集積回路実装基板及び集積回路実装パッケージの製造方法
【課題】形状が同じフィルム基材上に、形状が同じで機能の異なる集積回路を実装した後に、それぞれを外見のみで容易に判別する手段を提供する。
【解決手段】SOF構造の集積回路実装パッケージ140は予め識別記号記載部1を設けているため、集積回路101を実装後に機種名を記載することができる。それゆえフィルム基材に形状が同じで機能の異なる集積回路101Aを実装した場合、実装後にそれに対応した機種名を記載することができる。
【解決手段】SOF構造の集積回路実装パッケージ140は予め識別記号記載部1を設けているため、集積回路101を実装後に機種名を記載することができる。それゆえフィルム基材に形状が同じで機能の異なる集積回路101Aを実装した場合、実装後にそれに対応した機種名を記載することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープキャリアパッケージ等のフィルム基材を用いた集積回路実装基板に係り、より詳しくは、集積回路の機種名等の識別マークの記載を可能にした集積回路実装基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ドライバ等の実装用パッケージは、液晶パネルのガラス辺に実装を行う必要があると共にパネル額縁を小さくする必要があることから、TCP(Tape Carrier Package)やSOF(System On Film:COF(Chip On Film)とも呼ばれる)、が使用されている。
【0003】
図11及び図12に、TCP構造の集積回路実装パッケージ120の構成を示す。図11は、集積回路実装パッケージ120の上面図であり、封止樹脂109を透視した状態を示した部分透視図である。また、図12は、図11に示した集積回路実装パッケージ120を切断線B−B’において切断した状態を示した矢視断面図である。
【0004】
図11及び図12に示す集積回路実装パッケージ120では、スリット114と、デバイスホール115と呼ばれる穴部分がフィルム基材113に設けられている。さらに、フィルム基材113に銅配線111・112が形成され、配線111・112上にソルダーレジスト116が形成されている。集積回路(集積回路チップ)101は、デバイスホール115内に設けられており、集積回路101表面のバンプ110と、配線111・112とが接続した構造となっている。また、図12に示されているように、集積回路101等を外部環境から保護するために封止樹脂109がデバイスホール115周辺を覆っている。
【0005】
図13及び図14に、SOF構造の集積回路実装パッケージ130の構成を示す。図13は、集積回路実装パッケージ130の上面図であり、図14は、図13に示した集積回路実装パッケージ130を切断線B−B’において切断した状態を示した矢視断面図である。
【0006】
上記集積回路実装パッケージ130は、フィルム基材113に銅配線111・112が形成されており、銅配線111・112の上にソルダーレジスト116が形成されている。銅配線111・112と、集積回路101とは、当該集積回路101のバンプ110によって接続されている。また、図14に示されているように、集積回路101等を外部環境から保護するためにアンダーフィル材117が充填されている。
【0007】
TCPやSOFは、樹脂テープ(ポリイミドフィルム等)の基材上に銅箔パターンにて集積回路と、パッケージのリード端子までの配線を形成すると共に、社名、機種名等を形成している。
【0008】
TCPやSOFは、主に液晶パネルの駆動用集積回路のパッケージとして使用されており、TCPやSOFが実装される液晶パネルのガラス基板上の配線、TCPやSOFの接続部の形状、実装される集積回路の端子配置等により、TCPやSOFの外形、配線パターンが異なる。液晶パネルの駆動用集積回路においては、TCPやSOFの形状と、駆動用集積回路が1対1で対応しており、このため、使用される駆動用集積回路とTCPやSOFの形状との組み合わせで、機種名を設定し、TCPやSOF上に配線パターンで機種名を記載している(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
TCPやSOFに機種名等のマークを表記することは、上記の様に銅箔パターンで形成する以外に、特許文献2に記載されているように、チップの表面保護樹脂上にゴム印等により文字を印字する方法が記載されている。また、特許文献2には、テープキャリアの場合に、チップの裏面やテープ枠に印字することが記載されている。テープ枠の印字は、集積回路の実装の前にリード線パターンを焼き付ける工程で、テープ枠に焼き付けることにより行われる。
【特許文献1】特開平5−3227号公報(1993年1月8日公開)
【特許文献2】特開昭63−263748号公報(1988年10月31日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来の構成では、以下の様な問題点がある。
【0011】
近年、液晶表示装置の普及は目覚しく、様々な分野、製品にて使用されている。このため、大量に生産している表示パネルの一部機能を変更した製品を開発するために、TCPやSOFの形状が全く同一で駆動用集積回路の機能が一部異なる製品が要望される場合が発生する。このような製品開発の場合、開発期間が短くまた開発費も少ない場合が多い。このため駆動用集積回路の機能変更を行っても、TCPやSOFのキャリアテープは変更前と同一のものを使用することになる。専用のキャリアテープを作製する場合、金型やマスクから作製する必要があるため、開発期間がかかると共に、開発費用が必要になるが、変更前と同一のキャリアテープを使用すれば、開発期間、開発費が掛からないという利点があるからである。
【0012】
しかしながら、同一のキャリアテープを使用した場合、機能が異なる2種類の駆動用集積回路を実装したTCPやSOFを外見で判別することができなくなるという問題が発生する。これは、同一のキャリアテープに2種類の駆動用集積回路のいずれかを実装するため、引用文献2に記載されているようにキャリアテープに予め駆動用集積回路の機種名等を印字すると、駆動用集積回路の実装後に記載された機種名によって両者を判別することができなくなるからである。また引用文献2には駆動用集積回路の裏面に識別マークを記載する方法が示されているが、駆動用集積回路の小型化のため製造時の情報(デートコード)を記載するスペースしかなく、機種名を記載することができない。
【0013】
このため、駆動用集積回路を実装したTCPやSOFの出荷には、出荷ラベルでの管理等を慎重に行い、間違いがないようにする必要がある。
【0014】
また、上記のように外見で判断できないため、不良で返品された場合、駆動用集積回路がどの機能のものであるかを調べるためには、返品先からの情報を元にどの機能の集積回路が使われたかを推測するか、TCPやSOFから集積回路を剥離し、さらに集積回路の樹脂を剥離し、集積回路の回路面に記載されたマーク等を確認したり、回路を確認する必要がある。
【0015】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、形状が同じフィルム基材上に、形状が同じで機能の異なる集積回路を実装した後に、それぞれを外見のみで容易に判別する手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る集積回路実装基板は、上記課題を解決するために、機能の異なる同一形状の集積回路をフレキシブルな基材に実装する集積回路実装基板において、前記集積回路を識別するための識別記号を記載する識別記号記載部を備えていることを特徴としている。
【0017】
また、本発明に係る集積回路実装パッケージの製造方法は、前記集積回路実装基板に前記集積回路を実装することにより集積回路実装パッケージを製造する集積回路実装パッケージの製造方法であって、集積回路を前記集積回路実装基板に実装した後に、前記識別記号記載部に識別記号を記載することを特徴としている。
【0018】
上記の構成によれば、識別記号記載部を備えているので、テープ枠等に印字する従来の構成と異なり、スタンプによる印字やレーザによる刻印のように、基材にリード線のパターンを形成する工程と独立して識別記号記載部に識別記号を記載するように識別記号記載部を構成することができる。これにより、集積回路実装基板に集積回路を実装した後に、実装された集積回路の識別記号を識別記号記載部に記載することができる。
【0019】
前記集積回路実装基板は、前記識別記号記載部が前記識別記号の書き換えを可能にする材料によって形成されていることが好ましい。具体的には、所定の第1温度で加熱することにより加熱部分の色を変化させ、前記第1温度と異なる所定の第2温度で加熱することにより前記第1温度にて加熱された部分の色を元に戻す熱可逆性物質を前記材料として用いることができる。
【0020】
また、本発明に係る他の集積回路実装パッケージの製造方法は、前記集積回路実装基板に前記集積回路を実装することにより集積回路実装パッケージを製造する集積回路実装パッケージの製造方法であって、前記集積回路を実装する前に、前記識別記号記載部に実装予定の集積回路の識別記号を記載しておき、予定以外の集積回路が実装された場合、実装された集積回路の前記識別記号に応じて、前記識別記号の全て、もしくは一部を書き換えることを特徴としている。
【0021】
上記の構成によれば、前記集積回路実装基板に前記集積回路を実装する前に、前記識別記号記載部に実装予定の集積回路の識別記号を記載しておき、予定以外の集積回路が実装された場合、実装された集積回路の識別記号に応じて、前記識別記号の全て、もしくは一部を書き換えることができる。
【0022】
これにより、予定通りの集積回路を実装した集積回路実装パッケージでは実装後に識別記号を記載する時間を短縮でき、予定以外の、機能の異なる同一形状の集積回路を実装した集積回路実装パッケージを判別することが容易となる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明の集積回路実装基板は、実装する集積回路を識別するための識別記号を記載する識別記号記載部を備えていることにより、機能が異なる同一形状の集積回路を実装する場合、実装後に識別記号を記載できるため、実装した後の状態にて、判別が容易となるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の実施形態について図1ないし図10に基づいて説明すると以下の通りである。
【0025】
〔実施形態1〕
図1はSOF構造の集積回路実装パッケージ140に識別記号記載部1を設けた図である。
【0026】
尚、本実施形態において、図11及び図12に示す集積回路実装パッケージ130と同等の機能を有する構成要素については同一の符号を付記する。
【0027】
図1に示す集積回路実装パッケージ140では、集積回路実装パッケージ130と同様、フィルム基材113に銅配線111・112が形成されており、銅配線111・112の上にソルダーレジスト116が形成されている。銅配線111・112と、集積回路101とは、当該集積回路101のバンプ(図示せず)によって接続された構造となっている。ただし、集積回路実装パッケージ140は、集積回路実装パッケージ130と異なり、識別記号記載部1を備えている。
【0028】
上記識別記号記載部1は、集積回路実装パッケージ140に機種名等の識別記号が記載可能なスペースとして設けられており、下側に銅配線等が通過しないようにしてある為、平坦な構造となる。
【0029】
図2から図4の図を参照して、集積回路実装パッケージ140に機種名を記載する方法を以下に説明する。
【0030】
図2は複数の集積回路実装パッケージ140を作製するための集積回路実装前のフィルムの状態を示している。この状態では、識別記号記載部1には何も記載されていない。
【0031】
図3は図2のフィルムに集積回路101を実装後のフィルムの状態を示しているが、この状態では、まだ識別記号記載部1には何も記載されていない。
【0032】
図4は図3の集積回路実装後のフィルムに機種名A123401を記載した状態を示している。識別記号記載部1における機種名の記載はスタンプによる印字や、レーザによる刻印により行うことが出来る。
【0033】
図5は図2のフィルムに、集積回路101とチップ外形(チップサイズ、バンプ位置等)は同じであるが、別回路を含む集積回路101Aを実装した状態を示している。この状態では、識別記号記載部1に機種名A123402と記載することにより、図4のフィルムと図5のフィルムは違った集積回路(101、101A)が実装されていることが一目で確認できる。
【0034】
〔実施形態2〕
図6はSOF構造の集積回路実装パッケージ150に識別記号記載部2を設けた図である。
【0035】
なお、本実施形態において、図1に示す集積回路実装パッケージ140と同等の機能を有する構成要素については同一の符号を付記して、その説明を省略する。
【0036】
図6に示す集積回路実装パッケージ150は、図1に示す集積回路実装パッケージ140と同様に構成されているが、識別記号記載部1の代わりに識別記号記載部2を備えている。
【0037】
上記識別記号記載部2には、光を反射する光反射シートと、熱により白濁、透明が可逆的に変化する熱可逆性物質からなる熱可逆性のシートとが、光反射シート上に熱可逆性シートを重ねるように設置されており、所定の書込温度(第1温度)の熱により白濁させた場合、光沢のある銀色の地に白色の表示となり、書込温度とは異なる所定の消去温度(第2温度)の熱により透明にした場合、表示がなくなる。
【0038】
図7から図9の図を参照して、集積回路実装パッケージ150に機種名を記載する方法を以下に説明する。
【0039】
図7は複数の集積回路実装パッケージ150を作製するための集積回路実装前のフィルムの状態を示している。この状態では、識別記号記載部2に機種名A123401と記載されている。機種名の記載はサーマルヘッドやレーザにて熱を加えることにより、識別記号記載部2の可逆性材料を白濁させることにより行う。
【0040】
図8は図7の状態のフィルムに機種名A123401用の集積回路101を実装した状態を示している。機種名の変更がない場合、この状態で完成である。
【0041】
図9は図7の状態のフィルムに機種名A123402用の集積回路101Aを実装した状態を示している。識別記号記載部2には機種名A123401が記載されており、機種名の変更が必要である。機種名の変更のため識別記号記載部2に機種名を書き込む時とは別の消去温度の熱を与え白濁している熱可逆性シートを透明にして記載された機種名を消去する。その後、書込温度の熱を識別記号記載部2に与えて機種名を書き込むことにより図10に示すように、機種名A123402となる。
【0042】
上記のように、機種名A123402と記載することにより、図8のフィルムと図10のフィルムは違った集積回路が実装されていることが一目で確認できる。また、識別記号記載部2が熱可逆性材料によって形成されているので、識別記号記載部2にすでに機種名が記載されている状態で、集積回路の機種名を変更する場合に、容易に機種名を書き換えることができる。
【0043】
尚、上記手順では、熱可逆性シートを透明化することにより、記載された機種名A123401全てを消去した後、再度機種名を書き込む手順を説明したが、これに限定されない。変更する文字が予め分かっている場合、例えば下2桁のみ変更するとき、その文字の記載範囲に対して熱を与え熱可逆性シートを透明化し、その部分のみ書き換えることも可能である。
【0044】
なお、上述の説明では、SOF構造の集積回路実装パッケージについて説明したが、これに限るものではない。TCP構造の集積回路実装パッケージであってもよい。フィルム基材を用いた集積回路実装パッケージであれば、本実施形態と同様の効果が得られる。また、識別記号記載部2において機種名を書き換え可能にする構成として、光反射シートと熱可逆性シートとを用いたが、これに限るものではない。
【0045】
一例として、上記識別記号記載部2を構成する材料として、ロイコ染料を用いることができる。ロイコ染料を用いた識別記号記載部2は、サーマルヘッドやレーザにて印字に必要な温度(約170℃以上)に加熱され急冷されると発色する。機種名の消去は消色に必要な温度(約120℃〜140℃)を一定時間かけることで行う。
【0046】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
キャリアテープが共通で、機能が異なる集積回路のパッケージにおいて、パッケージの部品管理に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施形態1によるSOF構造の集積回路実装パッケージの構成を示す上面図である。
【図2】本発明の実施形態1による集積回路実装前のフィルムの状態を示す図である。
【図3】図2に示すフィルムに集積回路実装後のフィルムの状態を示す図である。
【図4】図3の集積回路実装後のフィルムに機種名を記載した状態を示す図である。
【図5】図2のフィルムに他機種の集積回路を実装し機種名を記載した状態を示す図である。
【図6】本発明の実施形態2によるSOFの集積回路実装パッケージの構成を示す上面図である。
【図7】本発明の実施形態2による集積回路実装前のフィルムの状態を示す図である。
【図8】図7に示すフィルムに集積回路実装後のフィルムの状態を示す図である。
【図9】図7に示すフィルムに他機種の集積回路実装後のフィルムの状態を示す図である。
【図10】図9に示すフィルムに記載した機種名を書き換えた状態を示す図である。
【図11】従来の一般的なTCP構造の集積回路実装パッケージの構成を示す上面図である。
【図12】図11の切断線B−B’において切断した状態を示す矢視断面図である。
【図13】従来の一般的なSOF構造の集積回路実装パッケージの構成を示す上面図である。
【図14】図13の切断線B−B’において切断した状態を示す矢視断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 識別記号記載部
2 識別記号記載部
101 集積回路
101A 集積回路
113 フィルム基材(基材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープキャリアパッケージ等のフィルム基材を用いた集積回路実装基板に係り、より詳しくは、集積回路の機種名等の識別マークの記載を可能にした集積回路実装基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ドライバ等の実装用パッケージは、液晶パネルのガラス辺に実装を行う必要があると共にパネル額縁を小さくする必要があることから、TCP(Tape Carrier Package)やSOF(System On Film:COF(Chip On Film)とも呼ばれる)、が使用されている。
【0003】
図11及び図12に、TCP構造の集積回路実装パッケージ120の構成を示す。図11は、集積回路実装パッケージ120の上面図であり、封止樹脂109を透視した状態を示した部分透視図である。また、図12は、図11に示した集積回路実装パッケージ120を切断線B−B’において切断した状態を示した矢視断面図である。
【0004】
図11及び図12に示す集積回路実装パッケージ120では、スリット114と、デバイスホール115と呼ばれる穴部分がフィルム基材113に設けられている。さらに、フィルム基材113に銅配線111・112が形成され、配線111・112上にソルダーレジスト116が形成されている。集積回路(集積回路チップ)101は、デバイスホール115内に設けられており、集積回路101表面のバンプ110と、配線111・112とが接続した構造となっている。また、図12に示されているように、集積回路101等を外部環境から保護するために封止樹脂109がデバイスホール115周辺を覆っている。
【0005】
図13及び図14に、SOF構造の集積回路実装パッケージ130の構成を示す。図13は、集積回路実装パッケージ130の上面図であり、図14は、図13に示した集積回路実装パッケージ130を切断線B−B’において切断した状態を示した矢視断面図である。
【0006】
上記集積回路実装パッケージ130は、フィルム基材113に銅配線111・112が形成されており、銅配線111・112の上にソルダーレジスト116が形成されている。銅配線111・112と、集積回路101とは、当該集積回路101のバンプ110によって接続されている。また、図14に示されているように、集積回路101等を外部環境から保護するためにアンダーフィル材117が充填されている。
【0007】
TCPやSOFは、樹脂テープ(ポリイミドフィルム等)の基材上に銅箔パターンにて集積回路と、パッケージのリード端子までの配線を形成すると共に、社名、機種名等を形成している。
【0008】
TCPやSOFは、主に液晶パネルの駆動用集積回路のパッケージとして使用されており、TCPやSOFが実装される液晶パネルのガラス基板上の配線、TCPやSOFの接続部の形状、実装される集積回路の端子配置等により、TCPやSOFの外形、配線パターンが異なる。液晶パネルの駆動用集積回路においては、TCPやSOFの形状と、駆動用集積回路が1対1で対応しており、このため、使用される駆動用集積回路とTCPやSOFの形状との組み合わせで、機種名を設定し、TCPやSOF上に配線パターンで機種名を記載している(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
TCPやSOFに機種名等のマークを表記することは、上記の様に銅箔パターンで形成する以外に、特許文献2に記載されているように、チップの表面保護樹脂上にゴム印等により文字を印字する方法が記載されている。また、特許文献2には、テープキャリアの場合に、チップの裏面やテープ枠に印字することが記載されている。テープ枠の印字は、集積回路の実装の前にリード線パターンを焼き付ける工程で、テープ枠に焼き付けることにより行われる。
【特許文献1】特開平5−3227号公報(1993年1月8日公開)
【特許文献2】特開昭63−263748号公報(1988年10月31日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来の構成では、以下の様な問題点がある。
【0011】
近年、液晶表示装置の普及は目覚しく、様々な分野、製品にて使用されている。このため、大量に生産している表示パネルの一部機能を変更した製品を開発するために、TCPやSOFの形状が全く同一で駆動用集積回路の機能が一部異なる製品が要望される場合が発生する。このような製品開発の場合、開発期間が短くまた開発費も少ない場合が多い。このため駆動用集積回路の機能変更を行っても、TCPやSOFのキャリアテープは変更前と同一のものを使用することになる。専用のキャリアテープを作製する場合、金型やマスクから作製する必要があるため、開発期間がかかると共に、開発費用が必要になるが、変更前と同一のキャリアテープを使用すれば、開発期間、開発費が掛からないという利点があるからである。
【0012】
しかしながら、同一のキャリアテープを使用した場合、機能が異なる2種類の駆動用集積回路を実装したTCPやSOFを外見で判別することができなくなるという問題が発生する。これは、同一のキャリアテープに2種類の駆動用集積回路のいずれかを実装するため、引用文献2に記載されているようにキャリアテープに予め駆動用集積回路の機種名等を印字すると、駆動用集積回路の実装後に記載された機種名によって両者を判別することができなくなるからである。また引用文献2には駆動用集積回路の裏面に識別マークを記載する方法が示されているが、駆動用集積回路の小型化のため製造時の情報(デートコード)を記載するスペースしかなく、機種名を記載することができない。
【0013】
このため、駆動用集積回路を実装したTCPやSOFの出荷には、出荷ラベルでの管理等を慎重に行い、間違いがないようにする必要がある。
【0014】
また、上記のように外見で判断できないため、不良で返品された場合、駆動用集積回路がどの機能のものであるかを調べるためには、返品先からの情報を元にどの機能の集積回路が使われたかを推測するか、TCPやSOFから集積回路を剥離し、さらに集積回路の樹脂を剥離し、集積回路の回路面に記載されたマーク等を確認したり、回路を確認する必要がある。
【0015】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、形状が同じフィルム基材上に、形状が同じで機能の異なる集積回路を実装した後に、それぞれを外見のみで容易に判別する手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る集積回路実装基板は、上記課題を解決するために、機能の異なる同一形状の集積回路をフレキシブルな基材に実装する集積回路実装基板において、前記集積回路を識別するための識別記号を記載する識別記号記載部を備えていることを特徴としている。
【0017】
また、本発明に係る集積回路実装パッケージの製造方法は、前記集積回路実装基板に前記集積回路を実装することにより集積回路実装パッケージを製造する集積回路実装パッケージの製造方法であって、集積回路を前記集積回路実装基板に実装した後に、前記識別記号記載部に識別記号を記載することを特徴としている。
【0018】
上記の構成によれば、識別記号記載部を備えているので、テープ枠等に印字する従来の構成と異なり、スタンプによる印字やレーザによる刻印のように、基材にリード線のパターンを形成する工程と独立して識別記号記載部に識別記号を記載するように識別記号記載部を構成することができる。これにより、集積回路実装基板に集積回路を実装した後に、実装された集積回路の識別記号を識別記号記載部に記載することができる。
【0019】
前記集積回路実装基板は、前記識別記号記載部が前記識別記号の書き換えを可能にする材料によって形成されていることが好ましい。具体的には、所定の第1温度で加熱することにより加熱部分の色を変化させ、前記第1温度と異なる所定の第2温度で加熱することにより前記第1温度にて加熱された部分の色を元に戻す熱可逆性物質を前記材料として用いることができる。
【0020】
また、本発明に係る他の集積回路実装パッケージの製造方法は、前記集積回路実装基板に前記集積回路を実装することにより集積回路実装パッケージを製造する集積回路実装パッケージの製造方法であって、前記集積回路を実装する前に、前記識別記号記載部に実装予定の集積回路の識別記号を記載しておき、予定以外の集積回路が実装された場合、実装された集積回路の前記識別記号に応じて、前記識別記号の全て、もしくは一部を書き換えることを特徴としている。
【0021】
上記の構成によれば、前記集積回路実装基板に前記集積回路を実装する前に、前記識別記号記載部に実装予定の集積回路の識別記号を記載しておき、予定以外の集積回路が実装された場合、実装された集積回路の識別記号に応じて、前記識別記号の全て、もしくは一部を書き換えることができる。
【0022】
これにより、予定通りの集積回路を実装した集積回路実装パッケージでは実装後に識別記号を記載する時間を短縮でき、予定以外の、機能の異なる同一形状の集積回路を実装した集積回路実装パッケージを判別することが容易となる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明の集積回路実装基板は、実装する集積回路を識別するための識別記号を記載する識別記号記載部を備えていることにより、機能が異なる同一形状の集積回路を実装する場合、実装後に識別記号を記載できるため、実装した後の状態にて、判別が容易となるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の実施形態について図1ないし図10に基づいて説明すると以下の通りである。
【0025】
〔実施形態1〕
図1はSOF構造の集積回路実装パッケージ140に識別記号記載部1を設けた図である。
【0026】
尚、本実施形態において、図11及び図12に示す集積回路実装パッケージ130と同等の機能を有する構成要素については同一の符号を付記する。
【0027】
図1に示す集積回路実装パッケージ140では、集積回路実装パッケージ130と同様、フィルム基材113に銅配線111・112が形成されており、銅配線111・112の上にソルダーレジスト116が形成されている。銅配線111・112と、集積回路101とは、当該集積回路101のバンプ(図示せず)によって接続された構造となっている。ただし、集積回路実装パッケージ140は、集積回路実装パッケージ130と異なり、識別記号記載部1を備えている。
【0028】
上記識別記号記載部1は、集積回路実装パッケージ140に機種名等の識別記号が記載可能なスペースとして設けられており、下側に銅配線等が通過しないようにしてある為、平坦な構造となる。
【0029】
図2から図4の図を参照して、集積回路実装パッケージ140に機種名を記載する方法を以下に説明する。
【0030】
図2は複数の集積回路実装パッケージ140を作製するための集積回路実装前のフィルムの状態を示している。この状態では、識別記号記載部1には何も記載されていない。
【0031】
図3は図2のフィルムに集積回路101を実装後のフィルムの状態を示しているが、この状態では、まだ識別記号記載部1には何も記載されていない。
【0032】
図4は図3の集積回路実装後のフィルムに機種名A123401を記載した状態を示している。識別記号記載部1における機種名の記載はスタンプによる印字や、レーザによる刻印により行うことが出来る。
【0033】
図5は図2のフィルムに、集積回路101とチップ外形(チップサイズ、バンプ位置等)は同じであるが、別回路を含む集積回路101Aを実装した状態を示している。この状態では、識別記号記載部1に機種名A123402と記載することにより、図4のフィルムと図5のフィルムは違った集積回路(101、101A)が実装されていることが一目で確認できる。
【0034】
〔実施形態2〕
図6はSOF構造の集積回路実装パッケージ150に識別記号記載部2を設けた図である。
【0035】
なお、本実施形態において、図1に示す集積回路実装パッケージ140と同等の機能を有する構成要素については同一の符号を付記して、その説明を省略する。
【0036】
図6に示す集積回路実装パッケージ150は、図1に示す集積回路実装パッケージ140と同様に構成されているが、識別記号記載部1の代わりに識別記号記載部2を備えている。
【0037】
上記識別記号記載部2には、光を反射する光反射シートと、熱により白濁、透明が可逆的に変化する熱可逆性物質からなる熱可逆性のシートとが、光反射シート上に熱可逆性シートを重ねるように設置されており、所定の書込温度(第1温度)の熱により白濁させた場合、光沢のある銀色の地に白色の表示となり、書込温度とは異なる所定の消去温度(第2温度)の熱により透明にした場合、表示がなくなる。
【0038】
図7から図9の図を参照して、集積回路実装パッケージ150に機種名を記載する方法を以下に説明する。
【0039】
図7は複数の集積回路実装パッケージ150を作製するための集積回路実装前のフィルムの状態を示している。この状態では、識別記号記載部2に機種名A123401と記載されている。機種名の記載はサーマルヘッドやレーザにて熱を加えることにより、識別記号記載部2の可逆性材料を白濁させることにより行う。
【0040】
図8は図7の状態のフィルムに機種名A123401用の集積回路101を実装した状態を示している。機種名の変更がない場合、この状態で完成である。
【0041】
図9は図7の状態のフィルムに機種名A123402用の集積回路101Aを実装した状態を示している。識別記号記載部2には機種名A123401が記載されており、機種名の変更が必要である。機種名の変更のため識別記号記載部2に機種名を書き込む時とは別の消去温度の熱を与え白濁している熱可逆性シートを透明にして記載された機種名を消去する。その後、書込温度の熱を識別記号記載部2に与えて機種名を書き込むことにより図10に示すように、機種名A123402となる。
【0042】
上記のように、機種名A123402と記載することにより、図8のフィルムと図10のフィルムは違った集積回路が実装されていることが一目で確認できる。また、識別記号記載部2が熱可逆性材料によって形成されているので、識別記号記載部2にすでに機種名が記載されている状態で、集積回路の機種名を変更する場合に、容易に機種名を書き換えることができる。
【0043】
尚、上記手順では、熱可逆性シートを透明化することにより、記載された機種名A123401全てを消去した後、再度機種名を書き込む手順を説明したが、これに限定されない。変更する文字が予め分かっている場合、例えば下2桁のみ変更するとき、その文字の記載範囲に対して熱を与え熱可逆性シートを透明化し、その部分のみ書き換えることも可能である。
【0044】
なお、上述の説明では、SOF構造の集積回路実装パッケージについて説明したが、これに限るものではない。TCP構造の集積回路実装パッケージであってもよい。フィルム基材を用いた集積回路実装パッケージであれば、本実施形態と同様の効果が得られる。また、識別記号記載部2において機種名を書き換え可能にする構成として、光反射シートと熱可逆性シートとを用いたが、これに限るものではない。
【0045】
一例として、上記識別記号記載部2を構成する材料として、ロイコ染料を用いることができる。ロイコ染料を用いた識別記号記載部2は、サーマルヘッドやレーザにて印字に必要な温度(約170℃以上)に加熱され急冷されると発色する。機種名の消去は消色に必要な温度(約120℃〜140℃)を一定時間かけることで行う。
【0046】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
キャリアテープが共通で、機能が異なる集積回路のパッケージにおいて、パッケージの部品管理に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施形態1によるSOF構造の集積回路実装パッケージの構成を示す上面図である。
【図2】本発明の実施形態1による集積回路実装前のフィルムの状態を示す図である。
【図3】図2に示すフィルムに集積回路実装後のフィルムの状態を示す図である。
【図4】図3の集積回路実装後のフィルムに機種名を記載した状態を示す図である。
【図5】図2のフィルムに他機種の集積回路を実装し機種名を記載した状態を示す図である。
【図6】本発明の実施形態2によるSOFの集積回路実装パッケージの構成を示す上面図である。
【図7】本発明の実施形態2による集積回路実装前のフィルムの状態を示す図である。
【図8】図7に示すフィルムに集積回路実装後のフィルムの状態を示す図である。
【図9】図7に示すフィルムに他機種の集積回路実装後のフィルムの状態を示す図である。
【図10】図9に示すフィルムに記載した機種名を書き換えた状態を示す図である。
【図11】従来の一般的なTCP構造の集積回路実装パッケージの構成を示す上面図である。
【図12】図11の切断線B−B’において切断した状態を示す矢視断面図である。
【図13】従来の一般的なSOF構造の集積回路実装パッケージの構成を示す上面図である。
【図14】図13の切断線B−B’において切断した状態を示す矢視断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 識別記号記載部
2 識別記号記載部
101 集積回路
101A 集積回路
113 フィルム基材(基材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能の異なる同一形状の集積回路をフレキシブルな基材に実装する集積回路実装基板において、
前記集積回路を識別するための識別記号を記載する識別記号記載部を備えていることを特徴とする集積回路実装基板。
【請求項2】
請求項1に記載の集積回路実装基板に前記集積回路を実装することにより集積回路実装パッケージを製造する集積回路実装パッケージの製造方法であって、
集積回路を前記集積回路実装基板に実装した後に、前記識別記号記載部に識別記号を記載することを特徴とする集積回路実装パッケージの製造方法。
【請求項3】
前記識別記号記載部が前記識別記号の書き換えを可能にする材料によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の集積回路実装基板。
【請求項4】
所定の第1温度で加熱することにより加熱部分の色を変化させ、前記第1温度と異なる所定の第2温度で加熱することにより前記第1温度にて加熱された部分の色を元に戻す熱可逆性物質を前記材料として用いたことを特徴とする請求項3に記載の集積回路実装基板。
【請求項5】
請求項3または4に記載の集積回路実装基板に前記集積回路を実装することにより集積回路実装パッケージを製造する集積回路実装パッケージの製造方法であって、
前記集積回路を実装する前に、前記識別記号記載部に実装予定の集積回路の識別記号を記載しておき、
予定以外の集積回路が実装された場合、実装された集積回路の前記識別記号に応じて、前記識別記号の全て、もしくは一部を書き換えることを特徴とする集積回路実装パッケージの製造方法。
【請求項1】
機能の異なる同一形状の集積回路をフレキシブルな基材に実装する集積回路実装基板において、
前記集積回路を識別するための識別記号を記載する識別記号記載部を備えていることを特徴とする集積回路実装基板。
【請求項2】
請求項1に記載の集積回路実装基板に前記集積回路を実装することにより集積回路実装パッケージを製造する集積回路実装パッケージの製造方法であって、
集積回路を前記集積回路実装基板に実装した後に、前記識別記号記載部に識別記号を記載することを特徴とする集積回路実装パッケージの製造方法。
【請求項3】
前記識別記号記載部が前記識別記号の書き換えを可能にする材料によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の集積回路実装基板。
【請求項4】
所定の第1温度で加熱することにより加熱部分の色を変化させ、前記第1温度と異なる所定の第2温度で加熱することにより前記第1温度にて加熱された部分の色を元に戻す熱可逆性物質を前記材料として用いたことを特徴とする請求項3に記載の集積回路実装基板。
【請求項5】
請求項3または4に記載の集積回路実装基板に前記集積回路を実装することにより集積回路実装パッケージを製造する集積回路実装パッケージの製造方法であって、
前記集積回路を実装する前に、前記識別記号記載部に実装予定の集積回路の識別記号を記載しておき、
予定以外の集積回路が実装された場合、実装された集積回路の前記識別記号に応じて、前記識別記号の全て、もしくは一部を書き換えることを特徴とする集積回路実装パッケージの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−194342(P2009−194342A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−36592(P2008−36592)
【出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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