説明

離隔部材および該離隔部材を有する画像形成装置

【課題】感光ドラムとこれに圧接する部材を離隔しておくための離隔部材を引き抜く際に、離隔部材が破断しないようにする。
【解決手段】感光ドラム2と感光ドラム2に圧接する帯電ローラ3を離隔する離隔部材15に、厚肉部と薄肉部とをそれぞれ交互に配設し、厚肉部を設けた離隔部17を感光ドラム2と帯電ローラ3の間に挿入する。これにより感光ドラム2と帯電ローラ3は離隔される。離隔部材15を引き抜く際、離隔部材15が引っ張られると、厚肉部と薄肉部の境界点のいずれかに応力が集中する前に、これらの各境界点に応力が分散されるので、1箇所への応力集中による離隔部材の破断を防止することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光体とこれに圧接する圧接部材とを離隔して保持する離隔部材および該離隔部材を有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真プリンタや複写機等に用いられる画像形成装置には像担持体としての感光ドラムが具備されており、感光ドラムには帯電ローラや現像ローラ等(圧接部材)が圧接している。これらの部材を具備する装置においては、装置を出荷する際に、長期保存により感光ドラムに圧接する圧接部材(例えば、現像ローラ)の成分が感光ドラムに転移することを防止するために、感光ドラムと圧接部材との間にシート状部材を挟むようにしている。
【0003】
このようなシート状部材を使用したものとして、例えば、特開2001−134163号公報(第1の実施の形態参照)に開示されるものがあるが、この公報に記載のものは、ポリエステルフィルムで構成されるドラム保護部材を感光ドラムに巻きつけるようにしたものである。そして画像形成装置を使用する場合には、感光ドラムに巻き付けられたドラム保護部材を引き抜き、感光ドラムと圧接部材を直に接触させて画像形成動作を可能としている。
【特許文献1】特開2001−134163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示される装置においては、シート状部材としてのドラム保護部材を引き抜く際に、ドラム保護部材が破断してうまく抜き取れない惧れがあった。またドラム保護部材を感光ドラムの軸方向に引き抜くのは装置の構造上不可能であり、それを実現するには装置の機構を変更する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明の離隔部材は、感光体と該感光体に対して圧接される圧接部材とを離隔して保持するものであって、変形可能な部材で形成され、所定位置に厚肉部と薄肉部とを配設し、前記厚肉部が前記感光体と前記圧接部材との間に位置することにより該感光体と圧接部材とを離隔することを特徴とする。
【0006】
また本発明の画像形成装置は、感光体と該感光体に圧接される圧接部材とを有する画像形成装置であって、変形可能な部材で形成され、所定位置に厚肉部と薄肉部とを配設され、前記厚肉部が前記感光体と前記圧接部材との間に位置することにより該感光体と圧接部材とを離隔する離隔部材を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、離隔部材の厚肉部が感光体と圧接部材との間に位置することにより感光体と圧接部材とを離隔し、離隔部材を引き抜く際は所定位置に厚肉部と薄肉部とを設けたことにより応力が分散され、離隔部材は破断することなく引き抜くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面にしたがって説明する。各図面に共通する要素には同一の符号を付す。図1は本発明の実施の形態の離隔部材を示す斜視図、図2は実施の形態の離隔部材が適用される画像形成装置を示す断面図である。まず図2により画像形成装置について説明する。
【0009】
図2において、画像形成装置1には、表面に静電潜像が形成される感光ドラム2が回転可能に設けられており、感光ドラム2に圧接して帯電ローラ3、現像ローラ9、クリーニングブレード11がそれぞれ設けられている。帯電ローラ3は高電圧が印可されて感光ドラム2の表面を一様に帯電させる。現像ローラ9は現像トナー8を感光ドラム2上の静電潜像に供給することにより静電潜像を可視像化する。クリーニングブレード11は転写後の感光ドラム2上の残留トナーを除去する。
【0010】
現像ローラ9にはトナー供給ローラ10および現像ブレード12が圧接している。トナー供給ローラ10は、トナーカートリッジ13から供給される現像トナー8を現像ローラ9に供給する。現像ブレード12は現像ローラ9上に供給された現像トナー8を薄層化する。現像ローラ9、トナー供給ローラ10および現像ブレード12はそれぞれ弾性部材から形成される。
【0011】
画像形成装置1は、各ケース4、5、6、7から形成されている。上部のケース5にトナーカートリッジ13が装着される。帯電ローラ3を覆うケース4はポリエチレンオキシドの材質から形成され、ケース4には感光ドラム2の上方に隙間4aが形成されている。この隙間4aは装置の図示しないカバーが閉じられたときにカバーに設けられている印刷ヘッドが入り込むためのものである。
【0012】
図1において、感光ドラム2と帯電ローラ3との間には離隔部材15が配設されている。帯電ローラ3は、感光ドラム2に電位を帯電させるエピクロルヒドリンゴムの材質から成る表面層3aと、硫黄快切削鋼の材質から成り、無電解ニッケルメッキの処理が施された軸部3bとから成り、離隔部材15は、変形可能なポリプロピレンの材質から形成されるもので、感光ドラム2の端部の表面と帯電ローラ3の軸部3bとの間に一部(後述する離隔部17)が挿入する状態に配設されている。帯電ローラ3は図示しないバネにより感光ドラム2に対して圧接されており、この離隔部材15により、帯電ローラ3は感光ドラム2の表面から離隔されている。離隔部材15は感光ドラム2(および帯電ローラ3)の両端部に設けられている。
【0013】
図3は離隔部材を示す背面図、図4は離隔部材を示す側面図である。図3、図4において、離隔部材15は、上部に形成された把持部16、感光ドラム2と帯電ローラ3の間に挿入される離隔部17および把持部16と離隔部17をつなぐ帯状部18とで構成される。把持部16は離隔部材15を引き抜く際に手に持つ部分である。離隔部17は、図4および図5に示すように、複数の厚肉部および薄肉部が交互に形成されている。なお図5は離隔部材の離隔部を示す側面図である。
【0014】
図5において、離隔部材15の離隔部17には、厚肉部19a、19b、19c、19dが形成されている。厚肉部19aは、離隔部17を図2に示すケース4に位置決めするためのもので、後述するようにケース4の一部に係合することにより離隔部17が位置決めされる。厚肉部19b、19dは感光ドラム2との接触面積を確保するためのもので、厚肉部19cは感光ドラム2と帯電ローラ3とを離隔する役割を果たす部分で、他の厚肉部19b、19dより大きく形成されている。厚肉部19b、19c、19dはそれぞれ所定の厚さを有し、感光ドラム2と帯電ローラ3の間に入り込むことにより、両者を離隔する。
【0015】
厚肉部19b、19c、19dの感光ドラム2に接触する側は、感光ドラム2の曲率に合わせて円弧状となっている。そのため厚肉部19b、19c、19dの感光ドラム2に対する接触面積を可能な限り多く確保することができる。なお図1に示すように、離隔部17の厚肉部19b、19c、19d側が感光ドラム2の表面に接触し、背面部17a側が帯電ローラ3に接触するように配設される。また離隔部17の先端部に形成された厚肉部19dの側部には、図3に示すように、先端に向かって細くなるように形成されたテーパー部19eが設けられている。
【0016】
厚肉部19aと厚肉部19bとの間には薄肉部20aが形成され、厚肉部19bと厚肉部19cとの間には薄肉部20bが形成され、厚肉部19cと厚肉部19dとの間には薄肉部20cが形成されている。厚肉部19b、19c、19dおよび薄肉部20a、20b、20cそれぞれの厚さは、図6に示されている。図6に示す各数値の単位はミリメートル(mm)である。このように厚肉部19a、19b、19c、19dと薄肉部20a、20b、20cを交互に形成することにより、離隔部17が屈曲する支点が順次変化する構造としている。離隔部17の背面部17aには段差部21が形成されている。段差部21は、装置に対する衝撃により離隔部材15の位置が変化するのを防止する役割を果たす。
【0017】
次に本実施の形態における離隔部材の引き抜き動作を図7乃至図11にしたがって説明する。図7乃至図11は離隔部材の引き抜き動作を示す動作説明図である。
【0018】
図7は離隔部材15が感光ドラム2と帯電ローラ3の間に装着されている状態を示す。図7において、離隔部材15の離隔部17の厚肉部19b、19c、19dが感光ドラム2に接触し、離隔部17の背面部17aが帯電ローラ3の軸部3bに接触している。なお点線部は帯電ローラ3の表面層3aを示す。離隔部17の厚肉部19aはケース4のエッジ部4bに係合し、離隔部材15を位置決めしている。また離隔部17の段差部21が帯電ローラ3の軸部3bに接触していることにより、衝撃に対する位置ずれを防止している。またケース4のエッジ部4cが離隔部17の背面部17aに当接しており、離隔部材15が引き抜かれる際に背面部17aが常時当接することにより、離隔部15を変形させるようになっている。
【0019】
以上の状態から図7に示す矢印A方向に離隔部材15を引っ張ると、帯状部18が上方に引き上げられ、厚肉部19aの帯状部18側の付け根22aを支点として帯状部18が変形し、厚肉部19aがケース4のエッジ部4bから外れる。これにより、離隔部17が上方へ引き上げられ、図8に示す状態になる。図8では、ケース4のエッジ部4cが、離隔部17の背面部17aに当接して離隔部17を屈曲させる。なお厚肉部19aの付け根部22aの部分が、帯状部18と離隔部17の境界としてある。
【0020】
図8に示すように、まず離隔部17は、ケース4のエッジ部4cにより厚肉部19bの付け根部22bを支点として屈曲する。このとき厚肉部19bが感光ドラム2の表面から離れ、離隔部17の感光ドラム2との接触面積が減少する。さらに離隔部材15が上方に引き上げられると、エッジ部4cにより、図9に示すように、厚肉部19bの他方の付け根部22cを支点として離隔部17が屈曲する。
【0021】
さらに離隔部材15が上方に引き上げられると、離隔部17は、エッジ部4cにより厚肉部19cの付け根部22dを支点として離隔部17が屈曲し、厚肉部19cが感光ドラム2の表面から離れ始める。さらに離隔部材15が上方に引き上げられると、厚肉部19cが感光ドラム2の表面から完全に離れ、離隔部17の感光ドラム2との接触面積がさらに減少する。さらに離隔部材15が上方に引き上げられると、離隔部17は、図10に示すように、エッジ部4cにより厚肉部19cの他方の付け根部22eを支点として屈曲する。このとき感光ドラム2と接触しているのは、厚肉部19dのみとなる。
【0022】
離隔部材15が更に上方に引き上げられると、離隔部17は、エッジ部4cにより厚肉部19dの付け根部22fを支点として屈曲し、厚肉部19dは感光ドラム2から離れる。これにより図11に示すように、離隔部材15は感光ドラム2と帯電ローラ3との間から完全に抜け出、感光ドラム2の表面と帯電ローラ3の表面層3aが密着し、画像形成装置が動作可能な状態となる。
【0023】
以上のように、厚肉部19a、19b、19c、19dと薄肉部20a、20b、20cを交互に形成することにより、厚肉部19a、19b、19c、19dと薄肉部20a、20b、20cの境界点(付け根部22a、22b、22c、22d、22e)のいずれかに応力が集中する前に、これらの各境界点に応力が分散されるので、1箇所への応力集中による離隔部材の破断を防止することが可能になる。したがって、破断による離隔部材15の抜き取り不能状態を回避することができる。
【0024】
また、離隔部材15の離隔部17が感光ドラム2と帯電ローラ3の間に挿入されている状態においては、感光ドラム2に接触している部分は、厚肉部19b、19c、19dのみであるので、離隔部17を引き抜く際に発生する摩擦抵抗が小さく、引き抜くために必要な荷重を少なくすることができる。
【0025】
上記の例では、離隔部材15を上方に引っ張って引き抜く場合を説明したが、離隔部材15を引き抜く方向は上方に限定されない。図3で説明したように、離隔部材15の離隔部17の先端部に形成された厚肉部19dの側部には、先端に向かって細くなるように形成されたテーパー部19eが設けられている。
【0026】
図3において、テーパー部19eは左右とも、20度乃至25度の角度に形成されている。離隔部材15が図3に示す矢印B方向または矢印C方向に引っ張られた場合、離隔部17は矢印B方向または矢印C方向に傾く。もし先端部の厚肉部19dにテーパー部19eが形成されていない場合、厚肉部19dが感光ドラム2と帯電ローラ3の間から抜け出る際に、例えば図10に示すケース4のエッジ4cに厚肉部19dの側部が引っ掛かることがある。
【0027】
しかしながら厚肉部19dの側部にテーパー部19eを形成したことにより、厚肉部19dの側部はケース4のエッジ4cを摺動し、引っ掛かることはなくなる。したがって離隔部17は良好に抜け出ることができる。
【0028】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。たとえば、上記実施の形態では感光ドラム2と帯電ローラ3との間に挿入される離隔部材15を例に説明したが、感光ドラム2と現像ローラ9との間に挿入される離隔部材、あるいはそれ以外の離隔部材にも適用可能である。また離隔部材に形成される厚肉部の数も上記実施の形態の数に限定されるものではなく、上記の実施の形態の場合よりも多くしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施の形態の離隔部材を示す斜視図である。
【図2】実施の形態の離隔部材が適用される画像形成装置を示す断面図である。
【図3】離隔部材を示す背面図である。
【図4】離隔部材を示す側面図である。
【図5】離隔部材の離隔部を示す側面図である。
【図6】離隔部の厚肉部と薄肉部の寸法を示す説明図である。
【図7】離隔部材の引き抜き動作を示す動作説明図である。
【図8】離隔部材の引き抜き動作を示す動作説明図である。
【図9】離隔部材の引き抜き動作を示す動作説明図である。
【図10】離隔部材の引き抜き動作を示す動作説明図である。
【図11】離隔部材の引き抜き動作を示す動作説明図である。
【符号の説明】
【0030】
1 画像形成装置
2 感光ドラム
3 帯電ローラ
4、5、6、7 ケース
15 離隔部材
17 離隔部
19a、19b、19c、19d 厚肉部
19e テーパー部
20a、20b、20c 薄肉部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体と該感光体に対して圧接される圧接部材とを離隔して保持する離隔部材であって、
変形可能な部材で形成され、
所定位置に厚肉部と薄肉部とを配設し、
前記厚肉部が前記感光体と前記圧接部材との間に位置することにより該感光体と圧接部材とを離隔することを特徴とする離隔部材。
【請求項2】
前記厚肉部と薄肉部とはそれぞれ交互に配設される請求項1記載の離隔部材。
【請求項3】
先端部にテーパー部を形成した請求項1または2記載の離隔部材。
【請求項4】
感光体と該感光体に圧接される圧接部材とを有する画像形成装置において、
変形可能な部材で形成され、所定位置に厚肉部と薄肉部とを配設され、前記厚肉部が前記感光体と前記圧接部材との間に位置することにより該感光体と圧接部材とを離隔する離隔部材を設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
前記厚肉部と薄肉部とはそれぞれ交互に配設される請求項4記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記所定位置は、前記離隔部材が引き抜かれる際に強制的に変形が加えられる位置である請求項4または5記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記離隔部材を所定位置で位置決めする位置決め手段を設けた請求項4または5記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−199174(P2007−199174A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−15179(P2006−15179)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】