説明

離型フィルムおよびその製造方法

【課題】離型性、耐熱性、耐汚染性、形状追従性、均一な成形性に優れ、かつ使用後の廃棄が容易で、比較的安価な離型フィルムであって、熱プレス時の折りシワ発生が少なく、さらには使用時に取扱いやすい離型フィルムおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂成分としてポリブチレンテレフタレート系樹脂と、ポリメチルペンテン樹脂とを主成分とする樹脂組成物を用い、三次元中心面平均粗さ値SRaが0.3〜10μmとなるよう粗化加工されている離型層を有する離型フィルムである。被離型面との動摩擦係数μdが23℃、相対湿度60%の条件で、0.30以下であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型フィルムおよびその製造方法に関し、かかる離型フィルムは、プリント配線基板、フレキシブルプリント基板(以下、「FPC」と称する)、多層プリント配線基板等の製造工程における熱プレス工程に好適に用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板、FPC、多層プリント配線基板等の製造工程における熱プレス工程は、銅製回路と、結線部が開口したカバーレイフィルムとを熱硬化性接着剤により接着し、積層させる工程であり、この工程ではシリコーンゴムを配した熱板で上下から油圧による圧着が行われる。
【0003】
前記熱プレス工程を実施する場合、(1)回路基板へのシリコンの移行防止、(2)結線部への接着剤のにじみ出し防止、(3)カバーレイの破損など、回路に生じる不具合の防止等を目的として、シリコーンゴムを配した熱板と、回路、カバーレイフィルムとの間に両者の接触防止用の離型フィルムが使用される。
【0004】
今日、かかる離型フィルムとしては種々の材質のものが知られており、例えば、シリコンコート系離型フィルム、主にポリテトラメチルフルオロエチレン(PTFE)であるフッ素系離型フィルム(特許文献1)、ポリメチルペンテン離型フィルム(特許文献2)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)系離型フィルム(特許文献3、特許文献4)等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−187898号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献2】特開2006−212954号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献3】特開2007−84760号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献4】特開2007−98816号公報(特許請求の範囲等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、プリント配線基板、FPC、多層プリント配線基板等の今日における高性能化に伴い、また、廃棄処理問題の顕在化に伴い、これまでの既知の離型フィルムでは必ずしも満足し得ない状況となってきた。
【0007】
例えば、シリコンコート系離型フィルムを使用した場合には、離型フィルム表面上のシリコンがプリント配線基板に移行してプリント配線基板の品質を損なうおそれがあり、汚染性に劣っている。また、特許文献1に記載されているようなフッ素系離型フィルムは、耐熱性および離型性では優れているものの、高価な上、使用後の廃棄焼却処理時に燃焼しにくく、かつ有毒ガスを発生するという欠点がある。さらに、特許文献2記載のポリメチルペンテン離型フィルムも、離型性および耐熱性には優れているが、やはり高価であり、また、単層ではクッション性を十分に発揮することができない。
【0008】
一方、特許文献3や特許文献4に記載されているようなPBT系離型フィルムは、上述のシリコンコート系離型フィルムやフッ素系離型フィルムと比較しても基板の品質を損なう要因が少なく、耐熱性も有り、かつ廃棄処理も容易なため、離型フィルム材として期待されている。しかし、PBT系離型フィルムは、シリコンコート系離型フィルムやフッ素系離型フィルムと比べると離型性に劣り、また、PBTホモポリマーでは剛性が強く、FPCの基板の凹凸に対する形状追従性に劣っている。また、PBTコポリマーは、柔軟だが、PBTホモポリマーよりさらに離型性に劣り、フィルムのブロッキングが起こりやすいといった欠点を有する。
【0009】
また、前記離型フィルムは、FPCと接触させた状態で熱板に置かれ、プレスされる際、作業進行上の都合により、離型フィルムを熱板に置いてから、熱プレスされるまでに一定時間経過する場合がある。この時、離型フィルムに、熱収縮による凹凸が発生し、この凹凸を巻き込む形でプレスが行われ、離型フィルムに折りシワが出来てしまうことがあった。
【0010】
この折りシワにより、熱プレス時、FPCにかかる圧力にばらつきが発生し、銅製回路とカバーレイフィルムの接着の不備、さらには、銅製回路の不具合による生産性の低下が引き起こされる可能性があるという問題があった。加えて、クイックプレス法で、離型フィルムとFPCを人間が取り扱う際、折りシワが発生しないよう過剰に注意を払わなければならなかった。
【0011】
そこで本発明の目的は、離型性、耐熱性、耐汚染性、形状追従性、均一な成形性に優れ、かつ使用後の廃棄が容易で、比較的安価な離型フィルムであって、熱プレス時の折りシワ発生が少なく、さらには使用時に取扱いやすい離型フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の樹脂成分を用いた離型層を有する離型フィルムにおいて、離型層表面に粗化(エンボス)加工を施すことにより、前記課題の解決と目的の達成をし得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明の離型フィルムは、樹脂成分としてポリブチレンテレフタレート系樹脂と、ポリメチルペンテン樹脂とを主成分とする樹脂組成物を用い、三次元中心面平均粗さ値SRaが0.3〜10μmとなるよう粗化加工されている離型層を有することを特徴とするものである。離型フィルムの表面に粗化加工を施すことにより、FPC回路部(離型フィルムとの接触面)との滑り性が向上し、プレス時に離型フィルムが面方向に移動しやすくなり、さらに、離型フィルムの熱収縮による凹凸と回路部との空間にある空気が抜けやすくなることから、折りシワが抑制される。
【0014】
また、本発明の離型フィルムは、被離型面との動摩擦係数μdが23℃、相対湿度60%の条件で、0.30以下であることが好ましい。
【0015】
さらに、前記離型層が、全面にわたり均質な凹凸が形成される柄で粗化加工を施されていることが好ましく、前記離型層が、マット調またはセミマット調で粗化加工を施されていることが好ましい。さらにまた、前記離型層が、前記樹脂組成物を溶融押出し成形する際、表面粗化された冷却ロールに接触することにより粗化加工を施されていることが好ましい。
【0016】
また、前記離型層の前記樹脂組成物が、第三成分としてジオール化合物を共重合させたポリブチレンテレフタレート系樹脂(A)と、ポリメチルペンテン樹脂(B)とを主成分とし、樹脂(A):樹脂(B)の質量比が100:20〜100:5の樹脂成分であることが好ましい。さらに、前記離型層の前記樹脂組成物が、前記樹脂成分100質量部に対し、樹脂(A)と樹脂(B)とを合計で50質量部以上含むことが好ましく、前記離型層の前記樹脂組成物が、前記樹脂成分100質量部に対し、ポリブチレンテレフタレートホモポリマー(C)を30質量部以下で含むことが好ましい。さらにまた、本発明の離型フィルムは、前記離型層の前記樹脂組成物が、前期樹脂成分100質量部に対し、樹脂(A)と樹脂(B)との相溶化剤(D)を1〜10質量部含むことが好ましく、また、総厚が20μm以上であることが好ましい。
【0017】
本発明の離型フィルムの製造方法は、前記樹脂組成物を溶融押出フィルム成形する際、表面粗化された冷却ロールに接触させることにより離型層を粗化加工することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、離型性、耐熱性、形状追従性、耐汚染性、均一な成形性に優れ、かつ使用後の廃棄が容易で、比較的安価な離型フィルムであって、熱プレス時の折りシワ発生が少なく、さらには使用時に取扱いやすい離型フィルムを実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
本発明の離型フィルムの離型層表面は、三次元中心面平均粗さSRaが0.3〜10μmであり、好ましくは0.5〜5μmである。この三次元中心面平均粗さ値が0.3μm未満では、離型フィルムの熱収縮による凹凸と回路部との空間にある空気が抜けにくくなることから、折りシワを抑制する効果が得られなくなる。一方、10μmを超えると、離型面の凹凸度合が過剰に大きくなり、熱プレス時の圧力のばらつきや、接着剤のにじみ出しにつながる可能性がある。
【0020】
フィルムの離型面と、被離型面である回路部との間の動摩擦係数μdは、0.30以下であることが望ましい。動摩擦係数がこの値を超える場合、滑り性が低下するため、離型フィルムが面方向に移動しにくくなり、この場合もまた、折りシワを抑制する効果が良好には得られなくなる。
【0021】
表面凹凸の形状・柄については、特に限定されるものではないが、上記三次元中心面平均粗さの好適な値が得られる範囲で、全面に渡り均質な凹凸が形成される柄が好適であり、例えば、マット調が望ましい。グロス調のような、表面粗化が少ない柄の場合、折りシワ低減効果が得られなくなる可能性がある。また、不規則な凹凸柄、模様は、加圧時、回路部への圧力が不均一になることから、好適ではない。
【0022】
本発明における表面粗化加工は、片面、両面への適用を限定されるものではないが、フィルムのカール防止、表裏の区別を設けないことによる使用時の利便性の観点から、表裏で同様の粗化加工が施されていることが好ましい。
【0023】
フィルムの表面粗化加工方法については、本発明に好適な離型層の表面状態を実現できる範囲において、従来公知の方法を用いるのが望ましい。中でも、工程数の増加がないことから、Tダイ型押出成型機を用いて溶融樹脂を押し出す際、エンボスロールとの接触による粗面化の方法が好適である。
【0024】
本発明の離型フィルムに使用される樹脂組成物は、所望の効果を得る上で、ポリブチレンテレフタレート系樹脂と、ポリメチルペンテン樹脂を主成分とした樹脂組成物を用い、好ましくは、樹脂成分として、第三成分としてジオール化合物を共重合させたポリブチレンテレフタレート系樹脂(A)(以下「樹脂(A)」と称する)と、ポリメチルペンテン樹脂(B)(以下「樹脂(B)」と称する)とを主成分とする。さらに、樹脂成分100質量部に対し、樹脂(A)と樹脂(B)とを合計で50質量部以上含むことが好ましい。この合計量が50質量部よりも少なくなると、形状追従性において十分とは言えなくなる。
【0025】
本発明において使用し得る樹脂(A)は、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体を主体とするジカルボン酸成分と1,4−ブタンジオールまたはそのエステル形成性誘導体を主体とするジオール成分を重縮合して得られる、主としてPBT繰り返し単位からなるポリエステルに、第三成分としてジオール化合物を共重合させたコポリエステルである。
【0026】
かかる第三成分のジオール化合物としてアルキレングリコールを好適に用いることができ、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、エトキシ化ビスフェノールAなどのジオール化合物を挙げることができるが、特に好ましくはポリテトラメチレングリコールである。
【0027】
本発明において使用し得る樹脂(A)は、第三成分としてジオールを共重合させることにより、ポリブチレンテレフタレートホモポリマー対比、結晶化度や、剛性をコントロールして柔軟性を付与したものであり、かかる樹脂(A)は、例えば、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製のノバデュラン(登録商標)シリーズのものとして市場で入手することができる。
【0028】
また、本発明において使用し得る樹脂(B)は、その分子量および結晶化度等に関し、特に制限があるわけではないが、離型フィルムの形状追従性を低下させないため、低剛性のものを選定することが好ましい。かかる樹脂(B)は、例えば、三井化学(株)製のTPX(登録商標)シリーズのものとして市場で入手することができる。
【0029】
本発明の離型フィルム用樹脂組成物においては、樹脂(A):樹脂(B)の質量比が100:20〜100:5であることが好ましく、さらに、100:15〜100:10であることがより好ましい。樹脂(A):樹脂(B)の質量比が100:20よりも樹脂(B)の比率が高くなると、樹脂(A)と樹脂(B)の分散性の変化による混ざりムラから、離型フィルムの厚みにバラツキが発生し、均質な製膜が困難となり、一方、質量比が100:5よりも樹脂(A)の比率が高くなると、離型性および形状追従性に劣る結果となる。
【0030】
本発明の離型フィルム用樹脂組成物においては、樹脂成分として樹脂(A)と樹脂(B)のみをベース材として用いることもできるが、樹脂(A)の第三成分としてのジオール化合物量が多くなるに従い樹脂(A)のメルトフローレートが高くなり、離型フィルムへの成形性がやや劣ることになる。このため、離型フィルムの成形性を考慮し、単体での曲げ弾性率が約2400MPaであるポリブチレンテレフタレートホモポリマー(C)(以下「ホモポリマー(C)と称する」)を併用し、成形性の改善を図ることもできる。
【0031】
かかるホモポリマー(C)は、樹脂成分100質量部に対し、30質量部以下で配合することが好ましい。この配合量が30質量部を超えると形状追従性に劣り、また、接着剤のにじみ出しを生じ易くなる。
【0032】
本発明において使用する樹脂(A)は極性が高く、一方、樹脂(B)は極性の低い樹脂であるため、樹脂(A)と樹脂(B)との分散性を保持するために相溶化剤を添加してもよい。この相溶化剤は特に制限されるべきものではないが、好ましくは、非極性のポリプロピレン(PP)部分と、極性を持つアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマール酸等の不飽和カルボン酸で変性した低分子量ポリプロピレンを挙げることができる。かかる低分子量のポリプロピレン樹脂は、例えば、三洋化成工業(株)製のユーメックス(登録商標)シリーズのものとして市場で入手することができる。
【0033】
相溶化剤の配合量は、樹脂成分100質量部に対して1〜10質量部であることが好ましい。この量が10質量部を超えると、分散性の変化によりフィルムの表面状態が変化してしまい、離型性が低下し、さらに離型フィルムに必要な耐熱性も低下するおそれがある。一方、この量が1質量部未満では、相溶化剤添加による分散性の改善効果を得ることができない。
【0034】
本発明の離型フィルムを構成する樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲内で、熱安定剤、酸化防止剤、老化防止剤、防錆剤、耐銅害安定剤、帯電防止剤等の公知の各種添加剤を配合することができるのは勿論である。これらは1種を単独で使用してもよく、または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
本発明の離型フィルムの総厚は、好ましくは20μm以上であり、より好ましくは20〜70μmである。フィルムが70μm以上の場合、剛性が高くなるため、表面粗化加工がない場合でも、上記課題に挙げられる折りシワは発生しにくくなる。そのため、本発明は、折りシワが発生しやすい70μm以下の離型フィルムにおいて離型フィルムの熱収縮による凹凸が発生した場合に、特にその改善効果が期待できるものである。フィルム総厚が20μm未満の場合、薄層のため製膜自体が困難になり、さらにエンボスロールとの接触による粗化が十分になされない可能性がある。
【0036】
また、形状追従性、および使用時のハンドリング性の観点から、両物性を両立させる程度のフィルム剛性が求められる。この評価項目としてループスティフネス値を導入することができる。具体的には、23℃、相対湿度60%、離型フィルムの幅15mm、ループ周長60mmの条件でループスティフネステスターを用いて測定したループスティフネス値が5〜150mNであることが好ましく、10〜120mNの範囲であることがより好ましい。このループスティフネス値が5mN未満であると、フィルム剥離時のハンドリング性が低下してしまう。一方、ループスティフネス値が150mNを超えると、フィルムの剛性が高く、形状追従性が低下してしまう。
【0037】
本発明の離型フィルムを製造するにあたり、樹脂(A)と樹脂(B)とは本来非溶性であることから、相溶化剤の使用の他、これらを均一に分散させ、均質なフィルムを製膜するために、ミキシングゾーンを持つ押出機、若しくはダルメージ型単軸押出機を具備するTダイ型押出成形機などを用いてフィルム成形することが好ましい。成形温度は、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリメチルペンテン樹脂の融点を考慮し、230〜260℃であることが好ましく、特にダイス温度は250〜260℃が好適である。また、この際、使用する樹脂組成物としては、ブレンドミキサーを用いてドライブレンドとしたものを好適に用いることができる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例に基づき説明する。
(実施例1)
出発材料として、第三成分としてポリテトラメチレングリコールを共重合させたPBTコポリマー(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製 商標登録:ノバデュラン5505S、以下「PBT系樹脂(A)」と称する)80質量部と、PBTホモポリマー(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商標登録:ノバデュラン5026、以下「PBT系樹脂(C)」と称する)20質量部と、ポリメチルペンテン(三井化学(株)製、商標登録:TPX MX002 以下「樹脂(B)」と称する)10質量部とを用い、これらをブレンドミキサーでドライブレンドした。なお、PBT系樹脂(A)およびPBT系樹脂(C)のPBT系樹脂については、事前に熱風乾燥機にて120℃で8時間乾燥させたものを使用した。
【0039】
上述のようにしてドライブレンドした樹脂組成物を、ダルメージ型単軸押出機で混練、溶融させた後、Tダイスから押出した。押出直後の溶融樹脂に、マット調エンボスロールを接触させ、両面に粗化加工を施し、厚さ50μmの単層フィルムを作製した。
【0040】
(実施例2)
出発材料として、PBT系樹脂(A)80質量部と、PBT系樹脂(C)20質量部と、樹脂(B)10質量部と、相溶化剤(D)として、低分子量ポリプロピレン(三洋化成工業(株)製、登録商標:ユーメックス1001、以下「相溶化剤(D)」と称する)5質量部とを用い、これらをブレンドミキサーでドライブレンドした。なお、PBT系樹脂(A)およびPBT系樹脂(C)のPBT系樹脂については、事前に熱風乾燥機にて120℃で8時間乾燥させたものを使用した。
【0041】
上述のようにドライブレンドした樹脂組成物を、ダルメージ型単軸押出機で混練溶融させた後、Tダイスから押出した。押出直後の溶融樹脂に、マット調エンボスロールを接触させ、両面に粗化加工を施し、厚さ50μmの単層フィルムを作製した。
【0042】
(実施例3)
粗化加工のため接触させたエンボスロールがセミマット調であること以外は、実施例1と同様にして、厚さ50μmの単層フィルムを作製した。
【0043】
(実施例4)
粗化加工のため接触させたエンボスロールがセミマット調であること以外は、実施例2と同様にして、厚さ50μmの単層フィルムを作製した。
【0044】
(比較例1)
粗化加工のため接触させたエンボスロールがグロス調であること以外は、実施例1と同様にして、厚さ50μmの単層フィルムを作製した。
【0045】
(比較例2)
粗化加工のため接触させたエンボスロールがグロス調であること以外は、実施例2と同様にして、厚さ50μmの単層フィルムを作製した。
【0046】
(比較例3)
Tダイスから押し出された溶融樹脂に対し、エアチャンバーを用いた樹脂の冷却を行い、エンボスロールとの接触による粗化加工がないこと以外は、実施例1と同様にして、厚さ50μmの単層フィルムを作製した。
【0047】
(比較例4)
Tダイスから押し出された溶融樹脂に対し、エアチャンバーを用いた樹脂の冷却を行い、エンボスロールとの接触による粗化加工がないこと以外は、実施例2と同様にして、厚さ50μmの単層フィルムを作製した。
【0048】
【表1】

【0049】
実施例1〜4、比較例1〜6で得られた離型フィルムについて、以下の項目について評価を行った。
【0050】
評価項目
(ループスティフネス値)
幅15mm、長さ200mmの試験片を用意し、ループスティフネステスター(東洋精機製)を用いて、温度23℃、相対湿度60%の条件で、ループ周長60mmでのループスティフネス値を測定した。試験片長辺をフィルムの押出方向とした場合のループスティフネス値をMD、フィルムの幅方向とした場合のループスティフネス値をTDとした。
【0051】
(熱収縮率)
JIS−K7133に準拠した測定方法により測定した。押出方向の収縮率をMD、幅方向の収縮率をTDとした。
【0052】
(表面粗さ)
3次元表面粗さ測定機(株式会社東京精密製 SURFCOM 1400D−3DF−12)を用い、1.0mm×1.0mmの範囲を測定針で走査し、フィルム離型面の三次元中心面平均粗さSRaを測定した。
【0053】
(動摩擦係数)
JIS−K7125に準拠した測定方法により、離型フィルム−FPC間の動摩擦係数μdを評価した。得られた結果を下記の表2(物性評価結果)に表す。
【0054】
【表2】

【0055】
(熱プレス評価)
総厚35μmのカバーレイ/接着剤シートに、直径1.5mmの穴を開け、開口部とした。電解銅箔と、前記のカバーレイ/接着剤シートを積層し、190℃、35kg/cm、加温時間120sで各実施例1〜4、比較例1〜5で得られた離型フィルムを用いて熱プレスを行い、それぞれの離型フィルムについて、以下の項目に関して評価をおこなった。
【0056】
(熱プレス後表面汚染)
カバーレイ表面の汚染を目視により評価した。表面が溶融樹脂により汚染されていないものを○、汚染されているものを×として評価した。
【0057】
(接着剤にじみ出し:カバーレイ開口部からの接着剤にじみ出し)
熱プレス工程後、カバーレイ開口部の接着剤にじみ出しを目視により評価した。接着剤のにじみ出しが認められないものを○、認められるものを×として評価した。
【0058】
(剥離性1:剥離のしやすさ)
離型フィルムの剥離性をフィーリングにより評価した。手で剥離したとき、スムーズに剥離できたものを○、手で剥離したとき、抵抗が大きく、一度に剥離できなかったものを×として評価した。
【0059】
(剥離性2:剥離時のフィルム破れ)
離型フィルムの剥離性を評価した。剥離時、フィルムの破れが発生しなかったものを○、剥離時にフィルムの破れが発生したものを×として評価した。
【0060】
(剥離性3:熱プレス後の離型フィルムの折りシワ)
250mm×250mm幅の試験片を切り出し、上記条件で熱プレスを実施した後、離型フィルムに発生した折りシワについて、以下の4段階で評価した。
◎:折りシワ発生率2.0%未満
○:折りシワ発生率2.0%以上 10%未満
△:折りシワ発生率10%以上40%未満
×:折りシワ発生率40%以上
得られた結果を下記の表3(物性評価結果2)に表す。
【0061】
【表3】

【0062】
実施例1〜4のフィルムはいずれも、離型性、耐熱性にすぐれ、厚みムラが少なく、熱プレス時、カバーレイ表面への接着、剥離時のフィルムの破れもなかった。また、形状追従性に優れ、カバーレイからの接着剤の染み出しも認められなかった。さらには、熱プレス時、離型フィルムに折りシワが発生せず、正常な加圧を行うことが出来た。加えて、折りシワに関して過剰な注意を払う必要がなくなり、取扱いやすさが向上した。
【0063】
これに対し、比較例1、2は、実施例に比べ表面の平滑性が高く、折りシワの発生が抑制されなかった。比較例3、4は、表面の粗化加工がなされておらず、折りシワが発生した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成分としてポリブチレンテレフタレート系樹脂と、ポリメチルペンテン樹脂とを主成分とする樹脂組成物を用い、三次元中心面平均粗さ値SRaが0.3〜10μmとなるよう粗化加工されている離型層を有することを特徴とする離型フィルム。
【請求項2】
被離型面との動摩擦係数μdが23℃,相対湿度60%の条件で、0.30以下である請求項1記載の離型フィルム
【請求項3】
前記離型層が、全面に渡り均質な凹凸が形成される柄で粗化加工を施されている請求項1または2記載の離型フィルム。
【請求項4】
前記離型層が、マット調またはセミマット調で粗化加工を施されている請求項1〜3のうちいずれか一項記載の離型フィルム。
【請求項5】
前記離型層が、前記樹脂組成物を溶融押出し成形する際、表面粗化された冷却ロールに接触することにより粗化加工を施されている請求項1〜4のうちいずれか一項記載の離型フィルム。
【請求項6】
前記離型層の前記樹脂組成物が、第三成分としてジオール化合物を共重合させたポリブチレンテレフタレート系樹脂(A)と、ポリメチルペンテン樹脂(B)とを主成分とし、樹脂(A):樹脂(B)の質量比が100:20〜100:5の樹脂成分である請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の離型フィルム。
【請求項7】
前記離型層の前記樹脂組成物が、前記樹脂成分100質量部に対し、樹脂(A)と樹脂(B)とを合計で50質量部以上含む請求項1〜6のうちいずれか一項に記載の離型フィルム。
【請求項8】
前記離型層の前記樹脂組成物が、前記樹脂成分100質量部に対し、ポリブチレンテレフタレートホモポリマー(C)を30質量部以下で含む請求項1〜7のうちいずれか一項に記載の離型フィルム。
【請求項9】
前記離型層の前記樹脂組成物が、前期樹脂成分100質量部に対し、樹脂(A)と樹脂(B)との相溶化剤(D)を1〜10質量部含む請求項1〜8のうちいずれか一項に記載の離型フィルム。
【請求項10】
総厚が20μm以上である請求項1〜9のうちいずれか一項に記載の離型フィルム。
【請求項11】
請求項1〜9のうちいずれか一項に記載の離型フィルムの製造方法において、前記樹脂組成物を溶融押出フィルム成形する際、表面粗化された冷却ロールに接触させることにより離型層を粗化加工することを特徴とする離型フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2010−209208(P2010−209208A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−56535(P2009−56535)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】