説明

集水桝穿孔用冶具

【課題】集水桝に貫通孔を穿孔するために生コンクリート打設用の型枠に固定させ、生コンクリートの固化後に取り除くことによって、集水桝に貫通孔を形成するための集水桝穿孔用冶具であって、底面を有する枠体と、前記枠体の少なくとも上面を覆っており、かつ、前記上面に磁性体を設置した蓋体と、前記枠体の底面及び前記蓋体の上面を覆うシール部材とからなることを特徴とする集水桝穿孔用冶具を提供する。
【解決手段】紙筒スリーブに代わる、底面を有する枠体と、枠体の上面を覆い、かつ、磁性体30を設置した蓋体と枠体の側面を覆うシール部材40と、枠体の底面及び前記蓋体を覆うシール部材50,60とで集水桝穿孔用冶具100を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物に貫通孔を穿孔するために用いる冶具に関する発明である。さらに言えば、複数の側溝の集合端に設置される集水桝を製作する際に、集水桝の側面に貫通孔を穿孔するための集水桝穿孔用冶具に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート構造物に貫通孔を形成する際には、紙筒スリーブ、塩化ビニル管、鉄管、亜鉛メッキ管の実管スリーブなどが使用されてきた。集水桝のように、コンクリート構造物における貫通孔が必要な製品があるが、この貫通孔はコンクリートが硬化した後では穿孔することは困難である。そのため、型枠を設置した後、コンクリートを打設する前に貫通孔を穿孔したい箇所に紙筒スリーブ、鉄管等の孔部形成具をあらかじめ取り付けておいた後、型枠内に生コンクリートを流し込み、生コンクリートが硬化した後に該孔部形成具を取り除くことにより、貫通孔を穿孔する手段が用いられていた。
【0003】
貫通孔を穿孔する手段の中の代表的な手段として、型枠巾と同じ長さに切断した紙筒スリーブを、突起部を有する型枠の両側からセットすることで、紙筒スリーブは両側より型枠に水平状態で固定されていた。紙筒スリーブを固定し、コンクリートを打設して養生した後、紙筒スリーブを型枠から抜き取ることで、貫通孔のあるコンクリート構造物を製造していた。
【0004】
あるいは、型枠巾と同じ長さの鉄筒をボルト締め等の方法により型枠にセットすることで、鉄筒は型枠に水平状態で固定されていた。鉄筒を固定し、コンクリートを打設して養生した後で、鉄筒を型枠から抜き取ることで、貫通孔のあるコンクリート構造物を製造していた。
【0005】
さらに、円盤状の底面と、該底面の円周端部近傍に垂直に立設された所定高さの周壁と、該周壁の外側に形成された縁部と、前記底面に穿設された開口部と、該開口部に装着された永久磁石とからなる孔形成具を永久磁石の磁力により、コンクリート構造物の孔を形成すべき箇所にある生コンクリート打設用の型枠にスリーブを固定し、型枠内に流し込んだ生コンクリートの固化後に型枠及びスリーブを順次取り除くことによって、コンクリート構造物に配管,配線用その他の用途に用いられる孔を形成する方法及び孔形成具に関する技術も知られている(特許文献1 要約)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−307447
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
紙筒スリーブは安価で、しかも必要な長さに切断するだけなので簡単に加工ができるが、コンクリート内に残存した紙筒スリーブは、長期間そのままにしておくと、劣化、変質等する。このためコンクリートを打設した後は、紙筒スリーブを除去する必要があった。紙筒スリーブを使用する従来技術は、コンクリート内に埋設された前記紙筒スリーブを除去する作業が必要であり、所定の時間を要する問題があった。さらに除去された紙筒スリーブは、その表面にセメントが付着されているため再利用が出来ないので、大量の産業廃棄物となり、その処理に大きなコストを要するという問題もあった。
【0008】
鉄管については、廃材処理の必要は無いものの、コンクリートと鉄管は馴染みやすいため、打設終了後、型枠からの離型が難しいという欠点があった。そのため、型枠からの離型しやすいように、鉄菅のコンクリートと接する面全体に離型剤を塗布する必要があった。しかしながら離型剤を塗布したとしても、離型性は不十分であり取り外しに手間がかかっていた。
【0009】
コンクリート構造物に孔を形成する目的で、永久磁石の磁力により鉄製の型枠に孔形成具を固定する技術(特許文献1)はあるが、特許文献1にかかる技術では、φ75mm〜φ135mmのサイズの孔を形成することであれば対応できるが(特許文献1段落0028)、本発明のようにφ200mm以上の孔を形成する場合には、たとえ希土類磁石のような強力な磁力を有する磁石で孔形成具を固定したとしても、作業中の振動や少しの衝撃により、孔形成具が位置ズレを起こすという問題があった。
【0010】
作業中の振動や少しの衝撃による、孔形成具の位置ズレを防ぐために、希土類磁石の数を増やすということも考えられるが、希土類磁石は高価であり、しかも材料の有する脆い性質のため取り扱いが難しいということもあり、少ない希土類磁石の数量であっても位置ズレしないことが望まれていた。
【0011】
本発明は、コンクリート内に埋設された紙筒スリーブを除去する作業に所定の時間を要する問題、さらに除去された紙筒スリーブは、その処理に大きなコストを要するという問題、さらに従来の孔形成具を固定する技術において作業中の振動や少しの衝撃により、孔形成具が位置ズレを起こすという問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は集水桝に貫通孔を穿孔するために生コンクリート打設用の型枠に固定させ、生コンクリートの固化後に取り除くことによって、集水桝に貫通孔を形成するための集水桝穿孔用冶具であって、底面を有する枠体と、前記枠体の上面及び側面を覆っており、かつ、前記上面に磁性体を設置した蓋体と、前記枠体の底面及び前記蓋体の上面を覆うシール部材とからなることを特徴とする集水桝穿孔用冶具であることをその要旨とした。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明は前記蓋体の側面を覆っており、生コンクリートの固化後に前記集水桝穿孔用冶具を容易に除去できるようにするための離型部材を備えたことを特徴とする集水桝穿孔用冶具であることをその要旨とした。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明は前記シール部材の素材が合成ゴムであることを特徴とする集水桝穿孔用冶具であることをその要旨とした。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明は前記蓋体の直径はφ200〜φ350であり、側面には抜きテーパーが付いていることを特徴とする集水桝穿孔用冶具であることをその要旨とした。
【0016】
上記課題を解決するために本発明は、前記磁性体は希土類永久磁石であることを特徴とする集水桝穿孔用冶具であることをその要旨とした。
【0017】
上記課題を解決するために本発明は、前記枠体は鋼鉄材からなることを特徴とする集水桝穿孔用冶具であることをその要旨とした。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、コンクリート構造物の穿孔すべき箇所に相当するコンクリート打設用型枠の箇所に、希土類永久磁石の磁力によって、本発明に係る集水桝穿孔用冶具ワンタッチで固定できるようになった。しかも作業中の振動等によっても、ほとんど位置ズレを生じることなく固定することが可能になった。
【0019】
すなわち、希土類永久磁石の強力な磁力及び摩擦効果を有するシートによって型枠に密着するため、取り付け後の外的な力の影響によって、φ200以上の径を有する場合であっても、多数の磁石を必要とせずとも作業中の振動等によって位置ずれを生じることもなく、取り付けるべき位置に安定して集水桝穿孔用冶具を止まらせることができるようになった。
【0020】
同時に集水桝穿孔用冶具の取り外しも容易であり、シール処理がなされた集水桝穿孔用冶具が型枠に密着しているため、集水桝穿孔用冶具がコンクリートに覆われることもなく、さらに、集水桝穿孔用冶具内にセメント水やセメントが流入することも防止できる。集水桝穿孔用冶具の取り付け及び取り外し時間も短縮できるようになったため、工期の短縮を図ることができるようになった。シール部材が劣化した場合であっても取り換え可能であるため経済的である。しかも従来の紙筒スリーブ菅を使用した場合とは異なり仕上がり面が綺麗で美観に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来技術に係る集水桝穿孔用冶具の斜視図
【図2】本発明に係る集水桝穿孔用冶具の断面図
【図3】本発明に係る集水桝穿孔用冶具の斜視図
【符号の説明】
【0022】
10 底面を有する枠体
20 蓋体
30 磁性体(希土類磁石)
40 離型部材
50 シール部材(枠体の底面)
60 シール部材(蓋体の上面)
100 集水桝穿孔用冶具
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態について図1及び図2を参照しつつ説明する。図1は本発明に係る集水桝穿孔用冶具の斜視図である。図2は本発明に係る集水桝穿孔用冶具100の断面図である。本発明に係る集水桝穿孔用冶具100は底面を有する枠体10と、前記枠体の上面を覆い、かつ、表面に磁性体30を設置した蓋体20と前記枠体の側面を覆う離型部材40と、前記枠体の底面を覆うシール部材50及び前記蓋体を覆うシール部材60とからなっている。
【0024】
本発明は、コンクリート構造物の貫通孔を穿孔すべき箇所にある生コンクリート打設用の鉄製の型枠に集水桝穿孔用冶具100を磁性材の磁力により固定し、型枠内に流し込んだ生コンクリートの硬化後に型枠及び集水桝穿孔用冶具100を順次取り除くことによって、コンクリート構造物に貫通孔を穿孔する孔形成方法において、底面を有する枠体10と、前記枠体の上面を覆い、かつ、表面に磁性体30を設置した蓋体20と、前記枠体の側面を覆う離型部材40と、前記枠体の底面を覆うシール部材50及び前記蓋体を覆うシール部材60とからなる集水桝穿孔用冶具100をコンクリート構造物の貫通孔を穿孔すべき箇所にある生コンクリート打設用の鉄製の型枠に固定するコンクリート構造物における集水桝穿孔用冶具100である。
【0025】
底面を有する枠体10は、コンクリート打設時の重量に耐えうる強度を確保するために、鋼材(SS40等)を使用している。蓋体20には、硬化後のコンクリートから容易に冶具を取り除くことが出来るように、離型作用がある塩化ビニル、ポリアミド、PBT、ABS樹脂等の合成樹脂からなる材料を使用している。これらの合成樹脂の板材の上からさらに、コンクリートとの離型性に優れた芳香族ポリウエア等を主成分とする樹脂コーティング材を枠体の側面に塗布してもよい。
【0026】
型枠の貫通孔を穿孔したい箇所に、本発明に係る集水桝穿孔用冶具100を磁性体30の磁力にて鉄製の型枠にセットする。磁性体30は希土類磁石を使用している。希土類磁石とは、希土類元素(アクチニウムを除く第3族元素やランタノイド)を用いて作られる永久磁石のことであり、レアアース磁石ともいう。一般に利用されているのは、サマリウム・コバルト系磁石とネオジウム・鉄・ボロン系磁石の主に2種類である。希土類磁石は、希土類元素の持つ強力な磁気異方性を生かしているため、磁気エネルギーが大きいという特徴がある。磁気異方性とは磁化しやすい方向を持っているということで、磁化しやすい方向に着磁すれば、強力な磁石を作ることができる。
【0027】
磁性体30を蓋体20に取り付けるために、磁性体30には雄ネジがついており蓋体20には金属製の雌ネジが埋め込んである。かかる構成により磁性体30を容易に取り外しすることが可能であるとともに、プラスチック製の雌ネジを用いた場合と比較して、ネジ部が長持ちするので現場で磁石の使い回しが出来るため経済的である。
【0028】
本発明に係る集水桝穿孔用冶具100を型枠にセットした後、コンクリートを打設した際、セメントペーストが型枠の接地面に入り込まないように、前記枠体の底面を覆うシール部材50及び前記蓋体を覆うシール部材60が取り付けられている(図2及び図3参照)。本シール部材50及び60は長期間の使用により劣化した場合であっても容易に取り換えることが出来るため経済的である。
【0029】
次に両型枠内に生コンクリートを流し込む。希土類永久磁石30を用いたことによって集水桝穿孔用冶具100を容易に所望の位置に配置することが可能であり、集水桝穿孔用冶具100の取り付け位置が決まれば、取り付け作業そのものは1秒程度で行うことができる。
【0030】
そして、コンクリートの固化後に型枠を除去してから集水桝穿孔用冶具100を取り除くことにより、コンクリート構造物に貫通孔が穿孔される。集水桝穿孔用冶具100の側面は抜きテーパーがついており、集水桝穿孔用冶具100をコンクリート構造物から容易に取り出すことができる。取り出した集水桝穿孔用冶具100は再利用が可能である。
【0031】
希土類永久磁石30の強力な磁力及び型枠に対して摩擦抵抗を有するシール部材(50、60)によって、本発明に係る集水桝穿孔用冶具100はワンタッチで固定できるようになり、かつ、型枠に強力に密着するため、取り付け後の外的な力の影響によって、位置ずれを生じることもなく、コンクリート打設時においても、取り付けるべき位置に安定して集水桝穿孔用冶具100を止まらせることができるようになった。
【0032】
さらに、集水桝穿孔用冶具100の取り付け時間及び取り外し時間も短縮できるようになったため、工期の短縮をはかることができるようになった。しかも従来の紙筒スリーブ菅を使用した場合とは異なり仕上がり面が綺麗で美観に優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集水桝に貫通孔を穿孔するために生コンクリート打設用の型枠に固定させ、生コンクリートの固化後に取り除くことによって、集水桝に貫通孔を形成するための集水桝穿孔用冶具であって、
底面を有する枠体と、
前記枠体の上面及び側面を覆っており、かつ、前記上面に磁性体を設置した蓋体と、
前記枠体の底面及び前記蓋体の上面を覆うシール部材とからなることを特徴とする集水桝穿孔用冶具。
【請求項2】
前記蓋体の側面を覆っており、生コンクリートの固化後に前記集水桝穿孔用冶具を容易に除去できるようにするための離型部材を備えたことを特徴とする請求項1に記載の集水桝穿孔用冶具。
【請求項3】
前記シール部材は合成ゴムであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の集水桝穿孔用冶具。
【請求項4】
前記蓋体の直径はφ200〜φ350であり、側面には抜きテーパーが付いていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の集水桝穿孔用冶具。
【請求項5】
前記磁性体は希土類永久磁石であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の集水桝穿孔用冶具。
【請求項6】
前記枠体は鋼鉄材からなることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の集水桝穿孔用冶具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−108249(P2013−108249A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252592(P2011−252592)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(511281246)
【Fターム(参考)】