説明

雌端子

【課題】 製造コストの増大を招くことなく、電線接続部の耐久性を向上させることができる雌端子を提供する。
【解決手段】本発明に係る雌端子1は、雄端子が挿入される端子接続部100と、雄端子と電気的に接続される電線が接続される電線接続部200とを備える。電線接続部200は、端子接続部100と別体に形成されるとともに、端子接続部100の板厚よりも厚い板厚を有する。端子接続部100は、端子接続部100に挿入される雄端子の挿入方向IDに延在する面(上面111、下面112又は側面113,114)に沿って設けられ、電線接続部200が固定される固定部130を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雄端子と電気的に接続する雌端子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、雄端子と電気的に接続する雌端子として、例えば、特開2002−100430号公報(特許文献1)及び特開2011−44256号公報(特許文献2)に記載された技術が提案されている。
【0003】
この種の雌端子は、雄端子が挿入される端子接続部と、雄端子と電気的に接続される電線が圧着される電線接続部とを備えている。この端子接続部は、内部に組み込まれて雄端子と接触可能な弾性接触部材を備えている。
【0004】
弾性接触部材は、雄端子の挿入方向における一端側に片持ち支持される複数の弾性接触片によって形成されている。端子接続部と電線接続部とは、同一の基材が打ち抜き加工されることによって一体に形成されている。
【0005】
一般的に、基材は、薄板状に形成されている。そして、電線接続部が電線の外周を覆うように、電線接続部を変形させながら電線の外周に加締られることによって、電線が電線接続部に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−100430号公報
【特許文献2】特開2011−44256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来の雌端子では、電線接続部が薄板状に形成されることによって、電線接続部が電線の外周に加締られて大幅に変形するため、必ずしも電線接続部の耐久性を確保できるとは限らなかった。
【0008】
この電線接続部の耐久性を確保するために、打ち抜き加工の際に基材に加える圧力を変化させて、電線接続部に対応する箇所の厚みを厚くすることが考えられる。しかし、電線接続部に対応する箇所を基材に予め設定することや、基材に無駄が生じてしまうため、製造コストの増大を招いてしまうという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、製造コストの増大を招くことなく、電線接続部の耐久性を向上させることができる雌端子の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するため、本発明は、次のような特徴を有している。まず、本発明の第1の特徴は、雄端子が挿入される端子接続部(端子接続部100)と、前記雄端子と電気的に接続される電線が接続される電線接続部(電線接続部200)とを備える雌端子(雌端子1〜3)であって、前記電線接続部は、前記端子接続部と別体に形成されるとともに、前記端子接続部の板厚よりも厚い板厚を有し、前記端子接続部は、前記端子接続部に挿入される前記雄端子の挿入方向(挿入方向ID)に延在する面(上面111、下面112又は側面113,114)に沿って設けられ、前記電線接続部が固定される固定部(固定部130)を有することを要旨とする。
【0011】
かかる特徴によれば、電線接続部は、端子接続部と別体に形成されるとともに、端子接続部の板厚よりも厚い板厚を有している。これにより、電線接続部が端子接続部と同一(薄板状)の基材によって形成される場合と比較して、電線接続部が電線の外周に加締られて大幅に変形しても、電線接続部の耐久性を向上させることができる。
【0012】
また、固定部は、電線接続部と固定される。これにより、打ち抜き加工の際に基材に加える圧力を変化させることなく、端子接続部と電線接続部とを固定できる。このため、電線接続部に対応する箇所を基材に予め設定することや、基材に無駄が生じてしまうことを抑制できる。従って、雌端子の製造コストの増大を招くことがない。
【0013】
本発明の第2の特徴は、本発明の第1の特徴に係り、前記端子接続部は、箱状の本体部(本体部110)と、前記本体部内に組み込まれ、前記雄端子と接触可能な弾性接触部材(弾性接触部材120)とを備え、前記固定部は、前記本体部又は前記弾性接触部材の何れか一方と一体に形成されることを要旨とする。
【0014】
かかる特徴によれば、固定部は、本体部又は弾性接触部材の何れか一方と一体に形成される。これにより、固定部が本体部や弾性接触部材と別体に形成される場合と比較して、本体部や弾性接触部材に固定部を取り付ける作業が不要となり、雌端子の製造コストをより低減させることができる。
【0015】
本発明の第3の特徴は、本発明の第1又は第2の特徴に係り、前記電線接続部は、前記電線の芯線を位置付ける底部(底部210)と、前記底部と連なるとともに、前記底部から立設される加締部(加締部220)とを備え、前記固定部は、前記電線接続部側に向かって突出するとともに、前記加締部の内方に位置する底部の表面と接する当接面(当接面131)を有することを要旨とする。
【0016】
かかる特徴によれば、固定部は、当接面を有している。これにより、固定部と電線接続部との接触面積が増大し、固定部と電線接続部との固定強度を増大させることができる。
【0017】
本発明の第4の特徴は、本発明の第1乃至第3の特徴に係り、前記固定部は、前記端子接続部に挿入される前記雄端子の挿入方向に沿って延在する面に連なる連結部(下面連結部140)と、前記連結部の先端側に位置し、前記連結部よりも前記雄端子の挿入方向に直交する方向に広がる拡広幅部(先端拡広幅部150)とを有することを要旨とする。
【0018】
かかる特徴によれば、固定部は、拡広幅部を有している。これにより、固定部と電線接続部との接触面積がさらに増大し、固定部と電線接続部との固定強度をさらに増大させることができる。
【0019】
本発明の第5の特徴は、本発明の第1乃至第4の特徴に係り、前記固定部及び前記電線接続部には、凹凸形状が施されることを要旨とする。
【0020】
かかる特徴によれば、固定部及び電線接続部には、凹凸形状が施される。これにより、固定部及び電線接続部が平面状に形成される場合と比較して、固定部と電線接続部との接触面積がさらに増大し、固定部と電線接続部との固定強度をさらに増大させることができる。
【0021】
加えて、固定部の凹凸と電線接続部の凹凸とが噛み合うため、外部からの振動(例えば、車両の振動)等が生じても、固定部と電線接続部とが互いにズレ難くなる。このため、固定部と電線接続部との固定強度をより増大させることができる。加えて、電線接続部に加締られる電線が端子接続部内で動き難くなり、電線に導通接続される弾性接触部材と雄端子との接続信頼性をも向上させることができる。
【0022】
本発明の第6の特徴は、本発明の第1乃至第5の特徴に係り、前記電線接続部には、前記電線接続部の表面から凹むことによって形成されるとともに、前記固定部が嵌合される嵌合凹部(嵌合凹部230)が形成されることを要旨とする。
【0023】
かかる特徴によれば、電線接続部には、固定部が嵌合される嵌合凹部が形成される。これにより、外部からの振動(例えば、車両の振動)等が生じても、固定部と電線接続部とが互いにズレ難くなる。このため、固定部と電線接続部との固定強度をより増大させることができる。加えて、電線接続部に加締られる電線が端子接続部内で動き難くなり、電線に導通接続される弾性接触部材と雄端子との接続信頼性をも向上させることができる。
【0024】
本発明の第7の特徴は、本発明の第1乃至第6の特徴に係り、前記電線接続部には、前記電線接続部の表面から突出する突起部(突起部211)が形成され、前記固定部には、前記突起部が挿入される挿入孔(挿入孔133)が形成され、前記突起部は、前記挿入孔に挿入された後に先端が変形することによって、前記固定部を前記電線接続部に固定することを要旨とする。
【0025】
かかる特徴によれば、突起部は、挿入孔に挿入された後に先端が変形することによって、固定部を電線接続部に固定する。これにより、突起部の延在方向に対して、挿入孔から突起部が抜け難くなるとともに、固定部と電線接続部との固定強度を確保することができる。
【0026】
本発明の第7の特徴は、本発明の第1の特徴に係り、前記固定部は、前記端子接続部から前記電線接続部側に最も突出する縁部(縁部135)を備え、前記縁部は、固相接合又は溶接によって前記電線接続部と固定されることを要旨とする。
【0027】
かかる特徴によれば、縁部は、固相接合又は溶接によって電線接続部と固定される。これにより、端子接続部から突出される固定部の突出量をできる限り少なくでき、固定部の基材を削減できる。このため、雌端子の製造コストをより低減させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の特徴によれば、製造コストの増大を招くことなく、電線接続部の耐久性を向上させることができる雌端子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、第1実施形態に係る雌端子1を示す斜視図・断面図である。
【図2】図2は、第1実施形態に係る雌端子1を示す斜視図・断面図である。
【図3】図3は、第1実施形態に係る雌端子1を示す正面図・断面図である。
【図4】図4は、第2実施形態に係る雌端子2を示す斜視図・展開平面図である。
【図5】図5は、第2実施形態に係る固定部130及び電線接続部200のみを示す斜視図である。
【図6】図6は、第2実施形態に係る固定部130及び電線接続部200を示す断面図である。
【図7】図7は、第2実施形態に係る固定部130及び電線接続部200を示す正面図である。
【図8】図8は、第2実施形態の変更例に係る雌端子2を示す斜視図である。
【図9】図9は、第2実施形態の変更例に係る固定部130及び電線接続部200のみを示す分解斜視図である。
【図10】図10は、第2実施形態の変更例に係る固定部130及び電線接続部200を示す断面図である。
【図11】図11は、第2実施形態の変更例に係る固定部130及び電線接続部200を示す正面図である。
【図12】図12は、第3実施形態に係る雌端子3を示す斜視図・分解斜視図である。
【図13】図13は、第3実施形態に係る雌端子3の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、本発明に係る雌端子の実施形態について、図面を参照しながら説明する。具体的には、(1)第1実施形態、(2)第2実施形態、(3)第3実施形態、(4)その他の実施形態について説明する。
【0031】
なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0032】
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。
【0033】
(1)第1実施形態
まず、第1実施形態に係る雌端子1の構成について、図面を参照しながら説明する。図1(a)は、第1実施形態に係る雌端子1を示す斜視図(突起部211の変形前)であり、図1(b)は、図1(a)のA−A断面図である。図2(a)は、第1実施形態に係る雌端子1を示す斜視図(突起部211の変形後)であり、図2(b)は、図2(a)のB−B断面図である。図3(a)は、第1実施形態に係る雌端子1を示す正面図であり、図3(b)は、図3(a)のC−C断面図であり、図3(c)は、図3(a)のD−D断面図である。なお、第1実施形態に係る雌端子1は、車両等の電気系統に用いられる高圧電線を保持して雄端子(不図示)と電気的に接続する端子である。
【0034】
(1.1)雌端子1の構成
図1〜図3に示すように、雌端子1は、雄端子が挿入される端子接続部100と、雄端子と電気的に接続される電線(不図示)が接続される電線接続部200とを備えている。
【0035】
端子接続部100は、本体部110と、本体部110内に組み込まれ、雄端子と接触可能な弾性接触部材120とを備えている。
【0036】
本体部110は、内部に挿入される雄端子の挿入方向IDに沿って延在する面(上面111、下面112、側面113,114)に囲まれた矩形状の箱状に形成されている。端子接続部100の上面111及び下面112には、弾性変形可能な弾性接触部材120がそれぞれ設けられている。
【0037】
弾性接触部材120は、図3に示すように、雄端子の挿入方向IDにおける一端側に片持ち支持される複数の弾性接触片121によって形成されている。この弾性接触片121は、本体部110に雄端子が挿入されると、弾性変形して復元力で雄端子に接触する。つまり、上面111に設けられる弾性接触片121Aと、下面112に設けられる弾性接触片121Bとにより雄端子を挟持することによって、弾性接触部材120は、雄端子と接触するようになっている。なお、第1実施形態では、弾性接触部材120は、本体部110と一体によって形成されている。
【0038】
このような端子接続部100は、電線接続部200が固定される固定部130を有している。なお、固定部130の詳細については、後述する。
【0039】
電線接続部200は、雄端子と電気的に接続される電線(不図示)が圧着される。なお、電線接続部200は、圧着以外の溶着等により電線が接続される電線接続部に代わってもよい。
【0040】
電線接続部200は、端子接続部100と別体に形成されている。電線接続部200は、板状をなしており、端子接続部100の板厚(端子接続部100を形成する基材の板厚例えば、0.8mm))よりも厚い板厚(例えば、2.0mm)を有している。
【0041】
電線接続部200は、電線の芯線(不図示)を位置付ける底部210と、底部210と連なるとともに、底部210から曲げ加工により立設して電線の芯線及び被覆材を加締める加締部220とを備えている。この加締部220は、折り曲げられて、底部210に位置付けられた電線を包みこむように加締められることによって、電線を底部210に固定できる。
【0042】
底部210及び加締部220の表面(上面)には、雄端子の挿入方向IDに沿って形成されるセレーション部としての凹凸形状が施されている。そして、底部210の表面には、外方(上方)に向かって突出する突起部211が形成されている。突起部211は、雄端子の挿入方向IDに対して直交する直交方向CDの底部210の中心位置に形成されている。
【0043】
(1.2)固定部の構成
図1〜図3に示すように、固定部130は、雄端子の挿入方向IDに沿って延在する面(下面112)に沿って設けられ、言い換えると、電線接続部200側に向かって下面112が延長(突出)することによって形成されている。すなわち、固定部130は、本体部110と一体に形成されている。また、固定部130は、雄端子の挿入方向IDに直交する直交方向CDに沿った幅が略一定であり、電線接続部200と一緒に曲げ加工が施される。
【0044】
固定部130は、電線接続部200の底部210に固定される。図1(b)及び図2(b)に示すように、固定部130は、加締部220の内方に位置する底部210の表面と接する当接面131を有している。この当接面131と、当接面131の裏面側に位置する表面132には、雄端子の挿入方向IDに沿って形成されるセレーション部としての凹凸形状が施されている(図1及び図2参照)。
【0045】
また、図1(b)及び図2(b)に示すように、固定部130には、当接面131から表面132に向かって貫通するとともに、上述した底部210に形成される突起部211が挿入される挿入孔133が形成されている。この挿入孔133の表面132側は、拡径部分133Aが設けられている。
【0046】
そして、図1に示すように、挿入孔133に突起部211が挿入された後、図2に示すように、突起部211の先端は、根元側に変形する(潰される)。これにより、突起部211の先端は、図2(b)に示すように、拡径部分133A内に広がり、固定部130と電線接続部200とが固定される。
【0047】
ここで、固定部130は、電線接続部200(底部210及び加締部220)に曲げ加工が施される際に、電線接続部200と一緒に曲げ加工が施される。これにより、固定部130は、底部210の表面側で折り曲げられて湾曲している。なお、第1実施形態では、曲げ加工が施される前に、固定部130が電線接続部200に固定されているものとする。
【0048】
(1.3)作用・効果
以上説明した第1実施形態では、電線接続部200は、端子接続部100と別体に形成されるとともに、端子接続部100の板厚よりも厚い板厚を有している。これにより、電線接続部200が端子接続部100と同一(薄板状)の基材によって形成される場合と比較して、電線接続部200が電線の外周に加締られて大幅に変形しても、電線接続部200の耐久性を向上させることができる。
【0049】
また、固定部130は、電線接続部200と固定される。これにより、打ち抜き加工の際に基材に加える圧力を変化させることなく、端子接続部100と電線接続部200とを固定できる。このため、電線接続部200に対応する箇所を基材に予め設定することや、基材に無駄が生じてしまうことを抑制できる。従って、雌端子1の製造コストの増大を招くことがない。
【0050】
第1実施形態では、固定部130は、本体部110(下面112)と一体に形成される。これにより、固定部130が本体部110と別体に形成される場合と比較して、本体部110に固定部130を取り付ける作業が不要となり、雌端子1の製造コストをより低減させることができる。
【0051】
第1実施形態では、固定部130は、当接面131を有している。これにより、固定部130と電線接続部200との接触面積が増大し、固定部130と電線接続部200との固定強度を増大させることができる。
【0052】
第1実施形態では、固定部130及び電線接続部200には、凹凸形状が施される。これにより、固定部130及び電線接続部200が平面状に形成される場合と比較して、固定部130と電線接続部200との接触面積がさらに増大し、固定部130と電線接続部200との固定強度をさらに増大させることができる。
【0053】
加えて、固定部130の凹凸と電線接続部200の凹凸とが噛み合うため、外部からの振動(例えば、車両の振動)等が生じても、固定部130と電線接続部200とが互いにズレ難くなる。このため、固定部130と電線接続部200との固定強度をより増大させることができる。加えて、電線接続部200に加締られる電線が端子接続部100内で動き難くなり、電線に導通接続される弾性接触部材120と雄端子との接続信頼性をも向上させることができる。
【0054】
第1実施形態では、突起部211は、挿入孔133に挿入された後に先端が変形することによって、固定部130を電線接続部200に固定する。これにより、突起部の延在方向に対して、挿入孔から突起部が抜け難くなるとともに、固定部130と電線接続部200との固定強度を確保することができる。
【0055】
(2)第2実施形態
次に、第2実施形態に係る雌端子2について、図面を参照しながら説明する。なお、上述した第1実施形態に係る雌端子1と同一部分には同一の符号を付して、相違する部分を主として説明する。
【0056】
(2.1)雌端子2の構成
まず、第2実施形態に係る雌端子2の構成について、図面を参照しながら説明する。図4(a)は、第2実施形態に係る雌端子2を示す斜視図であり、図4(b)は、第2実施形態に係る雌端子2を示す展開平面図である。
【0057】
なお、図4以降の図面(図4〜図12)では、弾性接触部材120(弾性接触片121)については省略され、端子接続部100(本体部110)の形状については模式的に示している。
【0058】
上述した第1実施形態では、固定部130の幅は、直交方向CDに沿って略一定である。これに対して、第2実施形態では、図4に示すように、固定部130の幅は、直交方向CDに沿って一定でない。
【0059】
具体的には、固定部130は、固定部130の展開平面視において、略T字状に形成されている。この固定部130は、本体部110の下面112に連なる下面連結部140と、下面連結部140と連なって固定部130の先端側に位置する先端拡広幅部150とを有している。
【0060】
下面連結部140は、固定部130の平面展開視において、先端拡広幅部150側に向かって徐々に幅広となるように形成されている。先端拡広幅部150は、下面連結部140よりも雄端子の挿入方向IDに直交する直交方向CDに広がっている。
【0061】
電線接続部200には、電線接続部200の表面から凹むことによって形成されるとともに、固定部130が嵌合される嵌合凹部230(図5(a)及び図6(a)参照)が形成されている。この嵌合凹部230の深さは、固定部130の厚さと略同一である。
【0062】
また、嵌合凹部230は、固定部130の平面展開視において、固定部130(下面連結部140の一部及び先端拡広幅部150)と略同一形状を有している。具体的には、嵌合凹部230は、下面連結部140と嵌合される連結凹部231と、先端拡広幅部150と嵌合される先端凹部232とによって構成されている。この先端凹部232の雄端子の挿入方向IDに沿った幅W1は、電線接続部200の雄端子の挿入方向IDに沿った幅W2よりも狭く形成されている。
【0063】
(2.2)固定部130と電線接続部200との固定
次に、上述した固定部130と電線接続部200との固定(嵌合関係)について、図面を参照しながら説明する。図5(a)は、第2実施形態に係る固定部130及び電線接続部200のみを示す分解斜視図であり、図5(b)は、第2実施形態に係る固定部130及び電線接続部200の組立時を示す斜視図であり、図5(c)は、第2実施形態に係る固定部130及び電線接続部200の曲げ加工後を示す斜視図である。図6(a)は、図5(a)のE−E断面図であり、図6(b)は、図5(b)のF−F断面図であり、図6(c)は、図5(c)のG−G断面図である。図7(a)は、図6(a)のE’矢視図であり、図10(b)は、図6(b)のF’矢視図であり、図7(c)は、図6(c)のG’矢視図である。
【0064】
図5(a)、図6(a)及び図7(a)に示すように、固定部130及び電線接続部200は、曲げ加工が施されておらず、すなわち、湾曲していない。図5(b)、図6(b)及び図7(b)に示すように、嵌合凹部230に固定部130を挿入し、嵌合凹部230に固定部130を嵌合させる。具体的には、連結凹部231に下面連結部140の一部が嵌合され、先端凹部232に先端拡広幅部150が嵌合される。
【0065】
そして、図5(c)、図6(c)及び図7(c)に示すように、嵌合凹部230に固定部130を嵌合された状態で、固定部130及び電線接続部200に曲げ加工が施される。すると、先端拡広幅部150の側縁150Aが先端凹部232の側壁232Aに突き当たって引っ掛かる。これにより、固定部130が電線接続部200から外れることなく電線接続部200と一緒に湾曲する。このとき、嵌合凹部230の深さが固定部130の厚さと略同一であるため、固定部130と電線接続部200とは、面一となっている(図6(b)及び図7(b)参照)。
【0066】
(2.3)作用・効果
以上説明した第2実施形態では、上述した第1実施形態の作用・効果と同様に、製造コストの増大を招くことなく、電線接続部200の耐久性を向上させることができる。
【0067】
第2実施形態では、固定部130は、先端拡広幅部150を有している。これにより、固定部130と電線接続部200との接触面積がさらに増大し、固定部130と電線接続部200との固定強度をさらに増大させることができる。
【0068】
第2実施形態では、電線接続部200には、固定部130が嵌合される嵌合凹部230が形成される。これにより、外部からの振動(例えば、車両の振動)等が生じても、固定部130と電線接続部200とが互いにズレ難くなる。このため、固定部130と電線接続部200との固定強度をより増大させることができる。加えて、電線接続部200に加締られる電線が端子接続部100内で動き難くなり、電線に導通接続される弾性接触部材120と雄端子との接続信頼性をも向上させることができる。
【0069】
ここで、上述した第2実施形態では、先端拡広幅部150の側縁150Aが先端凹部232の側壁232Aに突き当たって引っ掛かるものとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、先端拡広幅部150の側縁150Aが先端凹部232の側壁232Aに突き当たらなくてもよい(すなわち、先端凹部232に遊びがあってもよい)。この場合、固定部130及び電線接続部200に曲げ加工が施されると、固定部130が電線接続部200から外れて、先端拡広幅部150の側縁150Aが電線内に食い込み、電線と固定部130との導通性が向上する。
【0070】
(2.4)変更例
次に、上述した第2実施形態に係る雌端子2の変更例について、図面を参照しながら説明する。なお、上述した第2実施形態に係る雌端子2と同一部分には同一の符号を付して、相違する部分を主として説明する。
【0071】
(2.4.1)雌端子2の構成
まず、変更例に係る雌端子2の構成について、図面を参照しながら説明する。図8は、第2実施形態の変更例に係る雌端子2を示す斜視図である。
【0072】
変更例では、図8に示すように、固定部130における先端拡広幅部150の雄端子の挿入方向IDに沿った幅W1は、電線接続部200の雄端子の挿入方向IDに沿った幅W2と略同一に形成されている。また、先端拡広幅部150には、電線接続部200側に突出する凸部151が複数形成されている。この凸部151は、直交方向CDに沿って延在し、雄端子の挿入方向IDに複数(3つ)並列されている。
【0073】
電線接続部200には、固定部130と接する表面側から裏面側に凹んで凸部151が嵌合される長溝240(図9(a)及び図10(a)参照)が形成されている。この長溝240は、直交方向CDに沿って延在し、雄端子の挿入方向IDに複数(3つ)並列されている。長溝240の直交方向CDに沿った長さL1は、凸部151の直交方向CDに沿った長さL2よりも長く形成されている。
【0074】
(2.4.2)固定部130と電線接続部200との固定
次に、上述した固定部130と電線接続部200との固定(嵌合関係)について、図面を参照しながら説明する。図9(a)は、第2実施形態に係る固定部130及び電線接続部200のみを示す分解斜視図であり、図9(b)は、第2実施形態に係る固定部130及び電線接続部200の組立時を示す斜視図であり、図9(c)は、第2実施形態に係る固定部130及び電線接続部200の曲げ加工後を示す斜視図である。図10(a)は、図9(a)のH−H断面図であり、図10(b)は、図9(b)のI−I断面図であり、図10(c)は、図9(c)のJ−J断面図である。図11(a)は、図10(a)のH’矢視図であり、図11(b)は、図10(b)のI’矢視図であり、図11(c)は、図10(c)のJ’矢視図である。
【0075】
図9(a)、図10(a)及び図11(a)に示すように、固定部130及び電線接続部200は、曲げ加工が施されておらず、すなわち、湾曲していない。図9(b)、図10(b)及び図11(b)に示すように、電線接続部200に固定部130を載置する。すると、長溝240に凸部151が嵌合される。
【0076】
そして、図9(c)、図10(c)及び図11(c)に示すように、長溝240に凸部151を嵌合された状態で、固定部130及び電線接続部200に曲げ加工が施される。すると、凸部151の側縁151Aが長溝240の側壁241に突き当たって引っ掛かる。これにより、固定部130が電線接続部200から外れることなく電線接続部200と一緒に湾曲する。
【0077】
(2.4.3)作用・効果
以上説明した第2実施形態の変更例では、上述した第2実施形態の作用・効果と同様に、固定部130と電線接続部200との接触面積がさらに増大し、固定部130と電線接続部200との固定強度をさらに増大させることができるとともに、電線に導通接続される弾性接触部材120と雄端子との接続信頼性をも向上させることができる。
【0078】
(3)第3実施形態
次に、第3実施形態に係る雌端子3について、図面を参照しながら説明する。なお、上述した第1,第2実施形態に係る雌端子1,2と同一部分には同一の符号を付して、相違する部分を主として説明する。
【0079】
(3.1)雌端子3の構成
まず、第3実施形態に係る雌端子3の構成について、図面を参照しながら説明する。図12(a)は、第3実施形態に係る雌端子3を示す斜視図であり、図12(b)は、第3実施形態に係る雌端子3を示す分解斜視図である。図13(a)は、図12(a)のK−K断面図であり、図13(b)は、図12(b)のL−L断面図である。
【0080】
上述した第1,第2実施形態では、固定部130の当接面131が電線接続部200に接触して固定される。これに対して、第3実施形態では、固定部130の縁部135が電線接続部200に接触して固定される。
【0081】
具体的には、図12及び図13に示すように、固定部130は、端子接続部100から電線接続部200側に最も突出した縁部135を備えている。この縁部135は、固相接合又は溶接によって電線接続部200の縁250と固定される。
【0082】
ここで、固相接合とは、接合面が固相面同士での接合を行う溶接方法の総称です。固相接合は、固相面の接合にろう材などの溶加材を用いることなく、母材の融点以下の温度で接合部(溶接継手)の溶接を行うことを示す。固相接合は、加圧を伴う溶接と、非加圧の状態で行う溶接との両方を含む。例えば、固相接合には、摩擦圧接、鍛接、拡散接合、熱間圧接、冷間圧接(常温圧接)、爆発圧接、ガス圧接などの各種の圧接(加圧溶接)が含まれる。
【0083】
(3.2)作用・効果
以上説明した第3実施形態では、上述した第1,第2実施形態の作用・効果と同様に、製造コストの増大を招くことなく、電線接続部200の耐久性を向上させることができる。
【0084】
第3実施形態では、縁部135は、固相接合又は溶接によって電線接続部200と固定される。これにより、端子接続部100から突出される固定部130の突出量をできる限り少なくでき、固定部130の基材を削減できる。このため、雌端子3の製造コストをより低減させることができる。
【0085】
(4)その他の実施形態
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0086】
例えば、本発明の実施形態は、次のように変更することができる。具体的には、固定部130の当接面131及び表面132には、凹凸形状が施されているものとして説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、ディンプル形状が施されていてもよく、また、凹凸形状が施されていなくてもよい。
【0087】
同様に、電線接続部200の底部210及び加締部220の表面には、凹凸形状が施されているものとして説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、ディンプル形状が施されていてもよく、また、凹凸形状が施されていなくてもよい。
【0088】
また、固定部130は、曲げ加工が施される前に電線接続部200に固定されているものとして説明したが、これに限定されるものではなく、曲げ加工が施された後に電線接続部200に固定されてもよい。
【0089】
また、固定部130は、本体部110(下面112)と一体に形成されるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、本体部110と別体に形成されていてもよい。例えば、固定部130は、弾性接触部材120と一体に形成されていてもよい。
【0090】
また、弾性接触部材120は、本体部110と一体によって形成されているものとして説明したが、これに限定されるものではなく、本体部110と別体に形成されていてもよい。
【0091】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められる。
【符号の説明】
【0092】
1〜3…雌端子
100…端子接続部
110…本体部
120…弾性接触部材
130…固定部
131…当接面
132…表面
140…下面連結部
150…先端拡広幅部
200…電線接続部
210…底部
220…加締部
230…嵌合凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄端子が挿入される端子接続部と、前記雄端子と電気的に接続される電線が接続される電線接続部とを備える雌端子であって、
前記電線接続部は、前記端子接続部と別体に形成されるとともに、前記端子接続部の板厚よりも厚い板厚を有し、
前記端子接続部は、前記端子接続部に挿入される前記雄端子の挿入方向に延在する面に沿って設けられ、前記電線接続部が固定される固定部を有することを特徴とする雌端子。
【請求項2】
請求項1に記載の雌端子であって、
前記端子接続部は、
箱状の本体部と、
前記本体部内に組み込まれ、前記雄端子と接触可能な弾性接触部材と
を備え、
前記固定部は、前記本体部又は前記弾性接触部材の何れか一方と一体に形成されることを特徴とする雌端子。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の雌端子であって、
前記電線接続部は、
前記電線の芯線を位置付ける底部と、
前記底部と連なるとともに、前記底部から立設される加締部と
を備え、
前記固定部は、前記電線接続部側に向かって突出するとともに、前記加締部の内方に位置する底部の表面と接する当接面を有することを特徴とする雌端子。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れかに記載の雌端子であって、
前記固定部は、
前記端子接続部に挿入される前記雄端子の挿入方向に沿って延在する面に連なる連結部と、
前記連結部の先端側に位置し、前記連結部よりも前記雄端子の挿入方向に直交する方向に広がる拡広幅部と
を有することを特徴とする雌端子。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れかに記載の雌端子であって、
前記固定部及び前記電線接続部には、凹凸形状が施されることを特徴とする雌端子。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れかに記載の雌端子であって、
前記電線接続部には、前記電線接続部の表面から凹むことによって形成されるとともに、前記固定部が嵌合される嵌合凹部が形成されることを特徴とする雌端子。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れかに記載の雌端子であって、
前記電線接続部には、前記電線接続部の表面から突出する突起部が形成され、
前記固定部には、前記突起部が挿入される挿入孔が形成され、
前記突起部は、前記挿入孔に挿入された後に先端が変形することによって、前記固定部を前記電線接続部に固定することを特徴とする雌端子。
【請求項8】
請求項1に記載の雌端子であって、
前記固定部は、前記端子接続部から前記電線接続部側に最も突出する縁部を備え、
前記縁部は、固相接合又は溶接によって前記電線接続部と固定されることを特徴とする雌端子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−73741(P2013−73741A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210866(P2011−210866)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】