説明

難燃ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物

【課題】
充分な難燃性を有し、且つポリブチレンテレフタレート樹脂本来の柔軟性を保持しつつ、耐熱老化性、耐加水分解性などの長期耐久性、ならびに耐薬品性や、絶縁抵抗安定性にも優れた、特に、押出し成形用として優れ、さらに、焼却処分されても多量の腐食性ガスの発生が無く、環境汚染に配慮したポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を提供する。
【解決手段】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、リン系化合物および/またはトリアジン環を有する窒素化合物からなる(B)難燃剤1〜30重量部、(C)ポリオルガノシロキサンコアグラフト共重合体1〜50重量部からなることを特徴とする難燃ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性、耐熱老化性、耐加水分解性、耐薬品性に優れ、更には絶縁抵抗の安定性にも優れたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物に関するものであり、自動車部品、電気電子部品等に使用する難燃材料として利用価値の高い難燃ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物に関するものである。更に、ハロゲン系難燃剤、アンチモン化合物を使用しなくても、充分な難燃性が得られ、燃焼時にハロゲンガスを発生しない為、安全性が高く、特にフィルム、シート、繊維等の押出し用途として好適な難燃ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリエステル樹脂の中で代表的なエンジニアリングプラスチックであるポリブチレンテレフタレート樹脂(以下PBTと略記することがある。)は、成形性、機械的物性、耐熱性、その他の物理的、化学的特性に優れていることから、自動車部品、電気部品、電子部品等の射出成形分野に幅広く使用されている。
【0003】
近年、ポリブチレンテレフタレート樹脂の優れた特性を活かして、押出成形によるプラスチックシート・フィルムや、繊維等の形態で、自動車部品、電気電子部品、食品包装等に用いられるようになってきており、従来、ポリエチレン、ポリプロピレンに代表されるポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等が用いられた部位に使用されてきている。
【0004】
例えば、主として自動車内装材向けに、ポリブチレンテレフタレートフィルムをラミネートしたポリエステル積層不織布が提案されている(例えば特許文献1参照)。ここではポリブチレンテレフタレート樹脂の柔軟性、賦形性を活かして、天井材として優れた特性が示されている。しかし難燃化技術、耐湿熱性、耐熱老化性の改良に関しては、示唆すらされていなかった。
【0005】
シート状ポリブチレンテレフタレート樹脂の難燃化に関しては、例えばポリブチレンテレフタレート樹脂シートに、難燃性と熱成形加工性を付与するために、ポリカーボネート樹脂、臭素系難燃剤、アンチモン系助難燃剤、およびブタジエン系グラフト共重合体あるいはアクリル酸エステル共重合体を配合する技術が提案されている(例えば特許文献2、3参照)。
【0006】
しかしこれらに記載の技術では、柔軟性を付与するために配合したブタジエン系グラフト共重合体が難燃性を低減させる為、難燃剤、ポリカーボネート樹脂を多量に配合する必要があった。そのため、無機化合物である難燃助剤によりポリブチレンテレフタレート樹脂シート本来の柔軟性は損なわれ、またポリカーボネート樹脂配合によるエステル交換反応によりポリブチレンテレフタレート樹脂本来の耐熱性が損なわれる、耐薬品性が低下するなどの問題があった。
【0007】
またポリブチレンテレフタレート樹脂に、ポリリン酸アンモニウム、縮合リン酸エステル化合物等のリン化合物を配合する難燃フィルムが提案されている(例えば特許文献4、5参照)。しかしこれら記載の技術では、耐熱老化性、耐加水分解性が未だ不十分であり、高温、高湿条件下で実用可能なレベルに到達していなかった。
【0008】
【特許文献1】特開2004−25522号公報
【特許文献2】特開平5−247240号公報
【特許文献3】特開平6−100713号公報
【特許文献4】特開平9−208812号公報
【特許文献5】特開2003−238783号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この様な現状に於いては、フィルム・シートとして充分な難燃性を有しながら、高温、高湿条件下で実用レベルの物性を有する、難燃ポリブチレンテレフタレート組成物が望まれていた。
【0010】
本発明の目的は、UL規格のVTM−0適合する充分な難燃性を有し、且つポリブチレンテレフタレート樹脂本来の柔軟性を保持しつつ、耐熱老化性、耐加水分解性などの長期耐久性、ならびに耐薬品性や、絶縁抵抗安定性にも優れた、特に、押出し成形用として優れ、さらに、焼却処分されても多量の腐食性ガスの発生が無く、環境汚染に配慮した、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った。そして特に、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物に柔軟性を付与する添加剤と、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の特性について鋭意検討を行った。その結果、柔軟剤としてポリオルガノシロキサンやこのグラフト共重合体をゴム成分として含む、コア−シェル構造のエラストマー(コア−シェル構造ゴム)に着目した。
【0012】
そしてこの様なコア−シェル構造ゴムのコアに、ポリオルガノシロキサンを含み、とりわけコアを構成する重合体に於いて、ポリオルガノシロキサン部分を多く、具体的には例えば90重量%以上のものを用いたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が、フィルム・シートの様な肉薄状樹脂成形体や被覆材としても、ブツなどの異物も見られず、良好な柔軟性の保持と、UL規格VTM−0に適合する難燃性とを両立した。そして更に、この樹脂組成物を成形してなる樹脂成形体は、良好な耐薬品性、高温絶縁性を示し、且つ同時に耐熱老化性、耐加水分解性等の長期耐久性をも改良した優れたものとなることを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
即ち本発明の要旨は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、リン系化合物および/またはトリアジン環を有する窒素化合物からなる(B)難燃剤1〜30重量部、(C)ポリオルガノシロキサンコアグラフト共重合体1〜50重量部からなることを特徴とする難燃ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物、及びこれを成形してなる樹脂成形体に関する。
【0014】
そして更に好ましくは、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、更に(D)耐加水分解性改良剤0.05〜10重量部および/または(E)無機多孔質充填剤 0.5〜10重量部を含有することを特徴とする難燃ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物、及びこれを成形してなる樹脂成形体に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の難燃ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、特に押出し成形用樹脂組成物として、優れた難燃性、耐熱老化性や耐加水分解性などの長期耐久性を示し、異物の発生を抑制し、外観も良好な加工性を示し、更には高温絶縁性にも優れる。この様に諸物性のバランスに優れた本発明の樹脂組成物は、これを成形して得られる樹脂成形体、具体的には例えば、シート・フィルム、繊維等において、長期信頼性が著しく向上し、同時にハロゲン元素を含有する添加剤を必須としていないので、焼却廃棄時の環境保全に寄与する、優れた樹脂部品を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂
本発明に用いる(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂とは、ブチレンテレフタレート繰り返し単位を主成分とするポリエステルであって、多価アルコール成分として1,4−ブタンジオール、多価カルボン酸成分としてテレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体を用いて得られるブチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とするポリエステルである。
【0017】
主たる繰り返し単位とは、ブチレンテレフタレート単位が、全多価カルボン酸−多価アルコール単位中の70モル%以上であることを意味する。更にブチレンテレフタレート単位は、好ましくは80モル%以上、更には90モル%、特には95モル%以上である。
【0018】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の原料として用いられるテレフタル酸以外の多価カルボン酸成分の一例としては、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、フタル酸、トリメシン酸、トリメリット酸等の芳香族多価カルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、或いは上記多価カルボン酸のエステル形成性誘導体(例えばテレフタル酸ジメチル等の多価カルボン酸の低級アルキルエステル類)等が挙げられる。これらの多価カルボン酸成分は単独で、又は2種以上を任意の割合で併用してもよい。
【0019】
一方、1,4−ブタンジオール以外の多価アルコール成分の一例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の脂肪族多価アルコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族多価アルコール、ビスフェノールA、ビスフェノールZ等の芳香族多価アルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリテトラメチレンオキシドグリコール等のポリアルキレングリコール等が挙げられる。これら多価アルコール成分は単独で、又は2種以上を任意の割合で併用してもよい。
【0020】
本発明に用いる(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、耐加水分解性の観点から末端カルボキシル基当量が50(eq/t)以下であることが好ましく、中でも40(eq/t)以下、特に30(eq/t)以下であることが好ましい。末端カルボキシル基当量が50(eq/t)を超えると耐加水分解性が不十分となる場合がある。
【0021】
本発明に用いる(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、本発明の要件を満たせば、単独であってもよいし、或いは末端カルボキシル基濃度、融点、触媒量等の異なる複数の混合物であってもよい。
【0022】
本発明に用いる(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の製造については、従来公知の任意の触媒を用いて得られたものでよい。この触媒としては、通常チタン化合物が使用される。具体的には例えば、酸化チタン、四塩化チタン等の無機チタン化合物、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタンアルコラート、テトラフェニルチタネート等のチタンフェノラート等が挙げられる。
【0023】
これらの中ではテトラアルキルチタネートが好ましく、中でもテトラブチルチタネートが好ましい。触媒の使用量は適宜選択して決定すればよいが、通常、チタン金属量として10〜80ppmであることが好ましく、特に10〜60ppmであることが好ましい。80ppmを超えるとポリブチレンテレフタレート樹脂の耐加水分解性が低下することがあり、逆に10ppmより低いと重合速度が著しく低下してしまう場合がある。
【0024】
また触媒としては、チタンの他に酢酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキサイド、燐酸水素マグネシウム等のマグネシウム化合物;酢酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、カルシウムアルコキサイド、燐酸水素カルシウム等のカルシウム化合物;、三酸化アンチモン等のアンチモン化合物;二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム化合物;マンガン化合物、亜鉛化合物、ジルコニウム化合物、コバルト化合物、正燐酸、亜燐酸、次亜燐酸、ポリ燐酸、それらのエステルや金属塩などの燐化合物;水酸化ナトリウム、安息香酸ナトリウムなどの反応助剤を併用してもよい。
【0025】
(B)リン系化合物および/またはトリアジン環を有する窒素化合物難燃剤
本発明においては、難燃剤(B)として、リン系化合物および/またはトリアジン環を有する窒素化合物を用いることを特徴とする。リン化合物としては、具体的には例えば、リン酸エステル化合物、ホスホニトリル化合物、ポリリン酸塩、アルキルホスフィン酸金属塩、赤燐等が挙げられる。中でもリン酸エステル化合物(b−1)、ホスホニトリル化合物(b−2)、ポリリン酸塩(b−3)及び赤燐(b−4)が好ましい。
【0026】
本発明に用いるリン酸エステル化合物(b−1)の具体例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート等が挙げられる。
【0027】
中でも下記一般式(1)で表されるリン酸エステル化合物が耐熱性、耐加水分解性の観点から好ましい。
【0028】
【化1】

(一般式(1)中、R 〜R は水素原子または炭素数6以下のアルキル基を示し、nは0〜10の整数を示し、R は2価以上の有機基を示す。)
【0029】
一般式(I)中、R 〜R は中でも耐加水分解性を向上させるために炭素数6以下のアルキル基であることが好ましく、特にメチル基が好ましい。nは中でも1〜3、特に1であることが好ましい。R は2価以上の有機基を表すが、この場合2価以上の有機基とは有機基からアルキル基、シクロアルキル基、アリール基等から炭素に結合している水素原子の1個以上を除いてできる2価以上の基を示す。具体的には以下の有機基が挙げられる。
【0030】
【化2】

【0031】
本発明に用いるホスホニトリル化合物(b−2)としては、下記一般式(2)で表される基を有するものである。
【0032】
【化3】

(一般式(2)において、Xは酸素原子、硫黄原子、=NHで示される有機基を示し、R10、R11は炭素数1〜20のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基を示し、−X−R10、−X−R11は同一でも、異なってもよく、n、pは1以上12以下の整数を示す。)
【0033】
一般式(2)において、R10、R11の具体例としては、メチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基等が挙げられる。n、pは、中でも3〜10、特に3または4であることが好ましい。
【0034】
このホスホニトリル化合物(b−2)は、線状重合体であっても、また環状重合体であってもよいが、中でも環状重合体が好ましい。一般式(2)におけるXは、酸素原子、硫黄原子、=NHで示される有機基を示すが、中でも酸素原子または、=NHで示される有機基であることが好ましく、特に酸素原子であることが好ましい。
【0035】
本発明に用いるポリリン酸塩(b−3)としては、ポリリン酸とメラミン系化合物との反応物、具体的にはポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸メレムや、ポリリン酸アンモニウムが挙げられる。これらは通常、樹脂組成物への添加剤として用いる際には固体の微粒子状である。この微粒子の形状は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、通常、平均粒径は0.05〜100μmであり、中でも0.1〜80μmであることが好ましい。
【0036】
本発明に用いる赤燐(b−4)は、従来公知の任意の赤燐を使用できる。具体的には、硬化樹脂の被膜を持ち、且つ粉砕を必要としない黄燐の転化処理法により直接得られる、破砕面のない球体様赤燐よりなる被覆赤燐粉末が好ましい。
【0037】
この硬化樹脂としては、具体的には例えばフェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂およびアニリン樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、硬化樹脂の被覆量は赤燐100重量部に対して1〜35重量部であることが好ましい。
【0038】
被覆赤燐粉末は、更に被膜の硬化樹脂中に水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛およびチタンの水酸化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の無機化合物を分散含有することが好ましく、またこれら無機化合物は上記硬化樹脂の被膜の下に赤燐と接触して更に含有することが好ましい。
【0039】
赤燐粉末の平均粒径は、適宜選択して決定すればよいが、中でも0.5〜40μm、特に1〜35μmであることが好ましい。平均粒径が小さすぎると樹脂組成物中での分散均一性が低下する場合があり、逆に大きすぎても樹脂組成物の機械特性や難燃性が低下する場合がある。
【0040】
被覆赤燐粉末は赤燐単独に比べて取り扱いなどの安全性の点で著しく改善されているが、本発明においては被覆赤燐粉末の使用に際して、さらに安全性を期すため熱可塑性樹脂と予め溶融混練されたマスターペレットとして用いられることが好ましい。この溶融混練に用いる熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、EPDM、エチレンエチルアクリレート、エチレンメチルアクリレート、熱可塑性ポリエステル、ポリアミドまたは芳香族ポリカーボネートなどが挙げられる。通常はポリプロピレン、ポリエステル樹脂または芳香族ポリカーボネート等が好ましい。
【0041】
マスターペレット中の被覆赤燐粉末の含有量は、用いる熱可塑性樹脂の種類によって適宜選択して決定すればよいが、通常10〜50重量%が好ましい。10重量%未満では添加するマスターペレットの量が相対的に増えるので経済的でなく、50重量%より多いとマスターペレット化が困難であり、安全性も低下する。
【0042】
一方、本発明に用いるトリアジン環を有する窒素化合物としては、シアヌル酸類、メラミン類およびシアヌル酸メラミン類等が挙げられる。シアヌル酸類としては、具体的には例えばシアヌル酸、トリメチルシアヌレート、トリエチルシアヌレート、トリ(nープロピル)シアヌレート、メチルシアヌレート、ジエチルシアヌレート、イソシアヌル酸、トリメチルイソシアネート、トリエチルイソシアネート、トリ(nープロピル)イソシアヌレート、ジエチルイソシアヌレート、メチルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0043】
メラミン類としては、メラミン、メラミン誘導体、メラミンと類似の構造を有する化合物およびメラミンの縮合物等が挙げられる。具体的には例えばメラミン、アンメリド、アンメリン、ホルモグアナミン、グアニルメラミン、シアノメラミン、アリールグアナミン、メラム、メレム、メロン等が挙げられる。
【0044】
シアヌル酸メラミン類としては、シアヌル酸とメラミン類との等モル反応物が挙げられる。また、シアヌル酸メラミン類中のアミノ基または水酸基のいくつかが、他の置換基で置換されていてもよい。このうちシアヌル酸メラミンは、例えば、シアヌル酸の水溶液とメラミンの水溶液とを混合し、90〜100℃で撹拌下反応させ、生成した沈殿を濾過することによって得ることができ、白色の固体であり、市販品をそのまま、あるいはこれを微粉末状に粉砕して使用するのが好ましい。トリアジン系難燃剤としては、好ましくは、1分子中にトリアジン環を二つ以上有する化合物、具体的にはシアヌル酸メラミン、メラム、メレム、メロン等が挙げられる。これらは、耐熱温度が高いので、成形温度において、分解ガスが発生するなどして被覆加工中にトラブルを起こすことが少なくなり、被覆加工の上で適している。
【0045】
本発明に用いる、トリアジン環を有する窒素化合物としては、中でもシアヌル酸メラミン類(b−5)が好ましい。本発明に用いる難燃剤(B)としては、上述の(b−1)、(b−2)、(b−3)、(b−4)、及び(b−5)からなる群から選ばれるものが好ましく、これらは単独で、又は2種以上を任意の割合で併用してもよい。この中でも、(b−1)、(b−2)、(b−3)、及び(b−5)、から選ばれるものをもちいることが好ましく、特にリン酸エステル化合物(b−1)および/またはシアヌル酸メラミン類(b−5)を用いると、極めて優れた難燃効果を示すので好ましい。
【0046】
本発明における(B)難燃剤の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して1〜30重量部であり、中でも2.0〜30重量部、特に3.0〜25重量部であることが好ましい。(B)難燃剤の含有量が1重量部より少ないと、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の難燃性が不十分となり、逆に30重量部より多いと機械的物性、耐加水分解性、成形性が著しく低下する。また、本発明において、リン酸エステル化合物(b−1)とシアヌル酸メラミン類(b−5)を併用する際には、その配合比率(重量比)は、(b−1)/(b−5)=9/1〜1/9であることが好ましく、中でも8/2〜3/7であることが好ましい。
【0047】
(C)ポリオルガノシロキサンコアグラフト共重合体
本発明においては、柔軟性を付与するためのエラストマーとして、コア−シェル構造ゴムである(C)ポリオルガノシロキサンコアグラフト共重合体を用いており、ポリオルガノシロキサンコアグラフト共重合体の製造方法において、コアとなる粒子としてポリオルガノシロキサン含有量の高い重合体、好ましくはそのホモポリマーを用いることを特徴とする。
【0048】
本発明に用いる(C)ポリオルガノシロキサンコアグラフト共重合体の製造方法は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、具体的には先述の特許文献4(特開平9−208812号公報)記載の製造方法が挙げられる。
【0049】
本発明に用いるポリオルガノシロキサンコアグラフト共重合体の製造方法は、具体的には例えば、(c−1)ポリオルガノシロキサン粒子40〜90重量部の存在下に、(c−2)多官能性単量体100〜50重量%、およびその他の共重合可能な単量体(c−3)0〜50重量%からなるビニル系単量体0.5〜10重量部を重合し、さらに(c−4)ビニル系単量体5〜50重量部を重合して得られる。尚、先述の(c−1)、(c−2)、(c−3)および(c−4)の数値範囲は、これら四つを合わせて100重量部とした際の値である。
【0050】
本発明に用いるポリオルガノシロキサンコアグラフト共重合体の原料であるポリオルガノシロキサン粒子(c−1)は、ポリオルガノシロキサンのみからなる粒子だけでなく、他の(共)重合体を含んだ変性ポリオルガノシロキサンを用いてもよい。
【0051】
ポリオルガノシロキサン以外の、他の(共)重合体としては、具体的には例えば、ポリアクリル酸ブチル、アクリル酸ブチル−スチレン共重合体などが挙げられる。ポリオルガノシロキサン以外の、他の(共)重合体の含有量は低い方が好ましく、中でも含有量が5重量%以下であることが好ましく、実質的にポリオルガノシロキサンのみからなる粒子であることが、難燃性の点から特に好ましい。
【0052】
本発明に用いる(C)ポリオルガノシロキサンコアグラフト共重合体の原料である、(c−1)ポリオルガノシロキサン粒子の平均粒子径は適宜選択して決定すればよいが、通常、光散乱法または電子顕微鏡観察から求められる数平均粒子径として0.008〜0.6μmであることが好ましく、中でも0.01〜0.2μm、特に0.01〜0.15μmであることが好ましい。
【0053】
この数平均粒子径が小さすぎるものは、化学工業レベルでの生産が困難であり、逆に大きすぎると難燃性が低下する場合がある。またポリオルガノシロキサン粒子(c−1)は、トルエン不溶分量(該粒子0.5gをトルエン80mlに室温で24時間浸漬した場合のトルエン不溶分量。)が95%以下であることが難燃性・耐衝撃性の点から好ましく、中でも50%以下、特に20%以下であることが好ましい。
【0054】
(c−1)ポリオルガノシロキサン粒子の具体例としては、ポリジメチルシロキサン粒子、ポリメチルフェニルシロキサン粒子、ジメチルシロキサン−ジフェニルシロキサン共重合体粒子等が挙げられ、これらは単独で、又は2種以上を任意の割合で併用してもよい。
【0055】
(c−1)ポリオルガノシロキサン粒子の製造方法としては、具体的には例えば、(1)オルガノシロキサン、(2)2官能シラン化合物、(3)オルガノシロキサンと2官能シラン化合物、(4)オルガノシロキサンとビニル系重合性基含有シラン化合物、(5)2官能シラン化合物とビニル系重合性基含有シラン化合物、或いは(6)オルガノシロキサン、2官能シラン化合物及びビニル系重合性基含有シラン化合物等を重合するか、又はこれらに更に、3官能以上のシラン化合物を重合する方法が挙げられる。
【0056】
先述した(1)オルガノシロキサン、(2)2官能シラン化合物はポリオルガノシロキサン鎖の主骨格を構成する成分である。(1)オルガノシロキサンとしては、具体的には例えばヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)、テトラデカメチルシクロヘプタシロキサン(D7)、ヘキサデカメチルシクロオクタシロキサン(D8)等が挙げられる。
【0057】
(2)2官能シラン化合物としては、具体的には例えばジエトキシジメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルメチルジメトキシシラン、トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン、オクタデシルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0058】
これらのなかでは、経済性および難燃性の観点から、D4、D3〜D7の混合物、またはD3〜D8の混合物を、70〜100%、更に好ましくは80〜100%を占め、残余の部分を、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等が0〜30%、更に好ましくは0〜20%占めるものが好ましい。
【0059】
ビニル系重合性基含有シラン化合物は、前記(1)オルガノシロキサン、(2)2官能シラン化合物、3官能以上のシラン化合物などと共重合し、共重合体の側鎖または末端にビニル系重合性基を導入するための成分である。このビニル系重合性基は、後述するビニル系単量体(B)またはビニル系単量体(C)から形成されるビニル系(共)重合体と化学結合する際のグラフト活性点として作用する。
【0060】
さらには、ラジカル重合開始剤によってグラフト活性点間をラジカル反応させて架橋結合を形成させることができ架橋剤としても使用できる成分でもある。このときのラジカル重合開始剤は後述のグラフト重合において使用されうるものと同じものが使用できる。なお、ラジカル反応によって架橋させたばあいでも、一部はグラフト活性点として残るのでグラフトは可能である。
【0061】
ビニル系重合性基含有シラン化合物の具体例としては、たとえば、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジエトキシメチルシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなどの(メタ)アクリロイルオキシ基含有シラン化合物、p−ビニルフェニルジメトキシメチルシラン、p−ビニルフェニルトリメトキシシランなどのビニルフェニル基含有シラン化合物、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニル基含有シラン化合物、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルジメトキシメチルシランなどのメルカプト基含有シラン化合物が挙げられる。
【0062】
これらのなかでは(メタ)アクリロイルオキシ基含有シラン化合物、ビニル基含有シラン化合物、メルカプト基含有シラン化合物が経済性の点から好ましく用いられる。尚、前記ビニル系重合性基含有シラン化合物がトリアルコキシシラン型であるばあいには、次に示す3官能以上のシラン化合物の役割も有する。
【0063】
3官能以上のシラン化合物は、前記オルガノシロキサン、2官能シラン化合物、ビニル系重合性基含有シラン化合物などと共重合することによりポリオルガノシロキサンに架橋構造を導入してゴム弾性を付与するための成分、すなわちポリオルガノシロキサンの架橋剤として用いられる。
【0064】
具体的には例えば、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシランなどの4官能、3官能のアルコキシシラン化合物等が挙げられ、中でもテトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシランが架橋効率の高さの点から好ましい。
【0065】
オルガノシロキサン、2官能シラン化合物、ビニル系重合性基含有シラン化合物、および3官能以上のシラン化合物の重合時の使用割合は、通常、オルガノシロキサンおよび/または2官能シラン化合物(オルガノシロキサンと2官能シラン化合物との割合は、通常重量比で100/0〜0/100、さらには100/0〜70/30)50〜99.9%、さらには60〜99.5%、ビニル系重合性基含有シラン化合物0〜40%、さらには0.5〜30%、3官能以上のシラン化合物0〜50%、さらには0〜39%であるのが好ましい。
【0066】
なお、ビニル系重合性基含有シラン化合物、3官能以上のシラン化合物は同時に0%になることはなく、いずれかは0.1%以上使用するのが好ましい。
【0067】
オルガノシロキサン及び2官能シラン化合物の使用割合が少なすぎると、配合して得られた樹脂組成物が脆くなる傾向がある。逆に多すぎてもビニル系重合性基含有シラン化合物および3官能以上のシラン化合物の量が少なくなりすぎて、これらを使用する効果が発現されにくくなる傾向にある。
【0068】
また、ビニル系重合性基含有シラン化合物あるいは前記3官能以上のシラン化合物の割合が少なすぎると、難燃性が不十分となることがある。逆に多すぎても、配合して得られた樹脂組成物が脆くなる傾向がある。
【0069】
ポリオルガノシロキサン粒子にビニル系単量体(c−2)および(c−3)およびビニル系単量体(c−4)をグラフト重合させることによりポリオルガノシロキサンコアグラフト共重合体が得られる。尚、ポリオルガノシロキサン粒子の存在下でのビニル系単量体(c−2)および(c−3)およびビニル系単量体(c−4)の重合では、グラフト共重合体の枝にあたる部分(ここでは、ビニル系単量体(c−2)および(c−3)およびビニル系単量体(c−4)の重合体)が幹成分(ここではポリオルガノシロキサン粒子(c−1))にグラフトせずに枝成分だけで単独に重合してえられるいわゆるフリーポリマーも副生し、グラフト共重合体とフリーポリマーの混合物としてえられるが、本発明においてはこの両者を併せてグラフト共重合体という。
【0070】
グラフト共重合体は、ポリオルガノシロキサン粒子にビニル系単量体(c−2)あるいは(c−3)がグラフトし、さらにビニル系単量体(c−4)がポリオルガノシロキサン粒子だけでなくビニル系単量体(c−2)および(c−3)によって形成された重合体にもグラフトした構造のものでありため、フリーポリマーの量が少なくなる。該グラフト共重合体のアセトン不溶分量(該グラフト共重合体1gをアセトン80mlに室温で48時間浸漬した場合のアセトン不溶分量)は、80%以上、さらには85%以上のものが難燃化効果が良好な点から好ましい。
【0071】
ビニル系単量体(c−2)あるいは(c−3)は、ポリブチレンテレフタレート樹脂への分散性および耐衝撃性を向上させるために用いるものであり、分子内に重合性不飽和結合を2つ以上含む多官能性単量体(c−2)を100〜50%、好ましくは100〜80%、さらに好ましくは100〜90%、およびその他の共重合可能な単量体(c−3)を0〜50%、好ましくは0〜20%、さらに好ましくは0〜10%含有する。
【0072】
多官能性単量体(c−2)の量が少なすぎたり、共重合可能な単量体(c−3)の量が多すぎると、いずれも最終的にえられるグラフト共重合体の耐衝撃性改良効果が低くなる傾向にある。多官能性単量体(c−2)は分子内に重合性不飽和結合を2つ以上含む化合物であり、その具体例としては、メタクリル酸アリル、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、フタル酸ジアリル、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸1,3−ブチレングリコール、ジビニルベンゼン等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。これらの中では、経済性および効果の点でとくにメタクリル酸アリルが好ましい。
【0073】
共重合可能な単量体(c−3)としては、具体的には例えば、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、パラブチルスチレンなどの芳香族ビニル系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ヒドロキシエチルなどの(メタ)アクリル酸エステル系単量体;
【0074】
イタコン酸、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸などのカルボキシル基含有ビニル系単量体等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を任意の割合で併用してもよい。
【0075】
ビニル系単量体(c−4)は、ポリオルガノシロキサンコアグラフト共重合体をうるために使用される成分である。更には、該グラフト共重合体を熱可塑性樹脂に配合して、難燃性および耐衝撃性を改良する際、グラフト共重合体と熱可塑性樹脂との相溶性を確保して熱可塑性樹脂にグラフト共重合体を均一に分散させるために使用される成分でもある。
【0076】
ビニル系単量体(c−4)としては、該ビニル系単量体の重合体の溶解度パラメーターが9.15〜10.15[(cal/cm1/2]であることが好ましく、中でも9.17〜10.10[(cal/cm1/2]、特に9.20〜10.05[(cal/cm1/2]であることが好ましい。溶解度パラメーターが前記範囲から外れると、難燃性が低下する傾向にある。
【0077】
本発明に用いる(B)ポリオルガノシロキサンコアグラフト共重合体は、ポリオルガノシロキサン粒子(c−1)40〜90部、好ましくは60〜80部、さらに好ましくは60〜75部の存在下に、ビニル系単量体(c−2)、(c−3)0.5〜10部、好ましくは1〜5部、さらに好ましくは2〜4部を重合し、さらにビニル系単量体(c−4)5〜50部、好ましくは15〜39部、さらに好ましくは21〜38部を合計量が100部になるように重合して得られる。
【0078】
該ポリオルガノシロキサン粒子が少なすぎても、または多すぎても、いずれも本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の難燃性が不十分となる場合があり、またビニル系単量体(c−2)、(c−3)についても、上述の範囲を外れると、耐衝撃性改良効果が低くなる傾向にある。また、ビニル系単量体(c−4)についても、上述の範囲を外れると、難燃化効果が低くなる傾向にある。
【0079】
ビニル系単量体(c−4)としては、たとえば、その他の共重合可能な単量体(c−3)と同じものが挙げられる。これらは、前述したように重合体の溶解度パラメーターが前記記載の範囲に入る限り、単独で、又は2種以上を任意の割合で併用してもよい。
【0080】
本発明においては更に、(D)耐加水分解性改良材や(E)無機多孔質充填剤を特定量用いると、耐加水分解性や絶縁抵抗性が向上するので好ましい。以下に(D)耐加水分解性改良材、(E)無機多孔質充填剤の順に詳述する。
【0081】
(D)耐加水分解性改良剤
本発明に用いる(D)耐加水分解性改良材は、PBTが水蒸気等により加水分解を受け、分子量低下を起こすと同時に機械的強度等の低下をすることを抑制するためのもので、従来公知の任意のものを使用できる。具体的には例えばカルボジイミド化合物やエポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物が等が挙げられ、中でもカルボジイミド化合物が被覆加工性を悪化させず、好ましい。
【0082】
本発明に用いるカルボジイミド化合物(d−1)は、1分子中にカルボジイミド基(−N=C=N−)を少なくとも2個有する化合物であって、例えば、分子中にイソシアネート基を少なくとも2個有する多価イソシアネート化合物を、カルボジイミド化触媒の存在下、脱二酸化炭素縮合反応(カルボジイミド化反応)を行わせることによって製造することが出来る。
【0083】
カルボジイミド化反応は、従来公知の任意の方法により行うことが出来る。具体的には例えば、イソシアネートを不活性な溶媒に溶解するか、或いは無溶剤で窒素等の不活性気体の気流下又はバブリング下でフォスフォレンオキシド類に代表される有機リン系化合物等のカルボジイミド化触媒を加え、150〜200℃の温度範囲で加熱及び攪拌することにより、脱二酸化炭素を伴う縮合反応(カルボジイミド化反応)を進めることが出来る。
【0084】
好ましい多価イソシアネート化合物としては、分子中にイソシアネート基を2個有する2官能イソシアネートが特に好適であるが、3個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物をジイソシアネートと併用して用いることも出来る。又、多価イソシアネート化合物は、脂肪族イソシアネート、脂環族イソシアネート及び芳香族イソシアネートの何れでもよい。
【0085】
多価イソシアネートとしては、具体的には例えばヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、水添キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、1,12−ジイソシアネートドデカン(DDI)、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、2,4−ビス−(8−イソシアネートオクチル)−1,3−ジオクチルシクロブタン(OCDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,4,6−トリイソプロピルフェニルジイソシアネート(TIDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、水添トリレンジイソシアネート(HTDI)等が挙げられる。
【0086】
本発明に用いるカルボジイミド化合物としては、HMDIまたはMDIから得られるカルボジイミド化合物であることが好ましい。市販のものとしては、「カルボジライド」(商品名;日清紡社製)、「スタバクゾールP」(商品名;ライン・ケミー社製)等が挙げられる。
【0087】
本発明において(D)耐加水分解性改良材成分として用いられる、エポキシ化合物(d−2)としては、具体的には例えば多官能エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、レゾルシン型エポキシ化合物、ノボラック型エポキシ化合物、脂環化合物型ジエポキシ化合物、グリシジルエーテル類、エポキシ化ポリブタジエン、更に具体的には、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、レゾルシン型エポキシ化合物、ノボラック型エポキシ化合物、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジシクロペンタジエンオキシドなどの脂環化合物型エポキシ化合物がいずれも好ましく用いられる。
【0088】
オキサゾリン基(環)を有する化合物(d−3)としては、オキサゾリン、アルキルオキサゾリン(2−メチルオキサゾリン、2−エチルオキサゾリン等のC1−4アルキルオキサゾリン)やビスオキサゾリン化合物等が挙げられる。
【0089】
ビスオキサゾリン化合物としては、2,2’−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(アルキル−2−オキサゾリン)[2,2’−ビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−エチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4,4−ジメチル−2−オキサゾリン)等の2,2’−ビス(C1−6アルキル−2−オキサゾリン)など]、2,2’−ビス(アリール−2−オキサゾリン)[2,2’−ビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)など]、2,2’−ビス(シクロアルキル−2−オキサゾリン)[2,2’−ビス(4−シクロヘキシル−2−オキサゾリン)など]、2,2’−ビス(アラルキル−2−オキサゾリン)[2,2’−ビス(4−ベンジル−2−オキサゾリン)など]、2,2’−アルキレンビス(2−オキサゾリン)[2,2’−エチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレンビス(2−オキサゾリン)等の2,2’−C1−10アルキレンビス(2−オキサゾリン)等]、2,2’−アルキレンビス(アルキル−2−オキサゾリン)[2,2’−エチレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレンビス(4,4−ジメチル−2−オキサゾリン)等の2,2’−C1−10アルキレンビス(C1−6アルキル−2−オキサゾリン)等]、2,2’−アリーレンビス(2−オキサゾリン)[2,2’−(1,3−フェニレン)−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−(1,4−フェニレン)−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−(1,2−フェニレン)−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ジフェニレンビス(2−オキサゾリン)等]、2,2’−アリーレンビス(アルキル−2−オキサゾリン)[2,2’−(1,3−フェニレン)−ビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−(1,4−フェニレン)−ビス(4,4−ジメチル−2−オキサゾリン)等の2,2’−フェニレン−ビス(C1−6アルキル−2−オキサゾリン)等]、2,2’−アリーロキシアルカンビス(2−オキサゾリン)[2,2’−9,9’−ジフェノキシエタンビス(2−オキサゾリン)など]、2,2’−シクロアルキレンビス(2−オキサゾリン)[2,2’−シクロヘキシレンビス(2−オキサゾリン)など]、N,N’−アルキレンビス(2−カルバモイル−2−オキサゾリン)[N,N’−エチレンビス(2−カルバモイル−2−オキサゾリン)、N,N’−テトラメチレンビス(2−カルバモイル−2−オキサゾリン)等のN,N’−C1−10アルキレンビス(2−カルバモイル−2−オキサゾリン)等]、N,N’−アルキレンビス(2−カルバモイル−アルキル−2−オキサゾリン)[N,N’−エチレンビス(2−カルバモイル−4−メチル−2−オキサゾリン)、N,N’−テトラメチレンビス(2−カルバモイル−4,4−ジメチル−2−オキサゾリン)等のN,N’−C1−10アルキレンビス(2−カルバモイル−C1−6アルキル−2−オキサゾリン)等]、N,N’−アリーレンビス(2−カルバモイル−2−オキサゾリン)[N,N’−フェニレンビス(2−カルバモイル−オキサゾリン)など]等が挙げられる。
【0090】
またオキサゾリン基を有する化合物には、オキサゾリン基を含有するビニルポリマー[日本触媒社製,エポクロスRPSシリーズ、RASシリーズ及びRMSシリーズなど]なども含まれる。これらのオキサゾリン化合物のうちビスオキサゾリン化合物が好ましい。
【0091】
オキサジン基(環)を有する化合物としては、オキサジンやビスオキサジン化合物等が挙げられる。ビスオキサジン化合物としては、2,2’−ビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2’−ビス(アルキル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)[2,2’−ビス(4−メチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2’−ビス(4,4−ジメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2’−ビス(4,5−ジメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)等の2,2’−ビス(C1−6アルキル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)など]、2,2’−アルキレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)[2,2’−メチレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2’−エチレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2’−ヘキサンメチレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)等の2,2’−C1−10アルキレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)等]、2,2’−アリーレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)[2,2’−(1,3−フェニレン)−ビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2’−(1,4−フェニレン)−ビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2’−(1,2−フェニレン)−ビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2’−ナフチレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2’−ジフェニレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)等]、N,N’−アルキレンビス(2−カルバモイル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)[N,N’−エチレンビス(2−カルバモイル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、N,N’−テトラメチレンビス(2−カルバモイル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)等のN,N’−C1−10アルキレンビス(2−カルバモイル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)等]、N,N’−アルキレンビス(2−カルバモイル−アルキル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)[N,N’−エチレンビス(2−カルバモイル−4−メチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、N,N’−ヘキサメチレンビス(2−カルバモイル−4,4−ジメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)等のN,N’−C1−10アルキレンビス(2−カルバモイル−C1−6アルキル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)等]、N,N’−アリーレンビス(2−カルバモイル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)[N,N’−フェニレンビス(2−カルバモイル−オキサジン)など]等が挙げられる。これらのオキサジン化合物のうち、ビスオキサジン化合物が好ましい。
【0092】
耐加水分解性改良材(d−1)、(d−2)、(d−3)の選定は、必要とする耐加水分解性の要求度合いから任意に選ぶことが出来るが、(d−1)カルボジイミド化合物が改良効果の観点から最も好ましい。
【0093】
本発明における耐加水分解性改良材(D)の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して0.05〜10重量部であり、更に好ましくは0.1〜5重量部である。0.05重量部未満であると、耐加水分解性の改良効果が不十分であり、逆に10重量部より多いと樹脂組成物の流動性が低下し、成形加工性の低下や、シート成形物への異物発生が生ずる。
(E)無機多孔質充填剤
本発明に用いる(E)無機多孔質充填剤は、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の絶縁抵抗の安定性を向上させる為に配合する成分である。具体的には、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の絶縁抵抗は、温度上昇とともに低下する傾向があるが、無機多孔質充填剤を特定量含有させることで、高温条件下に於いても絶縁抵抗が安定する事を見出した。
【0094】
本発明に用いる(E)無機多孔質充填剤の比表面積は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、通常3 m/g以上であることが好ましく、中でも5m/g以上であることが好ましい。配合量は(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して0.1〜50重量部であり、中でも0.3〜10重量部、更には0.5〜10重量部、特に0.5〜5重量部であることが好ましい。
【0095】
また、本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を押出成形等に適用する際には、(E)無機多孔質充填剤の含有量が少ない方が成形性が向上するので好ましく、具体的には(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部、特に0.1〜5重量部であることが好ましい。
【0096】
含有量が0.1重量部未満では、高温絶縁性の改良効果が低く、逆に50重量部を超えると引張伸度の低下や柔軟性が低下する傾向にある。(E)無機多孔質充填剤としては、従来公知の任意のものを使用できる。具体的には例えば、焼成クレー、ゼオライト、メサライト、アンスラサイト、パーライト発泡体、活性炭等が挙げられ、中でもポリブチレンテレフタレート樹脂の物性への影響、無着色の観点から焼成クレーが最も好ましい。
【0097】
その他の添加剤等
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法は、従来公知の任意の樹脂組成物の製造方法を適宜選択して決定すればよい。具体的には例えば、上述してきたポリブチレンテレフタレート樹脂や、その他の添加剤等を、溶融混合押出にてペレットにする方法が挙げられる。また本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物に、更に、本発明の効果を損ねない範囲で、ポリブチレンテレフタレート樹脂以外の熱可塑性樹脂の他、各種添加剤、具体的には例えば顔料、染料、充填剤、核剤、離型剤、酸化防止剤、安定剤、帯電防止剤、滑剤、その他の周知の添加剤を配合し、混練することもできる。
【0098】
そして、本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を成形してなる樹脂成形体の製造方法も、従来公知の任意の、樹脂成形体製造方法から、適宜選択して決定すればよい。本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は中でも、射出成形法、押出し成形に適しており、特に押出成型法に適したものである。
【0099】
更に、本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、この押出成型法によってシート・フィルムの様な、シート状樹脂成形体とした際に、その効果が顕著となる。本発明におけるシート状樹脂成形体とは、シート、フィルム、板状樹脂成形体等と呼称される、肉薄状樹脂成形体全般を示す。その厚さは任意であり、用途に応じて所望の厚さを適宜選択して決定すればよいが、通常、50μm〜10mm、中でも100μm〜1mm、特に200μm〜500μmであることが好ましい。
【実施例】
【0100】
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0101】
<実施例および比較例にて使用される材料、添加剤>
PBT樹脂:三菱エンジニアリングプラスチックス社製 ノバデュラン5026(固有粘度1.26dl/g、末端カルボキシル基濃度20eq/t)
【0102】
エラストマー1:ポリオルガノシロキサンコアグラフト共重合体(カネカ社製 カネエースMR−01)
【0103】
エラストマー2:アクリル系エラストマー(ローム・アンド・ハ−スジャパン社製 EXL2315)
【0104】
難燃剤:リン酸エステル化合物(大八化学社製 PX200(下記化学式で示されるゾルシノール型芳香族リン酸エステル化合物)
【0105】
【化4】

【0106】
難燃剤:シアヌル酸メラミン(三菱化学社製、MCA−C0)
【0107】
耐加水分解性改良剤−1(カルボジイミド化合物、日清紡社製、商品名カルボジライトLA−1)
【0108】
耐加水分解性改良剤−2(エポキシ化合物、旭電化社製 アデカスタブEP17)
【0109】
〔実施例1〜3および比較例1〜3〕
<ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造>
表1に記載の比率(重量部)にて各成分をブレンドし、これを30mmのベントタイプ二軸押出機(日本製鋼所社製、二軸押出機TEX30HCT)を使用してバレル温度270℃において溶融混練してストランドに押し出した後、ストランドカッターによりペレット化し、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物ペレットを得た。
【0110】
<評価用試験片(フィルム)の成形方法>
上述のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物ペレットを、120℃の条件下で6時間、熱風オーブンを用いて乾燥した。次いで600mm幅のTダイの付いた池貝鉄工製成形機(単軸40mm押出機)にて、0.3mm(300μm)のフィルムとした。キャスティングロール温度は80℃、引き取りスピードは1m/分とした。
【0111】
<評価方法>
難燃性試験:
UL94VTM試験(薄手材料垂直燃焼試験)に準拠し、上述の方法で作製した300μm厚みのフィルムについて評価した。VTM−0難燃性を有するものを「○」、VTM−0難燃性に満たないものを「×」として評価した。結果を表2に示す。
【0112】
また耐久性試験として、「耐加水分解性」、「耐熱老化性」、および「耐薬品性」の3項目について評価した。
【0113】
<耐加水分解性試験>
上述の方法で作製した厚さ300μmのフィルムにおいて高温、高湿熱処理前後の引っ張り物性評価を実施した。熱処理は、85℃、85%RHの高温高湿下にて50日間静置して行った。熱処理後のフィルムは、23℃65%RHで24時間静置した後、引っ張り物性評価を実施した。引張り試験は引張りスピード200mm/分で実施し、ASTM D−882に準拠し、下記指標にて評価した。尚、高温、高湿熱処理前のフィルムは、処理後のフィルム同様、23℃65%RHで24時間静置した後、引っ張り物性評価を実施した。結果を表2に示す。
【0114】
◎:50日の時点で引張り破断伸度が、熱処理をしていないフィルムの40%以上。
△:50日の時点で引張り破断伸度が、熱処理をしていないフィルムの40%未満。
×:50日の時点で引張り破断伸度が、保持率0%。
【0115】
<耐熱老化性試験>
上述の方法で作製した厚さ300μmのフィルムを、150℃の熱風オーブンにて処理し、処理前後の引っ張り物性評価を実施した。熱処理後のサンプルは、23℃65%RHで24時間静置した後、引張りスピード200mm/分で引っ張り試験をASTM D−882に準拠して行い、評価した。尚、熱処理前のフィルムは、処理後のフィルム同様、23℃65%RHで24時間静置した後、引っ張り物性評価を実施した。結果を表2に示す。
【0116】
<耐薬品性試験>
上述の方法で作製した厚さ300μmのフィルムを、塩化メチレンに2時間浸漬した後、ASTM D−882に準拠してフィルムの引張り試験を実施した。2時間浸漬後の引張伸度が200%以上保持しているものを「◎」、同伸度が100〜200%のものを「△」、そして100%より小さいものを「×」と表記した。結果を表2に示す。
【0117】
<絶縁抵抗測定>
上述の方法で作製した厚さ300μmのフィルムを、90℃の水中に15分後浸し、JIS C3005に従い絶縁抵抗を測定した。結果を表2に示す。
【0118】
【表1】

【0119】
【表2】

【0120】
表2より、実施例1〜3で示した本発明のPBT樹脂組成物は、耐加水分解性、難燃性、耐熱老化性、耐薬品性の何れに於いても優れた特性を示すことが判る。そして更に、実施例1、2においては、無機多孔質充填剤を含有することで、更に高温絶縁特性においても良好な結果を示すことがわかる。これに対して比較例1では難燃性以外の、耐熱老化性、高温絶縁特性が不十分であった。そして比較例2は、難燃性が不十分であり、また比較例3は難燃性、耐薬品性が不十分であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、リン系化合物および/またはトリアジン環を有する窒素化合物からなる(B)難燃剤1〜30重量部、(C)ポリオルガノシロキサンコアグラフト共重合体1〜50重量部からなることを特徴とする難燃ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項2】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、更に(D)耐加水分解性改良剤0.05〜10重量部および/または(E)無機多孔質充填剤 0.5〜10重量部を含有することを特徴とする請求項1に記載の難燃ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項3】
(B)難燃剤におけるリン系化合物が、次の一般式(1)で示されるリン酸エステル化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の難燃ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【化1】

(式(I)中R 〜R は水素原子または炭素数6以下のアルキル基を示し、nは0〜10の整数を示し、R は以下に示す2価の有機基を示す。)
【化2】

【請求項4】
(B)難燃剤におけるトリアジン環を有する窒素化合物が、シアヌル酸とメラミン類との等モル反応物であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の難燃ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項5】
(D)耐加水分解性改良剤がカルボジイミド化合物であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の難燃ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項6】
請求項2に記載の(E)無機多孔質充填剤が、焼成クレーであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の難燃ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の難燃ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなるシート状樹脂成形体。

【公開番号】特開2009−126957(P2009−126957A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−304038(P2007−304038)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【出願人】(594137579)三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 (609)
【Fターム(参考)】