説明

集塵装置及びそれを用いた投写型画像表示装置

【課題】静電フィルターの集塵有効時間を伸ばす構成としての山折り構成が提案されているがフィルターの折り込み角度が小さくなるので吸引した埃が取れなくなり使い捨てとなり、単価とあわせて維持費が大きくなってしまっていた。
【解決手段】帯状の集塵フィルター109は、小型筐体101に納められ、装置本体100には吸気装置103が設けられ、小型筐体101の矩形枠体においてその対向する壁面113、114に複数の梁110と着脱可能な複数の平行な支持軸108a〜108rを備えており、集塵フィルター109は梁110と支持軸108a〜108r間において山折りに備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉塵除去機能を備えた投写型画像表示装置において、塵埃捕捉性能が高く、清掃容易で低コストなフィルターを備えた集塵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来投写型画像表示装置は光源からの強力光を液晶パネルやDMD(デジタルミラーデバイス)などの画像表示装置に集光し、この光を画像信号にあわせて変調し、この前記画像表示素子上の画像を拡大投射して大画面を得るものである。
【0003】
ここで強力な光にさらされる画像表示装置、光源、装置電源は発熱が大きく、適当な冷却がなされないと熱的に破壊されてしまう。したがって投写型画像表示装置はファンにより外気を装置内に導入し装置内を冷却する構成を取っている。
【0004】
しかし、この構成によると、外気と一緒に粉塵を装置外部から導いてしまい、それが画像表示装置や光源周辺に付着することで明るさ低下や色むらの発生源になるという問題を生じる。このため吸気口に粉塵防止のフィルターを配置する構成が一般的だが、この場合、通常の環境において数百時間毎でのフィルター洗浄が必要となる。さらに、より小さな粉塵を集塵可能な静電フィルターでは目詰まりが早いので数百時間毎に新品交換が必要である。
【0005】
この対策に、近年、山形折りにした静電フィルターを備えることでフィルター面積を増やしてフィルター寿命を伸ばした構成の集塵装置が提供されている。
【0006】
この山形折り構成の静電フィルターの集塵装置は、山が高いほどその効果は高くなるが、フィルター面積が大きくなることでコストが上がる。また、フィルターの折り込み角度が小さくなるので吸引した埃が取れなくなり使い捨てとなり、単価とあわせて維持費が大きくなってしまっていた。
【0007】
従って静電フィルターを使って細かい埃までも捕捉し、山形折り構成でも清掃容易な集塵装置が求められる。この状況を鑑み、以下の様な構成が提案されている。
【0008】
特許文献1に記載の発明は、山形折りしたフィルターを、フィルターの山に合わせて形成された凸部を備えた枠体上に置いて、そのフィルターの端をフックなどで固定する構成である。特許文献2に記載の考案は、枠体の開口部に渡したガイド棒が回転あるいは吸気方向に移動可能に取り付けられて、端部を固定されたフィルターを伏勢する構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−351657号公報
【特許文献2】実開平 7―34920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1に記載の発明では、山形折りが浅い場合には使用できるが、上述した通り、角度が小さく織り込まれている場合、吸引した埃が取れなくなる他、フィルターと保持部の山が合いにくい、小型の場合に固定部を構成できないなどの問題がある。特許文献2に記載の考案では、フィルター取り付け時には、ガイド棒がフィルターに負荷をかけないように逃げるが、フィルター上には常に存在することから清掃作業性が悪い。特に投写型画像表示装置の場合は小型になって山間の周期が小さいのでその問題点が顕著となる。
【0011】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、集塵性能の高い静電フィルターを用いながらも清掃の容易な集塵装置及びそれを備えた投写型画像表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明にかかる集塵装置は、化学繊維からなる帯状の集塵フィルターと、前記集塵フィルターが脱着可能に装着される筐体と、吸気装置が設けられた装置本体とを備え、前記筐体は、前記吸気装置からの吸気が前記集塵フィルター面を透過するように前記装置本体に脱着可能に構成されたことを特徴とする。
【0013】
また、筐体は、矩形の枠体であって、前記枠体の対向する壁面間に平行に備えられた複数の梁と、前記複数の梁間であって、吸気装置側にずれた位置に平行に備えられた複数の支持軸とを備えており、前記複数の支持軸は前記壁面間に脱着可能に備えられたことを特徴とする。
【0014】
また、複数の支持軸は、枠体の一方の壁面に設けられた孔に挿入され、他方の壁面に設けられた孔に脱着可能に固定されることを特徴とする。
【0015】
また、集塵フィルターは、複数の梁及び複数の軸間に蛇腹形状に保持され、枠体の対向する壁面には、吸気装置側に前記集塵フィルターの形状に沿うように凸部が備えられていることを特徴とする。
【0016】
また、筐体は集塵フィルターの端部を固定できることを特徴とする。
【0017】
また、集塵フィルターは静電フィルターであることを特徴とする。
【0018】
さらに、本発明の投写型画像表示装置は、少なくとも吸気口および排気口を有する筐体と、集塵部と、送風部と、光源部と、画像形成部と、投写光学系と、映像信号回路と、電源とを備えた投写型画像表示装置であって、前記集塵部は、請求項2記載の集塵装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の集塵装置及びそれを備えた投射型表示装置によれば、集塵性能の高い静電フィルターを用いながらも清掃が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】空気清浄機全体構成図
【図2】小型筐体分解図
【図3】支持軸詳細図
【図4】小型筐体構成図
【図5】小型筐体断面図
【図6】小型筐体構成図
【図7】投写型画像表示装置構成図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明にかかる集塵装置、及び画像表示装置の実施の形態を図1〜図7を用いて説明する。
【0022】
(実施の形態1)
第一の実施の形態による空気清浄機の全体構成図を図1に示す。集塵装置100は、埃を捕捉する小型筐体101、ヤニなどにおい成分を分解する光触媒装置102、吸気装置としての軸流ファン103と、吸気口104,排気口105を備えた清浄機筐体106とから構成される。
【0023】
小型筐体101は、清浄機筐体106に着脱可能に保持されている。小型筐体101の分解図を図2に示す。小型筐体101は枠体107、支持軸108a,108b,〜,108r、集塵フィルター109とから成っている。枠体107は同図のように4つの壁面間に複数の梁110が延出している。この枠体107の壁面111には、複数の梁110の間であって軸流ファン103側にずれた位置に、複数の孔112が設けられている。同様に、壁面113にも、複数の孔114が設けられ、孔114は孔112よりも径が小さく設定されている。また、支持軸108a〜108rは、孔112に入るようにその径が設定され、図3に示すように、先端部のくびれた部分の径はフィルターを巻き込む部分の径より小さい。さらに、先端部には、爪部115が備えられている。また、集塵フィルター109は、使用の便宜上、壁面111と壁面113の間隔に対し、やや狭い幅となっている。
【0024】
集塵フィルター109は、その端部が枠体107の側壁の内側に、接着その他、何らかの方法で固定される。集塵フィルター109はこの固定端から梁を1本巻き込んだ後、孔112と孔114に挿入された支持軸108aを巻き込む。そして、次の梁を巻き込んだ後、挿入された支持軸108bを巻き込む。さらに、同様に、次の梁及び支持軸を巻き込む。このようにして繰り返した後、集塵フィルター109の他端は、脱着可能に固定されて、最終的に図4のように集塵フィルター109を備える。このようにして、断面を示す図5のように梁と支持軸間に集塵フィルター109をプリーツ状に備えることが出来る。同時に図6に示すように壁面111、壁面113の内側にはフィルター109をプリーツ状に備えた際の外形に沿うように集塵フィルター109の吸気ファン側に凸部117,118が設けられており(図6では117は見えない)、集塵フィルター109と壁面111、壁面113との間に隙間が出来ないような構造になっている。
【0025】
これにより吸気される外気は集塵フィルター109の開口部を通り、しかも広い面積を使うことが出来るので長時間に渡って集塵能力を維持することが出来る。
【0026】
このように構成することで集塵性能を実現するのみならず、集塵フィルターが埃の付着により通気性を失った際には支持軸108a〜108rを抜き取れば集塵フィルターが再度、帯状に戻ることで容易に清掃することが可能となり、清掃後、再度支持軸108a〜108r、集塵フィルター109を戻して使用することが可能となる。
【0027】
(実施の形態2)
第2の実施の形態による投写型画像表示装置200の全体構成図を図7に示す。本発明は光学構成についての提案ではないので以下に簡単に述べる。光源201から出射された光は反射鏡202により前方に出射せしめられる。光学ユニット203への入射光はダイクロイックミラー204,205、全反射ミラー206,207,208を経て赤、緑、青の色光に分離された後、入射側偏光板209R、209G、209B、液晶パネル210R、210G、210B、出射側偏光板211R、211G、211Bによって、図にはない外部からの入力信号によって強度変調せしめられる。これらの光はダイクロイック反射膜212R、212Bを備えた合成プリズム213で一光路上に合成され投写レンズ214に入射する。この投写レンズ214は前記液晶パネル210R、210G、210B上の画像を装置前方に配置されたスクリーン(図にはない)に拡大投写可能に設計、設置されている。この画像表示は黒表示のためには光源201からの光を入射側、出射側偏光板で吸収する必要があり、このため高温を発することになる。一方でこれら偏光板は主に有機材料からなっているので適当な温度にまで冷却しないと変質し、制御できない画像となり使用不能に陥る。装置内にはこのほかに発光時1000度にもなる光源の管球及び周辺の機構部品、光源や画像表示のための電源216も自己発熱が大きく信頼性を確保するためには冷却手段が必要となる。
【0028】
従って本実施の形態に於いては、送風部である吸気ファン217によって筐体218の側面に設けられた吸気口219、粉塵捕捉部220を経て外気(比較的温度の低い空気)はセット内に導かれる。吸気ファン217で押し込まれた空気は前記ファン吹き出し口に密着して配置されている光学ユニットダクト221に導かれる。光学ユニットダクト221には、前記入射側偏光板、液晶パネル、出射側偏光板の下部に相当する位置に青用開口222B、緑用開口222G、赤用開口222Rを備えている。これら開口から吹き出された空気は前記入射側偏光板、液晶パネル、出射側偏光板の熱を奪った後、排気ファン223によって引き込まれる過程で、光源201やその周辺機構部品、電源216の熱をも奪う。排気ファン223に至った空気は筐体218の側面に設けられた排気口224を経て吹き出される。従来は、冷却の過程で外気と共に外部の粉塵を吸入してしまい、その粉塵が液晶パネル周辺や光源部に付着し輝度の早期劣化を起こす、あるいは、投射像に色むらが生じるなどの不具合が生じていた。そこで本実施の形態では粉塵の入り込まない筐体構造と粉塵捕捉構造を導入している。その筐体構造は、投写レンズも完全に筐体内に収容し、光透過部には窓部材225が筐体に隙なく貼られている。吸気口219と粉塵捕捉部220の間、粉塵捕捉部220と吸気ダクト226の間、排気口224と排気ファン223との間には空気を通さない緩衝材227,228,229が設けられて空気を制御可能にしている。次に粉塵捕捉構造について説明する。
【0029】
粉塵補促構造は実施の形態1と同様の構成である。粉塵捕捉部220は着脱可能に保持されている。粉塵捕捉部220の構成図は図2と同様である。粉塵捕捉部220は枠体107、支持軸108a〜108r、集塵フィルター109とから成っている。枠体107は同図のように4つの壁面間に複数の梁110が延出している。この梁107間において集塵装置100で吸気ファンによって空気が移動する方向にずれた位置で壁面111には複数の孔112、壁面113には複数の孔114が設けられ、孔114は孔112よりもその径が小さく設定されている。また、支持軸108a〜108rは、孔112、114に入るように、少なくとも径の異なる2カ所の部分を備え、先端部の爪部115が図3に示すように備えられている。また、集塵フィルター109は壁面111と壁面113の間隔に対し、やや狭い幅となっている。
【0030】
集塵フィルター109は、その端部が枠体107の側壁の内側に固定されている。集塵フィルター109は固定端から梁を1本巻き込んだ後、挿入された108aを巻き込んで、さらに次の梁を巻き込んで、同様にして挿入される108bを巻き込んだ後、次の梁を巻く。この作業を繰り返し、最終的に集塵フィルター109のもう一端は、脱着可能に固定されて図4のように集塵フィルター109を備える。即ち、断面を示す図5のように梁と軸間に集塵フィルター109をプリーツ状に備えることが出来る。同時に壁面111、壁面113の内側には集塵フィルター109をプリーツ状に備えた際の外形に沿うように集塵フィルター109の吸気の風下側(吸気ファン217側)に凸部117,118が設けられており、集塵フィルター109と壁面111、壁面113との間に隙間が出来ないような構造になっている。
【0031】
これにより吸気ファン217によって吸気される外気は集塵フィルター109の開口部を通りしかも広い面積を使うことが出来るので長時間に渡って集塵能力を維持することが出来る。さらに集塵フィルターが埃の付着により通気性を失った際には支持軸108a〜108rを抜き取れば、集塵フィルターが再度帯状に戻ることで容易に清掃することが可能となり、清掃後再度支持軸108a〜108r、集塵フィルター109を戻して使用することが可能となる。
【0032】
本発明の粉塵装置を用いた投写型画像表示装置は、冷却のため吸い込んだ外気の粉塵を長時間に渡って集塵する性能を維持できるので、粉塵が画像表示素子やその周辺光学部品(入射側偏光板209R、209G、209B、液晶パネル210R、210G、210B、出射側偏光板211R、211G、211B)や光源部(光源201、反射鏡202)に付着して生じる色ムラや、輝度低下を抑えることが出来る。特に同じ量の外気を吸い込む際に開口面積が増えることにより、風速が落ちて集塵能力を上げることが出来る。また、山折りのプリーツの山の高さを出来るだけ高くすることが望ましく、さらに、本発明の構成に於いて、支持軸108a〜108rとフィルターとの接触面積も比較的大きいことから、支持軸108a〜108rにはその周上に溝などを設けてフィルターとの接触面積を減らすことが望ましい。
【0033】
そして長時間の使用後に於いてフィルターに埃が付着する事で通気性が悪化し、十分に装置内を冷却出来なくなった際には、粉塵捕捉部220を装置本体から外し、前述のようにフィルターを展開して掃除すればフィルターの通気性は改善され、再度組み直すことで性能を回復することが可能となる。
【0034】
この際にコストがかからないので安価な維持管理が可能となる。
【0035】
本発明に於いて支持軸は2つの孔を通すことで固定したが個別に着脱できる棒状あるいは線状の部品であれば代用することが可能であり、線形のバネ材で壁面に孔固定ではなく引っかけて固定するなど代用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、塵埃捕捉性能が高く、清掃が容易で低コストなフィルターを備えることができるので、集塵装置及びそれを用いた投写型画像表示装置に有用である。
【符号の説明】
【0037】
100 集塵装置
101 小型筐体
102 光触媒装置
103 軸流ファン
104 吸気口
105 排気口
106 清浄機筐体
107 枠体
108a〜108r 支持軸
109 集塵フィルター
110 梁
111、113 壁面
112、114 孔
115 支持軸先端部の爪部
117、118 凸部
200 投写型画像表示装置
201 光源
202 反射鏡
203 光学ユニット
204、205 ダイクロイックミラー
206、207、208 全反射ミラー
209R、209G、209B 入射側偏光板
210R、210G、210B 液晶パネル
211R、211G、211B 出射側偏光板
212R、212B ダイクロイック反射膜
213 合成プリズム
214 投写レンズ
216 電源
217 吸気ファン
218 筐体
219 吸気口
220 粉塵捕捉部
221 光学ユニットダクト
222B 青用開口
222G 緑用開口
222R 赤用開口
223 排気ファン
224 排気口
225 窓部材
226 吸気ダクト
227,228,229 緩衝材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学繊維からなる帯状の集塵フィルターと、前記集塵フィルターが脱着可能に装着される筐体と、吸気装置が設けられた装置本体とを備え、
前記筐体は、前記吸気装置からの吸気が前記集塵フィルター面を透過するように前記装置本体に脱着可能に構成されたことを特徴とする集塵装置。
【請求項2】
筐体は、矩形の枠体であって、前記枠体の対向する壁面間に平行に備えられた複数の梁と、前記複数の梁間であって、吸気装置側にずれた位置に平行に備えられた複数の支持軸とを備えており、前記複数の支持軸は前記壁面間に脱着可能に備えられたことを特徴とする請求項1記載の集塵装置。
【請求項3】
複数の支持軸は、枠体の一方の壁面に設けられた孔に挿入され、他方の壁面に設けられた孔に脱着可能に固定されることを特徴とする請求項2記載の集塵装置。
【請求項4】
集塵フィルターは、複数の梁及び複数の軸間に蛇腹形状に保持され、枠体の対向する壁面には、吸気装置側に前記集塵フィルターの形状に沿うように凸部が備えられていることを特徴とする請求項2記載の集塵装置。
【請求項5】
筐体は集塵フィルターの端部を固定できることを特徴とする請求項2記載の集塵装置。
【請求項6】
集塵フィルターは静電フィルターであることを特徴とする請求項2記載の集塵装置。
【請求項7】
少なくとも吸気口および排気口を有する筐体と、集塵部と、送風部と、光源部と、画像形成部と、投写光学系と、映像信号回路と、電源とを備えた投写型画像表示装置であって、前記集塵部は、請求項2記載の集塵装置であることを特徴とする投写型画像表示装置。

【図1】
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【図7】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−512(P2011−512A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143849(P2009−143849)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】