説明

難燃性発泡合成樹脂材およびその成型方法

【課題】ポリウレタン樹脂を主成分とする発泡合成樹脂材において、その組成に工夫を加えることにより、水酸化アルミニウムを大量に加えなくても高難燃性が得られるようになる点に着目して、十分な難燃性を確保しながら発泡による断熱性の向上も図れるようにした、難燃性発泡合成樹脂材およびその成型方法を提供する。
【解決手段】難燃性発泡合成樹脂材が、重量割合として、ポリウレタン樹脂100に対し、水酸化アルミニウム5〜30,被覆型ポリ燐酸アンモニウム5〜30および黒鉛2〜5を含んでおり、要すればペンタエリスリトールが1〜5の重量割合で含まれる。そして、成型加工に際しては,発泡剤(重量割合1〜5)を加えて、建築材などが造形される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家屋等の建築物の壁部に断熱材として施工するのに適した発泡合成樹脂材およびその成型方法に関し、特に火災発生時に燃えにくい特性を発揮できるようにした難燃性発泡合成樹脂材およびその成型方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建築物の壁部内面には、図1に示すように、複数の種類の液体を混合させるスプレーガン1を用いて、液状合成樹脂材と発泡剤との混合物を吹き付けて硬化させることにより、発泡合成樹脂材の断熱層2を形成することが行われている。
そして、上記合成樹脂材としてはポリウレタン樹脂が用いられ、これに水酸化アルミニウムおよび膨張黒鉛と、リン系難燃剤とを含ませた組成とすることにより、防火のための難燃性が得られるように配慮されている。
しかしながら、上述のような組成では、高難燃性の基準を満たすために大量の水酸化アルミニウムを添加しなければならず、これに伴い混合時に良好な発泡が行われなくなって、本来必要とされる断熱性の確保が困難になるという不具合がある。
また、難燃性の建築材や造型物の製作に際しても、難燃性の確保と発泡による軽量化のために、同様の問題点を生じている。
【特許文献1】特開2005−120646号公報
【特許文献2】特開2006−83208号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、ポリウレタン樹脂を主成分とする発泡合成樹脂材において、その組成に工夫を加えることにより、水酸化アルミニウムを大量に加えなくても高難燃性が得られるようになる点に着目して、十分な難燃性を確保しながら発泡による断熱性の向上も図れるようにした、難燃性発泡合成樹脂材およびその成型方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前述の課題を解決するため、本発明の難燃性発泡合成樹脂材は、ポリウレタン樹脂を主成分として、水酸化アルミニウムが含まれるとともに、被覆型ポリ燐酸アンモニウムと加熱時に膨張する黒鉛とが含まれていることを特徴としている。
【0005】
また、本発明の難燃性発泡合成樹脂材は、上記ポリウレタン樹脂に対し、上記の水酸化アルミニウム,被覆型ポリ燐酸アンモニウムおよび黒鉛が、次の重量割合で含まれていることを特徴としている。
ポリウレタン樹脂 100
水酸化アルミニウム 5〜30
被覆型ポリ燐酸アンモニウム 5〜30
黒鉛 2〜5
【0006】
また、本発明の難燃性発泡合成樹脂材は、請求項2に記載のものにおいて、さらにペンタエリスリトールが1〜5の重量割合で含まれていることを特徴としている。
【0007】
さらに、本発明の難燃性発泡合成樹脂材の成型方法は、ポリウレタン樹脂(重量割合100)に対し、水酸化アルミニウムの粉末(重量割合5〜30)と、被覆型ポリ燐酸アンモニウムの粉末(重量割合5〜30)と、加熱時に膨張する黒鉛の粉末(重量割合2〜5)とを配合するとともに、発泡剤(重量割合1〜5)を加えて発泡硬化させることを特徴としている。
【0008】
また、本発明の難燃性発泡合成樹脂材の成型方法は、請求項4に記載の方法において、さらにペンタエリスリトールを1〜5の重量割合で配合して発泡硬化させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
上述の本発明の難燃性発泡合成樹脂材では、ポリウレタン樹脂を主成分とした発泡合成樹脂材において、水酸化アルミニウムが含まれるとともに、被覆型ポリ燐酸アンモニウムと加熱時に膨張する黒鉛とが含まれているので、高度の難燃性を得ることが可能となる。
【0010】
そして、上記難燃性発泡合成樹脂材が、重量割合で、ポリウレタン樹脂100に対し、水酸化アルミニウム5〜30,被覆型ポリ燐酸アンモニウム5〜30および黒鉛2〜5を含むことにより、著しく高い難燃性が得られるようになる。
【0011】
さらに、上記難燃性発泡合成樹脂材が、ポリウレタン樹脂に対し上述の重量割合で含まれる水酸化アルミニウム,被覆型ポリ燐酸アンモニウムおよび黒鉛のほかに、ペンタエリスリトールを1〜5の重量割合で含むことにより、その難燃性が一層高められるようになる。
【0012】
また、本発明の難燃性発泡合成樹脂材の成型方法では、ポリウレタン樹脂(重量割合100)に対し、水酸化アルミニウムの粉末(重量割合5〜30)と、被覆型ポリ燐酸アンモニウムの粉末(重量割合5〜30)と、加熱時に膨張する黒鉛の粉末(重量割合2〜5)とを配合するとともに、発泡剤(重量割合1〜5)を加えて発泡硬化させることにより、素材内における十分な微粒発泡が適切に行われるようになって、高質の難燃性発泡合成樹脂材の成型加工が行われるようになる。
【0013】
さらに、上述の難燃性発泡合成樹脂材の成型方法において、その成分配合の際に、難燃性を助勢するためのペンタエリスリトールを1〜5の重量割合で付加して発泡硬化を行わせることにより、さらに高度の難燃性を有する発泡合成樹脂材の成型加工が可能になる。
【0014】
このようにして、本発明の難燃性発泡合成樹脂材およびその成型方法によれば、建築物の施工現場での複数液混合型スプレーガンによる断熱材の装着のための工事や、不燃性の建築材,造形物等の成型加工が、適切に行われるようになる利点が得られる。
【実施例】
【0015】
本実施例の難燃性発泡合成樹脂材は、ポリウレタン樹脂を主成分として、水酸化アルミニウムが含まれるとともに、被覆型ポリ燐酸アンモニウムと加熱時に膨張する黒鉛とが含まれており、その組成の重量割合において、ポリウレタン樹脂100に対し、水酸化アルミニウム5〜30、被覆型ポリ燐酸アンモニウム5〜30および黒鉛2〜5となっている。
そして、要すれば、さらにペンタエリスリトールが1〜5の重量割合で含まれる。
【0016】
また、図3に示すような建築材3の成型加工に際しては、ポリウレタン樹脂(重量割合100)に対し、水酸化アルミニウムの粉末(重量割合5〜30)と、被覆型ポリ燐酸アンモニウムの粉末(重量割合5〜30)と、加熱時に膨張する黒鉛の粉末(重量割合2〜5)とを配合するとともに、発泡剤(重量割合1〜5)を加えて発泡硬化させることが行われる。
【0017】
その際、要すれば、さらにペンタエリスリトールを1〜5の重量割合で配合して発泡硬化させることが行われる。
【0018】
上述の本実施例の難燃性発泡合成樹脂材では、ポリウレタン樹脂を主成分とした発泡合成樹脂材において、水酸化アルミニウムが含まれるとともに、被覆型ポリ燐酸アンモニウムと加熱時に膨張する黒鉛とが含まれているので、高度の難燃性を得ることが可能となる。
【0019】
そして、上記難燃性発泡合成樹脂材が、重量割合で、ポリウレタン樹脂100に対し、水酸化アルミニウム5〜30,被覆型ポリ燐酸アンモニウム5〜30および黒鉛2〜5を含むことにより、著しく高い難燃性が得られるようになる。
【0020】
さらに、難燃性発泡合成樹脂材が、ポリウレタン樹脂に対し上述の重量割合で含まれる水酸化アルミニウム,被覆型ポリ燐酸アンモニウムおよび黒鉛のほかに、ペンタエリスリトールを1〜5の重量割合で含むことにより、その難燃性が一層高められるようになる。
【0021】
また、本発明の難燃性発泡合成樹脂材の成型方法では、ポリウレタン樹脂(重量割合100)に対し、水酸化アルミニウムの粉末(重量割合5〜30)と、被覆型ポリ燐酸アンモニウムの粉末(重量割合5〜30)と、加熱時に膨張する黒鉛の粉末(重量割合2〜5)とを配合するとともに、発泡剤(重量割合1〜5)を加えて発泡硬化させることにより、素材内における十分な微粒発泡が適切に行われるようになって、高質の難燃性発泡合成樹脂材の成型加工が行われるようになる。
【0022】
さらに、上述の難燃性発泡合成樹脂材の成型方法において、その成分配合の際に、難燃性を助勢するためのペンタエリスリトールを1〜5の重量割合で付加して発泡硬化を行わせることにより、さらに高度の難燃性を有する発泡合成樹脂材の成型加工が可能になる。
【0023】
このようにして、本実施例の難燃性発泡合成樹脂材およびその成型方法によれば、建築物の施工現場での複数液混合型スプレーガンによる断熱材の装着のための工事や、不燃性の建築材,造形物等の成型加工が、適切に行われるようになる利点が得られる。
【0024】
なお、図2は本実施例の難燃性発泡合成樹脂材を10mm厚の平板として、表面加熱試験を実施した際の裏面温度の測定結果を示しており、十分な耐火性を実現できることが立証されている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】発泡合成樹脂材により、断熱壁を形成するための施工状況を示す説明図である。
【図2】本発明の一実施例としての耐火性発泡合成樹脂材の板材について行われた表面加熱試験における裏面温度の測定結果を示すグラフである。
【図3】難燃性発泡合成樹脂材を用いて成型した型材を部分的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0026】
1 複数液混合型スプレーガン
2 断熱層
3 建築材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン樹脂を主成分として、水酸化アルミニウムが含まれるとともに、被覆型ポリ燐酸アンモニウムと加熱時に膨張する黒鉛とが含まれていることを特徴とする、難燃性発泡合成樹脂材。
【請求項2】
上記ポリウレタン樹脂に対し、上記の水酸化アルミニウム,被覆型ポリ燐酸アンモニウムおよび黒鉛が、次の重量割合で含まれていることを特徴とする、請求項1に記載の難燃性発泡合成樹脂材。
ポリウレタン樹脂 100
水酸化アルミニウム 5〜30
被覆型ポリ燐酸アンモニウム 5〜30
黒鉛 2〜5
【請求項3】
請求項2に記載の難燃性発泡合成樹脂材において、さらにペンタエリスリトールが1〜5の重量割合で含まれていることを特徴とする、難燃性発泡合成樹脂材。
【請求項4】
ポリウレタン樹脂(重量割合100)に対し、水酸化アルミニウムの粉末(重量割合5〜30)と、被覆型ポリ燐酸アンモニウムの粉末(重量割合5〜30)と、加熱時に膨張する黒鉛の粉末(重量割合2〜5)とを配合するとともに、発泡剤(重量割合1〜5)を加えて発泡硬化させることを特徴とする、難燃性発泡合成樹脂材の成型方法。
【請求項5】
請求項4に記載の難燃性発泡合成樹脂材の成型方法において、さらにペンタエリスリトールを1〜5の重量割合で配合して発泡硬化させることを特徴とする、難燃性発泡合成樹脂材の成型方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−167326(P2009−167326A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−8405(P2008−8405)
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(507421854)株式会社 ジェリコ (1)
【Fターム(参考)】