説明

雨戸装置

【課題】建物の美観を損ねないようにすることができる雨戸装置を提供する。
【解決手段】建物外壁1に形成された開口部2の周囲にガイドレール3を設ける。雨戸4をガイドレール3に沿ってスライド移動自在に取り付けると共に雨戸4が開口部2に嵌り込んで周囲の建物外壁1と面一になる状態と開口部2から屋外側に突出する状態との間で移動自在に形成する。開口部2の周囲に配設される建物外壁1の外装材5と同等の外観を有する外装材10を用いて雨戸4の屋外面を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風雨・寒気・盗難などを防ぐために、建物の縁側の開口部分や窓や扉の屋外側に配設される雨戸装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
雨戸装置としては雨戸と戸袋とレールとを備えたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。雨戸はレールに保持されており、戸袋に収納される状態と窓の屋外側に位置する状態との間でスライド移動自在に形成されている。
【0003】
この種の雨戸装置には木製、アルミニウム製、スチール製、樹脂製のものがあるが、建物外壁との素材が異なるために、住宅などの建物の美観(特にデザイン性)が低下することがあった。また、雨戸装置には、引き戸、折り戸、シャッター、スライディングなどの各種タイプがあるが、いずれの場合も雨戸を収納するための戸袋やレールが建物外壁の屋外側に常時(雨戸を閉めた状態でも開けた状態でも)残っているために、これによっても建物の美観を損なうという問題があった。
【特許文献1】特開2000−27452号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、建物の美観を損ねないようにすることができる雨戸装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に記載の雨戸装置は、建物外壁1に形成された開口部2の周囲にガイドレール3を設け、雨戸4をガイドレール3に沿ってスライド移動自在に取り付けると共に雨戸4が開口部2に嵌り込んで周囲の建物外壁1と面一になる状態と開口部2から屋外側に突出する状態との間で移動自在に形成し、開口部2の周囲に配設される建物外壁1の外装材5と同等の外観を有する外装材10を用いて雨戸4の屋外面を形成して成ることを特徴とするものである。
【0006】
本発明の請求項2に記載の雨戸装置は、請求項1において、ガイドレール3を建物外壁1の目地部6に設けて成ることを特徴とするものである。
【0007】
本発明の請求項3に記載の雨戸装置は、請求項1又は2において、開口部2の上側に設けたガイドレール3を、建物外壁1の屋外面に化粧幕板7を取り付けるための取付部材8として用いて成ることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の請求項4に記載の雨戸装置は、請求項1乃至3のいずれか一項において、開口部2の下側に設けたガイドレール3を、水切り部材9として用いて成ることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明では、雨戸4を開口部2に嵌め込んで閉めた状態で、建物外壁1と雨戸4との区別がつきにくくなり、しかも、建物外壁1の屋外面に戸袋やシャッターボックスなどの雨戸4の収納部分を設ける必要がなく、建物外壁1に外観の異なる部分や無駄な部材による出っ張り部分などの違和感が生じる部分が無くなって、建物の美観を損ねないようにすることができるものである。
【0010】
請求項2の発明では、ガイドレール3を目立たないようにすることができ、建物の美観を損ねないようにすることができるものである。
【0011】
請求項3の発明では、ガイドレール3と取付部材8とを兼用することができ、部品点数の増加を抑えてコストアップを少なくすることができるものである。
【0012】
請求項4の発明では、ガイドレール3と水切り部材9とを兼用することができ、部品点数の増加を抑えてコストアップを少なくすることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0014】
本発明の雨戸装置は、図1に示すように、ガイドレール3と雨戸4とを備えて形成されている。
【0015】
ガイドレール3にはアッパーレール3a、ロアレール3b及びセンターレール3cの三種類ある。
【0016】
アッパーレール3aはH型鋼などを用いて形成されるものであって、図2に示すように、下方に向かって開口するガイド溝29が全長にわたって設けられている。また、アッパーレール3aは建物外壁1に形成した開口部2の上側開口縁部の全長に沿って略水平に配設されるものである。アッパーレール3aはほぼ全長にわたって直線状に形成されているが、その一端部は屋内側に向かってカーブする屈曲部20として形成されている。また、屈曲部20の途中には保持部材21が設けられている。このアッパーレール3aは化粧幕板7を建物外壁1に取り付けるための取付部材8として兼用することができる。化粧幕板7はアッパーレール3aの上面と屋外側面とを覆うように配設されており、これにより、アッパーレール3aがほぼ全長にわたって化粧幕板7で覆われて露出しなくなり、建物外壁1の美観を損ねないようにすることができる。尚、建物外壁1の開口部2の屋内側にサッシ窓などの窓40が配設されている。
【0017】
ロアレール3bは鋼板等を折り曲げて形成されるものであって、建物外壁1に形成した開口部2の下側開口縁部の全長に沿って略水平に配設されるものである。ロアレール3bはほぼ全長にわたって直線状に形成されている。このロアレール3bは水切り部材9として兼用することができる。すなわち、ロアレール3bを固定片22と、固定片22の下端から屋外側に向かって略水平に突出する支持片23と支持片23の屋外側端部から斜め下方に向かって突出する水切り片24とから形成することができる。そして、固定片22を建物の柱や梁などの構造材25に固定することによって、ロアレール3bを配設することができる。このようなロアレール3bを用いることによって、水切り片24から建物外壁1の水切りを行うことができ、防水性を高くすることができる。
【0018】
センターレール3cはC型鋼などを用いて形成されるものであって、屋外方向に向かって開口するガイド溝36が全長にわたって形成されている。また、センターレール3cは建物外壁1に形成した開口部2の側方において略水平に配設されるものである。センターレール3cの開口部2側の端部は開口部2に臨ませて開放されている。また、このセンターレール3cは建物外壁1の屋外面に形成される目地部6に嵌め込んで配設することができる。すなわち、建物外壁1は建物の柱などの構造材25の屋外側に多数枚の外装材5、5…を鉛直方向及び水平方向に並べて取り付けることによって形成することができるが、鉛直方向に隣接する外装材5、5の接続部分には目地部6が形成される。そして、この目地部6にセンターレール3cを嵌め込む(埋め込む)ことによって、センターレール3cを建物外壁1の屋外面に目立たないように配設することができ、建物外壁1の美観を損ねないようにすることができる。尚、図2中の符号37は胴縁あって、この胴縁37を介して外装材5、5…が構造材25に取り付けられている。
【0019】
雨戸4としてはサイディング材を用いることができる。すわなち、雨戸4は接続した複数枚の外装材10、10…の裏面(屋内側面)に樹脂発泡体や無機繊維材などの断熱材27を裏張りして板状に形成されるものである。ここで、建物外壁1の外装材5と雨戸4の外装材10とは同等の外観を有するものを用いることができ、好ましくは、建物外壁1の外装材5と雨戸4の外装材10とを同じ外装材で形成することができる。これにより、雨戸4が開口部2に嵌り込んだときに、建物外壁1の部分と雨戸4の部分との区別がつきにくくなり、建物外壁1の美観を損ねないようにすることができる。外装材5、10としては、例えば、セメントとパルプ繊維などを主成分とする窯業系の無機質板(セメント板)を用いることができ、その外面(屋外側面)には所望の凹凸模様や塗装による柄模様が形成されている。尚、開口部2の開口形状と雨戸4の外形形状とはほぼ同じである。
【0020】
雨戸4は上記ガイドレール3に対して水平方向にスライド移動自在に取り付けられる。雨戸4のスライド機構としては自動車のスライドドアの原理を応用することができ、これにより、雨戸4の開閉時に音が少なくなる、ガイドレール3が建物外壁1の屋外側に露出しにくくなり目立たないなどのメリットがある。
【0021】
具体的には、アッパーレール3aと雨戸4とを連結するにあたっては、図3に示すように、アッパーレール3aのガイド溝29に上側ローラー30を走行自在に設け、この上側ローラー30と雨戸4の上部とを上側連結具31で連結するようにしている。また、ロアレール3bと雨戸4とを連結するにあたっては、図4(a)に示すように、ロアレール3bの支持片23上に下側ローラー32を走行自在に設け、この下側ローラー32と雨戸4の下部とを下側連結具33で連結するようにしている。ここで、下側連結具33の屋内側端部にはローラー軸33aが突設されており、このローラー軸33aを下側ローラー32の中心に枢着している。また、下側連結具33の屋外側端部には雨戸連結軸33bが突設されており、雨戸連結軸33bが雨戸4に対して枢着されている。さらに、センターレール3cと雨戸4とを連結するにあたっては、センターレール3cのガイド溝36に中間ローラー38を走行自在に設け、この中間ローラー38と雨戸4の中央部とを中間連結具39で連結するようにしている。尚、中間連結具39及び中間ローラー38は雨戸4のセンターレール3cに近い側端部に屋内側の方に向かって突出して設けることができる。
【0022】
そして、本発明の雨戸装置で建物外壁1の開口部2を開閉するにあたっては次のようにして行う。まず、建物外壁1の開口部2を開放する場合は、雨戸4に開口部2の側方(センターレール3cの方)に向かう力を加える。これにより、上側ローラー30がアッパーレール3aを走行すると共に下側ローラー32がロアレール3bを走行し、さらに中間ローラー38がセンターレール3cを走行することになり、建物外壁1の屋外側において雨戸4がガイドレール3でガイドされながら開口部2から離れる方向に水平にスライド移動する。このようにして雨戸4を開口部2から離れる方向にスライド移動すると、建物外壁1の屋外側で開口部2の側方に雨戸4が位置して開口部2が開放された状態となる。
【0023】
建物外壁1の開口部2を閉じる場合は、雨戸4に開口部2の方に向かう力を加える。これにより、上側ローラー30がアッパーレール3aを走行すると共に下側ローラー32がロアレール3bを走行し、さらに中間ローラー38がセンターレール3cを走行することになり、雨戸4がガイドレール3でガイドされながら開口部2に近づく方向に水平にスライド移動する。このようにして雨戸4を開口部2に近づく方向にスライド移動すると、開口部2の屋外側のほぼ真正面に雨戸4が位置する状態となる。この後、さらに雨戸4をスライド移動させると、上側ローラー30がアッパーレール3aの屈曲部20に沿って走行することになり、これにより、雨戸4が徐々に屋内側へと引き込まれていく。そして、上側ローラー30が保持部材21を越えてアッパーレール3aの端部に到達すると、これとほぼ同時に開口部2に雨戸4が嵌り込むことになる(図2(b)参照)。このようにして開口部2を雨戸4で閉塞することができる。アッパーレール3aの端部に到達した上側ローラー30は保持部材21、21に係止されてその位置に保持され、所定の力を加えない限り、屈曲部20から抜け出ないようになっている。従って、雨戸4が不用意に開くのを防止することができる。また、上側ローラー30が屈曲部20以外の部分を走行しているときには、下側ローラー32と雨戸4とは下側連結具33の屋内外方向の長さ分の間隔を保っているが、上側ローラー30が屈曲部20の部分を走行し始めて雨戸4の上部が屋内側へと移動していくと、これに伴って、雨戸4の下部も屋内側に徐々に移動していく。このように雨戸4の下部が屋内側に徐々に移動していくとき、下側ローラー32と下側連結具33はローラー軸33aを中心として互いに回動し、下側連結具33と雨戸4も雨戸連結軸33bを中心として互いに回動していく。そして、上側ローラー30がアッパーレール3aの端部に到達すると、下側ローラー32もロアレール3bの端部に到達し、図4(b)に示すように、開口部2に嵌め込まれた雨戸4が下側ローラー32及びロアレール3bの上方に位置した状態となる。
【0024】
開口部2を閉めた状態の雨戸4を開けるには、雨戸4を開口部2から屋外側方向へ移動させる力を加えることによって、保持部材21による上側ローラー30の係止を解除すると共に図2(a)に示すように、雨戸4を開口部2の屋外側に移動させる。この後、開口部2から側方(センターレール3cの方)に向かって開口部2から離れる方向の力を雨戸4に加えることにより、上記と同様に雨戸4を開口部2から離れる方向に水平にスライド移動し、開口部2を開放する。
【0025】
本発明の雨戸装置では、雨戸4を開口部2に嵌め込んで閉めた状態で、建物外壁1と雨戸4との屋外面が面一となり、しかも、建物外壁1の外装材5と雨戸4の外装材10とを同等のデザインのもので形成するので、建物外壁1と雨戸4との区別がつきにくくなる。また、建物外壁1の屋外面には戸袋やシャッターボックスなどの雨戸4の収納部分を設けないので、建物外壁1に外観の異なる部分や無駄な部材による出っ張り部分などの違和感が生じる部分が無くなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示し、(a)は開口部を開放した状態を示す正面図、(b)は雨戸を閉める途中の正面図である。
【図2】同上の(a)は開口部を開放した状態を示す断面図、(b)は雨戸を閉めた状態を示す断面図である。
【図3】同上のアッパーレール、上側ローラー、上側連結具等を示す下面図である。
【図4】同上のロアレール、下側ローラー、下側連結具等を示し、(a)(b)は上面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 建物外壁
2 開口部
3 ガイドレール
4 雨戸
5 外装材
7 化粧幕板
8 取付部材
9 水切り部材
10 外装材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物外壁に形成された開口部の周囲にガイドレールを設け、雨戸をガイドレールに沿ってスライド移動自在に取り付けると共に雨戸が開口部に嵌り込んで周囲の建物外壁と面一になる状態と開口部から屋外側に突出する状態との間で移動自在に形成し、開口部の周囲に配設される建物外壁の外装材と同等の外観を有する外装材を用いて雨戸の屋外面を形成して成ることを特徴とする雨戸装置。
【請求項2】
ガイドレールを建物外壁の目地部に設けて成ることを特徴とする請求項1に記載の雨戸装置。
【請求項3】
開口部の上側に設けたガイドレールを、建物外壁の屋外面に化粧幕板を取り付けるための取付部材として用いて成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の雨戸装置。
【請求項4】
開口部の下側に設けたガイドレールを、水切り部材として用いて成ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の雨戸装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−248532(P2008−248532A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−89318(P2007−89318)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(503367376)クボタ松下電工外装株式会社 (467)
【Fターム(参考)】