説明

難燃剤含有複合樹脂粒子、予備発泡粒子、発泡成形体及びそれらの製造方法

【課題】所望の難燃性を維持しつつ、難燃剤の使用量を減らした発泡成形体を与える難燃剤含有複合樹脂粒子を提供することを課題とする。
【解決手段】ポリプロピレン系樹脂100質量部と、ポリスチレン系樹脂100〜400質量部とから少なくとも構成された複合樹脂粒子中に、前記複合樹脂粒子100質量部に対して1.5質量部未満0.3質量部以上の難燃剤が含有されてなることを特徴とする難燃剤含有複合樹脂粒子により上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃剤含有複合樹脂粒子、予備発泡粒子、発泡成形体及びそれらの製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、難燃剤の使用量が少なくても所望の難燃性を実現しうる難燃剤含有複合樹脂粒子、予備発泡粒子、発泡成形体及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とを複合化することで、ポリスチレン系樹脂の優れた剛性と、ポリオレフィン系樹脂の優れた耐薬品性及び耐衝撃性とを有する発泡成形体を与えうる複合樹脂粒子が特開2008−75076号公報(特許文献1)や特開2008−239794号公報(特許文献2)で提案されている。
これら特許文献には、複合樹脂粒子に難燃性を付与するために、複合樹脂粒子100質量部に対して、1.5質量部以上の難燃剤を使用することが必要であると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−75076号公報
【特許文献2】特開2008−239794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年省資源化、低コスト化の要望から、所望の難燃性を維持しつつ、難燃剤の使用量を減らすことが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かくして本発明によれば、ポリプロピレン系樹脂100質量部と、ポリスチレン系樹脂100〜400質量部とから少なくとも構成された複合樹脂粒子中に、前記複合樹脂粒子100質量部に対して1.5質量部未満0.3質量部以上の難燃剤が含有されてなることを特徴とする難燃剤含有複合樹脂粒子が提供される。
更に、本発明によれば、上記難燃剤含有複合樹脂粒子に、発泡剤を含浸させ、次いで予備発泡して得られた予備発泡粒子が提供される。
また、本発明によれば、上記予備発泡粒子を発泡成形させて得られた発泡成形体が提供される。
【0006】
更に、本発明によれば、分散剤を含む水性懸濁中に、ポリプロピレン系樹脂粒子100質量部と、スチレン系単量体100〜400質量部と、重合開始剤とを分散させる工程と、
得られた分散液を前記スチレン系単量体が実質的に重合しない温度に加熱して前記スチレン系単量体を前記ポリプロピレン系樹脂粒子に含浸させる工程と、
ポリプロピレン系樹脂粒子の融点をT℃としたとき、(T−10)℃〜(T+20)℃の温度で、前記スチレン系単量体の第1の重合を行って第1の粒子を得る工程と、
前記第1の重合工程に続いて、スチレン系単量体と、重合開始剤とを加え、かつ、(T−25)℃〜(T+10)℃の温度とすることにより、前記第1の粒子への前記スチレン系単量体の含浸及び第2の重合を行って複合樹脂粒子を得る工程と、
前記第2の重合中の前記第1の粒子又は前記複合樹脂粒子に、前記複合樹脂粒子100質量部に対して1.5質量部未満0.3質量部以上の難燃剤を含浸させて難燃剤含有複合樹脂粒子を得る工程と
を有することを特徴とする難燃剤含有複合樹脂粒子の製造方法が提供される。
【0007】
更に、本発明によれば、上記方法により得られる難燃剤含有複合樹脂粒子に発泡剤を含浸させて発泡性複合樹脂粒子を得る工程と、予備発泡装置内にゲージ圧力0.005〜0.09MPaの水蒸気を導入して前記発泡性複合樹脂粒子を加熱することによって予備発泡粒子を得る工程とを有する予備発泡粒子の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、上記方法により得られる予備発泡粒子を成形型のキャビティ内へ充填し、0.20MPa<X≦0.35MPaの範囲のゲージ圧力Xの水蒸気で発泡成形させて発泡成形体を形成する工程を有する発泡成形体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、所望の難燃性を維持しつつ、難燃剤の使用量が低減された難燃剤含有複合樹脂粒子、予備発泡粒子、発泡成形体及びそれらの製造方法が提供できる。本発明の発泡成形体は、更に、加熱寸法安定性及び融着性が良好である。
また、難燃剤が、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートを含む場合、より向上した難燃性を有しつつ、難燃剤の使用量が低減された難燃剤含有複合樹脂粒子を提供できる。
更に、難燃剤含有複合樹脂粒子が、前記複合樹脂粒子100質量部に対して1質量部以下の難燃助剤を更に含み、前記難燃助剤が2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンを含む場合、より向上した難燃性を有しつつ、難燃剤の使用量が低減された難燃剤含有複合樹脂粒子を提供できる。
また、発泡成形体が、0mm/minの燃焼速度(米国自動車安全基準FMVSS 302に準拠した方法により測定)を有し、かつ、1.0%未満の加熱寸法変化率(JIS K6767:1999KのB法に準拠した方法により80℃、168時間で測定)を有する場合、特に自動車用途に好適な発泡成形体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(a)難燃剤含有複合樹脂粒子
難燃剤含有複合樹脂粒子は、複合樹脂粒子100質量部中に、難燃剤が1.5質量部未満0.3質量部以上含有されてなる。複合樹脂粒子は、ポリプロピレン系樹脂100質量部と、ポリスチレン系樹脂100〜400質量部とから少なくとも構成される。
(ポリプロピレン系樹脂)
ポリプロピレン系樹脂としては、特に限定されず、公知の重合方法で得られた樹脂を使用できる。例えば、プロピレン単独重合体、プロピレンと他の単量体との共重合体(二元や三元以上の共重合体を含む)等が挙げられる。共重合体は、ブロック共重合体でも、ランダム共重合体でもよい。他の単量体としては、エチレン、α−オレフィン、環状オレフィン、ジエン系単量体等が挙げられる。
【0010】
共重合体は、プロピレン単位を75質量%以上含むことが好ましく、90質量%以上含むことがより好ましい。更に、共重合体は、プロピレン−エチレン共重合体が好ましい。プロピレン−エチレン共重合体は、プロピレンとエチレンとの共重合体単位を90質量%以上含むものであることが好ましい。
また、ポリプロピレン系樹脂は、120℃〜145℃の範囲の融点及び0.1〜10g/10分のメルトフローレート(MFR)を有するものが好ましい。融点が、120℃より低いと発泡成形体の耐熱性が低くなることがある。また、融点が145℃より高いと、重合温度が高くなり、良好な重合が困難となることがある。なお、融点が複数ある場合、最も低い融点をここでの融点とする。
【0011】
(ポリスチレン系樹脂)
ポリスチレン系樹脂としては、例えば、スチレン、置換スチレン(置換基は、低級アルキル、ハロゲン原子(特に塩素原子)等)のスチレン系単量体を重合させて得られる樹脂が挙げられる。置換スチレンとしては、例えば、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロスチレン等が挙げられる。更に、ポリスチレン系樹脂は、スチレン系単量体と、スチレン系単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体であってもよい。他の単量体としては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールのモノ又はジアクリル酸やメタクリル酸のエステル、無水マレイン酸、N−フェニルマレイミド等が挙げられる。
ポリスチレン系樹脂は、スチレン系単量体単位を70質量%以上含むことが好ましく、90質量%以上含むことがより好ましい。
【0012】
ポリスチレン系樹脂は、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、100〜400質量部使用される。ポリスチレン系樹脂が400質量部より多いと、発泡成形体の耐薬品性及び耐熱性が低下することがある。一方、使用量が100質量部より少ないと、発泡成形体の剛性が低下することがある。ポリスチレン系樹脂の使用量は、120〜300質量部であることが好ましく、150〜250質量部であることがより好ましい。
【0013】
(難燃剤)
難燃剤としては、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、デカブロモジフェニルエーテル、トリブロモフェニルアリルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジアリルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジプロピルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジ(ヒドロキシエチル)エーテル、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)等の臭素系難燃剤、塩化パラフィン、塩化トリフェニル、塩化ジフェニル、パークロルペンタシクロデカン等の塩素系難燃剤、1,2−ジブロモ3−クロルプロパン、2−クロル−1,2,3,4−テトラブロモブタン等の塩素臭素含有難燃剤等が挙げられる。難燃剤は、1種のみ使用してもよく、複数種組み合わせて使用してもよい。複数種組み合わせて使用する場合は、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートが主成分(例えば、50質量%以上)であることが好ましい。
【0014】
難燃剤は、複合樹脂粒子100質量部に対して、1.5質量部未満0.3質量部以上の範囲で含有される。難燃剤の含有量が0.3質量部より少ないと、発泡成形体の難燃性が低下することがある。一方、難燃剤の含有量が1.5質量部以上であると、難燃性の付与に必要以上の量が含まれることになり発泡成形体の製造コストが増加することがある。更に、発泡成形体の加熱寸法変化が大きくなることがある。難燃剤の含有量は、1.2質量部以下0.3質量部以上であることが好ましく、1.0質量部以下0.3質量部以上であることがより好ましい。
【0015】
(他の添加剤)
難燃剤含有複合樹脂粒子は、必要に応じて、難燃助剤、着色剤、滑剤、核剤、充填材、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を含んでいてもよい。
(1)難燃助剤
難燃助剤としては、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、ジクミルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等が挙げられる。難燃助剤は、1種のみ使用してもよく、複数種組み合わせて使用してもよい。複数種組み合わせて使用する場合は、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンが主成分(例えば、50質量%以上)であることが好ましい。
難燃助剤の含有量は、複合樹脂粒子100質量部に対して、1質量部以下であることが好ましい。難燃助剤の含有量が1質量部より多いと、難燃性の付与に必要以上の量が含まれることになり発泡成形体の製造コストが増加することがある。さらに、発泡成形体の加熱寸法変化が大きくなることがある。難燃助剤の含有量は、0.8質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以下であることが更に好ましい。
【0016】
(2)着色剤
着色剤としては、無機系の顔料であっても、有機系の顔料であってもよい。
無機系の顔料としては、例えば、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、黒鉛、炭素繊維等のカーボン、黄鉛、亜鉛黄、バリウム黄等のクロム酸塩、紺青等のフェロシアン化物、カドミウムイエロー、カドミウムレッド等の硫化物、鉄黒、紅殻等の酸化物、群青のようなケイ酸塩、酸化チタン等が挙げられる。
有機系の顔料としては、例えば、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、アゾレーキ、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、チオインジゴ系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系等の多環式顔料等が挙げられる。
【0017】
上記着色剤として、カーボンを使用する場合、複合樹脂粒子に含有させる前のカーボン(原料カーボン)は、粒子状であることが好ましい。原料カーボンの粒子径は、通常、5nm〜100nmが好適であり、更に好ましくは、15nm〜35nmである。なお、原料カーボンの粒子径は、平均粒子径を意味し、平均粒子径は、電子顕微鏡による算術平均である。本発明に用いられるカーボンブラックを特徴づける平均粒子径は、カーボンブラックの集合体を構成する小さな球状(微結晶による輪郭を有し、分離できない)成分を電子顕微鏡写真にて測定、算出した粒子の直径の平均のことである。
また、難燃剤含有複合樹脂粒子中のカーボンの含有量は、できるだけ少ないか、含まれていないことが好ましい。例えば、含有量の上限は、0.5質量%である。0.5質量%より多い場合、難燃性が低下することがある。
【0018】
(3)その他
滑剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、エチレンビスステアリン酸アマイド等が挙げられる。
核剤としては、タルク、珪酸カルシウム、エチレンビスステアリン酸アミド、メタクリル酸エステル系共重合体等が挙げられる。
充填材としては、合成又は天然に産出される二酸化ケイ素等が挙げられる。
可塑剤としては、ジイソブチルアジペート、流動パラフィン、グリセリンジアセトモノラウレート、やし油等が挙げられる。
【0019】
(b)難燃剤含有複合樹脂粒子の製造方法
難燃剤含有複合樹脂粒子は、例えば、
分散剤を含む水性懸濁中に、ポリプロピレン系樹脂粒子100質量部と、スチレン系単量体100〜400質量部と、重合開始剤とを分散させる工程Aと、
得られた分散液を前記スチレン系単量体が実質的に重合しない温度に加熱してスチレン系単量体を前記ポリプロピレン系樹脂粒子に含浸させる工程Bと、
ポリプロピレン系樹脂粒子の融点をT℃としたとき、(T−10)℃〜(T+20)℃の温度で、スチレン系単量体の第1の重合を行って第1の粒子を得る工程Cと、
第1の重合工程に続いて、スチレン系単量体と、重合開始剤とを加え、かつ、(T−25)℃〜(T+10)℃の温度とすることにより、第1の粒子への前記スチレン系単量体の含浸及び第2の重合を行って複合樹脂粒子を得る工程Dと、
第2の重合中の第1の粒子又は複合樹脂粒子に、複合樹脂粒子100質量部に対して1.5質量部未満0.3質量部以上の難燃剤を含浸させて難燃剤含有複合樹脂粒子を得る工程Eと
を経ることにより製造できる。
【0020】
工程A〜Eのそれぞれは、例えば、スチレン系単量体を原料としてビーズ状のポリスチレン系樹脂粒子を製造するポリスチレン系樹脂の懸濁重合法又はシード重合法等の周知の重合方法を実施する際に用いられるオートクレーブ重合装置を用いて実施できるが、使用される製造装置はこれに限定されない。
【0021】
(工程A)
ポリプロピレン系樹脂粒子は、例えば、ポリプロピレン系樹脂を押出機で溶融し、ストランドカット、水中カット、ホットカット等により造粒ペレット化する方法、粉砕機にて直接樹脂粒子を粉砕しペレット化する方法により得られる。また、その形状は、真球状、楕円球状(卵状)、円柱状、角柱状等が挙げられる。このポリプロピレン系樹脂粒子の好ましい粒子径は、0.5〜1.5mmの範囲であり、より好ましくは、0.6〜1.0mmの範囲である。
【0022】
分散剤としては、例えば、部分ケン化ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等の有機系分散剤、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム等の無機系分散剤が挙げられる。この内、無機系分散剤が好ましい。無機系分散剤を用いる場合、界面活性剤を併用することが好ましい。このような界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、α−オレフィンスルホン酸ソーダ等が挙げられる。
分散剤の使用量は、水性懸濁液100質量部に対して、0.1〜5質量部であることが好ましい。
水性懸濁液を構成する水性媒体は、水、水と水溶性溶媒(例えば、メタノール、エタノール等の低級アルコール)との混合物等が挙げられる。水性媒体の使用量は、懸濁液を形成できさえすれば特に限定されない。
【0023】
重合開始剤としては、スチレン系単量体の重合に汎用されている従来周知の重合開始剤を使用できる。例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−アミルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−アミルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシビバレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物が挙げられる。なお、重合開始剤は、単独で用いられても併用されてもよい。
重合開始剤の使用量は、スチレン系単量体100質量部に対して、0.1〜5質量部であることが好ましい。
【0024】
架橋剤を使用してもよい。架橋剤としては、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、ジクミルパーオキサイド、2 ,5−ジメチル−2, 5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサン等の有機過酸化物等が挙げられる。架橋剤の添加方法としては、例えば、架橋剤をポリプロピレン系樹脂に直接添加する方法、溶剤、可塑剤又はスチレン系単量体に架橋剤を溶解させた上で添加する方法、架橋剤を水に分散させた上で添加する方法等が挙げられる。この内、スチレン系単量体に架橋剤を溶解させた上で添加する方法が好ましい。
スチレン系単量体は、ポリプロピレン系樹脂粒子に含浸させるために、水性媒体に、連続的にあるいは断続的に添加できる。スチレン系単量体は、水性媒体中に徐々に添加していくのが好ましい。
【0025】
(工程B)
工程Bでは、工程Aで得られた分散液を、スチレン系単量体が実質的に重合しない温度に加熱し、スチレン系単量体をポリプロピレン系樹脂粒子に含浸させる。この加熱温度は、45〜70℃の範囲であることが好ましい。加熱温度が45℃未満であると、スチレン系単量体の含浸が不十分となってポリスチレンの重合粉末が生成されることがある。一方、加熱温度が70℃を超えると、スチレン系単量体がポリプロピレン系樹脂粒子に十分含浸される前に重合してしまうことがある。より好ましい加熱温度は50〜65℃の範囲である。
【0026】
(工程C及びD)
工程C及び工程Dにおいて、重合温度は重要な要因である。具体的には、ポリプロピレン系樹脂の融点をT℃としたとき、重合温度は、工程C(第1の重合)では、(T−10)℃〜(T+20)℃の範囲であり、工程D(第2の重合)では、(T−25)℃〜(T+10)℃の範囲である。
上記温度範囲で重合を行うことにより、中心部はポリスチレン系樹脂の存在量が多く、表層はポリプロピレン系樹脂の存在量が多い複合樹脂粒子を得ることができる。ポリスチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂が偏在する結果として、ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂のそれぞれの長所が生かされ、剛性、発泡成形性及び耐薬品性を良好に保持された発泡成形体を提供できる。
【0027】
重合温度が上記温度範囲より低くなると、中心部のポリスチレン系樹脂の存在量が少なく、良好な物性を示す発泡成形体が得られないことがある。また、重合温度が上記温度範囲より高くなると、スチレン系単量体がポリプロピレン系樹脂粒子に十分含浸される前に重合が開始してしまうので、良好な物性を示す発泡成形体が得られないことがある。また、高くなると、耐熱性に優れた高価格の重合設備が必要になる。
また、スチレン系単量体の重合を、工程Cと工程Dの二段階に分ける理由は、一度に多くのスチレン系単量体をポリプロピレン系樹脂に含浸させようとすると、スチレン系単量体がポリプロピレン系樹脂に十分に含浸されず、ポリプロピレン系樹脂の表面に残るからである。重合工程を二段階に分ければ、工程Cにおいてスチレン系単量体が確実にポリプロピレン系樹脂の中心部に含浸され、工程Dにおいてもスチレン系単量体がポリプロピレン系樹脂の中心部に向かって含浸される。
【0028】
なお、ポリスチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂との偏在は、ATR(Attenuated Total Reflectance)法赤外分光分析により、表面及び中心部を測定することで求めることができる。
ATR法赤外分光分析とは、全反射吸収(Attenuated Total Reflectance)を利用する一回反射型ATR法により赤外吸収スペクトルを測定する分析方法である。この分析方法は、高い屈折率を持つATRプリズムを試料に密着させ、ATRプリズムを通して赤外線を試料に照射し、ATRプリズムからの反射光を分光分析する方法である。
ATR法赤外分光分析は、試料とATRプリズムとを密着させるだけでスペクトルを測定できるという簡便さ、深さ数μmまでの表面分析が可能である等の理由で高分子材料等の有機物をはじめ、種々の物質の表面分析に広く利用されている。
【0029】
赤外吸収スペクトルでは、698cm-1における吸光度D698が、ポリスチレン系樹脂に主に含まれるベンゼン環の面外変角振動に由来する698cm-1付近に現われるピークの高さに対応する。また、1376cm-1における吸光度D1376が、ポリプロピレン系樹脂に含まれる−C−CH3炭化水素のCH3の対称変角振動に由来する1376cm-1付近に現われるピークの高さに対応する。
【0030】
両吸光度比からポリスチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂の組成割合を以下のようにして求める。即ち、まず、ポリスチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂とを所定の組成割合に均一に混合してなる複数種類の標準試料を作製し、各標準試料についてATR法赤外分光分析により粒子表面分析を行なって赤外線吸収スペクトルを得る。得られた赤外吸収スペクトルのそれぞれから吸光度比を算出する。そして、縦軸に組成割合(標準試料中のポリスチレン系樹脂比率(質量%))を、横軸に吸光度比(D698/D1376)をとることで、検量線を描く。この検量線に基づいて、複合樹脂発泡粒子の吸光度比から、ポリスチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂の組成割合を求めることができる。
【0031】
(工程E)
工程Eでは、第2の重合中の第1の粒子又は複合樹脂粒子に、難燃剤を含浸させる。含浸させる際の温度は、難燃剤又は難燃助剤の融点の内、高い方の融点をt℃としたとき、t℃〜(t+30)℃の範囲が好ましい。t℃より低いと難燃剤又は難燃助剤が複合樹脂粒子に十分に含浸されないことがある。また、(t+30)℃より高いと耐熱性に優れた高価格の重合設備が必要になることがある。
工程Eの後、反応槽を冷却し、難燃剤含有複合樹脂粒子を水性媒体と分離することで、難燃剤複合樹脂粒子を単離できる。
【0032】
(c)予備発泡粒子
予備発泡粒子は、難燃剤含有複合樹脂粒子に、発泡剤を含浸させ、次いで予備発泡して得ることができる。
予備発泡粒子は、例えば、難燃剤含有複合樹脂粒子に発泡剤を含浸させて発泡性複合樹脂粒子を得る工程と、予備発泡装置内にゲージ圧力0.005〜0.09MPaの水蒸気を導入して発泡性複合樹脂粒子を加熱することによって予備発泡粒子を得る工程とを経ることにより形成できる。
【0033】
(発泡性複合樹脂粒子)
(1)発泡剤
発泡剤としては、沸点が重合体の軟化温度以下であり易揮発性を有するもの、例えば、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、シクロペンタン、炭酸ガス、窒素が挙げられる。これらの発泡剤は、単独もしくは2種以上を併用してもよい。発泡剤の使用量は、難燃剤含有複合樹脂粒子100質量部に対して5〜25質量部の範囲とすることが好ましい。
【0034】
(2)他の添加剤
更に、発泡助剤を発泡剤と共に用いてもよい。発泡助剤としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、D−リモネン等の溶剤、ジイソブチルアジペート、ジアセチル化モノラウレート、やし油等の可塑剤(高沸点溶剤)が挙げられる。なお、発泡助剤の使用量は、難燃剤含有複合樹脂粒子100質量部に対して0.1〜2.5質量部が好ましい。
また、発泡性複合樹脂粒子には、結合防止剤、融着促進剤、帯電防止剤、展着剤等の表面処理剤を添加してもよい。
【0035】
結合防止剤は、発泡性複合樹脂粒子を予備発泡させる際の予備発泡粒子同士の合着を防止する役割を果たす。ここで、合着とは、予備発泡粒子の複数個が合一して一体化することをいう。具体例としては、タルク、炭酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、水酸化アルミニウム、エチレンビスステアリン酸アミド、第三リン酸カルシウム、ジメチルポリシロキサン等が挙げられる。
融着促進剤は、予備発泡粒子を二次発泡成形する際の予備発泡粒子同士の融着を促進させる役割を果たす。具体例としては、ステアリン酸、ステアリン酸トリグリセリド、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸ソルビタンエステル等が挙げられる。
【0036】
帯電防止剤としては、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ステアリン酸モノグリセリド等が挙げられる。
展着剤としては、ポリブテン、ポリエチレングリコール、シリコンオイル等が挙げられる。
なお、前記表面処理剤の総添加量は、難燃剤含有複合樹脂粒子100質量部に対して0.01〜2.0質量部が好ましい。
【0037】
(3)発泡剤含浸
難燃性複合樹脂粒子中に発泡剤を含浸させる方法は、発泡剤の種類に応じて適宜変更可能である。例えば、難燃性複合樹脂粒子が分散している水性媒体中に発泡剤を圧入して、発泡剤を含浸させる方法、難燃性複合樹脂粒子を回転混合機に供給し、この回転混合機内に発泡剤を圧入して発泡剤を含浸させる方法等が挙げられる。なお、難燃性複合樹脂粒子に発泡剤を含浸させる温度は、通常、50〜140℃とすることが好ましい。
【0038】
(予備発泡工程)
発泡性複合樹脂粒子を加熱して予備発泡させることで予備発泡粒子を得る。
予備発泡に用いる装置は、従来のポリスチレン系樹脂予備発泡粒子の製造の場合と同等の装置を使用できる。加熱は、例えば、予備発泡装置内にゲージ圧力0.005〜0.09MPaの水蒸気を導入することで行うことができる。加熱時間は一般に20〜180秒程度である。
【0039】
(予備発泡粒子の性質)
予備発泡粒子は、通常、0.0166〜0.2g/cm3の嵩密度を有することが好ましい。嵩密度が0.0166g/cm3より小さいと、予備発泡粒子を発泡させて得られる発泡成形体の強度が低下することがある。一方、嵩密度が0.2g/cm3より大きいと、予備発泡粒子を発泡させて得られる発泡成形体の質量が増加することがある。より好ましい嵩密度は0.02〜0.1g/cm3であり、更に好ましい嵩密度は0.025〜0.05g/cm3である。
また、この嵩密度を嵩発泡倍数で表すと、嵩発泡倍数(倍)=1/嵩密度(g/cm3)であることから、好ましい予備発泡粒子の嵩密度は5〜60(倍)の嵩発泡倍数に対応し、より好ましい嵩密度は10〜50(倍)の嵩発泡倍数に対応し、更に好ましい嵩密度は20〜40(倍)の嵩発泡倍数に対応する。
【0040】
予備発泡粒子の形状は、その後の型内発泡成形に影響を与えないものであれば、特に限定されない。例えば、真球状、楕円球状(卵状)、円柱状、角柱状等が挙げられる。この内、成形型のキャビティ内への充填が容易である真球状、楕円球状が好ましい。
なお、予備発泡粒子は、発泡成形に付す前に、例えば24時間程度熟成工程に付してもよい。
【0041】
(d)発泡成形体
発泡成形体は、上記予備発泡粒子を成形型のキャビティ内へ充填し、予備発泡粒子を加熱して発泡させることにより製造できる。
予備発泡粒子の加熱は、0.20MPa<X≦0.35MPaの範囲のゲージ圧力Xの水蒸気で行うことが好ましい。
発泡成形体は、0mm/minの燃焼速度(米国自動車安全基準FMVSS 302に準拠した方法により測定)であり、かつ、1.0%未満の加熱寸法変化率(JIS K6767:1999KのB法に準拠した方法により80℃、168時間で測定)された加熱寸法変化率を有することが好ましい。燃焼速度が0mm/minを超えると、発泡成形体に十分な難燃性を付与できないことがある。また、収縮率が1.0%を超えると、寸法安定性に欠けることがある。なお、収縮率は小さい程望ましいので、その下限値を特に設ける必要はない。例えば、収縮率の下限値は0であることが望ましい。
【0042】
発泡成形体は、0.0166〜0.2g/cm3の密度を有することが好ましい。密度が0.0166g/cm3より小さいと、予備発泡粒子を発泡させて得られる発泡成形体の強度が低下することがある。一方、発泡成形体の密度が0.2g/cm3より大きいと、予備発泡粒子を発泡させて得られる発泡成形体の質量が増加することがある。より好ましい密度は0.02〜0.1g/cm3の範囲であり、更に好ましい密度は0.025〜0.05g/cm3の範囲である。
上記密度を発泡倍数で示すと、好ましい密度は5〜60(倍)の発泡倍数に対応し、より好ましい密度は10〜50(倍)に対応し、更に好ましい密度は20〜40(倍)に対応する。
発泡成形体は、剛性、加熱寸法安定性、発泡成形性及び耐薬品性に優れている。また、難燃剤を含む場合は、難燃性に優れている。
発泡成形体は、車輛用バンパーの芯材、ドア内装緩衝材等の車輛用緩衝材、電子部品、各種工業資材、食品等の搬送容器等の各種用途に用いることができる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下の実施例における融点、嵩発泡倍数、発泡倍数、加熱寸法変化率、燃焼速度及び成形体内部融着の測定法を下記する。
<融点>
JIS K7122:1987「プラスチックの転移熱測定方法」記載の方法により測定する。すなわち、示差走査熱量計装置DSC220型(セイコー電子工業社製)を用い、測定容器に試料を7mg充填して、窒素ガス流量30ml/minのもと、室温から220℃の間で10℃/minの昇・降温スピードにより昇温、降温、昇温を繰り返し、2回目の昇温時のDSC曲線の融解ピーク温度を融点とする。また、融解ピークが2つ以上ある場合は、低い側のピーク温度を融点とする。
【0044】
<嵩発泡倍数>
予備発泡粒子の嵩発泡倍数は下記の要領で測定する。
まず、予備発泡粒子を500cm3、メスシリンダ内に500cm3の目盛りまで充填する。なお、メスシリンダを水平方向から目視し、予備発泡粒子が一粒でも500cm3の目盛りに達しているものがあれば、その時点で予備発泡粒子のメスシリンダ内への充填を終了する。
次に、メスシリンダ内に充填した予備発泡粒子の質量を小数点以下2位の有効数字で秤量し、その質量をW(g)とした。そして、下記の式により予備発泡粒子の嵩密度を算出する。
嵩密度(g/cm3)=W/500
予備発泡粒子の嵩発泡倍数は、次式により算出する。
嵩発泡倍数(倍)=1/密度(g/cm3
【0045】
<発泡成形体の嵩発泡倍数>
発泡成形後に得られる発泡成形体の見かけの体積(cm3)(c)と、その質量(g)(d)を測定し、式(d)/(c)により発泡成形体の嵩密度(g/cm3)を求める。発泡成形体の見かけの体積は成形後の収縮を考慮しなければ、例えば発泡成形体が得られた時点での金型キャビティ内の体積に等しく、金型図面寸法から算出できる。嵩発泡倍数は嵩密度の逆数、すなわち式(c)/(d)とする。
【0046】
<加熱寸法変化率>
加熱寸法変化率はJIS K 6767:1999K「発泡プラスチック−ポリエチレン−試験方法」記載のB法にて測定する。
試験片は150×150×原厚み(mm)として、その中央部に縦及び横方向にそれぞれ互いに平行に3本の直線を50mm間隔になるよう記入し、80℃の熱風循環式乾燥機の中に168時間置いた後に取出し、標準状態の場所に1時間放置後、縦及び横線の寸法を下記式によって測定する。
S=(L1−L0)/L0×100
式中、Sは加熱寸法変化率(%)、L1は加熱後の平均寸法(mm)、L0は初めの平均寸法(mm)をそれぞれ表す。
加熱寸法変化率Sは、以下の基準で評価する。
◎:0≦S≦0.5;寸法変化率が非常に低く、寸法の安定性が極めて良好である。
○:0.5<S<1;寸法変化率が低く、寸法の安定性が良好である。
×:S≧1;寸法の変化が大きく、寸法の安定性に劣る。
【0047】
<燃焼速度>
燃焼速度は、米国自動車安全基準FMVSS 302に準拠した方法で測定する。
試験片は、350mm×100mm×12mm(厚み)とし、少なくとも350mm×100mmの二面には表皮が存在するものとする。
燃焼速度は、以下の基準で評価する。
○:所定の嵩発泡倍数の発泡成形体において、測定開始点に達する前に消火した場合。この場合の燃焼速度を0mm/minとする。
×:所定の嵩発泡倍数の発泡成形体において、燃焼速度が0mm/minより大きい場合。
【0048】
<成形体内部融着>
縦400mm×横300mm×厚み30mmの平板形状の発泡成形体の表面に、一対の長辺の中心同士を結ぶ直線に沿ってカッターナイフで深さ約5mmの切り込み線を入れた後、この切り込み線に沿って発泡成形体を手で二分割する。そして、二分割された発泡成形体の破断面の発泡粒子について、100〜150個の任意の範囲について発泡粒子内で破断している発泡粒子の数(a)と、発泡粒子同士の界面で破断している発泡粒子数(b)を数え、式(a)/〔(a)+(b)〕×100に代入して得られた値を融着率(%)とする。
上記により算出した融着率を基に以下の基準で評価した。
○:融着率80%以上
△:融着率50%以上80%未満
×:融着率50%未満
【0049】
[実施例1]
ポリプロピレン系樹脂(プライムポリマー社製、商品名「F−744NP」、融点:140℃、プロピレン単位:96質量%)2000gを押出機に供給して溶融混練してストランドカットにより造粒ペレット化することにより、球状(卵状)のポリプロピレン系樹脂粒子を得た。
ポリプロピレン系樹脂粒子は、100粒あたり55mgの質量と、約1mmの平均粒子径を有していた。
次に、撹拌機付5Lオートクレーブに、前記ポリプロピレン系樹脂粒子800gを入れ、更に水性媒体として純水2kg、ピロリン酸マグネシウム20g、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.5gを加えた。内容物を撹拌することで水性媒体と懸濁させ、10分間保持し、その後60℃に昇温することで水系懸濁液とした。
【0050】
次に、この懸濁液中にジクミルパーオキサイド0.7gを溶解させたスチレン単量体350gを30分かけて滴下した。滴下後30分保持し、ポリプロピレン系樹脂粒子にスチレン単量体を吸収させた。
次に、反応系の温度をポリプロピレン系樹脂粒子の融点と同じ140℃に昇温して2時間保持し、スチレン単量体をポリプロピレン系樹脂粒子中で重合(第1の重合)させて第1の粒子を得た。
次に、第1の重合の反応液をポリプロピレン系樹脂粒子の融点より20℃低い120℃にした。この後、懸濁液中に、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ1.5gを加えた後、重合開始剤としてジクミルパーオキサイド3.6gを溶解したスチレン単量体850gを4時間かけて滴下し、第1の粒子に吸収させながら重合(第2の重合)を行った。
【0051】
滴下終了後、120℃で1時間保持、次いで140℃に昇温し3時間保持して重合を完結することで複合樹脂粒子を得た。
その後、反応系の温度を60℃にして、この懸濁液中に、難燃剤としてトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート(日本化成社製)28gと、難燃助剤として2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン(化薬アクゾ社製)20gとを投入した。投入後、反応系の温度を130℃に昇温し、2時間攪拌を続けることで難燃剤含有複合樹脂粒子を得た。
【0052】
次に、常温まで冷却し、難燃剤含有複合樹脂粒子を5Lオートクレーブから取り出した。取り出し後の難燃剤含有複合樹脂粒子2kgと水2Lを再び撹拌機付5Lオートクレーブに投入し、発泡剤としてブタン300gを撹拌機付5Lオートクレーブに注入した。注入後、70℃に昇温し、4時間撹拌を続けた。
その後、常温まで冷却して5Lオートクレーブから発泡性複合樹脂粒子を取り出し、脱水乾燥させた。
次に、得られた発泡性複合樹脂粒子を笠原工業株式会社製PSX40予備発泡機に1000g投入し、PSX40予備発泡機内にゲージ圧力0.04MPaの水蒸気を導入して加熱して嵩発泡倍数約40倍に予備発泡させ、予備発泡粒子を得た。
【0053】
更に、予備発泡粒子を1日間室温に放置した後、400mm×300mm×30mmの大きさのキャビティ内に充填し、キャビティを含む成形型にゲージ圧力0.25MPaの水蒸気を50秒間導入して加熱した。水蒸気導入後、発泡成形体の最高面圧が0.001MPaに低下するまで冷却して、発泡成形体を得た。
得られた発泡成形体を用いて、燃焼速度、加熱寸法変化率及び成形体内部融着の評価を行った。結果を表1に示す。
【0054】
[実施例2]
複合樹脂粒子に、難燃剤6gと難燃助剤4gとを含浸させたこと以外は実施例1と同様にして、発泡成形体を得た。得られた発泡成形体を用いて、燃焼速度、加熱寸法変化率及び成形体内部融着の評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例3]
複合樹脂粒子に、難燃剤10gと難燃助剤6gとを含浸させたことと、成形型にゲージ圧力0.21MPaの水蒸気を50秒間導入したこと以外は実施例1と同様にして、発泡成形体を得た。得られた発泡成形体を用いて、燃焼速度、加熱寸法変化率及び成形体内部融着の評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例4]
複合樹脂粒子に、難燃剤10gと難燃助剤6gとを含浸させたことと、成形型にゲージ圧力0.33MPaの水蒸気を50秒間導入したこと以外は実施例1と同様にして、発泡成形体を得た。得られた発泡成形体を用いて、燃焼速度、加熱寸法変化率及び成形体内部融着の評価を行った。結果を表1に示す。
【0055】
[実施例5]
実施例1と同様にして得たポリプロピレン系樹脂粒子600gを攪拌機付5Lオートクレーブに入れ、水性媒体として純水2kg、ピロリン酸マグネシウム20g、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.5gを加え、攪拌して水性媒体中に懸濁させ、10分間保持し、その後60℃に昇温して水系懸濁液とした。
次に、この懸濁液中にジクミルパーオキサイド0.5gを溶解させたスチレン単量体250gを30分かけて滴下した。滴下後30分保持し、ポリプロピレン系樹脂粒子にスチレン単量体を吸収させた。
【0056】
次に、反応系の温度をポリプロピレン系樹脂粒子の融点と同じ140℃に昇温して2時間保持し、スチレン単量体をポリプロピレン系樹脂粒子中で重合(第1の重合)させて第1の粒子を得た。
次に、第1の重合の反応液をポリプロピレン系樹脂粒子の融点より20℃低い120℃にした。この後、懸濁液中に、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ1.5gを加えた後、ジクミルパーオキサイド4.2gを溶解したスチレン単量体1150gを5.5時間かけて滴下し、第1の粒子に吸収させながら重合(第2の重合)を行った。
滴下終了後、120℃で1時間保持した後に140℃に昇温し3時間保持して重合を完結することで複合樹脂粒子を得た。
【0057】
その後、反応系の温度を60℃にして、この懸濁液中に、実施例1と同様の難燃剤20gと難燃助剤20gとを投入した。投入後、反応系の温度を130℃に昇温し、2時間攪拌を続けることで難燃剤含有複合樹脂粒子を得た。
次に、常温まで冷却し、難燃剤含有複合樹脂粒子を5Lオートクレーブから取り出した。取り出し後の難燃剤含有複合樹脂粒子2kgと水2Lを再び撹拌機付5Lオートクレーブに投入し、発泡剤としてブタン300gを撹拌機付5Lオートクレーブに注入した。注入後、70℃に昇温し、4時間撹拌を続けた。
その後、常温まで冷却して5Lオートクレーブから発泡性複合樹脂粒子を取り出し、脱水乾燥した。
【0058】
次に、得られた発泡性複合樹脂粒子を笠原工業株式会社製PSX40予備発泡機に1000g投入し、PSX40予備発泡機内にゲージ圧力0.04MPaの水蒸気を導入して加熱して嵩発泡倍数約30倍に予備発泡させ、予備発泡粒子を得た。
更に、予備発泡粒子を1日間室温に放置した後、400mm×300mm×30mmの大きさのキャビティ内に充填し、キャビティを含む成形型にゲージ圧力0.22MPaの水蒸気を50秒間導入して加熱した。水蒸気導入後、発泡成形体の最高面圧が0.001MPaに低下するまで冷却して、発泡成形体を得た。
得られた発泡成形体を用いて、燃焼速度、加熱寸法変化率及び成形体内部融着の評価を行った。結果を表1に示す。
【0059】
[実施例6]
実施例1と同様にして得たポリプロピレン系樹脂粒子1000gを攪拌機付5Lオートクレーブに入れ、水性媒体として純水2kg、ピロリン酸マグネシウム20g、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.5gを加えた。内容物を攪拌して水性媒体と懸濁させ、10分間保持し、その後60℃に昇温することで水系懸濁液とした。
次に、この懸濁液中に、ジクミルパーオキサイド0.8gを溶解させたスチレン単量体400gを30分かけて滴下した。滴下後30分保持し、ポリプロピレン系樹脂粒子にスチレン単量体を吸収させた。
次に、反応系の温度をポリプロピレン系樹脂粒子の融点と同じ140℃に昇温して2時間保持し、スチレン単量体をポリプロピレン系樹脂粒子中で重合(第1の重合)させて第1の粒子を得た。
【0060】
次に、第1の重合の反応液をポリプロピレン系樹脂粒子の融点より20℃低い120℃にした。この後、懸濁液中に、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ1.5gを加えた後、ジクミルパーオキサイド3gを溶解したスチレン単量体600gを3時間かけて滴下し、ポリプロピレン系樹脂粒子に吸収させながら重合(第2の重合)を行った。
滴下終了後、120℃で1時間保持、次いで140℃に昇温し3時間保持して重合を完結することで複合樹脂粒子を得た。
その後、反応系の温度を60℃にして、この懸濁液中に、実施例1と同じ難燃剤20gと難燃助剤20gを投入した。投入後、反応系の温度を130℃に昇温し、2時間攪拌を続けることで難燃剤含有複合樹脂粒子を得た。
【0061】
次に、常温まで冷却し、難燃剤含有複合樹脂粒子を5Lオートクレーブから取り出した。取り出し後の難燃剤含有複合樹脂粒子2kgと水2Lを再び撹拌機付5Lオートクレーブに投入し、発泡剤としてブタン300gを撹拌機付5Lオートクレーブに注入した。注入後、70℃に昇温し、4時間撹拌を続けた。
その後、常温まで冷却して5Lオートクレーブから取り出し、脱水乾燥した後に発泡性複合樹脂粒子を得た。
次に、得られた発泡性複合樹脂粒子を笠原工業株式会社製PSX40予備発泡機に1000g投入し、PSX40予備発泡機内にゲージ圧力0.04MPaの水蒸気を導入して加熱して嵩発泡倍数約30倍に予備発泡させ、予備発泡粒子を得た。
【0062】
更に、予備発泡粒子を1日間室温に放置した後、400mm×300mm×30mmの大きさのキャビティ内に充填し、キャビティを含む成形型にゲージ圧力0.22MPaの水蒸気を50秒間導入して加熱した。水蒸気導入後、発泡成形体の最高面圧が0.001MPaに低下するまで冷却して、発泡成形体を得た。
得られた発泡成形体を用いて、燃焼速度、加熱寸法変化率及び成形体内部融着の評価を行った。結果を表1に示す。
【0063】
[実施例7]
実施例1と同様にして複合樹脂粒子を含む懸濁液を得た。
その後、反応系の温度を60℃にして、この懸濁液中に、難燃剤としてトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート(日本化成社製)20gを投入し、投入後、反応系の温度を130℃に昇温し、2時間攪拌を続け、難燃剤含有複合樹脂粒子を得た。
次に、実施例1と同様にして発泡性複合樹脂粒子を得た。
次に、得られた発泡性複合樹脂粒子を笠原工業株式会社製PSX40予備発泡機に1000g投入し、PSX40予備発泡機内にゲージ圧力0.04MPaの水蒸気を導入して加熱して嵩発泡倍数約10倍に予備発泡させ、予備発泡粒子を得た。
【0064】
更に、予備発泡粒子を1日間室温に放置した後、400mm×300mm×30mmの大きさのキャビティ内に充填し、キャビティを含む成形型にゲージ圧力0.22MPaの水蒸気を50秒間導入して加熱した。水蒸気導入後、発泡成形体の最高面圧が0.001MPaに低下するまで冷却して、発泡成形体を得た。
得られた発泡成形体を用いて、燃焼速度、加熱寸法変化率及び成形体内部融着の評価を行った。結果を表1に示す。
【0065】
[実施例8]
実施例7と同様にして形成した発泡性複合樹脂粒子を嵩発泡倍率約60倍へ予備発泡させて予備発泡粒子を得たこと以外は、実施例7と同様にして、発泡成形体を作製した。
得られた発泡成形体を用いて、燃焼速度、加熱寸法変化率及び成形体内部融着の評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例9]
ポリプロピレン系樹脂(プライムポリマー社製、商品名「F−744NP」)1996gと、カーボンとしてファーネスブラック(三菱化学社製、商品名「#900」)4gとを混合し、この混合物を押出機に供給して溶融混練してストランドカットにより造粒ペレット化して、球状(卵状)のカーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子を得た。このカーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子を使用すること以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
得られた発泡成形体を用いて、燃焼速度、加熱寸法変化率及び成形体内部融着の評価を行った。結果を表1に示す。
【0066】
[比較例1]
複合樹脂粒子に、実施例1と同じ難燃剤2gと難燃助剤2gとを含浸させたこと以外は実施例1と同様にして、発泡成形体を作製した。
得られた発泡成形体を用いて、燃焼速度、加熱寸法変化率及び成形体内部融着の評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例2]
複合樹脂粒子に、実施例1と同じ難燃剤10gと難燃助剤6gとを含浸させたことと、成形型にゲージ圧力0.19MPaの水蒸気を50秒間導入して発泡成形体を得たこと以外は実施例1と同様にして、発泡成形体を作製した。
得られた発泡成形体を用いて、燃焼速度、加熱寸法変化率及び成形体内部融着の評価を行った。結果を表1に示す。
【0067】
[比較例3]
複合樹脂粒子に、実施例1と同じ難燃剤10gと難燃助剤6gとを含浸させたことと、成形型にゲージ圧力0.37MPaの水蒸気を50秒間導入して発泡成形体を得たこと以外は実施例1と同様にして、発泡成形体を作製した。
得られた発泡成形体を用いて、燃焼速度、加熱寸法変化率及び成形体内部融着の評価を行った。結果を表1に示す。
【0068】
[比較例4]
ポリプロピレン系樹脂(プライムポリマー社製、商品名「F−744NP」、融点:140℃)2000gを押出機に供給して溶融混練してストランドカットにより造粒ペレット化することにより、球状(卵状)のポリプロピレン系樹脂粒子を得た。
このときのポリプロピレン系樹脂粒子を100粒あたり55mg、平均粒子径約1mmに調整した。
実施例1と同様にして得たポリプロピレン系樹脂粒子200gを攪拌機付5Lオートクレーブに入れ、水性媒体として純水2kg、ピロリン酸マグネシウム20g、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.5gを加えた。内容物を攪拌することで水性媒体と懸濁させ、10分間保持し、その後60℃に昇温して水系懸濁液とした。
【0069】
次に、この懸濁液中に、ジクミルパーオキサイド0.2gを溶解させたスチレン単量体100gを30分かけて滴下した。滴下後30分保持し、ポリプロピレン系樹脂粒子にスチレン単量体を吸収させた。
次に、反応系の温度をポリプロピレン系樹脂粒子の融点と同じ140℃に昇温して2時間保持し、スチレン単量体をポリプロピレン系樹脂粒子中で重合(第1の重合)させて第1の粒子を得た。
次に、第1の重合の反応液をポリプロピレン系樹脂粒子の融点より20℃低い120℃にした。この後、懸濁液中に、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ1.5gを加えた後、ジクミルパーオキサイド5.4gを溶解したスチレン単量体1700gを8時間かけて滴下し、第1の粒子に吸収させながら重合(第2の重合)を行った。
【0070】
滴下終了後、120℃で1時間保持、次いで140℃に昇温し3時間保持して重合を完結することで複合樹脂粒子を得た。
その後、反応系の温度を60℃にして、この懸濁液中に、実施例1と同じ難燃剤20gと難燃助剤20gとを投入した。投入後、反応系の温度を130℃に昇温し、2時間攪拌を続けることで難燃剤含有複合樹脂粒子を得た。
次に、常温まで冷却し、難燃剤含有複合樹脂粒子を5Lオートクレーブから取り出した。取り出し後の難燃剤含有複合樹脂粒子2kgと水2Lを再び撹拌機付5Lオートクレーブに投入し、発泡剤としてブタン300gを撹拌機付5Lオートクレーブに注入した。注入後、70℃に昇温し、4時間撹拌を続けた。
【0071】
その後、常温まで冷却して5Lオートクレーブから発泡性複合樹脂粒子を取り出し、脱水乾燥させた。
次に、得られた発泡性複合樹脂粒子を笠原工業株式会社製PSX40予備発泡機に1000g投入し、PSX40予備発泡機内にゲージ圧力0.04MPaの水蒸気を導入して加熱して嵩発泡倍数約30倍に予備発泡させ、予備発泡粒子を得た。
更に、予備発泡粒子を1日間室温に放置した後、400mm×300mm×30mmの大きさのキャビティ内に充填し、キャビティを含む成形型にゲージ圧力0.22MPaの水蒸気を50秒間導入して加熱した。水蒸気導入後、発泡成形体の最高面圧が0.001MPaに低下するまで冷却して、発泡成形体を得た。
得られた発泡成形体を用いて、燃焼速度、加熱寸法変化率及び成形体内部融着の評価を行った。結果を表1に示す。
【0072】
[比較例5]
実施例1と同様にして得たポリプロピレン系樹脂粒子1200gを攪拌機付5Lオートクレーブに入れ、更に水性媒体として純水2kg、ピロリン酸マグネシウム20g、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.5gを加えた。内容物を攪拌することで水性媒体と懸濁させ、10分間保持し、その後60℃に昇温することで水系懸濁液とした。
次に、この懸濁液中にジクミルパーオキサイド1gを溶解させたスチレン単量体500gを30分かけて滴下した。滴下後30分保持し、ポリプロピレン系樹脂粒子にスチレン単量体を吸収させた。
次に、反応系の温度をポリプロピレン系樹脂粒子の融点と同じ140℃に昇温して2時間保持し、スチレン単量体をポリプロピレン系樹脂粒子中で重合(第1の重合)させて第1の粒子を得た。
【0073】
次に、第1の重合の反応液をポリプロピレン系樹脂粒子の融点より20℃低い120℃にした。この後、懸濁液中に、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ1.5gを加えた後、ジクミルパーオキサイド2.4gを溶解したスチレン単量体300gを1.5時間かけて滴下し、ポリプロピレン系樹脂粒子に吸収させながら重合(第2の重合)を行った。
滴下終了後、120℃で1時間保持、次いで140℃に昇温し3時間保持して重合を完結することで複合樹脂粒子を得た。
【0074】
その後、反応系の温度を60℃にして、この懸濁液中に、実施例1と同じ難燃剤20gと難燃助剤20gとを投入した。投入後、反応系の温度を130℃に昇温し、2時間攪拌を続けることで難燃剤含有複合樹脂粒子を得た。
次に、常温まで冷却し、難燃剤含有複合樹脂粒子を5Lオートクレーブから取り出した。取り出し後の難燃剤含有複合樹脂粒子2kgと水2Lを再び撹拌機付5Lオートクレーブに投入し、発泡剤としてブタン300gを撹拌機付5Lオートクレーブに注入した。注入後、70℃に昇温し、4時間撹拌を続けた。
【0075】
その後、常温まで冷却して5Lオートクレーブから発泡性複合樹脂粒子を取り出し、脱水乾燥させた。
次に、得られた発泡性複合樹脂粒子を笠原工業株式会社製PSX40予備発泡機に1000g投入し、PSX40予備発泡機内にゲージ圧力0.04MPaの水蒸気を導入して加熱して嵩発泡倍数約10倍に予備発泡させ、複合樹脂発泡粒子を得た。
更に、予備発泡粒子を1日間室温に放置した後、400mm×300mm×30mmの大きさのキャビティ内に充填し、キャビティを含む成形型にゲージ圧力0.22MPaの水蒸気を50秒間導入して加熱した。水蒸気導入後、発泡成形体の最高面圧が0.001MPaに低下するまで冷却して、発泡成形体を得た。
得られた発泡成形体を用いて、燃焼速度、加熱寸法変化率及び成形体内部融着の評価を行った。結果を表1に示す。
【0076】
【表1】

【0077】
複合樹脂粒子100質量部に対する難燃剤量が、発泡成形体に与える影響を考察するために、表1から抽出した結果を表2に示す。
【0078】
【表2】

【0079】
表2に記した通り、実施例1及び2では、燃焼速度、加熱寸法変化率及び成形体内部融着について良好な発泡成型体が得られた。また、1.4質量部の難燃剤量で所望の燃焼速度が得られており、特許文献1及び2より、難燃剤量を減らすことができる(省資源化、低コスト化が可能となる)。特に、実施例2は難燃剤0.3質量部、難燃助剤0.2質量部と低い配合量で燃焼速度0mm/minを満足した。
複合樹脂粒子100質量部に対する難燃剤量が0.3質量部より少ない比較例1では、燃焼速度が大きくなった。
発泡成形における蒸気圧(ゲージ圧)が、発泡成形体に与える影響を考察するために、表1から抽出した結果を表3に示す。
【0080】
【表3】

【0081】
表3に記した通り、実施例3及び4では燃焼速度、加熱寸法変化率及び成形体内部融着について良好な発泡成型体が得られた。
発泡成形における蒸気圧(ゲージ圧)が0.20MPaより小さい比較例2では、加熱寸法変化率が大きくなった。0.35MPaより大きい比較例3に関しては、発泡成形がうまく成されなかった。
複合樹脂比率(PP/PS)が、発泡成形体に与える影響を考察するために、表1から抽出した結果を表4に示す。
【0082】
【表4】

【0083】
表4に記した通り、実施例5及び6は燃焼速度、加熱寸法変化率及び成形体内部融着について良好な発泡成型体が得られた。
複合樹脂比率(PP/PS)のPSの割合が100質量部より小さい比較例5では、10倍までの予備発泡粒子しか得られず、発泡成形体においても成形体内部融着が悪化した。400質量部より大きい比較例4では、発泡成形がうまく成されなかった。
以上の表2〜4より、ポリプロピレン系樹脂100質量部と、ポリスチレン系樹脂100〜400質量部とを含有する複合樹脂粒子と、前記複合樹脂粒子中に存在し、かつ前記複合樹脂粒子100質量部に対して1.5質量部未満0.3質量部以上の難燃剤とから少なくとも構成されることを特徴とする難燃剤含有複合樹脂粒子を予備発泡させて複合樹脂発泡粒子を形成し、複合樹脂発泡粒子をゲージ圧力X(0.20MPa<X≦0.35MPa)の蒸気圧で発泡成形させて得られる発泡成形体は、燃焼速度、加熱寸法変化率及び成形体内部融着に優れた発泡成形体になるといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂100質量部と、ポリスチレン系樹脂100〜400質量部とから少なくとも構成された複合樹脂粒子中に、前記複合樹脂粒子100質量部に対して1.5質量部未満0.3質量部以上の難燃剤が含有されてなることを特徴とする難燃剤含有複合樹脂粒子。
【請求項2】
前記難燃剤が、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートを含む請求項1に記載の難燃剤含有複合樹脂粒子。
【請求項3】
前記難燃剤含有複合樹脂粒子が、前記複合樹脂粒子100質量部に対して1質量部以下の難燃助剤を更に含み、前記難燃助剤が2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンを含む請求項1又は2に記載の難燃剤含有複合樹脂粒子。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の難燃剤含有複合樹脂粒子に、発泡剤を含浸させ、次いで予備発泡して得られた予備発泡粒子。
【請求項5】
請求項4に記載の予備発泡粒子を発泡成形させて得られた発泡成形体。
【請求項6】
前記発泡成形体が、0mm/minの燃焼速度(米国自動車安全基準FMVSS 302に準拠した方法により測定)を有し、かつ、1.0%未満の加熱寸法変化率(JIS K6767:1999KのB法に準拠した方法により80℃、168時間で測定)を有することを特徴とする請求項5に記載の発泡成形体。
【請求項7】
分散剤を含む水性懸濁中に、ポリプロピレン系樹脂粒子100質量部と、スチレン系単量体100〜400質量部と、重合開始剤とを分散させる工程と、
得られた分散液を前記スチレン系単量体が実質的に重合しない温度に加熱して前記スチレン系単量体を前記ポリプロピレン系樹脂粒子に含浸させる工程と、
ポリプロピレン系樹脂粒子の融点をT℃としたとき、(T−10)℃〜(T+20)℃の温度で、前記スチレン系単量体の第1の重合を行って第1の粒子を得る工程と、
前記第1の重合工程に続いて、スチレン系単量体と、重合開始剤とを加え、かつ、(T−25)℃〜(T+10)℃の温度とすることにより、前記第1の粒子への前記スチレン系単量体の含浸及び第2の重合を行って複合樹脂粒子を得る工程と、
前記第2の重合中の前記第1の粒子又は前記複合樹脂粒子に、前記複合樹脂粒子100質量部に対して1.5質量部未満0.3質量部以上の難燃剤を含浸させて難燃剤含有複合樹脂粒子を得る工程と
を有することを特徴とする難燃剤含有複合樹脂粒子の製造方法。
【請求項8】
前記難燃剤が、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートを含む請求項7に記載の難燃剤含有複合樹脂粒子の製造方法。
【請求項9】
前記難燃剤と共に、1質量部以下の2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンを含む難燃助剤を含浸させる請求項7又は8に記載の難燃剤含有複合樹脂粒子の製造方法。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか1つに記載の方法により得られる難燃剤含有複合樹脂粒子に発泡剤を含浸させて発泡性複合樹脂粒子を得る工程と、予備発泡装置内にゲージ圧力0.005〜0.09MPaの水蒸気を導入して前記発泡性複合樹脂粒子を加熱することによって予備発泡粒子を得る工程とを有する予備発泡粒子の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法により得られる予備発泡粒子を成形型のキャビティ内へ充填し、0.20MPa<X≦0.35MPaの範囲のゲージ圧力Xの水蒸気で発泡成形させて発泡成形体を形成する工程を有する発泡成形体の製造方法。

【公開番号】特開2011−202108(P2011−202108A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72913(P2010−72913)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】