説明

集束イオンビーム装置のナノエミッタ作製方法及びナノエミッタ作製手段を有する集束イオンビーム装置

【課題】本発明は、目的とする引出電圧を持つナノエミッタを容易に作製することができる集束イオンビーム装置におけるナノエミッタ作製方法を提供する。
【解決手段】集束イオンビーム装置におけるナノエミッタ作製方法であって、目的の引出電圧を引出電極に印加する工程と、エミッタ先端部でマイグレーションを起こさせるようなガス圧をガス供給手段に設定する工程と、エミッタ先端部のマイグレーションの発生を認識しその状態を維持するようなガス圧をガス供給手段に設定する工程と、ナノ突起物の形成が始まったことに基づいてマイグレーションを遅くするようなガス圧をガス供給手段に設定する工程と、ナノ突起物の形成が完了したことに基づいてマイグレーションを停止するようなガス圧をガス供給手段に設定する工程とから成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は集束イオンビーム装置のナノエミッタ作製方法及びナノエミッタ作製手段を有する集束イオンビーム装置に関し、エミッタ先端を1個乃至は数個の原子から構成することができるようにした集束イオンビーム装置のナノエミッタ作製方法及びナノエミッタ作製手段を有する集束イオンビーム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
荷電粒子ビームの光源としては、FEG(Field Emission Gun)が走査型電子顕微鏡(SEM)の光源として、そしてイオンビームに対してはGa液体金属イオン源があげられ、電子顕微鏡やFIB(集束イオンビーム装置)に利用されている。
【0003】
近年、ナノエミッタと呼ばれる単原子、若しくは数原子から放出される光源の研究が行われている。これは従来の光源サイズが数10nmであるのに対し、数nm以下であること、更に輝度が1桁以上高いことが特徴として挙げられる。ナノエミッタは、通常数百nmの先端径を持つエミッタ上に更に、数nm程度の微細突起を製作し、この微細突起に高電界を集中することにより小さな光学サイズとより高い高輝度を期待するものである。
【0004】
エミッタを高電界(正電界若しくは逆電界)のもとで加熱させて結晶方位のビルドアップを行ない、微細突起を製作する手法や、エミッタ先端に貴金属等を蒸着し、FIM(電界イオン顕微鏡)を利用し、加熱と高電界でエミッタ上に微小突起を製作する手法、更にFIMにおけるN2ガス導入によりエミッタ先端をエッチングして、微細突起を製作する手法等が報告されている。
【0005】
先に述べたFIMについて簡単に説明する。FIMは電界イオン顕微鏡と言われ、先鋭化(200nm程度)されたエミッタを液体窒素温度程度に冷却し、エミッタに正の高電圧を印加すると共に、エミッタ先端の近傍に希ガスを10-3Pa程度導入すると、希ガスはエミッタ先端部での原子構造に応じてイオン化され、それぞれのイオンは加速され、蛍光板に入射する。入射したイオンにより蛍光板にエミッタ先端の原子構造を表わすパターンが投影される投影タイプのイオン顕微鏡である。今日、現存する最も安価で、かつ容易に高倍率で原子構造を観察し得る装置として知られている。
【0006】
図1はFIMの一般的な構成を示す図である。図において、1はエミッタであり、通常先端が200nm以下に電界研磨されたタングステンの単結晶が使用される。このエミッタ1は事前に電源2で加熱され、超高真空下で表面の清浄化が行われる。また、エミッタ1は、通常は図示されていない冷却装置により液体窒素温度程度に冷却されている。
【0007】
3はガスの導入チューブであり、一般的にヘリウム(He)や窒素(N2)等のガスが使用される。4は超高真空下でのガスの導入量を調整するバルブであり、真空外のガスボンベ5に接続されている。6は引出し電極であり、電源7を通してエミッタ1と引出し電極6との間に高電圧が印加され、エミッタ近傍でイオン化されたガスイオンが引出し電極方向に加速され、イオンビームが作製される。
【0008】
更にエミッタ1と引出し電極6は、共通の電源8にバイアスされ、イオンビームのエネルギーが与えられる。9はアノードであり、通常グランド電位に保持されている。10はイオンビームの蛍光板付き検出器であり、例えばMCP(Multi Channel Plate)が使用されている。MCP10に入射したイオンビームが数々の電子を発生し、それらが蛍光板11に加速して衝突し、発光し、エミッタ先端部の原子構造を表わすエミッションパターンが投影される。
【0009】
12はミラーであり、蛍光板11上のイオンビームのパターンをのぞき窓13を経由して真空外部で観察できる構造となっており、エミッタ1から放出されるイオンビームの量やエミッションパターンの観察に用いられる。なお、光軸Oは、イオン光学系の中心軸である。
【0010】
従来のこの種の装置としては、エミッタと引出電極との間にエミッタ先端部を電界蒸発させる電圧をその電圧値を高くしながら多数回繰り返し印加し、その繰り返しの都度、引出電圧を下げてイオンビームの電流を測定し、イオンビーム電流の最大値が得られたときの引出電圧を記憶し、記憶された多数回の電界蒸発後の各引出電圧に基づいて最適引出電圧の設定を行うようにした技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平7−192669号公報(段落0014〜0019、図3,図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図2の(A)は一般的なエミッタのFIM像を示している。ここで、エミッタはタングステン単結晶(111)方位を使用し、イメージングガスとしてヘリウム(He)ガスを使用している。イメージングガスは、イオン化した希ガスイオン化ガスで、例えばHe,H2,Ar等のガスである。この時のエミッタに印加される電圧は+34KVである。一部アパーチャによる視野のカットが観察されているが、矢印で示された部分がエミッタの先端に対応し、この部分が(111)結晶面に対応し、その周りに(221)方位、更に(211),(121)方位が対応し、更に外側に行くにつれてエミッタの根元に向かう各結晶面上の小さなスポットは、それぞれ原子に対応している。このパターンでは、(111)上に23個の原子が存在し、1個欠けた欠陥があることが分かる。これらは通常FIMで観察されるパターンである。
【0013】
本発明で目的としているエミッタは、ナノエミッタであり、(111)結晶面上に1個、若しくは3個の原子が形成された構造を再現性よく実現することである。それを実現したエミッタのFIM像が図2の(B),(C)で示されており、それぞれ3つのスポット、そして1個のスポットが観察されたパターンが示されている。エミッタ先端部に3個,1個の原子が乗っているため、先端部での電界強度が局所的に強くなり、周りの他の結晶面からのエミッションが無くなっており、真のナノエミッションとなっている。ナノエミッタを作製する上で重要なのは、(111)面上に多数の原子を配置させるのではなく、1個若しくは3個の原子を再現性よく配置させることにある。
【0014】
図3はエミッタ先端の模式図である。(b)が通常のエミッタにおける電界分布と開き角の状態を示している。この状態では、エミッタの先端半径が大きいため、エミッタに電圧が印加された場合の電界分布は図に示すように穏やかな曲線となるため、エミッタから放出される荷電粒の軌道は広がって、エミッションの開き角αは大きくなり、電流密度は小さくなる。図2のパターン(A)はこの状態と考えられる。
【0015】
一方、図3の(a)は同じエミッタ先端部に1個若しくは数個の原子を乗せた場合であり、図に小さな突起1aで示している。この小さな突起1aの周囲に集中的に強電界が形成されるため、荷電粒子のエミッションはこの突起1aからのみに制限される。このため、エミッションの開き角αは極めて小さくなると共に、エネルギー幅が小さくなり、角電流密度が大幅に改善され、光源のサイズが極めて小さくなる。図2の(B),(C)のパターンはこの状態と解析できる。
【0016】
従来のFIMを用いたナノエミッタの作製法では、上記したように、導入ガスの圧力を一定に保った状態で引出電圧を可変させることにより、(111)面上の原子の数を数個に減らすことを行なっていた。(111)面上の原子は原子間引力で結合されているため、外部からの電界で原子を1つずつ解放させて取り除く努力が必要となる。
【0017】
一般に、これらのエネルギーはフェルミレベルから数eVといわれているが、この(111)上の原子を制御するには、個々の原子の位置を再アレンジさせるマイグレーション(移動)を行なって個々の原子の位置を外部からの電荷で制御するため、極めて微小な電圧(数V〜数十V)の狭い幅で制御を行わなければならない。これは、通常採用される10kV〜20kVの引出電圧を再現性よく数Vから数十Vの精度で制御することを要求するものであり、極めて困難である。
【0018】
例えば、既に示した図2の(A)のFIM像で、(111)上の原子を1個にするために、現在の印加電圧34kVを更に数十V上昇させると、先ず(111)の外側の結晶面に位置する原子が(111)方面に移動し、更に電界が強くなると(111)に集まった後、エミッタの外に放出される。これは外部電界の増加と共に、エミッタの根元の原子が、エミッタ先端の(111)方位に集まり、更にエミッタ先端からエミッタ外部に放出されることを意味する。この過程の途中にエミッタ先端に数個の原子が配置される状態が存在するわけであるが、エミッタ先端に原子が数個移動した状態の時に、上記高電圧の上昇を止めることは至難の業といえる。
【0019】
一般にエミッタの引出電圧は、任意の値ではなく接続される荷電粒子光学系に依存する電圧値が要求される。これは、光源からの荷電粒子線を荷電粒子光学系で縮小,拡大,偏向等を行なうに当たり、上記引出電圧が異なる毎にその軌道を調整する必要があり、大変煩わしい作業が発生するからである。そして、一般的には、電子源の場合はその値は5kV程度、ガスフェーズイオン源(GFIS)では18kV程度が一般的な要求値である。従って、引出電圧がこの要求値に適合して一定であるナノエミッタが要求される。従来のGFISでは、ガス圧を一定に保った状態で、引出電圧を制御して、マイグレーションを起こさせ、個々の原子の位置のアレンジメントを行なっていたが、一般的な引出電圧10kV〜20kVを数Vから数十Vの精度で良く制御することが再現性を要求されるマイグレーションが実施できず、結果として得られるナノエミッタの引出電圧は、15kV,17kV,20kVなどとバラバラであり、極めて幅広い分布となっていた。
【0020】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、前述したような煩わしさを避け、引出電圧は目的とした電圧値に固定したまま、導入ガス圧を制御することで、目的とするナノエミッタを容易に作製することができるナノエミッタ作製方法及びナノエミッタ作製手段を有する集束イオンビーム装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
(1)請求項1記載の発明は、エミッタと、該エミッタにガスのガス圧を変えて供給するガス供給手段と、該エミッタ先端部からイオンビームを引き出す引出電極と、該イオンビームを材料上に集束する集束レンズ系と、該イオンビームで材料上を走査させるための走査レンズ系とを備え、引出電極と集束レンズ系間にエミッタ先端部の素材の様子を撮影する画像撮影手段を備えた集束イオンビーム装置のナノエミッタ作製方法において、引出電極に一定の電圧を印加する工程と、エミッタ先端部でマイグレーションが発生するようなガス圧を前記ガス供給手段に設定する第1の工程と、該マイグレーションの発生を認識しその状態を維持するようなガス圧を前記ガス供給手段に設定する第2の工程と、エミッタ先端部にナノ突起物の形成が始まったことに基づいてマイグレーションの速度を遅くさせるようなガス圧を前記ガス供給手段に設定する第3の工程と、エミッタ先端部に所望のナノ突起物の形成が完了したことに基づいてマイグレーションを停止させるようなガス圧を前記ガス供給手段に設定する第4の工程とから成ることを特徴とする。
【0022】
(2)請求項2記載の発明は、エミッタと、該エミッタにガスのガス圧を変えて供給するガス供給手段と、該エミッタ先端部からイオンビームを引き出す引出電極と、該イオンビームを材料上に集束する集束レンズ系と、該イオンビームで材料上を走査させるための走査レンズ系とを備え、引出電極と集束レンズ系との間にエミッタ先端部の素材の様子を撮影する画像撮影手段を備えたナノエミッタ作製手段を有する集束イオンビーム装置において、引出電極に一定の引出電圧を印加し、前記ガス供給手段により前記エミッタに前記ガスを供給しながら前記画像撮影手段で撮影された画像を輝度演算する輝度演算手段と、該輝度演算手段の結果と設定した基準値を比較し、該比較した結果に基づいて前記ガス供給手段のガス圧を制御する比較手段とを設けたことを特徴とするナノエミッタ作製手段を有することを特徴とする。
【0023】
(3)請求項3記載の発明は、前記基準値とは、エミッタ先端部のマイグレーションの発生を認識しその状態を維持するガス圧にするために設けられた基準値Aと、エミッタ先端部にナノ突起物の形成が始まったことを認識しマイグレーションの速度を遅くさせるガス圧にするために設けられた基準値Bと、エミッタ先端部に所望のナノ突起物の形成が完了したことを認識しマイグレーションを停止させるガス圧にするために設けられた基準値Cとから成る請求項2記載のナノエミッタ作製手段を有することを特徴とする。
【0024】
(4)請求項4記載の発明は、前記輝度演算手段は、前記画像撮影手段より得られた所定画素数の画像データに基づき、あらかじめ設定された輝度区分毎に画素を区分し、各区分の画素の数を表すヒストグラムデータを作成することを特徴とする請求項2記載のナノエミッタ作製手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
(1)請求項1記載の発明によれば、反応ガスをマイグレーションが起こるように、エミッタ部分に導入して制御することにより、エミッタ先端部を1個か数個の原子からなるように作製することができ、しかもナノエミッタを比較的容易に作製することができる。
【0026】
(2)請求項2記載の発明によれば、引出電極に一定の引出電圧を印加し、ガス供給手段によりエミッタに前記ガスを供給しながら画像撮影手段で撮影された画像を輝度演算し、該輝度演算値と設定した基準値とを比較し、該比較した結果に基づいて前記ガス供給手段のガス圧を制御することで、安定なナノエミッタを作製することができる。
【0027】
(3)請求項3記載の発明によれば、マイグレーションの状態を維持するために用いられる基準値Aと、マイグレーションの速度を遅くするために用いられる基準値Bと、マイグレーションを停止させるために用いられる基準値Cを設けることにより、マイグレーションの安定化を図ることができ、自動的にナノエミッタを作製することができる。
【0028】
(4)請求項4記載の発明によれば、輝度演算手段として、得られた画像データに基づき予め設定された輝度区分毎に区分毎の画素の値を表わすヒストグラムデータを作成することで、輝度区分毎の画素値の度数を認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明を実施するFIMの一実施の形態を示す構成図である。
【図2】エミッタ先端の様子を示す図である。
【図3】エミッタ先端の模式図である。
【図4】本発明を実施する集束イオンビーム装置の一実施の形態を示す構成図である。
【図5】ナノエミッタ作製のフロー図である。
【図6】ガス圧とマイグレーション速度の関係を示す図である。
【図7】本発明によるナノエミッタの作製過程を示す図である。
【図8】本実施例のナノエミッタの作製過程を説明する図である。
【図9】本発明を実施する集束イオンビーム装置の他の一実施の形態を示す構成図である。
【図10】本実施例のナノエミッタの作製過程を説明する説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
エミッタ先端部に個々の原子の位置を再配列させるマイグレーションによる原子の移動速度は、エミッタ先端部に供給されるガスのガス圧に比例することが発明者による実験から明らかになった。その結果を図6に示す。図中の縦軸はマイグレーションの速度で、横軸がガスのガス圧を表している。図よりマイグレーションにおける原子の移動速度はガス圧に比例し、ガス圧が高いほどその移動速度は速く、ガス圧が低いほどその移動速度が遅いことが分る。
【0031】
そこで、発明者は、エミッタ先端部に供給するガスのガス圧を制御することにより、原子の移動を制御してナノエミッタを作製できるのではないかと考えた。
図4は本発明に係る方法を実施する集束イオンビーム装置の一実施の形態を示す構成図である。図中、図1にて使用した記号と同一記号の付されたものは同一構成要素を示す。図4において、図中14は加速電極9の下流に配置されたエミッタ1から発生したイオンビームを集束させるための集束レンズ、15は該イオンビームを材料16上に細く集束させるための対物レンズ、17は該イオンビームを材料16上に走査するための偏向器である。
【0032】
18はイオンビームの照射により材料16から放出された二次荷電粒子を検出するための検出器で、該検出器からの検出信号は、増幅器19、AD変換器20を介して、画像処理を行うと共に、各手段に作動指令を送る制御装置21へ送られる。
【0033】
図中22は、MCP10,蛍光板11,ミラー12を一体で水平方向(矢印
Hで示す)に移動させるリトラクト手段で、加速電極9と集束レンズ14間に配置されると共に、制御装置21の指令に基づいて動作する。
【0034】
エミッタ1からのイオンビームがMCP10、蛍光板11を介して光に変換され、該蛍光板に投影されたFIM像(エミッタ1先端部の素材の様子)は、ミラー12で反射され、のぞき窓13を介してCCDカメラ23により撮影される。24は該CCDカメラで撮影されたFIM像を一時的に記憶する画像取込み装置である。25は該画像取込み装置からのFIM画像を画像処理する画像処理装置で、基準値記憶手段26と輝度演算回路27と比較器28から構成される。
【0035】
基準値記憶手段26は、エミッタ1先端部に供給するヘリウムガスのガス圧を制御するために必要な基準値を入力装置30から読込み、比較器28に設定するものである。
輝度演算回路27は、画像分解部27aと階調変換部27bとヒストグラムデータ作成部27cとから構成される。
【0036】
画像分解部27aは、FIM画像を画素毎に分解し、階調変換部27bは、該画像分解部からの分解された画素を階調変換し、輝度値を算出する。ヒストグラムデータ作成部27cは、画素毎に算出された輝度値を、例えば、4つの輝度区分(低輝度区分,中間輝度区分,高輝度区分,飽和輝度区分)に振分け、各輝度区分の画素の数を線分化し、輝度ヒストグラムデータを作成するものである。
【0037】
比較器28は、輝度ヒストグラムデータと基準値とを比較し、その比較結果に基づいて制御装置21にバルブ4の開閉量を制御する制御信号を送るものである。
29は制御装置21の指令に基づいて表示画面上に二次電子画像やFIM画像等を表示する表示装置、30は入力装置で、オペレータが基準値を入力する例えばマウスやキーボードから成る。
【0038】
このように構成された集束イオンビーム装置において、イオンビームによる材料の加工や材料表面の観察を行う場合、先ず、リトラクト手段22によりMCP10、蛍光板11、ミラー12がイオン光学系光軸O外に配置する。次に、オペレータが入力装置30により加工観察の指示を行うと、制御装置21は、各電源7に指令を送り、各電源7はエミッタと引出電極の間に一定の引出電圧を印加し、更に、エミッタ1と加速電極9との間に一定の加速電圧を印加するので、エミッタ1の先端部に高電界が形成される。
【0039】
同時に制御装置21から指令を受けたバルブ4が開き、ガスタンク5からヘリウムガスが導入チューブ3を介してエミッタ1の先端部に供給される。すると、ヘリウムガスの原子は、エミッタ1先端部の高電界による電界電離によってイオン化される。生成されたヘリウムイオンは、引出電極6によって、イオンビームとして取り出され、加速電極9で加速される。
【0040】
このイオンビームは、集束レンズ14と対物レンズ15によって集束され、材料16に照射される。偏向器23には、制御装置21の指令により偏向器制御回路(図示せず)から加工データに応じた偏向信号が偏向器17に供給され、材料16にはイオンビームによって所望のパターンが加工される。
【0041】
又、材料表面を観察する場合には、イオンビームの照射により材料16から放出された二次イオンが検出器18で検出され、この検出信号が増幅器19で増幅され、AD変換器20でAD変換され、制御装置21に送られる。該制御装置は送られてきた信号に基づいて画像処理を行って、表示装置29の表示画面上に二次イオン顕微鏡像(SIM像)を表示させる。
【0042】
このような集束イオンビーム装置において、引出電圧がVexのナノエミッタを自動的に作製する方法を図4、図5、図6、図7、図8を用いて説明する。オペレータが入力装置30を介して制御装置21に対して引出電圧がVexのナノエミッタ製作の指示を行うと、制御装置21は、リトラクト手段22を制御してMCP10と蛍光板11とミラー12をイオン光学系の光軸O上に配置させる。併せて、制御装置21の指令によりバルブ4が閉じられ、エミッタ1の先端部へのヘリウムガスのガス供給が遮断される。
【0043】
次に、制御装置21の指令を受けた電源7が、エミッタ1と引出電極6との間に要求値の引出電圧Vexを印加する(S1)と、エミッタ1の先端部に引出電圧Vexによる高電界が形成される。そして、S2において、制御装置21の指令によりバルブ4が開かれ、例えばエミッタ周囲のガス圧が5×10-5Paとなるようにヘリウムガスが導入チューブ3を介してエミッタ1の先端部に供給されるので、エミッタ1先端部の高電界によりヘリウムがイオン化される。発生したヘリウムイオンは引出電極6及びアノード9を介して取り出されてMCP10に入射し、その結果、CCDカメラ23によりエミッタ先端部のFIM像が撮影されるようになる。このときFIM像は、ナノエミッタ作製前の一般的なFIM像であり、図7の(A)に示すようなものである。撮影されたFIM画像は画像取込み装置24に記憶される。
【0044】
その後、エミッタ先端部でマイグレーションが発生するように、ガス圧は
5×10-5Paから徐々に上昇させられる(S2)。このガス圧の上昇に合わせて、制御装置21の指令によりCCDカメラ23は、一定時間の間隔でFIM画像を撮影し、撮影されたFIM画像は画像取込み装置24に順次記憶される。
【0045】
画像処理装置25は、撮影されたFIM画像に基づき、マイグレーションの発生を判別し、マイグレーションの制御を行うが、その詳細については以下に説明する。
すなわち、制御装置21の指令により画像処理装置25の輝度演算回路27は、画像取込み装置24からFIM画像を読込む。
【0046】
輝度演算回路27の画像分解部27aは、読込まれたFIM画像を画素毎に分解する。
階調変換部27bは、画素毎に分解されたFIM画像を画素毎の輝度を256階調の輝度値に変換する。ヒストグラムデータ作成部27cは、256階調に変換された画素毎の輝度値を、例えば、低輝度区分(0から85までの輝度値)、中間輝度区分(85から170までの輝度値)、高輝度区分(170から256までの輝度値)と飽和輝度区分(256以上の輝度値)の4区分の何れかに分け、区分毎の画素の数を線分化した輝度ヒストグラムデータを作成し、比較器28に送る。
【0047】
この輝度ヒストグラムデータの一例を図8に示す。図中の縦軸は輝度区分毎の画素の数を、横軸は輝度区分を表している。次に、比較器28は、送られてきた輝度ヒストグラムデータと基準値記憶手段26よりの各基準値との比較を行う。
【0048】
該各基準値は、マイグレーションが始まったか否かを判断するための基準値Aとマイグレーションの速度を遅くさせるための基準値Bとマイグレーションを停止させるための基準値Cとから成り、該基準値Aは、エミッタ1先端部でマイグレーションが起きると、FIM画像が焦点ぼけに成り、且つ、輝度が極端に低下することに着目して、マイグレーションが始まったことを認識しそのガス圧を維持させるために設けられた。
【0049】
本実施例の基準値Aは、輝度ヒストグラムデータの飽和輝度区分の画素の数をゼロ、且つ、輝度ヒストグラムデータの中間輝度区分の画素の数をB1とする。又、基準値Bは、マイグレーションにおける原子の移動速度は、図6に示すようにヘリウムのガス圧が高いほど原子の移動速度は速く、ガス圧が低いほど原子の移動速度が遅くなることに着目して、マイグレーションにおける原子移動速度を遅くして、ナノ突起物の形成を制御し易くするガス圧にするために設けられた。
【0050】
本実施例の基準値Bは、輝度ヒストグラムデータの飽和輝度区分の画素の数がA1、且つ、輝度ヒストグラムデータの中間輝度区分の画素の数がB2とする値である。又、基準値Cは、マイグレーションによる原子移動の結果、エミッタ1先端部に原子レベルのナノ突起物が形成されると、形成されたナノ突起物が壊れ、再び、新たなナノ突起物の形成が始まり、FIM画像の飽和輝度値が顕著に変化することに着目して、エミッタ1先端部に所望のナノ突起物を形成させるためにマイグレーションを停止させるガス圧にするために設けられた。
【0051】
本実施例の基準値Cは、輝度ヒストグラムデータの飽和輝度区分の画素の数がA2、且つ輝度ヒストグラムデータの低輝度区分の画素の数がC1とする値である。尚、比較器28には、事前に基準値記憶手段26から入力装置30で入力された基準値A,B,Cの中から基準値Aを読み込み設定されている。
【0052】
次に、比較器28は、先ず、送られてくる輝度ヒストグラムデータと基準値Aとの比較を行い、エミッタ先端部でマイグレーションが始まったことを制御装置21に知らせる(S3)、マイグレーションが始まっていない場合には、S2に戻り、ガス圧の上昇を継続する。図7の(B)に示すような輝度が低下したFIM画像が輝度演算回路27で輝度演算処理されると、図8の(B)に示すような輝度ヒストグラムデータを得る。このような輝度ヒストグラムデータが比較器28に送られてくると、該比較器は、該輝度ヒストグラムデータが基準値A、即ち、輝度ヒストグラムの飽和輝度区分の画素の数がゼロ、且つ、中間輝度区分の画素の数がB1以上を上回ったことを認識し、マイグレーションが始まったことを示す判別信号を発生し制御装置21に送る。
【0053】
該制御装置21は、判別信号に基づいて、ガス圧の上昇は停止され、ガス圧はその時の圧力に維持されると共に、比較器28には、基準値記憶手段26からの基準値Bが設定される。上昇停止時の圧力が、例えば、1×10-2Paであるとすると、その圧力のもとで、マイグレーションの速度は一定速度に成り、エミッタ1先端部の(111)面上やその周辺で原子レベルのナノ突起物の形成が始まるようになる(S4)。
【0054】
更に、マイグレーションが進行し、エミッタ先端部の(111)面上やその周辺で幾つかの原子レベルのナノ突起物が幾つか形成されるようになると、図7の(C)に示すようなFIM画像から図7の(D)に示すようなFIM画像へと徐々に変わる(S5)。このようなFIM画像、図7(C),(D)を輝度演算回路27で輝度演算処理を行うと図8(C),(D)に示す輝度ヒストグラムデータに成る。
【0055】
次に、比較器28は、送られてくる輝度ヒストグラムデータと基準値Bとの比較を行い、エミッタ先端部でナノ突起物の形成が始まったことを制御装置21に知らせる(S5)、ナノ突起物の形成が始まっていない場合には、S4に戻り、マイグレーションは継続される。マイグレーションが進行して図7の(D)に示すようなFIM画像が得られるようになり、それが輝度演算回路27で輝度演算処理され、図8の(D)に示すような輝度ヒストグラムデータが得られるようになると、比較器28は該輝度ヒストグラムデータが基準値B、即ち、輝度ヒストグラムデータの飽和輝度区分の画素数がA1値以上、且つ、中間輝度区分の画素数がB2値以上を上回ったことを認識し、ナノ突起物の形成が始まったことを示す判別信号を発生し制御装置21に送る。
【0056】
該制御装置21は、判別信号に基づいて、バルブ4に第3のガス圧、例えば、それまでのガス圧2×10-2Paより低いガス圧2×10-3Paが設定される(S6)。同時に比較器28には、基準値記憶手段26から基準値Cが設定される。エミッタ1先端部のガス圧が2×10-3Paになると、エミッタ1先端部のマイグレーションの速度が遅くなり、ゆっくりとした速度で原子の再配列が行われる。
【0057】
更にマイグレーションが進行すると、図7の(D)に示すようなFIM画像から図7の(E)に示すようなFIM画像へと変わり、エミッタ1先端部の(111)面上に数個の原子が再配列されるようになる。次に、比較器28は、送られてきた輝度ヒストグラムデータと基準値Cと比較を行い、エミッタ先端部のナノ突起物の形成が完了したことを制御装置21に知らせる(S7)。
【0058】
図7の(E)に示すようなFIM画像が輝度演算回路27で輝度演算処理されると、図8の(E)に示すような輝度ヒストグラムデータを得る。このような輝度ヒストグラムデータが送られてくると、比較器28は、該輝度ヒストグラムデータが基準値C、即ち、輝度ヒストグラムデータの飽和輝度区分の画素の数がA2値以上で、且つ、低輝度区分の画素の数がC1値以上を上回ったことを認識し、ナノ突起物の形成が完了したことを示す判別信号を発生し制御装置21に送る。
【0059】
該制御装置21は、判別信号に基づきバルブ4にマイグレーションを停止させる第4のガス圧、例えば、ガス圧7×10-4Paが設定される(S8)。すると、エミッタ1先端部のマイグレーションは停止し、該先端部の(111)面上に数個の原子が固定し、ナノ突起物が形成される。このように一連の動作を自動的に行うことにより要求値の引出電圧Vexに対するナノエミッタを作製することができる。
【0060】
以上のような過程によりナノエミッタが作製され、作製されたナノエミッタを使用して集束イオンビーム装置で材料の加工や材料表面の観察あるいは加工を行うことができる。
次に、本発明の第2の実施の形態を示す集束イオンビーム装置の構成の一例を図9に示す。図中、図4にて使用した記号と同一記号の付されたものは同一構成要素を示し、説明を省略する。
【0061】
図9の構成が図4の構成と異なるのは、画像処理装置25´であり、図4におけるヒストグラムデータ作成部27cの代わりに、輝度分布グラフ作成部27c´を設け、比較器28により輝度分布グラフ作成部27c´からの輝度分布グラフデータと基準値記憶手段26よりの基準値とを比較するようにした点である。
【0062】
ここで、輝度分布グラフ作成部27c´の動作について説明すると、図4の実施例と同様に、画像取込み装置24に記憶されたFIM画像は、画像処理装置25´の輝度演算回路27に読込まれ、輝度演算回路27は、画像分解部27aでFIM画像を画素毎に分解し、階調変換部27bで画素毎の輝度を256階調の輝度値に変換される。輝度分布グラフ作成部27c´は、各画素の輝度値に対応した長さの線分を最も高い輝度値ののも(最も長い線分)を一番目に、その右側に輝度値が低くなるように、すなわち、各画素に対応した線分を輝度順に512番目まで並べた輝度分布グラフデータを作成し、比較器28に送る。
【0063】
この輝度分布グラフデータの一例を図10に示す。図中の縦軸は輝度値を、横軸は画素の輝度順位を表している。
次に、比較器28は、送られて来た輝度分布グラフデータと基準値記憶手段26からの各基準値との比較を行う。各基準値は、マイグレーションが始まったか否かを判断するための輝度値に関する基準値MGと、飽和輝度の画素数に関するマイグレーションの速度を遅くさせるための基準値P1とマイグレーションを停止させるための基準値P2とから成る。
【0064】
尚、比較器28には、基準値記憶手段26から入力装置30で入力された基準値MG,P1,P2中の基準値MGのみが設定されているものとする。いま、入力装置30からナノエミッタ作製開始の指示を行うと、制御装置21の指令によりバルブ4に第1ガス圧が設定される。この第1ガス圧の状態では、先に説明したように図7(A)に示すような飽和輝度から輝度0までの画素が存在するFIM像が得られるため、図10の(A)に示すような輝度分布グラフデータが得られる。
【0065】
その後、ガス圧が上昇すると、マイグレーションが発生し始め輝度分布グラフデータの飽和輝度値の画素が減少してやがてなくなり、更に、最高輝度値も低下して図7(B)に示すようなFIM像が得られるようになると、図10の(B)に示すような輝度分布グラフデータへと変わる。
【0066】
この間、比較器28は、送られてくる輝度分布グラフデータと基準値MGと比較を行い、エミッタ先端部でマイグレーションが始まったことを制御装置21に知らせる。図10の(B)に示すような輝度分布グラフデータが送られてくると、比較器28は、該輝度分布グラフデータの最高輝度値が基準値MGを下回ったことを認識し、マイグレーションが始まったことを示す判別信号を発生し制御装置21に送る。
【0067】
該制御装置21は、判別信号に基づいて、バルブ4にそのときガス圧を第2ガス圧として設定し、同時に比較器28に、基準値記憶手段26から基準値P1を送って設定する。
すると、マイグレーションの速度は一定速度になり、エミッタ1先端部の(111)面上やその周辺で原子レベルのナノ突起物の形成が徐々に始まる。それに伴い、得られるFIM像は図7(B)に示すようなものから図7(C)に示すように最高輝度が上昇して行くため、輝度分布グラフデータも図10の(B)に示すようなものから最高輝度値が徐々に高くなり、図10の(C)に示すようなものに変わる。更にマイグレーションが進行すると、ナノ突起物の形成も増えて、最高輝度値が飽和輝度値となり、更に飽和輝度値の画素数も増加して、図10の(C)の破線で示すような輝度分布グラフデータへと変わる。ナノ突起物の形成が更に進むと、得られるFIM像は図7(D)に示すようになって飽和輝度の画素が更に増加するため、図10の(D)に示すような輝度ヒストグラムデータが得られるようになる。
【0068】
比較器28は、順次送られてくる輝度ヒストグラムデータと基準値P1と比較を行い、エミッタ先端部でナノ突起物の形成が始まったことを制御装置21に知らせる。
図10の(D)に示すような輝度ヒストグラムデータが送られてくると、比較器28は、該輝度分布グラフデータの飽和輝度値の数が基準値P1と一致したことを認識し、エミッタ先端部でナノ突起物の形成が始まったことを示す判別信号を発生し制御装置21に送る。
【0069】
該制御装置21は、判別信号に基づき、ナノ突起物の形成が十分に進行したと判断し、バルブ4に第2のガス圧よりも低い第3のガス圧を設定する。
該制御装置21は、バルブ4に第3のガス圧を設定すると、同時に、比較器28に基準値記憶手段26から基準値P2を設定する。第2のガス圧よりも低い第3のガス圧になると、エミッタ1先端部のマイグレーションの速度が遅くなり、ゆっくりとした速度で原子の再配列が行われ、徐々に数個のナノ突起物が形成されるようになる。これに伴い、得られるFIM像は、図7(E)に示すように、大部分の画素が輝度0で飽和輝度の画素がわずかに存在するものとなって行く。
【0070】
比較器28は、順次送られてくる輝度ヒストグラムデータと基準値P2と比較を行い、飽和輝度の画素数が基準値P2と一致するまで減少したことでエミッタ先端部でナノ突起物の形成が完了したことを制御装置21に知らせる。図10の(D)に示すような輝度分布グラフデータから送られてくると、比較器28は、該輝度分布グラフデータの飽和輝度値の画素数が基準値P2と一致したことを認識し、エミッタ先端部でナノ突起物の形成が完了したことを示す判別信号を発生し制御装置21に送る。制御装置21は、判別信号に基づき、ナノ突起物の形成が完了したと判断し、バルブ4に第3のガス圧より低い第4のガス圧を設定する。
【0071】
すると、エミッタ1先端部のマイグレーションは停止し、該エミッタ1先端部の(111)面上に数個の原子が固定し、ナノ突起物が形成する。このように一連の動作を自動的に行うことにより要求値の引出電圧Vexに対するナノエミッタを作製することができる。尚、前記実施例における基準値A,基準値B,基準値C、又は基準値MG,基準値P1,基準値P2は、事前の実験により求めた値である。
【0072】
また、実施例で示したようなナノエミッタの作製手順、即ち、要求値の引出電圧を引出電極に印加した後、エミッタに供給するヘリウムのガス圧を低圧から高圧側に徐々に圧力を高くして行き、マイグレーションの発生に基づいてその状態を維持するガス圧、ナノ突起物の形成が始まったことの基づいてマイグレーションの速度を遅くさせる低いガス圧、ナノ突起物の形成が完了したことに基づいてマイグレーションを停止させる更に低いガス圧を順に設定してナノエミッタを作製しているが、本実施例の手順に限定されるものではない。
【0073】
例えば、要求値の引出電圧を引出電極に印加した後、最初にマイグレーションが発生する高い圧力のガス圧、ナノ突起物の形成が始まったことに基づいてマイグレーションの速度を遅くさせる低いガス圧、ナノ突起物の形成が完了したことに基づいてマイグレーションを停止させる更に低いガス圧を順に設定する手順でも良い。
【0074】
このように、本発明によれば、引出電圧は目的とした電圧値に固定したまま、導入ガス圧を制御することで、目的とするナノエミッタを容易に作製することができる集束イオンビーム装置におけるナノエミッタ作製方法及びナノエミッタ作製手段を有する集束イオンビーム装置を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0075】
1 エミッタ
2、7、8 電源
3 導入チューブ
4 バルブ
5 ガスタンク
6 引出電極
9 加速電極
10 MCP
11 蛍光板
12 ミラー
13 覗き窓
14 集束レンズ
15 対物レンズ
16 材料
17 偏向器
18 検出器
19 増幅器
20 AD変換器
21 制御装置
22 リトラクト手段
23 CCDカメラ
24 画像取込み装置
25 画像処理装置
26 基準値記憶手段
27 輝度演算回路
27a 画像分解部
27b 階調変換部
27c ヒストグラムデータ作成部
27c´ 輝度分布グラフデータ作成部
28 比較器
29 表示装置
30 入力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エミッタと、該エミッタにガスのガス圧を変えて供給するガス供給手段と、該エミッタ先端部からイオンビームを引き出す引出電極と、該イオンビームを材料上に集束する集束レンズ系と、該イオンビームで材料上を走査させるための走査レンズ系とを備え、引出電極と集束レンズ系間にエミッタ先端部の素材の様子を撮影する画像撮影手段を備えた集束イオンビーム装置のナノエミッタ作製方法において、引出電極に一定の電圧を印加する工程と、エミッタ先端部でマイグレーションが発生するようなガス圧を前記ガス供給手段に設定する第1の工程と、該マイグレーションの発生を認識しその状態を維持するようなガス圧を前記ガス供給手段に設定する第2の工程と、エミッタ先端部にナノ突起物の形成が始まったことに基づいてマイグレーションの速度を遅くさせるようなガス圧を前記ガス供給手段に設定する第3の工程と、エミッタ先端部に所望のナノ突起物の形成が完了したことに基づいてマイグレーションを停止させるようなガス圧を前記ガス供給手段に設定する第4の工程とから成る集束イオンビーム装置のナノエミッタの作製方法。
【請求項2】
エミッタと、該エミッタにガスのガス圧を変えて供給するガス供給手段と、該エミッタ先端部からイオンビームを引き出す引出電極と、該イオンビームを材料上に集束する集束レンズ系と、該イオンビームで材料上を走査させるための走査レンズ系とを備え、引出電極と集束レンズ系との間にエミッタ先端部の素材の様子を撮影する画像撮影手段を備えたナノエミッタ作製手段を有する集束イオンビーム装置において、引出電極に一定の引出電圧を印加し、前記ガス供給手段により前記エミッタに前記ガスを供給しながら前記画像撮影手段で撮影された画像を輝度演算する輝度演算手段と、該輝度演算手段の結果と設定した基準値を比較し、該比較した結果に基づいて前記ガス供給手段のガス圧を制御する比較手段とを設けたことを特徴とするナノエミッタ作製手段を有する集束イオンビーム装置。
【請求項3】
前記基準値とは、エミッタ先端部のマイグレーションの発生を認識しその状態を維持するガス圧にするために設けられた基準値Aと、エミッタ先端部にナノ突起物の形成が始まったことを認識しマイグレーションの速度を遅くさせるガス圧にするために設けられた基準値Bと、エミッタ先端部に所望のナノ突起物の形成が完了したことを認識しマイグレーションを停止させるガス圧にするために設けられた基準値Cとから成る請求項2記載のナノエミッタ作製手段を有する集束イオンビーム装置。
【請求項4】
前記輝度演算手段は、前記画像撮影手段より得られた所定画素数の画像データに基づき、あらかじめ設定された輝度区分毎に画素を区分し、各区分の画素の数を表すヒストグラムデータを作成することを特徴とする請求項2記載のナノエミッタ作製手段を有する集束イオンビーム装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図2】
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【図7】
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