説明

難燃性樹脂組成物

【課題】リン化合物、メラミン化合物及びハロゲン化合物を使用せずに、耐衝撃性及び高難燃性を有するポリ乳酸系樹脂を主体とする難燃性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(A)ポリ乳酸系樹脂30〜95質量%、(B)エチレンとCH2=C(R1)−R2[R1は、H又はメチル基であり、R2は、−COOR3又は−OCOR3であり、ここで、R3は、H又は、直鎖若しくは分枝の炭素数1〜10個のアルキル基である]との共重合体及び/又は変性されたオレフィン系樹脂5〜70質量%からなる樹脂100質量部に対して、(C)金属水和物50〜200質量部及び(D)有機過酸化物0.01〜3.0質量部を添加したことを特徴とする難燃性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸系樹脂に対して、リン化合物、メラミン化合物及びハロゲン化合物等の環境負荷物質となる可能性のある物質を使用せずに、難燃性を有すると共に耐衝撃性に優れた難燃性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエステル系樹脂に、(A)共役ジエン系ゴムと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、(B)共役ジエン系ゴムと(メタ)アクリル酸エステルと芳香族ビニル化合物との共重合体、(C)アクリル系ゴムと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、(D)アクリル系ゴムと(メタ)アクリル酸エステル及び芳香族ビニル化合物との共重合体、(E)アクリル系ゴムと(メタ)アクリル酸エステル及びシアン化ビニル系化合物との共重合体及び(F)熱可塑性ポリエステル系エラストマーから選ばれた1種類以上からなる樹脂組成物と難燃剤とからなる耐衝撃強度を有した難燃性樹脂組成物が開示されている(特許文献1(公開特許公報 6頁、9段、段落[0029]参照)、特許文献2(公開特許公報 6頁、9段、段落[0012]参照))。
【0003】
これらの難燃性樹脂組成物は、耐衝撃性改良剤としてMBS等のゴム成分を使用し、難燃性を付与するためにリン化合物、メラミン化合物、ハロゲン化合物及び水酸化マグネシウム等を使用した硬質部材であった。
しかしながら、こうしたリン化合物、メラミン化合物及びハロゲン化合物は燃焼時に有害なガスを発生する可能性が指摘されたことから、こういった難燃剤を使用しない部材を開発する必要があった。又、MBS等のゴム成分では添加量に限界があり、耐衝撃性と高難燃性を共に維持することができなかった。
更に、エチレン−酢酸ビニル系共重合体、ビカット軟化点が150℃以下のポリエステル及び金属水和物からなるノンハロゲン難燃性組成物が開示されている(特許文献3参照)。しかし、この組成物は、軟質系の熱可塑性エラストマーに属するため、硬質系の樹脂への使用は難しい。
【0004】
ポリ乳酸とポリ乳酸以外のポリエステルと、水酸化アルミニウムと水酸化マグネシウムのうち少なくとも一方とを含有するプラスチック組成物が開示されている(特許文献4(公開特許公報[特許請求の範囲]、[請求項1]参照))。
しかし、この組成物は、水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウム等の金属水酸化物を含有することにより、耐衝撃性と難燃性を共に維持することができなかった。
【0005】
【特許文献1】特開2000−319489号公報
【特許文献2】特開2001−247753号公報
【特許文献3】特開平06−128428号公報
【特許文献4】特開2004−277706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のごとき従来技術の問題点を解決し、リン化合物、メラミン化合物及びハロゲン化合物を使用せずに、耐衝撃性と共に高難燃性を有するポリ乳酸系樹脂を主体とする難燃性樹脂組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討を行った結果、耐衝撃性を有し、且つ、リン化合物、メラミン化合物及びハロゲン化合物を使用することなく高難燃性を有する難燃性樹脂組成物を見出し、本発明を完成するに到った。
【0008】
即ち、本発明は下記の構成からなる。
(1)(A)ポリ乳酸系樹脂30〜95質量%及び
(B)エチレンと次式(I)で示される単量体
CH2=C(R1)−R2 (I)
[上記式中、R1は、H又はメチル基であり、R2は、−COOR3又は−OCOR3であり、ここで、R3は、H又は、直鎖若しくは分枝の炭素数1〜10個のアルキル基である]との共重合体及び/又は変性されたオレフィン系樹脂5〜70質量%
からなる樹脂100質量部に対して、
(C)金属水和物50〜200質量部及び
(D)有機過酸化物0.01〜3.0質量部
を添加したことを特徴とする難燃性樹脂組成物。
(2)更に、樹脂100質量部に対して、(E)カップリング剤0.1〜4質量部を添加した上記(1)に記載の難燃性樹脂組成物。
(3)更に、樹脂100質量部に対して、(F)無機充填剤5〜150質量部を添加した上記(1)又は(2)に記載の難燃性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、極性のある柔軟な樹脂をゴム成分として使用することによって、無機化合物と上記ゴム成分との間に化学結合を生じさせ、更にそのゴム成分を架橋させることによって本発明の樹脂組成物の機械的強度を向上させることができる。又、無機難燃剤の添加により、燃焼時の有害なガスの発生を抑えることができるポリ乳酸系樹脂を主体とする難燃性樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明における、難燃性樹脂組成物について以下に詳細に説明する。
(A)成分 ポリ乳酸系樹脂
本発明において使用する(A)ポリ乳酸系樹脂は、たとえば、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸又はそれらの混合物、又は乳酸の環状二量体であるラクチド等を原料とし、脱水重縮合や開環重合によって得られるポリマーである。L−乳酸から得られるポリ乳酸の場合、このポリ乳酸中に含まれるD−乳酸の比率は1%〜20%、好ましくは5%〜18%、より好ましくは7%〜15%、最も好ましくは10%〜15%が良い。D−乳酸比率が低いと混練時或いは成形時における条件下でポリ乳酸系樹脂の結晶化が進行し易くなるため、本発明の難燃性樹脂組成物が硬く脆くなる場合がある。
【0011】
(A)ポリ乳酸系樹脂の製造方法としては、既知の任意の重合方法を採用することができる。例えば、特開平7−33861号公報、特開昭59−96123号公報に記載のような乳酸からの直接脱水縮合、又は乳酸環状二量体ラクチドの開環重合によって製造することができる。
ラクチドの合成、精製及び重合操作は、例えば米国特許第4,057,537号明細書、欧州特許出願公開第261572号明細書、Polymer Bulletin,14,491−495(1985)、及びMakromol Chem.,187,1611−1628(1986)等の文献に記載されている。
【0012】
この重合反応に用いる触媒は特に限定されるものではないが、公知の乳酸重合用触媒を用いることができる。例えば、乳酸スズ、酒石酸スズ、ジカプリル酸スズ、ジラウリル酸スズ、ジパルミチン酸スズ、ジステアリン酸スズ、ジオレイン酸スズ、α−ナフエト酸スズ、β−ナフエト酸スズ及びオクチル酸スズ等の有機スズ系化合物、粉末スズ、亜鉛粉末、ハロゲン化亜鉛、酸化鉛及び有機亜鉛系化合物、テトラプロピルチタネート等のチタン系化合物、ジルコニウムイソプロポキシド等のジルコニウム系化合物及び三酸化アンチモン等のアンチモン系化合物等を挙げることができる。これらの中でも、スズ又は有機スズ系化合物からなる触媒が活性の点から特に好ましい。これら触媒の使用量は、一般にラクチドに対して0.001〜5質量%程度である。
【0013】
重合反応は、上記触媒の存在下、触媒種によって異なるが、通常、100〜200℃の温度で行うことができる。又、特開平7−247345号公報に記載のような2段階重合を行うことも好ましい。
最も代表的に知られているのは、乳酸の無水環状二量体であるラクチドを開環重合する方法(ラクチド法)であるが、乳酸を直接縮合重合しても構わない。
【0014】
又、(A)ポリ乳酸系樹脂の分子量としては、重量平均分子量で、50,000〜1,000,000の範囲が好ましい。重量平均分子量が50,000未満では成形品の機械物性等が十分発現されず、一方、1,000,000を超える場合は難燃性樹脂組成物の加工性が低下する。
【0015】
(A)ポリ乳酸系樹脂がL−乳酸又はD−乳酸に由来するモノマー単位だけからなる場合には、該ポリ乳酸系樹脂は結晶性で高融点を有する。一方、ポリ乳酸系樹脂中のL−乳酸及びD−乳酸のモノマー単位の含有比率(L/D比と略称する)を変化させることにより、ポリ乳酸系樹脂の結晶性・融点を自在に調節することができるので、用途に応じ、L/D比を選定することによって、実用特性を制御することが可能である。
【0016】
ポリ乳酸系樹脂(A)の使用量は、(A)ポリ乳酸系樹脂と(B)エチレンと式(I)で表される単量体との共重合体及び/又は変性されたオレフィン系樹脂合わせて100質量%に対して30〜95質量%である。ポリ乳酸系樹脂(A)の使用量が上限値を超えるか、又は、下限値未満では、成形品の十分な機械的特性(衝撃強度等)が得られない。
【0017】
(B)成分
(B)成分はエチレンと次式(I)で示される単量体との共重合体及び/又は変性されたオレフィン系樹脂を主成分とするものが使用される。
CH2=C(R1)−R2 (I)
【0018】
上記式中、R1は、H又はメチル基であり、R2は、−COOR3又は−OCOR3である。ここで、R3は、H又は、直鎖若しくは分枝の炭素数1〜10個のアルキル基、好ましくは炭素数1〜4個のアルキル基である。
【0019】
式(I)で示される単量体の好ましい例としては、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニル、酢酸イソプロペニル、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート及びブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらを単独で、又は2種以上組み合わせて使用できる。特に好ましい単量体は、酢酸ビニル及びエチル(メタ)アクリレートである。
【0020】
上記の共重合体におけるエチレンと式(I)で示される単量体との割合は特に限定されない。好ましくはエチレンと式(I)で示される単量体合わせて100質量部に対して、エチレン92〜40質量部、式(I)で示される単量体8〜60質量部、より好ましくはエチレン80〜60質量部、式(I)で示される単量体20〜40質量部の割合である。
【0021】
エチレンと式(I)で示される単量体との共重合体としては、例えば、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−エチルメタクリレート共重合体(EEMA)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、部分鹸化エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0022】
又、変性されたオレフィン系樹脂は、極性基等で変性されたオレフィン系樹脂を使用することができる。極性基等で変性されたオレフィン系樹脂としては、カルボン酸変性されたプロピレン系樹脂、エチレン系樹脂及びエチレン−プロピレン共重合体等が挙げられる。
具体的には、無水マレイン酸変性ポリプロピレン及び無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体及び無水マレイン酸変性ポリエチレンを挙げることができる。特に、無水マレイン酸変性ポリエチレンを用いた場合、難燃性樹脂組成物中の無機化合物(特に金属水和物)と上記無水マレイン酸変性ポリエチレンとの相互作用によって、前記無機化合物を難燃性樹脂組成物中に均一に分散せしめることができ、成形品の機械的強度の向上を図ることができると共に、成形品の耐熱性をさらに向上させることができるので、無水マレイン酸変性ポリエチレンを使用するのが好ましい。
【0023】
又、エチレンと式(I)で示される単量体との共重合体と変性されたオレフィン系樹脂を併用することもできる。併用する場合には、成分(B)全体において、エチレンと式(I)で示される単量体との共重合体と変性されたオレフィン系樹脂との割合は1質量%〜99質量%/99質量%〜1質量%の範囲である。
【0024】
エチレンと式(I)で示される単量体との共重合体及び/又は極性基等で変性されたオレフィン系樹脂(B)の使用量は、ポリ乳酸系樹脂(A)とエチレンと式(I)で示される単量体との共重合体及び/又は極性基等で変性されたオレフィン系樹脂(B)合わせて100質量%に対して5〜70質量%であり、上限値を超えると、成形品の十分な難燃性が得られず、下限値未満では、十分な機械特性(衝撃強度等)が得られない。
【0025】
(C)成分 金属水和物
本発明で使用する(C)成分の金属水和物は、水和金属酸化物(結晶水を含む)、金属水酸化物(結晶水を含む)、水和金属塩(結晶水を含む)の全てを包含している。使用する金属水和物については特に限定しないが、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水和ケイ酸アルミニウム、水和ケイ酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の水酸基或いは結晶水を有する化合物を単独若しくは2種以上組み合わせて使用することができる。これらの金属水和物のうち、難燃性の発現及び使い勝手の良さの点から水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムを使用するのが好ましい。金属水和物は少なくとも一部がシランカップリング剤で処理されているものの使用が好ましいが、表面処理されていない無処理の金属水和物や脂肪酸等他の表面処理剤で処理された金属水和物も使用することができる。
金属水和物の配合量は、成分(A)、成分(B)の合計量100質量部に対し50〜200質量部である。金属水和物の配合量が上限値を超えると成形品の十分な機械特性(衝撃強度等)が得られず、下限値未満では、十分な難燃性が得られない。
【0026】
(D)成分 有機過酸化物
本発明で使用する(D)成分の有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジtert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド及びtert−ブチルクミルパーオキサイド等を挙げることができる。これらのうち、臭気性、着色性、スコーチ安定性の点で、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3及び1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサンが最も好ましい。
【0027】
有機過酸化物(D)の配合量は、成分(A)、成分(B)の合計量100質量部に対して、0.01〜3.0質量部の範囲であり、好ましくは0.1〜0.6質量部である。有機過酸化物の配合量が0.01質量部未満では無機成分とゴム成分との間の化学結合やゴム成分の架橋反応が不十分な結果となって、成形品の物性向上が望めないので好ましくない。又、有機過酸化物の配合量が3.0質量部を超えても成形品の物性等に変化がなく、経済的に不利となるだけである。更に、加工条件によっては、ゴム成分の架橋が進みすぎてゴム分子の分子切断等を生じて成形品の物性低下を招くことがある。
【0028】
(E)成分 カップリング剤
本発明で使用する(E)成分のカップリング剤としては、シランカップリング剤の使用が好ましい。その具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン及びメタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等の不飽和基又はエポキシ基を末端に有するシランカップリング剤、メルカプトプロピルトリメトキシシラン及びメルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプト基を末端に有するシランカップリング剤、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリプロピルトリメトキシシラン及びN−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基を有するシランカップリング剤等を挙げることができる。又、これらのシランカップリング剤は2種以上併用してもよい。これらの中でも架橋性を有するシランカップリング剤、例えば、末端にエポキシ基及び/又は不飽和基を有するシランカップリング剤の使用はより好ましく、1種単独でも、2種以上併用して使用してもよい。
【0029】
カップリング剤の配合量は、成分(A)、成分(B)の合計量100質量部に対して、0.1〜4質量部である。カップリング剤の使用は、無機化合物(金属水和物及び無機充填剤)と(A)成分及び/又は(B)成分との親和性を向上させる効果があるので好ましい。更に、シラン処理等の表面処理された無機化合物を使用する場合であっても、カップリング剤を併用することで成形品の更なる機械物性向上効果が期待できるのでより好ましい。カップリング剤の配合量は、上限値を超えると成形品の機械物性向上効果に顕著な差が見られず、下限値未満では成形品の機械物性向上効果が十分ではない。
【0030】
(F)成分 無機充填剤
必要に応じて(F)成分として、無機充填剤を配合することができる。この無機充填剤は成形品の圧縮永久歪み等一部の物性を改良する効果の他に、増量による経済上の利点を有する。無機充填剤としては、既存の無機充填剤を用いることができるが、例えば、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、クレー、硫酸バリウム、天然ケイ酸、合成ケイ酸(ホワイトカーボン)、酸化チタン、硼酸亜鉛、カーボンブラック等がある。これらのうち、硼酸亜鉛及び/又はタルクが特に好ましい。又、シランカップリング処理したタルクの使用は、本発明の樹脂組成物の機械強度の更なる向上が図れるのでより好ましい。
【0031】
無機充填剤の配合量は、成分(A)、成分(B)の合計量100質量部に対して5〜200質量部であり、好ましくは5〜150質量部、より好ましくは、10〜150質量部である。無機充填剤の配合量は、本発明の樹脂組成物の難燃効果の向上及び成形性の向上のために上記範囲が好ましい。
【0032】
(G)成分
必要に応じて(G)成分として、(メタ)アクリル系樹脂、コアシェル型樹脂より選ばれる1種類以上を配合することができる。これらの樹脂は溶融混練時の製造安定性(溶融混練性)を向上させることができる。
(メタ)アクリル系樹脂としては、そのモノマーとして、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル及び(メタ)アクリル酸ラウリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸2−クロルエチル及び(メタ)アクリル酸3−クロルプロピル等の(メタ)アクリル酸ハロゲン化アルキル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル及び(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等の水酸基を持つ(メタ)アクリル酸エステル、α−クロルアクリル酸メチル、α−クロルアクリル酸エチル、αβ−クロルアクリル酸メチル、β−クロル(メタ)アクリル酸メチル及びβ−クロル(メタ)アクリル酸エチル等のハロゲン化アクリル酸系エステル、(メタ)アクリル酸1−クロル−2−ヒドロキシエチル及び(メタ)アクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル系モノマーが用いられ、該(メタ)アクリル系樹脂は、これらモノマーの1種又は2種以上からなる単独重合体又は共重合体である。
【0033】
コアシェル型樹脂(ゴム)としては、ブタジエン−アクリロニトリル−スチレン−コアシェル樹脂(ゴム)(ABS)、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(MBS)、メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−スチレン−コアシェルゴム(MAS)、オクチルアクリレート−ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(OABS)、アルキルアクリレート−ブタジエン−アクリロニトリル−スチレン−コアシェルゴム(AABS)、ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(SBR)及びメチルメタクリレート−ブチルアクリレート−シロキサンを始めとするシロキサン含有コアシェルゴム等のコアシェルタイプの粒子状弾性体、又はこれらを変性したゴム等が挙げられる。
【0034】
上記成分(G)の具体例としては、例えば、カネエースシリーズPA、MX、MP、MYを挙げることができる。成分(G)の配合量は、成分(A)、成分(B)の合計量100質量部に対して1〜100質量部であり、好ましくは、1〜70質量部である。成分(G)の配合量は、本発明の樹脂組成物の溶融混練性を向上する効果があるために上記範囲が好ましい。
【0035】
本発明の難燃性樹脂組成物は、建築用部品、電気部品、電子部品、生活雑貨用部品、運輸機器部品、自動車部品、OA機器部品、産業機械部品等に使用される。好ましくは建築用部品、産業機械部品である。
【実施例】
【0036】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。尚、文中「部」及び「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
(1)シャルピー衝撃強度
厚み3mm、ノッチ付きの試験片を使用して、JIS K 7111に準じて測定した。下記表中の単位は、kJ/m2である。
3kJ/m2以上を合格とした。好ましくは、4kJ/m2以上、より好ましくは6kJ/m2以上である。
【0037】
(2)難燃性試験
厚み1/8インチ(3.2mm)の試験片を用い、難燃性の評価方法として米国UL規格のUL−94に規定されている垂直難燃試験に準じて評価を行った。接炎は2回行った。
V−0:2回の接炎時の各有炎時間が10秒以下。
V−1:2回の接炎時の各有炎時間が30秒以下。綿燃え無し。
V−2:2回の接炎時の各有炎時間が30秒以下。綿燃え有り。
NG:2回の接炎時の各有炎時間が30秒を超えた。
【0038】
(3)ビカット軟化点
厚さ4mmの角柱を使用し、荷重10Nをかけて針状圧子が試験片に1mm侵入したときの浴槽の温度をビカット軟化点とする。
合格の軟化点を60℃以上とした。
【0039】
(4)溶融混練性
直径45mmの溶融混練機にて溶融混練性の評価を行った。
溶融混練条件は以下の通りである。
溶融混練温度:160℃、スクリュー回転数:70〜120rpm
溶融混練性評価
◎:ストランド表面が非常によく、溶融混練時の作業性が非常に良好である。
○:ストランド表面がよく、溶融混練時の作業性が良好である。
△:ストランド表面がやや悪く、溶融混練時の作業性がやや悪い。
×:ストランド表面が悪く、溶融混練時の作業性が悪い。
【0040】
実施例1及び比較例1〜6の配合組成とその評価結果を表1−1に、実施例2〜7及び比較例7の配合組成とその評価結果を表1−2に、実施例8、9及び比較例8、9の配合組成とその評価結果を表1−3に、実施例10〜13の配合組成とその評価結果を表1−4にそれぞれ示す。ただし、表中、各樹脂成分は、下記の略号により表わす。
【0041】
成分(A)
(A−1)
レイシア H−280:L−乳酸単位88.8モル%、及びD−乳酸単位11.2モル%からなる乳酸重合体、三井化学社製、ペレット(丸形状、平均粒径約4mm)。
【0042】
成分(B)
(B−1)
エバフレックス 40LX:エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂、三井デュポンケミカル社製、酢酸ビニル含有量:40%。
(B−2)
エバフレックス EAA A709:エチレン−アクリル酸エチル共重合体系樹脂、三井デュポンケミカル社製、アクリル酸エチル含有量:35%。
(B−3)
アドマー XE070:マレイン酸変性ポリエチレン、三井化学社製。
【0043】
成分(C)
(C−1)
キスマ5L:末端にビニル基を有するシランカップリング剤で表面処理した水酸化マグネシウム、協和化学工業社製、シランカップリング表面処理量0.2%。
(C−2)
キスマ5A:脂肪酸で表面処理した水酸化マグネシウム、協和化学工業社製、ステアリン酸処理量2.5%。
【0044】
成分(D)
パーヘキサ25B:有機過酸化物、日本油脂社製、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキサン。
【0045】
成分(E)
SZ6030:シランカップリング剤、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン。
【0046】
成分(F)
(F−1)
TTタルク:タルク、竹原化学社製。
【0047】
(G−1)
カネエース M−300:エチレンジメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS)、カネカ社製。
(G−2)
カネエース MP−40:エポキシ変性メタクリル酸メチル−スチレン共重合体(MSE)、カネカ社製。
(G−3)
カネエースPA−50:メタクリル系樹脂(PMMA)、カネカ社製、メタクリル酸メチル−アクリル酸メチル共重合体。
【0048】
実施例1
ポリ乳酸系樹脂(レイシア H−280)70%、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂(エバフレックス 40LX)30%よりなる樹脂100部に対して、シランカップリング処理された水酸化マグネシウム120部、有機過酸化物0.2部、シランカップリング剤2部、タルク50部を配合し、溶融混練温度:160〜190℃、スクリュー回転数:70〜120rpmの混練条件にて、直径45mmの二軸溶融混練機を用いて溶融混練を行った。
得られた難燃性樹脂組成物を180℃にてプレス成形し、3種類の試験片を作製して評価した。
【0049】
比較例1
ポリ乳酸系樹脂(レイシア H−280)25%、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂(エバフレックス 40LX)75%よりなる樹脂100部に対して、シランカップリング処理された水酸化マグネシウム120部、有機過酸化物0.2部、シランカップリング剤2部、タルク50部を配合し、溶融混練温度:160〜190℃、スクリュー回転数:70〜120rpmの混練条件にて、直径45mmの二軸溶融混練機を用いて溶融混練を行った。
得られた難燃性樹脂組成物を180℃にてプレス成形し、3種類の試験片を作製して評価した。
実施例1の配合と同様で、ポリ乳酸系樹脂の配合量を減らし、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂の配合量を増やした場合、成形品のビカット軟化点が55.1℃と低い値を示した。
【0050】
比較例2
ポリ乳酸系樹脂(レイシア H−280)98%、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂(エバフレックス 40LX)2%よりなる樹脂100部に対して、シランカップリング処理された水酸化マグネシウム120部、有機過酸化物0.2部、シランカップリング剤2部、タルク50部を配合し、溶融混練温度:160〜190℃、スクリュー回転数:70〜120rpmの混練条件にて、直径45mmの二軸溶融混練機を用いて溶融混練を行った。
得られた難燃性樹脂組成物を180℃にてプレス成形し、3種類の試験片を作製して評価した。
実施例1の配合と同様で、ポリ乳酸系樹脂の配合量を増やし、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂の配合量を減らした場合、成形品の衝撃強度が、1.3kJ/m2と低い値を示した。
【0051】
比較例3
ポリ乳酸系樹脂(レイシア H−280)70%、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂(エバフレックス 40LX)30%よりなる樹脂100部に対して、シランカップリング処理された水酸化マグネシウム40部、有機過酸化物0.2部、シランカップリング剤2部、タルク50部を配合し、溶融混練温度:160〜190℃、スクリュー回転数:70〜120rpmの混練条件にて、直径45mmの二軸溶融混練機を用いて溶融混練を行った。
得られた難燃性樹脂組成物を180℃にてプレス成形し、3種類の試験片を作製して評価した。
実施例1の配合と同様で、シランカップリング処理された水酸化マグネシウムの配合量のみを減らした場合、成形品の難燃性は良好でなく、又、耐熱性も低い。
【0052】
比較例4
ポリ乳酸系樹脂(レイシア H−280)70%、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂(エバフレックス 40LX)30%よりなる樹脂100部に対して、シランカップリング処理された水酸化マグネシウム210部、有機過酸化物0.2部、シランカップリング剤2部、タルク50部を配合し、溶融混練温度:160〜190℃、スクリュー回転数:70〜120rpmの混練条件にて、直径45mmの二軸溶融混練機を用いて溶融混練を行った。
得られた難燃性樹脂組成物を180℃にてプレス成形し、3種類の試験片を作製して評価した。
実施例1の配合と同様で、シランカップリング処理された水酸化マグネシウムの配合量のみを増やした場合、成形品の衝撃強度は1.9kJ/m2と低い値を示した。
【0053】
比較例5
ポリ乳酸系樹脂(レイシア H−280)70%、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂(エバフレックス 40LX)30%よりなる樹脂100部に対して、シランカップリング処理された水酸化マグネシウム120部、有機過酸化物0部、シランカップリング剤2部、タルク50部を配合し、溶融混練温度:160〜190℃、スクリュー回転数:70〜120rpmの混練条件にて、直径45mmの二軸溶融混練機を用いて溶融混練を行った。
得られた難燃性樹脂組成物を180℃にてプレス成形し、3種類の試験片を作製して評価した。
実施例1の配合と同様で、有機過酸化物のみを配合しない場合、成形品の衝撃強度が2.2kJ/m2と低い値を示した。
【0054】
比較例6
ポリ乳酸系樹脂(レイシア H−280)70%、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂(エバフレックス 40LX)30%よりなる樹脂100部に対して、シランカップリング処理された水酸化マグネシウム120部、有機過酸化物4.0部、シランカップリング剤2部、タルク50部を配合し、溶融混練温度:160〜190℃、スクリュー回転数:70〜120rpmの混練条件にて、直径45mmの二軸溶融混練機を用いて溶融混練を行った。
得られた難燃性樹脂組成物を180℃にてプレス成形し、3種類の試験片を作製して評価した。
実施例1の配合と同様で、有機過酸化物の配合量のみを4.0部に増やした場合、成形品の物性に、より顕著な効果は認められなかった。
【0055】
実施例2
ポリ乳酸系樹脂(レイシア H−280)70%、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂(エバフレックス 40LX)30%よりなる樹脂100部に対して、脂肪酸処理された水酸化マグネシウム120部、有機過酸化物0.2部、シランカップリング剤5部、タルク50部を配合し、溶融混練温度:160〜190℃、スクリュー回転数:70〜120rpmの混練条件にて、直径45mmの二軸溶融混練機を用いて溶融混練を行った。
得られた難燃性樹脂組成物を180℃にてプレス成形し、3種類の試験片を作製して評価した。
【0056】
実施例3
ポリ乳酸系樹脂(レイシア H−280)70%、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂(エバフレックス 40LX)30%よりなる樹脂100部に対して、シランカップリング処理された水酸化マグネシウム180部、有機過酸化物0.2部、シランカップリング剤2部、タルク0部を配合し、溶融混練温度:160〜190℃、スクリュー回転数:70〜120rpmの混練条件にて、直径45mmの二軸溶融混練機を用いて溶融混練を行った。
得られた難燃性樹脂組成物を180℃にてプレス成形し、3種類の試験片を作製して評価した。
【0057】
実施例4
ポリ乳酸系樹脂(レイシア H−280)70%、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂(エバフレックス 40LX)30%よりなる樹脂100部に対して、シランカップリング処理された水酸化マグネシウム50部、有機過酸化物0.2部、シランカップリング剤2部、タルク160部を配合し、溶融混練温度:160〜190℃、スクリュー回転数:70〜120rpmの混練条件にて、直径45mmの二軸溶融混練機を用いて溶融混練を行った。
得られた難燃性樹脂組成物を180℃にてプレス成形し、3種類の試験片を作製して評価した。
【0058】
比較例7
ポリ乳酸系樹脂(レイシア H−280)100部に対して、シランカップリング処理された水酸化マグネシウム100部を配合し、溶融混練温度:160〜190℃、スクリュー回転数:70〜120rpmの混練条件にて、直径45mmの二軸溶融混練機を用いて溶融混練を行った。
得られた難燃性樹脂組成物を180℃にてプレス成形し、3種類の試験片を作製して評価した。
ポリ乳酸系樹脂とシランカップリング処理された水酸化マグネシウムのみの系の場合、成形品の衝撃強度は1.1kJ/m2と低い値を示した。
【0059】
実施例5
ポリ乳酸系樹脂(レイシア H−280)70%、エチレン−アクリル酸エチル共重合体系樹脂(エバフレックス EAA A709)30%よりなる樹脂100部に対して、シランカップリング処理された水酸化マグネシウム120部、有機過酸化物0.2部、シランカップリング剤2部、タルク50部を配合し、溶融混練温度:160〜190℃、スクリュー回転数:70〜120rpmの混練条件にて、直径45mmの二軸溶融混練機を用いて溶融混練を行った。
得られた難燃性樹脂組成物を180℃にてプレス成形し、3種類の試験片を作製して評価した。
【0060】
実施例6
ポリ乳酸系樹脂(レイシア H−280)50%、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂(エバフレックス 40LX)50%よりなる樹脂100部に対して、シランカップリング処理された水酸化マグネシウム120部、有機過酸化物0.2部、シランカップリング剤2部、タルク50部を配合し、溶融混練温度:160〜190℃、スクリュー回転数:70〜120rpmの混練条件にて、直径45mmの二軸溶融混練機を用いて溶融混練を行った。
得られた難燃性樹脂組成物を180℃にてプレス成形し、3種類の試験片を作製して評価した。
【0061】
実施例7
ポリ乳酸系樹脂(レイシア H−280)60%、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂(エバフレックス 40LX)40%よりなる樹脂100部に対して、シランカップリング処理された水酸化マグネシウム120部、有機過酸化物0.2部、シランカップリング剤2部、タルク50部を配合し、溶融混練温度:160〜190℃、スクリュー回転数:70〜120rpmの混練条件にて、直径45mmの二軸溶融混練機を用いて溶融混練を行った。
得られた難燃性樹脂組成物を180℃にてプレス成形し、3種類の試験片を作製して評価した。
【0062】
実施例8
ポリ乳酸系樹脂(レイシア H−280)60%、マレイン酸変性ポリエチレン(アドマーXE070)40%よりなる樹脂100部に対して、シランカップリング処理された水酸化マグネシウム120部、有機過酸化物0.2部、シランカップリング剤2部、タルク50部を配合し、溶融混練温度:160〜190℃、スクリュー回転数:70〜120rpmの混練条件にて、直径45mmの二軸溶融混練機を用いて溶融混練を行った。
得られた難燃性樹脂組成物を180℃にてプレス成形し、3種類の試験片を作製して評価した。
【0063】
比較例8
ポリ乳酸系樹脂(レイシア H−280)60%、マレイン酸変性ポリエチレン(アドマーXE070)40%よりなる樹脂100部に対して、シランカップリング処理された水酸化マグネシウム120部、有機過酸化物0部、シランカップリング剤2部、タルク50部を配合し、溶融混練温度:160〜190℃、スクリュー回転数:70〜120rpmの混練条件にて、直径45mmの二軸溶融混練機を用いて溶融混練を行った。
得られた難燃性樹脂組成物を180℃にてプレス成形し、3種類の試験片を作製して評価した。
実施例8の配合と同様で、有機過酸化物のみを配合しなかった場合、成形品の衝撃強度の向上は望めず、1.1kJ/m2と低い値を示した。
【0064】
実施例9
ポリ乳酸系樹脂(レイシア H−280)70%、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂(エバフレックス 40LX)30%よりなる樹脂100部に対して、脂肪酸処理された水酸化マグネシウム120部、有機過酸化物0.2部、シランカップリング剤2部、タルク50部を配合し、溶融混練温度:160〜190℃、スクリュー回転数:70〜120rpmの混練条件にて、直径45mmの二軸溶融混練機を用いて溶融混練を行った。
得られた難燃性樹脂組成物を180℃にてプレス成形し、3種類の試験片を作製して評価した。
【0065】
比較例9
ポリ乳酸系樹脂(レイシア H−280)70%、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂(エバフレックス 40LX)30%よりなる樹脂100部に対して、脂肪酸処理された水酸化マグネシウム120部、有機過酸化物0.2部、シランカップリング剤0部、タルク50部を配合し、溶融混練温度:160〜190℃、スクリュー回転数:70〜120rpmの混練条件にて、直径45mmの二軸溶融混練機を用いて溶融混練を行った。
得られた難燃性樹脂組成物を180℃にてプレス成形し、3種類の試験片を作製して評価した。
実施例9の配合と同様で、シランカップリング剤のみを配合しなかった場合、成形品の衝撃強度は1.1kJ/m2と低い値を示した。
【0066】
実施例10
ポリ乳酸系樹脂(レイシア H−280)70%、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂(エバフレックス 40LX)30%よりなる樹脂100部に対して、シランカップリング処理された水酸化マグネシウム120部、有機過酸化物0.2部、シランカップリング剤2部、タルク50部、MBS(カネエース M−300)2部を配合し、溶融混練温度:160〜190℃、スクリュー回転数:70〜120rpmの混練条件にて、直径45mmの二軸溶融混練機を用いて溶融混練を行った。
得られた難燃性樹脂組成物を180℃にてプレス成形し、3種類の試験片を作製して評価した。
【0067】
実施例11
ポリ乳酸系樹脂(レイシア H−280)70%、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂(エバフレックス 40LX)30%よりなる樹脂100部に対して、シランカップリング処理された水酸化マグネシウム120部、有機過酸化物0.2部、シランカップリング剤2部、タルク50部、MSE(カネエース MP−40)2部を配合し、溶融混練温度:160〜190℃、スクリュー回転数:70〜120rpmの混練条件にて、直径45mmの二軸溶融混練機を用いて溶融混練を行った。
得られた難燃性樹脂組成物を180℃にてプレス成形し、3種類の試験片を作製して評価した。
【0068】
実施例12
ポリ乳酸系樹脂(レイシア H−280)70%、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂(エバフレックス 40LX)30%よりなる樹脂100部に対して、シランカップリング処理された水酸化マグネシウム120部、有機過酸化物0.2部、シランカップリング剤2部、タルク50部、PMMA(カネエース PA−50)2部を配合し、溶融混練温度:160〜190℃、スクリュー回転数:70〜120rpmの混練条件にて、直径45mmの二軸溶融混練機を用いて溶融混練を行った。
得られた難燃性樹脂組成物を180℃にてプレス成形し、3種類の試験片を作製して評価した。
【0069】
実施例13
ポリ乳酸系樹脂(レイシア H−280)70%、エチレン−アクリル酸エチル共重合体系樹脂(エバフレックス EAA A709)30%よりなる樹脂100部に対して、シランカップリング処理された水酸化マグネシウム120部、有機過酸化物0.2部、シランカップリング剤2部、タルク50部、MBS(カネエース M−300)2部を配合し、溶融混練温度:160〜190℃、スクリュー回転数:70〜120rpmの混練条件にて、直径45mmの二軸溶融混練機を用いて溶融混練を行った。
得られた難燃性樹脂組成物を180℃にてプレス成形し、3種類の試験片を作製して評価した。
【0070】

【0071】

【0072】

【0073】

【0074】
以上の結果、実施例1〜9は成形品の難燃性、衝撃強度及び耐熱性のバランスが良好であることが明らかである。一方、比較例1〜9は上記バランスに欠ける。実施例10〜13は更に(メタ)アクリル系樹脂を添加した例であり、上記バランスに優れると同時に、溶融混練性が非常に良好である。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の樹脂組成物は、ハロゲン系難燃剤及びリン系化合物等の環境負荷物質となる可能性のある物質を使用しないで、耐衝撃性、加工性に優れた難燃性を有する樹脂組成物を提供するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリ乳酸系樹脂30〜95質量%及び
(B)エチレンと次式(I)で示される単量体
CH2=C(R1)−R2 (I)
[上記式中、R1は、H又はメチル基であり、R2は、−COOR3又は−OCOR3であり、ここで、R3は、H又は、直鎖若しくは分枝の炭素数1〜10個のアルキル基である]との共重合体及び/又は変性されたオレフィン系樹脂5〜70質量%
からなる樹脂100質量部に対して、
(C)金属水和物50〜200質量部及び
(D)有機過酸化物0.01〜3.0質量部
を添加したことを特徴とする難燃性樹脂組成物。
【請求項2】
更に、樹脂100質量部に対して、(E)カップリング剤0.1〜4質量部を添加した請求項1に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項3】
更に、樹脂100質量部に対して、(F)無機充填剤5〜150質量部を添加した請求項1又は請求項2に記載の難燃性樹脂組成物。

【公開番号】特開2006−249212(P2006−249212A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−66738(P2005−66738)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(000250384)リケンテクノス株式会社 (236)
【Fターム(参考)】