説明

雲台一体型カメラ

【課題】フロントガラスへの汚れの固着を軽減する。
【解決手段】カメラ内部搭載の放熱ファンから吐き出されるエアーを導出し、フロントガラスに吹き付けるようにした。具体的には、パン軸及びチルト軸の駆動手段を収納する密閉構造の筐体と前記筐体の外側を覆う外側ケースとを有するボディーと、前記ボディーのチルト軸により回動可能に支持されるカメラ部と、前記ボディーのパン軸を支持するベースと、を備える雲台一体型カメラにおいて、前記筐体と前記外側ケースとの間の空間に、前記筐体を空冷する気流を発生させるファンと、前記気流の少なくも一部を、前記カメラ部のフロントガラスに噴射する導風手段と、を更に備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動雲台とテレビカメラが一体に構成され、屋外で使用される雲台一体型カメラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、屋外用の雲台一体型カメラが知られる(例えば、特許文献1参照)。
図8は、従来の雲台一体型カメラの外観図である。この雲台一体型カメラは屋外での監視撮影用であり、撮像光を取り入れるためにカメラ本体前方に設けられるフロントガラスは、ヒータによる加熱が可能なデフロストガラスになっている。また、フロントガラスの外側に付着した雨などを拭き払う、電動のワイパーを備えている。更に、洗浄水をフロントガラスに向けて噴射するウォッシャー(図示せず)を備えるものもある。
【0003】
この他、本発明に関連する技術として、窓部材に吹き付けるパージエアの供給路に本体内側の熱を放熱させるための冷却装置、吸熱及び放熱フィン等を設けた、耐環境性カメラハウジングが知られる(例えば、特許文献2参照)。
また、カメラケースの前面に取り付けて、別途供給される圧縮空気をその前面に満たすことで粉塵等の進入を防止するエアーパージフードが知られる(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】意匠登録第1348897号公報
【特許文献2】特開平9−203950号公報
【特許文献2】特開2001−108880号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の雲台一体型カメラでは、特にフロントガラスのデフロスターを作動させた際、フロントガラスに付着した汚れ等が乾いて固まってしまうと、カメラケ−ス標準搭載のワイパ−操作だけでは汚れが拭き取れなくなってしまうという問題があった。例えば、海岸付近のように波のしぶきを浴びる場所では、塩分の固着により、視界が顕著に悪化する。
ウォッシャ−により洗浄水をかける方法もあるが、予めタンクに貯めた水を使うので使用量には限りがある。また洗浄水が飛散して通行人等へかかることが予想される環境では、安易に使用できない。そのため、作業員が雲台一体型カメラの設置場所へ出向いて、タオル等で人力で清掃をする他に方法がなかった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み為されたもので、フロントガラスへの汚れの固着を軽減することができる雲台一体型カメラを安価に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために、パン軸及びチルト軸の駆動手段を収納する密閉構造の筐体と、前記筐体の外側を覆う外側ケースと、を有するボディーと、前記ボディーのチルト軸により回動可能に支持されるカメラ部と、前記ボディーのパン軸を支持するベースと、を備える雲台一体型カメラにおいて、前記筐体と前記外側ケースとの間の空間に、前記筐体を空冷する気流を発生させるファンと、前記気流の少なくも一部を、前記カメラ部のフロントガラスに噴射する導風手段と、を更に備えた。
【0008】
上記の構成において更に、前記フロントガラスは、デフロスタを有し、前記筐体は、ダイカスト製の2ピース構成であってその一方のピースにおいて前記パン軸及びチルト軸の駆動手段を固定するものであり、前記ファンは、前記デフトスタと同時に作動するようにした。
【0009】
上記の構成において更に、前記カメラ部は、前記フロントガラスを前面に有してカメラ本体を密閉して収納するカメラケースと、前記カメラケースの上面を覆うカメラカバーと、該カメラケースと該カメラカバーとが、前記導風手段の一部を構成するようにした。
【発明の効果】
【0010】
本発明の雲台一体型カメラによれば、雲台部を空冷するために発生させた気流を、カメラ部のフロントガラスに向けて吹き付けるようにしたので、フロントガラスへの汚れの固着を軽減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の実施形態を概略的に説明する図である。本実施形態に係る雲台一体型カメラは、カメラ部1と、ボディー2と、ベース3とで構成される。
カメラ部1は、カメラ本体11、レンズ12、映像信号回路基板13(いずれも不図示)をカメラケース14にほぼ密閉して収納したものである。カメラケース14は、箱型の容器であり、前面には、撮像光を取り入れる透明ガラス板のフロントガラス15と、フロントガラス15の外側を拭く電動のワイパー16を備える。
【0012】
ボディー2は、電動雲台としての機能を実現する部分であり、その左側面中央付近でカメラ部1をチルト軸により軸支し(いわゆる片持ち式)、ボディー2の底部においてベース3からパン軸により軸支されている。ボディー2は、チルト軸とそれに直交するパン軸とをそれぞれ独立に回動させるためのステッピングモータやギヤ等からなる2つの駆動手段21及び22と、カメラ部1やボディー2自身に電源供給する電源回路23と、ボディー2の外形を構成する外側ケース24と、駆動手段21及び22や電源回路23を冷却するための気流を発生させるブロアーファン25と、を備える。外側ケース24は、丸みと帯びた箱型であり、その前面及び背面と上面及び底面とが接する4つの角部付近にスリット状の通気孔26を備え、ブロアーファン25は少なくとも前面上側の通気孔26から空気を排気されるように動作する。
【0013】
ベース3は、底部の4隅にボルト取付け孔を有する箱型の台であり、ボディー2をパン軸で軸支し、またパン軸を介して取り出した映像信号や電源等を背面の端子に接続する配線、端子台、保安回路等を収納する。
【0014】
図1の雲台一体型カメラは、要するに、ボディー2の前面上側の通気孔26から吐き出された空気により、フロントガラス15の表面上に気流を発生させ、表面に付着した海水の飛沫等の水滴を速やかに排除する(脱落させる)ものである。フロントガラス15の表面付近に生じさせる気流は、安定した向き及び強さの気流(層流)で、下向きに近いことが望ましい。例えば、前面上側の通気孔26から噴出される向きがほぼ真横になるように、通気孔26の配置や形状が選定され、或いは、ボディー2(外側ケース24)内にノズル状構造が設けられる。
【実施例1】
【0015】
図2は、実施例1に係る雲台一体型カメラの分解斜視図である。図3は、同雲台一体型カメラの左側面図である。図4は、図3に示すA−A線における断面を矢印(前方側)から見た、同雲台一体型カメラの断面図である。図5は、同雲台一体型カメラを上方から見た断面図である。本例の雲台一体型カメラの構成において、先の実施形態にほぼ対応する構成要素には便宜的に同じ符号を付して、冗長な説明を省略する。本例の説明において、方向を表すときは、いかなる部材に対しても図2におけるカメラの撮像方向を前方とした基準に従う。
【0016】
本例の雲台一体型カメラは、屋外、または屋外に準ずる環境に設置される。そのため、ボディー2の外形を構成する外側ケース24の内側に、防水のための密閉構造の筐体27を有し、駆動手段21及び22や電源回路23等は、全て筐体27に収納される。
筐体27は、雲台一体型カメラの左右方向に分割する、アルミダイカスト製の筐体箱27aと筐体蓋27bとで構成される。筐体箱27aには、カメラ部1をチルト(上下)方向に回動させる駆動手段21と、撮影装置70をパン(左右)方向に回動させる駆動手段22とが取り付けられる。筐体箱27aと筐体蓋27bとは、ボルトによりパッキン(図示せず)と共締めされることで、密閉構造の箱となる。
【0017】
図2等に示すように、駆動手段21は、筐体箱27a内の左側面において、前後方向における略中央に設けられ、チルト軸が筐体箱27aを貫通して外に取り出せるようになっている。貫通部はOリングを2重に設けるなどしてシールされている。
駆動手段22は、筐体箱27a内の底面において、前後方向における略中央に設けられ、パン軸が筐体箱27aを貫通して外に取り出せるようになっている。パン軸の貫通部も同様にシールされている。パン軸は、前方から見るとボディー2の左右中央から左寄りにずれているが、ボディー2の左側に設けられるカメラ部1の重量も含めた重心付近にパン軸が設けられた結果である。
【0018】
本例の駆動手段21及び22は、その機構部分であるステッピングモータ、1組のプーリー、ハーモニックギヤ、ロータリエンコーダ、電気的接続手段をユニット化したものであり、駆動手段21及び22で共通化している。電気的接続手段はいわゆるスリップリング等であり、軸の両側間で無限或いは有限回動可能に電気的接続を維持し、電源や映像信号を伝達する。これにより、カメラ部1とボディー2の間、及びボディー2とベース3との間の電気的接続は、これらの軸の貫通部内で実現され、ケーブル類が外部に露出することは無い。このようにカメラ部1(カメラケース14)とボディー2とは特殊な軸で結合しており、専用に設計された組み合わせ以外には交換不能である。このことを以って、雲台一体型と呼んでいる。ただしカメラケース14内のカメラ本体11は、カメラケース14に収まれば交換できる。
【0019】
更に図5等に示すように、筐体27内には、ファン28a、bが配設されている。ファン28aは、電源回路23に付属する様態で配置されており、ファン28a、bにより、筐体27内で空気が循環され、駆動手段21及び22や電源回路23が強制空冷される。
なお、本例ではオプションとして、ボディー2の右側方にチルト軸に連結した照明装置等を取り付けられるよう、チルト軸がカメラ部1と連結する側とは反対側にも伸びている。
【0020】
再び図2に戻り、外側ケース24は、少なくとも左右方向に2分した複数の樹脂性或いは板金製の部材で構成され、各部材が筐体27の外側にねじ等で固定されることで、ボディー2の外形を形成する。この外形は、全体的に丸みを有した箱型とすることで、風圧を軽減している。外側ケース24と筐体27の間には、その形状の違いから必然的に空隙(空間)が生じている。
また外側ケース24は、その左側面の前寄りに通気孔26aが、また底面に通気孔26b(不図示)が、それぞれ穿設されている。通気孔26aは、カメラ部1の通常のチルト位置におけるフロントガラス15のほぼ真横に位置し、上記空間を流れて通気孔26aから排出される排気が、フロントガラス15の表面に届くようになっている。
【0021】
筐体27の上には、ブロアーファン25が設けられる。すなわち、外側ケース24と筐体27と間の空間に気流を強制的に発生させ、筐体27からの熱伝達を促す。この気流(の少なくとも一部)は、通気孔26bから吸気され、ブロアーファン25から噴出された後、筐体27の上面を前方に向かい、前面で下向きに向きを変え、その後外側ケース24の内側に設けられたリブ**により流路の断面が徐々に絞られながら、通気孔26aから排気される。ブロアーファン25は外気を扱うため、防滴等の環境適応型のACファンまたはDCファンを用いる。またファン25への給電は、筐体27内部から密閉構造の導入端子や接栓等(不図示)を介して行う。ブロアーファン25として、本例ではシロッコファンを用いたが軸流ファンでも良い。ブロアーファン25は、遠隔制御により操作可能であり、必ずしも常時稼動させる必要はなく、一例として事前の設定により、筐体27内部の温度が所定値を超えたときや、フロントガラス15のデフロスタを作動させたときに、自動的に稼動させる。
【0022】
本実施例において、筐体27の分割方向を、雲台一体型カメラの左右方向以外の方向にすると、駆動手段21等の内蔵部品へのアクセスが困難になるため、現実的には左右方向のみとなる。またそのような筐体27をアンダーカット無しでダイカスト形成する場合、筐体27に施せる放熱フィンの方向が、ブロアーファン25の気流の向きと必ずしも一致しない。そのため放熱フィンは、筐体27の左右の側面のみに設けた。
【0023】
本実施例によれば、コンプレッサ等のエアー供給源を別途搭載することなく、現状のカメラの大部分の構成をそのまま用いて、フロントガラス15のエアーブローを実現できる。
【実施例2】
【0024】
図6は、実施例2に係る雲台一体型カメラを概略的に説明する図であり、その正面および左側面が表されている。本例の雲台一体型カメラは、先に説明した実施形態に係る雲台一体型カメラに、ノズル4を外付けしたものである。
ノズル4は、樹脂性の筒状部材であり、一方の口が通気孔26aを覆うように外側ケース24に取り付けられ、他方の口(噴射口)がフロントガラス15に向いており、通気孔26aからの排気を流速を高めてフロントガラス15に噴射する。噴射口は、チルト動作をしてもカメラ部1と機械的に干渉せず、かつ、カメラ部1の視野を妨げない範囲でなるべくフロントガラス15に近づけることが望ましく、カメラ部1の大きさに合わせて、複数種類製作する。ノズル4は4つのつめを通気孔26aのスリットに嵌合させて外側ケース24に固設させ、現状の外側ケース24には特別な加工を要しない。
【実施例3】
【0025】
図7は、実施例3に係る雲台一体型カメラの断面図である。本例の雲台一体型カメラは、通気孔26aではなく、チルト軸周辺から排気させ、その排気がカメラカバー内を通ってフロントガラス15に到達するようにした点で、実施例1と異なる。
図7に示すように、本例の雲台一体型カメラのカメラ部1は、カメラケース14の上面側と底面側に、カメラカバー17a、17bを有する。カメラカバー17a、17bは、各面を覆う三角屋根上の部材であり、太陽光の輻射熱や落下物からカメラケース14を保護し、降雪時に雪の付着を防ぎ、またチルト角が水平から大きくずれたときの風圧を軽減するように機能する。屋根の妻側は、庇(破風)の先端が下を向くように丸みを持たせてある。
外側ケース24は、チルト軸を貫通させるために円形に開口しているが、本例ではその開口の周囲を取り囲むような、チルト軸と同軸の円筒形ダクト24−1を形成してある。また、対向するカメラカバー17a、bにも、同軸の半円筒形ダクトを形成する。ただしカメラカバー17bの半円筒形ダクトは円筒形ダクトと共働して気流を塞ぐように作用する。なお、外側ケース24には、ブロアーファン25により生じた気流を上記開口に導くために、リブ等を適宜設けておく。
これにより、ブロアーファン25による気流は、外側ケース24のチルト軸上方から外に出るが、その一部が上記ダクトによりカメラカバー17a内に導かれ、カメラケース14とカメラカバー17aとの間の空間を通って前方に進み、庇の内側で下向きの気流となって、フロントガラス15に吹き付けられることになる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
風力源が空冷と兼用のエアブローによる雨滴等の除去は、カメラケースにとどまらず、車両や船舶、その他建造物等のデフロスタ付き風防ガラス等にも好適である。ブローの風圧を高めれば、ワイパーレスにできる可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態に係る雲台一体型カメラを概略的に説明する図
【図2】実施例1に係る雲台一体型カメラの分解斜視図
【図3】実施例1に係る雲台一体型カメラの左側面図
【図4】図3に示すA−A線における同雲台一体型カメラの断面図
【図5】実施例1に係る雲台一体型カメラの上方断面図
【図6】実施例2に係る雲台一体型カメラを概略的に説明する図
【図7】実施例3に係る雲台一体型カメラの断面図
【図8】従来の雲台一体型カメラの外観図
【符号の説明】
【0028】
1…カメラ部、11…カメラ本体、12…レンズ、13…映像信号回路基板、14…カメラケース、15…フロントガラス、16…ワイパー、17a,17b…カメラカバー、
2…ボディー、21,22…駆動手段、23…電源回路、24…外側ケース、25…ブロアーファン、26a,b…通気孔、27…筐体、28a,28b…ファン、
3…ベース、
4…ノズル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パン軸及びチルト軸の駆動手段を収納する密閉構造の筐体と、前記筐体の外側を覆う外側ケースと、を有するボディーと、
前記ボディーのチルト軸により回動可能に支持されるカメラ部と、
前記ボディーのパン軸を支持するベースと、を備える雲台一体型カメラにおいて、
前記筐体と前記外側ケースとの間の空間に、前記筐体を空冷する気流を発生させるファンと、
前記気流の少なくも一部を、前記カメラ部のフロントガラスに噴射する導風手段と、を更に備えたことを特徴とする雲台一体型カメラ。
【請求項2】
前記フロントガラスは、デフロスタを有し、前記筐体は、ダイカスト製の2ピース構成であってその一方のピースにおいて前記パン軸及びチルト軸の駆動手段を固定するものであり、前記ファンは、前記デフトスタと同時に作動することを特徴とする、請求項1記載の雲台一体型カメラ。
【請求項3】
前記カメラ部は、前記フロントガラスを前面に有してカメラ本体を密閉して収納するカメラケースと、前記カメラケースの上面を覆うカメラカバーと、該カメラケースと該カメラカバーとが、前記導風手段の一部を構成することを特徴とする請求項2記載の雲台一体型カメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−141414(P2011−141414A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1827(P2010−1827)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】