説明

雨水排水装置

【課題】排水トラフの全体を均整のとれた良好な景観に保つことができるとともに、雨水枡内に対する清掃やバスケットの脱着などの保守管理作業を随時容易に行なうことができる雨水排水装置を提供する。
【解決手段】上部に開口5を有する雨水枡1及びこの雨水枡1に通じる排水管7が地中に埋設され、地表には一方向に長い排水トラフが敷設され、雨水枡1の上方部には排水トラフ内に流入する雨水を雨水枡1内に導入する雨水導入体10が設けられ、この雨水導入体10には雨水枡1の上方部に位置して地表に露出する蓋装置3が設けられている。蓋装置3は雨水枡1の上部の開口に対向するとともに、その開口より大きな面積の開口部19を有する受枠18と、この受枠18の内側に脱着可能に装填された蓋体23とで構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、家屋の周辺の敷地や道路沿いの敷地などに施工される雨水排水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地中に塩化ビニル製の排水管を埋設し、その排水管の所定間隔ごとに雨水枡を設け、その各雨水枡の上端部の開口部を地表に露出させ、その各開口部に通水が可能な蓋体を装着し、降雨時の雨水を前記蓋体を通して前記雨水枡内に流入させ、さらにその雨水を雨水枡から前記排水管を通して既設の排水本管に流入させる雨水排水装置が提供されるようになってきている。このような雨水排水装置については例えば特開2001−65045公報に開示されている。
【0003】
しかしながら、このような雨水排水装置においては、各雨水枡の上端の蓋体が地表に点在するように露出し、降雨時にその点在する雨水枡の蓋体から雨水が流入するだけであり、このため少雨時には問題がないが、多雨時にはその雨量に対応しきれず、地表に雨水が滞留してしまうことがある。
【0004】
そこで、本出願人は、雨水枡及びこの雨水枡に通じる排水管を地中に埋設する一方、地表には一方向に長く、かつ前記雨水枡の上部に接続してその雨水枡内に通じる排水トラフを敷設し、前記排水トラフから前記雨水枡内に雨水を流入させ、この雨水を前記排水管を通して排出させようにした雨水排水装置を開発した。なお、本件でいう地表とは、土地の表面をはじめとして、コンクリート、モルタル、アスファルトなどで舗装された舗装面、あるいは多数のブロック材やタイル材を敷き詰めて舗装された舗装面などを含む。
【0005】
この雨水排出装置によれば、地表に敷設した一方向に長い排水トラフにより排水能力を高め、多雨時であっても地表の雨水を的確かつ円滑に地中の雨水枡に導いて効率よく排出することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、地中に埋設された雨水枡内にはバスケットが脱着自在に収納され、このバスケットで雨水中の枯葉や小枝などの異物が捕捉される。そして、バスケット内に異物が溜まったときには、雨水枡内に手を差し込んでバスケットを取り出し、内部の異物を廃棄し、また雨水枡内を手作業で清掃し、再び雨水枡内にバスケットを収納する保守管理が行なわれる。
【0007】
この場合、雨水枡の上部には排水トラフが配置されており、雨水枡内のバスケットを取り出すときには、その排水トラフの底部の開口を通して行なうことになる。したがって排水トラフの幅は、少なくともバスケットの直径よりも大きな寸法としなければならない。
【0008】
一方、地表に敷設される一方向に長い排水トラフとしては、その景観上、幅の狭いものが望まれる。しかしながら排水トラフの幅が狭すぎると、雨水枡内のバスケットを取り出すことができなくなる。雨水枡の上部と対向する排水トラフの一部分の幅のみをその雨水枡の直径の大きさに対応するように拡張すれば、排水トラフの底部の開口を通して雨水枡内のバスケットを取り出すことが可能となるが、この場合には、一方向に延びる排水トラフの部分個所の幅が拡張され、排水トラフの全体が異形状で均整が取れず、景観が損なわれてしまうことになる。
【0009】
この発明はこのような点に着目してなされたもので、その目的とするところは、排水トラフの全体を均整のとれた良好な景観に保つことができるとともに、雨水枡内に対する清掃やバスケットの脱着などの保守管理作業を随時容易に行なうことができる雨水排水装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、上部に開口を有する雨水枡及びこの雨水枡に通じる排水管が地中に埋設され、地表には一方向に長い排水トラフが敷設され、前記雨水枡の上方部には前記排水トラフ内に流入する雨水を前記雨水枡内に導入する雨水導入体が設けられ、この雨水導入体には前記雨水枡の上方部に位置して地表に露出する蓋装置が設けられ、この蓋装置は雨水枡の上部の開口に対向するとともに、その開口より大きな面積の開口部を有する受枠と、この受枠の内側に脱着可能に装填された蓋体とを備えてなることを特徴としている。
【0011】
請求項2の発明は、前記雨水枡内に脱着可能に異物捕捉用のバスケットが収納され、前記蓋体を前記受枠から取り外すことにより前記受枠の開口部を通して前記バスケットを抜き取ることが可能となっている。
【0012】
請求項3の発明は、前記排水トラフの幅が、前記雨水枡の上部の開口の幅より小さい寸法に設定されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
この発明の雨水排水装置によれば、一方向に長い幅の狭い排水トラフを用いて均整のとれた良好な景観を保持することができるとともに、排水トラフに妨げられることなく雨水枡内に対する清掃やバスケットの脱着などの保守管理作業を随時容易に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
図1にはこの発明の一実施形態に係る雨水排水装置の全体の平面図を、図2にはその一部を拡大した平面図をそれぞれ示してある。この雨水排水装置は、例えば舗装ブロックaを敷き詰めてなる舗装面などの地表の地中に埋設された複数の雨水枡1と、これら雨水枡1に通じるように地表に敷設された一方向に長い排水トラフ2と、各雨水枡1に対向するように地表に設置された蓋装置3とを備えている。
【0016】
雨水枡1は塩化ビニルなどの合成樹脂で形成され、図3及び図4に示すように地中に埋設されている。雨水枡1は上部に開口5を有する有底筒状をなし、両側面には通水口6が形成され、これら通水口6にそれぞれ塩化ビニル製の排水管7が接続され、これら排水管7を通して各雨水枡1が一連に繋がれ、最端側の排水管7の端部が排水本管などに接続されている。また、各雨水枡1の内部にはステンレスなどで形成された異物捕捉用のバスケット8が脱着自在に収納されている。このバスケット8にはその脱着用の取っ手9が取り付けられている。
【0017】
各雨水枡1の上方部には雨水導入体10が設けられている。この雨水導入体10は、雨水枡1の上部の開口5に接続されたガイド管11と、このガイド管11の上部に基礎12を介して設置された受け台13とで構成されている。受け台13は四角の枠形状をなし、アンカーボルト15を介して基礎12に固定されている。ガイド管11の上端部は受け台13の下部内側に突出し、このガイド管11の上端縁と面一に受け台13の下部内側にモルタル16が打設されている。
【0018】
受け台13の上には、前記蓋装置3の一部を構成する受枠18が設置されている。受け台13及び受枠18の斜視図を図5に示してある。受枠18は周側壁の断面がL状で、底面に開口部19を有する枠形状をなし、その上面が地表に露出するようにボルト20を介して受け台13に固定されている。この受枠18の底面の開口部19は雨水枡1の上部の開口5と対向し、かつその開口5より大きな面積を有する開口となっている。そしてこの受枠18の内側に図3に示す蓋体23が脱着可能に装填される。
【0019】
この蓋体23は、皿型状の蓋本体24の内部に、地表の舗装面に敷き並べられた舗装ブロックaと同じ舗装ブロックaをその舗装面と同じピッチで敷き並べて充填したいわゆる充填式蓋構造となっている。そして、この蓋体23は上面が地表の舗装面と面一に配置するように受枠18内に収納される。蓋本体24の外面にはスペーサ25が設けられ、これらスペーサ25により蓋体23を受枠18内に収納したときに、蓋本体24の外面と受枠18の内面との間に雨水の流通が可能な僅かな隙間が確保されるようになっている。
【0020】
受け台13の一端部には、前記蓋装置3の受枠18と並ぶように雨水導入部28が設けられ、この雨水導入部28の両端部に前記排水トラフ2が接続される。排水トラフ2は、樋形状で底面がV字状のトラフ本体30と、このトラフ本体30の上面両側部に相対向して起立するように取り付けられた一対の側板31とを有し、側板31の内側にストッパー32が設けられている。相対向した側板31間の間隔幅は前記雨水枡1の外径寸法より小さく、例えば80mm程度となっている。また、トラフ本体30の端部及び側板31の端部間には接続板33,34が取り付けられ、これら接続板33,34にそれぞれ透孔33a,34aが形成されている。なお、トラフ本体30、側板31、接続板33,34は例えばそれぞれステンレス、スチール製あるいは鋳物製で形成されている。
【0021】
受け台13の一端側の両側面には、トラフ本体30の断面形状に対応する切欠部35が形成され、受け台13の上面には前記切欠部35に対応する位置において、受枠18の一端側の側壁板18aと対向して起立板36がボルト37を介して取り付けられ、これら切欠部35、受枠18の側壁板18a及び起立板36により雨水導入部28が構成され、側壁板18aと起立板36との内側にストッパー38が設けられている。
【0022】
側壁板18a及び起立板36の高さは排水トラフ2の側板31と同じ寸法で、側壁板18aと起立板36との対向間隔は排水トラフ2の側板31間の対向間隔と同じ寸法となっている。
【0023】
側壁板18a及び起立板36の端部間には前記接続板34に対応する接続板39が取り付けられている。そして、前記切欠部35にトラフ本体30の端面が対向合致し、側板31が側壁板18a及び起立板36に当接合致するように受け台13の両側面に排水トラフ2の一端部が突き当てられ、この状態で排水トラフ2の端部の接続板33の透孔33aから受け台13の側面にボルト40が螺挿され、また排水トラフ2の接続板34の透孔34aから雨水導入部28の接続板39にボルト41(図4に図示)が螺挿され、これらボルト40,41の締め付けにより排水トラフ2が雨水導入体10に接続固定されている。
【0024】
各排水トラフ2の側板31間、及び雨水導入部28の側壁板18aと起立板36との間には、図3に示す雨水の透過が可能な例えばグレーチング構造の蓋体42が装着される。これら蓋体42は前記ストッパー32,38により同じ高さのレベルに支持される。
【0025】
このような構成の雨水排水装置においては、降雨時の雨水が地表を伝わって排水トラフ2の全長区間の各部からその内部に流れ込む。そしてこの雨水が排水トラフ2を伝わり、雨水導入部18を経て受け台13の内側に流れ込み、さらにこの受け台13内を流通し、ガイド管11を通して雨水枡1内に流入する。雨水枡1内に流入した雨水は、排水管7を通って排水本管側に流通し排出される。
【0026】
排水トラフ2は道路沿いなどの地表に連続するように敷設されており、このため地表に降った雨水は排水トラフ2の全長区間の部分においてその内部に順次流れ込み、したがって地表の雨水に対する排水能力が高く、多雨時などであっても地表に雨水が滞留するようなことがない。
【0027】
雨水が雨水枡1内を流通する際には、その雨水中の小枝や枯葉などの異物が雨水枡1内のバスケット8により捕捉される。したがってバスケット8内には徐々に異物が溜まってくる。
【0028】
バスケット8内に異物がある程度溜まったときにはそれを廃棄する必要があるが、その廃棄にあたっては、まず、蓋装置3の蓋体23を受枠18内から抜き取って外し、受枠18の開口部19を開く。そしてこの開口部19を通してガイド管11内に手を差し込み、あるいは所定の工具を差込んでバスケット8の取っ手9を掴み、雨水枡1内のバスケット8を上方に引き上げ、受枠18の開口部19を通して地上に取り出し、このバスケット8内の異物を廃棄する。また、前記開口部19を通して雨水枡1内に手や清掃具を差込んその雨水枡1内を清掃する。
【0029】
バスケット8内の異物を廃棄や雨水枡1内の清掃が終了したのちには、開口部19を通してバスケット8を再び雨水枡1内に収納する。そして受枠18の内側に蓋体23を装着する。
【0030】
このように、雨水枡1の上方部には蓋装置3が配置され、排水トラフ2はその雨水枡1の上方部の脇の位置に敷設されており、このため排水トラフ2の敷設に関わりなく蓋装置3を開閉して雨水枡1内のバスケット8を脱着したり雨水枡1内を清掃したりする保守管理作業を容易に能率よく行なうことができる。そして、雨水枡1に対するバスケット8の脱着の作業に排水トラフ2が何ら関わることがないから、排水トラフ2の幅を雨水枡1の大きさに関係なく狭い幅寸法に設定して景観を向上させることができる。
【0031】
例えば、図6(A),(B)に示すように、排水トラフ2の側板31の間隔がごく狭く、地表に露出する側板31間の隙間がスリット状をなすような排水トラフ2を採用してより景観を高めることも可能である。
【0032】
前記蓋装置3における受枠18と蓋体23との間には僅かな隙間が確保されており、このため地表に降った雨水の一部は、前記隙間を通して受け台13内に流れ込み、この受け台13から雨水枡1内に達する。このためより排水能力を高めることができる。
【0033】
なお、前記実施形態では、受け台13の一端部に、排水トラフ2と同じ平面形状の雨水導入部28を設け、この雨水導入部28の両端部に排水トラフ2を接続して受け台13内に連通させるようにしたが、受け台13の一端部の上に排水トラフ2を直接組み付け、その排水トラフ2の底面に開口を形成し、その開口を介して排水トラフ2内を受け台13内に連通させて雨水を導くような構成とする場合であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明の一実施形態に係る雨水排水装置の全体の構成を示す平面図。
【図2】その雨水排水装置の一部を拡大して示す平面図。
【図3】その雨水排水装置の雨水枡部分の一方向から見た断面図。
【図4】その雨水排水装置の雨水枡部分の他方向から見た断面図。
【図5】その雨水排水装置の排水トラフ接続部分の分解状態の斜視図。
【図6】排水トラフの構造例を示す断面図。
【符号の説明】
【0035】
1…雨水枡
2…排水トラフ
3…蓋装置
5…開口
7…排水管
8…バスケット
9…取っ手
10…雨水導入体
13…受け台
18…受枠
19…開口部
23…蓋体
28…雨水導入部
30…トラフ本体
31…側板
35…切欠部
42…蓋体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に開口を有する雨水枡及びこの雨水枡に通じる排水管が地中に埋設され、地表には一方向に長い排水トラフが敷設され、前記雨水枡の上方部には前記排水トラフ内に流入する雨水を前記雨水枡内に導入する雨水導入体が設けられ、この雨水導入体には前記雨水枡の上方部に位置して地表に露出する蓋装置が設けられ、この蓋装置は雨水枡の上部の開口に対向するとともに、その開口より大きな面積の開口部を有する受枠と、この受枠の内側に脱着可能に装填された蓋体とを備えてなることを特徴とする雨水排水装置。
【請求項2】
前記雨水枡内には脱着可能に異物捕捉用のバスケットが収納され、前記蓋体を前記受枠から取り外すことにより前記受枠の開口部を通して前記バスケットを抜き取ることが可能であることを特徴とする請求項1に記載の雨水排水装置。
【請求項3】
前記排水トラフの幅は、前記雨水枡の上部の開口の幅より小さい寸法に設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の雨水排水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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