説明

雰囲気遮蔽はんだ付け装置

【課題】チャンバ体を放熱体とするエネルギー損失を低減して省エネルギー化を図ることができる雰囲気遮蔽はんだ付け装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、雰囲気を遮蔽したチャンバ体11内で溶融はんだの噴流波と被はんだ付けワークWとを接触させてはんだ付けを行うようにした雰囲気遮蔽はんだ付け装置10であって、前記チャンバ体11は、前記溶融はんだを収容するはんだ槽15の溶融はんだ16内に前記チャンバ体11の開口部14としてのスカート体11bが浸漬されると共に、複数に分割できるように一体的に形成され、前記分割箇所には、断熱性を有するシール部材17、18が介装されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雰囲気を遮蔽したチャンバ体内で、プリント配線板等の板状の被はんだ付けワークのフローはんだ付けを行う装置に関する。
【背景技術】
【0002】
低酸素濃度の不活性ガス雰囲気中では、電子部品のリード端子やプリント配線板のはんだ付けランド等の被はんだ付け部の酸化が抑制され、優れたはんだ濡れ性が得られる。したがって、被はんだ付け部に予め塗布するフラックスも微量で良いため、はんだ付け後のプリント配線板にフラックス残渣が殆ど残らない。
【0003】
例えば、特許文献1には、トンネル状チャンバ体内にプリント配線板の搬送コンベアが設けられ、その搬送順にプリヒータと溶融はんだの噴流波を形成するはんだ槽とを設けたはんだ付け装置が開示されている。
トンネル状チャンバ体はプリント配線板を仰角搬送する領域と俯角搬送する領域とがあり、搬送コンベアの搬送方向に対する縦断面で見て「へ」の字状に形成されている。そして、この仰角搬送領域にはプリヒータと溶融はんだの噴流波を形成するはんだ槽とが設けられ、俯角搬送領域では被はんだ付けワークであるプリント配線板の冷却が行われるように構成されている。
【0004】
また、チャンバ体にはチャンバ体内に溶融はんだの噴流波を位置させるために、はんだ槽を臨む開口が設けられると共に、この開口にははんだ槽側へ伸びるスカートが設けられている。このスカートをはんだ槽内の溶融はんだに浸漬することでこの開口の確実な封止を実現している。
【0005】
そして、プリント配線板の搬送方向から見てはんだ槽の後段側には窒素ガス等の不活性ガスを供給するノズルが設けられている。ノズルはプリント配線板と噴流波とが接触する領域へ向けて窒素ガスを供給するように窒素供給の指向性が定められている。これにより、低酸素濃度の不活性ガス雰囲気をチャンバ体内に形成している。なお、チャンバ体内に設けられている抑止板は、チャンバ体内における不要な雰囲気流動を抑止する部材であり、これによりラビリンスシールを構成している。
【0006】
一方、はんだ槽には図示しないヒータと、はんだ槽内のはんだの温度を検出する温度センサと、ヒータへの供給電力を制御する温度制御装置とが設けられている。温度センサと温度制御装置とははんだ槽内の溶融はんだの温度を予め決められた所定の温度に維持するように構成されている。ちなみに、溶融はんだの温度は通常250〜260℃程度で使用される。
【0007】
また、プリヒータには赤外線ヒータ等の熱線加熱を行う手段、熱風加熱を行う手段又は熱線加熱と熱風加熱とを併用した手段等と、センサと、温度制御装置とが設けられている。センサと温度制御装置とは赤外線ヒータの表面温度や熱風温度が予め決められた温度になるように構成されている。ちなみに、プリヒータにより加熱されるプリント配線板の温度が通常90〜150℃程度になるように使用される。
【0008】
次に、プリント配線板のはんだ付けは以下のように行われる。すなわち、予めフラックスが塗布されたプリント配線板をチャンバ体の搬入口から搬入する。すると、プリヒータによってプリント配線板が加熱され、予め塗布されているフラックスの乾燥と前置的活性化とが行われる。この加熱は予備加熱と呼称され、プリント配線板が溶融はんだの噴流波に接触する際のヒートショックを緩和する役割も有する。プリント配線板の予備加熱が完了すると、続いてはんだ槽上の噴流波にプリント配線板が接触し、被はんだ付け部に溶融はんだが供給され、はんだ付けが行われる。その後、プリント配線板は冷却され、チャンバ体の搬出口から搬出されて一連のフローはんだ付けが完了する。
【0009】
【特許文献1】特開2001−230538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示されるようなはんだ付け装置では、チャンバ体に金属(特にはステンレス)部材が使用される。そのため、溶融はんだやプリヒータからチャンバ体へ熱エネルギーが伝導し、チャンバ体から大量の熱エネルギーが大気中へ放出される。
【0011】
特にチャンバ体のスカートは250〜260℃程度の溶融はんだに浸漬されて接触しているために、このスカートから多量の熱エネルギーがチャンバ体へ伝導され、ひいては表面積が極めて大きいチャンバ体から大気中へ放出され損失となる。また、プリヒータからも熱線加熱や熱風加熱を介してチャンバ体へ熱エネルギーが伝導し、先と同様にチャンバ体から大気中へ放出され損失となる。
【0012】
温度で分析すると、プリント配線板を90〜150℃程度に加熱するプリヒータすなわち予備加熱の部分と、250〜260℃程度の溶融はんだを有するはんだ槽の部分と、プリント配線板の冷却が行われる大気温度(25℃)の部分との3つの部分が1つに繋がっている。プリント配線板が加熱される部分と冷却される部分とで分析すれば、2つの部分が1つに繋がっている。
【0013】
また、鉛フリーはんだが使用されるようになったが、その殆どは錫を主成分とする鉛フリーはんだである。したがって、はんだ槽内の溶融はんだ等に接触している部材すなわち鉄(ステンレス)部材はエロージョンが生じたり、甚だしくは孔が開いたりすることが問題になっている。
【0014】
本発明は、上述したような問題点に鑑みてなされたものであり、雰囲気を遮蔽したチャンバ体内ではんだ付けを行うはんだ付け装置であって、チャンバ体を放熱体とするエネルギー損失を低減して省エネルギー化を図り、消費電力の小さいひいては二酸化炭素発生量の小さいプリント配線板のはんだ付けを目的とする。また、例えばエロージョンに対するメンテナンス性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の雰囲気遮蔽はんだ付け装置は、雰囲気を遮蔽したチャンバ体内で溶融はんだの噴流波と被はんだ付けワークとを接触させてはんだ付けを行うようにした雰囲気遮蔽はんだ付け装置であって、前記チャンバ体は、はんだ槽に収容された溶融はんだ内に前記チャンバ体の開口部としてのスカート体が浸漬されると共に、複数に分割できるように一体的に形成され、前記分割箇所には、断熱性を有するシール部材が介装されていることを特徴とする。
特に、一連のはんだ付け工程の温度分布に合わせてチャンバ体を熱的に分割しつつ一体に構成することが好ましい。すなわち、はんだ槽に収容されている溶融はんだ内にチャンバ体の開口部としてのスカート体が浸漬されるようなはんだ付け装置では、はんだ槽内の溶融はんだが最高温度部を構成し、他はそれよりも低い温度である。したがって、最も多量の熱エネルギーがスカート体を介してチャンバ体に無駄に送られてエネルギー損失となる。そこで、チャンバ体を分割できるように一体的に形成され、分割箇所には断熱性を有するシール部材が介装されることで、損失となる熱エネルギーの伝導を遮断して損失を低減することができるようになる。
【0016】
また、本発明の雰囲気遮蔽はんだ付け装置において、前記チャンバ体は、前記スカート体とチャンバ本体とが分割できるように一体的に形成されていることを特徴とする。
すなわち、スカート体からチャンバ本体への熱エネルギーの伝導が遮断され、はんだ槽から大気中へ放出され損失となる熱エネルギーを遮断することができるようになり、消費電力を大幅に小さくすることができるようになる。また、スカート体ははんだ槽の溶融はんだに浸漬し、鉛フリーはんだによるエロージョンを生じても、容易に交換することができ、メンテナンス性が向上する。
【0017】
また、本発明の雰囲気遮蔽はんだ付け装置において、前記はんだ槽の高さ位置を可変する昇降装置を有することを特徴とする。
すなわち、昇降装置によりはんだ槽の高さ位置を下降させることで、スカート体がはんだ槽の溶融はんだの浸漬が解除されるとともに、チャンバ本体から取り外したり取り付けたりすることを容易に行うことが可能となる。
【0018】
また、本発明の雰囲気遮蔽はんだ付け装置において、前記スカート体の表面には、溶融はんだに対して耐侵食性を有する電気的絶縁層が形成されていることを特徴とする。
すなわち、微弱信号を取り扱うような半導体電子部品が搭載されたプリント配線板では、数10nA(ナノアンペア)程度のわずかなリーク電流や数10mV(ミリボルト)程度のわずかなリーク電圧でも特性が劣化し、非可逆的なストレスを受ける。したがって、数100V(ボルト)で数kW(キロワット)もの大電力を取り扱うはんだ槽とは絶縁さ
れている必要がある。
スカート体に溶融はんだに対して耐侵食性を有する電気的絶縁層を形成することによって、はんだ槽からの絶縁が可能になり、その絶縁層も侵食されて絶縁破壊を生じることがない。
【0019】
また、本発明の雰囲気遮蔽はんだ付け装置において、前記チャンバ体は、前記被はんだ付けワークの加熱領域に位置する第1のチャンバ本体と、冷却領域に位置する第2のチャンバ本体とが分割できるように一体的に形成されていると共に、前記チャンバ体内に配設された搬送コンベアが、前記加熱領域に位置する第1の搬送コンベアと前記冷却領域に位置する第2の搬送コンベアとに分割されていることを特徴とする。
すなわち、加熱領域に位置する第1のチャンバ本体から冷却領域に位置する第2のチャンバ本体への熱エネルギーの伝導が遮断され、はんだ槽から大気中へ放出され損失となる熱エネルギーを遮断することができるようになり、消費電力を大幅に小さくすることができるようになる。また、加熱領域と冷却領域とにチャンバ体を分割することに合わせて搬送コンベアも分割することにより、加熱領域から冷却領域への熱エネルギーの移動を解消することができるようになる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、チャンバ体を放熱体とするようなエネルギー損失が極めて小さくなり、少ない消費電力でプリント配線板のはんだ付けを行うことができる。すなわち、少ない消費電力ひいては二酸化炭素発生量が小さく濡れ性に優れたはんだ付け実装が安定して行えるようになる。
また、例えば、鉛フリーはんだによってスカート体が侵食されても、容易にスカート体を交換することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面に基づき、本発明による雰囲気遮蔽はんだ付け装置の好適な実施の形態を説明する。
図1は、本発明の雰囲気遮蔽はんだ付け装置を説明するための図であり、搬送コンベアの搬送方向の縦断面を示す図である。また、図2は、スカート体を説明するための斜視図である。本実施形態では、はんだ付けされるべき被はんだ部品として、例えば電子部品が搭載されたプリント配線板(以下、ワークWという)を取り上げて説明する。
【0022】
まず、図1に示すように、雰囲気遮蔽はんだ付け装置10の主要構成として、雰囲気を遮蔽するためのトンネル状のチャンバ体11と、チャンバ体11内でワークWを矢印方向に搬送する搬送コンベア12と、噴流波を形成する噴流波形成装置13とを備えている。
【0023】
チャンバ体11は、搬送コンベア12の搬送方向に対する縦断面で見て「へ」の字状のチャンバ本体11aと、このチャンバ本体11aに接続されたスカート体11bとを含んで構成されている。スカート体11bは、噴流波形成装置13が配置された位置のチャンバ本体11aに穿設された開口部14の開口を下方向に沿って、延長させる態様で接続されている。このスカート体11bの下側は、噴流波形成装置13のはんだ槽15に収容された溶融はんだ16内に浸漬している。チャンバ本体11aとスカート体11bとは、分割可能に一体的に形成されている。チャンバ本体11aとスカート体11bとの分割箇所には、例えばシリコーンゴム系の断熱性のシール部材17が介装されている。このスカート体11bの構成及び接続については図2を参照して後述する。
【0024】
次に、チャンバ本体11aには、ワークWを仰角搬送(θ1)する加熱領域と俯角搬送(θ2)する冷却領域とがある。チャンバ本体11aは、加熱領域に位置する第1のチャンバ本体11a1と、冷却領域に位置する第2のチャンバ本体11a2とが連設されて構成されている。第1のチャンバ本体11a1と第2のチャンバ本体11a2とは、分割可能に一体的に形成されている。第1のチャンバ本体11a1と第2のチャンバ本体11a2との分割箇所には、例えばシリコーンゴム系の断熱性のシール部材18が介装されている。ここで、シール部材18は、第1のチャンバ本体11a1と第2のチャンバ本体11a2との分割箇所を気密に封止すると共に断熱する役割を有する。
【0025】
また、第1のチャンバ本体11a1内には、ワークWを搬送する第1の搬送コンベア12aが搬入口19から頂部20に亘って配設されている。同様に、第2のチャンバ本体11a2内には、第2の搬送コンベア12bが頂部20から搬出口21に亘って配設されている。さらに、第1のチャンバ本体11a1及び第2のチャンバ本体11a2内には、複数の抑止板23が並設され、トンネル状のチャンバ本体11a内にラビリンスシール構造を形成している。
【0026】
第1のチャンバ本体11a1内であって、ワークWの搬送方向における噴流波形成装置13よりも前段側には、ワークWの予備加熱を行うプリヒータ25が配設されている。プリヒータ25には例えば電気的絶縁性を確保した電気ヒータ等が使用されている。さらに、プリヒータ25は、プリヒータユニットとして碍子等の耐熱性絶縁体を介装して、第1のチャンバ本体11a1に設けられ、数100Vで数kW程度のプリヒータ25と第1のチャンバ本体11a1との電気的絶縁を確実に行っている。また、プリヒータ25は、赤外線による熱線加熱を行う。そして、ヒータ表面温度をセンサにより検出し、温度制御装置により予め決められた所定の温度に維持するように当該ヒータに供給する電力を制御する構成である。なお、プリヒータ25は熱風加熱や、熱線加熱と熱風加熱との併用加熱の形態であってもよい。このプリヒータ25が配設されている領域は、ワークWが90〜150℃程度に予備加熱される。
【0027】
第1のチャンバ本体11a1内であって、ワークWの搬送方向における噴流波形成装置13よりも後段側には、窒素ガス等の不活性ガスを供給するノズル26が設けられている。このノズル26は、第1の搬送コンベア12aにより搬送されるワークWが噴流波と接触する領域に向けて窒素ガスを供給するように、窒素ガス供給の指向性が定められている。これにより、低酸素濃度の不活性ガス雰囲気をチャンバ体11内に形成する。なお、第1のチャンバ本体11a1の開口部14の開口を下方向に沿って、延長させるスカート体11bの下側は、はんだ槽15の溶融はんだ16に浸漬していることから、窒素ガスが開口部14から排出されることはない。
【0028】
第1のチャンバ本体11a1内の開口部14からは噴流波形成装置13により形成された噴流波が第1の搬送コンベア12aの高さまで吹き出している。噴流波形成装置13には、はんだ槽15内に設けられた図示しないヒータによって加熱された溶融状態のはんだ16が収容されている。噴流波形成装置13は、溶融はんだ16をポンプ27により吹き口体28の吹き口29に送給し、その吹き口29上に噴流波を形成する。なお、噴流波形成装置13には、はんだ槽15内の溶融はんだ16の温度を検出する図示しないセンサ及び温度制御装置が設けられている。そして、溶融はんだの温度をセンサにより検出し、温度制御装置により予め決められた所定の温度に維持するように当該ヒータに供給する電力を制御する。このはんだ槽15内の溶融はんだ16は、250〜260℃程度に加熱される。したがって、第1のチャンバ本体11a1の開口部14には、250〜260℃程度に加熱された噴流波が吹き出している。
【0029】
次に、上述したスカート体11bの構成及び接続方法について、説明する。スカート体11bは、噴流波形成装置13の吹き口29、ひいては噴流波を囲むような態様で第1のチャンバ本体11a1の開口部14に着脱できるように設けられている。
図2に示すように、スカート体11bは、上下に開口する箱状に形成されている。ここで、上側の開口は、チャンバ本体11aの開口部14と接合する接合開口31となる。この接合開口31の開口面の傾きは、ワークWを仰角搬送する傾きθ1と略同角度に形成されている。すなわち、接合開口31は、チャンバ本体11aの搬入口19側に取り付ける側に向かうほど低く、チャンバ本体11aの頂部20側に取り付ける側に向かうほど高く形成されている。更に、接合開口31の周縁であって、チャンバ本体11aの開口部14と接合する部分には、上述したようにシリコーンゴム系部材からなる断熱性のシール部材17が全周に亘って設けられている。ここで、シール部材17は、スカート体11bと第1のチャンバ本体11a1との分割箇所を気密に封止すると共に断熱する役割を有する。一方、下側開口37の開口面は、はんだ槽15の溶融はんだ16内に全体が浸漬するように、水平に形成されている。
【0030】
また、図2に示すように、スカート体11bの接合開口31の周縁の一部には、上方向に突出する位置規制板32が設けられている。また、スカート体11bの側面のうち、ワークWの搬送方向(図2に示す矢印方向)と平行する両側の側面には、それぞれ被係止部として引っ掛け固定具33が設けられている。一方、第1のチャンバ本体11a1の側面であって、ワークWの搬送方向と平行する両側の側面には、それぞれ係止部材としての係止具34が、引っ掛け固定具33に対応する位置に設けられている。係止具34には、操作部36が設けられている。操作部36は、図2に示す右側の係止具34bに示す状態から左側の係止具34aに示す状態のように回動できる。操作部36を左側の係止具34aに示すように回動することで、操作部36に設けられた引っ掛け部35が、上側に移動する。
【0031】
次に、スカート体11bを第1のチャンバ本体11a1に接続する場合、まずスカート体11bの位置規制板32を第1のチャンバ本体11a1の図示しない側板の予め決められた所定の位置に位置決めする。次に、全ての係止具34を係止具34bに示す状態にした後、引っ掛け部35をそれぞれスカート体11bの引っ掛け固定具33に引っ掛ける。その後、操作部36をそれぞれ回動させることで、引っ掛け部35が上側に移動し、スカート体11bが第1のチャンバ本体11a1に一体的に接続される。なお、第1のチャンバ本体11a1に接続したスカート体11bを取り外す場合は、操作部36を係止具34bに示すように回動させた後、スカート体11bの引っ掛け固定具33から引っ掛け部35を取り外せばよい。このようなワンタッチでスカート体11bを取り付けたり、取り外したりすることができるので、容易にスカート体11bを交換することができ、メンテナンス性が向上する。なお、このワンタッチ構造又はこれに類似する構造は、第1のチャンバ本体11a1と第2のチャンバ本体11a2との分割箇所にも用いられている。
【0032】
また、スカート体11bの表面には、電気的絶縁性を有し溶融はんだに対して耐侵食性を有するセラミックス等の層、窒化物層又は金属間化合物層(例:鉄−アルミ金属間化合物)等が形成されている。なお、電気的絶縁性を確保する為に、その厚さが30μm以上あることが望ましい。これにより、数100Vで数kW程度の電力を取り扱うはんだ槽15をチャンバ本体11aや搬送コンベア12から分断し、数10nA(ナノアンペア)程度や数10nV(ナノボルト)程度の微弱な電流・電圧を取り扱う半導体電子部品の保護を確実に行うことができるようになる。
【0033】
すなわち、プリヒータ25でも同様であるが、第1のチャンバ本体11a1に接合されたスカート体11bのように直接、はんだ槽15の溶融はんだ16内に浸漬される部材の場合、チャンバ本体11aやそれに繋がる搬送コンベア12の電気的絶縁性を確保することが特別な課題になっている。このように、電気的絶縁性を考慮するのは、電気的ストレスに対して極めて脆弱な半導体電子部品が搭載されているプリント配線板が直接に触れる部材だからである。
【0034】
次に、図1に戻り、噴流波形成装置13には、はんだ槽15の下側に昇降装置としてのエレベータ装置40が設けられている。エレベータ装置40は、はんだ槽15及び吹き口体28を昇降して上下位置を可変する。エレベータ装置40は、例えばモータ駆動による送りねじ式であってもよく、パンタグラフ式等であってもよい。ここで、エレベータ装置40がはんだ槽15を最も下方位置に下降させることで、スカート体11bの下方端と吹き口29上方端との間に間隙が生じる。この状態で、スカート体11bは、第1のチャンバ本体11a1に対して着脱を行うことができる。
【0035】
上述したように構成された雰囲気遮蔽はんだ付け装置10では、はんだ槽15の溶融はんだ16に対してチャンバ本体11aとスカート体11bとを断熱すると共に電気的に絶縁している。また、チャンバ本体11aと搬送コンベア12とを温度分布別に分割・断熱して一体に形成している。したがって、チャンバ体が巨大な放熱部材として作用することが無くなると共に、はんだ付け中のワークWを電気的ストレスから保護することができるようになる。
【0036】
また、例えば搬送コンベアが加熱領域から冷却領域に亘って連続して走行循環するようなはんだ付け装置では、加熱領域で熱エネルギーの供給を受けて温められ、続いて冷却領域で周囲へ熱エネルギーを放出して温度低下することを繰り返してしまい、熱エネルギーの送給装置として損失を増大させるように作動してしまう。しかし、本実施形態のように搬送コンベア12が加熱領域に位置する第1の搬送コンベア12aと冷却領域に位置する第2の搬送コンベア12bとから分割して構成することで、熱エネルギーの損失を極めて小さくすることができるようになる。
【0037】
しかも、雰囲気の密度分布から高温の雰囲気が溜まり易いチャンバ本体11aの頂部20(最も高い位置)で第1のチャンバ本体11a1及び第1の搬送コンベア12aと第2のチャンバ本体11a2及び第2の搬送コンベア12bとに分割して一体に形成している。また、加熱領域に位置する第1のチャンバ本体11a1及び第1の搬送コンベア12aと冷却領域に位置する第2のチャンバ本体11a2及び第2の搬送コンベア12bとに分割している。したがって、最も有効に損失発生部位を遮断することができる。
【0038】
このように、スカート体11bとチャンバ本体11aとによりはんだ槽15とチャンバ本体11aとを分割・遮断(断熱・電気的絶縁)すると共に、チャンバ本体11aの頂部20において第1のチャンバ本体11a1及び第1の搬送コンベア12aと第2のチャンバ本体11a2及び第2の搬送コンベア12bとに分割しているので、無駄な熱放出による熱損失を大幅に低減し、消費電力を大幅に小さくすることができるようになる。ひいては、二酸化炭素発生量を小さくすることができるようになる。
【0039】
なお、チャンバ体11を分割する箇所は上述した実施形態に限られない。例えば、温度分布から第1のチャンバ本体11a1を、プリヒータ25を配設した領域とはんだ槽15を配設した領域とに分割して一体に形成しても良い。すなわち、プリヒータ25を配設した領域はワークWを90〜150℃程度に加熱する領域であり、はんだ槽15を配設した領域ではプリント配線板の温度は250〜260℃程度になる。したがって、第1のチャンバ本体11a1をプリヒータ25を配設した領域とはんだ槽15を配設した領域とに分割すれば、熱損失を一層低減することができるようになる。すなわち、チャンバ体や搬送コンベアにおいて、熱量移動が生じないように構成することによって、チャンバ体や搬送コンベアが放熱装置として機能することを抑止することができるようになる。
【0040】
また、スカート体11bの構成は上述した実施形態に限られない。上述したスカート体11bは、図2に示すように4面の側板を一体的にして、上下に開口する箱状に形成されている。しかしながら、例えばスカート体は、4面の側板をそれぞれ分割できるように構成しても良い。側板を分割できるように構成し、一枚ずつ側板をチャンバ本体に取り付けたり取り外したりすることにより、はんだ槽を下降させなくともスカート体の着脱を行うことができる。この場合、スカート体は、4面の側板に限られず、どのような構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の雰囲気遮蔽はんだ付け装置は、消費電力が小さくひいては二酸化炭素発生量が小さくプリント配線板に与える電気的ストレスが無いはんだ濡れ性に優れたはんだ付けを行うことができる。したがって、環境負荷が小さく高品質なはんだ付け実装が可能なはんだ付け装置に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】雰囲気遮蔽はんだ付け装置の構成を示す図である。
【図2】スカート体の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0043】
11 チャンバ体
11a チャンバ本体
11a1 第1のチャンバ本体
11a2 第2のチャンバ本体
11b スカート体
12 搬送コンベア
12a 第1の搬送コンベア
12b 第2の搬送コンベア
15 はんだ槽
16 溶融はんだ
17 シール部材
18 シール部材
40 エレベータ装置(昇降装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雰囲気を遮蔽したチャンバ体内で溶融はんだの噴流波と被はんだ付けワークとを接触させてはんだ付けを行うようにした雰囲気遮蔽はんだ付け装置であって、
前記チャンバ体は、はんだ槽に収容された溶融はんだ内に前記チャンバ体の開口部としてのスカート体が浸漬されると共に、複数に分割できるように一体的に形成され、
前記分割箇所には、断熱性を有するシール部材が介装されていることを特徴とする雰囲気遮蔽はんだ付け装置。
【請求項2】
前記チャンバ体は、前記スカート体とチャンバ本体とが分割できるように一体的に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の雰囲気遮蔽はんだ付け装置。
【請求項3】
前記はんだ槽の高さ位置を可変する昇降装置を有することを特徴とする請求項2に記載の雰囲気遮蔽はんだ付け装置。
【請求項4】
前記スカート体の表面には、溶融はんだに対して耐侵食性を有する電気的絶縁層が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の雰囲気遮蔽はんだ付け装置。
【請求項5】
前記チャンバ体は、前記被はんだ付けワークの加熱領域に位置する第1のチャンバ本体と、冷却領域に位置する第2のチャンバ本体とが分割できるように一体的に形成されていると共に、前記チャンバ体内に配設された搬送コンベアが、前記加熱領域に位置する第1の搬送コンベアと前記冷却領域に位置する第2の搬送コンベアとに分割されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の雰囲気遮蔽はんだ付け装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−147314(P2010−147314A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−324086(P2008−324086)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(390008497)日本電熱株式会社 (32)
【Fターム(参考)】