説明

離型フィルム

【課題】 製造工程内、使用工程内でロール汚染のない、優れた特性を有する離型フィルムを提供する。
【解決手段】 10〜100mN/cmの剥離力を有する離型層をポリエステルフィルムの片面に設けたフィルムであり、当該フィルムのプレス接着率が95%以上であり、かつ残留接着率が90%以上の範囲であり、離型層が下記式(1)で表される耐磨耗剥離性(T)を満足することを特徴とする離型フィルム。
T=F(10)/F(0)≦1.5 …(1)
(上記式中、F(0)はラビングテスターによるラビングを行わない時の剥離力、F(10)はラビングテスターによるラビングを10回行った後の剥離力を意味する)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型フィルムに関するものであり、詳しくは離型フィルムを用いた製造工程において、製造工程内のロール汚染が極めて少ない離型フィルムに関するものである。さらに詳しくは、本発明は、例えば、液晶ディスプレイ(以下、LCDと略記する)、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと略記する)、有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELと略記する)等、表示部材製造用等の光学用途のほか、離型フィルム起因の異物を極端に嫌う用途や、製造工程の効率化を求められている用途に好適な離型フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルム上に接着性、帯電防止性等の各種機能を有する塗布層が設けられた離型フィルムは、液晶偏光板、位相差板、PDP、有機EL等の表示部材製造用等をはじめ、各種光学用途等に使用されている。
【0003】
各種光学用途の部材として離型フィルムが使用される製造方法としては、離型フィルムの離型層面側に粘着剤を塗布し粘着層を設け、その粘着層の上に各種基材を貼り合せる方法や、先に各種基材に粘着層を設け、その粘着層に離型層面側が接するように離型フィルムを貼り合せる方法が挙げられる。どちらの方法においても、粘着層を介して各種基材と離型フィルムを貼り合わす際に、ニップロールによる貼り合わせ工程を有し、離型層を有していない面は、強い力のニップロールに直接接触するため、フィルム表面に存在するオリゴマーがロールに付着して異物となり、製品欠陥の原因となったり、オリゴマーの付着したロールの洗浄により製造工程の歩留まりを悪くしたりするなどの問題がある。ニップロール以外においても、離型層を有していない面は、各製造工程でのロールと直接接触するため、同様の問題が生じる。
【0004】
たとえば、ポリエステルフィルム表面のオリゴマーがロール上で堆積し、異物として製品内に混入し光学用途に用いた場合には、光学製品として致命的な欠陥となり、堆積したオリゴマーを除去するためにラインを停止し、ラインの掃除が必要となる場合には、歩留まりが悪化し、低価格化への対応できなくなる場合がある。
【0005】
近年、IT(Information Technology)分野の躍進に伴い、LCD、PDP、有機EL等の表示部材製造時に使用される離型フィルムの品質向上と共に異物に伴う各種不具合がさらに顕在化する傾向にある。
【0006】
LCD、PDP用ディスプレイの反射防止フィルム用基材フィルム、タッチパネル用基材フィルム、液晶表示装置の構成部材であるプリズムレンズシート用基材フィルム、CRTのガラス飛散防止フィルム用基材フィルム、電子ペーパー用基材フィルム等には、特に優れた透明性が要求される。
【0007】
上述の各種基材フィルムとして離型フィルムを用いた場合、特に光を透過して見る、いわゆる視認性が極めて重視される用途でもあるため、フィルム表面の異物の存在なども、通常のフィルム用途では全く問題とならない異物でさえ、大問題となる。
【0008】
一方、生産性向上に伴う製造コストの低減を図ることを目的として、製造工程の高速化に伴い、上述のオリゴマーがより汚染しやすい状況になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−108252号公報
【特許文献2】特開2000−141568号公報
【特許文献3】特開2001−246698号公報
【特許文献4】特開2009−172792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その解決課題は、製造工程内、使用工程内でロール汚染のない、優れた特性を有する離型フィルムを提供することにある。
【0011】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の構成を有する離型フィルムによれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の要旨は、10〜100mN/cmの剥離力を有する離型層をポリエステルフィルムの片面に設けたフィルムであり、当該フィルムのプレス接着率が95%以上であり、かつ残留接着率が90%以上の範囲であり、離型層が下記式(1)で表される耐磨耗剥離性(T)を満足することを特徴とする離型フィルムに存する。
【0013】
T=F(10)/F(0)≦1.5 …(1)
(上記式中、F(0)はラビングテスターによるラビングを行わない時の剥離力、F(10)はラビングテスターによるラビングを10回行った後の剥離力を意味する)
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、製造工程内でロール汚染のない離型フィルムを提供することができ、その工業的価値は高い。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明における離型フィルムを構成するポリエステルフィルムは単層構成であっても積層構成であってもよく、例えば、2層、3層構成以外にも本発明の要旨を超えない限り、4層またはそれ以上の多層であってもよく、特に限定されるものではない。
【0016】
本発明においてポリエステルフィルムに使用するポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)等が例示される。一方、共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、P−オキシ安息香酸など)等の一種または二種以上が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上が挙げられる。何れにしても本発明でいうポリエステルとは、通常60モル%以上、好ましくは80モル%以上がエチレンテレフタレート単位であるポリエチレンテレフタレート等であるポリエステルを指す。
【0017】
本発明において、ポリエステル層中には、易滑性付与を主たる目的として粒子を配合することが好ましい。配合する粒子の種類は、本発明の主旨を損なわない範囲において、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の粒子が挙げられる。また、特公昭59−5216号公報、特開昭59−217755号公報等に記載されている耐熱性有機粒子を用いてもよい。この他の耐熱性有機粒子の例として、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる
【0018】
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0019】
また、用いる粒子の平均粒径は、通常0.01〜3μm、好ましくは0.01〜1μmの範囲である。平均粒径が0.01μm未満の場合には、粒子が凝集しやすく、分散性が不十分な場合があり、一方、3μmを超える場合には、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎて、後工程において離型層を塗設させる場合等に不具合が生じる場合がある。
【0020】
さらに、ポリエステル層中の粒子含有量は、通常0.001〜5重量%、好ましくは0.005〜3重量%の範囲である。粒子含有量が0.001重量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分な場合があり、一方、5重量%を超えて添加する場合には、フィルムの透明性が不十分な場合がある。
【0021】
ポリエステル層中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、各層を構成するポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後、重縮合反応を進めてもよい。
【0022】
また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
【0023】
なお、本発明において、離型フィルムを構成するポリエステルフィルム中には上記の粒子、蛍光増白剤以外に、本発明の主旨を損なわない範囲において、必要に応じて、従来公知の酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料、紫外線吸収剤等を添加し併用することができる。
【0024】
本発明の離型フィルムを構成するポリエステルフィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、用途上、通常9〜188μm、好ましくは12〜100μmの範囲である。
【0025】
次に本発明におけるポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。
【0026】
まず、先に述べたポリエステル原料を使用し、ダイから押し出された溶融シートを冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る方法が好ましい。この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高める必要があり、静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。次に得られた未延伸シートは二軸方向に延伸される。その場合、まず、前記の未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃であり、延伸倍率は通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する延伸温度は通常70〜170℃であり、延伸倍率は通常3.0〜7倍、好ましくは3.5〜6倍である。そして、引き続き180〜270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
【0027】
また、本発明におけるポリエステルフィルム製造に関しては同時二軸延伸法を採用することもできる。同時二軸延伸法は前記の未延伸シートを通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃で温度コントロールされた状態で機械方向および幅方向に同時に延伸し配向させる方法で、延伸倍率としては、面積倍率で4〜50倍、好ましくは7〜35倍、さらに好ましくは10〜25倍である。そして、引き続き、170〜250℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。上記の延伸方式を採用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式、リニアー駆動方式等の延伸方式を採用することができる。
【0028】
本発明における離型フィルムを構成する離型層とは、離型性を有する層のことを指し、具体的には、アクリル系粘着テープと離型層との剥離力が10〜100mN/cmの剥離力を有する離型層をポリエステルフィルムの片面に設けたフィルムであり、当該フィルムのプレス接着率が95%以上かつ残留接着率が90%以上の範囲であり、上の範囲であり、離型層が下記式で表す耐磨耗剥離性を満足する。
【0029】
T=F(10)/F(0)≦1.5
(上記式中、F(0)はラビングテスターによるラビングを行わない時の剥離力、F(10)はラビングテスターによるラビングを10回行った後の剥離力を意味する)
【0030】
プレス残留率が95%未満では、ロールに巻き取った後、離型層面の反対側の面にシリコーン成分が移行し、ロール搬送時にフィルムが巻きずれし好ましくない。
【0031】
残留接着率が90%未満では、離型層に粘着加工を行った際にシリコーンが転写し、粘着力が低下し好ましくない。
【0032】
T(F(10)/F(0))が1.5を超えると、フィルム巻き出し時のわずかなズレで離型層が脱落し、脱落した離型層が微粉体となり、離型層面の反対側の面に付着し、離型フィルムが利用される工程を汚染することになり好ましくない。
【0033】
本発明における離型フィルムを構成する離型層は上記の塗布延伸法(インラインコーティング)等のフィルム製造工程内において、ポリエステルフィルム上に設けられてもよく、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、いわゆるオフラインコーティング(OLC)を採用してもよく、何れの手法を採用してもよい。塗布延伸法(インラインコーティング)については以下に限定するものではないが、例えば、逐次二軸延伸においては特に1段目の延伸が終了して、2段目の延伸前にコーティング処理を施すことができる。塗布延伸法によりポリエステルフィルム上に離型層が設けられる場合には、延伸と同時に塗布が可能になると共に離型層の厚みを延伸倍率に応じて薄くすることができ、ポリエステルフィルムとして好適なフィルムを製造できる。
【0034】
本発明における離型フィルムを構成する離型層は離型性を良好とするために硬化型シリコーン樹脂を含有するのが好ましい。硬化型シリコーン樹脂を主成分とするタイプでもよいし、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂等の有機樹脂とのグラフト重合等による変性シリコーンタイプ等を使用してもよい。
【0035】
硬化型シリコーン樹脂の種類としては付加型・縮合型・紫外線硬化型・電子線硬化型・無溶剤型等、何れの硬化反応タイプでも用いることができる。具体例を挙げると、信越化学工業(株)製KS−774、KS−775、KS−778、KS−779H、KS−847H、KS−856、KS−723A、KS−723B、X−62−2422、X−62−2461、X−62−1387、KNS−3051、X−62−1496、KNS320A、KNS316、X−62−1574A/B、X−62−7052、X−62−7028A/B、X−62−7619、X−62−7213、東レ・ダウコーニング(株)製DKQ3−202、DKQ3−203、DKQ3−204、DKQ3−205、DKQ3−210、DKQ3−3061、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製YSR−3022、TPR−6700、TPR−6720、TPR−6721、TPR6500、TPR6501、UV9300、UV9425、XS56−A2775、XS56−A2982、UV9430、TPR6600、TPR6604、TPR6605、東レ・ダウコーニング(株)製SRX357、SRX211、SRX67、SD7220、LTC750A、LTC760A、SP7259、BY24−468C、SP7248S、BY24−452等が例示される。
【0036】
また、離型層の剥離力を所定の値とするための手段は特に限定するものではなく、硬化後の離型層の厚さや重剥離化剤の配合で達成すればよい。
【0037】
重剥離化剤の具体例を上げると、信越化学工業(株)製KS−3800、X−92−183東レダウコーニング(株)製SDY7292、BY24−843、BY24−4980等が例示される。
【0038】
本発明において、ポリエステルフィルムに離型層を設ける方法として、リバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。塗工方式に関しては「コーティング方式」槇書店 原崎勇次著 1979年発行に記載例がある。
【0039】
本発明において、ポリエステルフィルム上に離型層を形成する際の硬化条件に関しては特に限定されるわけではないが、例えば、オフラインコーティングにより離型層を設ける場合、通常、120〜200℃で3〜40秒間、好ましくは100〜180℃で3〜40秒間を目安として熱処理を行うのがよい。また、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。なお、活性エネルギー線照射による硬化のためのエネルギー源としては、従来から公知の装置,エネルギー源を用いることができる。離型層の塗工量は塗工性の面から、通常0.005〜1g/m、好ましくは0.005〜0.5g/mの範囲である。塗工量が0.005g/m未満の場合、塗工性の面より安定性に欠け、均一な塗膜を得るのが困難になる場合がある。一方、1g/mを超えて厚塗りにする場合には離型層自体の塗膜密着性、硬化性等が低下する場合がある。
【0040】
また、離型フィルムを構成するポリエステルフィルムにはあらかじめ、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた測定法は次のとおりである。
【0042】
(1)ポリエステルの固有粘度の測定
ポリエステルに非相溶な他のポリマー成分および顔料を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0043】
(2)平均粒径(d50:μm)の測定
遠心沈降式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所社製SA−CP3型)を使用して測定した等価球形分布における積算(重量基準)50%の値を平均粒径とした。
(3)粒子の一次粒径
試料フィルム小片をエポキシ樹脂にて固定成型した後、ミクロトームで切断し、フィルムの断面を透過型電子顕微鏡にて観察した。フィルム断面中に観察される粒子の最大径(a)とそれと直交する径(b)とを計測し、次式から1個の粒子の一次粒径を求め、500個の粒子について測定し、その相加平均を粒子の一次粒径とした。
一個の粒子の一次粒径=(a+b)/2
【0044】
(4)剥離力の測定
A4カット判サイズの離型フィルムの離型層表面に両面粘着テープ(日東電工製「No.502」)の片面を貼り付けた後、50mm×300mmのサイズにカットし、室温にて1時間放置後の剥離力を測定した。剥離力は引張試験機((株)インテスコ製「インテスコモデル2001型」)を使用し、引張速度300mm/分の条件下、180°剥離を行った。
【0045】
(5)プレス接着率の測定
75μmポリエステルフィルム/測定試料フィルム/75μmポリエステルフィルムの構成とし、温度60℃、圧力1MPa、時間120分の条件でプレス処理を行う。プレス処理後、75μmポリエステルフィルムの、測定試料フィルム離型層面に接していた側の面に、日東製No.31テープを貼り付け、プレス接着力(A)を測定する。剥離力は、引張試験機((株)インテスコ製「インテスコモデル2001型」)を使用し、引張速度300mm/分の条件下、180°剥離を行った。
一方、プレス処理に用いたと同じ75μmポリエステルフィルムに、日東製No.31テープを貼り付け、プレス接着力(A)と同様の要領にて基礎接着力(B)を測定する。上記(A)、(B)より下記式に基づいてプレス接着率を求める。
【0046】
プレス接着率(%)=(プレス接着力(A)/基礎接着力(B))×100
なお、測定は20±2℃、65±5%RHにて行う。
【0047】
(6)残留接着率の測定
試料フィルムの離型層面に粘着テープ(日東電工(製)「No.31B」)を2kgゴムローラーにて1往復圧着し、100℃で1時間加熱処理する。次いで、圧着したサンプルから試料フィルムを剥がし、粘着テープをJIS−C−2107(ステンレス板に対する粘着力:180°引き剥がし法)の方法に準じて接着力を測定し、これを残留接着力とする。測定は、温度20±2℃、相対湿度65±5%の条件下に行う。
【0048】
(7)耐磨耗剥離性の評価
A4カット判サイズ離型フィルムの離型表面をベンコット(旭化成せんい社製)を装着したラビングテスター(太平理化工業社製)にて10回ラビングし、当該個所を測定サンプルとして、上記(6)記載の方法で剥離力F(10)を測定した。なお、捺拭処理を行なわなかった場合の剥離力F(0)を測定し、下式により、耐磨耗性を求める。
耐磨耗性(T)=F(10)/F(0)
(8)ロール汚染状況
粘着層を有する積層フィルムを製造した際に、製造装置の各ロールを目視観察し、ロールの汚染状況を下記基準で評価した。
○:製造後のロール表面に付着物が見られない
△:製造後のロール表面に僅かに付着物が見られるが、製造上支障のないレベル
×:製造後のロール表面に付着物が見られ、ロール清掃を必要とする
【0049】
(9)離型特性
粘着層を有する積層フィルムより離型フィルムを剥がした時の状況より、離型特性を評価した。
○:離型フィルムが綺麗に剥がれ、粘着剤が離型層に付着する現象が見られない
△:離型フィルムは剥がれるが、速い速度で剥離した場合に粘着剤が離型層に付着する ×:離型フィルムに粘着剤が付着する
【0050】
(10)加工適正
粘着層を有する積層フィルムを製造において、製造状況を下記のランクに分けで評価した。
○:問題なく製造できた
△:問題が発生したが、製品を製造できた
×:問題が発生し、製品を製造することができなかった
上記判定基準中、△以上のものが実使用上問題なく使用できるレベルである。
【0051】
実施例および比較例において使用したポリエステルフィルムは、以下のようにして準備したものである。
[ポリエステルフィルムの製造方法]
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.09重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.04部を添加した後、エチレングリコールに分散させた平均粒子径2.4μmのシリカ粒子を0.07部、三酸化アンチモン0.04部を加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。
一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.65に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させた。得られたポリエチレンテレフタレートの極限粘度は0.65、オリゴマー(環状三量体)の含有量は0.98重量%であった。
【0052】
得られたポリエチレンテレフタレートを180℃で4時間、不活性ガス雰囲気中で乾燥し、溶融押出機により290℃で溶融し、口金から押出し静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して未延伸シートを得た。得られた未延伸シートにまず、95℃で延伸倍率をMD方向に3.6倍延伸し、テンターに導き、TD方向に4.3倍の逐次二軸延伸を行った。その後、230℃にて3秒間熱固定し、厚さ38μmのポリエステルフィルムフィルムを得た。
【0053】
実施例1:
ポリエステルフィルムに、下記離型剤組成−1からなる離型剤を塗布量(乾燥後)が0.1g/mになるようにリバースグラビアコート方式により塗布し、ドライヤー温度120℃、ライン速度30m/分の条件でロール状の離型フィルムを得た。得られたPETフィルムに下記離型剤組成−1からなる離型層を塗布量が0.1g/m(乾燥後)になるように設けて離型フィルムを得た。
《離型剤組成−1》
硬化シリコーン樹脂(X−62−5039:信越化学製) 20部
硬化シリコーン樹脂(X−92−185:信越化学製) 0.4部
硬化剤(PL−5000:信越化学製) 1部
MEK/トルエン混合溶媒(混合比率は1:1) 360部
実施例2:
【0054】
実施例1において、塗布剤組成を下記に示す離型剤組成−2に変更する以外は実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
《離型剤組成−2》
硬化型シリコーン樹脂(KS−774:信越化学製) 20部
硬化シリコーン樹脂 (PLR−1:信越化学製) 0.1部
硬化シリコーン樹脂 (PLR−2:信越化学製) 0.2部
硬化剤(PL−50T:信越化学製) 0.2部
MEK/トルエン混合溶媒(混合比率は1:1) 510部
【0055】
実施例3:
実施例1において、塗布剤組成を下記に示す離型剤組成−3に変更する以外は実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
《離型剤組成−3》
硬化型シリコーン樹脂(KS−774:信越化学製) 18部
硬化型シリコーン樹脂(X−92−183:信越化学製) 2部
硬化シリコーン樹脂 (PLR−1:信越化学製) 0.1部
硬化シリコーン樹脂 (PLR−2:信越化学製) 0.2部
硬化剤(PL−50T:信越化学製) 0.2部
MEK/トルエン混合溶媒(混合比率は1:1) 510部
【0056】
比較例1:
実施例1において、塗布剤組成を下記に示す離型剤組成−4に変更する以外は実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
《離型剤組成−4》
硬化シリコーン樹脂(KS−84H:信越化学製) 20部
硬化剤(PL−50T:信越化学製) 0.2部
MEK/トルエン混合溶媒(混合比率は1:1) 510部
【0057】
比較例2:
実施例1において、塗布剤組成を下記に示す離型剤組成−5に変更する以外は実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
《離型剤組成−5》
硬化型シリコーン樹脂(KS−847H:信越化学製) 100部
硬化剤(PL−50T:信越化学製) 1部
ポリエーテル変性シリコーンオイル(KF−351:信越化学製) 10部
MEK/トルエン混合溶媒(混合比率は1:1) 1500部
【0058】
比較例3:
実施例1において、塗布剤組成を下記に示す離型剤組成−6に変更する以外は実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
《離型剤組成−6》
硬化型シリコーン樹脂(KS−854:信越化学製) 100部
硬化剤(PL−50T:信越化学製) 1部
MEK/トルエン混合溶媒(混合比率は1:1) 1500部
以上、得られた結果をまとめて下記表に示す。
【0059】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のフィルムは、例えば、LCDに用いられる偏光板、位相差板等のLCD構成部材製造用、PDP構成部材製造用、有機EL構成部材製造用等、各種ディスプレイ構成部材製造用として好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
10〜100mN/cmの剥離力を有する離型層をポリエステルフィルムの片面に設けたフィルムであり、当該フィルムのプレス接着率が95%以上であり、かつ残留接着率が90%以上の範囲であり、離型層が下記式(1)で表される耐磨耗剥離性(T)を満足することを特徴とする離型フィルム。
T=F(10)/F(0)≦1.5 …(1)
(上記式中、F(0)はラビングテスターによるラビングを行わない時の剥離力、F(10)はラビングテスターによるラビングを10回行った後の剥離力を意味する)

【公開番号】特開2012−183803(P2012−183803A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50235(P2011−50235)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】