな高熱エネルギーを有する熱粒子を、ダストバケットに回収する前に吸熱処理して高熱エネルギーを消失させ、低エネルギー粒子としてダストバケットに排出して発火を防止できるように工夫した火災対策機能を備えた集塵装置が開示されている。
【0004】
特許文献2においては、着火すると爆発を伴う大きな熱エネルギーを生ずる粗大な粒子はメッシュフィルタに捕集させて、エアー逆洗によって早々に落下させて外部へ排出させる等の処理を行い、発火性のある微細粉塵は、そのフィルタに付着する量を出来るだけ少なくして発火するに満たない量に抑え、たとえ静電気等によるスパークが発生しても引火に至らない様、随所に不活性ガスを使用して粉塵爆発を誘起する危険性を減少させる技術が開示されている。
【特許文献1】特開2001−062220号公報
【特許文献2】特開2002−263425号公報
【0005】
この様に、発火しやすい物質を加工し、その切粉を集塵する場合に粉塵爆発を引き起こすことがあるが、その爆発のメカニズムは、集塵された微粉塵がフィルタ圧損の低減のための払い落としによって集塵室内に粉塵雲となって浮遊しだし、集塵室内でなんらかのきっかけ(静電気や溶接作業時の火種等)で微粉塵の粒子が着火し、その熱によって集塵室内に混在している他の微粉塵粒子が加熱されて着火し、次々に着火が伝播されることで粉塵爆発が誘引されると考えられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが上記特許文献1では、微細粉塵をエアー噴射の如き除塵方法で集塵しているため、微細粉塵が集塵室内に浮遊して粉塵雲となり、引火の可能性が増大してしまう問題がある。そのため上記特許文献2では微細粉塵捕集用フィルタは逆洗を行わずに、ダストを付着させた状態のまま外部へ取出す構造となっているが、この構造では、フィルタの交換頻度が高くなって交換作業による運転停止が頻繁になり、フィルタそのものの交換若しくは再利用のために、堆積した粉塵を別途クリーニングする工程などが必要となり、集塵運転のランニングコストが高騰する問題がある。
【0007】
そこで本発明の技術的課題は、集塵室内で払い落としにより発生した粉塵雲状態の微粉塵に爆発のきっかけを作る火種が着火しても、それが周辺への加熱・着火の伝播を引き起こさず、粉塵爆発に至らないように工夫し、加えて、粉塵の堆積による圧損の増加を回避する堆積粉塵の払い落とし(逆洗動作)を安全に実現できるよう工夫した集塵機用防爆型のフィルタならびに防爆型集塵機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記の技術的課題を解決するために、本発明の請求項1に係る集塵機用防爆型フィルタは、発火性の高い粉塵や切粉といったダストを集塵する集塵機に使用する集塵用フィルタであって、全体を熱伝導度が空気よりも高い固体物質を用いて構成し、且つ、その骨格が3次元的に連なって連続する3次元的な気孔を持つ多孔体を、フィルタ濾材の吸気側に接触するように配置して成ることを特徴としている。
【0009】
(2) また、本発明の請求項2に係る集塵機用防爆型フィルタは、前記多孔体の全体が、金属若しくはセラミックスを用いて構成されていることを特徴としている。
【0010】
(3) また、本発明の請求項3に係る集塵機用防爆型フィルタは、前記フィルタ濾材の全体が、断面円形状若しくは多角形状を成す上下開口型の筒状体に形成され、内部には前記多孔体が充填されていて、含塵空気を当該フィルタ濾材の内側から外側に向けて流通させることにより、前記ダストをフィルタ濾材の内側に捕集するように構成されていることを特徴としている。
【0011】
(4) 更に、本発明の請求項4に係る防爆型集塵機は、発火性の高い粉塵や切粉といったダストを防爆機能を備えたフィルタを用いて集塵する防爆型集塵機であって、上記のフィルタが、熱伝導度が空気より高い固体物質を用いて、その骨格が3次元的に連なって連続する3次元的な気孔を持った多孔体を、上下開口型の筒状に形成したフィルタ濾材の内部に接触するように配置した防爆型に構成されていて、ブロアーの吸引力によって含塵空気を当該フィルタ濾材の内側から外側に向けて流通させることによって、上記のダストを上記フィルタ濾材の内側に捕集するように構成したことを特徴としている。
【0012】
(5) また、本発明の請求項5に係る防爆型集塵機は、前記フィルタ濾材の内部に前記多孔体を配置して成る防爆型フィルタ複数本を、集塵室内に立設した状態で並べて配置し、これ等複数本の防爆型フィルタの上面側には、各防爆型フィルタの上面口を回転しながら選択的に塞ぐことができる可動蓋体を設けて、上記防爆型フィルタの外側から内側に向けて逆洗空気を吹込む粉塵払い落し時に、駆動手段が上記可動蓋体を回転して、当該逆洗空気により濾材の内側に捕集された前記ダストが吸気側に再飛散しないように防爆型フィルタの上面口を選択的に塞ぐことを特徴としている。
【0013】
(6) また、本発明の請求項6に係る防爆型集塵機は、前記複数本の防爆型フィルタの夫々に対して、同心状に形成した筒状のカバー体を、当該防爆型フィルタの外周を間隔をあけて囲むように設けて、前記粉塵払い落し用の逆洗空気をこれ等各防爆型フィルタとカバー体との間隔に向けて噴出可能に構成すると共に、前記可動蓋体には上記粉塵払い落し時に上記防爆型フィルタの上面口を塞ぐ蓋板部を設けて、この蓋板部の周辺部には、上記逆洗空気の吹込みを可能にする通気穴が設けられていることを特徴としている。
【0014】
(7) また、本発明の請求項6に係る防爆型集塵機は、内部を集塵室と成して、この集塵室内に前記複数本の防爆型フィルタをこれ等フィルタを個々に囲む複数本のカバー体と一体に並べて配置すると共に外部のブロアーと連通する排気路を有する内筒体と、この内筒体の外側に同心状に間隔をあけて配置され、且つ、外周接線方向に吸気路を有する外筒体と、これ等内筒体及び外筒体の下側に設けたダストバケットとによって構成され、上記ブロアーがその吸引作用によって上記吸気路を通って外筒体の内部に吸引した含塵空気を、上記内筒体と外筒体との間隔通路を旋回流と成して上昇させた後、上記防爆型フィルタの上面口よりフィルタ内部に流入させて濾過せしめ、濾過後の空気を上記防爆型フィルタとカバー体との間隔を通して上記内筒体より上記排気路に吸引して、上記集塵室の外に排気することを特徴としている。
【0015】
上記(1)と(4)で述べた集塵機用防爆型フィルタ及び防爆型集塵機によれば、集塵運転後の払い落とし(逆洗)動作時に微細粉塵が粉塵雲となったとしても、フィルタ濾材内の多孔体内部で収まって、それよりも上流(吸気側)に再飛散せずに多孔体内部を落下して下方に集まることで、粉塵雲が多孔体の内部以外の集塵室内に発生しないため、多孔体内部の微細粉塵は加熱・着火されても熱伝導率の高い多孔体に吸熱されて着火の伝播が起こらずに粉塵爆発に至ることがなく、したがって、チタンやマグネシウムやアルミニウムといった素材を機械加工する際に生じる発火性の高い粉塵や切粉を集塵する集塵機においても、払い落とし動作を安全に行うことを可能する。
【0016】
上記(2)で述べた集塵機用防爆型フィルタによれば、一般的な製法により、任意の気孔率、任意の素材から空気の数十倍以上の熱伝導度を有する多孔体が容易に製造できるため、上記(1)の機能を確実に、且つ、安価に実現することを可能にする。
【0017】
上記(3)で述べた集塵機用防爆型フィルタによれば、フィルタ濾材を筒状にしたことで、複数のフィルタの並列配置が可能となって集塵能力を向上させることが出来るとともに、フィルタ濾材の内部空間をすべてを多孔体によって充填することが容易にできるため、払い落としされた微細粉塵による粉塵雲がフィルタ内部の多孔体より吸気側に逆流しにくく、払い落とし動作を複数のフィルタのなかで可動蓋体の位置を選択しておこなうことが出来、加えて、集塵動作と払い落とし動作を同時におこなうことが可能になるので、常時連続運転しながらの払い落とし動作による圧損の低減が可能となる。
【0018】
上記(5)と(6)で述べた防爆型集塵機によれば、逆洗動作時のエアー圧を効率良く筒状フィルタに作用させて、払い落とし(逆洗)動作によるフィルタ上の粉塵払い落とし能力を向上させることが出来る。
【0019】
上記(7)で述べた防爆型集塵機によれば、大きな粉塵をサイクロン式の一次集塵部で捕集して収集した後、微細粉塵のみを二次側に設けた複数の防爆型フィルタに流入させたことで、集塵効率が向上してフィルタ目詰まりの低減化が可能となる。
【発明の効果】
【0020】
以上に述べた次第で、本発明に係る集塵機用防爆型フィルタ及び防爆型集塵機によれば、例えばチタンやマグネシウム、或いは、アルミニウムといった素材を機械加工する際に生じる発火性の高い粉塵や切粉を集塵するに際して、これ等の粉塵や切粉によって引き起こされる粉塵爆発の危険性を確実に解消させることができると共に、連続集塵運転中の払い落とし動作(逆洗動作)によるフィルタ圧損の低減化を可能にした、防爆型フィルタ及び防爆型集塵機を実現できる利点を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、上述した本発明に係る防爆型集塵フィルタおよび集塵機の実施の形態を図面と共に詳細に説明すると、図1は本発明に係る防爆型集塵フィルタの外観およびフィルタユニットの分解図、図2は本発明に係る防爆型集塵フィルタの断面図、図3は本発明に係る防爆型集塵フィルタに用いる金属多孔体の拡大図、図4は本発明に係る防爆型集塵フィルタに用いる金属多孔体のモデル説明図、図5は本発明に係る防爆型集塵機の構成図、図6は本発明に係る防爆型集塵機の集塵ユニット部の分解図、図7は本発明に係る防爆型集塵機の要部詳細図、図8はその払い落とし(逆洗)動作時の要部詳細図、図9は本発明に係る防爆型集塵フィルタの作用説明図を示す。なお、これらの実施形態は本発明の好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限りこれらの態様に限定されるものではない。
【0022】
図1において、符号1で全体的に示したのは、本発明に係る集塵機用防爆型フィルタであって、この防爆型フィルタ1は、円筒状に形成したフィルタ濾材2と、フィルタ濾材2の開口された上下両端部に取付ける殆どが開口状態に形成された上下のフランジ体3A,3Bと、フィルタ濾材2の座屈や膨らみを抑える金属製の籠状補強体4と、フィルタ濾材2の内部に複数多段に収納される円柱状の金属多孔体5…によって構成されていて、大きく開口されている上下のフランジ体3A,3Bの丸孔が、防爆型フィルタ1の上面口2Xと底面口2Yを構成している。
【0023】
上記フィルタ濾材2は、具体的には耐熱性の高い金属やセラミックなどを織布状に形成した濾材を、矩形状に裁断してこれを円筒状に巻いて接合したものであって、上下に取付けた上記のフランジ体3A,3Bがこの円筒形状を保持するように構成されている。
【0024】
図2はこの防爆型フィルタ1の断面図を示し、金属多孔体5…は図の様にフィルタ濾材2の内部で、周面をフィルタ濾材2の内周面が接触させた状態で密着収納され、これらを上下のフランジ体3A,3Bが抑えている構成となっており、各金属多孔体5…同士はもちろん、金属多孔体5…とフィルタ濾材2が密着した状態に収納されている。
【0025】
図3は本発明に係る防爆型フィルタ1に用いる金属多孔体5の一部を示した拡大図であって、図の様に金属多孔体5は3mm程度の気孔部5A…が無数に組み合わさった三次元網目構造をしており、別名では発泡金属・金属多孔質体などともいい、高い気孔率すなわち比表面積(体積に対する表面積の比)を有しているもので、近年では様々な分野で利用されているものであり、所望の気孔形状・気孔率・外形形状・素材などでカスタム製造しても容易に入手できるものである。
【0026】
図4は本発明に係る防爆型フィルタ1に用いる金属多孔体5の一例を示した説明図であり、その一部の製法と構造の関連を説明するものであって、本発明の実施例に用いる金属多孔体5はその製造過程において、所望の気孔を得るためにそれ相当の直径を有する樹脂ビーズを充填して金属成型し、金属と樹脂ビーズの複合体を形成させた後に樹脂ビーズのみを溶融・除去するといった製法を想定している。理想的には、図4の様に除去する前の樹脂ビーズの球状形状が整列してその空間にのみ金属が充填された構造で、内部には三次元的な空間が無数に形成されているものが得られることになるが、実際には、内部に充填する樹脂ビーズの直径のバラツキや密着時の変形等により、図3で示した様な適度に入り組んだ三次元空間を有する金属多孔体5が得られることになり、この様な部材は近年では様々な素材から容易に製造可能である。
【0027】
この様な構造をしている金属多孔体5であるために、外部からは比較的小さな力で変形させたり圧縮させることが可能であり、図1、図2で示すようにフィルタ濾材2の内部および金属多孔体5…同士を密着させることは容易である。なお、これ以外の製法で得られる金属多孔体5や、金属性の不織布を凝縮したものや金網状のものを巻いたもの、スチールウールなどと称される金属製たわしの様なものも本発明の実現には使用可能であり、さらに大きさとしてもフィルタ濾材2の内部に充填されるものが多段ではなく、一体で製造することも可能であり、本発明の請求範囲における全体を熱伝導が空気よりも高い固体物質を用いて構成し、且つ、その骨格が3次元的に連なって連続する3次元的な気孔を持つ多孔体とは、前述の製法や大きさに限定するものではない。
【0028】
図5は、符号10で全体的に示した本発明に係る防爆型集塵機の構成図を示し、防爆型集塵機10は符号11で示した集塵ユニットと、ブロアーモータ20Mを備えたブロアー20と、それら同士と外部とを連通するダクト類22、及び、ブロアー20の排気用ダクト21からなっている。
【0029】
上記の図5並びに図6の分解斜視図に見られるように、上記の集塵ユニット11は、円筒状でその外部接線方向より吸気路12Aが連通する外筒体12と、その内部集塵室12Kに外筒体12と同心円状に嵌込まれ、且つ、一部に前記ブロアー20への排気路13Aが連通する底板13Rを有する内筒体13とによって構成され、更に、内筒体13の上面部には、複数の開口部14A…を有する上カバー14と、後述する可動蓋体としての円板15とが、上下二重に重なった状態に配置されている。
【0030】
加えて、上記内筒体13の内部13Kには、夫々上面口2X…を上記上カバー14の複数の開口部14A…と連通状態に合致させた状態で、前記複数本の防爆型フィルタ1…が配置され、これ等各防爆型フィルタ1…の外周には、当該フィルタ1よりも丈を若干低く造り、上端開口部にはエアー呼び込み用のテーパー16Tを設けたフィルタカバー16が、同軸に且つ間隔をあけて配置されている。
【0031】
更に、上記外筒体12及び内筒体13の下側部には、図5に示す如くダスト回収用のダストバケット17が取外し自在に装着されており、上記複数本の防爆型フィルタ1…の各下端の底面口2Yは、夫々上記内筒体13の底板13Rに複数開口した通気穴13H…を通して、上記ダストバケット17に通じている。
【0032】
また、外筒体12の上面は上蓋18で覆われており、さらにその上側には円板用モータ15Mが取付けられていて、前記円板15がこの上蓋18を貫通した駆動軸15Sの下端部に連結されて回転駆動可能に配置され、加えて、圧縮エアーパージ用のヘッダー19も配置されているが、ヘッダー19に連通するコンプレッサーは図面では省略しており、実際にはヘッダー19は外部のエアコンプレッサーまでエアーホース接続されている。
【0033】
詳細は後述するが、本発明に係る防爆型集塵機は、基本的には前述したブロアー20の吸引作用により、まず外筒体12に設けた外周の吸気路12Aより含塵空気が吸引され、その含塵空気が外筒体12と内筒体13との間隔SP(図7、図8参照)に入って、外筒体12の内壁に沿って回転上昇するため、この間隔SPがサイクロン式の一次集塵室12Wとなっており、この一次集塵室12Wにおいて比較的粗い粉塵BDは遠心力で外筒体12の内壁に沿って回転しながら自重でダストバケット17内に落下して捕集される。一方、比較的微細な粉塵SDは外筒体12の上面部に設けた上カバー14の開口部14Aより、内筒体13の内部の二次集塵室、即ち、各防爆型フィルタ1の内部に吸引され、フィルタ濾材2の内壁において捕集されて、微細粉塵を含まない清浄空気が内筒体13の排気路13Aよりブロアー20に吸引され、排気用ダクト21を通って集塵機10の外部に排気される仕組みになっている。
【0034】
図6は、特に集塵ユニット11として上述した一次集塵、二次集塵の動作を行う部分を示した分解図であって、図5には示されていないが、上カバー14の裏側(下方内側)には、図7及び図8に示す如く各開口部14Aごとに、開口部14Aを囲む嵌込み凹部14S…が上向きに凹設されていて、これ等嵌込み凹部14S…には円形状に形成した除塵用の圧縮空気を噴射するブローチューブ30…が嵌装されている。
【0035】
上記の各ブローチューブ30…は、図5、図7、図8に示す圧縮エアーパージ用のヘッダー19から分岐して、個々の弁装置を介して連通している。更に、上記ブローチューブ30…と各防爆型フィルタ1…の間には、前記可動蓋体としての円板15が配置されている。この円板15には、上記フィルタ1…の上面口2X…と同径の丸穴15Aが、計3カ所位置を合わせて設けられ、1カ所のみ、上記上面口2Xと同径の閉塞部15Sに成っていて、この閉塞部15Sの周囲に前記ブローチューブ30から噴射される除塵用の圧縮エアーを、上記防爆型フィルタ1とフィルタカバー16の上端のテーパー部16Tとの間に吹き込むことを可能にする開口部15X…が設けられている。
【0036】
また、上記複数の防爆型フィルタ1…は、夫々内筒体13の底板13Rに設けられた通気穴13H…と同軸に収納され、その外周に前述したフィルタカバー16…が配置されている。
【0037】
図7は本発明に係る防爆型集塵機の要部詳細図であり、通常の集塵運転時の動作を説明すると、図の太線の様な経路で含塵空気が集塵ユニット11内を通過し、図5で説明した様にまず外筒体12の外周の吸気路12Aより含塵空気が吸引され、その含塵空気が外筒体12の内壁に沿って回転上昇するサイクロン式の一次集塵室12Wとなっており、この一次集塵室12Wにおいて比較的粗い粉塵BD(大きい粉塵粒子)は遠心力で外筒体12の内壁に沿って回転しながら自重でダストバケット17内に落下して捕集される。比較的微細な粉塵SD(小さい粉塵粒子)は外筒体12の上部の上カバー14に設けた各開口部14A…より、内筒体13内部の二次集塵室、即ち、防爆型フィルタ1…に流入し、そこで各防爆型フィルタ1…の内部の金属多孔体5…の内部を通って吸引されるため、フィルタ濾材2の内壁において捕集されて、微細粉塵を含まない清浄空気が内筒体13の排気路13Aよりブロアー20に吸引され、集塵機10外部に排気される。
【0038】
この際に、円板15は開口部15Aが防爆型フィルタ1の上面口2Xと上カバー14の開口部14Aが同軸で連通する状態で停止しており、円板用モータ15Mも停止しているが、この位置を正確に決定するためのポジションセンサー若しくはスイッチが別途設けられており、その入力によって円板用モータ15Mを駆動から正確に停止させたり、ブローチューブ30からのパルス状のエアー噴出のタイミングを決定する制御部は、図示しないが集塵機10の内部に実装されている。
【0039】
通常の集塵運転をこの状態で継続しているうち、フィルタ濾材2の内壁側に捕集される小さい粉塵粒子SDが次第に堆積してきて、防爆型フィルタ1の目詰まりを起こすとブロアー20の吸引作用の効率が悪化してくるが、そのためにこの種のフィルタ式集塵機ではフィルタに機械的な振動を加えたり、パルスエアーをフィルタに作用させて堆積した小さい粉塵粒子を払い落とす「逆洗」運転を時おりおこなうのが常套手段である。
【0040】
その払い落とし(逆洗)運転時に払い落とされた小さい粉塵粒子が「粉塵雲」として一次集塵室12Wや内筒体13の内部13Kに充満してしまうと、何らかのきっかけで火種がその粉塵雲に紛れて着火することで、次々に粉塵雲内の粉塵粒子が加熱・着火されて、粉塵爆発を引き起こす危険性がある。
【0041】
そこで本発明の改善効果を図8に示した要部詳細図とともに説明すると、まず、払い落とし(逆洗)運転前には払い落としをおこなう防爆型フィルタ1の上面口2Xを塞ぐ様に、円板用モータ15Mにて可動蓋体としての円板15を回動させ、閉塞部15Sが正確にフィルタ上面口2Xを塞いだ位置で停止させると、ちょうどブローチューブ30の噴出口が防爆型フィルタ1の外周で、且つフィルタカバー16の内周に向けてパルスエアーが噴出できるよう開口した状態となる。この状態で図8の如くパルスエアーを噴出させて急激な圧力を防爆型フィルタ1の外部より内部に向けてパルス状に作用させることで、フィルタ濾材2の内壁に捕集されて堆積した小さい粉塵粒子SDは、フィルタ濾材2の内壁より払い落とされて金属多孔体5の内部の気孔部5Aの中で粉塵雲の状態になろうと浮遊しだす。
【0042】
金属多孔体5の内部の気孔部5Aで浮遊した小さい粉塵粒子SDに着火および爆発が生じなければ、粉塵粒子は次第に自重で沈降するか、若しくは金属多孔体5の内部の気孔部5Aに堆積することになるが、金属多孔体5の内部の気孔部5Aに堆積した粉塵に対しても払い落とし(逆洗)による圧力や振動が作用するため、次第に浮遊する粉塵の密度が濃い状態になりながら、金属多孔体5の下方に沈降し、最終的にはその下のダストバケット17に落下することになる。
【0043】
従ってフィルタ内部の金属多孔体5の内部の気孔部5Aでは、下に行くほど浮遊・堆積する粉塵が大きくて密度の濃い状態となっており、ダストバケット17に落下する段になればすでに粉塵雲の状態ではなく、比較的小さい粉塵粒子が固まって自重が増加して落下することになり、この時点では着火しても粉塵爆発の危険性は少ない状態となっている。
【0044】
粉塵爆発は、粉塵雲状の集塵室では、個々の粉塵粒子間に空間距離が空き、個々の粉塵の周囲が酸素で満たされている状態の時に、個々の粉塵粒子が着火して燃焼(酸化)しても、その周辺の粉塵粒子の周囲にはその粉塵粒子を燃焼させるだけの酸素が存在する場合に、着火・加熱・着火の連鎖が伝播していくもので、ある程度の以上の粉塵濃度では一つの粉塵粒子が着火して燃焼したことで周囲の酸素が消費されてしまって伝播されないといった性質と、逆にある程度の粉塵濃度にならないと、粉塵粒子間に距離が空きすぎて加熱作用が周辺粒子まで及ばないために伝播されないという性質も知られている。
【0045】
従って本発明の出願人は、粉塵雲が生じて粉塵爆発の危険性がある粉塵濃度の状況下にあっても加熱を妨げる対策を講じてやれば粉塵爆発に至らないことに着目し、その対策をヒートシンクでおこなうことを発明し、これを実現する手段を見出した。すなわち図9で示した本発明に係る防爆型集塵フィルタの粉塵爆発抑制効果の説明図の様に、図9(1)でまず何らかのきかっけで着火した粉塵粒子が金属多孔体5の気孔部5Aの内部に生じたとして、その熱は着火した粉塵粒子からの距離が離れるほど加熱作用は下がるが、前述の様にある程度の空間が空かないと燃焼する酸素が不足するために、実際に着火による加熱で着火が伝播する可能性のあるのは図9(1)の二点鎖線円(実際には空間であるが、モデルとして2次元で説明)付近の粒子に限られる。
【0046】
図9(1)では2つの粒子に加熱が及んで着火する条件が整い、それら2つの粒子に着火するが、その次には図9(2)で示すようにその着火による加熱に際して近傍に位置する金属多孔体5がヒートシンクとなって吸熱してしまうため、その後の加熱から着火への伝播が途絶えてしまうことになる。結果的には、仮に何らかのきっかけで粉塵が着火したとしても、図9で1点鎖線で示した金属多孔体5の気孔部5A(金属多孔体空間)の範囲より外へは着火による加熱での伝播が起こらず、粉塵爆発には至らないという現象が起こることを、本発明の出願人は実験により確認している。
【0047】
なお、図9では黒い菱形部分が金属多孔体5の骨格を示し、実際にはこの骨格同士は3次元的に連なっており、非常に大きな表面積と大きな熱容量を有している。また、材質は金属としているが、このような形状で効果を発揮させるには、金属以外にもセラミックなどの無機化合物でもよく、その素材の熱伝導率は大きいには越したことがないが、理論的には空気よりも熱伝導率の高い物質であれば、着火による加熱は多孔体の骨格の方に流れて吸熱されてヒートシンク効果が生じることになる。
【0048】
また、図2で示した気孔部5Aの寸法が3mm程度の実施例は、粒子径が3〜35μm程度の極めて着火しやすいチタンやマグネシウムやアルミニウムといった金属の加工時の切粉において、その吸熱効果による粉塵爆発の防止と、粉塵の堆積が圧縮エアーによる逆洗で払落しが可能なことが確認できたものであり、集塵する粉塵の性質や周辺環境や一次集塵室での集塵能力等によっても、この気孔寸法や金属多孔体を構成する物質の熱伝導度を適宜実験確認等おこないながら選択して構成すればよく、本発明の実施例を応用した安全な防爆型集塵フィルタ1ならびに集塵機10が安価に実現できる。
【0049】
また、本発明の実施例で示した円筒フィルタを、平板上のフィルタとして金属多孔体5を平面上で多層構造とするといった応用も可能であり、さらに逆洗のタイミングは複数の円筒フィルタにおいて集塵運転している最中であっても、一箇所のみ円板の蓋で密閉して払い落とし(逆洗)運転することも可能であり、連続運転による集塵作業の長時間継続が可能であり、他の発明例の様に微細粉塵が堆積した2次側フィルタをそのまま収集して廃棄するようなこともなく、ランニングコストの低減にも役立つ。
【0050】
さらに、ダストバケット17内に収集した粉塵の再着火を防止する前記特許文献1の吸熱機能の様な技術を組み合わせたり、フィルタ1から落下する粉塵をすぐさま押し固めて安全性を高めることも可能であり、一次集塵用のバケットと二次集塵用のバケットを分離して一次側から二次側への火種の流入を防止する手段なども適宜組みあわせることで、さらなる安全性の向上が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る防爆型フィルタの外観を示したフィルタユニット分解図。
【図2】本発明に係る防爆型フィルタの断面図。
【図3】本発明に係る防爆型フィルタに用いる金属多孔体の拡大図。
【図4】本発明に係る防爆型フィルタに用いる金属多孔体のモデル説明図。
【図5】本発明に係る防爆型集塵機の構成図。
【図6】本発明に係る防爆型集塵機で使用する集塵ユニット部の分解図。
【図7】本発明に係る防爆型集塵機の要部詳細図。
【図8】本発明に係る防爆型集塵機の払い落とし(逆洗)動作時の要部詳細図。
【図9】本発明に係る防爆型フィルタの作用説明図。
【符号の説明】
【0052】
1 防爆型フィルタ
2 フィルタ濾材
2X 上面上面部
5 金属多孔体
5A 気孔部
10 防爆型集塵機
11 集塵ユニット
12 外筒体
12A 吸気路
12W 集塵室
13 内筒体
13A 排気路
14 上カバー
14A 開口部
15 可動蓋体としての円板
15A 丸穴
15M 円板用モータ
16 フィルタカバー
17 ダストバケット
18 上蓋
19 ヘッダ
20 ブロアー
30 ブローチューブ
SD 小さな粉塵粒子
BD 大きな粉塵粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発火性の高い粉塵や切粉といったダストを集塵する集塵機に使用する集塵用フィルタであって、
全体を熱伝導度が空気よりも高い固体物質を用いて構成し、且つ、その骨格が3次元的に連なって連続する3次元的な気孔を持つ多孔体を、フィルタ濾材の吸気側に接触するように配置して成ることを特徴とする集塵機用防爆型フィルタ。
【請求項2】
前記多孔体の全体が、金属若しくはセラミックスを用いて構成されていることを特徴とする請求項1に記載の集塵機用防爆型フィルタ。
【請求項3】
前記フィルタ濾材の全体が、断面円形状若しくは多角形状を成す上下開口型の筒状体に形成され、内部には前記多孔体が充填されていて、含塵空気を当該フィルタ濾材の内側から外側に向けて流通させることにより、前記ダストをフィルタ濾材の内側に捕集するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の集塵機用防爆型フィルタ。
【請求項4】
発火性の高い粉塵や切粉といったダストを防爆機能を備えたフィルタを用いて集塵する防爆型集塵機であって、
上記のフィルタが、熱伝導度が空気より高い固体物質を用いて、その骨格が3次元的に連なって連続する3次元的な気孔を持った多孔体を、上下開口型の筒状に形成したフィルタ濾材の内部に接触するように配置した防爆型に構成されていて、ブロアーの吸引力によって含塵空気を当該フィルタ濾材の内側から外側に向けて流通させることによって、上記のダストを上記フィルタ濾材の内側に捕集するように構成したことを特徴とする防爆型集塵機。
【請求項5】
前記フィルタ濾材の内部に前記多孔体を配置して成る防爆型フィルタ複数本を、集塵室内に立設した状態で並べて配置し、これ等複数本の防爆型フィルタの上面側には、各防爆型フィルタの上面口を回転しながら選択的に塞ぐことができる可動蓋体を設けて、上記防爆型フィルタの外側から内側に向けて逆洗空気を吹込む粉塵払い落し時に、駆動手段が上記可動蓋体を回転して、当該逆洗空気により濾材の内側に捕集された前記ダストが吸気側に再飛散しないように防爆型フィルタの上面口を選択的に塞ぐことを特徴とする請求項4に記載の防爆型集塵機。
【請求項6】
前記複数本の防爆型フィルタの夫々に対して、同心状に形成した筒状のカバー体を、当該防爆型フィルタの外周を間隔をあけて囲むように設けて、前記粉塵払い落し用の逆洗空気をこれ等各防爆型フィルタとカバー体との間隔に向けて噴出可能に構成すると共に、前記可動蓋体には上記粉塵払い落し時に上記防爆型フィルタの上面口を塞ぐ蓋板部を設けて、この蓋板部の周辺部には、上記逆洗空気の吹込みを可能にする通気穴が設けられていることを特徴とする請求項4又は5に記載の防爆型集塵機。
【請求項7】
内部を集塵室と成して、この集塵室内に前記複数本の防爆型フィルタをこれ等フィルタを個々に囲む複数本のカバー体と一体に並べて配置すると共に外部のブロアーと連通する排気路を有する内筒体と、
この内筒体の外側に同心状に間隔をあけて配置され、且つ、外周接線方向に吸気路を有する外筒体と、
これ等内筒体及び外筒体の下側に設けたダストバケットとによって構成され、
上記ブロアーがその吸引作用によって上記吸気路を通って外筒体の内部に吸引した含塵空気を、上記内筒体と外筒体との間隔通路を旋回流と成して上昇させた後、上記防爆型フィルタの上面口よりフィルタ内部に流入させて濾過せしめ、濾過後の空気を上記防爆型フィルタとカバー体との間隔を通して上記内筒体より上記排気路に吸引して、上記集塵室の外に排気することを特徴とする請求項4、5又は6に記載の防爆型集塵機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−202103(P2009−202103A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−47151(P2008−47151)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000101617)アマノ株式会社 (174)
【Fターム(参考)】