説明

難燃性組成物及び電線

【課題】燃焼時における有害ガスの発生や廃棄時における有害物質の溶出がなく、優れた機械的特性及び電気特性と、UL VW−1に代表される高度の難燃性を兼ね備えた難燃性組成物と、この難燃性組成物を使用した電線を提供すること。
【解決手段】オレフィン系ポリマーと金属水和物の混合物100重量部と、酸で変性されたポリオレフィン0.5〜4重量部と、ウレア樹脂粉末1〜45重量部と、を混合した難燃性組成物。上記ウレア樹脂粉末の粒径が0.1μm〜5μmである難燃性組成物。上記オレフィン系ポリマーと金属水和物の混合物100重量部に対し、着色剤0.1〜3.0重量部を更に混合した難燃性組成物。上記難燃性組成物からなる被覆を備えている電線。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電線の被覆、絶縁チューブの材料として好適な難燃性組成物と、この難燃性組成物を被覆した電線に係り、特に、燃焼時における有害ガスの発生や廃棄時における有害物質の溶出がなく、優れた機械的特性及び電気特性と、UL VW−1に代表される高度の難燃性を兼ね備えたものに関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィン系ポリマーは、優れた機械的特性、耐熱老化性、電気特性を有し、安価で加工性も良いことから、従来から電線の絶縁体又はシース材、絶縁チューブの材料として広く用いられている。しかしながら、オレフィン系ポリマーはそれ自体が可燃性物質であるため、電気・電子機器の内部及び外部配線及び自動車用ハーネスへの用途には、安全性、防火性の問題から難燃性を付与する必要がある。その方法として、ハロゲン系難燃剤等を混和する方法が広く採用されてきたが、これらは燃焼時に有害なハロゲン系ガスを多量に発生するため、周囲の電子部品への腐食性、人体への有毒性、ダイオキシン類発生の可能性が問題となっている。このような問題から、近年、燃焼時にハロゲン系ガスを発生する心配の無いノンハロゲン難燃性組成物よりなる電線、ケーブル、絶縁チューブが要望されており、難燃剤として水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムのような無機水和物を混和する方法が提案されている。
【0003】
ここで、電気・電子機器用の電線、絶縁チューブには、火災に対する安全性からUL758中の垂直難燃性規格VW−1に代表される非常に厳しい難燃性が要求されると同時に、破断時の伸び150%以上、強度10MPa以上の機械的特性が一般に要求される。しかしながら、上記のようなオレフィン系ポリマーに金属水和物を混和する方法では、多量の金属水和物を混和させなければ高度な難燃性を得ることはできない。そのために、十分な難燃性が得ようとして多量の金属水和物を混和すると、オレフィン系ポリマーが本来有する優れた機械的特性を大幅に低下させてしまうという新たな問題を引き起こしてしまう。
【0004】
これらの問題を解決するために、難燃効率を高め、金属水和物の配合量を減らすことができる難燃助剤の検討が続けられている。例えば、金属水和物に難燃助剤としてリン系難燃剤を併用する方法は固層におけるポリマーの脱水炭化作用、断熱兼分解ガス遮断層(チャー)の形成作用に加え、気層において炭化水素のラジカル酸化反応を停止させる作用があるため、優れた難燃効果が見られる(例えば、特許文献1参照)。又、燃焼時における断熱遮断層の形成を難燃機構に取り入れる方法として、ポリオレフィン系樹脂に対し、金属水和物と低融点ガラスを併用することも考えられている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開昭60−88048号公報
【特許文献2】特開平11−181163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の組成物の場合、最終廃棄物から水系へのリン分溶出による湖沼の富栄養化が指摘されているとともに、燃焼時に有毒なリン系ガスを発生させるという問題がある。更に、赤リンを配合した場合には赤リンによる発色のため、白色を始めとする任意の色に着色できない問題がある。又、特許文献2記載の組成物の場合、難燃性を向上させる効果が十分なものではない。そのため、電気・電子機器用の電線、絶縁チューブへの用途としてUL VW−1に合格するまでの難燃性を得ようとすると、金属水和物や低融点ガラスを多量に混和させる必要があるため、機械的特性が著しく低下するという問題がある。
【0007】
本発明は、このような点に基づいてなされたもので、その目的とするところは、燃焼時における有害ガスの発生や廃棄時における有害物質の溶出がなく、優れた機械的特性及び電気特性と、UL VW−1に代表される高度の難燃性を兼ね備えた難燃性組成物と、この難燃性組成物を使用した電線を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するべく本発明の請求項1による難燃性組成物は、オレフィン系ポリマーと金属水和物の混合物100重量部と、酸で変性されたポリオレフィン0.5〜4重量部と、ウレア樹脂粉末1〜45重量部と、を混合したことを特徴とするものである。
又、請求項2による難燃性組成物は、請求項1記載の難燃性組成物において、上記ウレア樹脂粉末の粒径が0.1μm〜5μmであることを特徴とするものである。
又、請求項3による難燃性組成物は、請求項1又は請求項2記載の難燃性組成物において、上記オレフィン系ポリマーと金属水和物の混合物100重量部に対し、着色剤0.1〜3.0重量部を更に混合したことを特徴とするものである。
又、請求項4による電線は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の難燃性組成物からなる被覆を備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明による難燃性組成物は、オレフィン系ポリマーと金属水和物の混合物に対し、ウレア樹脂粉末を難燃助剤として特定量配合することで、機械的特性や電気的特性を低下させることなく、難燃効率が高めることができ、VW−1規格に合格する高度な難燃性を得ることができる。そのため、燃焼時における有害ガスの発生や廃棄時における有害物質の溶出がなく、優れた機械的特性及び電気特性と、UL VW−1に代表される高度の難燃性を兼ね備えた難燃性組成物と、この難燃性組成物を使用した電線を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の難燃性組成物を構成する各成分について説明する。
【0011】
オレフィン系ポリマーの種類
本発明で使用されるオレフィン系ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンや、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレンプロピレンゴムなどが挙げられる。αオレフィンとしては、1−ヘキセン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンなどが挙げられる。これらは単独で用いても、複数を混合して用いても構わない。これらの中でも、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体などは、分子中に酸素を含有している点で難燃性に優れるともに、難燃剤などの固形配合物を多量に配合しても、機械的的特性の低下が少ない点で好ましい。
【0012】
金属水和物の配合量
本発明の組成物において、金属水和物の配合量は、オレフィン系ポリマー100重量部に対して130〜250重量部であることが好ましく、より好ましくは150〜225重量部とすることが考えられる。かかる金属水和物は熱分解時の吸熱作用、水蒸気発生による可燃性ガス及び酸素の希釈作用、あるいはポリマーの炭化促進、断熱層の形成作用により、高度な難燃性を付与することができる。金属水和物の含量が130重量部未満では、目的とする十分な難燃性を得ることが困難となる。一方、250重量部を越えると優れた機械的強度(伸び)を得ることが困難となり、又、押出加工性も良好なものではなくなる。
【0013】
金属水和物の種類
金属水和物としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、ハイドロタルサイト、ドーソナイト、アルミン酸カルシウム、硼酸亜鉛、硼砂、ヒドロキシ錫酸亜鉛などが挙げられ、単独ないしは2種以上を組み合わせて使用できる。これらのうちでは、ポリマーの分解温度付近で結晶水を放出し、吸熱量の大きい水酸化マグネシウム及び/又は水酸化アルミニウムが好ましい。金属水和物の粒径としては難燃性、混練り性、押出加工性、機械的強度及び伸びの点で0.1〜30μmが好ましく、0.3〜3μmのものが更に好ましい。金属水和物の粒径が30μm以上では機械的強度に影響が出るおそれがあり、0.1μm以下では溶融時の粘度が上昇し、押出加工性に影響が出るおそれがある。
【0014】
金属水和物への表面処理
これらの金属水和物は、例えば、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸などの高級脂肪酸、又はこれらのアルミニウム、マグネシウム、カルシウム塩などの高級脂肪酸金属塩、シランカップリング剤やチタネート系表面処理剤によって表面処理することができる。これら表面処理剤はエチレン−不飽和エステル共重合体と金属水和物の親和性をよくし、混練り性及び分散性をよくするために好ましく用いられる。なかでもシランカップリング剤は難燃組成物に優れた機械的強度を与え、高級脂肪酸及び高級脂肪酸塩に比べてより優れた難燃性を与える点で好ましく使用できる。これら表面処理剤は1種単独でも、2種以上を併用して使用してもよい。
【0015】
酸で変性されたポリオレフィンの配合量
本発明で使用される酸で変性されたポリオレフィンの配合量はオレフィン系ポリマーと金属水和物の混合物100重量部に対して0.5〜4重量部、好ましくは1〜3重量部である。酸で変性されたポリオレフィンの配合量が0.5重量部未満では、高温下での老化に耐えられなくなり、特に、伸び残率の低下が生じることになる。又、4重量部を越すと機械的強度(伸び)の低下が生じ実用に耐えない。
【0016】
酸で変性されたポリオレフィンの種類
本発明で使用される酸で変性されたポリオレフィンは、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状ポリエチレン(LLDPE)等のポリエチレンやエチレンアクリル酸エステル共重合体(EMA)、エチレンエチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレンブチルアクリレート共重合体(EBA)、エチレン酢酸ビニル共重合体等のエチレン系共重合体などに、酸として不飽和カルボン酸やその誘導体を反応させて変性させたものを使用することができる。不飽和カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などが挙げられる。不飽和カルボン酸の誘導体としては、例えば、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステル、無水マレイン酸、イタコン酸モノエステル、イタコン酸ジエステル、無水イタコン酸、フマル酸モノエステル、フマル酸ジエステル、無水フマル酸などが挙げられる。これらの中でも、好ましくは無水マレイン酸で編成されたポリオレフィンが挙げられ、更に好ましくはエチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸の三元共重合体が挙げられる。
【0017】
ウレア樹脂の種類
本発明で使用されるウレア樹脂としては、例えば、尿素とアルデヒドからなる反応生成物、尿素誘導体とアルデヒドからなる反応生成物、尿素とメラミンとアルデヒドからなる反応生成物、尿素誘導体とメラミンとアルデヒドからなる反応生成物などが使用できる。尿素誘導体としては、例えば、エチレン尿素、エチレンチオ尿素などが挙げられる。上記に加え、例えば、アルコールで変性したウレア樹脂を使用することもできる。変性するアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノールなどが挙げられる。
【0018】
ウレア樹脂粉末の配合量
本発明において、ウレア樹脂粉末の配合量は、オレフィン系ポリマーと金属水和物の混合物100重量部に対して1〜45重量部、好ましくは2〜10重量部、特に好ましくは2〜5重量部である。かかるウレア樹脂粉末は、燃焼時において、熱分解時により不燃性ガスを発生し、炎近傍の酸素を希釈することにより高度な難燃性を付与するものと考えられる。ウレア樹脂粉末の配合量が1重量部未満では目的とする十分な難燃性が得られず、一方、45重量部を越えると機械的強度(伸び)が実用に耐えない。
【0019】
ウレア樹脂粉末の粒径
本発明におけるウレア樹脂粉末の粒径は0.1〜5μmであることが好ましい。ここで、複数個のウレア樹脂粉末(一次粒子)が集合して二次粒子を形成している場合は、この二次粒子の粒径が0.5〜5μmであることが好ましい。粒径が0.1μm未満だと混練の際に粒子同士が凝集することにより、ポリオレフィン系ポリマーへの分散が図れないために、優れた機械的強度(伸び)を得ることが困難となる。又、5μmを越すとポリオレフィン系ポリマーとの相溶性が悪くなるため、優れた機械的強度(伸び)を得ることが困難となる。
【0020】
着色剤の種類
本発明で使用される着色剤には無機系の染料、顔料が使用できる。又、ハロゲンを含まない有機系の染料、顔料が使用できる。無機系の着色剤には酸化チタン、カーボンブラックなどが挙げられる。有機系の着色剤にはモノアゾ系、ジスアゾ系、キナクリドン、フタロシアニンブルー、などが挙げられる。これらの中でも、モノアゾ系、キナクリドン、カーボンブラックは、組成物に色相を加えるだけでなく、得られる組成物により高度な難燃性を付与させることができるため好ましい。
【0021】
着色剤の配合量
着色剤は、目的とする色相が得られるまで適宜に配合量を調整して配合すればよいが、オレフィン系ポリマーと金属水和物の混合物100重量部に対して0.1〜3.0重量部の範囲にて配合することが好ましい。着色剤の配合量が0.1重量部未満であると、着色剤による難燃性付与の効果が見込めない。又、3.0重量部を超えていると、着色剤が凝集しやすくなるために、優れた機械的強度(伸び)を得ることが困難となる。
【0022】
その他の添加剤
本発明の難燃組成物には、難燃性、機械的強度等の特性を損なわない範囲内で一般的に使用される各種の添加剤、例えば、老化防止剤、金属不活性化剤、滑剤、充填剤等を適宜添加することができる。老化防止剤としては着色、汚染性の心配のない老化防止剤、例えば、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピネート〕、オクタデシル−3−(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4−8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンの様なフェノール系酸化防止剤、2−メルカプトベンゾイミダゾール及びその亜鉛塩、2−メルカプトメチルベンゾイミダゾールなどのベンゾイミダゾール系老化防止剤などが挙げられる。
【0023】
金属不活性化剤としては、例えば、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、N,N’−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジンなどがあげられる。滑剤としてはパラフィン、炭化水素樹脂、脂肪酸、金属石鹸、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、高級アルコールなどが挙げられる。
【0024】
架橋方法について
本発明の難燃性組成物は架橋を行うことにより、難燃性、機械的強度、耐熱性を向上させることができる。架橋の方法については特に規定はしないが、有機過酸化物を用いた化学架橋法や放射線エネルギーを用いた電子線架橋法を利用することができる。架橋方法として有機過酸化物による化学架橋法を利用する場合、有機過酸化物としてはジクミルパーオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼンなどが架橋効率、分解開始温度の点で好ましい。電子線架橋を利用する場合、電子線の照射量は5〜20Mradが好ましい。5Mrad未満の照射量では十分な架橋度が得られず、難燃性、機械的強度、耐熱性が不十分となる。20Mrad以上では破断時の伸びが低下し、実用に耐えない。難燃性組成物には架橋効率を高める目的でエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレンジメタクリレート、メタクリル酸亜鉛、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートなどの架橋助剤を添加しても良い。
【実施例】
【0025】
以下、本発明の実施例を比較例と併せて説明する。表4に示した配合材料を表1〜3に示した配合部数で配合して、80〜120℃のオープンロールにより混練りし、得られた難燃性組成物を汎用の電線用押出機を使用して、導体径0.48mmのスズメッキ軟銅撚り線に0.27mmの厚さで被覆した。更にこの被覆電線を8Mradの照射量電子線照射し、架橋を行った。
【0026】
このようにして得られた電線を試料として下記の評価方法により評価した。
その結果を表1〜3に併せて示す。尚、表1〜3中の各成分量は重量部単位である。
【0027】
評価方法は以下の通りである。
引張試験:
UL758.14に準拠して評価を行った。電線より取り出した管状の試験片を引張速度500mm/minで引張り、破断した際の強度と伸びを測定した。強度10.3MPa以上、伸び150%以上のものを合格とした。
耐熱試験:
UL758.14に準拠して評価を行った。電線より取り出した管状の試験片について136℃の雰囲気中にて168時間加熱保持した後、引張り速度500mm/minで引張り、破断した際の強度と伸びを測定した。この測定結果を加熱試験前の強度、伸びの値を除して残率を計算した。強度残率70%以上、伸び残率50%以上のものを合格とした。
難燃性試験:
UL 758.41(VW−1燃焼試験)に準拠して評価を行った。各サンプル10本について評価を行い、5回の接炎後、フラッグの3分の1が燃焼しなかったサンプルが8本以上のものを合格とした。
絶縁抵抗:
JIS C 3005に準拠して評価を行った。水中にて1時間浸漬した後、100Vの直流電圧を加え絶縁抵抗の測定を行った。絶縁抵抗値が150MΩ・km以上のものを合格とした。
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】

【0030】
【表3】

【0031】
【表4】

【0032】
表1から明らかなように、本発明の実施例1〜13においては、いずれもULVW−1の難燃性試験に合格するとともに、引張強度が10.3MPa以上、伸びが150%以上と良好な機械的特性を示し、且つ、良好な耐熱性、電気的特性を示している。
【0033】
これに対し、比較例1は酸で変性されたポリオレフィンの添加量が少ないために、初期の伸びは大きくなるものの耐熱後の伸びが低下してしまい、結果として伸び残率が規格値より低下している。一方、比較例2は酸で変性されたポリオレフィンの添加量が多すぎるために、初期の伸びが低下してしまい、規格値より低い値を示している。
【0034】
比較例3はウレア樹脂の添加量が少ないために、UL VW−1に合格するほどの難燃性は得られていない。一方、比較例4はウレア樹脂の添加量が多すぎるために、初期の伸びが低下してしまい、規格値より低い値を示している。
【0035】
実施例6はウレア樹脂の粒径が0.05μmと細かいために混練時に凝集を生じてしまい、実使用上問題ない程度だが実施例1,7,8と比較してやや初期の伸びが低下している。実施例9はウレア樹脂の粒径が7μmと大きいために、実使用上問題ない程度だが実施例1,7,8と比較してやや初期の伸びが低下している。
【0036】
実施例10は着色剤の添加がないために、実使用上問題ない程度だが実施例1,11,12と比較して難燃性が低下している。実施例13は着色剤の添加量が多いために、実使用上問題ない程度だが実施例1,11,12と比較してやや初期の伸びが低下している。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上詳述したように本発明によれば、燃焼時における有害ガスの発生や廃棄時における有害物質の溶出がなく、優れた機械的特性及び電気特性と、UL VW−1に代表される高度の難燃性を兼ね備えた難燃性組成物と、この難燃性組成物を使用した電線を得ることができる。その為、この難燃性組成物は、電気・電子機器用の配線や自動車用ハーネスの絶縁体などとして好適である。又、使用用途としてはこれらに限定されることはなく、例えば、コード状ヒータの絶縁被覆材料、チューブの構成材料などとしても使用可能である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系ポリマーと金属水和物の混合物100重量部と、酸で変性されたポリオレフィン0.5〜4重量部と、ウレア樹脂粉末1〜45重量部と、を混合した難燃性組成物
【請求項2】
上記ウレア樹脂粉末の粒径が0.1μm〜5μmである請求項1の難燃性組成物。
【請求項3】
上記オレフィン系ポリマーと金属水和物の混合物100重量部に対し、着色剤0.1〜3.0重量部を更に混合した請求項1又は請求項2記載の難燃性組成物。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の難燃性組成物からなる被覆を備えている電線。

【公開番号】特開2006−306915(P2006−306915A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−127764(P2005−127764)
【出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【出願人】(000129529)株式会社クラベ (125)
【Fターム(参考)】