説明

雪密度センサ

【課題】雪密度をより精度よく算出すること。
【解決手段】複数の電極12間の雪層を含む静電容量を計測する第1計測部32と、前記雪層と前記複数の電極との間に形成された物質層の温度を計測する第2計測部36と、前記静電容量および前記温度に基づき前記雪層の密度を算出する算出部40と、を具備する雪密度センサ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雪密度センサに関し、例えば静電容量および温度に基づき雪層の密度を算出する雪密度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、寒冷地域では、計画的な利水を目的とし、ダム流域における積雪包蔵水量の算出が行われている。積雪包蔵水量は、ダムの流域面積に積雪深と雪密度を掛けることにより算出可能である。ダムの流域面積は地形情報から把握可能である。積雪深さは、例えば超音波方式の自動積雪深計により自動連続測定が可能である。しかしながら、自動連続測定可能な雪密度センサは実用化されていない。このため、雪密度の測定は人力での作業となる。
【0003】
雪の密度の計測方法として、静電容量を用いる方法が知られている(例えば特許文献1)。また、雪水混合体の中の雪または氷片の濃度を計測する方法として導電率を用いる方法が知られている(例えば、特許文献2)。着霜高さを測定するために抵抗に対する電位差を測定する方法が知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−288888号公報
【特許文献2】特開平3−150453号公報
【特許文献3】特開平5−340906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、特許文献1のように静電容量を用い雪密度を計測する場合、静電容量を計測する電極と雪層との間にギャップが形成される場合がある。この場合、ギャップは、空気、水または氷のような物質で満たされた物質層となる。このため、物質層の物質の種類および物質層の幅に依存し静電容量が変化する。よって、電極間の静電容量から雪密度を精度よく算出することが難しくなる。
【0006】
本雪密度センサおよび雪密度の計測方法は、雪密度をより精度よく算出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
例えば、複数の電極間の雪層を含む静電容量を計測する第1計測部と、前記雪層と前記複数の電極との間に形成された物質層の温度を計測する第2計測部と、前記静電容量および前記温度に基づき前記雪層の密度を算出する算出部と、を具備することを特徴とする雪密度センサを用いることができる。
【発明の効果】
【0008】
本雪密度センサおよび雪密度の計測方法によれば、雪密度をより精度よく算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1(a)は、物質層が形成される前、図1(b)は物質層が形成された後のアームと雪層とを示す図である。
【図2】図2は、実施例1に係る雪密度センサの斜視図である。
【図3】図3は、実施例1に係る雪密度センサのブロック図である。
【図4】図4は、実施例1に係る雪密度センサの処理を示すフローチャートである。
【図5】図5は、図4のステップS16における算出部の処理を示すフローチャートである。
【図6】図6は、雪密度と比誘電率の関係を示した図である。
【図7】図7は、実施例2の算出部の処理を示すフローチャートである。
【図8】図8は、電気伝導度と温度により物質の状態を示す図である。
【図9】図9(a)および図9(b)は、物質層が異なる物質の場合のアームと雪層とを示す図である。
【図10】図10は、雪密度センサの処理のフローチャートである。
【図11】図11(a)は、メモリ内の各データを示す図である。図11(b)は、データNoに対応する物質を示すテーブルである。
【図12】図12は、図10のステップS62において算出部が行なう処理を示すフローチャートである。
【図13】図13は、実施例4に係る雪密度センサのブロック図である。
【図14】図14は、実施例4に係る雪密度センサの処理を示すフローチャートである。
【図15】図15は、実施例5の算出部の処理を示すフローチャートである。
【図16】図16は、実施例6の算出部の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照し、実施例について説明する。
【実施例1】
【0011】
まず、電極と雪層の間に形成される物質層について説明する。図1(a)は、物質層が形成される前、図1(b)は物質層が形成された後のアームと雪層とを示す図である。図1(a)に示すように、雪50中に、2つのアーム10が設けられている。アーム10の内側表面には、それぞれ第1電極12が設けられている。第1電極12は、第1電極12間の雪層51の静電容量を計測するための電極である。図1(b)に示すように、気温が上昇し、アーム10を保持する保持体等を介した熱伝導により、アーム10の温度が上昇すると、アーム10の周囲の雪が融解しギャップが形成される。また、アーム10が風等により振動することによっても、アーム10の周囲の雪が融解しギャップが形成される。ギャップは、空気、水または氷等が満たされた物質層52となる。物質層52の物質により、物質層の静電容量が変化する。例えば空気、水および氷の比誘電率は、それぞれ1、81および4である。一方、雪層51の比誘電率は2〜4程度である。よって、物質層52の物質(すなわち誘電率)および物質層52の厚さに依存し、第1電極12間の静電容量が変化する。これにより、雪密度の計測に誤差が生じる。
【0012】
図2は、実施例1に係る雪密度センサの斜視図である。雪密度センサ100は、支持体20と複数のアーム10を備えている。支持体20から複数のアーム10が延伸している。支持体20の表面は絶縁性であり、例えば、ポリアセタール等の樹脂より形成される。各アーム10の内面には、複数の第1電極12が対向し設けられている。アーム10の少なくとも1つの内面には複数の第2電極14および温度センサ16が設けられている。第1電極12は、静電容量を計測するための電極であり、第2電極14は、電気伝導度を計測するための電極である。温度センサ16は、例えばサーミスタ素子である。
【0013】
アーム10は、絶縁性であり、ポリアセタール等の樹脂より形成される。第1電極12および第2電極14は、例えばステンレス等の金属である。第1電極12は、例えば長方形であり、大きさは例えば100mm×100mmである。対向する第1電極12同士の距離は例えば50mmである。第2電極14は、例えば円形であり直径は例えば10mmである。第2電極14の最短距離は、例えば10mmである。温度センサ16は例えば円形であり、直径は例えば10mmである。
【0014】
複数の第2電極14および温度センサ16は、アーム10の1つに設けられていてもよいが、全てのアーム10に設けられていてもよい。複数の第2電極14および温度センサ16を多数設けることにより、電気伝導度および温度を精度よく計測することができる。複数の第2電極14は物質層52の電気伝導度を計測し、温度センサ16は物質層52の温度を計測するため、複数の第2電極14と温度センサ16は、第1電極12と同一平面に設けられることが好ましい。また、複数の第2電極14および温度センサ16の材質は、第1電極12と同じ材質であることが好ましい。
【0015】
図3は、実施例1に係る雪密度センサのブロック図である。第1電極12、第2電極14および温度センサ16はアーム10に設けられている。静電容量検出部22、電気伝導度検出部24、温度検出部26および駆動部28は、例えば支持体20内に設けられている。第1計測部32は、第1電極12および静電容量検出部22を備えている。第3計測部34は、第2電極14および電気伝導度検出部24を備えている。第2計測部36は、温度センサ16および温度検出部26を備えている。例えばMPU(Micro Processing Unit)が算出部40として機能する。メモリ42は、例えば揮発性メモリまたは不揮発性メモリである。MPUおよびメモリ42は、支持体20内に設けられてもよいし、支持体20から離れた場所にある筐体内に設けられてもよい。
【0016】
駆動部28は、第1電極12のうち一部の電極に例えば1MHz程度の正弦波の電圧信号を印加する。静電容量検出部22は、第1電極12のうち他の電極に流れる交流電流の振幅を直流電圧信号に変換する。さらに、静電容量検出部22は、デジタル信号に変換し、算出部40に出力する。駆動部28は、第2電極14のうち一部の電極に例えば100kHz程度の正弦波の電圧信号を印加する。電気伝導度検出部24は、第2電極14のうち他の電極に流れる交流電流の振幅を直流電圧信号に変換する。さらに、電気伝導度検出部24は、デジタル信号に変換し、算出部40に出力する。駆動部28は、静電容量計測用と電気伝導度計測用の2つ設けられてもよい。静電容量の計測に用いる電圧信号の周波数は、雪層51等のインピーダンスが主にキャパシタ成分により定まる周波数であればよい。電気伝導度の計測に用いる電圧信号の周波数は、雪層51等のインピーダンスが主に抵抗成分により定まる周波数であればよい。温度検出部26は、温度センサ16の出力を温度に換算し、デジタル信号に変換し、算出部40に出力する。
【0017】
図4は、実施例1に係る雪密度センサの処理を示すフローチャートである。図4に示すように、まず、第1計測部32は、第1電極12間の雪層を含む静電容量を計測する(ステップS10)。静電容量の値は算出部40によりメモリ42に記憶される。次に、第3計測部34は、雪層と複数の第1電極12との間に形成された物質層52の電気伝導度を計測する(ステップS12)。電気伝導度の値は算出部40によりメモリ42に記憶される。次に、第2計測部36は、物質層52の温度を計測する(ステップS14)。温度の値は算出部40によりメモリ42に記憶される。次に、算出部40は、メモリ42から静電容量の値、電気伝導度の値および温度の値を取得する。算出部40は、第1電極12間の静電容量、物質層52の電気伝導度および温度に基づき雪層51の密度を算出する(ステップS16)。次に、算出部40は、算出した雪密度を外部に出力する(ステップS18)。なお、ステップS10からS14の順番は任意である。
【0018】
図5は、図4のステップS16における算出部の処理を示すフローチャートである。図5に示すように、算出部40は、物質層52の電気伝導度および温度に基づき物質層52の物質を判定する(ステップS20)。例えば、算出部40は、物質層52が空気、水または氷のいずれかを判定する。これにより、物質層52の誘電率が定まる。例えば、物質が空気、水または氷の場合、比誘電率はそれぞれ1、81または4である。具体例は実施例2において説明する。次に、算出部40は、物質層52の厚さを算出する(ステップS22)。例えば、物質層52の物質が異なるときにそれぞれ計測した静電容量に基づき物質層52の厚さを算出する。具体例は実施例3において説明する。次に、算出部40は、計測した静電容量、物質層52の誘電率および厚さから雪層51の誘電率を算出する(ステップS24)。具体例は、実施例3において説明する。次に、算出部40は、雪層51の誘電率から雪密度を算出する(ステップS26)。その後、終了する。
【0019】
図6は、雪密度と比誘電率の関係を示した図である。黒丸は測定点、実線は近似曲線である。比誘電率が1は空気の場合であり、比誘電率が4は氷の場合である。メモリ42は、図6の雪密度と比誘電率の相関を記憶している。図5のステップS26において、算出部40は、メモリ42から図6の相関を取得する。ステップS24において算出した雪層51の誘電率から図6を用い雪密度を算出できる。例えば、雪層51の比誘電率が2.0の場合、雪密度は0.42g/cmと算出できる。
【0020】
実施例1によれば、図5のステップS16のように、算出部40は、第1電極12間の静電容量、物質層52の電気伝導度および温度に基づき雪層51の密度を算出する。これにより、算出部40は、物質層52の物質の種類(誘電率)または/および厚さを考慮して、第1電極12間の静電容量から雪密度を算出することができる。よって、雪密度をより精度よく算出することができる。
【実施例2】
【0021】
実施例2は、算出部40が物質層52の物質を判定する例である。電気伝導度だけでも物質層52の物質の判定は可能である。例えば、空気の電気伝導度は0〜10−8S/cm、氷の電気伝導度は10−8S/cm〜10−6S/cm、水の電気伝導度は10−6S/cmである。しかしながら、自然界の雨または雪には空気中の塵または酸性物質などが混在している。このように不純物が混在すると物質の電気伝導度は、上述のように一様ではない。一方、凝固温度についても0℃前後で水から氷に固化するが、不純物を含む水は一様ではない。実施例2においては、算出部40が物質層52の物質を判定する際に、電気伝導度と温度を用い、より精度よく物質を判定するものである。
【0022】
図7は、実施例2の算出部の処理を示すフローチャートである。図7を参照し、まず算出部40は、メモリ42から物質層52の電気伝導度σを取得する(ステップS30)。算出部40は、電気伝導度σが第1閾値σthより大きいか判断する(ステップS32)。Noの場合、算出部40は、物質層52の物質を空気と判定する(ステップS34)。その後終了する。ステップS32においてYesの場合、算出部40はメモリ42から物質層52の温度Tを取得する(ステップS36)。算出部40は、温度Tが第2閾値Tthより大きいか判断する(ステップS38)。Yesの場合、算出部40は、物質層52の物質を水と判定する(ステップS40)。Noの場合、算出部40は、物質層52の物質を氷と判定する(ステップS42)。その後終了する。
【0023】
図8は、電気伝導度と温度により物質の状態を示す図である。例えば電気伝導度σが10−8S/cmより小さい場合、温度Tによらず物質は空気である。電気伝導度σが10−8S/cmより大きくかつ温度Tが0°より高い場合、物質は水である。電気伝導度σが10−8S/cmより大きくかつ温度Tが0°より低い場合、物質は氷である。
【0024】
図7および図8のように、電気伝導度σが第1閾値σthより小さい場合物質層52を空気と判定する。電気伝導度σが第1閾値σより小さくかつ温度Tが第2閾値Tthより小さい場合物質層52を氷と判定する。電気伝導度σが第1閾値σthより小さくかつ温度Tが第2閾値Tthより大きい場合物質層を水と判定する。これにより、算出部40は、簡単に物質を判定できる。
【0025】
図8の電気伝導度σおよび温度Tの閾値は例であり、状況により適宜設定することができる。また、物質層52の電気伝導度および温度を用い、より複雑な判定方法により物質を判定することもできる。例えば、電気伝導度と温度との関数を用い、物質を判定することもできる。
【実施例3】
【0026】
実施例3は、算出部40が物質層の厚さを算出する例である。図9(a)および図9(b)は、物質層が異なる物質の場合のアームと雪層とを示す図である。図9(a)を参照し、第1電極12間の距離d0、物質層52の厚さd2、雪層51の厚さd1とする。左右のアーム10の物質層52の厚さd2は同じと仮定する。この場合、数式1が成り立つ。
d0=d1+d2+d2 (数式1)
【0027】
雪層51の比誘電離ε1、物質層52の比誘電率ε2とする。雪層51の静電容量C1、物質層52の静電容量C2とする。第1電極12の面積S、真空の誘電率ε0とすると、C1およびC2は次式で表される。
C1=ε1×ε0×S/d1 (数式2)
C2=ε2×ε0×S/d2 (数式3)
【0028】
図9(b)を参照し、物質層52の物質が図9(a)と異なるため、物質層52の比誘電率ε3、静電容量C3とする。物質層52の厚さd2は図9(a)と同じと仮定する。このときC3は次式で表される。
C3=ε3×ε0×S/d2 (数式4)
【0029】
図9(a)および図9(b)の状態で、第1電極12により計測されるそれぞれ静電容量CS2およびCS3は次式で表される。
1/CS2=1/C2+1/C1+1/C2 (数式5)
1/CS3=1/C3+1/C1+1/C3 (数式6)
【0030】
物質層52の物質が判定されていれば、比誘電率ε2およびε3は既知である。よって、数式1〜6において、ε1、d1およびd2が未知である。CS2およびCS3を計測することにより、数式1〜6を用いれば、ε1、d1およびd2を算出することができる。これにより、物質層52の厚さd2と雪層51の比誘電率ε1を求めることができる。
【0031】
次に、計測例を説明する。図10は、雪密度センサの処理のフローチャートである。図10に示すように、算出部40は、静電容量、電気伝導度および温度を計測するか判定する(ステップS50)。例えば、決められた時間毎(例えば1時間毎)に計測する場合、タイマーが設定時間となった場合、算出部40はYesと判断する。Noの場合、ステップS50に戻る。
【0032】
ステップS50においてYesの場合、第1計測部32は静電容量を計測する(ステップS52)。次に第3計測部34は電気伝導度を計測する(ステップS54)。第2計測部36は温度を計測する(ステップS56)。ステップS52からS56の順番は任意である。また、同時に行なってもよい。メモリ42は、各データを記憶する。
【0033】
図11(a)は、メモリ内の各データを示す図である。データNo.1、2〜に対応し計測時間t1、t2〜、静電容量CS1、CS2〜、電気伝導度σ1、σ2〜および温度T1、T2〜が記憶されている。
【0034】
算出部40は、雪密度を算出するか判断する(ステップS60)。例えば、決められた時間毎(例えば24時間毎)に雪密度を算出する場合、タイマーが設定時間となった場合、算出部40はYesと判断する。雪密度を算出する間隔は、例えば物質層52の厚さが実質的に変わらない範囲とすることが好ましい。ステップS60においてNoの場合、ステップS50に戻る。Yesの場合、雪密度を算出する(ステップS62)。その後、終了しステップS50に戻る。
【0035】
図12は、図10のステップS62において算出部が行なう処理を示すフローチャートである。図12を参照し、算出部40は、メモリ42からデータを取得する(ステップS70)。例えば、図11(a)に示したデータを取得する。次に、算出部40は、各Noにおける物質層52の物質を判定する(ステップS72)。物質の判定方法は、例えば実施例2の方法を用いる。図11(b)は、データNoに対応する物質を示すテーブルである。この例では、データNo.1、2、24において、物質は氷であり、データNo.10において物質は水である。
【0036】
次に、算出部40は、図11(b)のテーブル内に異なる物質があるか判断する(ステップS74)。例えば、物質が全て同じである場合(例えば氷の場合)。算出部40はNoと判断する。Noの場合、算出部40は計測不能を出力する(ステップS82)。ステップS74においてYesの場合、算出部40は、数式1〜6を用い、異なる物質の静電容量を用い物質層52の厚さd2および雪層51の比誘電率ε1を算出する(ステップS76)。例えば、図11(b)において、データNo.1の物質は氷、データNo.10の物質は水である。よって、算出部40は、静電容量CS1とCS10を用い、物質層52の厚さd2および雪層51の比誘電率ε1を算出する。例えば、算出部40は、同じ物質の静電容量の平均値を用いてもよい。例えば物質を氷と判定したデータNo.の静電容量の平均値を氷の場合の静電容量としてもよい。これにより、算出精度を向上させることができる。
【0037】
次に、算出部40は、雪層51の比誘電率に基づき雪密度を算出する(ステップS78)。例えば、算出部40は、図6の比誘電率と雪密度と相関を用い、雪密度を算出する。次に、算出部40は、算出した雪密度を出力する(ステップS80)。その後、終了し図10のステップS50に戻る。
【0038】
実施例3によれば、算出部40は、ステップS74のように物質層52の物質が異なるときにそれぞれ計測した静電容量に基づき、ステップS76およびS78のように雪層51の密度を算出する。例えば、算出部40は、物質層52が水、氷および空気の少なくとも2つのときにそれぞれ計測した静電容量に基づき雪層51の密度を算出することができる。例えば、算出部40は、物質層52の物質が異なるときにそれぞれ計測した静電容量に基づき、ステップS76のように、雪層51の誘電率を算出する。ステップS78のように雪層51の誘電率に基づき、雪層51の密度を算出する。このようにして、物質層52が形成されている場合にも、雪層51の密度を精度よく算出することができる。
【実施例4】
【0039】
実施例4は、雪層の静電容量と物質層の温度から雪密度を算出する例である。図13は、実施例4に係る雪密度センサのブロック図である。実施例1の図3に比べ、雪密度センサ102には、第3計測部34が設けられていない。その他の構成は、実施例1の図3と同じであり説明を省略する。
【0040】
図14は、実施例4に係る雪密度センサの処理を示すフローチャートである。実施例1の図4と比べ、電気伝導度を計測していない。その他のフローは実施例1の図4と同じであり、説明を省略する。
【0041】
実施例4のように、雪密度センサ102は、複数の電極12間の雪層51を含む静電容量を計測する第1計測部32と、物質層52の温度を計測する第2計測部36と、を備えている。算出部40は、物質層52の電気伝導度を用いず、雪層51の静電容量および物質層52の温度に基づき雪層51の密度を算出することができる。これにより、雪密度をより精度よく算出することができる。
【実施例5】
【0042】
実施例5は、実施例4の具体例である。図15は、実施例5の算出部の処理を示すフローチャートである。図10と同様に、静電容量および温度を計測することにより、図11と同様に、データNo.毎に、時間、静電容量および温度のテーブルがメモリ42に記憶されている。図15を参照に、算出部40はメモリ42からデータを取得する(ステップS70)。次に、算出部40は、温度Tが第2閾値Tthより大きいデータと小さいデータがあるかを判断する(ステップS90)。第2閾値Tthとしては例えば0℃とする。Noの場合、算出部40は計測不能を出力する(ステップS82)。
【0043】
ステップS90において、Yesの場合、第2閾値Tthより高い温度では、物質層52は水、第2閾値Tthより低い温度では、物質層52は氷と考えられる。そこで、算出部40は、温度が第2閾値より大きいデータNo.と小さいデータNo.の静電容量を用い数式1〜6から雪層51の比誘電率ε1を算出する(ステップS76)。なお、算出部40は、温度が第2閾値より大きいデータNo.の静電容量の平均値と、温度が第2閾値より小さいデータNo.の静電容量の平均値と、を用いてもよい。これにより、算出精度を向上させることができる。その他のフローは実施例3の図12と同じであり説明を省略する。
【0044】
実施例5のように、算出部40は、物質層52の温度が閾値Tthより大きいときと小さいときとのそれぞれに計測した第1電極12間の静電容量に基づき雪層51の密度を算出することができる。
【実施例6】
【0045】
実施例6は、実施例4の具体例である。図16は、実施例6の算出部の処理を示すフローチャートである。図16を参照に、算出部40はメモリ42からデータを取得する(ステップS70)。次に、算出部40は、所定時間(例えば1日)内の最高温度が閾値温度Tthより低いか、または最低温度が閾値温度より高いか、を判断する(ステップS92)。閾値温度Tthとしては例えば0℃とする。最高温度が閾値温度Tthより低い場合、物質層52は全ての時間において氷であると考えられる。最低温度が閾値温度Tthより高い場合、物質層52は全ての時間において水であると考えられる。そこで、ステップS92においてYesの場合ステップS82に進む。なお、閾値温度Tthは0℃とすることができる。さらに、適宜設定してもよい。また、最高温度および最低温度を判定する閾値温度は、それぞれ異なっていてもよい。
【0046】
ステップS92においてNoの場合、算出部40は、所定時間内の最高温度の静電容量を抽出する(ステップS94)。算出部40は、所定時間内の最低温度の静電容量を抽出する(ステップS96)。最高温度のとき、物質層52の物質は水と考えられる。最低温度のとき、物質層52の物質は氷と考えられる。そこで、算出部40は、最高温度の静電容量と最低温度の静電容量とを用い数式1〜6から雪層51の比誘電率ε1を算出する(ステップS76)。その他のフローは実施例3の図12と同じであり説明を省略する。
【0047】
実施例6のように、算出部40は、所定時間内の物質層52の温度が最高温度のときと最低温度のときのそれぞれに計測した第1電極12間の静電容量に基づき雪層51の密度を算出する。
【0048】
実施例5および6のように、算出部40は、物質層52の物質(例えば水か氷か)は、物質層52の電気伝導度を用いず、物質層52の温度に基づき判定することもできる。そして、図15および図16のステップS76およびS78のように、判定した物質層52の物質が異なるときに第1計測部32が計測した静電容量に基づき、雪層51の密度を算出することができる。
【0049】
なお、実施例1から実施例6において、誘電率の算出と比誘電率の算出は実質的に同じであることはいうまでもない。また、電気伝導度の計測は、電気伝導率の計測、電気抵抗の計測または電気抵抗率の計測と実質的に同じであることは言うまでもない。
【0050】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0051】
実施例1から6を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
付記1:
複数の電極間の雪層を含む静電容量を計測する第1計測部と、前記雪層と前記複数の電極との間に形成された物質層の温度を計測する第2計測部と、前記静電容量および前記温度に基づき前記雪層の密度を算出する算出部と、を具備することを特徴とする雪密度センサ。
付記2:
前記算出部は、前記温度に基づき前記物質層の物質を判定し、判定した前記物質層の物質が異なるときにそれぞれ計測した前記静電容量に基づき前記雪層の密度を算出することを特徴とする付記1記載の雪密度センサ。
付記3:
前記物質層の電気伝導度を計測する第3計測部を具備することを特徴とする付記1または2記載の雪密度センサ。
付記4:
前記算出部は、前記電気伝導度および前記温度に基づき前記物質層の物質を判定し、判定した前記物質層の物質が異なるときにそれぞれ計測した前記静電容量に基づき前記雪層の密度を算出することを特徴とする付記3記載の雪密度センサ。
付記5:
前記算出部は、前記物質層の物質が水、氷または空気のいずれかかを判定することを特徴とする付記4記載の雪密度センサ。
付記6:
前記算出部は、前記物質層が水または氷かを判定することを特徴とする付記2記載の雪密度センサ。
付記7:
前記算出部は、前記温度が閾値より大きいときと小さいときとのそれぞれに計測した前記静電容量に基づき前記雪層の密度を算出することを特徴とする付記1記載の雪密度センサ。
付記8:
前記算出部は、所定時間内の前記温度が最高温度のときと最低温度のときのそれぞれに計測した前記静電容量に基づき前記雪層の密度を算出することを特徴とする付記1記載の雪密度センサ。
付記9:
前記算出部は、前記電気伝導度が第1閾値より小さい場合前記物質層を空気と判定し、前記電気伝導度が第1閾値より小さくかつ前記温度が第2閾値より小さい場合前記物質層を氷と判定し、前記電気伝導度が第1閾値より小さくかつ前記温度が第2閾値より大きい場合前記物質層を水と判定することを特徴とする付記5記載の雪密度センサ。
付記10:
前記算出部は、前記物質層の物質が異なるときにそれぞれ計測した前記静電容量に基づき、前記雪層の誘電率を算出し、前記誘電率に基づき前記雪層の密度を算出することを特徴とする付記2または4記載の雪密度センサ。
【符号の説明】
【0052】
10 アーム
12 第1電極
14 第2電極
16 温度センサ
32 第1計測部
34 第3計測部
36 第2計測部
40 算出部
50 雪
51 雪層
52 物質層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電極間の雪層を含む静電容量を計測する第1計測部と、
前記雪層と前記複数の電極との間に形成された物質層の温度を計測する第2計測部と、
前記静電容量および前記温度に基づき前記雪層の密度を算出する算出部と、
を具備することを特徴とする雪密度センサ。
【請求項2】
前記算出部は、前記温度に基づき前記物質層の物質を判定し、判定した前記物質層の物質が異なるときにそれぞれ計測した前記静電容量に基づき前記雪層の密度を算出することを特徴とする請求項1記載の雪密度センサ。
【請求項3】
前記物質層の電気伝導度を計測する第3計測部を具備することを特徴とする請求項1または2記載の雪密度センサ。
【請求項4】
前記算出部は、前記電気伝導度および前記温度に基づき前記物質層の物質を判定し、判定した前記物質層の物質が異なるときにそれぞれ計測した前記静電容量に基づき前記雪層の密度を算出することを特徴とする請求項3記載の雪密度センサ。
【請求項5】
前記算出部は、前記物質層の物質が水、氷または空気のいずれかかを判定することを特徴とする請求項4記載の雪密度センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−101050(P2013−101050A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244830(P2011−244830)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】