説明

集積光学回転センサおよび回転レートを検出する方法

【課題】ジャイロの構成部品間で光ビームを送るための薄膜導波管を使用する低コストの光ジャイロのための方法および装置を提供する。
【解決手段】ジャイロは、絶縁体層を有する基板(16)と、絶縁体層に形成されるシリコン導波管(16)と、シリコン導波管に結合され、第1の光ビームの一部分を第1の逆向き伝搬方向に循環させ、第2の光ビームの一部分を第2の逆向き伝搬方向に循環させるように構成された共振器(18)とを備える。第1のシリコン導波管は、それを通して第1および第2の光ビームを伝搬させる。第1および第2の光ビームの各々は、共振器内を循環するとき、共振周波数を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体的にジャイロ・システムに関し、より詳細には、ナビゲーション・システムおよび姿勢制御で使用するための回転センサに関する。
【背景技術】
【0002】
ジャイロは、回転レート、または回転軸についての角速度における変化を測定するために使用されてきた。基本的な従来の光ファイバ・ジャイロ(FOG:fiber optic gyro)は、光源、ビーム発生装置、およびビーム発生装置に結合され或る領域を取り囲む光ファイバのコイルを備える。ビーム発生装置は、光ビームをコイルへ送出し、光ビームは、光ファイバのコアに沿って、時計回り(CW:clockwise)方向および反時計回り(CCW:counter−clockwise)方向に伝搬する。多くのFOGは、ファイバの固体ガラスのコアに沿って光を導く、ガラス・ベースの光ファイバを用いる。互いに逆方向に伝搬する2つの(例えば、CWおよびCCW)ビームは、回転する閉じた光路の周りを伝搬する間に、互いに異なる経路長を経験することになり、2つの経路長における差は回転レートに比例する。
【0003】
共振型光ファイバ・ジャイロ(RFOG:resonator fiber optic gyro)では、互いに逆方向に伝搬する光ビームは、単色性(例えば、単一周波数)であることが望ましく、複数回巻の光ファイバのコイルを通って循環し、コイルを複数回通過するために、コイルを通過してきた光を再びコイルに戻す(即ち、光を循環させる)装置、例えばファイバ・カプラなどを使用する。ビーム発生装置は、共振コイルの共振周波数が観察され得るように、互いに逆方向に伝搬する光ビームの各々の周波数を変調および/またはシフトする。コイルを通じてのCWおよびCCWの経路の各々に対する共振周波数は、互いに異なる回数だけコイルを横断してきたすべての光波が、コイルのいかなる点においても強めあうように干渉するように、強めあう干渉(constructive interference)の状態に基づく。この強めあう干渉の結果として、往復の共振器経路長が波長の整数倍に等しいとき、波長λである光波は「共振している」と言われる。コイルの回転は、時計回りおよび反時計回りの伝搬に対して異なる経路長を発生し、従って、共振器のそれぞれの共振周波数の間にシフトを発生し、周波数差、例えば、CWビームおよびCCWビームの周波数における差を、回転に起因する閉じた光路の共振周波数シフトと一致するようにチューンさせることによって測定され得る周波数差は、回転レートを示す。
【0004】
RFOGでは、光ファイバのガラス材料の特性は、CWおよびCCWの経路の共振周波数をシフトさせる効果をもたらし、従って、誤った回転表示または不正確な回転レートの測定値を生じさせることがある。互いに逆方向に伝搬するコイル内の光ビームを複数回循環させるために反射鏡が使用されてもよいが、これは、鏡からコイルへと遷移する際に生じる損失により、典型的に信号対雑音比を低減させる。非線形カー効果、誘導ブリユアン散乱、および偏波誤差から、回転レートの測定値の精度を低減させる更なる異常が生じることがある。これらの誤りの機構は、例えば、望まれない温度感度を上げるような環境にも敏感である。
【0005】
RFOG内部の高い単色光パワーが、光ファイバ内のガラスの屈折率を変更するときに、非線形カー効果が生じる。CWおよびCCWのビームの強度の不整合は、およそ数度/時の程度で、観察される周波数シフトに偏りを誘起することがある。ファイバ共振器内の高い鮮鋭度に関連する高輝度が、ガラスファイバにレージングまたは誘導放出を引き起こすとき、誘導ブリユアン散乱(SBS:Stimulated Brillioun scattering)が発生し、これにより、共振周波数の測定値における不安定性が大きくなる。偏波(偏光)により誘起されるエラー(誤り)は、或る光ファイバから隣接する光ファイバへ、または同じファイバ内で、光を偶発的に第2の偏波モードに結合するファイバ・カプラに起因することがある。第2の偏波モードは、回転を測定するために使用される偏波モードの共鳴線の形状における非対称性をもたらすように、共振し得る。第2の偏波モードの周波数はCWおよびCCWのビームに対して同じであるが、振幅は異なり得るので、回転の影響を超えてのCWおよびCCWのビームの共振周波数の様々な観察値を生じることとなる。偏波により誘起される誤りは、RFOGの精度を厳しく制限することがある。なぜなら、CWおよびCCWのビームの共振周波数の各々についての共振の中心の決定は、回転レートの測定値に直接影響を及ぼすからである。
【0006】
精度に影響を及ぼし得る誤りの機構と遭遇することに加えて、従来のRFOGは、大量生産、特に比較的小さいスケールのRFOGに対して、大きい費用がかかることがある。従来のRFOGは、複数の個別構成部品(例えば、光源、ビーム発生器、コイルなど)のアセンブリであり、それぞれの構成部品およびこのような個別の構成部品を組み立てることに関連して費用がかかる。より小さいスケールの用途については、それぞれの構成部品の小型化、および小型化された個別の光学構成部品の整合のためのさらなる費用と共に、RFOGの組立に関連する費用が一般的に増大する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、低コストで大量生産に適した、頑強でコンパクトな光学回転センサを提供することが望ましい。更には、回転レートの測定精度を減少させる誤りの機構の影響を低減させる、コンパクトで低コストの光ジャイロの回転レートを検知する方法を提供することが望ましい。更に、添付の図面および本発明の背景と関連させて、後続の本発明の詳細な説明および添付の特許請求の範囲から、本発明の他の望ましい特徴および特性が明白になるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
薄膜導波管を使用して、軸周りのリング共振器の回転レートを検知する方法および装置が提供される。例示的な実施形態では、回転レートを測定する光ジャイロは、絶縁体層を備える基板、絶縁体層上に形成される第1のシリコン導波管、および第1のシリコン導波管に結合される共振器を備える。第1のシリコン導波管は、そこを通して第1および第2の光ビームを伝搬させるように構成される。共振器は、第1および第2の互いに逆向きの伝搬方向を有し、第1の光ビームの一部分を第1の逆向き伝搬方向に循環させ、第2の光ビームの一部分を第2の逆向き伝搬方向に循環させるように構成される。逆向き伝搬方向の各々は、共振器内の光伝搬に対する共振周波数を有する。共振周波数における差は、回転レートを示す。
【0009】
他の例示的な一実施形態では、回転レートを測定する光ジャイロは、絶縁体層を備える基板、基板上にあり第1および第2の光ビームを生成するように構成された少なくとも1つの単色光源、絶縁体層の上部に形成される第1のシリコン導波管、ならびに第1のシリコン導波管に結合された共振器を備える。第1のシリコン導波管は、そこを通して第1および第2の光ビームを伝搬させるように構成される。共振器は、第1の循環する光ビームを第1の逆向き伝搬方向に送り、第2の循環する光ビームを第2の逆向き伝搬方向に送るように構成される。第1の循環する光ビームは、第1の光ビームの一部分から取り出され、第2の循環する光ビームは、第2の光ビームの一部分から取り出される。第1および第2の循環する光ビームの各々は、共振器内を循環するときに、共振周波数を測定するためにチューンされる。共振周波数の間の差は、回転レートを示す。
【0010】
他の例示的な一実施形態では、基板上に形成されるリング共振器の回転レートを検知する方法が提供される。基板は、シリコン層および絶縁体層を有する。方法は、絶縁体層上に形成される第1のシリコン導波管を介して第1および第2の光ビームをリング共振器へ送るステップ、第1の光ビームの一部分をリング共振器の第1の逆向き伝搬方向に循環させ、第2の光ビームの一部分をリング共振器の第2の逆向き伝搬方向に循環させるステップ、およびリング共振器の第1の逆向き伝搬方向の第1の共振周波数と、リング共振器の第2の逆向き伝搬方向の第2の共振周波数との間の周波数偏移(シフト)を測定するステップを含む。周波数偏移は回転レートを示す。
【0011】
添付図面と共に以下に本発明が記述される。同様の番号は同様のエレメントを表す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の以下の詳細な記述は、本質的に単なる例示に過ぎず、本発明、あるいは本発明の適用例および使用法を限定するものではない。更に、本発明の前述の背景、または本発明の以下の詳細な説明で提示される理論に縛られるものではない。
【0013】
次に各図を参照すると、図1は、本発明の第1の例示的な実施形態による光ジャイロ10のブロック図である。この例示的な実施形態では、光ジャイロ10の1または複数の構成部品は、基板11の中または上に形成され、基板11内に形成されるシリコン導波管16に相互接続される。基板11は、SiOの絶縁体層などのような1または複数の層を有するマイクロチップや他の半導体関連の装置で見られる、シリコンや、シリコン・オン・インシュレータ(SOI:silicon−on−insulator)や、それらと同様のものでよい。議論を簡単にするために、基板11をSOI基板として説明する。光ジャイロ10は、光源12(例えば、単色レーザ・ダイオード)、光位相変調回路網30、34、36、リング共振器18、検出器アレイ32、33、35、およびシリコン導波管16(例えば、SOI薄膜導波管)を備え、シリコン導波管16は、光源12、光位相変調回路網30、34、36、検出器アレイ32、33、35、およびリング共振器18を相互接続する。例示的な一実施形態では、光ジャイロ10は、金属相互接続(図示せず)を介して検出器アレイ32、33、35と結合され、検出器アレイ32、33、35の駆動、制御、および増幅機能を提供する駆動/検出器回路38を更に備える。駆動/検出器回路38は、基板11に形成または取り付けされる個別の装置でよく、また、基板11に形成される集積デバイスでもよい。
【0014】
シリコン導波管16は、光ジャイロ10の各構成部品間で光ビームを送る。例示的な一実施形態では、SOI基板11のシリコンにおいて溝をエッチングし、溝にSiOをデポジットすることにより導波管16が形成され、導波管16はSiOによって境界を画定される。その結果として得られるシリコン導波管16は、屈折率導波(index guiding)(例えば、シリコンの屈折率とSiOの屈折率とにおける変化を使用する)により、光ビームをシリコンに閉じ込める。他の例示的な一実施形態では、シリコン導波管16は、SOI基板のシリコンにおけるフォトニック結晶パターンを用いて形成される。半導体製造技法で適用される、各層のエッチングおよび材料のデポジットのプロセスを、導波管16を形成するために使用してもよい。シリコン導波管16は、SOIタイプの基板に形成されるが、他のタイプの基板およびプロセスを使用してシリコン導波管16を製造してもよい。更に、光ジャイロ10は、光ビームを或る構成部品から別の構成部品へ送るためにシリコンの導波管16を使用するが、シリコンと同様の光学特性を有し、同様の屈折率のコントラスト(例えば、シリコンとSiO)を有する他の材料(例えば、アルミナ、窒化物、III−V族の元素、他の耐熱性材料など)が、導波管用に使用されてもよい。シリコン導波管16は、1つの導波管として言及されているが、相互接続された複数の導波管のネットワークでもよい。
【0015】
シリコン導波管16によって送られる光ビームは、光源12を起源とする。結合エレメント14(例えば、スポットサイズ変換器)は、光源12をシリコン導波管16と結合するために好適に使用される。光源12は、周波数安定性、実質上狭い線幅、実質上単一の周波数動作、および相対的に高出力な性能を示すように実装されることが好ましく、導波管16を介して光位相変調回路網30、34、36へ伝搬する第1および第2の光ビーム(例えば、時計回り(CW)のビームおよび反時計回り(CCW)のビーム)を発生させる。例示的な一実施形態では、光源12は単一周波数チューン可能レーザであり、周波数がfの光ビームを生成し、この光ビームは、分岐されて(例えば、ビーム・スプリッタ(図示せず)を介して、または導波管16を2つの部分13および15に分割することにより)、第1および第2の光ビーム(例えば、CWビームおよびCCWビーム)を形成する。他の例示的な一実施形態では、光源12は、第1および第2の光ビームをそれぞれ合成する第1および第2のチューン可能レーザを備える。第1のレーザによって生成される第1の光ビームは、周波数fにチューンされ、第2のレーザによって生成される第2の光ビームは、周波数f+Δfにチューンされる。この例では、2つのレーザ周波数の間の相対的な周波数のドリフトおよびジッタは、周波数偏移の精度および安定性、従って、回転レートの測定の精度および安定性への影響を最小限に抑えるか、または影響を及ぼさないレベルまで、大幅に最小化されるべきである。これは、レーザ周波数安定化技法、例えば、チューン可能ではあるが安定したオフセット(回転レートに比例する)にうなり周波数をロックするために電子サーボを使用する技法などによって、達成される。
【0016】
光位相変調回路網30、34、36は、第1および第2の光ビームを変調するものであり、導波管16の第1の部分13に結合された第1の変調器30、ならびに導波管16の第2の部分15に結合された、第2および第3の直列結合された変調器34および36を備える。これより多いまたは少ない数の変調器が使用されてもよい。第1の変調器30は、光源12からの第1の光ビーム(例えば、CWビーム)を受け取り変調し、第2の波変調器34は、光源12からの第2の光ビーム(例えば、CCWビーム)を受け取り変調する。第3の変調器36は、第2の変調器34からの変調された光ビームを受け取り、その変調された光ビームの周波数をシフト(偏移)させる。変調器30、34、36の各々は、P型−絶縁体−N型(PIN)ダイオードや、金属酸化膜半導体(MOS)コンデンサ(例えば、シリコン−絶縁体−シリコン・コンデンサ)や、変調器を実現することができ導波管16に集積化されることができ得る他のデバイスのうちの、何れのものでもよい。変調器30、34、36の各々は、光源12からの光ビームの位相を変調するために、導波管16における電気キャリア濃度および屈折率を調節することができる。これらの調節された光ビームは、リング共振器18へもたらされる。
【0017】
リング共振器18は、SOI基板11のシリコンに形成される1組の反射エレメント20、22、24、26を備え、リング共振器18へもたらされる光ビームは、反射エレメント20、22、24、26の間のシリコン領域28(例えば、SOI基板11内のシリコン層のシリコン領域)において、反射エレメント20、22、24、26を介して、互いに逆向きの伝搬方向(例えば、CWおよびCCWの方向)で循環される。例示的な一実施形態では、反射エレメント20、22、24、26は、SOI基板11のシリコンにエッチングされてSiOがデポジットされた溝である。反射面19、21、23、25は、シリコンとSiOとの間の屈折率のコントラストにより、反射エレメント20、22、24、26の各々の上にそれぞれ形成される。他の例示的な一実施形態では、反射エレメント20、24、および26は、フォトニック結晶の穴構造であり、これは、SOI基板11のシリコンにエッチングされ、反射面19、23、および25をそれぞれに作るためにSiOが充填されるものである。
【0018】
第1の反射エレメント22は、変調された光ビームの各々の一部分をリング共振器18へ導き、反射エレメント20、22、24、26の反射面19、21、23、25は、これらの光ビーム(例えば、第1の循環光ビーム、即ち、CW循環ビーム、および第2の循環光ビーム、即ち、CCW循環ビーム)をリング共振器18内で循環させるように配置される。例えば、反射エレメント22によってもたらされるCWビームは、反射エレメント26へ、そして反射エレメント24へ、そして反射エレメント20へ送られ、反射エレメント22へ戻され、従って、シリコン領域28内の閉じた光路に沿ってCW方向に伝搬する。逆に、反射エレメント22によってもたらされるCCWビームは、反射エレメント20へ、そして反射エレメント24へ、そして反射エレメント26へ、そして反射エレメント22へ送られ、従って、シリコン領域28内の閉じた光路に沿ってCCW方向に伝搬する。閉じた光路の経路長を増大させるために、追加の反射エレメントやファセット・キャビティ(faceted cavity)を、SOI基板11のシリコン内に形成してもよい。
【0019】
回転を検知するために、第1の光ビーム(例えば、CWビーム)の周波数fは、CW方向でのリング共振器18の共振周波数へとチューンされる(例えば、光源12の周波数をチューンすることによる)。変調器36は、第2の光ビーム(例えば、CCWビーム)の周波数を、CCW方向でのリング共振器18の共振周波数に対する共振の中心と合わせるように、周波数Δfをチューンする。回転を検知するとき、変調器36は、第2の光ビームの周波数をΔfの量だけ偏移させ、CCW方向に伝搬するように、その周波数偏移された光をリング共振器18へ送る。
【0020】
例示的な一実施形態では、変調器36は、セロダイン変調波形を使用して、周波数偏移を遂行する。例えば、光源12からのCCW光ビームは、セロダイン信号で位相変調され、それにより、位相傾斜(phase ramp)が入力光ビーム(CCWビーム)に加えられる。連続的および線形の位相傾斜で変調器36を駆動することにより、位相傾斜の勾配に比例する周波数偏移が得られる。2πの位相高さ(phase height)で周波数がΔfののこぎり波は、連続傾斜と実質的に同等な結果を生じ、回転がある場合には、のこぎり波の周波数(Δf)は、CCW共振を追跡するように調整される。周波数偏移を達成するための他の例示的な方法は、音響光学周波数シフタの使用である。この方法では、音響光学周波数シフタは、基板11上に形成または配置される音響光学デバイスである。
【0021】
CWおよびCCWの循環する光ビームは、反射エレメント22を介して、リング共振器18からシリコン導波管16への光出力を発生する。入力光ビームが、リング共振器18の互いに逆向きの伝搬方向の共振周波数にチューンされているとき、共振ライン形状(resonance lineshape)は、検出器アレイ32、33、35の検出器32および35によって検出され得る。例えば、第1の検出器32は、CCWに循環する光ビームに関連する共振ライン形状を検出し、第2の検出器35は、CWに循環する光ビームに関連する共振ライン形状を検出する。検出器アレイ32、33、35の検出器の各々は、シリコン導波管16に形成されるゲルマニウム・ダイオードまたはそれと同様のデバイスでよく、また、シリコン導波管16に取り付けられる個別のデバイスでもよく、また、より多くのまたはより少ない数の検出器が使用されてもよい。検出器は入射を監視し、信号(例えば、CWおよびCCWの入力光ビーム、およびCWおよびCCWの循環する光ビームの光出力)を戻す。検出器33は、共振器18への入力ビーム間のうなり周波数を測定し、これは回転レートに起因する共振周波数の偏移の測定値である。
【0022】
CW方向またはCCW方向の何れかで、閉じた光路の共振中心周波数を測定するために、標準の同期検出技法が使用される。それぞれの入力光ビーム(例えば、CWビームおよびCCWビーム)は、変調器30および34で正弦関数的に位相変調され、従って、周波数fおよびfでそれぞれ周波数変調されて、検出器アレイ32、33、35の検出器35および32によって測定される共振ライン形状にわたって、それぞれの入力ビーム周波数をディザリングする。例えば、検出器アレイ32、33、35に結合された駆動/検出器回路38は、検出器35および32の出力を、それぞれ周波数fおよびfで復調して、CWおよびCCWで循環する光ビームの光出力によって示される共振の中心を測定する。共振ライン形状の線の中心、即ち、共振の中心において、検出器35および32は、それぞれ、基本周波数fおよびfにおいて最小出力を検出する。例示的な一実施形態では、入力ビームの周波数(例えば、f+Δfまたはf)が共振から外れている場合、周波数fおよびfそれぞれにおける誤り信号は、検出器35および32によって検出され、それぞれのビーム周波数をリング共振器18のそれぞれの共振周波数に同調させるために使用される。CWビームの周波数は、レーザの周波数fを変更することによってチューンされ、CCWビームの周波数は、変調器36の周波数偏移Δfを変更するフィードバック・ループを介して調節され、その結果f+Δfは、共振器18のCCW共振周波数と一致する。
【0023】
+Δfが、CCW方向におけるリング共振器18の共振周波数から離調しているとき、CCWビームからのエネルギは、光センサ16において最大強度を発生しない。f+ΔfがCCW方向におけるリング共振器18の共振周波数にチューンされているとき、CCWビームは、最小出力、即ち、共振ディップを有し、それにより共振の中心を示す。同様に、CWビームについては、CWビームがCW方向におけるリング共振器18の共振周波数にチューンされているとき、CWビームのエネルギは、リング共振器18の閉じた光路に入る。
【0024】
回転が存在しない場合、CWおよびCCWの方向でのリング共振器18内部のCWおよびCCWの循環する光ビームの往復の経路長は、それぞれ実質的に等しい。従って、Δfは、変調器36によってゼロにチューンされる。回転が存在する場合、往復の経路長はCWとCCWとの方向の間で異なり、この2方向間で、回転レートに比例する共振周波数の差を発生する。CW共振を追跡するように周波数fをチューンし、CCWの共振の中心を追跡するように周波数Δfをチューンすることにより、回転レートが決定される。よく知られたサニャック効果を適用することにより、光ジャイロ10は、リング共振器18の軸(A)についての回転レートを検知する。例示的な一実施形態では、駆動/検出器回路38は、リング共振器18の閉じた光路の2方向間の共振周波数の差に基づいて、回転レートを決定する。
【0025】
図2は、本発明の第2の例示的な実施形態による光ジャイロ40のブロック図である。この例示的な実施形態では、光ジャイロ40は、図1に示されるリング共振器18をリング共振器42で置き換えている。リング共振器42は、反射エレメント22、および反射エレメント22に結合された第2のシリコン導波管44を備える。変調された光ビームは、反射エレメント22を介してシリコン導波管44へもたらされて、CWおよびCCWの方向それぞれに伝搬する。シリコン導波管44は、シリコン導波管16と同様の方式で形成されることができ、同様の光学特性を有する。例えば、シリコン導波管44は、SOI基板11のシリコンに溝をエッチングして、溝または穴の列にSiOをデポジットすることにより形成され、シリコン導波管144はSiOによって境界を画定される。他の例示的な一実施形態では、シリコン導波管44は、SOI基板11のシリコンにフォトニック結晶パターンで形成される。更に、反射エレメント22は、結合された2つの導波管から作られる光カプラと置き換えてもよく、それら2つの導波管の各々は、共振器導波管と同じ構造から作られる。
【0026】
CWおよびCCWの循環する光ビームは、シリコン導波管44により、互いに逆向きの伝搬方向(例えば、CWおよびCCWの方向)に、シリコン導波管44の一端から他端へ送られ、反射エレメント22によって反射される。より大きい有効領域を取り囲むようにし、それにより、サニャック効果を用いて軸Aについての回転に対する光ジャイロ40の感度を調整するように、シリコン導波管44の経路長は変更されてもよい(例えば、光ジャイロ40を取り囲む)。回転軸Aは、シリコン導波管44の面に垂直である。例えば、シリコン導波管44は、実質的に円形であることが好ましく、導波管44の領域を最大化し、軸Aは導波管の面に垂直である。
【0027】
図3は、本発明の第3の例示的な実施形態による光ジャイロ50のブロック図である。この例示的な実施形態では、光ジャイロ50は、図1に示されるリング共振器18をリング共振器52と置き換えている。リング共振器52は溝54を備え、溝54は、SOI基板11のシリコンにエッチングされ、表面56を有し、リング共振器52の軸Aの周りの閉じた光路に沿った自由空間で入力光ビーム(例えば、CW光ビームまたはCCW光ビーム)の部分を循環させる。面56によって囲まれる光ビームの経路は、真空、大気、または他のガスの何れかの自由空間であり、溝の中で光が経験する屈折率は、固体媒体(solid medium)に比べて実質的に均一である。閉じた光路は有効領域を囲む。表面56の反射特性を増大させるために、表面56は鏡面化されてもよい。溝54は、表面56を拡張し、有効領域を増大させるように大きくされてもよく、それにより、サニャック効果を用いての軸Aの周りの回転に対する光ジャイロ50の感度を増大させる。あるいは、表面56は、CWおよびCCWの循環する光ビームを、有効領域を囲む1または複数のループに沿って送るように、複数の反射面で構成されてもよく、それにより、サニャック効果を用いての軸Aの周りの回転に対する光ジャイロ50の信号対雑音の感度を増大させる。複数の反射面を使用して、閉じた光路の経路長は増大され得るが、光ビームによって囲まれる有効領域を実質的に保持する。
【0028】
図4は、本発明の例示的な一実施形態によるリング共振器の回転レートを検知するための方法100の流れ図である。リング共振器は、絶縁体層およびシリコン層を有する基板に形成される。ステップ105で、第1および第2の光ビームは、絶縁体層の中または上に形成される第1のシリコン導波管を介してリング共振器へ送られる。ステップ110で、第1の光ビームの一部分、即ち、第1の循環する光ビームは、リング共振器の第1の逆向き伝搬方向(例えば、CW方向)で循環され、第2の光ビームの一部分、即ち、第2の循環する光ビームは、リング共振器の第2の逆向き伝搬方向(例えば、CCW方向)で循環される。第1の循環する光ビームは、リング共振器のCW方向での伝搬に関連する第1の共振周波数を測定するか、またはそれにチューンされ、第2の循環する光ビームは、CCW方向での伝搬に関連する第2の共振周波数を測定するか、またはそれにチューンされる。第1および第2の循環する光ビームは、シリコン層の一部分における閉じた光路に沿って送られる。例示的な一実施形態では、リング共振器は、シリコン層内に形成される1組の反射エレメントを備え、その1組の反射エレメントの各々はSiOを含む。第1および第2の循環する光ビームは、これらの反射エレメントにより、シリコン層の閉じた光路に沿って送られる。他の例示的な一実施形態では、リング共振器は1組の反射エレメントを備え、その各々は、シリコン層に形成されるフォトニック結晶の穴の構造を備える。第1および第2の循環する光ビームは、これらの反射エレメントにより、シリコン層の閉じた光路に沿って送られる。更に別の例示的な一実施形態では、リング共振器は、シリコン層に形成される溝を備える。溝は反射面を有し、第1および第2の循環する光ビームは、溝の反射面を介して、自由空間の閉じた光路に沿って送られる。ステップ115で、周波数偏移は、第1の共振周波数(例えば、リング共振器の第1の逆向き伝搬方向(CW方向)の共振周波数)と、第2の共振周波数(例えば、リング共振器の第2の逆向き伝搬方向(CCW方向)の共振周波数)との間で測定される。周波数偏移は回転レートを示す。
【0029】
開示される光ジャイロ10、40、50の各々の利点には、低コストで小型パッケージで、約1度/時(deg/hr)のバイアスおよび約0.1度/ルート時(deg/root−hr)の角ランダム・ウォーク(ARW:angle random walk)を提供する能力と、損失が非常に低い共振器と、リング共振器で光を循環させるために、導波管を使用する光カプラではなく、高い反射率の鏡を使用することと、シリコン光学台または異なる基板材料を使用する光学台に取り付けることができる、コンパクトで安定したレーザ構成部品と、光源から共振器へ光を結合することの容易性と、光学系と同じプラットフォームにおける信号処理電子装置とインターフェースすることの容易性、あるいは同じプラットフォームでの統合および電子装置の容易性と、ジャイロの誤りを助長することがあるシリカ・ファイバまたは他の導波管材料での非線形の影響の排除と、共振器14への移行点における光の損失の大幅な低減と、光の透過特性に殆どまたは全く変化をもたらさずに、非常に狭いループ(例えば、鉛筆の直径またはそれよりも小さい)で光ビームを循環させる能力とが含まれるが、これらだけに限られるものではない。
【0030】
例示的な一実施形態では、光ジャイロ10、40、50は、電子装置および光学装置を統合し、2つの間で、効率的で、好都合で、自己整合され、機械的に安定したインターフェースを提供するSOI電子光学回路で構成される。結合エレメント14、ならびに変調器30、34、および36に関連する光学的機能は、SOI基板の薄膜シリコン・フィルムに形成されてもよい。シリコン・フィルムの光学的および電気的な特性は両立できるので、たとえ光波が、共振器の経路自体などのような導波管ではなく自由空間を進むことを必要とされる場合でも、信号処理回路および光学的な検知エレメントは、シリコン層に集積化することもでき、また、光学装置が大きくなることを排除するために、形状サイズが10ミクロン程度の小ささである小型の光学構成部品がシリコン表面上に取り付けられてもよい。レーザ・ダイオード、およびレーザ・ダイオードの周波数を安定化するための外部エレメントは、基板の上面に取り付けられてもよい。この例示的な実施形態では、レーザおよび関係する何れの周波数チューニング構成部品も、基板に取り付けられることができ、そして、周波数偏移のためにセロダイン法を使用することにより、周波数シフタ向けに、シリコン導波管において集積化された光学位相変調器の使用を可能にする。断熱的に光を導波管に結合する屈折率テーパー型または屈折率分布型構造の使用や、回折格子またはプリズムの使用などのような、自由空間の光学装置から導波管へ光を結合する他の方式が組み込まれてもよい。これらの技法を使用することにより、シリコン・プラットフォームでの光学装置の製造、従って、電子装置との一体化が可能になる。
【0031】
光ジャイロ10、40、50は、例として、航空機、陸上車、潜水艦、衛星、水上艦船航法などのような、慣性誘導を必要とする用途を含む様々な用途に適しているが、用途は上記のものに限定されるものではない。更に、光ジャイロ10については相対的に小さいサイズが想定されるので、例として、小型ロボット、個々の兵士の履物、および小規模の衛星を含む非常に小さいプラットフォーム上での実用化を可能にするはずであるが、用途は上記のものに限定されるものではない。
【0032】
少なくとも1つの例示的な実施形態が、本発明の前述の詳細な説明において提示されてきたが、膨大な数の変形形態が存在することを理解すべきである。例示的な1または複数の実施形態は単に例であり、本発明の範囲、適用範囲、または構成を限定するものではないことも理解すべきである。前述の詳細な説明は、本発明の例示的な実施形態を実施するための便利なロード・マップを当業者に提供する。特許請求の範囲に記載の本発明の範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態で説明されるエレメントの機能および構成の中で、様々な変更が加えられてもよいことが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、本発明の第1の例示的な実施形態による光ジャイロのブロック図である。
【図2】図2は、本発明の第2の例示的な実施形態による光ジャイロのブロック図である。
【図3】図3は、第3の例示的な実施形態による光ジャイロのブロック図である。
【図4】図4は、本発明の例示的な実施形態によるリング共振器の回転レートを検知するための方法の流れ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転レートを測定する光ジャイロであって、
絶縁体層を備える基板(11)と、
前記絶縁体層上に形成され、第1および第2の光ビームを伝搬させるように構成された第1のシリコン導波管(16)と、
前記第1のシリコン導波管に結合され、互いに逆向きの第1および第2の逆向き伝搬方向を有しする共振器(18)であって、前記第1の光ビームの一部分を前記第1の逆向き伝搬方向に循環させ、前記第2の光ビームの一部分を前記第2の逆向き伝搬方向に循環させるように構成され、前記第1および第2の逆向き伝搬方向の各々は、前記共振器内の光伝搬に対して共振周波数を有し、前記共振周波数間の差は回転レートを示す、共振器(18)と
を備える光ジャイロ。
【請求項2】
請求項1に記載の光ジャイロであって、
或る電気キャリア濃度および屈折率を有する前記第1のシリコン導波管に結合され、前記電気キャリア濃度および前記屈折率を調節して前記第1および第2の光ビームを変調するように構成された光位相変調回路網(30、34、34)と、
前記第1のシリコン導波管に結合され、循環する前記第1の光ビームおよび前記第2の光ビームをサンプリングするように構成された検出器アレイ(32、33、35)と、
前記検出器アレイと結合され、循環する前記第1の光ビームおよび前記第2の光ビームの前記共振周波数を決定するように構成された検出回路(38)と
を更に備える光ジャイロ。
【請求項3】
シリコン層および絶縁体層を有する基板に形成されるリング共振器の回転レートを検知する方法であって、
前記絶縁体層に形成される第1のシリコン導波管を介して、第1および第2の光ビームを前記リング共振器へ送るステップ(105)と、
前記第1の光ビームの一部分を前記リング共振器の第1の逆向き伝搬方向に循環させ、前記第2の光ビームの一部分を前記リング共振器の第2の逆向き伝搬方向に循環させるステップ(110)と、
前記リング共振器の前記第1の逆向き伝搬方向の第1の共振周波数と、前記リング共振器の前記第2の逆向き伝搬方向の第2の共振周波数との間の、回転レートを示す周波数偏移を測定するステップ(115)と
を備える方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−309937(P2007−309937A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−129255(P2007−129255)
【出願日】平成19年5月15日(2007.5.15)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】