説明

難燃性ポリマー組成物

ホスフィン酸化合物および有機金属リン酸化合物から形成される難燃剤を使用する熱可塑性ポリマー組成物を提供する。本発明者は、該有機金属リン酸化合物が、特定の濃度で使用される場合、該組成物の機械的性質を低下させるホスフィン酸化合物の傾向に対抗して作用することができることを見出した。さらに、本発明者は、驚くべきことに、該有機金属リン酸化合物自体が難燃剤として作用することができること、したがって該組成物の全体の燃焼性性能に寄与することができることも見出した。とりわけ、このことは、より低いホスフィン酸化合物含有量で、同じ燃焼性性能を持つ組成物を形成することを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホスフィン酸化合物および有機金属リン酸化合物から形成される難燃剤を使用する熱可塑性ポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
難燃剤は、燃焼性の性能を向上させるために、多種多様なポリマーとともに使用される。従来、例えば、ハロゲン化(例えば、臭素化)難燃剤が利用されていた。しかしながら、近年は一般にハロゲンを含まない代替としての難燃剤を見出す試みがなされてきた。例えば、ホスフィン酸塩がハロゲンフリー難燃剤として利用されてきた。残念ながら、こうしたホスフィン酸塩は、最適な燃焼性の性能に達するために必要とされる分量で使用される場合、機械的強度および伸びの低下をまねく傾向がある。それゆえ、一般にハロゲンを含まず、かつ、良好な機械的性質を達成することができる難燃剤が依然として求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の一実施形態によると、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーおよび少なくとも1つの難燃剤を含む、難燃性ポリマー組成物が開示される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
該難燃剤は、少なくとも1つの有機金属リン酸化合物と、ホスフィン酸塩および/またはホスフィン酸塩から形成されるポリマーを含有する少なくとも1つのホスフィン酸化合物とを含む。
該有機金属リン酸化合物は、下記式を有する:
[RO]M(A)(B)
式中、
は、1〜30個の炭素原子を有する置換または非置換の直鎖、分枝鎖または環状の炭化水素基であり;
xは、0よりも大きく;
Mは、ジルコニウムまたはチタンであり;
AおよびBは独立して、ホスフェート(リン酸塩)、ピロホスフェート(ピロリン酸塩)またはそれらの組合せであり;
aは、1から5であり;そして
bは、0から5である。
【0005】
該ホスフィン酸塩は、式(I)および/または(II)を有する:
【化1】

【0006】
式中、
およびRは独立して、水素であるか、または1〜6個の炭素原子を有する置換もしくは非置換の直鎖、分枝鎖もしくは環状の炭化水素基であり;
は、置換または非置換の直鎖、分枝鎖または環状の、C〜C10アルキレン、アリーレン、アリールアルキレンまたはアルキルアリーレン基であり;
Zは、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、アンチモン、スズ、ゲルマニウム、チタン、鉄、ジルコニウム、セシウム、ビスマス、ストロンチウム、マンガン、リチウム、ナトリウム、カリウム、プロトン化窒素塩基またはそれらの組合せであり;
mは、1から4であり;
nは、1から4であり;
pは、1から4であり;そして
yは、1から4である。
本発明の他の特徴および態様を、より詳細に下記に記載する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
ここで本発明の各種実施形態に関して詳細に述べ、それらの1つまたは複数の例を下記に示す。各例は説明の手段として提供され、発明を限定するものではない。実際、本発明において様々な修正および変形が、本発明の範囲または趣旨から逸脱することなく行われ得ることは、当業者に明らかであろう。例えば、一実施形態の一部として例示または記載されている特徴は、またさらなる実施形態をもたらす別の実施形態に使用され得る。したがって、本発明は、こうした修正および変形を包含することが意図される。
【0008】
概して言えば、本発明は、ホスフィン酸化合物および有機金属リン酸化合物から形成される難燃剤を使用する熱可塑性ポリマー組成物を対象とする。本発明者は、該有機金属リン酸化合物が、特定の濃度で使用される場合、該組成物の機械的性質を低下させるホスフィン酸化合物の傾向に対抗して作用することができることを見出した。さらに、本発明者は、驚くべきことに、該有機金属リン酸化合物自体が難燃剤として作用することができ、したがって、該組成物の全体の燃焼性性能に寄与することができることも見出した。とりわけ、このことは、より低いホスフィン酸化合物の含有量で同じ燃焼性性能を有する組成物を形成することを可能にする。
【0009】
I.難燃剤
難燃剤に使用される有機金属リン酸化合物 は、以下の一般式を有する:
[RO]M(A)(B)
式中、
は、置換(例えば、酸素置換基)または非置換であってよい、1〜30個の炭素原子、一部の実施形態において2〜20個の炭素原子、および一部の実施形態において3〜15個の炭素原子を有する直鎖、分枝鎖または環状の炭化水素基(例えば、アルキル、アルケニル、アルキルニル、アラルキル、アリール、アルカリールなど)であり;
xは、0より大きく、一部の実施形態において1から5、および一部の実施形態において1から2(例えば、1)であり;
Mは、ジルコニウムまたはチタンであり;
AおよびBは独立して、ホスフェート(例えば、OP(O)(OR)(OR))、ピロホスフェート(例えば、OP(O)(OR)OP(O)(ORO)O)またはそれらの組合せであり、ここで、RおよびRは独立して、水素であるか、または置換(例えば、酸素置換基)または非置換であってよい、1〜20個の炭素原子、一部の実施形態において2〜15個の炭素原子、および一部の実施形態において4〜12個の炭素原子(例えば、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基またはドデシルアルキル基)を有する直鎖、分枝鎖もしくは環状の炭化水素基(例えば、アルキル、アルケニル、アルキルニル、アラルキル、アリール、アルカリールなど)であり;
aは、1から5、一部の実施形態において1から4、および一部の実施形態において2から3(例えば、3)であり;そして
bは、0から5、一部の実施形態において1から4、および一部の実施形態において2から3である。
【0010】
一実施形態において、該有機金属リン酸化合物は、以下の式を有するジエステルホスフェート(リン酸ジエステル)である:
【0011】
【化2】

【0012】
(式中、R、x、M、R、Rおよびaは、上記で定義されている。)特に好ましい有機金属のジエステルホスフェートは、以下の式を有するネオアルコキシ化合物である:
【0013】
【化3】

【0014】
式中、
x、M、R、Rおよびaは、上記で定義されており;そして
、RおよびRは独立して、水素であるか、または置換(例えば、酸素置換基)もしくは非置換であってよい、1〜10個の炭素原子、一部の実施形態において1〜8個の炭素原子、および一部の実施形態において2〜6個の炭素原子を有する直鎖、分枝鎖もしくは環状の炭化水素基(例えば、アルキル、アルケニル、アルキルニル、アラルキル、アリール、アルカリールなど)である。
具体的なR、RおよびR基の例は、メチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、イソ−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、シクロヘキシル、2,4−ジメトキシベンジル、1−メチル−4−アセナフチル−2−エチル−2−フリルおよびメタリル、メトキシ、フェノキシ、ナフテンオキシ、シクロヘキセン−3−オキシ、4−イソブチル−3−メトキシ、1−フェナントロキシおよび2,4,6−トリメチルフェノキシである。特に適切なネオアルコキシ金属ホスフェートとして、ネオペンチル(ジアリル)オキシ トリ(ジオクチル)ホスファトチタネートおよびネオペンチル(ジアリル)オキシ トリ(ジオクチル)ホスフェートジルコネート、ならびにネオペンチル(ジアリル)オキシ トリ(ジオクチル)ピロホスファトチタネートおよびネオペンチル(ジアリルオキシ) トリ(ジオクチル)ピロホスフェートジルコネートなど、それらのピロホスフェート類似体が挙げられる。こうした化合物は、Sugermanらの米国特許第4,623,738号明細書に記載されており、これを全ての目的で参照により全体として本明細書に組み込む。本発明に使用することができるさらに他の適切な有機金属リン酸化合物として、イソプロピルトリ(ジオクチルピロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスファト)チタネート、ジ(ジオクチルピロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ジ(ジオクチルホスフェート)オキシアセテートチタネート、ジ(ジオクチルピロホスファト)エチレンチタネート、ジ(ジオクチルホスファト)エチレンチタネート、トリ(ブチル−オクチル ピロホスファト)エチレンチタネート、トリ(ブチル−オクチル ホスファト)エチレンチタネートなどが挙げられる。
【0015】
該難燃剤に使用されるホスフィン酸化合物として、ホスフィン酸および/またはジホスフィン酸の塩(すなわち、ホスフィン酸塩)、ならびにそれらのポリマー化合物を挙げることができる。こうしたホスフィン酸塩は、例えば、式(I)および/または式(II)を有することができる:
【0016】
【化4】

【0017】
式中、
およびRは独立して、水素であるか、または1〜6個の炭素原子を有する置換もしくは非置換の直鎖、分枝鎖もしくは環状の炭化水素基(例えば、アルキル、アルケニル、アルキルニル、アラルキル、アリール、アルカリールなど)であって、特にメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソ−プロピル基、n−ブチル基もしくはtert−ブチル基などの、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であり;
は、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソ−プロピレン基、n−ブチレン基、tert−ブチレン基、n−ペンチレン基、n−オクチレン基、n−ドデシレン基、フェニレン基、ナフチレン基、メチルフェニレン基、エチルフェニレン基、tert−ブチルフェニレン基、メチルナフチレン基、エチルナフチレン基、t−ブチルナフチレン基、フェニルエチレン基、フェニルプロピレン基またはフェニルブチレン基などの、置換または非置換の直鎖、分枝鎖または環状のC〜C10アルキレン、アリーレン、アリールアルキレンまたはアルキルアリーレン基であり;
Zは、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、アンチモン、スズ、ゲルマニウム、チタン、鉄、ジルコニウム、セシウム、ビスマス、ストロンチウム、マンガン、リチウム、ナトリウム、カリウム、プロトン化窒素塩基またはそれらの組合せ、特にカルシウムまたはアルミニウムであり;
mは、1から4、一部の実施形態において1から3、および一部の実施形態において2から3(例えば、3)であり;
nは、1から4、一部の実施形態において1から3、および一部の実施形態において2から3(例えば、3)であり;そして
pは、1から4、一部の実施形態において1から3、および一部の実施形態において1から2である。
【0018】
該ホスフィン酸化合物は、ホスフィン酸を金属炭酸塩、金属水酸化物または金属酸化物と水溶液中で反応させることによるなど、任意の公知技術を使用して調製することができる。適当なホスフィン酸化合物として、例えば、ジメチルホスフィン酸、エチルメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、メチル−n−プロピルホスフィン酸、メタン−ジ(メチルホスフィン酸)、エタン−1,2−ジ(メチルホスフィン酸)、ヘキサン−1,6−ジ(メチルホスフィン酸)、ベンゼン−1,4−ジ(メチルホスフィン酸)、メチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、次リン酸などの塩(例えば、アルミニウム塩またはカルシウム塩)が挙げられる。生じる塩は通常単量体化合物であるが、ポリマーホスフィン酸塩が形成されることもある。適切なホスフィン酸化合物の追加例およびそれらの調製方法は、Hoeroldらの米国特許第7,087,666号明細書;Klattらの同第6,716,899号明細書;Kleinerらの同第6,270,500号明細書;Kleinerの同第6,194,605号明細書;Seitzの同第6,096,914号明細書;およびKleinerらの同第6,013,707号明細書に記載されており、それらの全てを、全ての目的で全体として、参照により本明細書に組み込む。
【0019】
所望であれば、ホスフィン酸化合物と併せて作用する窒素含有相乗剤も使用することができ、より有効な難燃剤を得ることができる。こうした窒素含有相乗剤は、好ましくは、式(III)から(VIII)のもの、またはそれらの混合物である:
【0020】
【化5】

【0021】
式中、
、R、R、R、R10、R11、R12およびR13は独立して、水素;C〜Cアルキル;任意選択でヒドロキシまたはC〜Cヒドロキシアルキルで置換されているC〜C16−シクロアルキルまたはアルキルシクロアルキル;C〜Cアルケニル;C〜Cアルコキシ、アシルまたはアシルオキシ;C〜C12−アリールまたはアリールアルキル;ORもしくはN(R)R、ここでRは水素、C〜Cアルキル、任意選択でヒドロキシもしくはC〜Cヒドロキシアルキルで置換されているC〜C16シクロアルキルもしくはアルキルシクロアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルコキシ、アシルもしくはアシルオキシ、またはC〜C12アリールもしくはアリールアルキルであり;
mは、1から4であり;
nは、1から4であり;
Xは、式IIIのトリアジン化合物と付加物を形成することができる酸である。例えば、該窒素含有相乗剤として、ベンゾグアナミン、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、アラントイン、グリコールウリル、メラミン、メラミンシアヌレート、ジシアンジアミド、グアニジンなどを挙げることができる。こうした相乗剤の例は、Jeneweinらの米国特許第6,365,071号明細書;Hoeroldらの同第7,255,814号明細書;およびBauerらの同第7,259,200号明細書に記載されており、それらを、全ての目的で全体として参照により本明細書に組み込む。
【0022】
有機金属リン酸化合物に対するホスフィン酸化合物の重量比は、難燃性と機械的性質との間の所望のバランスを達成するため、本発明において選択的に調節することができる。例えば、この比が低すぎる場合、燃焼性性能は十分でないことがある。逆に、この比が高すぎる場合、機械的性質は所望の閾値を下回ることがある。したがって、この比は通常、約10から約200、一部の実施形態において約25から約150、および一部の実施形態において約30から約100の範囲内である。しかしながら、従来の難燃剤と比較して相対的に低い量のホスフィン酸化合物もまた使用することができ、所望の機械的および燃焼性性能を達成することもまた可能である。例えば、ホスフィン酸化合物は、該難燃剤の約25重量%から約95重量%、一部の実施形態において約30重量%から約85重量%、および一部の実施形態において約40重量%から約75重量%を占めることができる。同様に、有機金属リン酸化合物は、該難燃剤の約0.1重量%から約8重量%、一部の実施形態において約0.2重量%から約5重量%、および一部の実施形態において約0.4重量%から約2重量%を占めることができる。窒素含有相乗剤は、使用する場合、該難燃剤の約10重量%から約50重量%、一部の実施形態において約15重量%から約45重量%、および一部の実施形態において約20重量%から約40重量%を占めることができる。
【0023】
当技術分野においてよく知られている様々な他の構成成分も、該難燃剤中に組み入れることができる。例えば充填剤を、様々な目的で該組成物中に組み入れることができる。適切な充填剤粒子として、タルク、粘土、シリカ、ケイ酸カルシウム(珪灰石;ウォラストナイト)、マイカ、炭酸カルシウム、二酸化チタンその他などの様々な鉱物充填剤が挙げられる。使用する場合、こうした追加成分は通常、該難燃剤の約0.05重量%から約15重量%、一部の実施形態において約0.1重量%から約10重量%、および一部の実施形態において約0.2重量%から約5重量%を占める。
【0024】
燃焼性性能および機械的性質が、従来のハロゲン系難燃剤を使用することなく、本発明において達成できることも注目すべきである。その結果として、該難燃剤は一般に、百万分の約500重量部(500ppm)以下、一部の実施形態において約100ppm以下、および一部の実施形態において約50ppm以下のハロゲン(例えば、臭素または塩素)含有量を持つ。
【0025】
該難燃剤は、当技術者には容易に明らかであると思われる様々な方法で形成することができる。該難燃剤の構成成分(例えば、ホスフィン酸化合物、相乗剤、有機金属リン化合物など)は、ポリマーとのブレンド前、ブレンド中および/またはブレンド後に一緒に混合することができる。ある特定の一実施形態において、ホスフィン酸化合物は、有機金属リン酸化合物で予備処理される。例えば、添加剤は、グリコール(例えば、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、エトキシジグリコールおよびジプロピレングリコール);アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノールおよびイソプロパノール);トリグリセリド;酢酸エチル;アセトン;トリアセチン;アセトニトリル、テトラヒドロフラン;キシレン;ホルムアルデヒド(例えば、ジメチルホルムアミド、「DMF」);などの非水性溶媒の存在下で一緒に混合することができる。有機金属リン酸化合物を用いるホスフィン酸化合物のこうした予備処理は、ホスフィン酸化合物が粒子の形態で提供される場合、特に有用である。すなわち、該有機金属リン酸化合物はホスフィン粒子の表面上に被覆することが可能であり、そこで、それが該ポリマーとよりよく相互作用し、それによって、そうでなければホスフィン酸化合物により引き起こされるであろういずれの機械的劣化も最小限に抑えることができる。実際、こうした実施形態において、粒子表面の大部分(50%超)の領域を、該有機金属リン酸化合物により被覆または被包することができる。必須ではないが、結果として生じる被覆粒子は、通常、約50マイクロメートル未満、一部の実施形態において約50ナノメートルから約40マイクロメートル、および一部の実施形態において約0.5マイクロメートルから約30マイクロメートルのD90サイズなどの、比較的小さいサイズを有する。当技術分野において周知である通り、「D90」という表示は、少なくとも粒子の90%が、示されているサイズを有することを意味する。粒子が粉砕または摩砕されて、所望の粒径に達することができると理解すべきである。
【0026】
形成される方法にかかわらず、該難燃剤は、通常、熱可塑性ポリマーの重量に基づいて、約1重量%から約65重量%、一部の実施形態において約5重量%から約60重量%、および一部の実施形態において約10重量%から約55重量%の量で使用される。
【0027】
II.熱可塑性ポリマー
本発明の難燃剤は、一般に、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリアリーレンスルフィド、その他など、当技術分野において公知である任意の熱可塑性ポリマーと併せて使用することができる。特に適切なポリエステルは、カルボン酸モノマー構成要素が主に本来は芳香族であるものが挙げられる。例えば、カルボン酸モノマー構成要素は、芳香族ジカルボン酸(またはそれらの無水物)から形成することができる。使用することができる代表的な芳香族ジカルボン酸として、1〜6個の炭素原子、好ましくは2〜4個の炭素原子を含有する芳香族ジカルボン酸、ならびにそれらの誘導体から選択される、置換および非置換の直鎖または分枝鎖の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。芳香族ジカルボン酸の非限定的な例として、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、3,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、3,4’−ジフェニルスルフィドジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルフィドジカルボン酸、3,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、3,4’−ベンゾフェノンジカルボン酸など、ならびにジメチルテレフタレート、ジメチルイソフタレート、ジメチル−2,6−ナフタレート、ジメチル−2,7−ナフタレート、ジメチル−3,4’−ジフェニルエーテルジカルボキシレート、ジメチル−4,4’−ジフェニルエーテルジカルボキシレート、ジメチル−3,4’−ジフェニルスルフィドジカルボキシレート、ジメチル−4,4’−ジフェニルスルフィドジカルボキシレート、ジメチル−3,4’−ジフェニルスルホンジカルボキシレート、ジメチル−4,4’−ジフェニルスルホンジカルボキシレート、ジメチル−3,4’−ベンゾフェノンジカルボキシレート、ジメチル−4,4’−ベンゾフェノンジカルボキシレート、ジメチル−1,4−ナフタレート、それらの混合物などのこうした酸のアルキル誘導体、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0028】
ポリエステルを形成するために使用される適切なポリオールは、2〜12個の炭素原子を含有するポリオールおよび2〜8個の炭素原子を含有するポリアルキレンエーテルグリコールから選択される、置換または非置換の直鎖または分枝鎖のポリオールであってよい。使用することができるポリオールの例として、これらに限定されないが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、チオジエタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、シクロペンタンジオール、トリエチレングリコールおよびテトラエチレングリコールが挙げられる。好ましいポリオールとして、1,4−ブタンジオール;1,3−プロパンジオール;エチレングリコール;1,6−ヘキサンジオール;ジエチレングリコール;および1,4−シクロヘキサンジメタノール、ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0029】
適切なポリエステルの具体例として、例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(トリメチレンテレフタレート)(PTT)、ポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)、シクロヘキサンジメタノール(CHDM)で改質されたPET、PCTAコポリマー(CHDMおよびテレフタル酸と、テレフタル酸の一部が置換されている別の酸(イソフタル酸など)とのポリマー)、ポリ(エチレンナフタレート)(PEN)、ポリ(トリメチレンナフタレート)(PTN)、ポリ(ブチレンナフタレート)(PBN)などを挙げることができる。こうしたポリマー化合物の商品グレードは、例えば、Ticona LLCからCELANEX(登録商標)(PBT)、VANDAR(登録商標)(PBT)およびIMPET(登録商標)(PET)の表示の下に入手可能である。
【0030】
ポリアミドも本発明において使用することができる。適切なポリアミドの例として、例えば、PA6(ポリカプロアミド)およびPA12(ポリドデカンアミド)などの開環重合型脂肪族ポリアミド;PA66(ポリヘキサメチレンアジポアミド)、PA46(ポリテトラメチレンアジポアミド)、PA610、PA612およびPA11などのポリ縮合型ポリアミド;MXD6、PA6T、PA9T、PA6T/66、PA6T/6および非晶質PAなどの半芳香族ポリアミド;ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)、ポリ(m−フェニレンテレフタルアミド)およびポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)などの芳香族ポリアミド;その他を挙げることができる。
【0031】
所望であれば、ポリマー組成物を強化するため、炭素繊維、ガラス繊維、ウォラストナイト繊維などの繊維を任意選択で使用することができる。使用することができるガラス繊維として、例えば、石灰−アルミニウムホウケイ酸ガラスから構成される繊維が挙げられる。繊維は、約3mmから約5mmの長さを有するのが望ましい。使用する場合、強化繊維は、熱可塑性ポリマー組成物の約5重量%から約50重量%、一部の実施形態において約10重量%から約40重量%、および一部の実施形態において約15重量%から約35重量%を占めてよい。
【0032】
III.他の構成要素
当然、当技術分野において周知である通り、様々な他の構成成分を、一般に、該熱可塑性ポリマー組成物中に含めることができる。こうした構成成分として、充填剤、顔料、安定剤、潤滑剤、ドリップ(燃焼滴下物)抑制剤などが挙げられる。顔料粒子として、例えば、二酸化チタンまたは酸化鉄などの任意の適当な金属酸化物を挙げることができる。一実施形態において、金属顔料が該組成物中に含まれていてよい。金属顔料として、例えば、アルミニウム顔料、金顔料、銅顔料、ブロンズ顔料その他を挙げることができる。金属顔料粒子を該組成物中に組み入れることで、例えば、ブラシをかけた金属または研磨した金属の外観を持つ物品をもたらすことができる。顔料粒子は、約0.1重量%から約5重量%の量で該組成物中に存在することができる。光安定剤(例えば、ヒンダードアミン、ベンゾトリアゾールなど)、酸化防止剤(例えば、立体障害フェノール、亜リン酸塩など)、2級アミン安定剤などの安定剤も、該ポリマー組成物中に使用することができる。該組成物に含有することができるさらに別の成分は潤滑剤である。潤滑剤は、離型を容易にするために使用することができる。潤滑剤の例として、ステアリン酸ステアリル、モンタン酸エステル、部分的に加水分解されたモンタン酸エステルなどの石鹸およびエステル;ステアリン酸、極性および/または非極性ポリエチレンワックス、ポリ−α−オレフィンオリゴマー、シリコーン油、ポリアルキレングリコールおよびペルフルオロアルキルエーテル、ポリテトラフルオロエチレンその他が挙げられる。該組成物中に使用されるのに適切である1つの市販潤滑剤として、例えば、Clariant Corporationにより販売されているLICOLUB(商標)を挙げることができる。ドリップ抑制剤の一例として、例えば、ポリ(テトラフルオロエチレン)などのフィブリル化型(小繊維状構造型)フッ素化ポリオレフィンが挙げられる。
【0033】
本発明の難燃性ポリマー組成物は、射出成形、ブロー成形、カレンダ加工、押出し、メルトブローイング、スピニングなどによる、当技術分野において公知である技術を使用して、様々な異なる熱可塑性物品に形成することができる。それでもなお、生じる物品は優れた燃焼性性能を達成することが可能である。難燃有効性は、「Test for Flammability of Plastic Materials for Parts in Devices and Appliances(機器および装置の部品のためのプラスチック材料の可燃性試験)」、第5版、1996年10月29日発行の、UL94垂直燃焼試験法(UL94 Vertical Burn Test procedure)に従って決定することができる。UL94試験に従った等級を以下の表に列挙する。
【0034】
【表1】

【0035】
「残炎時間」は、合計残炎時間(試験した全ての試料の総計値)を試料の数で割ることにより決定される平均値である。合計残炎時間は、UL−94VTM試験に記載されている通り、炎を2回別々に引火した後で、全ての試料が発火されたまま残存した(秒による)時間の和である。より短い期間はより良好な耐燃性を示し、すなわち、炎はより速く消えた。V−0等級のためには、それぞれが炎の2回の引火を有する5つの試料の合計残炎時間が、50秒を超えてはならない。本発明の難燃剤を使用すると、0.8ミリメートルの厚さを有する試験片に関し、少なくともV−1等級および通常V−0等級の物品を得ることができる。
【0036】
優れた難燃性を持つことに加えて、本発明に従って形成される物品は、優れた物理的特性も有することができる。例えば、約25kJ/m以上、一部の実施形態において約30kJ/m以上、および一部の実施形態において約30kJ/mから約50kJ/mの、ノッチなしシャルピー衝撃強さ(ISO 179−1982(E)に従って測定)を有する物品を形成することができる。同様に、破断点伸びは、約1.5%以上、一部の実施形態において約1.7%以上、および一部の実施形態において約1.8%から約3%であり得る。
【0037】
本発明は、以下の実施例を参照して、よりよく理解することができる。
【実施例】
【0038】
実施例1
本発明による難燃性ポリマー組成物の形成能を実証した。この実施例において、非強化のCELANEX(登録商標)2002(Ticona、LLCから市販されているポリブチレンテレフタレート)を、ともにKenrich Petrochemicals Inc.から入手可能な有機金属リン酸化合物であるKEN−REACT(登録商標)CAPOW(登録商標)KR12HまたはKEN−REACT(登録商標)CAPOW(登録商標)L12Hのいずれかとブレンドした。より具体的には、CAPOW(登録商標)KR12Hは、35重量%シリカ上に分散したモノ−アルコキシホスファトチタネート(イソプロピル トリ(ジオクチル)ホスフェートチタネート)を65重量%含有し、CAPOW(登録商標)L12Hは、35重量%シリカ上に分散したネオ−アルコキシホスファトチタネート(ネオペンチル(ジアリル)オキシ トリ(ジオクチル)ホスフェートチタネート)を65重量%含有している。ホスフィン酸塩は、EXOLIT(商標)OP 1240の表示の下でClariant社から得たものであり、Ciba Specialty Chemicalsから得たシアヌル酸メラミン相乗剤であるMELAPUR(商標)MC 50と混合した。ホスフィン酸塩またはホスフィン酸塩/相乗剤の組合せおよび有機チタネートリン酸化合物を、室温で5分間一緒にドライブレンドすることによって、混合物を形成した。その後、混合物をCELANEX(登録商標)2002および少量の加工添加剤(潤滑剤、酸化防止剤および安定剤)と、共回転2軸押出機内で溶融ブレンドした。加工添加剤およびPBTポリマーを押出機の上流に供給し、難燃剤−有機チタネートリン酸化合物の混合物を、押出機の下流に供給した。押出機の温度設定(上流から下流)は、125℃、260℃、260℃、250℃、250℃、220℃、240℃および260℃であり、軸回転速度は300rpmであった。
【0039】
各試料の含有量を、より詳細に下記の表1に示す。
【0040】
【表2】

【0041】
形成した時点で、燃焼性性能、溶融特性および機械的特徴を次いで測定した。結果を下記の表2に示す。
【0042】
【表3】

【0043】
示されている通り、有機金属リン化合物およびホスフィン酸塩を含有する難燃剤の使用の結果、一般に、良好な燃焼性性能および改善された機械的特性を有する試料がもたらされた。
【0044】
実施例2
本発明による難燃性ポリマー組成物の形成能を実証した。この実施例において、該難燃剤は、KEN−REACT(登録商標)CAPOW(登録商標)KR12H、EXOLIT(商標)OP 1240およびMELAPUR(商標)MC 50から、実施例1に記載されている方法で形成された。その後、混合物をCELANEX(登録商標)2003、ガラス繊維および少量の加工添加剤(潤滑剤、酸化防止剤および安定剤)と、共回転2軸押出機内で溶融ブレンドした。加工添加剤およびPBTポリマーを押出機の上流に供給し、難燃剤−有機チタネートリン酸化合物の混合物およびガラス繊維を、押出機の下流に供給した。押出機の温度設定(上流から下流)は、125℃、260℃、260℃、250℃、250℃、220℃、240℃および260℃であり、軸回転速度は300rpmであった。試料の含有量を、より詳細に下記の表3に示す。
【0045】
【表4】

【0046】
形成した時点で、燃焼性性能、溶融特性および機械的特徴を次いで測定した。結果を下記の表4に示す。
【0047】
【表5】

【0048】
示されている通り、有機金属リン化合物およびホスフィン酸塩を含有する難燃剤の使用の結果、一般に、良好な燃焼性性能および改善された機械的特性を持つ試料がもたらされた。
【0049】
実施例3
本発明による難燃性ポリマー組成物の形成能を実証した。この実施例において、該難燃剤は、様々なEXOLIT(商標)OP 1240、MELAPUR(商標)MC 50、および様々なアルコキシチタネートまたはアルコキシジルコネートカップリング添加剤から、実施例1に記載されている方法で形成された。この実施例で使用されたカップリング添加剤を下記に示す。
【0050】
【表6】

【0051】
その後、混合物をCELANEX(登録商標)2003、ガラス繊維および少量の加工添加剤(潤滑剤、酸化防止剤および安定剤)と、共回転2軸押出機内で溶融ブレンドした。加工添加剤およびPBTポリマーを押出機の上流に供給した。難燃剤−有機チタネートリン酸化合物の混合物およびガラス繊維を、押出機の下流に供給した。押出機の温度設定(上流から下流)は、125℃、260℃、260℃、250℃、250℃、220℃、240℃および260℃であり、軸回転速度は300rpmであった。各試料の含有量を、より詳細に下記の表5に示す。
【0052】
【表7】

【0053】
【表8】

【0054】
形成した時点で、燃焼性性能、溶融特性および機械的特徴を次いで測定した。結果を下記の表6に示す。
【0055】
【表9】

【0056】
示されている通り、有機金属リン化合物およびホスフィン酸塩を含有する難燃剤の使用の結果、一般に、良好な燃焼性性能および改善された機械的特性を持つ試料がもたらされた。
【0057】
本発明をその具体的な実施形態に関して詳細に記載してきたが、当業者は、前述の理解に達した後、それらの実施形態の修正物、改変物および同等物を容易に考え出すことができることを認識されよう。すなわち、本発明の範囲は、添付の請求項およびそれらの任意の均等物の範囲として評価されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの熱可塑性ポリマーおよび少なくとも1つの難燃剤を含む、難燃性ポリマー組成物であって、
前記難燃剤が、
下記式を有する少なくとも1つの有機金属リン酸化合物:
[RO]M(A)(B)
(式中、
は、1〜30個の炭素原子を有する置換または非置換の直鎖、分枝鎖または環状の炭化水素基であり;
xは、0より大きく;
Mは、ジルコニウムまたはチタンであり;
AおよびBは独立して、ホスフェート、ピロホスフェートまたはそれらの組合せであり;
aは、1から5であり;そして
bは、0から5である);および
式(I)および/または(II)を有するホスフィン酸塩および/または前記ホスフィン酸塩から形成されるポリマーを含有する少なくとも1つのホスフィン酸化合物:
【化1】

(式中、
およびRは独立して、水素であるか、または1〜6個の炭素原子を有する置換もしくは非置換の直鎖、分枝鎖もしくは環状の炭化水素基であり;
は、置換または非置換の直鎖、分枝鎖または環状の、C〜C10アルキレン、アリーレン、アリールアルキレンまたはアルキルアリーレン基であり;
Zは、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、アンチモン、スズ、ゲルマニウム、チタン、鉄、ジルコニウム、セシウム、ビスマス、ストロンチウム、マンガン、リチウム、ナトリウム、カリウム、プロトン化窒素塩基またはそれらの組合せであり;
mは、1から4であり;
nは、1から4であり;
pは、1から4であり;そして
yは、1から4である);
を含む、前記難燃性ポリマー組成物。
【請求項2】
xが1から2である、請求項1に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項3】
Mがチタンである、請求項1または2に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項4】
有機金属リン酸化合物が、以下の式:
【化2】

(式中、
およびRは独立して、水素であるか、または1〜20個の炭素原子を有する置換もしくは非置換の直鎖、分枝鎖もしくは環状の炭化水素基である)
を有するリン酸ジエステルである、請求項1から3のいずれか一項に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項5】
aが3である、請求項4に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項6】
およびRが独立して、4〜12個の炭素原子を有する置換または非置換の直鎖、分枝鎖または環状のアルキル基である、請求項4に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項7】
有機金属リン酸ジエステルが、以下の式
【化3】

(式中、
、RおよびRは独立して、水素であるか、または1〜10個の炭素原子を有する置換もしくは非置換の直鎖、分枝鎖もしくは環状の炭化水素基である)
を有するネオアルコキシ化合物である、請求項4に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項8】
有機金属リン酸化合物が、ネオペンチル(ジアリル)オキシ トリ(ジオクチル)ホスファトチタネート;ネオペンチル(ジアリル)オキシ トリ(ジオクチル)ホスフェートジルコネート;ネオペンチル(ジアリル)オキシ トリ(ジオクチル)ピロホスファトチタネート;ネオペンチル(ジアリルオキシ) トリ(ジオクチル)ピロホスフェートジルコネート;イソプロピルトリ(ジオクチルピロホスフェート)チタネート;イソプロピルトリ(ジオクチルホスファト)チタネート;ジ(ジオクチルピロホスフェート)オキシアセテートチタネート;ジ(ジオクチルホスフェート)オキシアセテートチタネート;ジ(ジオクチルピロホスファト)エチレンチタネート;ジ(ジオクチルホスファト)エチレンチタネート;トリ(ブチル−オクチル ピロホスファト)エチレンチタネート;トリ(ブチル−オクチル ホスファト)エチレンチタネート;またはそれらの組合せである、請求項1に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項9】
およびRがエチル基である、請求項1から8のいずれか一項に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項10】
Zがアルミニウムである、請求項1から9のいずれか一項に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項11】
mおよびnが3である、請求項1から10のいずれか一項に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項12】
窒素含有相乗剤をさらに含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項13】
有機金属リン酸化合物に対するホスフィン酸化合物の重量比が、約10から約200である、請求項1から12のいずれか一項に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項14】
ホスフィン酸化合物が難燃剤の約25重量%から約95重量%を構成し、有機金属リン酸化合物が難燃剤の約0.1重量%から約8重量%を構成する、請求項1から13のいずれか一項に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項15】
難燃剤が約100ppm以下のハロゲン含有量を有する、請求項1から14のいずれか一項に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項16】
ホスフィン酸化合物が粒子の形態であり、有機金属化合物が前記粒子の表面上に存在する、請求項1から15のいずれか一項に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項17】
熱可塑性ポリマーが、芳香族ポリアミド、半芳香族ポリアミドまたはそれらの組合せである、請求項1から16のいずれか一項に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項18】
熱可塑性ポリマーが、ポリ(エチレンテレフタレート)もしくはそのコポリマー、ポリ(トリメチレンテレフタレート)もしくはそのコポリマー、ポリ(ブチレンテレフタレート)もしくはそのコポリマー、またはそれらの組合せである、請求項1から17のいずれか一項に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項19】
ガラス繊維をさらに含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項20】
難燃剤が、熱可塑性ポリマーの重量に基づいて約10重量%から約55重量%の量で存在する、請求項1から19のいずれか一項に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項21】
UL94垂直燃焼試験に従って測定した、厚さが0.8ミリメートルの試験片が、V−0等級を有する、請求項1から20のいずれか一項に記載の難燃性ポリマー組成物から形成される成形品。
【請求項22】
約25kJ/m以上のノッチなしシャルピー衝撃強さ(ISO 179−1982(E)に従って測定)を有し、破断点伸びが約1.5%以上である、請求項21に記載の成形品。
【請求項23】
約100ppm以下のハロゲン含有量を有し、
少なくとも1つのポリブチレンテレフタレートまたはそのコポリマーおよび少なくとも1つの難燃剤を含む、難燃性ポリマー組成物であって、
前記難燃剤が、
下記式を有する少なくとも1つの有機金属リン酸化合物:
【化4】

(式中、
、RおよびRは独立して、水素であるか、または1〜10個の炭素原子を有する置換または非置換の直鎖、分枝鎖または環状の炭化水素基であり;
xは0より大きく;
Mは、ジルコニウムまたはチタンであり;
およびRは独立して、水素であるか、または1〜20個の炭素原子を有する置換または非置換の直鎖、分枝鎖または環状の炭化水素基であり;そして
aは、1から5である);および
式(I)および/または(II)を有するホスフィン酸塩および/または前記ホスフィン酸塩から形成されるポリマーを含有する少なくとも1つのホスフィン酸化合物:
【化5】

(式中、
およびRは独立して、水素であるか、または1〜6個の炭素原子を有する置換または非置換の直鎖、分枝鎖または環状の炭化水素基であり;
は、置換または非置換の直鎖、分枝鎖または環状のC〜C10アルキレン、アリーレン、アリールアルキレンまたはアルキルアリーレン基であり;
Zは、カルシウム、アルミニウムまたはそれらの組合せであり;
mは、1から4であり;
nは、1から4であり;
pは、1から4であり;そして
yは、1から4である);
を含む、前記難燃性ポリマー組成物。

【公表番号】特表2011−528724(P2011−528724A)
【公表日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−518813(P2011−518813)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/050359
【国際公開番号】WO2010/009026
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(500100822)ティコナ・エルエルシー (19)
【Fターム(参考)】