説明

集電体、電池用電極基板及びそれらの製造方法

【課題】 強度及び柔軟性が十分な集電体及びそれを用いた電池用電極基板、コストが低くハイレート充放電性能に優れ、電気抵抗が低く、充放電の繰り返しによるサイクル特性の低下が解消できる電池用電極基板を提供する。
【解決手段】 本発明は、織布もしくは不織布の樹脂繊維表面における、ニッケル膜の平均被覆率が85%以上である電池用電極基板である。また、厚み方向に低密度領域と高密度領域のニッケル量の密度の異なる2層以上の層よりなり、低密度領域の厚みが高密度領域の厚みの1.5倍以上である金属多孔体である。さらに電気抵抗の縦横比が2倍以上である金属多孔体を用いた電池用電極基板である。好ましくは、樹脂繊維として、ポリプロピレンを芯、ポリエチレンを鞘とした芯鞘複合繊維構造を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ二次電池などに用いられる集電体及びそれを用いた電池用電極基板に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで開発されてきた、アルカリ二次電池などに用いられる集電体としては、以下のようなものがある。
例えば、特許文献1では、金属繊維を3次元的に絡ませた金属多孔体をアルカリ二次電池用集電体に適用している。ここでは、集電体として最適な金属繊維径、孔径、多孔度、密度を規定している。また、特許文献2では、多孔質金属構造の製造方法として、不織布等の樹脂芯材にスパッタリング等の気相法により導電層を形成した後電気メッキにより金属層を形成する方法を開示している。特許文献3では、スルホン化処理等の表面処理を施した不織布材にニッケルメッキ膜を形成したものをアルカリ二次電池用集電体に適用している。樹脂製不織布を芯材として残す事で柔軟性と強度を確保することが述べられている。また、特許文献4では、不織布表面のメッキ量を断面積で規定することで高容量かつハイレート充放電が可能な集電体を開示している。特許文献5では、不織布材の厚み及び製法を規定することで、ハイレート充放電可能な集電体を開示している。
【0003】
しかしながら、上記の特許文献1及び2に記載の集電体は、その集電体の強度及び柔軟性が十分ではなかった。また、Ni量を多く使用するため、コスト高であった。上記特許文献1及び2の従来技術は、金属繊維のみからなるため、強度を確保するためには金属量を増やす必要があるが、金属量を増やすと柔軟性が失われ金属繊維がセパレータを突き破って短絡の原因となる。また高価なNi金属を多く使用することでコスト高となる。しかし、コスト低下を狙って金属量を減らすと、強度が不足するだけでなく電気抵抗も上昇しハイレート充放電性能が低下する。
【0004】
また、上記特許文献3〜5に記載の従来技術は、まず電気抵抗が高いことが問題であった。さらに、膜の密着性が不十分なためサイクル寿命が低下していた。これらの従来技術においては、繊維表面への金属膜の被覆が不十分であるため電気抵抗が高くなっていると考えられる。不織布表面のNiめっき量は少ない方が、安価な基板が得られる。しかし、その一方で、不織布の表面のNi量が少ないので電流が流れにくく、電気抵抗が増大し、出力特性が低下する問題が発生する。また、充放電の繰り返しによる膨張収縮により膜の剥離が発生して集電性が低下するため電池サイクル特性が低下する。さらには、捲回することにより基板の抵抗が大きく増大すると言う問題もあった。すなわち、捲回することにより不織布が折れ、これにより表面にめっきされた金属の層が剥離し、電気抵抗が増大するのである。
【0005】
【特許文献1】特開平2−216766号公報
【特許文献2】特開昭61−76686号公報
【特許文献3】特開2001−313038号公報
【特許文献4】特開2003−109600号公報
【特許文献5】特開2003−282066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、上記従来技術の難点を解消することが本発明の目的であり、すなわち、強度及び柔軟性が十分な電池用電極基板を提供することである。さらに、本発明の別の目的は、コストが低くしかしながらハイレート充放電性能の優れた電池用電極基板を提供することである。本発明の今ひとつの目的は、電気抵抗が低く、充放電の繰り返しによるサイクル特性の低下が解消できる電池用電極基板を提供することである。また、本発明は、Niめっき量を減らし、かつ基板の電気抵抗を低くできる電池用電極基板を提供することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、下記(1)〜(4)の電極基板、(5)の製造方法による電極基板、(6)〜(8)の集電体、(9)の電極基板、(10)及び(11)の製造方法による集電体、(12)及び(13)の製造方法による電極基板が、上記の目的を達成することを見出した。
【0008】
(1)織布もしくは不織布の樹脂繊維表面にニッケル膜を被覆した構造を有する電池用電極基板において、ニッケル膜の平均被覆率が85%以上である金属多孔体を用いた電池用電極基板である。
(2)上記樹脂繊維がポリプロピレン(PP)を芯、ポリエチレン(PE)を鞘とした芯鞘複合繊維構造であり、PP/PEの芯鞘比率は2/1〜1/4の範囲であることを特徴とする前記(1)に記載の電池用電極基板である。
(3)上記ニッケル膜の面密度が50g/m以上300g/m以下であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の電池用電極基板である。
(4)上記金属多孔体の孔径がバブルポイント法による細孔径測定において30%累積孔径が20μm以上100μm以下であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか一に記載の電池用電極基板である。
【0009】
(5)織布もしくは不織布の樹脂繊維表面にスパッタリング法、真空蒸着法及びイオンプレーティング法のいずれかの気相法により、面密度0.3g/m〜10g/mのニッケル膜を形成した後、電気メッキ法によりニッケル膜を被覆することにより作製された金属多孔体を使用することを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか一に記載の電池用電極基板の製造方法である。
【0010】
(6)織布もしくは不織布の樹脂繊維表面に平均被覆率が85%以上のニッケル膜を被覆した構造を有する金属多孔体であって、厚み方向に低密度領域と高密度領域のニッケル量の密度の異なる2層以上の層よりなり、低密度領域の厚みが高密度領域の厚みの1.5倍以上である金属多孔体であることを特徴とする集電体である。
(7)上記樹脂繊維がポリプロピレン(PP)を芯、ポリエチレン(PE)を鞘とした芯鞘複合繊維構造であり、PP/PEの芯鞘比率は2/1〜1/4の範囲であることを特徴とする前記(6)に記載の集電体である。
(8)高密度領域のニッケル量の密度が0.8g/cc以上4g/cc以下、低密度領域のニッケル量の密度が0.1g/cc以上0.8g/cc未満であることを特徴とする前記(6)又は(7)に記載の集電体である。
【0011】
(9)前記(6)〜(8)のいずれか一に記載の集電体に電池活物質を充填してなることを特徴とする電池用電極基板である。
【0012】
(10)厚み方向に低密度領域と高密度領域のニッケル量の密度の異なる2層以上の層よりなり、かつ、低密度領域の厚みが高密度領域の厚みの1.5倍以上である樹脂繊維からなる織布もしくは不織布を基材とし、樹脂繊維表面にスパッタリング法、真空蒸着法及びイオンプレーティング法のいずれかの気相法により、面密度0.3g/m〜10g/mのニッケル膜を形成した後、電気メッキ法によりニッケル膜を被覆することにより作製された金属多孔体を使用することを特徴とする前記(6)〜(8)のいずれか一に記載の集電体の製造方法である。
(11)織布もしくは不織布の樹脂繊維表面にスパッタリング法、真空蒸着法及びイオンプレーティング法のいずれかの気相法により、面密度0.3g/m〜10g/mのニッケル膜を形成した後、傾斜電気メッキ法により、厚み方向に低密度領域と高密度領域のニッケル量の密度の異なる2層以上の層よりなり、低密度領域の厚みが高密度領域の厚みの1.5倍以上となるようにニッケル膜を被覆することにより作製された金属多孔体を使用することを特徴とする前記(6)〜(8)のいずれか一に記載の集電体の製造方法である。
【0013】
(12)厚み方向に低密度領域と高密度領域のニッケル量の密度の異なる2層以上の層よりなり、かつ、低密度領域の厚みが高密度領域の厚みの1.5倍以上である樹脂繊維からなる織布もしくは不織布を基材とし、樹脂繊維表面にスパッタリング法、真空蒸着法及びイオンプレーティング法のいずれかの気相法により、面密度0.3g/m〜10g/mのニッケル膜を形成した後、電気メッキ法によりニッケル膜を被覆することにより作製された金属多孔体を用いて集電体を作製し、該集電体に電池活物質を充填することを特徴とする前記(9)に記載の電池用電極基板の製造方法である。
(13)織布もしくは不織布の樹脂繊維表面にスパッタリング法、真空蒸着法及びイオンプレーティング法のいずれかの気相法により、面密度0.3g/m〜10g/mのニッケル膜を形成した後、傾斜電気メッキ法により、厚み方向に低密度領域と高密度領域のニッケル量の密度の異なる2層以上の層よりなり、低密度領域の厚みが高密度領域の厚みの1.5倍以上となるようにニッケル膜を被覆することにより作製された金属多孔体を用いて集電体を作製し、該集電体に電池活物質を充填することを特徴とする前記(9)に記載の電池用電極基板の製造方法である。
【0014】
樹脂繊維を用いた金属多孔体を使用して電池用電極基板を製造した場合に、繊維表面にニッケル膜が被覆されない部分があると、基板の電気抵抗が高くなる。その上、この電極基板を用いて製造した電池では、電池充放電による基板の膨張収縮により、膜の脱落剥離が発生する。このことによって、さらに電気抵抗が高くなり、電池性能がサイクルを追うごとに劣化する。本発明者らは、樹脂繊維の金属被覆率と電気抵抗及びサイクル特性の相関を詳細に調べた結果、繊維が85%以上の平均被覆率であれば、電極基板の初期抵抗は低く、サイクル後の電気抵抗上昇も小さく、優れた電池性能が得られることが分かった。本発明の電池用電極基板は、これを実現したものである。
【0015】
また、電池用電極基板に要求される機能は、電池反応を起こす活物質材料の保持と電子の集電が主要機能であるが、各々の機能は均一な不織布構造でも実現できるが、活物質材料の保持を主目的とした低密度領域層とリードへの電子集電を主目的とした高密度領域層の複数領域からなる粗密構造を有する織布又は不織布構造体を用いることで、より性能向上が実現できる。このとき、電池容量を確保するためにはより多くの活物質材料を充填することが必要であることから、低密度領域層は活物質の充填量が少ない高密度領域層の1.5倍以上の厚みがあればよい。なお、本発明の金属多孔体の粗密構造例を図4−A、Bに示す。
【0016】
樹脂繊維のニッケル膜による被覆率を85%以上とするためには、樹脂繊維が、ポリプロピレン(PP)を芯、ポリエチレン(PE)を鞘とした芯鞘複合繊維構造であることが好ましい。同時に、PP/PEの芯鞘比率は、2/1〜1/4の範囲であることが望ましい。このような樹脂繊維を用いることによって、繊維間の強固な結合による導電性向上を図ることができ、ニッケル膜の被覆率を85%以上とすることが確実となる。加えて、電池に使用する際に、電池中の強アルカリ中で溶出や分解の無い材質が必要であるため、この樹脂繊維は好適である。
【0017】
このような芯鞘複合繊維構造の樹脂繊維では、樹脂繊維間が強固に接着しているため、強度特性が良好である。さらに、ニッケル膜を被覆した時の繊維間の導電パスが十分に確保されるため電気抵抗が小さくできる。従来のように繊維間が接着せずに単に接触しているだけの場合では、電気メッキによるニッケル膜被覆が不均一になり、最悪の場合にはニッケル膜が被覆されない繊維が生じることで基板としての電気抵抗が高くなる。これに対して、PP/PE芯鞘複合繊維構造であれば、鞘部分のPEは芯部のPPより低融点であるため、織布もしくは不織布を熱処理することにより、多孔体構造を保持した状態で表層のPE層を融解させることができ、繊維間の接着を強固にできる。
【0018】
本発明の電極基板において、ニッケル膜の面密度は、50g/m以上300g/m以下であることが望ましい。本発明者らの実験によると、実際に電池に用いた場合のニッケル膜の面密度には最適量があり、50g/m未満では電極の強度及び電気抵抗が不十分となる可能性がある。一方300g/mを超えると、ニッケル膜が硬いため柔軟性が失われ、繊維が電池セパレータを突き破り短絡不良を生じる恐れがあるためである。ニッケル膜の面密度をこの範囲に収まるように製造すれば、ニッケル量を少なくできることで柔軟性を保持し電池の短絡を防止できる。また高価なニッケル量を減らせるのでコスト低減も可能である。また、ニッケル膜の面密度に対して、樹脂繊維の面密度は20g/m以上150g/m以下が適当である。
【0019】
本発明の電極基板では、金属多孔体の孔径が、バブルポイント法による細孔径測定において30%累積孔径(D30)が20μm以上100μm以下を示すものであることが好ましい。この電極基板を電池に使用した際に、孔径に最適範囲があるためであり、D30が20μm未満では電池活物質の充填性が著しく低下する。一方D30が100μmを超えると、集電性能が低下し電池容量低下及びハイレート特性が低下する。
【0020】
ここで、バブルポイント法とは、次のような方法である。多孔体をよく濡らす液体(水またはアルコール)をあらかじめ細孔内に吸収させておき、図3のような器具に設置する。膜の裏側から空気圧をかけて、膜表面に気泡の発生が観察できる圧力を測定する。これをバブルポイントと呼ぶ。以下に示す、液体の表面張力とこの圧力との関係式から細孔径が推算できる。式中、d[m]は細孔径、θは膜素材と溶媒の接触角、γ[N/m]は溶媒の表面張力、ΔP[Pa]はバブルポイント圧力である。
【0021】
【数1】

【0022】
本発明の電極基板を製造するには、次のような方法が好適である。まず、上記のような樹脂繊維よりなる織布もしくは不織布に、スパッタリング法、真空蒸着法及びイオンプレーティング法のいずれかの気相法で面密度0.3g/m以上10g/m以下のニッケル膜を形成する。続けて電気メッキ法によりニッケル膜をさらに形成し、金属多孔体を作製する。気相法によれば、高エネルギーを有したニッケル粒子を繊維表面に衝突させるため密着性に優れかつ均一な導電層が形成できる。さらに、上記のような芯鞘複合繊維構造の効果により、その後の電気メッキにより85%以上の被覆率のニッケル膜が形成できる。
【0023】
上記のような芯鞘複合繊維構造の樹脂繊維では、樹脂繊維間が強固に接着しているため、強度特性が良好である。さらに、ニッケル膜を被覆した時の繊維間の導電パスが十分に確保されるため電気抵抗が小さくできる。従来のように繊維間が接着せずに単に接触しているだけの場合では、電気メッキによるニッケル膜被覆が不均一になり、最悪の場合にはニッケル膜が被覆されない繊維が生じることで基板としての電気抵抗が高くなる。これに対して、PP/PE芯鞘複合繊維構造であれば、鞘部分のPEは芯部のPPより低融点であるため、織布もしくは不織布を熱処理することにより、多孔体構造を保持した状態で表層のPE層を融解させることができ、繊維間の接着を強固にできる。
【0024】
本発明の集電体において、高密度領域の密度は0.8g/cc以上4g/cc以下、低密度領域の密度は0.1g/cc以上0.8g/cc未満であることが望ましい。
本発明者らの実験によると、本発明の集電体を実際に電池に用いた場合の高密度領域と低密度領域の密度には最適量があり、高密度領域のニッケル量の密度が0.8g/cc未満では電子の集電性に格別な効果が見られないこと、4g/cc以上では充填できる活物質量が少なくなり電池容量が低下することとニッケル膜が硬いため柔軟性が失われ繊維が電池セパレータを突き破り短絡不良を生じる恐れがあるためである。さらに、低密度領域のニッケル量の密度が0.1g/cc未満では繊維全面に均一なニッケル膜が形成できないこと、0.8g/cc以上では活物質の充填量が少なくなり電池容量が低下することとニッケル膜が硬くなるため繊維の破断等が生じ長期サイクルにより集電性が低下し電池容量の低下を来たすためである。
【0025】
本発明の集電体あるいは電極基板を製造するには、次のような方法が好適である。
まず、厚み方向に低密度領域と高密度領域のニッケル量の密度の異なる2層以上の層よりなり、低密度領域の厚みが高密度領域の厚みの1.5倍以上である樹脂繊維からなる織布もしくは不織布を基材として、スパッタリング法、真空蒸着法及びイオンプレーティング法のいずれかの気相法で面密度0.3g/m以上10g/m以下のニッケル膜を形成する。続けて電気メッキ法によりニッケル膜をさらに形成し、金属多孔体を作製する。気相法によれば、高エネルギーを有したニッケル粒子を繊維表面に衝突させるため、密着性に優れかつ均一な導電層が形成できる。さらに、上記のような芯鞘複合繊維構造の効果により、その後の電気メッキにより85%以上の被覆率のニッケル膜が形成できる。また、粗密構造を有する織布もしくは不織布は、湿式法、乾式法問わず、用いる樹脂繊維の繊維径や繊維密度を調整することで層状にニッケル量の密度の異なる構造を作製することができる。
【0026】
ニッケル膜の平均被覆率が85%以上である金属多孔体を使用する本発明の電極基板の例について、観察した金属多孔体構造を図1及び図2に示す。図1は、本発明の電極基板の金属多孔体をエポキシ樹脂で埋め込んだ後に研磨加工することにより厚み方向の断面組織を光学顕微鏡にて観察した結果である。ほぼ一定の厚さのニッケル膜が白い幅のある線となって現れており、この膜で包まれているのが樹脂繊維である。樹脂繊維のニッケル膜に覆われていない部分は、白い線が途切れた部分として認識できる。この断面図から、樹脂繊維の表面の85%以上がニッケル膜で被覆されていることが確認される。ここで被覆率の評価方法は、図1に示す断面組織から無作為抽出した繊維20本について樹脂繊維外周のNiで覆われた白い部分の長さを分母、途切れた部分の長さを分子とした割合を算出し、1から該割合を引いた値を百分率として算出することにより行った。
図2は、本発明の電極基板の金属多孔体構造を拡大したSEM観察像である。繊維同士が強固に結合している様子が見て取れる。
また、本発明の集電体の例について、金属多孔体構造の断面模式図を図4に示す。
【0027】
さらに、本発明者らは検討の結果、本発明の別の態様として下記(14)〜(18)の電池用電極基板によっても上記の課題が解決できることを見出した。
(14)不織布樹脂繊維の表面にニッケル膜を被覆した構造を有する電池用電極基板において、電気抵抗の縦横比に異方性がある金属多孔体を用いたことを特徴とする電池用電極基板である。
(15)上記電気抵抗の縦横比が2倍以上である金属多孔体を用いたことを特徴とする前記(14)に記載の電池用電極基板である。
ここで電気抵抗の縦横比に異方性を持たせることにより、電気抵抗を低減する必要がある方向の抵抗を下げ、抵抗を下げる必要がない方向の抵抗を上げることにより、少ないニッケル量で低い電気抵抗をもつ電池用基板を得ることができる。更に、電気抵抗の縦横比を2倍以上とすることにより、ニッケル被覆量を大幅に減少させても、所望の電気特性が得られる。
【0028】
(16)上記不織布樹脂繊維が、複数層のウェブを積層することにより構成され、当該複数層のウェブが進行方向の軸で12°以下で交差するように形成されたことを特徴とする前記(14)又は(15)に記載の電池用電極基板である。
ウェブ形成時における接触する各ウェブ同士の進行方向の軸を12°以下とすることにより、不織布繊維が一方向に揃い、ウェブ形成時の進行方向の電気抵抗を小さくすることができ、2倍以上の電気抵抗縦横比をもつ基板が得られる。
【0029】
(17)上記不織布樹脂繊維が、ポリプロピレン(PP)を芯とし、ポリエチレン(PE)を鞘とした芯鞘複合繊維構造であり、PP/PEの芯鞘比率が0.8以下であることを特徴とする前記(14)〜(16)のいずれか一に記載の電池用電極基板である。
ウェブの進行方向を揃えて不織布を製造すると、不織布繊維の交差点の結合角度が小さくなり、縦横方向の平均電気抵抗が高くなる問題が生じるが、PP/PE比を0.8以下とすることにより繊維交差点の結合が高まり、交差角度が30°以上の場合と同等の平均電気抵抗が得られる。これにより本発明の不織布構造の特徴がより明確に現われる。
【0030】
(18)上記不織布樹脂繊維が、円筒型電池に組みこむために金属多孔体の電気抵抗の小さな方向を軸として捲回されたことを特徴とする前記(14)〜(17)のいずれか一に記載の電池用電極基板である。
不織布ウェブの進行方向に対し平行となる軸を中心に捲回することにより、繊維の折れがほとんど無くなり抵抗の増大を抑制することができ、小さな抵抗値が維持されるので、本発明の不織布構造の特徴がより明確に現われる。
【0031】
電気抵抗の縦横比が2倍以上である金属多孔体を使用する、本発明の電極基板を製造する際には、次のような方法を用いることができる。まず、不織布樹脂繊維の製造工程において、カード機などでウェブを形成した後、形成された複数のウェブ層を重ね合わせる時にウェブの進行方向の水平軸が30°未満と成るように積層させる。また、好ましくはこの角度を12°以内になるように積層させる。より好ましくはこの角度を10°以内になるように積層させる。その後、このウェブを加熱・加圧し、熱癒着させることにより巻取りフープ状の不織布を製造する。
その後、真空蒸着、スパッタリング等の真空成膜法、または無電解めっきにより不織布表面に導電性金属の層を形成することにより導電処理を行う。最後にニッケルを電気めっき法により、50g/mから300g/mのニッケル膜を被覆形成し、金属多孔体を作製する。
【発明の効果】
【0032】
本発明によって得られる技術的な効果について以下にまとめる。
本発明の集電体を用いた電池用電極基板によれば、電極基板としての強度及び導電性を確保しつつ、電池の高性能化と低コスト化が可能となる。加えて、本発明によれば、樹脂繊維を芯材として残しているので、強度及び柔軟性に優れた電極基板が得られる。さらに、電子の集電と活物質の保持に適した粗密構造を有することから、高容量かつハイレート充放電性能に優れた電池を実現できる。
また、特に電極を巻回する円筒型電池における製造工程において、本発明の厚み方向の粗密構造により、活物質の充填性の改善及び巻回時の短絡不良の低減が可能となり電池製造コストの低減が可能となる。
【0033】
また、本発明によれば、電気抵抗比を高くすることにより、電気抵抗を低減する必要がある方向の抵抗を下げ、抵抗を下げる必要がない方向の抵抗を上げることにより、少ないニッケル量で低い電気抵抗をもつ電池用基板を得ることができる。
またウェブ形成時の進行方向の軸を12°以下とすることにより、不織布繊維が一方向に揃い、ウェブ形成時の進行方向の電気抵抗が小さくなり、より少ないニッケル量で低い電気抵抗をもつ電池用基板を得ることができる。
またウェブの進行方向を揃えて不織布を製造すると、不織布繊維の交差点の結合角度が小さくなり、電気抵抗が高くなる問題が生じるが、PP/PE比を0.8以下とすることにより繊維交差点の結合が高まり、電気抵抗を小さくすることができる。
【0034】
また不織布ウェブの進行方法に対し直角となる軸を中心に捲回すると不織布繊維が捲回工程で折れることにより、電気抵抗が増大する。一方、平行となる軸を中心に捲回すると繊維の折れがほとんど無くなり抵抗の増大を抑制することができる。
さらに捲回の軸とウェブの進行方向が一致するので、電池の集電方向の抵抗が低下するので、良好な電池の出力特性が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、実施例及び比較例によって本発明を具体的に説明する。
実施例1
樹脂繊維として、繊維径が2.2dtexで芯鞘比が1/1のPP/PE複合繊維からなり30%累積細孔径容積(D30)が36μmの不織布材を用いた。この不織布に、スパッタリング法により0.8g/mのニッケル膜を形成し導電処理を行った。その後、電気メッキ法により繊維表面をニッケル被覆し、No.3〜10の各種金属多孔体電極基板を作製した。作製した不織布構造の金属多孔体の面密度、断面組織より測定したニッケル膜の被覆率及び電気抵抗値を以下の表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
次に、表1のNo.3〜10のサンプル各々の基板を用いて、Ni水素電池のニッケル極を作製した。水酸化ニッケルを主とする活物質を充填した後、表面を平滑化しその後120℃で1時間乾燥した。得られた電極は1トン/cmの圧力で加圧し、縦長さ180mm、横幅220mm、厚さ0.6mmとした。このニッケル極それぞれ5枚と、相手極として公知のミッシュメタルニッケル(MmNi)系水素吸蔵合金極6枚、親水化処理PP不織布セパレータを用いて、角型密閉形ニッケル水素電池を構成した。電解液として比重1.3のKOH水溶液に25g/Lの水酸化リチウムを溶解して用いた。
【0038】
このように製造した各電池は、電極に使用した表1のサンプルNoと対応して、それぞれの電池Noを3B、4B、5B…とする。各電池の放電電流10Aと150Aの際の放電電圧と容量を調べた。また寿命試験として10A放電において1000サイクル後の容量維持率を評価した。結果を以下の表2に示す。
【0039】
【表2】

【0040】
またこれらの電池を用いて、3000サイクルまで充放電を繰り返したところ、電池10Bは1653サイクル目で短絡したが、その他の電池は問題なく充放電が可能であった。以上の結果より本発明の電池用電極基板は優れた特性を示すことが明らかとなった。
【0041】
比較例1
上記実施例1との比較として、ニッケル膜の被覆率の小さい金属多孔体電極基板No.1及び2を、被覆率を小さくした以外は実施例1と同様にして製造した。これらの基板の、金属多孔体の面密度、ニッケル膜の被覆率及び電気抵抗値を実施例と共に上記表1に示した。また、これらの基板を用いて、実施例と同様にNi水素電池を製造し、評価を行った。結果を実施例と共に上記表2に示す。
【0042】
実施例2
下記表3に示した、No.11〜18の各種仕様の不織布を用いて、スパッタリング法により1.5g/mのニッケル膜を形成しそれぞれに導電処理を行った。その後、電気メッキ法により繊維表面を平均被覆率95%でニッケル被覆し、各種金属多孔体電極基板を得た。得られた各種基板の電気抵抗値を表3に示す。尚、全ての金属多孔体基板のニッケル面密度は180g/mとした。
【0043】
【表3】

【0044】
実施例1と同様に、表3掲載のNo.11〜18の基板を用いて、ニッケル水素電池を作製した。各電池は、実施例1と同様に、表3のサンプルNoと対応して、それぞれの電池Noを11B、12B、13B…とする。これらについて性能評価を行った結果を以下の表4に示す。
【0045】
【表4】

【0046】
表4の結果から分かるように、電池No.15Bでは、基板の孔径が小さいため十分な活物質が充填できなかったため容量が小さくなった。また電池No.16Bでは基板の孔径が大きいため、活物質と隣接した基板繊維との距離が大きくなることで集電性が低下するため150Aのハイレート放電において容量低下を招いた。
【0047】
実施例3
樹脂繊維として、繊維径が0.8dtexで芯鞘比が3/7のPP/PE複合繊維を用いて厚み0.1mmで目付け40g/mの高密度層、繊維径が3.6dtexで芯鞘比が5/5のPP/PE複合繊維を用いて厚み0.7mmで目付け35g/mの低密度層の2層構造からなる不織布を作製した。次いで、この不織布に、スパッタリング法により1.8g/mのニッケル膜を形成し導電処理を行った。その後、電気メッキ法により繊維表面をニッケル被覆し、No.21〜25の各種金属多孔体よりなる集電体を作製した。作製した不織布構造の金属多孔体の密度、断面組織より測定したニッケル膜の被覆率及び電気抵抗値を以下の表5に示す。
【0048】
【表5】

【0049】
次に、表5のNo.21〜25のサンプル各々の集電体を用いて、Ni水素電池のニッケル極を作製した。水酸化ニッケルを主とする活物質を充填した後、表面を平滑化しその後120℃で1時間乾燥した。得られた電極は1トン/cmの圧力で加圧し、縦長さ180mm、横幅220mm、厚さ0.4mmとした。このニッケル極それぞれ5枚と、相手極として公知のミッシュメタルニッケル(MmNi)系水素吸蔵合金極6枚、親水化処理PP不織布セパレータを用いて、角型密閉形ニッケル水素電池を構成した。電解液として比重1.3のKOH水溶液に25g/Lの水酸化リチウムを溶解して用いた。
【0050】
このように製造した各電池は、電極に使用した表5のサンプルNoと対応して、それぞれの電池Noを21B、22B、23B…とする。各電池の放電電流10Aと200Aの際の放電電圧と容量を調べた。また寿命試験として50A放電において1000サイクル後の容量維持率を評価した。結果を以下の表6に示す。
【0051】
【表6】

【0052】
比較例2
ニッケル膜の被覆率の小さい集電体No.21は比較例である。
【0053】
実施例4
下記表7に示した、No.26〜30の各種仕様の不織布を用いて、スパッタリング法により1.0g/mのニッケル膜を形成しそれぞれに導電処理を行った。その後、電気メッキ法により繊維表面を平均被覆率95%でニッケル被覆し、各種金属多孔体電極基板を得た。得られた各種基板の電気抵抗値を表7に示す。尚、全ての金属多孔体電極基板は、低密度領域が厚み0.6mmで密度0.15g/cc、高密度領域が厚み0.1mmで密度1.7g/ccとした。
【0054】
【表7】

【0055】
実施例3と同様に、表7掲載のNo.26〜30の基板を用いて、ニッケル水素電池を作製した。各電池は、実施例3と同様に、表7のサンプルNoと対応して、それぞれの電池Noを26B、27B、28B…とする。これらについて性能評価を行った結果を以下の表8に示す。
【0056】
【表8】

【0057】
実施例5
樹脂繊維として、繊維径が0.6dtexで芯鞘比が3/7のPP/PE複合繊維を用いて厚み0.1mmで目付け35g/mの高密度層、繊維径が4.2dtexで芯鞘比が5/5のPP/PE複合繊維を用いて厚み0.6mmで目付け30g/mの低密度層の2層構造からなる不織布を作製した。次いで、この不織布に、スパッタリング法により1.3g/mのニッケル膜を形成し導電処理を行った。その後、電気メッキ法により繊維表面をニッケル被覆し、処理材とアノード電極間距離を調整することによりNiメッキ量を調整しNo.31〜36の各種金属多孔体よりなる集電体を作製した。作製した不織布構造の金属多孔体の密度、断面組織より測定したニッケル膜の被覆率及び電気抵抗値を以下の表9に示す。
【0058】
【表9】

【0059】
表9の集電体を用いて実施例3と同様にニッケル水素電池を作製した。各電池は、表9のサンプルNoと対応して、それぞれの電池Noを31B、32B、33B…とする。これらについて性能評価を行った結果を以下の表10に示す。
【0060】
【表10】

【0061】
電池36Bをサイクル試験後解体調査した結果、低密度部のニッケル膜の一部に破断や脱落が生じていることが確認でき、これらがサイクル特性の低下をきたしたものと考えられる。
【0062】
実施例6
樹脂繊維として、繊維径が2.2dtexで芯鞘比が1/1のPP/PE複合繊維からなる厚み0.4mmの不織布材を用いた。この不織布に、スパッタリング法により0.8g/mのニッケル膜を形成し導電処理を行った。その後、以下に示す傾斜電気メッキ法により繊維表面をニッケル被覆し、No.37〜40の各種金属多孔体電極基板を作製した。作製した不織布構造の金属多孔体の高密度側と低密度側のメッキ厚を10箇所測定し、その平均値を以下の表11に示す。尚、メッキ厚の測定は、電極基板の金属多孔体をエポキシ樹脂で埋め込んだ後に研磨加工することにより厚み方向の断面組織を光学顕微鏡にて観察することにより行なった。また同時に評価したニッケル膜の平均被覆率は97%であった。
【0063】
【表11】

【0064】
表11において、No.38のサンプルは、上記導電処理を行なった不織布を室温のイオン交換水に浸漬することにより脱泡処理を行なった後、ニッケル濃度100G・Lのスルファミン酸ニッケル浴中において、ワークの両面側にニッケルのアノードケースを配置し、印加電圧を調整し、20dA/cmと10dA/cmの電流密度に設定することにより、両面側でメッキ厚の異なる電気メッキを行なった。
【0065】
同様に両面の電流密度を15dA/cmとして、両面のメッキ厚を均一化した比較サンプルNo.37を製作した。
また、No.39のサンプルでは、サンプルのワークとアノードケースの間の距離を片側は25mm、他方側を60mmとすることにより両面側でメッキ厚の異なる電気メッキを行なった。
更に、No.40のサンプルでは電流密度は15dA/cmと両面で均一にしたが、アノードケースの長さを片側を2.4m、他方を1.4mとし、このアノードケース間を8cm/分速度でワークを通過させながら連続的にメッキすることにより作製した。
【0066】
表11の集電体を用いて実施例3と同様にニッケル水素電池を作製した。各電池は表11のサンプルNoと対応してそれぞれ電池Noを37B、38B、39B・・とする。これらについて性能評価を行った結果を以下の表12に示す。
【0067】
【表12】

【0068】
本発明の集電体はそのまま或いは電池活物質以外の物質例えば触媒物質を充填することにより、触媒電極、水処理電極その他の電極基板に利用することができる。
【0069】
実施例7
下記表13に示す各種の金属多孔体を上述の製造方法によって作製した。この際にウェブの進行方向の軸が、No.41〜48(実施例)においては10°以下、No.49〜52(比較例)においては30°以上になるようにウェブを積層した、このようにして得られた各金属多孔体について、電気抵抗を計測し、その結果を表13に示す。
【0070】
【表13】

【0071】
次いで、表13の金属多孔体を用いてNi水素電池のニッケル極を作製した。水酸化ニッケルを主とする活物質を充填した後、表面を平滑化した後120℃で1時間乾燥した。得られた電極は1トン/cmの圧力で加圧し、縦長さ70mm、横幅150mm、厚さ0.4mmとした。このニッケル極をそれぞれ10枚、相手極として公知のミッシュメタルニッケル(MmNi)系水素吸蔵合金極11枚、親水化処理PP不織布セパレータを用いて角型密閉形ニッケル水素電池を構成した。尚、電極リードは電気抵抗の低い縦方向集電となるようにそれぞれの電極にリードを溶接した。電解液として比重1.3のKOH水溶液に25g/Lの水酸化リチウムを溶解して用いた。
このように製造した各電池は、電極に使用した表13のサンプルNo.に対応して、それぞれ電池No.41B、42B、43B・・・とする。各電池の10Aと100Aの際の放電電圧と容量を調べた。また寿命試験として50A放電において1000サイクル後の容量維持率を評価した結果を表14に示す。
【0072】
【表14】

【0073】
実施例8
表13の金属多孔体No.41を用いて円筒型Ni水素電池を作製した。ニッケル極は水酸化ニッケルを主とする活物質を充填した後、表面を平滑化した後120℃で1時間乾燥した。得られた電極は1トン/cmの圧力で加圧し、縦長さ40mm、横幅350mm、厚さ0.3mmとした。このニッケル極と公知のMmNi系水素吸蔵合金極、親水化処理PP不織布セパレータを捲回して円筒密閉形ニッケル水素電池を構成した。電解液として比重1.3のKOH水溶液に25g/Lの水酸化リチウムを溶解して用いた。ここで、ニッケル極を金属多孔体の電気抵抗の低い縦方向を捲回の軸方向とした電池を1SBA、電気抵抗の低い縦方向を捲回方向とした電池を1SBBとする。各電池の1A放電と10A放電の際の放電電圧と容量を調べた。また寿命試験として1A放電において500サイクル後の容量維持率を評価した結果を表15に示す。
【0074】
【表15】

【0075】
本発明により少ないニッケル量で低い電気抵抗を持つ電池用基板を得ることができるので、アルカリ二次電池などに利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】図1は本発明の電池用電極の金属多孔体を観察した断面像である。
【図2】図2は本発明の電池用電極の金属多孔体の観察像である。
【図3】図3はバブルポイント法を説明するための図である。
【図4】図4は、本発明の集電体の金属多孔体の断面模式図である。Aは2層構造で、Bは高密度層を低密度層で挟んだ3層構造の例である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
織布もしくは不織布の樹脂繊維表面にニッケル膜を被覆した構造を有する電池用電極基板において、ニッケル膜の平均被覆率が85%以上である金属多孔体を用いた電池用電極基板。
【請求項2】
上記樹脂繊維がポリプロピレン(PP)を芯、ポリエチレン(PE)を鞘とした芯鞘複合繊維構造であり、PP/PEの芯鞘比率は2/1〜1/4の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の電池用電極基板。
【請求項3】
上記ニッケル膜の面密度が50g/m以上300g/m以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電池用電極基板。
【請求項4】
上記金属多孔体の孔径がバブルポイント法による細孔径測定において30%累積孔径が20μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一に記載の電池用電極基板。
【請求項5】
織布もしくは不織布の樹脂繊維表面にスパッタリング法、真空蒸着法及びイオンプレーティング法のいずれかの気相法により、面密度0.3g/m〜10g/mのニッケル膜を形成した後、電気メッキ法によりニッケル膜を被覆することにより作製された金属多孔体を使用することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載の電池用電極基板の製造方法。
【請求項6】
織布もしくは不織布の樹脂繊維表面に平均被覆率が85%以上のニッケル膜を被覆した構造を有する金属多孔体であって、厚み方向に低密度領域と高密度領域のニッケル量の密度の異なる2層以上の層よりなり、低密度領域の厚みが高密度領域の厚みの1.5倍以上である金属多孔体であることを特徴とする集電体。
【請求項7】
上記樹脂繊維がポリプロピレン(PP)を芯、ポリエチレン(PE)を鞘とした芯鞘複合繊維構造であり、PP/PEの芯鞘比率は2/1〜1/4の範囲であることを特徴とする請求項6に記載の集電体。
【請求項8】
高密度領域のニッケル量の密度が0.8g/cc以上4g/cc以下、低密度領域のニッケル量の密度が0.1g/cc以上0.8g/cc未満であることを特徴とする請求項6又は7に記載の集電体。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか一に記載の集電体に電池活物質を充填してなることを特徴とする電池用電極基板。
【請求項10】
厚み方向に低密度領域と高密度領域のニッケル量の密度の異なる2層以上の層よりなり、かつ、低密度領域の厚みが高密度領域の厚みの1.5倍以上である樹脂繊維からなる織布もしくは不織布を基材とし、樹脂繊維表面にスパッタリング法、真空蒸着法及びイオンプレーティング法のいずれかの気相法により、面密度0.3g/m〜10g/mのニッケル膜を形成した後、電気メッキ法によりニッケル膜を被覆することにより作製された金属多孔体を使用することを特徴とする請求項6〜8のいずれか一に記載の集電体の製造方法。
【請求項11】
織布もしくは不織布の樹脂繊維表面にスパッタリング法、真空蒸着法及びイオンプレーティング法のいずれかの気相法により、面密度0.3g/m〜10g/mのニッケル膜を形成した後、傾斜電気メッキ法により、厚み方向に低密度領域と高密度領域のニッケル量の密度の異なる2層以上の層よりなり、低密度領域の厚みが高密度領域の厚みの1.5倍以上となるようにニッケル膜を被覆することにより作製された金属多孔体を使用することを特徴とする、請求項6〜8のいずれか一に記載の集電体の製造方法。
【請求項12】
厚み方向に低密度領域と高密度領域のニッケル量の密度の異なる2層以上の層よりなり、かつ、低密度領域の厚みが高密度領域の厚みの1.5倍以上である樹脂繊維からなる織布もしくは不織布を基材とし、樹脂繊維表面にスパッタリング法、真空蒸着法及びイオンプレーティング法のいずれかの気相法により、面密度0.3g/m〜10g/mのニッケル膜を形成した後、電気メッキ法によりニッケル膜を被覆することにより作製された金属多孔体を用いて集電体を作製し、該集電体に電池活物質を充填することを特徴とする請求項9に記載の電池用電極基板の製造方法。
【請求項13】
織布もしくは不織布の樹脂繊維表面にスパッタリング法、真空蒸着法及びイオンプレーティング法のいずれかの気相法により、面密度0.3g/m〜10g/mのニッケル膜を形成した後、傾斜電気メッキ法により、厚み方向に低密度領域と高密度領域のニッケル量の密度の異なる2層以上の層よりなり、低密度領域の厚みが高密度領域の厚みの1.5倍以上となるようにニッケル膜を被覆することにより作製された金属多孔体を用いて集電体を作製し、該集電体に電池活物質を充填することを特徴とする請求項9に記載の電池用電極基板の製造方法。
【請求項14】
不織布樹脂繊維の表面にニッケル膜を被覆した構造を有する電池用電極基板において、電気抵抗の縦横比に異方性がある金属多孔体を用いたことを特徴とする電池用電極基板。
【請求項15】
前記電気抵抗の縦横比が2倍以上である金属多孔体を用いたことを特徴とする請求項14に記載の電池用電極基板。
【請求項16】
上記不織布樹脂繊維が、複数層のウェブを積層することにより構成され、当該複数層のウェブが進行方向の軸で12°以下で交差するように形成されたことを特徴とする請求項14又は15に記載の電池用電極基板。
【請求項17】
上記不織布樹脂繊維が、ポリプロピレンを芯とし、ポリエチレンを鞘とした芯鞘複合繊維構造であり、ポリプロピレン/ポリエチレンの芯鞘比率が0.8以下であることを特徴とする請求項14〜16のいずれか一に記載の電池用電極基板。
【請求項18】
上記不織布樹脂繊維が、円筒型電池に組みこむために金属多孔体の電気抵抗の小さな方向を軸として捲回されたことを特徴とする請求項14〜17のいずれか一に記載の電池用電極基板。

【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−310261(P2006−310261A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−345000(P2005−345000)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(591174368)富山住友電工株式会社 (50)
【Fターム(参考)】