説明

離型フィルムおよびその製造方法

【課題】離型性、均一な成形性にすぐれ、かつ使用後の廃棄が容易で、比較的安価な離型フィルムにおいて、特に、凹凸部に対する形状追従性に優れ、かつ離型フィルム中間層溶出による接着を起こさない離型フィルムを提供する。
【解決手段】第三成分としてジオール化合物を共重合させたポリブチレンテレフタレート系樹脂(A)と、ポリメチルペンテン樹脂(B)とを主成分とし、樹脂(A):樹脂(B)の質量比が100:20〜100:5である樹脂組成物からなる2層の離型層の間に、樹脂成分100質量部に対し、曲げ弾性率が600MPa以下のポリブチレンテレフタレート系樹脂(E)を75〜50質量部、融点が110〜140℃である合成樹脂(F)を20〜50質量部含む樹脂組成物からなる中間層を有する多層構造であって、離型層と中間層の厚さの比が、離型層:中間層=1:10〜1:3であり、総厚が20〜160μmである離型フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型フィルムおよびその製造方法に関し、かかる離型フィルムは、プリント配線基板、フレキシブルプリント基板(以下、「FPC」と称する)、多層プリント配線基板等の製造工程における熱プレス工程に好適に用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板、FPC、多層プリント配線基板等の製造工程における熱プレス工程は、銅製回路と、結線部が開口したカバーレイフィルムとを熱硬化性接着剤により接着し、積層させる工程であり、この工程ではシリコーンゴムを配した熱板で上下から油圧による圧着が行われる。
【0003】
前記熱プレス工程を実施する場合、(1)回路基板へのシリコンの移行防止、(2)結線部への接着剤のにじみ出し防止、(3)カバーレイの破損など、回路に生じる不具合の防止等を目的として、シリコーンゴムを配した熱板と、回路、カバーレイフィルムとの間に両者の接触防止用の離型フィルムが使用される。
【0004】
今日、かかる離型フィルムとしては種々の材質のものが知られており、例えば、シリコンコート系離型フィルム、主にポリテトラメチルフルオロエチレン(PTFE)であるフッ素系離型フィルム(特許文献1)、ポリメチルペンテン離型フィルム(特許文献2)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)系離型フィルム(特許文献3、特許文献4)等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−187898号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献2】特開2006−212954号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献3】特開2007−84760号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献4】特開2007−98816号公報(特許請求の範囲等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、プリント配線基板、FPC、多層プリント配線基板等の今日における高性能化に伴い、また、廃棄処理問題の顕在化に伴い、これまでの既知の離型フィルムでは必ずしも満足し得ない状況となってきた。
【0007】
例えば、シリコンコート系離型フィルムを使用した場合には、離型フィルム表面上のシリコンがプリント配線基板に移行してプリント配線基板の品質を損なうおそれがあり、汚染性に劣っている。また、特許文献1に記載されているようなフッ素系離型フィルムは、耐熱性および離型性では優れているものの、高価な上、使用後の廃棄焼却処理時に燃焼しにくく、かつ有毒ガスを発生するという欠点がある。さらに、特許文献2記載のポリメチルペンテン離型フィルムも、離型性および耐熱性には優れているが、やはり高価であり、また、単層ではクッション性を十分に発揮することができない。
【0008】
一方、特許文献3や特許文献4に記載されているようなPBT系離型フィルムは、上述のシリコンコート系離型フィルムやフッ素系離型フィルムと比較しても基板の品質を損なう要因が少なく、耐熱性も有り、かつ廃棄処理も容易なため、離型フィルム材として期待されている。しかし、PBT系離型フィルムは、シリコンコート系離型フィルムやフッ素系離型フィルムと比べると離型性に劣り、また、PBTホモポリマーでは剛性が強く、FPCの基板の凹凸に対する形状追従性に劣っている。また、PBTコポリマーは、柔軟だが、PBTホモポリマーよりさらに離型性に劣り、フィルムのブロッキングが起こりやすいといった欠点を有する。
【0009】
特に、回路の微細度が高いFPCをプレスする時、形状追従性が十分でないと、熱プレス工程の際、カバーレイフィルム開口部から熱硬化性接着剤がにじみ出す場合があるという問題があった。そのため、より優れた凹凸部への形状追従性が求められていた。
【0010】
凹凸部への形状追従性を高める手法としては、例えば特許文献3のように、多層構成の離型フィルムの中間層に、熱プレス時の柔軟性が高い樹脂を配置する手法があるが、この手法では、離型フィルム中間層樹脂が熱プレス時にフィルム端部から溶出し、溶出樹脂同士の接着が発生するため、特に、ロールtoロール方式など、インライン工程で熱プレス・剥離を実施する場合、接着した樹脂同士が剥離できないといった問題があった。
【0011】
そこで本発明の目的は、離型性、均一な成形性に優れ、かつ使用後の廃棄が容易で、比較的安価な離型フィルムにおいて、特に、凹凸部に対する形状追従性に優れ、かつ離型フィルム中間層溶出による接着を起こさない離型フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の樹脂成分を用いた離型層とその間に特定の樹脂成分を用いた中間層とを有する多層構造の離型フィルムとすることにより、前記課題の解決と目的の達成をし得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明の離型フィルムは、第三成分としてジオール化合物を共重合させたポリブチレンテレフタレート系樹脂(A)と、ポリメチルペンテン樹脂(B)とを主成分とし、樹脂(A):樹脂(B)の質量比が100:20〜100:5である樹脂組成物からなる2層の離型層の間に、樹脂成分100質量部に対し、曲げ弾性率が600MPa以下のポリブチレンテレフタレート系樹脂(E)を75〜50質量部、融点が110〜140℃である合成樹脂(F)を20〜50質量部含む樹脂組成物からなる中間層を有する多層構造であって、前記離型層と前記中間層の厚さの比が、離型層:中間層=1:10〜1:3であり、総厚が20〜160μmであることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の離型フィルムは、前記離型層が、前記樹脂成分100質量部に対し、樹脂(A)と樹脂(B)とを合計で50質量部以上含む樹脂組成物からなることが好ましく、前記離型層が、前記樹脂成分100質量部に対し、ポリブチレンテレフタレートホモポリマー(C)を30質量部以下で含む樹脂組成物からなることが好ましい。
【0015】
さらに、本発明の離型フィルムは、前記離型層が、前記樹脂成分100質量部に対し、樹脂(A)と樹脂(B)との相溶化剤(D)を1〜10質量部含む樹脂組成物からなることが好ましい。
【0016】
さらにまた、本発明の離型フィルムは、前記合成樹脂(F)が、プロピレン−エチレンランダム共重合体樹脂であることが好ましく、前記プロピレン−エチレンランダム共重合体樹脂が、230℃、2.16kg荷重時のメルトフローレート(MFR)が20〜30g/10minであることが好ましい。
【0017】
さらにまた、本発明の離型フィルムは、前記中間層が、樹脂成分100質量部に対し、樹脂(E)と樹脂(F)との相溶化剤(D)を5〜20質量部含む樹脂組成物からなることが好ましく、さらに、前記相溶化剤(D)が、融点50〜110℃のエポキシ化ポリオレフィン樹脂(G)であり、前記中間層が、前記樹脂成分100質量部に対し、前記樹脂(E)を75〜50質量部、前記合成樹脂(F)を20〜30質量部、および前記樹脂(G)を5〜20質量部含むことが好ましい。
【0018】
また、本発明の離型フィルムは、前記離型層表面の片面または両面が粗化加工されていることが好ましく、前記離型層表面が、前記樹脂組成物を溶融押出しフィルム成形する際、表面粗化された冷却ロールに接触させることにより粗化加工を施されていることが好ましい。さらに、前記離型層表面が、全面に渡り均質な凹凸が形成される柄で粗化加工されていることが好ましい。
【0019】
本発明の離型フィルムの製造方法は、前記離型フィルム用樹脂組成物を混練り、溶融し、次いで、多層Tダイ型成形機で共押出により成形することを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明の離型フィルムの製造方法は、前記樹脂組成物を溶融押出フィルム成形する際、表面粗化された冷却ロールに接触させることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、離型性、均一な成形性にすぐれ、かつ使用後の廃棄が容易で、比較的安価な離型フィルムにおいて、特に、凹凸部に対する形状追従性に優れ、かつ離型フィルム中間層溶出による接着を起こさない離型フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
本発明の離型フィルムの離型層をなす樹脂組成物は、第三成分としてジオール化合物を共重合させたポリブチレンテレフタレート系樹脂(A)(以下「樹脂(A)」と称する)と、ポリメチルペンテン樹脂(B)(以下「樹脂(B)」と称する)とを主成分とし、樹脂(A):樹脂(B)の質量比が100:20〜100:5である。樹脂(A):樹脂(B)の質量比が100:20よりも樹脂(B)の比率が高くなると、樹脂(A)と樹脂(B)の分散性の変化による混ざりムラから、フィルムに厚みのばらつきが発生し、均質な製膜が困難となり、一方、質量比が100:5よりも樹脂(A)の比率が高くなると、離型性および形状追従性に劣る結果となる。また、好ましくは樹脂成分100質量部に対し、樹脂(A)と樹脂(B)とを合計で50質量部以上含む。この合計量が50質量部よりも少なくなると、形状追従性において十分とは言えなくなる。
【0023】
本発明において使用し得る樹脂(A)は、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体を主体とするジカルボン酸成分と1,4−ブタンジオールまたはそのエステル形成性誘導体を主体とするジオール成分を重縮合して得られる、主としてPBT繰り返し単位からなるポリエステルに、第三成分としてジオール化合物を共重合させたコポリエステルである。
【0024】
かかる第三成分のジオール化合物としてアルキレングリコールを好適に用いることができ、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、エトキシ化ビスフェノールAなどのジオール化合物を挙げることができるが、特に好ましくはポリテトラメチレングリコールである。
【0025】
本発明において使用し得る樹脂(A)は、第三成分としてジオールを共重合させることにより、ポリブチレンテレフタレートホモポリマー対比、結晶化度や、剛性をコントロールして柔軟性を付与したものであり、かかる樹脂(A)は、例えば、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製のノバデュラン(登録商標)シリーズのものとして市場で入手することができる。
【0026】
また、本発明において使用し得る樹脂(B)は、その分子量および結晶化度等に関し、特に制限があるわけではないが、離型フィルムの形状追従性を低下させないため、低剛性のものを選定することが好ましい。かかる樹脂(B)は、例えば、三井化学(株)製のTPX(登録商標)シリーズのものとして市場で入手することができる。
【0027】
本発明の離型フィルム用樹脂組成物においては、樹脂成分として樹脂(A)と樹脂(B)のみをベース材として用いることもできるが、樹脂(A)の第三成分としてのジオール化合物量が多くなるに従い樹脂(A)のメルトフローレートが高くなり、離型フィルムへの成形性がやや劣ることになる。このため、離型フィルムの成形性を考慮し、単体での曲げ弾性率が約2400MPaであるポリブチレンテレフタレートホモポリマー(C)(以下「ホモポリマー(C)と称する」)を併用し、成形性の改善を図ることもできる。
【0028】
かかるホモポリマー(C)は、樹脂成分100質量部に対し、30質量部以下で配合することが好ましい。この配合量が30質量部を超えると形状追従性に劣り、また、接着剤のにじみ出しを生じ易くなる。
【0029】
本発明において使用する樹脂(A)は極性が高く、一方、樹脂(B)は極性の低い樹脂であるため、樹脂(A)と樹脂(B)との分散性を保持するために相溶化剤(D)を添加してもよい。この相溶化剤(D)は特に制限されるべきものではないが、好ましくは、非極性のポリプロピレン(PP)部分と、極性を持つアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマール酸等の不飽和カルボン酸で変性した低分子量ポリプロピレンを挙げることができる。かかる低分子量のポリプロピレン樹脂は、例えば、三洋化成工業(株)製のユーメックス(登録商標)シリーズのものとして市場で入手することができる。
【0030】
相溶化剤の配合量は、樹脂成分100質量部に対して1〜10質量部であることが好ましい。この量が10質量部を超えると、分散性の変化によりフィルムの表面状態が変化してしまい、離型性が低下し、さらに離型フィルムに必要な耐熱性も低下するおそれがある。一方、この量が1質量部未満では、相溶化剤添加による分散性の改善効果を得ることができない。
【0031】
本発明の離型フィルムの離型層を製造するにあたり、樹脂(A)と樹脂(B)とは本来非溶性であることから、相溶化剤の使用の他、これらを均一に分散させ、均質なフィルムを製膜するために、ミキシングゾーンを持つ押出機、若しくはダルメージ型単軸押出機を具備するTダイ型押出成形機などを用いてフィルム成形することが好ましい。成形温度は、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリメチルペンテン樹脂の融点を考慮し、230〜260℃であることが好ましく、特にダイス温度は250〜260℃が好適である。また、この際、使用する樹脂組成物としては、ブレンドミキサーを用いてドライブレンドとしたものを好適に用いることができる。
【0032】
本発明の中間層に用いられる樹脂成分は、凹凸部に対する形状追従性と、中間層樹脂溶出およびそれに付随する溶出樹脂同士の接着防止との両立のため、曲げ弾性率が低く、ある程度の耐熱性を有する樹脂(E)と、加熱時の柔軟性を持つ合成樹脂(F)(以下、「樹脂(F)」とも称する)を、ブレンドした仕様であることが望ましい。また、共押出によるフィルム作製時、中間層と離型層との剥離を回避するため、主成分は、離型層樹脂との相溶性が高い樹脂が好適である。
【0033】
本発明において使用される上記中間層樹脂の樹脂(E)主成分は、離型層との相溶性が高く、耐熱性と、加熱時の柔軟性のバランスがよく、かつ、入手が容易で、コストとのバランスが取れた材料が望ましい。かかる樹脂(E)は、曲げ弾性率が600MPa以下のポリブチレンテレフタレート系樹脂が挙げられ、例えば、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製のノバデュランシリーズとして市場で入手できる。
【0034】
樹脂(E)単体の場合、形状追従性の改善が十分でないため、さらに形状追従性を向上させるための副成分として、樹脂(F)の添加が必要となる。樹脂(F)は、樹脂(E)との流動性が著しく異なる場合、製膜時安定性低下、フィルム外観不良の原因となる。また、凹凸部に対する形状追従性と、離型フィルム中間層樹脂溶出およびそれに付随する溶出樹脂同士の接着防止との両立の観点から、樹脂(F)の融点は、110〜140℃であることが望ましい。樹脂(F)の融点が140℃を超えると、加熱プレス時の形状追従性の改善効果が不十分であり、融点が110℃未満では、中間層樹脂の溶出の程度が大きくなる。また、樹脂(F)の230℃、2.16kg荷重時のメルトフローレート(以下、MFR)が20〜30g/10minであることが好ましい。上記範囲よりMFRが低い場合、熱プレス時の流動性が低く、形状追従性の改善効果が十分でない。上記範囲よりMFRが高い場合、共押による製膜時に、中間層の流動性が相対的に高くなることから、製膜安定性が低下し、外観ムラや、押出時のサージング発生の原因となる。かかる樹脂(F)は、例えば、プライムポリマー(株)製のプライムポリプロピレンシリーズとして市場で入手できる。
【0035】
上記中間層をなす樹脂成分は、ドライブレンドないし、メルトブレンドして得られる。樹脂成分100質量部中、樹脂(E)が75〜50質量部、樹脂(F)を20〜50質量部の範囲であることが好ましい。上記範囲より樹脂(E)が少なく、樹脂(F)が多い場合、耐熱性が低下して、熱プレス時、中間層樹脂が溶出し、溶出樹脂同士が接着する。また、上記範囲より樹脂(F)が少なく、樹脂(E)が多い場合、形状追従性が十分でない場合がある。
【0036】
本発明において、樹脂(E)、樹脂(F)の相溶化を補助するため、離型層に使用した相溶化剤と同様の相溶化剤(D)を添加することができ、その量は中間層をなす樹脂成分100質量部に対して5〜20質量部であることが好ましい。本発明では、樹脂(E)と樹脂(F)の質量比率の差が小さいため、十分な相溶効果を得るために、離型層に比べ、多量の相溶化剤を必要とする。ただ、この相溶化剤の添加量が20質量部を超える範囲では、添加量に比例した相溶効果の改善は認められない。一方、5質量部未満では、十分な相溶効果を得ることができない。ここで、この相溶化剤は特に制限されるものではないが、例えば、非極性のPP部分と、極性をもつアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマール酸、その他等の不飽和カルボン酸で変性した低分子量ポリプロピレンなどが例として挙げられる。かかる低分子量のポリプロピレン樹脂は、例えば、三洋化成工業(株)製のユーメックス(登録商標)シリーズのものとして市場で入手することができる。
【0037】
また、相溶化剤(D)として、低分子量ポリプロピレンを使用した場合、低分子量ポリプロピレンが金属との相溶性がよい性質を有しているため、ミキサーによるドライブレンド時や押出機のホッパーへの投入時に、相溶化剤が静電気の影響により金属部に付着する現象が発生するおそれがある。離型層のように相溶化剤の添加量が少ない場合には、かかる現象の影響はほとんど無いが、中間層のように相溶化剤の添加量が多い場合には、この現象により溶融混練時の相溶性の低下およびフィルム物性のバラツキの増大等のおそれがある。そのため、本発明においては、相溶化剤(D)として、融点50〜110℃のエポキシ化ポリオレフィン樹脂(G)を用いることが好ましい。かかる樹脂(G)は、樹脂(E)および合成樹脂(F)との相溶性がよく、ブレンド時の分離が発生せず、溶融混練時の相溶性が良好でフィルム物性が安定している。また、樹脂(G)の融点が50〜110℃であることから、より良好な形状追従性が得られる。
【0038】
本発明で用いられる樹脂(G)とは、分子中にエポキシ基が導入されたポリオレフィンである。かかる樹脂(G)は、エチレンまたは炭素数3〜20のα−オレフィンとエポキシ基含有単量体とに基づく構成単位からなるが、該樹脂(G)の性質を著しく損なわない範囲で、他のモノマーに基づく構成単位をごく少量、たとえば5質量%以下の量で含有していてもよい。
【0039】
また、このような樹脂(G)は、エチレンまたは炭素数3〜20のα−オレフィンとエポキシ基含有単量体とを共重合させることによって製造できる。エチレンまたは炭素数3〜20のα−オレフィンならびにエポキシ基含有単量体は、それぞれ1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
上記エポキシ基含有単量体としては、たとえばα,β−不飽和酸のグリシジルエステルが挙げられる。α,β−不飽和酸のグリシジルエステルとは下記一般式(1)(式中、Rは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す。)で示される化合物であり、具体的にはアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジルなどであり、特にメタクリル酸グリシジルが好ましい。α,β−不飽和酸のグリシジルエステルに基づく構成単位の含量は、樹脂(G)100質量%当たり1〜50質量%、好ましくは3〜40質量%の範囲が適当である。
【0041】

【0042】
また、樹脂(G)は、ポリオレフィンをエポキシ基含有化合物でグラフトすることによっても製造できる。市販品の例としては、住友化学株式会社製「ボンドファースト(登録商標)」等の名で市販されるエチレン−グリシジル酸メタクリル(GMA)共重合体が挙げられる。該共重合体中のGMA単位の含有量は、3〜12質量%程度である。
【0043】
本発明において、中間層が、樹脂成分100質量部に対し、樹脂(E)を75〜50質量部、合成樹脂(F)を20〜30質量部、および樹脂(G)を5〜20質量部含むことが好ましい。樹脂(G)を配合した場合、合成樹脂(F)の添加比率を若干低減することが好ましい。合成樹脂(F)の添加比率の低減により、中間層樹脂の溶出防止、即ち、溶出樹脂同士の接着防止に必要な耐熱性をより維持でき、さらに、樹脂(E)と合成樹脂(F)との添加比率の差が大きくなるため、上述の樹脂(G)の添加量の範囲で、相溶効果が得られやすくなる。
【0044】
また、上記範囲より樹脂(E)が多い場合、形状追従性が十分でない場合があり、樹脂(F)が多い場合、耐熱性が低下して、熱プレス時、中間層樹脂が溶出し、溶出樹脂同士が接着するおそれがある。さらに、上記範囲より樹脂(G)が多い場合、相溶性の効果はよくなるが、耐熱性が低下して、熱プレス時、中間層樹脂が溶出し、溶出樹脂同士が接着するおそれがある。また、原料コストが上がってしまう。一方、上記範囲より樹脂(G)が少ない場合、相溶化剤添加の効果が得られない。
【0045】
上記離型層と、上記中間層の厚さの比は、離型層:中間層=1:10〜1:3であり、好ましくは、離型層:中間層=1:6〜1:4である。離型層:中間層=1:10より中間層が厚い場合、離型層の薄化による離型性の低下の恐れがある。また、離型層:中間層=1:3より中間層が薄い場合、形状追従性が十分でない。
【0046】
本発明が適用される離型フィルムの総厚は、20〜160μmであり、好ましくは30〜130μmである。フィルムの総厚が20μm未満の場合、薄層のため製膜自体が困難になり、さらには、総厚が薄いことから、各層の形成が困難になる。さらにエンボスロールとの接触による粗化を行う場合、離型層が破壊される可能性がある。一方、160μmを超える場合、フィルムの厚みが増すことから剛性が高くなり、形状追従性が不十分になる。
【0047】
本発明の離型フィルムは、2つの離型層の間に上記中間層を有する多層構造であり、上記離型層により離型性が付与され、上記中間層により形状追従性が付与される。上記離型層および中間層を有すれば、本発明の効果を損なわない限り、さらに他の樹脂組成物からなる層を有してもよい。
【0048】
本発明に用いる離型フィルムの離型層表面の片面または両面には、本発明の目的を妨げない程度に、表面粗化処理を行うことができる。表面粗化処理を行うことにより、離型フィルムを熱プレスに使用する時の折りシワの発生を防ぐことができる。表面粗化処理を行う場合、離型層表面の三次元中心面平均粗さSRaが0.3〜10μmとなるようにすることが好ましく、さらに、0.5〜5μmとなるようにすることが好ましい。この三次元中心面平均粗さが0.3μm未満では、離型フィルムの熱収縮による凹凸と回路部との空間にある空気が抜けにくくなることから、折りシワを抑制する効果が良好に得られなくなる。一方、10μmを超えると、離型面の凹凸度合が過剰に大きくなり、熱プレス時の圧力のばらつきや、接着剤のにじみ出しにつながる可能性がある。
【0049】
フィルムの離型層と、被離型面である回路部との間の動摩擦係数μdは、0.30以下であることが好ましい。動摩擦係数がこの値を超える場合、滑り性が低下するため、離型フィルムが面方向に移動しにくいことがある。
【0050】
表面凹凸の形状・柄については、特に限定されるものではないが、上記三次元中心面平均粗さの好適な値が得られる範囲で、全面に渡り均質な凹凸が形成される柄が好適であり、例えば、マット調が好ましい。グロス調のような、表面粗化が少ない柄の場合、折りシワ低減効果が得られなくなる可能性がある。また、不規則な凹凸柄、模様は、加圧時、回路部への圧力が不均一になることから、好適ではない。
【0051】
フィルムの表面粗化加工方法については、本発明に好適な離型層の表面状態を実現できる範囲において、従来公知の方法を用いるのが望ましい。中でも、工程数の増加がないことから、Tダイ型押出成型機を用いて溶融樹脂を押し出す際、エンボスロールとの接触による粗面化の方法が好適である。なお、粗化加工には、表面粗化された冷却ロールが好ましい。
【0052】
本発明の離型フィルムを構成する樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲内で、熱安定剤、酸化防止剤、老化防止剤、防錆剤、耐銅害安定剤、帯電防止剤等の公知の各種添加剤を配合することができるのは勿論である。これらは1種を単独で使用してもよく、または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0053】
本発明の離型フィルムを製造するにあたり、離型層に使用される樹脂(A)と樹脂(B)、中間層に使用される樹脂(E)と樹脂(F)とは本来非相溶であることから、相溶化剤の使用の他、これらを均一に分散させ、均質なフィルムを製膜するために、ミキシングゾーンを持つ押出機、もしくはダルメージ型単軸押出機のついた多層成膜が可能なTダイ型押出成形機などを用いた、共押出によるフィルム作製が望ましい。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例に基づき説明する。
(実施例1)
離型層材料として、第三成分としてポリテトラメチレングリコールを共重合させたPBTコポリマー(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商標登録:ノバデュラン5505S、以下「樹脂(A)」と称する)80質量部と、PBTホモポリマー(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商標登録:ノバデュラン5026、以下「樹脂(C)」と称する)20質量部と、ポリメチルペンテン(三井化学(株)製、商標登録:TPX MX002、以下「樹脂(B)」と称する)10質量部とを用い、これらをブレンドミキサーでドライブレンドした。なお、樹脂(A)および樹脂(C)のPBT系樹脂については、事前に熱風乾燥機にて120℃で8時間乾燥させたものを使用した。
【0055】
中間層材料として、曲げ弾性率が600MPa以下のポリブチレンテレフタレート系樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商標登録:ノバデュラン5510S融点219℃、以下「樹脂(E)」と称する)70質量部と、プロピレン−エチレンランダム共重合体樹脂(プライムポリマー(株)製、プライムポリプロ F329RA、融点137℃、MFR25g/10min(230℃、2.16kg荷重時)、以下「樹脂(F)」と称する)30質量部を用い、これらをブレンドミキサーでドライブレンドした。樹脂(E)は、事前に熱風乾燥機にて120℃で8時間乾燥させたものを使用した。
【0056】
上述のようにドライブレンドした樹脂組成物を用い、ダルメージ型3層単軸押出機で混練溶融させた後、Tダイスから共押出し、各層の厚さの比が離型層:中間層:離型層=1:4:1であり、総厚が120μmの3層フィルムを作製した。
【0057】
(実施例2)
離型層材料として、樹脂(A)80質量部と、樹脂(C)20質量部と、樹脂(B)10質量部と、相溶化剤(D)として、低分子量ポリプロピレン(三洋化成工業(株)製、登録商標:ユーメックス1001、以下、「相溶化剤(D)」と称する)5質量部とを用い、これらをブレンドミキサーでドライブレンドした。なお、樹脂(A)および樹脂(C)のPBT系樹脂については、事前に熱風乾燥機にて120℃で8時間乾燥させたものを使用した。
【0058】
中間層材料として、樹脂(E)70質量部と、樹脂(F)30質量部、相溶化剤(D)10質量部を用い、これらをブレンドミキサーでドライブレンドした。樹脂(E)は、事前に熱風乾燥機にて120℃で8時間乾燥させたものを使用した。
【0059】
上述のようにドライブレンドした樹脂組成物を、ダルメージ型3層単軸押出機で混練溶融させた後、Tダイスから共押出し、各層の厚さの比が離型層:中間層:離型層=1:4:1であり、総厚が120μmの3層フィルムを作製した。
【0060】
(実施例3)
中間層材料に使用する樹脂(E)を60質量部、樹脂(F)を40質量部用いたこと以外は、実施例1と同様にして、各層の厚さの比が離型層:中間層:離型層=1:4:1であり、総厚が120μmの3層フィルムを作製した。
【0061】
(実施例4)
中間層材料に使用する樹脂(E)を60質量部、樹脂(F)を40質量部、相溶化剤(D)10質量部用いたこと以外は、実施例2と同様にして、各層の厚さの比が離型層:中間層:離型層=1:4:1であり、総厚が120μmの3層フィルムを作製した。
【0062】
(実施例5)
押出直後の溶融樹脂に、マット調エンボスロールを接触させ、両面に粗化加工を施したこと以外は、実施例1と同様にして、各層の厚さの比が離型層:中間層:離型層=1:4:1であり、総厚が120μmの3層フィルムを作製した。
【0063】
(実施例6)
押出直後の溶融樹脂に、マット調エンボスロールを接触させ、両面に粗化加工を施したこと以外は、実施例2と同様にして、各層の厚さの比が離型層:中間層:離型層=1:4:1であり、総厚が120μmの3層フィルムを作製した。
【0064】
(比較例1)
実施例1の離型層材料を使用し、実施例1と同様にドライブレンドし、120μmの単層フィルムを作製した。
【0065】
(比較例2)
中間層材料に使用する樹脂(E)を100質量部用いたこと以外は、実施例1と同様にして、各層の厚さの比が離型層:中間層:離型層=1:4:1であり、総厚が120μmの3層フィルムを作製した。
【0066】
(比較例3)
中間層材料に使用する樹脂(E)を90質量部、樹脂(F)を10質量部用いたこと以外は、実施例1と同様にして、各層の厚さの比が離型層:中間層:離型層=1:4:1であり、総厚が120μmの3層フィルムを作製した。
【0067】
(比較例4)
中間層材料に使用する樹脂(E)を40質量部、樹脂(F)を60質量部用いたこと以外は、実施例1と同様にして、各層の厚さの比が離型層:中間層:離型層=1:4:1であり、総厚が120μmの3層フィルムを作製した。
【0068】
(比較例5)
実施例1と同様の方法で、各層の厚さの比が離型層:中間層:離型層=1:22:1であり、総厚が120μmの3層フィルムを作製した。
【0069】
(比較例6)
実施例1と同様の方法で、各層の厚さの比が離型層:中間層:離型層=11:2:11であり、総厚が120μmの3層フィルムを作製した。
【0070】
(比較例7)
実施例1と同様の方法で、各層の厚さの比が離型層:中間層:離型層=2.7:9.6:2.7であり、総厚が15μmの3層フィルムを作製した。
【0071】
(比較例8)
実施例1と同様の方法で、各層の厚さの比が離型層:中間層:離型層=1:2:1であり、総厚が200μmの3層フィルムを作製した。
【0072】
【表1】

【0073】
【表2】

【0074】
総厚35μmのカバーレイ/接着剤シートに、直径1.5mmの穴を開け、開口部とした。電解銅箔と、前記のカバーレイ/接着剤シートを積層してFPCを作製し、190℃、35kg/cm、加温時間120sで各実施例1〜6、比較例1〜8で得られた離型フィルムを用いて熱プレスを行い、それぞれの離型フィルムについて、以下の項目に関して評価を行なった。得られた結果を下記の表3、表4に示す。
【0075】
評価項目
(熱プレス後表面汚染)
熱プレス後のFPC基板の汚染を目視により評価した。カバーレイ表面が溶融樹脂により汚染されていないものを○、汚染されているものを×として評価した。
【0076】
(接着剤にじみ出し:カバーレイ開口部からの接着剤にじみ出し)
熱プレス工程後、カバーレイ開口部の接着剤のにじみ出しを顕微鏡により観察し、評価した。接着剤のにじみ出しが0.08mm以下であるものを○、接着剤のにじみ出しが0.08mmを超えるものを×として評価した。
【0077】
(剥離性1:剥離のしやすさ)
離型フィルムの剥離性をフィーリングにより評価した。手で剥離したとき、スムーズに剥離できたものを○、手で剥離したとき抵抗が大きく、一度に剥離できなかったものを×として評価した。
【0078】
(剥離性2:剥離時のフィルム破れの有無)
離型フィルムの剥離性を評価した。剥離時、フィルムの破れが発生しなかったものを○、発生したものを×として評価した。
【0079】
(離型フィルム中間層樹脂溶出:剥離時の溶融樹脂接着)
離型フィルムの中間層樹脂の溶出を評価した。剥離時、溶出中間層樹脂同士の接着が認められないものを○、認められるものを×として評価した。
【0080】
【表3】

【0081】
【表4】

【0082】
実施例1〜6のフィルムはいずれも、離型性に優れ、厚みムラが少なく、熱プレス時、カバーレイへの接着、剥離時のフィルムの破れもなかった。また、中間層の加熱時柔軟性により、カバーレイ開口部からの接着剤にじみ出し量が低減し、さらには、熱プレス時、中間層樹脂溶出による、樹脂同士の接着が認めらなかった。
【0083】
それに対して、比較例1〜3では、熱プレス時、カバーレイからの接着剤にじみ出し量が基準値以上であった。また、比較例4では、カバーレイからの接着剤にじみ出し量は基準値以下であったが、中間層樹脂の耐熱性が低下し、熱プレス時、中間層樹脂が溶出し、その溶出樹脂同士が接着した。
【0084】
比較例5では、離型層の形成が不十分であり、剥離性が低下した。比較例6では、中間層の厚さが薄く、形状追従性が不十分であり、熱プレス時、カバーレイからの接着剤にじみ出しが発生した。比較例7では、フィルムの総厚が薄く、製膜時、フィルムの破れから、フィルムの作製が困難であった。比較例8では、フィルムが厚いため剛性が高く、熱プレス時、カバーレイからの接着剤にじみ出しが発生した。
【0085】
(実施例7)
【0086】
中間層材料として、曲げ弾性率が600MPa以下のポリブチレンテレフタレート系樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商標登録:ノバデュラン5510S融点219℃、以下「樹脂(E)」と称する)70質量部と、プロピレン−エチレンランダム共重合体樹脂(プライムポリマー(株)製、プライムポリプロ F329RA、融点137℃、MFR25g/10min(230℃、2.16kg荷重時)、以下「樹脂(F)」と称する)20質量部と、エポキシ化ポリオレフィン樹脂(住友化学(株)製、登録商標:ボンドファースト7M(d=0.960g/cm、融点52℃、MFR=7、以下「樹脂(G)」と称する)10質量部と、を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、各層の厚さの比が離型層:中間層:離型層=1:4:1であり、総厚が120μmの3層フィルムを作製した。
【0087】
(実施例8)
中間層材料として、曲げ弾性率が600MPa以下のポリブチレンテレフタレート系樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商標登録:ノバデュラン5510S融点219℃、以下「樹脂(E)」と称する)70質量部と、プロピレン−エチレンランダム共重合体樹脂(プライムポリマー(株)製、プライムポリプロ F329RA、融点137℃、MFR25g/10min(230℃、2.16kg荷重時)、以下「樹脂(F)」と称する)20質量部と、エポキシ化ポリオレフィン樹脂(住友化学(株)製、登録商標:ボンドファースト7M(d=0.960g/cm、融点52℃、MFR=7、以下「樹脂(G)」と称する)10質量部と、を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、各層の厚さの比が離型層:中間層:離型層=1:4:1であり、総厚が120μmの3層フィルムを作製した。
【0088】
(実施例9)
中間層材料に使用する樹脂(E)を60質量部、樹脂(F)を25質量部、樹脂(G)を10質量部用いたこと以外は、実施例7と同様にして、各層の厚さの比が離型層:中間層:離型層=1:4:1であり、総厚が120μmの3層フィルムを作製した。
【0089】
(実施例10)
中間層材料に使用する樹脂(E)を60質量部、樹脂(F)を25質量部、樹脂(G)を10質量部用いたこと以外は、実施例8と同様にして、各層の厚さの比が離型層:中間層:離型層=1:4:1であり、総厚が120μmの3層フィルムを作製した。
【0090】
(実施例11)
押出直後の溶融樹脂に、マット調エンボスロールを接触させ、両面に粗化加工を施したこと以外は、実施例7と同様にして、各層の厚さの比が離型層:中間層:離型層=1:4:1であり、総厚が120μmの3層フィルムを作製した。
【0091】
(実施例12)
押出直後の溶融樹脂に、マット調エンボスロールを接触させ、両面に粗化加工を施したこと以外は、実施例8と同様にして、各層の厚さの比が離型層:中間層:離型層=1:4:1であり、総厚が120μmの3層フィルムを作製した。
【0092】
(比較例9)
中間層材料に使用する樹脂(E)を90質量部、樹脂(F)を5質量部、樹脂(G)を5質量部用いたこと以外は、実施例7と同様にして、各層の厚さの比が離型層:中間層:離型層=1:4:1であり、総厚が120μmの3層フィルムを作製した。
【0093】
(比較例10)
中間層材料に使用する樹脂(E)を35質量部、樹脂(F)を55質量部、樹脂(G)を10質量部用いたこと以外は、実施例7と同様にして、各層の厚さの比が離型層:中間層:離型層=1:4:1であり、総厚が120μmの3層フィルムを作製した。
【0094】
(比較例11)
中間層材料に使用する樹脂(E)を45質量部、樹脂(F)を10質量部、樹脂(G)を45質量部用いたこと以外は、実施例7と同様にして、各層の厚さの比が離型層:中間層:離型層=1:4:1であり、総厚が120μmの3層フィルムを作製した。
【0095】
(比較例12)
中間層材料に使用する樹脂(E)を60質量部、樹脂(F)を40質量部、相溶化剤(D)を15質量部用いたこと以外は、実施例7と同様にして、各層の厚さの比が離型層:中間層:離型層=1:4:1であり、総厚が120μmの3層フィルムを作製した。
【0096】
【表5】

【0097】
総厚35μmのカバーレイ/接着剤シートに、直径1.5mmの穴を開け、開口部とした。電解銅箔と、前記のカバーレイ/接着剤シートを積層してFPCを作製し、190℃、35kg/cm、加温時間120sで各実施例7〜12、比較例9〜12で得られた離型フィルムを用いて熱プレスを行い、それぞれの離型フィルムについて、上記の項目および金属部への付着に関して評価を行なった。得られた結果を下記の表6に示す。
【0098】
(金属部への付着)
ブレンドミキサーのホッパー部への樹脂の投入時、相溶化剤の金属への付着の有無について、目視により評価した。中間層樹脂をブレンドミキサーへ投入する際、相溶化剤の分離が認められない場合を○、相溶化剤が分離し、周囲の金属部に付着している場合を×として評価した。
【0099】
【表6】

【0100】
実施例7〜12のフィルムはいずれも、離型性に優れ、厚みムラが少なく、熱プレス時、カバーレイへの接着、剥離時のフィルムの破れもなかった。また、中間層の加熱時柔軟性により、カバーレイ開口部からの接着剤にじみ出し量が低減し、さらには、熱プレス時、中間層樹脂溶出による、樹脂同士の接着が認めらなかった。
【0101】
それに対して、比較例9では、熱プレス時、カバーレイからの接着剤にじみ出し量が基準値以上であった。また、比較例10では、カバーレイからの接着剤にじみ出し量は基準値以下であったが、中間層樹脂の耐熱性が低下し、熱プレス時、中間層樹脂が溶出し、その溶出樹脂同士が接着した。さらに、比較例11では、樹脂(G)の添加比率が高く、中間層樹脂の耐熱性が低下し、熱プレス時、中間層樹脂が溶出し、その溶出樹脂同士が接着した。また、原料コストも高くなった。さらにまた、比較例12では、中間層樹脂のドライブレンド時、押出機への投入時に相溶化剤が分離し、作製されたフィルムに分散のバラツキが原因と考えられる外観ムラが不定期に発生した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第三成分としてジオール化合物を共重合させたポリブチレンテレフタレート系樹脂(A)と、ポリメチルペンテン樹脂(B)とを主成分とし、樹脂(A):樹脂(B)の質量比が100:20〜100:5である樹脂組成物からなる2層の離型層の間に、樹脂成分100質量部に対し、曲げ弾性率が600MPa以下のポリブチレンテレフタレート系樹脂(E)を75〜50質量部、融点が110〜140℃である合成樹脂(F)を20〜50質量部含む樹脂組成物からなる中間層を有する多層構造であって、前記離型層と前記中間層の厚さの比が、離型層:中間層=1:10〜1:3であり、総厚が20〜160μmであることを特徴とする離型フィルム。
【請求項2】
前記離型層が、前記樹脂成分100質量部に対し、前記樹脂(A)と前記樹脂(B)とを合計で50質量部以上含む樹脂組成物からなる請求項1記載の離型フィルム。
【請求項3】
前記離型層が、前記樹脂成分100質量部に対し、ポリブチレンテレフタレートホモポリマー(C)を30質量部以下で含む樹脂組成物からなる請求項1または2記載の離型フィルム。
【請求項4】
前記離型層が、前記樹脂成分100質量部に対し、前記樹脂(A)と前記樹脂(B)との相溶化剤(D)を1〜10質量部含む樹脂組成物からなる請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の離型フィルム。
【請求項5】
前記合成樹脂(F)が、プロピレン−エチレンランダム共重合体樹脂である請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の離型フィルム。
【請求項6】
前記プロピレン−エチレンランダム共重合体樹脂が、230℃、2.16kg荷重時のメルトフローレート(MFR)が20〜30g/10minである請求項5に記載の離型フィルム。
【請求項7】
前記中間層が、前記樹脂成分100質量部に対し、前記樹脂(E)と前記合成樹脂(F)との相溶化剤(D)を5〜20質量部含む樹脂組成物からなる請求項1〜6に記載の離型フィルム。
【請求項8】
前記相溶化剤(D)が、融点50〜110℃のエポキシ化ポリオレフィン樹脂(G)であり、
前記中間層が、前記樹脂成分100質量部に対し、前記樹脂(E)を75〜50質量部、前記合成樹脂(F)を20〜30質量部、および前記樹脂(G)を5〜20質量部含む請求項7に記載の離型フィルム。
【請求項9】
前記離型層表面の片面または両面が粗化加工されている請求項1〜8のうちいずれか一項に記載の離型フィルム。
【請求項10】
前記離型層表面が、前記樹脂組成物を溶融押出しフィルム成形する際、表面粗化された冷却ロールに接触させることにより粗化加工を施されている請求項9記載の離型フィルム。
【請求項11】
前記離型層表面が、全面に渡り均質な凹凸が形成される柄で粗化加工されている請求項9または10記載の離型フィルム。
【請求項12】
請求項1〜11のうちいずれか一項に記載の離型フィルムの製造方法であって、前記離型フィルム用樹脂組成物を混練り、溶融し、次いで、多層Tダイ型成形機で共押出により成形することを特徴とする離型フィルムの製造方法。
【請求項13】
前記樹脂組成物を溶融押出フィルム成形する際、表面粗化された冷却ロールに接触させることにより前記離型層を粗化加工する請求項12記載の離型フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2010−234794(P2010−234794A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152747(P2009−152747)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】