説明

雨水等の貯水施設及び貯水施設の沈殿物除去方法

【課題】地中に設けられた貯水槽10と、この貯水槽内に配設されて貯水空間を確保する樹脂製骨格ブロック14と、貯水槽10内に雨水等の流入口26付近の樹脂製骨格ブロック14を仕切壁32で囲むことにより形成された沈殿槽30とを備えた雨水等の貯水施設において、沈殿槽内の沈殿物を効率よく除去できるようにする。
【解決手段】貯水槽10の下に、沈殿槽30の領域内から沈殿槽30の領域外に伸びるU字溝42を設け、このU字溝42の沈殿槽30の領域内に位置する区間は沈殿槽30内に開口させ、沈殿槽30の領域外に位置する区間は貯水槽内に開口させずに当該U字溝42の両端部に地上に達する作業孔44A、44Bを設ける。沈殿槽30の領域内のU字溝42に堆積した沈殿物46を、一方の作業孔44Aから他方の作業孔44Bに向けてジェット水流50を流して他方の作業孔44Bに移送し、他方の作業孔44Bから沈殿物を地上に取り出して除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下に設置される雨水等の貯水施設と、その貯水施設の沈殿物除去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば大きなビルや団地等において、雨水を防火用水として、あるいは花壇や菜園の散水用として有効利用するために、ビルや団地周辺の空き地、自転車置き場等の地下に貯水施設を設けて、雨水を貯える試みがなされている。
【0003】
従来の貯水施設はコンクリート製が主流であったが、近年は短期間で施工が可能な樹脂製の貯水施設が増えてきている。樹脂製の貯水施設は、地面を掘り下げて形成した四角形の凹所に遮水性又は透水性シートを内張りして貯水槽を形成し、この貯水槽内に樹脂製骨格ブロックを縦横上下に組み上げて貯水空間を確保し、さらに骨格ブロック上面に天板とシートを敷き詰めた後、その上に土を埋め戻すことにより構築される(引用文献1参照)。
【0004】
このような貯水施設には、雨水と一緒に土砂が流れ込んでくる場合があり、貯水施設内に流れ込んだ土砂が堆積すると、貯水施設の貯水可能容積が減少してしまうという問題がある。
【0005】
この問題を解決するものとして、貯水槽内に雨水等の流入口付近の骨格ブロックを仕切壁で囲むことにより沈殿槽を形成し、この沈殿槽内に土砂を沈殿させることで、貯水槽全体に沈殿物が拡散するのを防止することが提案されている(特許文献2参照)。この貯水施設では、沈殿槽内に堆積した沈殿物は、沈殿槽に設けられた作業孔からポンプ等により排出される。
【0006】
【特許文献1】特開昭63−268823号公報
【特許文献2】特開2005−120658号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2のように、貯水槽内に仕切壁で沈殿槽を形成し、沈殿槽内に作業孔を設けただけでは、作業孔内の沈殿物を除去することはできても、作業孔のまわりの沈殿槽内に堆積した沈殿物を除去することは困難である。
【0008】
本発明の目的は、沈殿槽内の沈殿物を効率よく除去できる雨水等の貯水施設と、その貯水施設の沈殿物除去方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するため本発明は、地中に設けられた貯水槽と、この貯水槽内に配設されて貯水空間を確保する樹脂製骨格ブロックと、前記貯水槽内に雨水等の流入口付近の樹脂製骨格ブロックを仕切壁で囲むことにより形成された沈殿槽とを備えた雨水等の貯水施設において、前記貯水槽の下に、前記沈殿槽の領域内から沈殿槽の領域外に伸びるU字溝を設け、このU字溝の沈殿槽の領域内に位置する区間は沈殿槽内に開口させ、このU字溝の沈殿槽の領域外に位置する区間は貯水槽内に開口させずに当該U字溝の沈殿槽の領域外の端部に地上に達する沈殿物排出用の作業孔を設けたことを特徴とするものである。
【0010】
本発明に係る貯水施設は、U字溝が、沈殿槽の領域内から沈殿槽の両側又は片側の沈殿槽の領域外に伸び、U字溝の両端部又は片端部に作業孔が設けられている構成とすることができる。
【0011】
また本発明係る貯水施設は、U字溝が、沈殿槽の領域内から貯水槽の外側まで伸び、貯水槽外に作業孔が設けられている構成とすることもできる。このような構成とすることにより、作業孔を貯水槽内に設ける場合より、貯水槽内の骨格ブロックの配設等工事が容易になるメリットがある。
【0012】
また本発明係る貯水施設は、U字溝が、沈殿槽の領域内から貯水槽の領域内に伸び、貯水槽内に作業孔が設けられている構成とすることもできる。作業孔を貯水槽内に作ることにより、貯水施設の設置面積を小さくできる。
【0013】
また本発明に係る貯水施設の沈殿物除去方法は、上記のような雨水等の貯水施設において、沈殿槽の領域内のU字溝に堆積した沈殿物を、U字溝にジェット水流を流して作業孔に移送し、作業孔から沈殿物を除去することを特徴とするものである。
【0014】
また本発明に係る沈殿物除去方法において、U字溝の両端部に作業孔が設けられている場合は、一方の作業孔から他方の作業孔に向けてジェット水流を流し、沈殿槽の領域内のU字溝に堆積した沈殿物を他方の作業孔に移送し、他方の作業孔から沈殿物を除去すればよい。
【0015】
また本発明に係る沈殿物除去方法において、U字溝の一端部に作業孔が設けられている場合は、その作業孔から逆流式ジェット水流噴射装置を送り込み、この逆流式ジェット水流噴射装置から噴射される逆流ジェット水流で沈殿槽の領域内のU字溝に堆積した沈殿物を作業孔に移送し、作業孔から沈殿物を除去すればよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、貯水槽の下に、沈殿槽の領域内から沈殿槽の領域外に伸びるU字溝を設け、このU字溝を沈殿槽内に開口させてあるので、沈殿槽内の沈殿物の多くを沈殿槽の下のU字溝内に堆積させることができる。またU字溝の沈殿槽の領域外の端部には、地上に達する作業孔を設けてあるので、U字溝内に堆積した沈殿物を作業孔に集めて、作業孔から効率よく地上に排出することができる。
【0017】
また、沈殿槽の領域内のU字溝に堆積した沈殿物を、U字溝にジェット水流を流して作業孔に移送することにより、U字溝に堆積した沈殿物を効率よく作業孔に移送することができ、沈殿物の排出作業をより効率よく行うことができる。このとき、作業孔を設ける位置は、U字溝の沈殿槽の領域外であれば、貯水槽の領域内、領域外のいずれでもよく、設計面での自由度も大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
〔実施形態1〕図1及び図2は本発明に係る雨水等の貯水施設及び沈殿物除去方法の一実施形態を示す。図において、10は地面を掘り下げて形成した四角形の凹所に遮水性又は透水性シート12を内張りすることにより形成された貯水槽、14は貯水槽10内に縦横上下に組み上げられた樹脂製骨格ブロックである。樹脂製骨格ブロック14は、図3に示すように、正方形の平板部16の中央部に円筒部18を立設し、平板部16には多数の透水孔20を形成し、円筒部18の先端には突起22と嵌合孔24を形成したものである。このような骨格ブロック14を1段ごとに上下を逆さまにして組み上げていくことにより、貯水槽10内に貯水空間Sを確保することができる。
【0019】
また、符号26は雨水の流入口、28は貯水槽10に貯えられた雨水の流出口、30は流入口26付近の骨格ブロック14を仕切壁32で囲むことにより形成された沈殿槽である。仕切壁32には多数の小孔34が設けられている。このような沈殿槽30を設けておくと、流入口26から流入する雨水は、まず沈殿槽30に入り、沈殿槽30から小孔34を通って貯水槽10へ流れ出るので、雨水に含まれている土砂は沈殿槽30内に沈殿し、沈殿槽30外へ拡散することが少なくなる。
【0020】
また、符号36は上記のようにして組み上げられた骨格ブロック14の上面に天板(図示せず)を介して敷き詰められた天井用の遮水性又は透水性シート、38は貯水槽10内の点検孔、40は前記シート36上に埋め戻された土である。
【0021】
この貯水施設の特徴は、貯水槽10の下に、沈殿槽30の領域内から沈殿槽30の両側の貯水槽10の外側まで伸びるU字溝42を設け、このU字溝42の両端部に地上に達する沈殿物排出用の作業孔(マンホール又はハンドホール)44A、44Bを設けたことである。U字溝42の沈殿槽30の領域内に位置する区間はシート12を切除して沈殿槽30内に開口させてあるが、U字溝42の沈殿槽30の領域外に位置する区間は貯水槽10内に開口していない。
【0022】
上記のようにU字溝42及び作業孔44A、44Bを設けておくと、沈殿槽30内に沈殿する土砂等の多くは沈殿槽30の下のU字溝42内に堆積するようになる。U字溝42内に堆積した沈殿物46は、図2に示すように、いずれか一方の作業孔44AからU字溝42内にジェット水流噴射装置48を挿入し、他方の作業孔44Bに向けてジェット水流50を噴射することによって、他方の作業孔44Bに移送し、他方の作業孔44Bからポンプ等により沈殿物を地上に取り出して除去することができる。
【0023】
〔実施形態2〕図4は本発明の他の実施形態を示す。図4は実施形態1の図2に相当する図である。この貯水施設は、貯水槽10の下に、沈殿槽30の領域内から沈殿槽30の両側の貯水槽10の領域内に伸びるU字溝42を設け、貯水槽10の領域内にU字溝42の両端部から地上に達する作業孔44A、44Bを設けたものである。それ以外の構成は実施形態1と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0024】
このような構成でも、実施形態1と同様、U字溝42内に堆積した沈殿物46をジェット水流50により作業孔44Bへ移送して、沈殿物を除去することができる。
【0025】
〔実施形態3〕図5は本発明のさらに他の実施形態を示す。図5は実施形態1の図2に相当する図である。この貯水施設は、貯水槽10の下に、沈殿槽30の領域内から沈殿槽30の片側の貯水槽10の外側まで伸びるU字溝42を設け、そのU字溝42の貯水槽10の領域外の端部に作業孔44を設けたものである。それ以外の構成は実施形態1と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0026】
このようにU字溝42が沈殿槽30の片側に伸び、U字溝42の片端に作業孔44が設けられている場合は、作業孔44からU字溝42内に逆流式ジェット水流噴射装置52を送り込み、この逆流式ジェット水流噴射装置52から噴射される逆流ジェット水流54でU字溝42内に堆積した沈殿物46を作業孔44に移送し、作業孔44から沈殿物を地上に取り出して除去すればよい。
【0027】
なお、作業孔44は、図4の実施形態2のように、貯水槽10の領域内に設置してもよい。
【0028】
〔実施形態4〕図6は本発明のさらに他の実施形態を示す。図6(A)、(B)は実施形態1の図1(A)、(B)に相当する図である。この貯水施設は、貯水槽10の下に、沈殿槽30の領域内から沈殿槽30の片側(流入口26とは反対側)の貯水槽10の領域内に伸びるU字溝42を設け、そのU字溝42の貯水槽10の領域内の端部に作業孔44を設けたものである。それ以外の構成は実施形態1と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0029】
このよう構成でも、実施形態3と同様、U字溝42内に堆積した沈殿物46を逆流ジェット水流54により作業孔44へ移送して、除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る貯水施設の一実施形態を示す、(A)は垂直縦断面図、(B)は水平断面図。
【図2】図1(A)のC−C線における垂直横断面図。
【図3】図1の貯水施設に用いる樹脂製骨格ブロックの一例を示す斜視図。
【図4】本発明に係る貯水施設の他の実施形態を示す垂直横断面図。
【図5】本発明に係る貯水施設のさらに他の実施形態を示す垂直横断面図。
【図6】本発明に係る貯水施設のさらに他の実施形態を示す、(A)は垂直縦断面図、(B)は水平断面図。
【符号の説明】
【0031】
10:貯水槽
12:遮水性又は透水性シート
14:樹脂製骨格ブロック
26:流入口
28:流出口
30:沈殿槽
32:仕切壁
34:小孔
42:U字溝
44、44A、44B:作業孔
46:沈殿物
48:ジェット水流噴射装置
50:ジェット水流
52:逆流式ジェット水流噴射装置
54:逆流ジェット水流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に設けられた貯水槽と、この貯水槽内に配設されて貯水空間を確保する樹脂製骨格ブロックと、前記貯水槽内に雨水等の流入口付近の樹脂製骨格ブロックを仕切壁で囲むことにより形成された沈殿槽とを備えた雨水等の貯水施設において、前記貯水槽の下に、前記沈殿槽の領域内から沈殿槽の領域外に伸びるU字溝を設け、このU字溝の沈殿槽の領域内に位置する区間は沈殿槽内に開口させ、このU字溝の沈殿槽の領域外に位置する区間は貯水槽内に開口させずに当該U字溝の沈殿槽の領域外の端部に地上に達する沈殿物排出用の作業孔を設けたことを特徴とする雨水等の貯水施設。
【請求項2】
U字溝は、沈殿槽の領域内から沈殿槽の両側又は片側の沈殿槽の領域外に伸び、U字溝の両端部又は片端部に作業孔が設けられていることを特徴とする請求項1記載の雨水等の貯水施設。
【請求項3】
U字溝は、沈殿槽の領域内から貯水槽の外側まで伸び、貯水槽外に作業孔が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の雨水等の貯水施設。
【請求項4】
U字溝は、沈殿槽の領域内から貯水槽の領域内に伸び、貯水槽内に作業孔が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の雨水等の貯水施設。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の雨水等の貯水施設において、沈殿槽の領域内のU字溝に堆積した沈殿物を、U字溝にジェット水流を流して作業孔に移送し、作業孔から沈殿物を除去することを特徴とする貯水施設の沈殿物除去方法。
【請求項6】
請求項2記載の雨水等の貯水施設において、U字溝の両端部に作業孔が設けられている場合は、一方の作業孔から他方の作業孔に向けてジェット水流を流し、沈殿槽の領域内のU字溝に堆積した沈殿物を他方の作業孔に移送し、他方の作業孔から除去することを特徴とする貯水施設の沈殿物除去方法。
【請求項7】
請求項2又は3記載の雨水等の貯水施設において、作業孔から逆流式ジェット水流噴射装置を送り込み、この逆流式ジェット水流噴射装置から噴射される逆流ジェット水流で沈殿槽の領域内のU字溝に堆積した沈殿物を、逆流式ジェット水流噴射装置を送り込んだ作業孔に移送し、作業孔から沈殿物を除去することを特徴とする貯水施設の沈殿物除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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