離脱防止機能付きシール材および離脱防止管継手
【課題】管の接合作業を容易かつ短時間で行え、しかも、挿口の受口への接合時に大きな力を要しなくても済む離脱防止機能付きシール材を提供する。
【解決手段】受口3のシール材収容溝6に配設されるシール材7が、弾性を有して圧縮可能なシール材本体9に、離脱防止用のロック体10が埋設された構成とされ、受口3のシール材収容溝6に、管径方向の内側に突出する受口内面突部8が形成され、ロック体10に、受口3に対して挿口5が抜け出ようとする際に挿口5の外周面に食い込む爪部10aと、受口3のシール材収容溝6において挿口5が受口3に挿入された際に、受口内面突部8を収容可能な突部収容窪み部10bとが形成されている。これにより、ロック体10を比較的小さな回転角度移動しただけで、挿口5の挿入を許容可能な姿勢となり、挿入する際の力を低減することができる。
【解決手段】受口3のシール材収容溝6に配設されるシール材7が、弾性を有して圧縮可能なシール材本体9に、離脱防止用のロック体10が埋設された構成とされ、受口3のシール材収容溝6に、管径方向の内側に突出する受口内面突部8が形成され、ロック体10に、受口3に対して挿口5が抜け出ようとする際に挿口5の外周面に食い込む爪部10aと、受口3のシール材収容溝6において挿口5が受口3に挿入された際に、受口内面突部8を収容可能な突部収容窪み部10bとが形成されている。これにより、ロック体10を比較的小さな回転角度移動しただけで、挿口5の挿入を許容可能な姿勢となり、挿入する際の力を低減することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに接続した管同士が離脱することを防止する離脱防止管継手に用いる離脱防止機能付きシール材、および離脱防止用管継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地中に敷設される水道管路などとして、ダクタイル鋳鉄管などの管を複数接続して管路を構成することは既に広く知られている。この種の管路において、曲管やT字管などの異形管を用いる場合には、この異形管の曲がり部分や分岐部分(すなわち、水の流れ方向が変更される箇所)で水圧によって管を移動させようとする力(不平均力)が作用するため、このような不平均力が作用しても管同士が互いに離脱することを防止する機能を付加している。
【0003】
従来の管の離脱防止構造としては、図6に示すように、異形管(図6においては曲管)51と、この異形管51に接続された管52、53との接合部(継手部)54とにわたって、コンクリートブロック55で覆う構造(コンクリートブロック構造と称す)が用いられており、このように管52、53と異形管51とをコンクリートブロック55で一体化して、管52、53と異形管51との離脱を防止している。また、別の管の離脱防止構造として、図7、図8に示すように、管61、62の受口63の内周面と挿口64の外周面とに、ロックリング65を配設するロックリング収容溝66、67を形成して、これらの溝66、67にわたって周方向1つ割りのロックリング65を配設するとともに、管61、62の接合後に、ロックリング65を、受口63を管径方向に貫通するセットボルト68により管径方向内側に押圧して、ロックリング65の拡径を阻止し、これにより、ロックリング65を介して管61、62の離脱を防止する構造が用いられている。
【0004】
しかし、図6に示すようなコンクリートブロック構造を用いる場合には、コンクリートブロック55を完全に硬化させてから、地中に配設しなければならないので、コンクリートが硬化するまでに多くの時間を要する。したがって、道路を早期に復旧させる必要がある場合には、図6に示すようなコンクリートブロック構造は採用されず、図8に示すようなロックリング65を用いる構造が採用される。
【0005】
ところが、図8に示すようなロックリング構造を用いる場合には、ロックリング65を縮径させながら受口63の溝66に嵌め込む際に、縮径用の治具や設備を必要として設備費などのコストの増加を招いたり、この嵌め込み作業に多くの時間を要したりする欠点を生じてしまう。
【0006】
このような欠点を改善可能な離脱防止管継手として、図9〜図12に示すような離脱防止機能を付与したシール材(以下、離脱防止機能付きシール材、或いは単にシール材と称す)70を離脱防止管継手に設けることが提案されている。すなわち、図10、図11に示すように、受口71の内周面に形成したシール材収容溝72に、弾性を有するシール材本体78を配設させるが、このシール材本体78に、内周部に爪部73aが形成されたロック体73を埋設する。そして、前記不平均力などによって、図12に示すように、管同士が離脱方向に移動しようとした際(つまり、受口71に対して、相対的に挿口75がc方向に移動しようとして、受口71から挿口75が離脱しようとした際)には、ロック体73が、受口71のシール材収容溝72に形成した受口内面突部76に当接しながらa方向に回転して、ロック体73の爪部73aが挿口75の外周面に食い込み、この結果、管同士の離脱を阻止する(つまり、受口71から挿口75が離脱することを阻止する)よう構成されている。
【0007】
なお、ロック体73における上部には、受口71のシール材収容溝72に形成した受口内面突部76に当接する湾曲溝部73bが、受口内面突部76よりも大きな曲率半径で浅く窪んだ形状で形成されている。そして、挿口挿入時(管接合時)には、図11に示すように、受口71のシール材収容溝72に形成した受口内面突部76に、ロック体73に形成した湾曲溝部73bが摺接した状態で、ロック体73が挿口75の挿入を許容するように、すなわちロック体73の爪部73aが挿口75の外周面よりも外側に移動するまで、ロック体73全体がシール材本体78を変形させながらd方向に回転する。
【0008】
この離脱防止管継手構造を用いることで、離脱防止のための必要な作業としては、前記ロック体73を埋設した離脱防止機能付きシール材70を予め準備しておき、受口71内にこのシール材70を配設するだけで済む。したがって、縮径用の治具や設備などが不要となるとともに、ロックリングの縮径作業が不要であるので、この縮径作業を行う手間や時間を省くことができる。
【0009】
なお、図9〜図12に示す離脱防止管継手と類似した構造の離脱防止管継手が、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6−221478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、図9〜図12に示す離脱防止管継手や特許文献1に開示された離脱防止管継手では、挿口75を受口71に挿入して管を接合するときの挿入力として極めて大きな力が必要となるという課題がある。
【0012】
すなわち、図9〜図12に示す離脱防止管継手や、特許文献1に開示された離脱防止管継手を採用して管同士を接合する場合には、受口71のシール材収容溝72に離脱防止機能付きシール材70を配設した状態で、一方の管の受口71内に他方の管の挿口75を挿入するが、この際に、弾性を有するシール材本体78が、挿口75と受口71との間で圧縮されて挿口75に対して反発力を発生する。したがって、挿口75の挿入時には前記反発力を上回る力を加えてシール材本体78を圧縮させながら、挿口75を押し込む必要がある。
【0013】
ところが、シール材本体78には、金属片からなる剛性の大きなロック体73が埋設されているので、このロック体73が、シール材本体78を変形させながら挿口75の挿入を許容できる姿勢に傾く(回転する)だけの大きな力が、挿口75の挿入時に必要となる。つまり、図9〜図12に示す離脱防止管継手や特許文献1に開示された離脱防止管継手では、図11に示すように、挿口75の挿入時(管接合時)に、受口71のシール材収容溝72に形成した受口内面突部76に、ロック体73に形成した湾曲溝部73bが摺接しつつ、ロック体73全体が回転する構造であるので、ロック体73が挿口75の挿入を許容する姿勢となるまで、比較的大きい回転角度θ1だけ回転させなければならない。このためには、シール材本体78を極めて大きな力で圧縮させる必要があり、挿口75を受口71に挿入する力として極めて大きな力が必要となる。
【0014】
したがって、このようなロック体73が埋設されたシール材70を備えた離脱防止管継手を採用した場合には、管同士を接合する際に、ロック体73が埋設されていない通常のシール材の離脱防止管継手を採用する場合とは異なる、大きな挿入力を得ることができる特殊な接合用治具が必要となっていた。その結果、縮径用の治具は不要でありながら、前記特殊な接合用治具を要して、設備費などのコストの低減を十分には図ることができなくなるという課題を有していた。
【0015】
本発明は上記課題を解決するもので、管の接合作業を容易かつ短時間で行うことができ、しかも、挿口の受口への接合時にあまり大きな力を要しなくても済む離脱防止管継手および離脱防止機能付きシール材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために本発明の離脱防止機能付きシール材は、互いに接合される一方の管の端部に形成された受口の内部に、他方の管の端部に形成された挿口が挿入される離脱防止管継手に用いられ、受口の内周に形成されたシール材収容溝に配設されて、受口と挿口との間で圧縮されることで挿口受口間のシールを行うシール材であって、弾性を有して圧縮可能なシール材本体に、離脱防止用のロック体が埋設された構成とされ、前記ロック体に、受口に対して挿口が抜け出ようとする際に挿口の外周面に食い込む爪部と、前記受口のシール材収容溝において管径方向の内側に突出するように形成された受口内面突部を収容可能な突部収容窪み部とが形成されていることを特徴とする。
【0017】
上記構成によれば、一方の管の受口に他方の管の挿口を挿入させる際に、ロック体の突部収容窪み部に、受口の受口内面突部が収容可能とされているので、従来のようにロック体を受口内面突部に摺接させながらロック体全体を回転させる動作を行わなくても済み、その分、ロック体を比較的小さな回転角度移動しただけで、挿口の挿入を許容可能な姿勢となる。したがって挿口挿入時の、ロック体が埋設されているシール材本体の圧縮量を少なくでき、ひいては挿入する際の力を低減することができる。
【0018】
また、本発明の離脱防止機能付きシール材は、ロック体に爪部が複数形成され、少なくとも1つの爪部が、受口内面突部よりも受口の奥側に形成され、受口における受口内面突部よりも受口の開口端寄り箇所に設けられた、シール材のヒール部を嵌め込む嵌め込み溝に当接する箇所に、挿口の挿入時に前記ロック体が回動する支点となるロック体回動支点が設けられていることを特徴とする。
【0019】
上記構成によれば、ロック体回動支点が受口内面突部よりも受口の開口端寄り箇所に設けられるので、図9〜図12に示す離脱防止管継手や特許文献1の離脱防止管継手のようにロック体全体が受口内面突部に摺接しながら回転する場合、すなわち受口内面突部が設けられている箇所を中心として回転する構成の場合と比較して、ロック体の回転角度が小さくても爪部の挿口厚み方向(管径方向)の移動距離が大きくなる。したがって、ロック体を比較的小さな回転角度移動しただけで、挿口の挿入を許容可能な姿勢となり、挿口挿入時の、ロック体が埋設されているシール材本体の圧縮量を少なくでき、ひいては挿入する際の力を低減することができる。
【0020】
また、本発明の離脱防止機能付きシール材は、突部収容窪み部が、挿口を受口に挿入しない状態において、受口開口寄り側の窪んだ面積が受口奥側の窪んだ面積よりも大きく形成されていることを特徴とする。
【0021】
上記構成によれば、突部収容窪み部における受口開口寄り側の部分がより大きく窪んでいるので、受口のシール材収容溝や受口内面突部や挿口の外周面など、または、シール材やロック体の製造誤差などがあった場合でも、受口内面突部を良好に収容させることができる。つまり、突部収容窪み部における受口開口寄り側の部分が比較的小さめに窪んでいると、受口や挿口、または、シール材(ロック体を含む)の製造工程での製品寸法誤差などがあった場合に、受口内面突部を良好には収容できなくなるおそれがあるが、上記構成によれば、このような不具合の発生を最小限に抑えることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように本発明によれば、シール材本体内に埋設されたロック体に、受口のシール材収容溝において挿口が受口に挿入された際に、受口内面突部を収容可能な突部収容窪み部を形成することにより、挿口挿入時の力を低減させて、大きな挿入力を得るための特殊な接合用治具を必要としなくても済ますことが可能となり、この結果、設備費などのコストの低減を図ることができるとともに、管接合作業における作業能率を向上させることができる。
【0023】
また、受口内面突部よりも受口の開口端寄り箇所に、挿口の挿入時にロック体が回動する支点となるロック体回動支点を設けることにより、挿口挿入時の力を低減することができて、特殊な接合用治具を必要としなくても済み、この結果、設備費などのコストの低減を図ることができるとともに、管接合作業における作業能率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(a)は本発明の実施の形態に係る離脱防止機能付きシール材を備えた離脱防止管継手を示す断面図、(b)は同離脱防止機能付きシール材の要部拡大断面図である。
【図2】同離脱防止管継手の要部拡大断面図で、受口に挿口を挿入する直前の状態を示す。
【図3】同離脱防止管継手の要部拡大断面図で、受口に挿口を挿入した状態を示す。
【図4】同離脱防止管継手の要部拡大断面図で、挿口が受口から離脱しようとした際の状態を示す。
【図5】同離脱防止管継手の離脱防止機能付きシール材の正面図である。
【図6】従来の管の離脱防止構造(コンクリートブロック構造)を概略的に示す図である。
【図7】他の従来の離脱防止構造としての同離脱防止管継手の外観を示す図である。
【図8】同従来の離脱防止管継手の断面図である。
【図9】さらに他の従来の離脱防止管継手の断面図である。
【図10】同従来の離脱防止管継手の要部拡大断面図で、受口に挿口を挿入する直前の状態を示す。
【図11】同従来の離脱防止管継手の要部拡大断面図で、受口に挿口を挿入した状態を示す。
【図12】同従来の離脱防止管継手の要部拡大断面図で、挿口が受口から離脱しようとした際の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態に係る離脱防止機能付きシール材、およびこの離脱防止機能付きシール材を備えた離脱防止管継手を図面に基づき説明する。なお、図1(a)、図2、図3、図4は、本発明の実施の形態に係る離脱防止機能付きシール材を備えた離脱防止管継手の断面図で、図2は受口に挿口を挿入する直前の状態を示し、図3は受口に挿口を挿入した状態を示し、図4は挿口が受口から離脱しようとした際の状態を示す。また、図1(b)は同離脱防止機能付きシール材の要部拡大断面図、図5は同離脱防止機能付きシール材の正面図である。
【0026】
図1〜図3に示すように、本発明の実施の形態に係る離脱防止管継手1は、互いに接合される一方の管2の端部に形成された受口3の内部に、他方の管4の端部に形成された挿口5が挿入され、受口3の内周(詳しくは、受口3の管端面3aよりも奥側の部分の内周)に形成されたシール材収容溝6に環状のシール材7が配設され、受口3と挿口5との間でシール材7が圧縮されることで挿口受口間のシールが行われる。なお、図1における5aは挿口5の先端部外周に形成されて先端ほど細くなるように形成された挿口5の傾斜面である。
【0027】
ここで、本発明の実施の形態に係る離脱防止管継手1に備えられているシール材7は、後述するように、互いに接続した管2、4同士が離脱することを防止する離脱防止機能を有している。なお、管2、4は例えばダクタイル鋳鉄製とされているが、これに限るものではない。
【0028】
以下、シール材(離脱防止機能付きシール材)7と、このシール材7が配設される受口3のシール材収容溝6の構造などについて詳しく説明する。図1(a)、(b)、図2などに示すように、シール材7は、シール材7をシール材収容溝6内の所定位置に保持させるヒール部7aと、挿口受口間のシールを行うバルブ部7bとを一体化した形状とされ、図2に示すように、バルブ部7bは、外力を受けていない状態では断面略円形(あるいは断面略楕円形)とされている。また、これに対応して、シール材収容溝6にもシール材7のヒール部7aが嵌め込まれてシール材7を係止する嵌め込み溝6aと、シール材7のバルブ部7bが収容されるバルブ部収容溝6bとが形成されている。
【0029】
さらに、受口3のシール材収容溝6における嵌め込み溝6aとバルブ部収容溝6bとの間には、管径方向の内側に突出する受口内面突部8が形成されている。なお、この実施の形態では受口内面突部8の先端部は断面略半円形状とされているが、この形状に限るものではない。
【0030】
図1(a)、図2などに示すように、シール材7は、弾性を有して圧縮可能なゴム製などからなる環状のシール材本体9に、金属片などの剛性の大きな材料で形成された離脱防止用のロック体10が、図5に示すように周方向に間隔をおいて複数埋設された構成とされている。なお、この実施の形態では、8つのロック体10が周方向に等間隔で配設されている場合を図示しているが、これに限るものではなく、ロック体10の数を増減させたり、これに応じて配設する間隔を変更させたりしてもよい。
【0031】
ロック体10には、図4に示すように、受口3に対して挿口5が抜け出ようとする際、すなわち、管2、4同士が互いに離脱方向に移動しようとする際に、挿口5の外周面に食い込む爪部10aと、図1〜図3に示すように、挿口5が受口3に挿入されて管2、4同士が接合された際に、受口3のシール材収容溝6において受口内面突部8を収容可能な突部収容窪み部10bとが形成されている。
【0032】
爪部10aは、ロック体10よりシール材7の内側、より詳しくは、受口3の奥側および管径方向内側に斜めに突出する姿勢で、管軸心方向に対して並ぶように形成されている。なお、この実施の形態では、爪部10aは、管軸心方向に対して、一方の爪部10aが受口内面突部8よりも受口3の奥側に形成され、他方の爪部10aが受口内面突部8の内側先端部とほぼ同等の位置に形成されている。また、この実施の形態では、各ロック体10に2つの爪部10aが形成されている場合を示しているが、爪部10aを1つあるいは3つ以上形成してもよい。なお、爪部10aを1つだけ形成した場合には、受口3と挿口5との隙間が大きく変動する場合などに爪部10aが良好には食い込まないことがあるので、爪部10aは複数設けることが好ましい。
【0033】
ロック体10の突部収容窪み部10bは、シール材7の内側、より詳しくは、ロック体10における管径方向外側部分において、管径方向内側に略半円形状より若干大きく窪むように形成されている。そして、図1(b)、図2に示すように、突部収容窪み部10bが、挿口5を受口3に挿入しない状態において、受口開口寄り側の窪んだ面積が受口奥側の窪んだ面積よりも大きく形成されている。また、この実施の形態では、突部収容窪み部10bにおける受口開口寄り側部分は、対応する受口内面突部8の形状よりもより深く窪ませた凹部10b’が形成されている。
【0034】
図2、図3に示すように、シール材7のロック体10は、受口3に挿口5を挿入した際に、受口3の受口内面突部8が突部収容窪み部10bに収容されるb方向(図3参照)に回転するが、この際にロック体10が回転する支点となるロック体回動支点10cが、受口内面突部8よりも受口3の開口端寄り箇所に設けられている。詳しくは、ロック体回動支点10cは、受口3における受口内面突部8よりも受口3の開口端寄り箇所に設けられた、シール材7のヒール部7aを嵌め込む嵌め込み溝6aに当接する箇所、この実施の形態では、嵌め込み溝6aにおける受口内面突部8との接続部分に設けられている。
【0035】
上記構成において、管2、4同士がまだ接合されていない状態、すなわち、受口3に挿口5がまだ挿入されていない状態では、シール材7は、受口3のシール材収容溝6に装着されているだけの状態であるので、図1(b)、図2に示すように、シール材7のバルブ部7bが管径方向の内側に大きく膨らんだ姿勢となっている。したがって、これに伴い、ロック体10も、後述する挿口5の挿入時と比べて、管径方向の内側(図2などにおける紙面の下方側)に寄った姿勢となって、爪部10aが管径方向の内側に大きく突出し、かつ、受口3の受口内面突部8が突部収容窪み部10bから離脱している姿勢である。
【0036】
この状態から、管2、4同士を接合すべく、受口3に挿口5を挿入させていくと、まず、シール材7のロック体10が、その爪部10aが挿口5の傾斜面5aに沿う姿勢(挿口5の傾斜面5aが導入できる姿勢となる)まで移動し、その後、シール材7のバルブ部7bも挿口5の傾斜面5aに沿いながら受口3と挿口5との間で圧縮される。そして、挿口5をさらに挿入させていくと、シール材7のロック体10が、その爪部10aが挿口5の傾斜面5aを乗り越えるようにして移動し、また、シール材7のバルブ部7bも挿口5の外周面と受口3との間でさらに圧縮される(図3参照)。
【0037】
この場合において、ロック体10には、受口3のシール材収容溝6において挿口5が受口3に挿入された際に、受口内面突部8を収容可能な突部収容窪み部10bが形成されているので、ロック体10は、ロック体10全体が回転するのではなくて、ロック体回動支点10cを中心として、受口内面突部8に当接することなく、b方向に回転することができる。また、ロック体回動支点10cが受口内面突部8よりも受口3の開口端寄り箇所に設けられるので、図9〜図12に示す離脱防止管継手や特許文献1のようにロック体73全体が受口内面突部76に摺接しながら回転する場合、すなわち受口内面突部76が設けられている箇所を中心としてロック体73全体が回転する場合(回転角度θ1)と比較して、ロック体10の回転角度θ2が小さくても爪部10aの挿口厚み方向(管径方向)の移動距離が大きくなる。したがって、ロック体10は、ロック体回動支点10cを中心として、比較的小さな回転角度θ2移動しただけで、挿口5の挿入を許容可能な姿勢となる。このとき、ロック体10は、シール材本体9を圧縮させながら回転するが、ロック体10の回転角度θ2が小さくて済むので、挿口挿入時の、ロック体10が埋設されているシール材本体9の圧縮量(変形量)を少なくでき、ひいては挿口5を挿入する際の力を低減することができる。
【0038】
この結果、大きな挿入力を得ることができる特殊な接合用治具を用いなくても、挿口5の挿入作業を行うことができて、設備費などのコストの低減を図ることができるとともに、挿入作業にかかる時間も少なくて済んで作業能率を向上させることができる。
【0039】
また、上記の構成によれば、ロック体10の突部収容窪み部10bが、挿口5を受口3に挿入しない状態において、受口開口寄り側の窪んだ面積が受口奥側の窪んだ面積よりも大きく形成されて、受口開口寄り側の部分がより大きく窪んでおり、また、この実施の形態では、突部収容窪み部10bにおける受口開口寄り側部分に、対応する受口内面突部8の形状よりも深く窪ませた凹部10b’が形成されているので、受口3のシール材収容溝6や受口内面突部8、挿口5の外周面、または、シール材7やロック体10などに、製造誤差などがあるなどして、挿口挿入時に万一、受口3の受口内面突部8が突部収容窪み部10bに当接した場合でも、ロック体10の突部収容窪み部10bの窪みが大きくなるように広がり易くなり、受口内面突部8を良好に収容させることができる。つまり、突部収容窪み部10における受口開口寄り側の部分が比較的小さめに窪んでいると、受口3や挿口5、または、シール材7(ロック体10を含む)の製造工程での製品寸法誤差などがあって、挿口挿入時に受口3の受口内面突部8が突部収容窪み部10bに当接した場合に、ロック体10の突部収容窪み部10bが広がり難いため、受口内面突部8を良好には収容できなくなり、結局、ロック体10全体が大きな回転角度で回転せざるを得なくなり、大きな挿入力が必要となるおそれがあるが、上記構成によれば、このような不具合の発生を最小限に抑えることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 離脱防止管継手
2、4 管
3 受口
5 挿口
6 シール材収容溝
7 シール材
8 受口内面突部
9 シール材本体
10 ロック体
10a 爪部
10b 突部収容窪み部
10b’凹部
10c ロック体回動支点
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに接続した管同士が離脱することを防止する離脱防止管継手に用いる離脱防止機能付きシール材、および離脱防止用管継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地中に敷設される水道管路などとして、ダクタイル鋳鉄管などの管を複数接続して管路を構成することは既に広く知られている。この種の管路において、曲管やT字管などの異形管を用いる場合には、この異形管の曲がり部分や分岐部分(すなわち、水の流れ方向が変更される箇所)で水圧によって管を移動させようとする力(不平均力)が作用するため、このような不平均力が作用しても管同士が互いに離脱することを防止する機能を付加している。
【0003】
従来の管の離脱防止構造としては、図6に示すように、異形管(図6においては曲管)51と、この異形管51に接続された管52、53との接合部(継手部)54とにわたって、コンクリートブロック55で覆う構造(コンクリートブロック構造と称す)が用いられており、このように管52、53と異形管51とをコンクリートブロック55で一体化して、管52、53と異形管51との離脱を防止している。また、別の管の離脱防止構造として、図7、図8に示すように、管61、62の受口63の内周面と挿口64の外周面とに、ロックリング65を配設するロックリング収容溝66、67を形成して、これらの溝66、67にわたって周方向1つ割りのロックリング65を配設するとともに、管61、62の接合後に、ロックリング65を、受口63を管径方向に貫通するセットボルト68により管径方向内側に押圧して、ロックリング65の拡径を阻止し、これにより、ロックリング65を介して管61、62の離脱を防止する構造が用いられている。
【0004】
しかし、図6に示すようなコンクリートブロック構造を用いる場合には、コンクリートブロック55を完全に硬化させてから、地中に配設しなければならないので、コンクリートが硬化するまでに多くの時間を要する。したがって、道路を早期に復旧させる必要がある場合には、図6に示すようなコンクリートブロック構造は採用されず、図8に示すようなロックリング65を用いる構造が採用される。
【0005】
ところが、図8に示すようなロックリング構造を用いる場合には、ロックリング65を縮径させながら受口63の溝66に嵌め込む際に、縮径用の治具や設備を必要として設備費などのコストの増加を招いたり、この嵌め込み作業に多くの時間を要したりする欠点を生じてしまう。
【0006】
このような欠点を改善可能な離脱防止管継手として、図9〜図12に示すような離脱防止機能を付与したシール材(以下、離脱防止機能付きシール材、或いは単にシール材と称す)70を離脱防止管継手に設けることが提案されている。すなわち、図10、図11に示すように、受口71の内周面に形成したシール材収容溝72に、弾性を有するシール材本体78を配設させるが、このシール材本体78に、内周部に爪部73aが形成されたロック体73を埋設する。そして、前記不平均力などによって、図12に示すように、管同士が離脱方向に移動しようとした際(つまり、受口71に対して、相対的に挿口75がc方向に移動しようとして、受口71から挿口75が離脱しようとした際)には、ロック体73が、受口71のシール材収容溝72に形成した受口内面突部76に当接しながらa方向に回転して、ロック体73の爪部73aが挿口75の外周面に食い込み、この結果、管同士の離脱を阻止する(つまり、受口71から挿口75が離脱することを阻止する)よう構成されている。
【0007】
なお、ロック体73における上部には、受口71のシール材収容溝72に形成した受口内面突部76に当接する湾曲溝部73bが、受口内面突部76よりも大きな曲率半径で浅く窪んだ形状で形成されている。そして、挿口挿入時(管接合時)には、図11に示すように、受口71のシール材収容溝72に形成した受口内面突部76に、ロック体73に形成した湾曲溝部73bが摺接した状態で、ロック体73が挿口75の挿入を許容するように、すなわちロック体73の爪部73aが挿口75の外周面よりも外側に移動するまで、ロック体73全体がシール材本体78を変形させながらd方向に回転する。
【0008】
この離脱防止管継手構造を用いることで、離脱防止のための必要な作業としては、前記ロック体73を埋設した離脱防止機能付きシール材70を予め準備しておき、受口71内にこのシール材70を配設するだけで済む。したがって、縮径用の治具や設備などが不要となるとともに、ロックリングの縮径作業が不要であるので、この縮径作業を行う手間や時間を省くことができる。
【0009】
なお、図9〜図12に示す離脱防止管継手と類似した構造の離脱防止管継手が、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6−221478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、図9〜図12に示す離脱防止管継手や特許文献1に開示された離脱防止管継手では、挿口75を受口71に挿入して管を接合するときの挿入力として極めて大きな力が必要となるという課題がある。
【0012】
すなわち、図9〜図12に示す離脱防止管継手や、特許文献1に開示された離脱防止管継手を採用して管同士を接合する場合には、受口71のシール材収容溝72に離脱防止機能付きシール材70を配設した状態で、一方の管の受口71内に他方の管の挿口75を挿入するが、この際に、弾性を有するシール材本体78が、挿口75と受口71との間で圧縮されて挿口75に対して反発力を発生する。したがって、挿口75の挿入時には前記反発力を上回る力を加えてシール材本体78を圧縮させながら、挿口75を押し込む必要がある。
【0013】
ところが、シール材本体78には、金属片からなる剛性の大きなロック体73が埋設されているので、このロック体73が、シール材本体78を変形させながら挿口75の挿入を許容できる姿勢に傾く(回転する)だけの大きな力が、挿口75の挿入時に必要となる。つまり、図9〜図12に示す離脱防止管継手や特許文献1に開示された離脱防止管継手では、図11に示すように、挿口75の挿入時(管接合時)に、受口71のシール材収容溝72に形成した受口内面突部76に、ロック体73に形成した湾曲溝部73bが摺接しつつ、ロック体73全体が回転する構造であるので、ロック体73が挿口75の挿入を許容する姿勢となるまで、比較的大きい回転角度θ1だけ回転させなければならない。このためには、シール材本体78を極めて大きな力で圧縮させる必要があり、挿口75を受口71に挿入する力として極めて大きな力が必要となる。
【0014】
したがって、このようなロック体73が埋設されたシール材70を備えた離脱防止管継手を採用した場合には、管同士を接合する際に、ロック体73が埋設されていない通常のシール材の離脱防止管継手を採用する場合とは異なる、大きな挿入力を得ることができる特殊な接合用治具が必要となっていた。その結果、縮径用の治具は不要でありながら、前記特殊な接合用治具を要して、設備費などのコストの低減を十分には図ることができなくなるという課題を有していた。
【0015】
本発明は上記課題を解決するもので、管の接合作業を容易かつ短時間で行うことができ、しかも、挿口の受口への接合時にあまり大きな力を要しなくても済む離脱防止管継手および離脱防止機能付きシール材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために本発明の離脱防止機能付きシール材は、互いに接合される一方の管の端部に形成された受口の内部に、他方の管の端部に形成された挿口が挿入される離脱防止管継手に用いられ、受口の内周に形成されたシール材収容溝に配設されて、受口と挿口との間で圧縮されることで挿口受口間のシールを行うシール材であって、弾性を有して圧縮可能なシール材本体に、離脱防止用のロック体が埋設された構成とされ、前記ロック体に、受口に対して挿口が抜け出ようとする際に挿口の外周面に食い込む爪部と、前記受口のシール材収容溝において管径方向の内側に突出するように形成された受口内面突部を収容可能な突部収容窪み部とが形成されていることを特徴とする。
【0017】
上記構成によれば、一方の管の受口に他方の管の挿口を挿入させる際に、ロック体の突部収容窪み部に、受口の受口内面突部が収容可能とされているので、従来のようにロック体を受口内面突部に摺接させながらロック体全体を回転させる動作を行わなくても済み、その分、ロック体を比較的小さな回転角度移動しただけで、挿口の挿入を許容可能な姿勢となる。したがって挿口挿入時の、ロック体が埋設されているシール材本体の圧縮量を少なくでき、ひいては挿入する際の力を低減することができる。
【0018】
また、本発明の離脱防止機能付きシール材は、ロック体に爪部が複数形成され、少なくとも1つの爪部が、受口内面突部よりも受口の奥側に形成され、受口における受口内面突部よりも受口の開口端寄り箇所に設けられた、シール材のヒール部を嵌め込む嵌め込み溝に当接する箇所に、挿口の挿入時に前記ロック体が回動する支点となるロック体回動支点が設けられていることを特徴とする。
【0019】
上記構成によれば、ロック体回動支点が受口内面突部よりも受口の開口端寄り箇所に設けられるので、図9〜図12に示す離脱防止管継手や特許文献1の離脱防止管継手のようにロック体全体が受口内面突部に摺接しながら回転する場合、すなわち受口内面突部が設けられている箇所を中心として回転する構成の場合と比較して、ロック体の回転角度が小さくても爪部の挿口厚み方向(管径方向)の移動距離が大きくなる。したがって、ロック体を比較的小さな回転角度移動しただけで、挿口の挿入を許容可能な姿勢となり、挿口挿入時の、ロック体が埋設されているシール材本体の圧縮量を少なくでき、ひいては挿入する際の力を低減することができる。
【0020】
また、本発明の離脱防止機能付きシール材は、突部収容窪み部が、挿口を受口に挿入しない状態において、受口開口寄り側の窪んだ面積が受口奥側の窪んだ面積よりも大きく形成されていることを特徴とする。
【0021】
上記構成によれば、突部収容窪み部における受口開口寄り側の部分がより大きく窪んでいるので、受口のシール材収容溝や受口内面突部や挿口の外周面など、または、シール材やロック体の製造誤差などがあった場合でも、受口内面突部を良好に収容させることができる。つまり、突部収容窪み部における受口開口寄り側の部分が比較的小さめに窪んでいると、受口や挿口、または、シール材(ロック体を含む)の製造工程での製品寸法誤差などがあった場合に、受口内面突部を良好には収容できなくなるおそれがあるが、上記構成によれば、このような不具合の発生を最小限に抑えることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように本発明によれば、シール材本体内に埋設されたロック体に、受口のシール材収容溝において挿口が受口に挿入された際に、受口内面突部を収容可能な突部収容窪み部を形成することにより、挿口挿入時の力を低減させて、大きな挿入力を得るための特殊な接合用治具を必要としなくても済ますことが可能となり、この結果、設備費などのコストの低減を図ることができるとともに、管接合作業における作業能率を向上させることができる。
【0023】
また、受口内面突部よりも受口の開口端寄り箇所に、挿口の挿入時にロック体が回動する支点となるロック体回動支点を設けることにより、挿口挿入時の力を低減することができて、特殊な接合用治具を必要としなくても済み、この結果、設備費などのコストの低減を図ることができるとともに、管接合作業における作業能率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(a)は本発明の実施の形態に係る離脱防止機能付きシール材を備えた離脱防止管継手を示す断面図、(b)は同離脱防止機能付きシール材の要部拡大断面図である。
【図2】同離脱防止管継手の要部拡大断面図で、受口に挿口を挿入する直前の状態を示す。
【図3】同離脱防止管継手の要部拡大断面図で、受口に挿口を挿入した状態を示す。
【図4】同離脱防止管継手の要部拡大断面図で、挿口が受口から離脱しようとした際の状態を示す。
【図5】同離脱防止管継手の離脱防止機能付きシール材の正面図である。
【図6】従来の管の離脱防止構造(コンクリートブロック構造)を概略的に示す図である。
【図7】他の従来の離脱防止構造としての同離脱防止管継手の外観を示す図である。
【図8】同従来の離脱防止管継手の断面図である。
【図9】さらに他の従来の離脱防止管継手の断面図である。
【図10】同従来の離脱防止管継手の要部拡大断面図で、受口に挿口を挿入する直前の状態を示す。
【図11】同従来の離脱防止管継手の要部拡大断面図で、受口に挿口を挿入した状態を示す。
【図12】同従来の離脱防止管継手の要部拡大断面図で、挿口が受口から離脱しようとした際の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態に係る離脱防止機能付きシール材、およびこの離脱防止機能付きシール材を備えた離脱防止管継手を図面に基づき説明する。なお、図1(a)、図2、図3、図4は、本発明の実施の形態に係る離脱防止機能付きシール材を備えた離脱防止管継手の断面図で、図2は受口に挿口を挿入する直前の状態を示し、図3は受口に挿口を挿入した状態を示し、図4は挿口が受口から離脱しようとした際の状態を示す。また、図1(b)は同離脱防止機能付きシール材の要部拡大断面図、図5は同離脱防止機能付きシール材の正面図である。
【0026】
図1〜図3に示すように、本発明の実施の形態に係る離脱防止管継手1は、互いに接合される一方の管2の端部に形成された受口3の内部に、他方の管4の端部に形成された挿口5が挿入され、受口3の内周(詳しくは、受口3の管端面3aよりも奥側の部分の内周)に形成されたシール材収容溝6に環状のシール材7が配設され、受口3と挿口5との間でシール材7が圧縮されることで挿口受口間のシールが行われる。なお、図1における5aは挿口5の先端部外周に形成されて先端ほど細くなるように形成された挿口5の傾斜面である。
【0027】
ここで、本発明の実施の形態に係る離脱防止管継手1に備えられているシール材7は、後述するように、互いに接続した管2、4同士が離脱することを防止する離脱防止機能を有している。なお、管2、4は例えばダクタイル鋳鉄製とされているが、これに限るものではない。
【0028】
以下、シール材(離脱防止機能付きシール材)7と、このシール材7が配設される受口3のシール材収容溝6の構造などについて詳しく説明する。図1(a)、(b)、図2などに示すように、シール材7は、シール材7をシール材収容溝6内の所定位置に保持させるヒール部7aと、挿口受口間のシールを行うバルブ部7bとを一体化した形状とされ、図2に示すように、バルブ部7bは、外力を受けていない状態では断面略円形(あるいは断面略楕円形)とされている。また、これに対応して、シール材収容溝6にもシール材7のヒール部7aが嵌め込まれてシール材7を係止する嵌め込み溝6aと、シール材7のバルブ部7bが収容されるバルブ部収容溝6bとが形成されている。
【0029】
さらに、受口3のシール材収容溝6における嵌め込み溝6aとバルブ部収容溝6bとの間には、管径方向の内側に突出する受口内面突部8が形成されている。なお、この実施の形態では受口内面突部8の先端部は断面略半円形状とされているが、この形状に限るものではない。
【0030】
図1(a)、図2などに示すように、シール材7は、弾性を有して圧縮可能なゴム製などからなる環状のシール材本体9に、金属片などの剛性の大きな材料で形成された離脱防止用のロック体10が、図5に示すように周方向に間隔をおいて複数埋設された構成とされている。なお、この実施の形態では、8つのロック体10が周方向に等間隔で配設されている場合を図示しているが、これに限るものではなく、ロック体10の数を増減させたり、これに応じて配設する間隔を変更させたりしてもよい。
【0031】
ロック体10には、図4に示すように、受口3に対して挿口5が抜け出ようとする際、すなわち、管2、4同士が互いに離脱方向に移動しようとする際に、挿口5の外周面に食い込む爪部10aと、図1〜図3に示すように、挿口5が受口3に挿入されて管2、4同士が接合された際に、受口3のシール材収容溝6において受口内面突部8を収容可能な突部収容窪み部10bとが形成されている。
【0032】
爪部10aは、ロック体10よりシール材7の内側、より詳しくは、受口3の奥側および管径方向内側に斜めに突出する姿勢で、管軸心方向に対して並ぶように形成されている。なお、この実施の形態では、爪部10aは、管軸心方向に対して、一方の爪部10aが受口内面突部8よりも受口3の奥側に形成され、他方の爪部10aが受口内面突部8の内側先端部とほぼ同等の位置に形成されている。また、この実施の形態では、各ロック体10に2つの爪部10aが形成されている場合を示しているが、爪部10aを1つあるいは3つ以上形成してもよい。なお、爪部10aを1つだけ形成した場合には、受口3と挿口5との隙間が大きく変動する場合などに爪部10aが良好には食い込まないことがあるので、爪部10aは複数設けることが好ましい。
【0033】
ロック体10の突部収容窪み部10bは、シール材7の内側、より詳しくは、ロック体10における管径方向外側部分において、管径方向内側に略半円形状より若干大きく窪むように形成されている。そして、図1(b)、図2に示すように、突部収容窪み部10bが、挿口5を受口3に挿入しない状態において、受口開口寄り側の窪んだ面積が受口奥側の窪んだ面積よりも大きく形成されている。また、この実施の形態では、突部収容窪み部10bにおける受口開口寄り側部分は、対応する受口内面突部8の形状よりもより深く窪ませた凹部10b’が形成されている。
【0034】
図2、図3に示すように、シール材7のロック体10は、受口3に挿口5を挿入した際に、受口3の受口内面突部8が突部収容窪み部10bに収容されるb方向(図3参照)に回転するが、この際にロック体10が回転する支点となるロック体回動支点10cが、受口内面突部8よりも受口3の開口端寄り箇所に設けられている。詳しくは、ロック体回動支点10cは、受口3における受口内面突部8よりも受口3の開口端寄り箇所に設けられた、シール材7のヒール部7aを嵌め込む嵌め込み溝6aに当接する箇所、この実施の形態では、嵌め込み溝6aにおける受口内面突部8との接続部分に設けられている。
【0035】
上記構成において、管2、4同士がまだ接合されていない状態、すなわち、受口3に挿口5がまだ挿入されていない状態では、シール材7は、受口3のシール材収容溝6に装着されているだけの状態であるので、図1(b)、図2に示すように、シール材7のバルブ部7bが管径方向の内側に大きく膨らんだ姿勢となっている。したがって、これに伴い、ロック体10も、後述する挿口5の挿入時と比べて、管径方向の内側(図2などにおける紙面の下方側)に寄った姿勢となって、爪部10aが管径方向の内側に大きく突出し、かつ、受口3の受口内面突部8が突部収容窪み部10bから離脱している姿勢である。
【0036】
この状態から、管2、4同士を接合すべく、受口3に挿口5を挿入させていくと、まず、シール材7のロック体10が、その爪部10aが挿口5の傾斜面5aに沿う姿勢(挿口5の傾斜面5aが導入できる姿勢となる)まで移動し、その後、シール材7のバルブ部7bも挿口5の傾斜面5aに沿いながら受口3と挿口5との間で圧縮される。そして、挿口5をさらに挿入させていくと、シール材7のロック体10が、その爪部10aが挿口5の傾斜面5aを乗り越えるようにして移動し、また、シール材7のバルブ部7bも挿口5の外周面と受口3との間でさらに圧縮される(図3参照)。
【0037】
この場合において、ロック体10には、受口3のシール材収容溝6において挿口5が受口3に挿入された際に、受口内面突部8を収容可能な突部収容窪み部10bが形成されているので、ロック体10は、ロック体10全体が回転するのではなくて、ロック体回動支点10cを中心として、受口内面突部8に当接することなく、b方向に回転することができる。また、ロック体回動支点10cが受口内面突部8よりも受口3の開口端寄り箇所に設けられるので、図9〜図12に示す離脱防止管継手や特許文献1のようにロック体73全体が受口内面突部76に摺接しながら回転する場合、すなわち受口内面突部76が設けられている箇所を中心としてロック体73全体が回転する場合(回転角度θ1)と比較して、ロック体10の回転角度θ2が小さくても爪部10aの挿口厚み方向(管径方向)の移動距離が大きくなる。したがって、ロック体10は、ロック体回動支点10cを中心として、比較的小さな回転角度θ2移動しただけで、挿口5の挿入を許容可能な姿勢となる。このとき、ロック体10は、シール材本体9を圧縮させながら回転するが、ロック体10の回転角度θ2が小さくて済むので、挿口挿入時の、ロック体10が埋設されているシール材本体9の圧縮量(変形量)を少なくでき、ひいては挿口5を挿入する際の力を低減することができる。
【0038】
この結果、大きな挿入力を得ることができる特殊な接合用治具を用いなくても、挿口5の挿入作業を行うことができて、設備費などのコストの低減を図ることができるとともに、挿入作業にかかる時間も少なくて済んで作業能率を向上させることができる。
【0039】
また、上記の構成によれば、ロック体10の突部収容窪み部10bが、挿口5を受口3に挿入しない状態において、受口開口寄り側の窪んだ面積が受口奥側の窪んだ面積よりも大きく形成されて、受口開口寄り側の部分がより大きく窪んでおり、また、この実施の形態では、突部収容窪み部10bにおける受口開口寄り側部分に、対応する受口内面突部8の形状よりも深く窪ませた凹部10b’が形成されているので、受口3のシール材収容溝6や受口内面突部8、挿口5の外周面、または、シール材7やロック体10などに、製造誤差などがあるなどして、挿口挿入時に万一、受口3の受口内面突部8が突部収容窪み部10bに当接した場合でも、ロック体10の突部収容窪み部10bの窪みが大きくなるように広がり易くなり、受口内面突部8を良好に収容させることができる。つまり、突部収容窪み部10における受口開口寄り側の部分が比較的小さめに窪んでいると、受口3や挿口5、または、シール材7(ロック体10を含む)の製造工程での製品寸法誤差などがあって、挿口挿入時に受口3の受口内面突部8が突部収容窪み部10bに当接した場合に、ロック体10の突部収容窪み部10bが広がり難いため、受口内面突部8を良好には収容できなくなり、結局、ロック体10全体が大きな回転角度で回転せざるを得なくなり、大きな挿入力が必要となるおそれがあるが、上記構成によれば、このような不具合の発生を最小限に抑えることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 離脱防止管継手
2、4 管
3 受口
5 挿口
6 シール材収容溝
7 シール材
8 受口内面突部
9 シール材本体
10 ロック体
10a 爪部
10b 突部収容窪み部
10b’凹部
10c ロック体回動支点
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接合される一方の管の端部に形成された受口の内部に、他方の管の端部に形成された挿口が挿入される離脱防止管継手に用いられ、受口の内周に形成されたシール材収容溝に配設されて、受口と挿口との間で圧縮されることで挿口受口間のシールを行う離脱防止用のシール材であって、
弾性を有して圧縮可能なシール材本体に、離脱防止用のロック体が埋設された構成とされ、
前記ロック体に、受口に対して挿口が抜け出ようとする際に挿口の外周面に食い込む爪部と、前記受口のシール材収容溝において管径方向の内側に突出するように形成された受口内面突部を収容可能な突部収容窪み部とが形成されていることを特徴とする離脱防止機能付きシール材。
【請求項2】
ロック体に爪部が複数形成され、少なくとも1つの爪部が、受口内面突部よりも受口の奥側に形成され、受口における受口内面突部よりも受口の開口端寄り箇所に設けられた、シール材のヒール部を嵌め込む嵌め込み溝に当接する箇所に、挿口の挿入時に前記ロック体が回動する支点となるロック体回動支点が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の離脱防止機能付きシール材。
【請求項3】
突部収容窪み部が、挿口を受口に挿入しない状態において、受口開口寄り側の窪んだ面積が受口奥側の窪んだ面積よりも大きく形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の離脱防止機能付きシール材。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の離脱防止機能付きシール材を備えていることを特徴とする離脱防止管継手。
【請求項1】
互いに接合される一方の管の端部に形成された受口の内部に、他方の管の端部に形成された挿口が挿入される離脱防止管継手に用いられ、受口の内周に形成されたシール材収容溝に配設されて、受口と挿口との間で圧縮されることで挿口受口間のシールを行う離脱防止用のシール材であって、
弾性を有して圧縮可能なシール材本体に、離脱防止用のロック体が埋設された構成とされ、
前記ロック体に、受口に対して挿口が抜け出ようとする際に挿口の外周面に食い込む爪部と、前記受口のシール材収容溝において管径方向の内側に突出するように形成された受口内面突部を収容可能な突部収容窪み部とが形成されていることを特徴とする離脱防止機能付きシール材。
【請求項2】
ロック体に爪部が複数形成され、少なくとも1つの爪部が、受口内面突部よりも受口の奥側に形成され、受口における受口内面突部よりも受口の開口端寄り箇所に設けられた、シール材のヒール部を嵌め込む嵌め込み溝に当接する箇所に、挿口の挿入時に前記ロック体が回動する支点となるロック体回動支点が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の離脱防止機能付きシール材。
【請求項3】
突部収容窪み部が、挿口を受口に挿入しない状態において、受口開口寄り側の窪んだ面積が受口奥側の窪んだ面積よりも大きく形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の離脱防止機能付きシール材。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の離脱防止機能付きシール材を備えていることを特徴とする離脱防止管継手。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−140997(P2011−140997A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2436(P2010−2436)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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