説明

難燃性熱可塑性樹脂組成物

【課題】高価なハロゲン化ビスイミド難燃化剤を極力低減するも高度な難燃性を有し、耐光性、流動性に優れ、かつ大型成形物にも対応できる成形性及び耐金属密着性に優れた安価なゴム変性スチレン系難燃樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ゴム変性スチレン系樹脂(A)に、高価なハロゲン化ビスイミド難燃化剤(C)とハロゲン化エポキシ樹脂の末端エポキシ基を短鎖モノアルコールで封鎖されたエポキシ樹脂(B)及び難燃化助剤(D)を併用する。
【効果】高価なハロゲン化ビスイミド難燃化剤の低減化が可能となり、かつ高度な難燃性、耐光性を損なわず、流動性を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高価な難燃化剤(C)を極力低減するも高度な難燃性を有し、耐光性、流動性に優れ、かつ金属に対する密着性を低減した安価なスチレン系難燃樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スチレン系樹脂はその特性を生かし広範囲な用途に使用されている。中でも高度な難燃性を付与させた難燃性樹脂はワープロ、パーソナルコンピュータ、プリンター、複写機等のOA機器、TV、VTR、オーディオ等の家電製品等を初めとする多岐の分野で使用されている。
【0003】
昨今、OA機器・家電製品などの分野では、プラスチック部品の大型化対応するため大型成形機を使用したホットランナー成形法やガスアシストインジェクション法等が適用される。このため使用される樹脂には、難燃性以外に優れた成形性が要求されており、加えて、蛍光灯や屋外から入る光に暴露されため、耐光性も重要視されている。
【0004】
従来から、スチレン系樹脂に難燃性を付与するために、種々の難燃化剤が提案されており、中でも安価で物性バランスに優れているハロゲン含有有機化合物が多く用いられている。代表的なものとしてはテトラブロモビスフェノールA、デカブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエタン、臭素化エポキシ、及び臭素化エポキシ樹脂のエポキシ基をトリブロモフェノールで封鎖したものなどが知られている。
【0005】
しかし、これら難燃化剤はスチレン系樹脂と配合した場合、耐光性を大幅に低下させる欠点がある。この耐光性低下を抑える事を目的として、例えば、特許昭61−211354号公報においては、両末端にエポキシ基を有するブロム含有化合物を難燃化剤として用いる事で耐光性が改良される、との技術が開示されている。しかし、エポキシ基は金属に対する密着性が高いため、押出機内で樹脂と溶融混練する際にゲル化が生じやすく、発生したゲル化物が劣化変色して異物となり、成形品の外観不良を生じる等の問題があった。
【0006】
この様な問題を解決するために、特開平01−101350号公報、及び特開平06−093156号公報において、塩基性無機化合物を添加する技術が開示されている。しかし、本技術においても、ゲル化を十分に抑えるためには多量の塩基性無機化合物を添加する必要があり、得られる樹脂組成物の衝撃強度が損なわれるなどの実用上の問題があった。
【0007】
また、耐光難燃樹脂組成物として特開平05−214203号公報に難燃剤エチレンビステトラブロモフタルイミドと臭素化ビスフェノールA(末端トルブロモフェノール変性)、及び三酸化アンチモンからなる技術が開示されている。しかし、本組成物は超耐光性(キセノン照射:ΔE*ab≦3.0)を要求される分野においては不十分であった。耐光性を補う方法として安定剤、紫外線吸収剤等の添加が記載されているがコスト的に不利である。更に、本組成物は黄色味が強く、製品の色が限定されるという問題もある。黄色味を十分に抑えるほど多量の酸化チタンを添加すると衝撃強度の低下を招く、更にはコスト的に不利である。かつ、エチレンビステトラブロモフタルイミドの添加量が多いため薄肉成形においては流動性不足によるシュートショット等の実用上の問題があった。
【特許文献1】特許昭61−211354号
【特許文献2】特開平01−101350号
【特許文献3】特開平06−093156号
【特許文献4】特開平05−214203号
【特許文献5】特開平07−300546号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、この様な現状を鑑み、上記の問題点を解決し、高度な難燃性と共に超耐光性(キセノン照射:ΔE*ab≦3.0)、流動性、耐金属密着性に優れたスチレン系難燃性樹脂組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、かかる現状に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、難燃剤エチレンビステトラブロモフタルイミドと臭素化エポキシ樹脂のエポキシ基の一部または全部を短鎖モノアルコールで封鎖したハロゲン系難燃剤、難燃助剤、塩基性無機化合物、及び着色剤を組み合わせる等により、高度な難燃性と共に耐光性、流動性、耐金属密着性に優れた難燃性スチレン系樹脂組成物が得られることを見出し、本発明に至った。
【0010】
即ち、本発明は、ゴム変性スチレン系樹脂(A)100質量部に対し、(B)ハロゲン含有芳香族ジオールのエーテル誘導体6〜20質量部、一般式(1)で表される(C)ハロゲン化ビスイミド難燃化剤を0.1〜15質量部、(D)難燃化助剤を1〜8質量部を配合してなり、かつ上記(B)、(C)の合計が10〜25質量部であることを特徴とするスチレン系難燃樹脂組成物に関する。
【0011】
上記(A)は成形用樹脂組成物の主成分をなし、成形品の強度保持の役割を担い、(B)、(C)、及び(D)は(A)に難燃性等やその他の機能性を付与するための成分である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の技術によれば、耐光性、成形性、耐金属密着性に優れ、しかも高度な難燃性を保持したスチレン系難燃樹脂組成物を得ることが出来る。この様にして得られた難燃性樹脂組成物は、昨今の家電製品、OA機器等への高機能化分野で有用であり産業上の利用価値は極めて大きい。具体的には、事務機器、情報機器等の内外装材等への利用が期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の組成物で使用するゴム変性スチレン系樹脂(A)とは、例えば芳香族ビニル単量体と不活性溶媒の混合液にゴム状重合体を溶解し、攪拌して塊状重合、懸濁重合、溶液重合等を行うことにより得られる、芳香族ビニル重合体のマトリックス中にゴム状重合体が粒子状に分散してなる重合体を言う。マトリックス部分の分子量については特に制限ないが、還元粘度(ηsp/C)で0.50以上、好ましくは0.55〜0.85が適当である。0.85を超えると、組成物の流動性が低くすぎて成形に支障をきたし、0.55未満だと実用的に十分な強度が発揮できない等の問題がある。ゴム含有量については特に制限ないが、ゴム変性スチレン系樹脂に一般的に使用される5〜15重量%が適当である。ゴム含有量は、成形品に必要な耐衝撃強度と剛性のバランス等を勘案して決めることが望ましい。ゴム状重合体の平均粒子径については特に制限ないが、一般的には0.4〜6.0μmであり、好ましくは0.5〜3.0μmが適当である。ゴム粒子径が小さ過ぎると耐衝撃強度が急激に低下し、粒子径が大きくなると成形品の表面光沢等の外観が悪くなる傾向がある。
【0014】
上記の芳香族ビニル単量体としては、主にスチレンである。O−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン等、及びこれらの併用系を挙げることが出来るが、スチレンが最も好適である。
【0015】
上記のゴム状重合体としては、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン等が挙げられ、中でもポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体が好ましい。
【0016】
本発明の組成物で使用するハロゲン含有化合物(B)のハロゲン化エポキシ樹脂としては、テトラクロロビスフェノールAのジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAのジグリシジルエーテル、テトラクロロビスフェノールSのジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールSのジグリシジルエーテル、ジブロモフェノールノボラックのジグリシジルエーテル等を挙げることが出来る。
【0017】
ハロゲン化エポキシ樹脂のエポキシ基を封鎖する炭素数8個以下の短鎖モノアルコールとはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アミルアルコール、ヘキサノール、ヘプタノール、ベンジルアルコール、及びこれらの異性体などが挙げられる。ハロゲン化エポキシ樹脂のエポキシ基の封止率としては20〜100%が好ましく、80%以下は更に好ましい。エポキシ基の封止率が20%以下では、金属に対する密着性の低減効果が小さいため、ゲル化防止効果が不十分であり外観不良の改善が期待出来ない。
【0018】
また、ハロゲン化エポキシ樹脂のエポキシ基の封鎖に用いる短鎖モノアルコールの炭素数が多くなると、難燃化剤のハロゲン含有量が減少し、難燃性付与効果が落ち、樹脂組成物の耐熱性、及び機械特性等が低下するため、難燃化剤としての実用的性能を維持するためには炭素数は8個以下である必要があり、好ましくは3個以下、より好ましくは1個である。
【0019】
更に、本発明の組成物で使用するハロゲン含有化合物(B)の平均分子量(Mn)は10,000以下、好ましくは1,000〜8,000、より好ましくは1,000〜3,000である。10,000以上だと成形性(流動性)の低下、薄肉成形品では流動末端での層剥離を誘発する。
【0020】
本発明の組成物で使用する難燃化剤(D)は、難燃化剤(B)、(C)の難燃効果を更に高める働きをするものであり、例えば酸化アンチモンとして三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダ等、ホウ素系化合物としてホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、無水ホウ酸亜鉛、無水ホウ酸等、スズ系化合物としてスズ酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛等、モリブデン系化合物として酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウム等、ジルコニウム系化合物として酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム等、また亜鉛系化合物として硫化亜鉛等が挙げられるが、なかでも三酸化アンチモンを使用することが特に好ましい。
【0021】
難燃助剤(D)の添加量としては、ゴム変性スチレン系樹脂(A)100質量部に対して0.5〜8質量部が適当であり、10質量部より多いと燃焼時のグローイング挙動を高めるので好ましくない。
【0022】
本発明の難燃性樹脂組成物の混合方法は、公知の混合技術を適用することが出来る。例えばミキサー型混合機、V型他ブレンダー、及びタンブラー型混合機等の混合装置であらかじめ混合しておいた混合物を、更に溶融混練することで均一な難燃性樹脂組成物とすることが出来る。溶融混練にも特に制限はなく公知の溶融技術を適用出来る。好適な溶融混練装置として、バンバリー型ミキサー、ニーダー、ロール、単軸押出機、特殊単軸押出機、及び二軸押出機等がある。更に押出機等の溶融混練装置の途中から難燃化剤等の添加剤を別途に添加する方法がある。
【0023】
難燃化剤(B)、(C)添加し溶融混練する際の樹脂温度は、分散に必要な最低温度が望ましく、通常260℃以下、更に好ましくは250℃以下で混練することが適当である。
【0024】
また、本発明の難燃樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で他の添加剤、例えば可塑剤、滑剤、安定剤、紫外線吸収剤、充填剤、補強剤等を添加することが出来る。
【実施例】
【0025】
以下に例を挙げて具体的に本発明を説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0026】
実施例および比較例で使用したゴム変性スチレン系樹脂(A1)、及び(A2)は、それぞれ以下の組成であった。(A1)の組成:還元粘度0.81dl/g、ゴム状重合体含有量8.8重量%、ゲル含有量23.7重量%、及び体積平均粒子径2.5μmであった。(A2)組成:還元粘度0.60dl/g、ゴム状重合体含有量13.6重量%、ゴム状重合体のゲル含有量27.6重量%、及び体積平均粒子径0.63μmであった。ここで言う還元粘度、ゲル分、ゴム状重合体含有量及び平均粒子径は以下の方法にて測定した。
【0027】
還元粘度(ηsp/C)の測定:ゴム変性スチレン系樹脂1gにメチルエチルケトン(MEK)15mlとアセトン15mlの混合溶媒を加え、25℃で2時間振とう溶解した後、遠心分離で不溶分を沈降させ、デカンテーションにより上澄み液を取り出し、500mlのメタノールを加えて樹脂分を析出させ、ろ取後乾燥する。同操作で得られた樹脂分をトルエンに溶解してポリマー濃度0.4%(重量/体積)の試料溶液を作成する。この試料溶液、及び純トルエンを30℃に恒温しウベローデ型粘度計により溶液流下秒数を測定して、下式にて算出した。
ηsp/C=(t1/t0−1)/C
t0:純トルエン流下秒数
t1:試料溶液流下秒数

:ポリマー濃度
【0028】
ゲル含有量の測定:ゴム変性スチレン系樹脂をトルエンに2.5%の割合で加え、25℃で2時間振とう溶解した後、遠心分離(回転数10000〜14000rpm、分離時間30分)で不溶分(ゲル分)を沈降させ、デカンテーションにより上澄み液を除去してゲルを得る。次に、この膨潤ゲルを100℃で2時間予備乾燥した後、120℃の真空乾燥機で1時間乾燥する。デシケータで常温まで冷却し精秤し下式にて算出した。
ゲル分率(%)=[(b−a)/S]×100
a:遠心沈降管重量
b:乾燥ゲル+遠心沈降管重量
S:試料樹脂重量
【0029】
ゴム状重合体含有量の測定:ゴム変性スチレン系樹脂をクロロホルムに溶解させ、一定量の一塩化ヨウ素/四塩化炭素溶液を加え暗所に約1時間放置後、15質量%のヨウ化カリウム溶液と純水50mlを加え、過剰の一塩化ヨウ素を0.1Nチオ硫酸ナトリウム/エタノール水溶液で滴定し、付加した一塩化ヨウ素量から算出した。
【0030】
ゴム状重合体の体積平均粒子径の測定:ゴム変性スチレン樹脂組成物をジメチルホルムアミドに完全に溶解させ、レーザー回析方式粒度分布装置にて測定した。
測定装置:コールター製 レーザー回析方式粒子アナライザーLS−230型
【0031】
難燃化剤(B)は、ハロゲン化エポキシ樹脂の末端エポキシ基をメタノールで封鎖された構造を有するエポキシ樹脂臭素化ビスフェノールA誘導体を使用した。製造方法は特に制限されるものではなく、公知(特許2935161)の方法で容易に製造する事が出来る。特徴を表1に示す。
【0032】

【0033】
難燃化剤(C)は、アルベマール社製のSAYTEX−93(エチレンビステトラブロモフタルイミド)を使用した。
【0034】
難燃助剤(D)は、日本精鉱株式会社の平均粒子径0.8μmの三酸化アンチモン(日本精鉱株式会社製、PATOX−M)を使用した。
【0035】
その他共通添加剤として、ソジウムアルミノシリケート系混合物(E1)、エチレンビスステアリン酸アマイド(E2)、ポリテトラフルオロエチレン共重合体(E3)、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤とアミン系光安定剤の1:1ブレンド品(E4)、及び無機系着色剤(E5)を使用した。
【0036】
なお、実施例および比較例に示された各種測定は以下の方法により実施した。
【0037】
難燃性の測定:米国アンダーライターズ・ラボラトリーズ社のサブジェクト94号の垂直燃焼試験方法に準拠し、試験片厚さ1/12インチの燃焼性を評価した。
【0038】
メルトフローレート(MFR)の測定:JIS K7210に準拠し、200℃、49N荷重で測定した。
【0039】
耐光性の測定:アトラス社製キセノンウエザーメータを用い、難燃性測定用テストピースを用い、照射強度0.30W/m2 、ブラックパネル温度63℃、湿度50%RHで300時間照射後のテストピ−スの色相差ΔE*abを、日本電色工業社製Σ80で測定し、未暴露サンプルとの差で表した。
◎:ΔE*ab≦3.0。
○:ΔE*ab≦5.0。
△:ΔE*ab≦10.0。
×:ΔE*ab≧10.0。
【0040】
密着性試験:金属製熱ロールの第一ロールを200℃、第二ロールを60℃にそれぞれ設定し、試験片を第一ロールに3分間軽く圧着溶融後、3分間作動させた後に、試験片を引き剥がし、ロールへの付着状態を観察した。評価結果は下記の様に表記した。
○:ロールに付着しない。
△:容易にロールより剥がれる。
×:ロールに付着して剥がれない。
【0041】

【0042】
難燃性樹脂組成物の製造
【0043】
ゴム変性スチレン系樹脂(A1単独/乃至A2併用)、難燃助剤(C)、ソジウムアルミノシリケートとA型ゼオライトの混合物(E1)、エチレンビスステアリン酸アマイド(E2)、ポリテトラフルオロエチレン(E3)、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤とアミン系耐光安定剤の混合物(E4)、及び無機系着色剤(E5)を表2に示す配合比率にて、ミキサー型混合機で予備混合後、二軸押出機に定量供給し溶融混練り後、更に同押出機の途中よりハロゲン含有難燃化剤(B1〜B5)、及び(C)を表2に示す配合比率で定量供給し難燃性樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の難燃性、及び評価特性を表2に示す。
【0044】
二軸押出機((株)神戸製鋼所製H−KTX30XHT、スクリュー径Φ30mm、L/D=46.8)の運転条件は下記の通り。
(1)
シリンダー設定温度:180℃(搬送部位)〜200℃(混練り〜計量部位)
(2) スクリュー回転数:450rpm
(3)
押出速度:50kg/h
(4)
樹脂温度:240〜250℃
【0045】
実施例1〜4
ハロゲン化エポキシ樹脂の末端をメタノールで封止した難燃化剤(B3)とエチレンビステトラブロモフタルイミド難燃化剤との併用系。実施例4は難燃化剤の分子量Mnを替えた(B4)とエチレンビステトラブロモフタルイミド難燃化剤との併用系。
【0046】
参考例1〜2
ハロゲン化エポキシ樹脂の末端をメタノールで封止した難燃化剤(B5)単独、及び難燃化剤(B3)とエチレンビステトラブロモフタルイミド難燃化剤の併用系。
【0047】
比較例1〜2
ハロゲン化エポキシ樹脂の末端をトリブロモフェノールで封止した難燃化剤(B1)単独/乃至エチレンビステトラブロモフタルイミド難燃化剤の併用系。
【0048】
比較例3〜5
ハロゲン化エポキシ樹脂の末端未封止の難燃化剤(B2)とエチレンビステトラブロモフタルイミド難燃化剤の併用系。
【0049】
比較例1、2に係わる樹脂組成物は、末端をトリブロモフェノールで封止した難燃化剤(B1)を配合することにより耐金属密着性の改善が認められるが、耐光性ΔE*abが5.0を超えており、十分な耐光性が得られていない。
比較例3〜5の末端未封止の難燃化剤(B2)配合系は耐光性ΔE*abが3.0以下と十分な耐光性は得られるが耐金属密着性が劣るため経時によるコンタミ・ゲル等の発生懸念がある。また、難燃助剤を10質量部添加した配合系では難燃性の低下(グローイング)が認められる。
一方、末端をメタノールで封止した難燃化剤(B3、B4)とエチレンビステトラブロモフタルイミド難燃化剤と併用配合した実施例1〜4は高度な難燃性を有し、ΔE*ab3.0以下の優れた耐光レベルを達成。更に、耐金属密着性も改善されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム変性スチレン系樹脂(A)100質量部に対し、(B)ハロゲン含有芳香族ジオールのエーテル誘導体7〜20質量部、一般式(1)で表される(C)ハロゲン化ビスイミド難燃化剤を0.1〜15質量部、(D)難燃化助剤を1〜8質量部を配合してなり、かつ上記(B)、(C)の合計が17〜25質量部であることを特徴とするスチレン系難燃樹脂組成物。
【化1】

【請求項2】
難燃化剤(B)がハロゲン化エポキシ樹脂の末端エポキシ基を短鎖モノアルコールで封鎖された構造を有するエポキシ樹脂、難燃化剤(C)がエチレンビステトラブロモフタルイミド、難燃化助剤(D)が三酸化アンチモンである事を特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項3】
難燃化剤(B)が、平均分子量(Mn)1,000〜10,000のものである請求項1、2記載の組成物。
【請求項4】
難燃化剤(B)のエポキシ基の20〜100%が、炭素数8個以下の短鎖モノアルコールによって封止された構造を有するものである請求項1、2、3、記載の組成物。
【請求項5】
請求項1〜4記載の組成物からなる事を特徴とするスチレン系難燃樹脂成形体。

【公開番号】特開2006−199925(P2006−199925A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−302993(P2005−302993)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(399051593)東洋スチレン株式会社 (37)
【Fターム(参考)】