説明

雨水利用システム

【課題】雨水を有効利用して建物の冷却を行う雨水利用システムを提供すること。
【解決手段】本発明では、雨水を有効利用するための雨水利用システムにおいて、建物の屋根に配設した雨水を集水するための集水具と、前記集水具で集水した雨水を冷却して貯留するために地中に埋設した貯留タンクと、前記建物の屋根に向けて散水するための散水具と、前記貯留タンクと前記散水具との間に介設したポンプと、前記ポンプを駆動するための蓄電池と、前記蓄電池に接続した太陽発電パネルとから構成することにした。また、前記太陽発電パネルを前記建物の屋根に配設するとともに、前記太陽発電パネルの表面を前記散水具で洗浄するように構成することにした。さらに、前記建物の屋根と前記貯留タンクに温度センサーをそれぞれ配設し、両温度センサーで検出された温度が所定温度差以上となった場合に前記ポンプを駆動するように構成することにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水を有効利用するための雨水利用システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、化石エネルギーの大量消費に伴って炭酸ガスの排出量が大幅に増大し、地球温暖化や環境破壊が社会問題となっている。そのため、環境にやさしいシステム作りが要求されており、その一つとして自然エネルギーを有効に利用したシステムが注目されている。
【0003】
たとえば、太陽光や雨水といった自然現象から生じる自然エネルギーを有効したシステムとしては、特許文献1に開示されているように、雨水を貯留した貯留タンクを建物内の水道設備にポンプを介して接続し、太陽発電でポンプを駆動して、貯留した雨水を建物内で有効に利用するように構成したものが知られている。
【0004】
【特許文献1】特開平9−242130号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、建物内においては、水道設備よりも冷房設備によって消費されるエネルギーのほうが大量であり、地球温暖化への影響が強いため、上記従来の雨水利用システムでは自然エネルギーの十分な利用とまではいえないものであった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、請求項1に係る本発明では、雨水を有効利用するための雨水利用システムにおいて、建物の屋根に配設した雨水を集水するための集水具と、前記集水具で集水した雨水を冷却して貯留するために地中に埋設した貯留タンクと、前記建物の屋根に向けて散水するための散水具と、前記貯留タンクと前記散水具との間に介設したポンプと、前記ポンプを駆動するための蓄電池と、前記蓄電池に接続した太陽発電パネルとから構成することにした。
【0007】
また、請求項2に係る本発明では、前記請求項1に係る本発明において、前記太陽発電パネルを前記建物の屋根に配設するとともに、前記太陽発電パネルの表面を前記散水具で洗浄するように構成することにした。
【0008】
また、請求項3に係る本発明では、前記請求項1又は請求項2に係る本発明において、前記建物の屋根と前記貯留タンクに温度センサーをそれぞれ配設し、両温度センサーで検出された温度が所定温度差以上となった場合に前記ポンプを駆動するように構成することにした。
【発明の効果】
【0009】
そして、本発明では、以下に記載する効果を奏する。
【0010】
すなわち、請求項1に係る本発明では、冷却して貯留した雨水を散水具で建物の屋根に向けて散水することで、建物の外壁温度を低下させることができ、これにより、建物の内部温度をも低下させることができ、冷房設備によるエネルギー消費を低減することができる。
【0011】
しかも、請求項1に係る本発明では、集水具と散水具とを建物の屋根に配設しているために、散水具で散水した水を集水具で集水することによって、雨水を循環利用することができ、夏場の少雨時期でも雨水利用システムを稼動することができる。
【0012】
また、請求項2に係る本発明では、太陽発電パネルを建物の屋根に配設するとともに、太陽発電パネルの表面を散水具で洗浄するようにしているために、雨水を利用して太陽発電パネルの表面を洗浄することで太陽発電パネルの清掃作業を軽減することができるとともに、表面が汚れることに起因する太陽発電パネルでの発電効率の低下を防止することができる。
【0013】
さらに、請求項3に係る本発明では、建物の屋根と貯留タンクに温度センサーをそれぞれ配設し、両温度センサーで検出された温度が所定温度差以上となった場合にポンプを駆動するようにしているために、限られた雨水をより一層有効利用して建物を冷却することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明に係る雨水利用システムの具体的な構成を図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1に示すように、本発明に係る雨水利用システム1では、建物2の屋根3の前端側に雨水を集水するための集水具4を配設している。
【0016】
この集水具4は、屋根3の前端縁に雨樋5を取付け、雨樋5の左端に集水管6の始端部を連通連結しており、この集水管6の終端部を地中に埋設した貯留タンク7に連通連結している。
【0017】
また、雨水利用システム1では、建物2の屋根3の後端側に屋根3に向けて散水するための散水具8を配設している。
【0018】
この散水具8は、屋根3の後端縁と右端にL字状の散水管9を配管しており、屋根3に設けた菜園10に向けて散水するための散水ノズル11を散水管9の先端部に形成するとともに、屋根3に向けて散水するための散水ノズル12を散水管9の中途部に形成し、さらには、屋根3に取付けた太陽発電パネル13に向けて散水するための散水ノズル14を散水管9の基端部に形成している。この散水具8は、散水管9の基端部に貯留タンク7をポンプ15を介して連通連結している。
【0019】
このように、雨水利用システム1では、建物2の屋根3に集水具4と散水具8とをそれぞれ配設するとともに、集水具4に貯留タンク7を接続し、貯留タンク7にポンプ15を接続し、ポンプ15に散水具8を接続している。
【0020】
これにより、雨水利用システム1では、集水具4で雨水を集水し、その雨水を地中に埋設した貯留タンク7で冷却しながら貯留しておき、ポンプ15を駆動することによって、散水具8から屋根3及び屋根3に設けた菜園10や太陽発電パネル13に向けて散水するようにしている。
【0021】
特に、上記雨水利用システム1では、集水具4の雨樋5と散水具8の散水ノズル12とを屋根3の前後端に対向させて配置して、散水具8の散水ノズル12から散水された雨水を集水具4の雨樋5で再び集水できるようにしており、これにより、雨水を循環して利用できるようにしている。
【0022】
また、雨水利用システム1では、屋根3に太陽発電パネル13を設置するとともに、太陽発電パネル13に蓄電池16を接続しており、この蓄電池16をコントローラ17を介してポンプ15に接続している。
【0023】
これにより、雨水利用システム1では、太陽発電パネル13で太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換して蓄電池16に蓄電し、必要に応じてコントローラ17を介して蓄電池16からポンプ15に電気エネルギーを供給してポンプ15を駆動するようにしている。
【0024】
さらに、雨水利用システム1では、屋根3の表面に温度センサー18を取付けるとともに、貯留タンク7の内部に温度センサー19を取付け、これらの温度センサー18,19をコントローラ17に接続している。
【0025】
そして、雨水利用システム1では、コントローラ17が温度センサー18,19を用いて屋根3の表面の屋根温度と貯留タンク7の内部の雨水温度とを検出し、屋根温度が雨水温度よりも所定温度以上高くなって屋根温度と雨水温度とが所定温度差以上となった場合には、コントローラ17が蓄電池16とポンプ15とを接続してポンプ15を駆動し、貯留タンク7に貯留された雨水を散水具8を用いて散水するようにしている。
【0026】
なお、雨水利用システム1では、屋根温度と雨水温度とが所定温度差以上となった場合に限られず、屋根温度が所定温度以上となった場合、雨水温度が所定温度以下となった場合、室内温度が所定温度以上となった場合、室内温度と雨水温度とが所定温度差以上となった場合などに散水するようにしてもよい。
【0027】
また、雨水利用システム1では、建物2の内部や外部に消化設備を配設し、この消化設備をポンプ15に接続して、ポンプ15を駆動することによって消火設備から消化のための放水を行えるようにすることもできる。これにより、建物2の内外での火災に備えることができる。
【0028】
以上に説明したように、上記構成の雨水利用システム1では、自然エネルギーだけを用いて雨水を冷却しながら貯留するとともに建物2の屋根3に向けて散水するようにしている。
【0029】
そのため、上記雨水利用システム1では、散水によって建物2の屋根3や側壁などの外壁温度を低下させることができ、これにより、建物2の内部温度をも低下させることができ、冷房設備によるエネルギー消費を低減することができる。
【0030】
しかも、上記雨水利用システム1では、集水具4と散水具8とを建物2の屋根3に配設しているために、散水具8で散水した雨水を集水具4で集水することができ、これにより、雨水を循環して利用することができ、夏場の少雨時期でも雨水利用システム1を稼動して建物2を冷却することができる。
【0031】
また、上記雨水利用システム1では、太陽発電パネル13を建物2の屋根3に配設するとともに、太陽発電パネル13の表面に向けて散水具8の散水ノズル14から雨水を散水するようにしているために、太陽発電パネル13の表面を散水具8から散水した雨水で洗浄することができるので、太陽発電パネル13の清掃作業を軽減することができるとともに、表面が汚れることに起因する太陽発電パネル13での発電効率の低下を防止することができる。
【0032】
さらに、上記雨水利用システム1では、建物2の屋根3と貯留タンク7に温度センサー18,19をそれぞれ配設し、両温度センサー18,19で検出された温度が所定温度差以上となった場合にポンプ15を駆動するようにしているために、限られた雨水をより一層有効利用して建物2を冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る雨水利用システムを模式的に示す説明図。
【符号の説明】
【0034】
1 雨水利用システム 2 建物
3 屋根 4 集水具
5 雨樋 6 集水管
7 貯留タンク 8 散水具
9 散水管 10 菜園
11 散水ノズル 12 散水ノズル
13 太陽発電パネル 14 散水ノズル
15 ポンプ 16 蓄電池
17 コントローラ 18 温度センサー
19 温度センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の屋根に配設した雨水を集水するための集水具と、
前記集水具で集水した雨水を冷却して貯留するために地中に埋設した貯留タンクと、
前記建物の屋根に向けて散水するための散水具と、
前記貯留タンクと前記散水具との間に介設したポンプと、
前記ポンプを駆動するための蓄電池と、
前記蓄電池に接続した太陽発電パネルと
から構成したことを特徴とする雨水利用システム。
【請求項2】
前記太陽発電パネルを前記建物の屋根に配設するとともに、前記太陽発電パネルの表面を前記散水具で洗浄するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の雨水利用システム。
【請求項3】
前記建物の屋根と前記貯留タンクに温度センサーをそれぞれ配設し、両温度センサーで検出された温度が所定温度差以上となった場合に前記ポンプを駆動するように構成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の雨水利用システム。

【図1】
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【公開番号】特開2008−248471(P2008−248471A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−65546(P2007−65546)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(307005793)有限会社園部設備工業 (5)
【Fターム(参考)】