説明

離床センサ

【課題】簡単な構成で、人の着床/離床状態を精度良く検知する離床センサを提供する。
【解決手段】下部電極34は、土台22に固着されて上部電極32に向かって持ち上げられており、スペーサ38は、土台22のスリット36に配置されている。人が上部電極32に荷重をかけると、スペーサ38が弾性変形してスリット36に収容されることによって、上部電極32が絶縁体30を介して下部電極34に重なる。これにより、人が上部電極32に荷重をかける状態とかけない状態とでコンデンサの静電容量の変化が大きくなり、人の着床/離床状態を精度良く検知できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人が寝具から離れる状態を検知する離床センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、離床センサとしては、コンデンサの静電容量の変化を検出することで、着床/離床を判定する静電容量方式の離床センサがある(例えば、特許文献1や特許文献2を参照)。この離床センサは、上部電極と下部電極とが絶縁体(誘電体)を介して対向配置されることでコンデンサを構成し、更に上部電極と下部電極との離隔状態が弾性変形可能なスペーサを介して保持された構造とされている。離床センサの上部電極は、寝具において人の荷重がかかる位置に配される。
【0003】
人が上部電極に荷重をかけると、スペーサが弾性変形して、上部電極と下部電極との間隔が狭くなることにより、コンデンサの静電容量が大きくなる。また、人が寝具から離れると、上部電極に荷重がかからなくなって、スペーサの弾性変形が復元し、上部電極と下部電極との間隔が初期(人が上部電極に荷重をかける前)の大きさに戻ることによって、コンデンサの静電容量が初期の値に変化する。この荷重による静電容量の変化を利用して、人の着床/離床状態を判定することができる。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4069256号公報
【特許文献2】特許第3627044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に示される離床センサでは、スペーサの下端部分が下部電極と同じ高さかそれよりも高い位置に配されており、上部電極と下部電極との間においてスペーサの高さ方向(上部電極と下部電極の対向方向、換言すれば上部電極に人の荷重がかかる方向)の変形領域が狭かった。
【0006】
このため、人が上部電極に荷重をかけても、スペーサが十分に圧縮変形せず、上部電極を下部電極に対して絶縁体を介して重ねる程に十分に近接させることが難しかった。また、上部電極が絶縁体を挟んで下部電極に重なったとしても、点接触や面接触のようになる場合が多く、面接触のように広い面積で重ねることが難しかった。その結果、人が荷重をかけない状態とかけた状態とにおいて、コンデンサの静電容量の変化量が小さくなってしまい、離床状態や着床状態の検出精度が低い問題があった。
【0007】
なお、上述の問題に対処するために、例えば(a)スペーサの弾性率を小さくしたり、(b)スペーサの高さ寸法を上部電極や下部電極の面積に比して十分に小さくしたりすること等によって、上部電極に荷重がかかった際に、上部電極を絶縁体を挟んで下部電極に重ねやすくすることが考えられる。
【0008】
ところが、上記(a)、(b)の何れの方法においても、上部電極が無負荷の状態下、上部電極などの自重によりスペーサが弾性変形して、上部電極と下部電極が近接する可能性があった。このため、人が上部電極に荷重をかけていなくても着床していると誤検知するおそれがあった。
【0009】
つまり、特許文献1、2に示される従来の静電容量方式の離床センサでは、「上部電極に荷重をかけない状態で上部電極と下部電極との間隙を確実に確保する一方、上部電極に荷重をかけた状態で上部電極を絶縁体を介して下部電極に重ねる程に近接させることによって、コンデンサの静電容量の変化量を大きくする」という構成が実現され難かった。
【0010】
ちなみに、上記構成を実現するために、例えば、上部電極と下部電極との間隙寸法やスペーサの弾性率などを最適に調整しようとすると、電極やスペーサにおける形状や大きさ、スペーサの材質などの設定が極めて難しくなることから、現実的でないのである。
【0011】
本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その目的とするところは、簡単な構成で、人の着床/離床状態を精度良く検知する離床センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の課題を解決するために為された本発明に関する請求項1に記載の離床センサでは、人が寝具から離れる状態を検知する離床センサであって、(イ)前記寝具において人の荷重がかかる位置に配される上部電極と、該上部電極と異極であり該上部電極の下方に離隔配置される下部電極と、それら上部電極と下部電極との間に設けられた絶縁体とからなるコンデンサと、(ロ)前記下部電極の下面に固定されることによって、該下部電極を前記上部電極に向かって持ち上げると共に、該下部電極に固定された部分の周囲にはスリットを備えた土台と、(ハ)前記土台の前記スリットに配置されており、人が前記上部電極に荷重をかけない状態で、該スリットから該上部電極に向かって突出して、該上部電極を前記下部電極から離隔して支持する一方、人が該上部電極に荷重をかける状態で、弾性変形により、該スリット内に収容されて、該上部電極を前記絶縁体を介して該下部電極に重ねるスペーサと、(二)前記上部電極や前記下部電極、前記絶縁体で構成される前記コンデンサの静電容量の大きさを検知して、かかる検知信号を出力する検知手段と、(ホ)人が前記上部電極に荷重をかけて、前記スペーサの弾性変形に伴い該上部電極が前記絶縁体を介して前記下部電極に重なることによって、前記検知手段により出力された前記検知信号が所定の基準値よりも大きくなった場合に、人が着床したと判定する着床判定手段と、(へ)前記着床検知手段によって人が着床したと判定された状態から人が前記上部電極に荷重をかけなくなって、前記スペーサの弾性変形が復元して該上部電極が前記下部電極から離隔することによって、前記検知手段により出力された前記検知信号が前記基準値よりも小さくなった場合に、人が離床したと判定する離床判定手段と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明の離床センサにおいては、下部電極が土台によって上部電極側に持ち上げられていることにより、人が上部電極に荷重をかけた際に、上部電極を絶縁体を介して下部電極に広い面積で重ねやすくなる。
【0014】
しかも、スペーサが土台における下部電極の周りに設けられたスリットに配置されていることによって、スペーサの変形領域が、上部電極と下部電極との間の領域で制限されることなく、十分に確保されている。これにより、人が上部電極に荷重をかけた際に、スペーサが圧縮変形してスリットに収容されることとなり、上部電極を絶縁体を介して下部電極に確実に重ねることができる。
【0015】
このように人が上部電極に荷重をかけた状態で、上部電極と下部電極が絶縁体を挟んで重なり合う構造とされていることから、両電極の間隙を効果的に狭めることができる。それ故、人が上部電極に荷重をかけた状態のコンデンサの静電容量は、人が上部電極に荷重をかけずに上部電極と下部電極が離隔した状態のコンデンサの静電容量と比べて、十分に大きくなる。つまり、人が上部電極に荷重をかけた着床状態と荷重をかけない離床状態とにおいて、コンデンサの静電容量の差が大きくなる。
【0016】
従って、本発明の離床センサによれば、上部電極と下部電極との間隙寸法やスペーサの弾性率などを特別に配慮せずとも、着床状態と離床状態とでコンデンサの静電容量の変化量(差)を大きくできることから、簡単な構成で、人の着床/離床状態を精度良く検知することができる。
【0017】
また、本発明の離床センサでは、例えば請求項2に記載されているように、前記土台は櫛形状を呈していて、前記下部電極は該土台における歯形状の部分に固定され、前記スリットは該土台における歯形状の部分の隙間により構成されると共に、前記スペーサは櫛形状の弾性部材における歯形状の部分により構成され、前記弾性部材の各歯形状の部分を前記土台の各隙間に挿し入れることによって、複数の前記スペーサが複数の前記スリットに配置される構成が採用されても良い。
【0018】
このような構成によれば、複数のスペーサを備えた実用的な離床センサを形成するにあたり、スペーサを一つずつ形成してスリットに配置する必要がなくなることから、製造工程が簡略化されて、実用的な離床センサの量産が好適に実現される。
【0019】
また、本発明の離床センサでは、例えば請求項3に記載されているように、前記絶縁体はシート状の合成樹脂材料からなり、該絶縁体にカーボン電極を印刷して、該カーボン電極によって前記上部電極又は前記下部電極を構成する構成が採用されても良い。
【0020】
このような構成によれば、電極が絶縁体に印刷されていることによって、電極を薄く形成することが出来る。その結果、ベッドやふとん等の寝具に設置される離床センサの設置高さが抑えられ、使用者に対して離床センサの設置による異物感を軽減することができる。
【0021】
しかも、電極が絶縁体に印刷されることから、例えば、電極を絶縁体に固定するために電極と絶縁体との間に接着材などの固定手段を特別に設ける必要がないため、部品点数の削減により、構成の簡略化が図られる。
【0022】
また、本発明の離床センサでは、例えば請求項4に記載されているように、前記コンデンサや前記土台、前記スペーサを全体に亘って覆うようにして、通気性及び防水性を有する保護シートが設けられている構成が採用されても良い。
【0023】
このような構成によれば、保護シートの通気性能及び防水性能により、上部電極と下部電極との間に湿気がたまることが防止される。それによって、両電極間の湿気に起因するコンデンサの静電容量の変化が抑えられることとなり、両電極の間隙の変化に基づいたコンデンサの静電容量の変化による着床状態の検知や離床状態の検知を一層精度良くすることができる。
【0024】
また、本発明の離床センサでは、例えば請求項5に記載されているように、前記保護シートは、直径0.1μm〜0.3μmの細孔を複数備えた多孔質の合成樹脂材料により形成されている構成が採用されても良い。
【0025】
本発明者は、離床センサがベッドやふとん等の寝具に設置される環境下において要求される通気性及び防水性を検討した結果、直径0.1μm〜0.3μmの細孔を複数備えた多孔質の合成樹脂材料を保護シートに採用することにより、所望の通気性及び防水性が得られることが判明した。つまり、細孔の直径が0.1μmよりも小さくなると、通気性が得られ難くなる一方、細孔の直径が3.0μmよりも大きくなると、防水性が得られ難くなるのである。
【0026】
なお、上記多孔質の合成樹脂材料からなる保護シートには、例えば、日東電工社製のミクロテックス(商標)やSUNMAP(商標)などで知られる超高分子量ポリエチレン樹脂や、米国デュポン社製のタイベック(商標)などで知られる高密度ポリエチレン繊維、ジャパンゴアテックス社製のゴアテックス(商標)などで知られる四ふっ化エチレン樹脂などが好適に採用される。
【0027】
また、本発明の離床センサでは、例えば請求項6に記載されているように、前記着床判定手段によって前記検知信号と前記基準値とを比較する前に、ティーチング処理として該基準値を設定するティーチング処理手段を備えている構成が採用されても良い。
【0028】
このような構成によれば、例えば、スペーサの経年変化によって上部電極と下部電極との間隙が変わったり、センサ外部の湿度等の影響により絶縁体の誘電率が変わったりすることで、着床状態を検知する前のコンデンサの静電容量が、センサの起動毎に変化したとしても、ティーチング処理として基準値がセンサの起動毎に設定される。
【0029】
つまり、スペーサの経年変化やセンサ外部の湿度等の影響に応じて、基準値が更新されることから、当該影響を無視した基準値の設定に起因する着床状態や離床状態の誤検知が防止され、着床状態や離床状態の検知制度が一層向上される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態としての離床センサをベッドに設置した状態を示す斜視図。
【図2】離床センサの一要部を示す図面であって、(a)はその平面図であり、(b)はその側面図である。
【図3】離床センサの一部を構成する上部シートを示す平面図。
【図4】離床センサの一部を構成するベースシートの上面に下部シートを固着した状態を示す平面図。
【図5】離床センサの一部を構成する中間シートを示す平面図。
【図6】離床センサの一部を構成するセンサ本体を拡大して示す縦断面図。
【図7】センサ本体を拡大して示す縦断面図であって、図6とは異なる形態を示す図。
【図8】離床センサを用いて着床/離床判定を行うことを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0031】
[構成の説明]
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1には、本発明の一実施形態としての離床センサ10が寝具としてのベッド12に設置された状態が示されている。離床センサ10は、センサ本体14や制御装置(以下、ECUとも言う)16を含んで構成されている。
【0032】
センサ本体14は、図2(a),(b)に示されるように、全体として薄肉の長手矩形板状を呈しており、上部シート18や下部シート20、ベースシート22、中間シート24、緩衝部材26、保護シート28を含んで構成されている。
【0033】
上部シート18は、図3に示されるように、薄肉の長手矩形板状を呈しており、絶縁体としてのポリエチレンテレフタレート(PET)などの合成樹脂材料からなる絶縁シート30と、絶縁シート30の上面に印刷されたカーボンブラックなどからなる上部電極32とを備える。つまり、上部シート18は、薄肉のラミネートフィルム構造とされている。
【0034】
下部シート20は、上部シート18と同様なラミネートフィルム構造とされ、絶縁シート30の上面にカーボンブラックなどからなる下部電極34が印刷されてなる。また、下部シート20は、図4に示されるように、細長の櫛形状を呈している。このような下部シート20における絶縁シート30の下面には、ベースシート22が固着されている。
【0035】
土台としてのベースシート22は、下部シート20と同一の櫛形状を呈していると共に、ゴム弾性体を用いて形成されている。また、ベースシート22において下部シート20の各下部電極34の下方に配される各歯形状の部分の隙間が、本発明のスリット36とされている。
【0036】
中間シート24は、図5に示されるように、細長の櫛形状を呈していて、スポンジ状ゴムなどからなる弾性部材により構成されている。また、中間シート24における各歯形状の部分が、本発明のスペーサ38とされている。
【0037】
これら上部シート18と下部シート20は、図6中の上下方向で対向配置されている。また、中間シート24の各スペーサ38が、ベースシート22の各スリット36に挿し入れられている。ここで、スペーサ38の上下方向に人の荷重がかからない状態下、スペーサ38の下端部分がスリット36に収容されていると共に、スペーサの上端部分がスリット36から上方に突出して、上部シート18の絶縁シート30に当接されている。これにより、スペーサ38が無負荷の状態において、上部シート18と下部シート20が、複数のスペーサ38を介して上下方向に離隔されている。
【0038】
このことからも明らかなように、上部電極32と下部電極34は、上部シート18の絶縁シート30を介して対向配置されており、これら上部電極32や下部電極34、絶縁シート30によってコンデンサが構成されている。
【0039】
また、保護シート28が、上部シート18や下部シート20、中間シート24を全体に亘って覆うようにして設けられている。この保護シート28は、直径0.1μm〜0.3μmの細孔を複数備えた多孔質の合成樹脂材料からなり、通気性及び防水性を有している。本実施形態では、保護シート28として米国デュポン社製のタイベック(商標)が採用されている。
【0040】
なお、本実施形態では、上部シート18の上部電極32と保護シート28との間に板状のスポンジ状ゴムなどからなる緩衝部材26が配設されている。この緩衝部材26によって、センサ本体14の板厚方向(図6中、上下方向)のクッション性能が高められている。
【0041】
このようなセンサ本体14は、ベッド12のマット40上において人の荷重がかかる位置(例えば、人がマット40に仰臥した際に、肩甲骨あたりに当たる位置)に設置されている。なお、センサ本体14は、単にマット40に載置されているだけでも良いが、必要に応じて、固定手段を用いてマット40に固定されても良い。この固定手段としては、例えば、センサ本体14の保護シート28の長手方向(図2中、左右)の両端に架け渡されて、マット40に巻き付き固定される紐部材や、センサ本体14の下面とマット40の上面とで対になって固定されるマジックテープ(登録商標)などが採用される。
【0042】
図7に示されるように、センサ本体14に上方から人の荷重がかかると、スペーサ38が高さ方向(図7中、上下方向)に圧縮変形して、スリット36に収容される。そして、スペーサ38の上端面と下部電極34の上端面とが略同じ高さになると、上部電極32が上部シート18の絶縁シート30を介して下部電極34に重ね合わされる。また、これら上部電極32と下部電極34は、リード線42を介してECU16と電気的に接続されている。
【0043】
ECU16は、CPUやROM、RAM等を含むマイクロコンピュータからなり、上部電極及び下部電極に検出波(例えば、1kHz未満の周波数)を送出して、コンデンサの静電容量に流れる電流を電圧信号として測定する。かかる電圧信号に基づいて人の着床状態又は離床状態を判定し、着床状態又は離床状態を報知する。
【0044】
この報知手段としては、例えば介護施設や病院等に設置されるナースコールシステムが採用される。即ち、周知のナースコールシステムとECU16とが電気的に接続(有線、無線を問わない。)されて、ECU16が着床状態又は離床状態の報知信号をナースセンターに出力する。図1には、ECU16がナースコールシステムと有線接続される場合のケーブル44が示されている。また、別の報知手段としては、介護士等が携帯して、ECU16からの着床状態又は離床状態の報知信号を無線により受信する携帯機器が採用される。
【0045】
また、ECU16には、離床センサ10の運転の開始/停止をするための運転スイッチ46や、運転中に点灯する運転ランプ48や、着床中に点灯し、離床中に点滅する着床/離床検出ランプ50が設けられている。
【0046】
[離床センサ10による着床/離床判定の説明]
このような離床センサ10を用いて人の着床/離床状態を判定する処理の手順について、図8を参照しつつ説明する。図8に記載の「S」は「ステップ」の簡略表記である。
【0047】
なお、ECU16は、運転スイッチ46のオン時に電源供給を受けて、図8に示される処理を実行し、運転スイッチ46のオフ時に、電源供給が遮断されて当該処理を終了する。本実施形態では、人が運転スイッチ46を押すと、ECU16が運転を開始すると共に、運転ランプ48を点灯させ、再度人が運転スイッチ46を押すと、運転を停止すると共に、運転ランプ48を消灯させる。また、この図8に示される処理は、運転状態で所定の期間毎に繰り返し実施される。
【0048】
先ず、S100においてECU16は、着床及び離床を判断する為の基準データとして、センサ本体14に荷重がかかっていない状態での基準値を自動で測定、保存する。この基準値は、センサ本体14が無負荷の状態(図6の状態)でのコンデンサの静電容量に流れる電流を電圧信号として測定した初期値に所定倍率をかけた値である。センサ本体14が無負荷の状態で人が運転スイッチ46を押すと、運転ランプ48が高速点滅し、基準値自動ティーチングを開始する。所定の時間が経過後、運転ランプ48が点灯表示となり、自動ティーチングが完了する。ECU16は、ティーチング中(所定の経過時間)の平均値を基準値として保存する。ECU16は、運転を停止すると、ティーチングデータを消去する。
【0049】
S102においてECU16は、基準値が規定値よりも大きいか否かを判断する。規定値とは、センサ本体14に荷重がかかっていない状態、つまり上部電極32と下部電極34が離隔している状態で、上部電極32と下部電極34との間隙が過剰に狭くなる際のコンデンサの静電容量の電圧信号の値とされる。即ち、センサ本体14は使用していくと、スペーサ38の復元力が低下し、次第に基準値が高くなっていく。基準値自動ティーチングの際、得られた値が規定値を超えた場合(S102、YES(以下、Yと表記))、センサの寿命とみなし、運転を停止する(S104)。このとき、ECU16は、運転ランプ48と着床/離床検出ランプ50を同時に高速点滅させ、センサ寿命を報知する。
【0050】
ECU16は、基準値が規定値を超えていなければ(S102、NO(以下、Nと表記))、S106においてコンデンサの静電容量を流れる電流を電圧信号として測定し、S108においてかかる測定値が基準値よりも大きいか否かを判断する。ECU16は、測定値が基準値よりも小さければ(S108、N)、処理を終了する。
【0051】
一方、測定値が基準値を上回れば(S108、Y)、ECU16は、人がベッド14に着床したと判定し(S110)、着床/離床検出ランプ50を点灯させる。つまり、人がセンサ本体14に荷重をかけて、図7のようにスペーサ38が圧縮変形して、上部電極32と下部電極34とが絶縁シート30を介して重なった際に、コンデンサの静電容量の測定値(電圧信号)が基準値を上回るように、基準値自動ティーチング(S100)において、基準値が設定されている。
【0052】
また、ECU16は、S110において着床判定した際に、図示しないナースコールシステムに報知信号を出力する。
【0053】
さらに、ECU16は、S112において測定値が基準値よりも大きいか否かを判断する。ECU16は、測定値が基準値よりも大きければ(S112、Y)、処理を終了する。
【0054】
一方、測定値が基準値を下回れば(S112、N)、ECU16は、かかる測定値の計測時間が所定時間よりも大きいか否かを判断する(S114)。そして、計測時間が所定時間よりも小さければ(S114、N)、ECU16は処理を終了する。一方、ECU16は、計測時間が所定時間よりも大きければ(S114、Y)、人がベッド14から離床したと判定し(S116)、着床/離床検出ランプ50を点滅させる。つまり、人がセンサ本体14から離れて、所定時間計測すると、スペーサ38の圧縮変形が復元して、図6のように上部電極32と下部電極34とが離隔した状態になる。この状態下で、コンデンサの静電容量の測定値(電圧信号)が基準値を下回るように、基準値自動ティーチング(S100)において、基準値が設定されている。
【0055】
また、ECU16は、S116において離床判定した際に、図示しないナースコールシステムに報知信号を出力する。
【0056】
なお、本発明の検知手段は、図8のS106において構成され、本発明の着床判定手段は、図8のS108とS110にて構成される。また、本発明の離床判定手段は、図8のS112、S114、S116にて構成され、本発明のティーチング処理手段は、図8のS100にて構成される。
【0057】
以上説明したように、本実施形態の離床センサ10によれば、下部電極34がベースシート22によって上部電極32側に持ち上げられていることにより、人が上部電極32に荷重をかけた際に、上部電極32を絶縁シート30を介して下部電極34に広い面積で重ねやすくなる。
【0058】
しかも、スペーサ38がベースシート22における下部電極34の周りに設けられたスリット36に配置されていることによって、スペーサ38の変形領域が、上部電極32と下部電極34との間の領域で制限されることなく、十分に確保されている。これにより、人が上部電極32に荷重をかけた際に、スペーサ38が圧縮変形してスリット36に収容されることとなり、上部電極32を絶縁シート30を介して下部電極34に確実に重ねることができる。
【0059】
このように人が上部電極32に荷重をかけた状態で、上部電極32と下部電極34が絶縁シート30を挟んで重なり合う構造とされていることから、両電極32,34の間隙を効果的に狭めることができる。それ故、人が上部電極32に荷重をかけた状態のコンデンサの静電容量は、人が上部電極32に荷重をかけずに上部電極32と下部電極34が離隔した状態のコンデンサの静電容量と比べて、十分に大きくなる。つまり、人が上部電極32に荷重をかけた着床状態と荷重をかけない離床状態とにおいて、コンデンサの静電容量の差が大きくなる。
【0060】
従って、本実施形態の離床センサ10によれば、上部電極32と下部電極34との間隙寸法やスペーサ38の弾性率などを特別に配慮せずとも、着床状態と離床状態とでコンデンサの静電容量の変化量(差)を大きくできることから、簡単な構成で、人の着床/離床状態を精度良く検知することができる。
【0061】
特に本実施形態では、土台は櫛形状のベースシート22により構成されて、スリット36はベースシート22における歯形状の部分の隙間により構成されている。また、スペーサ38は櫛形状の中間シート24における歯形状の部分により構成され、各スペーサ38をベースシート22の各スリット36に挿し入れることによって、複数のスペーサ38が複数のスリット36に配置されている。これにより、スペーサ38を一つずつ形成してスリット36に配置する必要がなくなることから、製造工程が簡略化されて、実用的な離床センサ10の量産が好適に実現される。
【0062】
以上、本発明の一実施形態について詳述してきたが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものでなく、実施態様が本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様で実施可能である。
【符号の説明】
【0063】
10…離床センサ、12…ベッド、22…ベースシート、30…絶縁シート、32…上部電極、34…下部電極、36…スリット、38…スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人が寝具から離れる状態を検知する離床センサであって、
前記寝具において人の荷重がかかる位置に配される上部電極と、該上部電極と異極であり該上部電極の下方に離隔配置される下部電極と、それら上部電極と下部電極との間に設けられた絶縁体とからなるコンデンサと、
前記下部電極の下面に固定されることによって、該下部電極を前記上部電極に向かって持ち上げると共に、該下部電極に固定された部分の周囲にはスリットを備えた土台と、
前記土台の前記スリットに配置されており、人が前記上部電極に荷重をかけない状態で、該スリットから該上部電極に向かって突出して、該上部電極を前記下部電極から離隔して支持する一方、人が該上部電極に荷重をかける状態で、弾性変形により、該スリット内に収容されて、該上部電極を前記絶縁体を介して該下部電極に重ねるスペーサと、
前記上部電極や前記下部電極、前記絶縁体で構成される前記コンデンサの静電容量の大きさを検知して、かかる検知信号を出力する検知手段と、
人が前記上部電極に荷重をかけて、前記スペーサの弾性変形に伴い該上部電極が前記絶縁体を介して前記下部電極に重なることによって、前記検知手段により出力された前記検知信号が所定の基準値よりも大きくなった場合に、人が着床したと判定する着床判定手段と、
前記着床検知手段によって人が着床したと判定された状態から人が前記上部電極に荷重をかけなくなって、前記スペーサの弾性変形が復元して該上部電極が前記下部電極から離隔して、前記検知手段により出力された前記検知信号が前記基準値よりも小さくなった場合に、人が離床したと判定する離床判定手段と、
を備えたことを特徴とする離床センサ。
【請求項2】
前記土台は櫛形状を呈していて、前記下部電極は該土台における歯形状の部分に固定され、前記スリットは該土台における歯形状の部分の隙間により構成されると共に、前記スペーサは櫛形状の弾性部材における歯形状の部分により構成され、前記弾性部材の各歯形状の部分を前記土台の各隙間に挿し入れることによって、複数の前記スペーサが複数の前記スリットに配置される請求項1に記載の離床センサ。
【請求項3】
前記絶縁体はシート状の合成樹脂材料からなり、該絶縁体にカーボン電極を印刷して、該カーボン電極によって前記上部電極又は前記下部電極を構成する請求項1又は2に記載の離床センサ。
【請求項4】
前記コンデンサや前記土台、前記スペーサを全体に亘って覆うようにして、通気性及び防水性を有する保護シートが設けられている請求項1乃至3の何れか一項に記載の離床センサ。
【請求項5】
前記保護シートは、直径0.1μm〜0.3μmの細孔を複数備えた多孔質の合成樹脂材料により形成されている請求項1乃至4の何れか一項に記載の離床センサ。
【請求項6】
前記着床判定手段によって前記検知信号と前記基準値とを比較する前に、ティーチング処理として該基準値を設定するティーチング処理手段を備えている請求項1乃至5の何れか一項に記載の離床センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−45296(P2012−45296A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192340(P2010−192340)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(710009771)
【Fターム(参考)】