説明

電力の扱い方法及び装置

【課題】入力線から低減された平均電力を引き出しつつ高いピーク電力を送達することが可能なCTシステムを提供する。
【解決手段】装置が、入力電力線のピーク負荷要件を軽減するために、電力送達をこの入力電力線と分担するように構成されている蓄積装置(28)を含む固定式計算機式断層写真法(CT)システムを含んでいる。他の観点では、該蓄積装置(28)は複数の大容量キャパシタを含んでいる。さらに他の観点では、システムが、X線源と、この線源から放出されたX線を受光するように配置されているX線検出器と、上述の線源に結合されて動作し、ガントリが減速され及び/又は管ロータが減速されたときにエネルギを回収するエネルギ蓄積装置とを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的には、診断撮像の方法及び装置に関し、さらに具体的には、計算機式断層写真法(CT)の電力要件の扱いを提供する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
既存のCTシステムは、大きな入力電力という要件を有し、CTシステムの購入者に高い据付け経費を強いている。この電力は主にX線管に要求され、X線管はピークでは100kWを利用するが、平均では4kWしか利用しない。
【特許文献1】米国特許第6968224号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、入力線から低減された平均電力を引き出しつつ高いピーク電力を送達することが可能なCTシステムが極めて望ましい。以下で説明するのは、エネルギを蓄積して入力線から要求されるピーク電力を低減するエネルギ蓄積装置を用いたCTシステムである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一観点では、装置が、入力電力線のピーク負荷要件を軽減するために、電力送達をこの入力電力線と分担するように構成されている蓄積装置を含む固定式計算機式断層写真法(CT)システムを含んでいる。
【0005】
他の観点では、装置が、入力電力線のピーク負荷要件を軽減するために、電力送達をこの入力電力線と分担するように構成されており複数の大容量キャパシタを含んでいる蓄積装置を含む計算機式断層写真法(CT)システムを含んでいる。
【0006】
さらに他の観点では、システムが、X線源と、この線源から放出されたX線を受光するように配置されているX線検出器と、上述の線源に結合されて動作し、ガントリが減速され及び/又は管ロータが減速されたときにエネルギを回収するエネルギ蓄積装置とを含んでいる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本書では、例えば限定しないがX線システムのようなイメージング・システムに有用な方法及び装置を記載する。これらの装置及び方法は図面に関して説明され、図面では、類似の参照番号は全ての図面において同じ要素を示している。かかる図面は、限定のためではなく説明のためのものであり、本発明の装置及び方法の実施形態の一例の説明を容易にするために本書に含まれる。
【0008】
本書で説明する一実施形態は、エネルギ蓄積装置を用いてピーク管電力の要求時に電力送達能力を入力線と分担させ、これにより施設電力の要件を軽減する。エネルギをローカルで蓄積する方法としては、限定しないが弾み車(機械的エネルギ)、バッテリ(化学的エネルギ)、超伝導磁石(磁気エネルギ)、及びキャパシタ(静電エネルギ)を含めて多くの方法が存在する。これらの技術の各々が固有の利点及び欠点の組を呈する。しかしながら、「大容量キャパシタ」の近年の発展は、これら大容量キャパシタを特に魅力的なものとしている。
【0009】
所謂「大容量キャパシタ(ultra-capacitor)」は、他のキャパシタ技術に比較して20倍近くのエネルギ蓄積密度を提供する。大容量キャパシタは過去10年間に開発されており、電力設計業界では周知であって多数の供給業者(Maxwell社、Nesscap社及びPanasonic社等)から容易に入手可能である。例えば、標準的な電解キャパシタではエネルギ密度が500ジュール/リットル未満であるのに対し、典型的な容易に入手可能な大容量キャパシタでは10,000ジュール/リットルを上回る。バッテリに比較して大容量キャパシタは所与の容積についてさらに大きいピーク電力を送達することができ、100万回を超える完全(deep)充電サイクルを提供する仕様となっている。バッテリは、1000回乃至10,000回の充電サイクルしか提供せずに消耗し、最も楽観的なシナリオでもCT応用では1年未満でバッテリ交換となる。
【0010】
図1について説明する。今日の固定式計算機式断層写真法(CT)システム10は、150kVAの許容入力電力を要求する。システム10は、絶縁変圧器12、ソフト・スタート・サーキットリ16、整流平滑回路(rectifier/filter)18、X線高電圧電源22、及びX線管24に結合されている。典型的には、X線インバータ20も存在しており、同様に低電力電子回路14も存在している。絶縁変圧器12はまた、X線発生以外のサブシステム(データ取得、再構成コンピュータ、ホスト・コンピュータ及びガントリ電子回路等。低電力電子回路14としてまとめてある)用の約20kWの補助電力を供給する。CTシステム(管、補助負荷に加えて、システムの非効率的な各部分)に要求される全電力を考慮すると、140kWピーク電力が電力線から要求される。すなわち「150kVA」に定格設定された施設電力要件ということになり、このためシステムを据え付けるのにCT購入者が付加的な高経費を負担しなければならなくなる。「固定式CTシステム」とは、建物又はトラックに恒久的に設置されるものを意味する。このシステムは、可動式CアームCTのような態様では可動でない。一実施形態では、このCTシステムは、少なくとも32スライスの能力を有する点で容積CT(VCT)である。
【0011】
図2は、施設電力線から要求されるピーク電力を低減するために、大容量キャパシタを用いてエネルギをローカルで蓄積する一実施形態を示す。大容量キャパシタ28及び制御インバータ26が、絶縁変圧器12とX線インバータ20との間に挿入されている。制御インバータ26は入力電力を制限して予め決められた定格で大容量キャパシタ・バンク28を充電するので、図1に示すソフト・スタート回路16は排除され得る。制御回路29を用いて、整流器/インバータ26及び/又は大容量キャパシタ28を制御することができる。
【0012】
大容量キャパシタ・バンク28は、施設電力線の定格を低減し得るように十分に長く電力を供給するサイズとされる。例えば、大容量キャパシタから5秒間の持続時間にわたって60kWが要求される場合には、下記の量のエネルギに等しくなる。
【0013】
K[J]=P[W]・T[s]
K=60k[W]・5[s]=300k[J]
すると、要求されるキャパシタンスは、
C[F]=2K/(V−V
=2・300k「J」/(700[V]−350[V]
=1.63[F]
となる。ここで、Vは大容量キャパシタの初期電圧であり、Vは大容量キャパシタの最終電圧である。
【0014】
1.63Fであり700Vピークの能力のある複数の大容量キャパシタから成るバンクは、約40リットルの容積を有する。このため、小型のキャビネットに容易に収納することができる。この例での大容量キャパシタ・バンクの経費は手頃である。図2に戻って、この例による大容量キャパシタ・バンクを用いれば、施設電力を150kVA線から90kVA線まで低減することができる。これにより、顧客にとっては大幅な節約となり、またVCTシステムが可動式トレーラに設けられているようなVCT可動式構成が可能となる。
【0015】
図3は、大容量キャパシタ28の制御用のインバータのトポロジ26の可能な具現化形態の概略図を示す。三相整流器ブリッジ50が、Hブリッジ・インバータ52、直列共振インダクタ54、キャパシタ56、高周波変圧器58、複数の整流器60、及び大容量キャパシタ28に結合されている。このトポロジは、直列共振コンバータ26を用いた大容量キャパシタ28の完全な制御を提供しており、ソフト・スタート回路16の排除、低損失切換え、小さい電磁気的(EM)雑音、及び小型化した高周波変圧器という利点を有する。
【0016】
図4は代替的な実施形態を示しており、ここでは大容量キャパシタ28を用いて補助電力負荷用の短期的な予備電力を供給することができる。また、CTガントリ・モータの駆動電力も大容量キャパシタ28から得られるものとして示されている。電力コンバータ32が大容量キャパシタ28に結合されており、小電力電子回路14へ電力を供給している。また、モータ・ドライブ34が大容量キャパシタ28及びガントリ・モータ36に結合されている。これにより、モータ36がガントリを減速させたときに大容量キャパシタ28がエネルギを回収するのを可能にすることにより発電ブレーキ回路及び抵抗器が不要となる。このエネルギ回収動作は電力を節減する(3kWまで又はCT走査時全電力の約10%)。
【0017】
図5はもう一つの代替的な実施形態を示しており、ここでは昇圧コンバータ38が大容量キャパシタ28とX線インバータ20との間に挿入されている。これにより、大容量キャパシタのエネルギのさらに十分な活用が可能になり、X線インバータ20の入力に対し、より少ない電圧変動を与える。
【0018】
技術的効果としては、低減されたCTシステム入力電力の入力要件、廉価な据付け経費及び可能なVCT可動式構成を許容すること、並びに付加的な低経費化のための一体化された無停電型電力供給(UPS)作用等が挙げられる。また、技術的効果として、ガントリ駆動モータからのエネルギ回収による平均電力要件の低減(10%までの電力消費の低減)、及びX線管減速時のモータからのエネルギ回収も挙げられる。昇圧コンバータ38を備えた実施形態は、大容量キャパシタ・エネルギの最大限の活用を可能にする。
【0019】
言うまでもなく、本書に記載する方法はシステム10での実施に限定されておらず、他の多くの形式及び変形のイメージング・システムと共に用いることができる。一実施形態では、処理回路は、本書に記載する作用を果たすようにプログラムされているコンピュータであり、本書で用いられるコンピュータとの用語は、当技術分野でコンピュータと呼ばれる集積回路に限らず、コンピュータ、プロセッサ、マイクロコントローラ、マイクロコンピュータ、プログラム可能型論理コントローラ、特定応用向け集積回路、及び他のプログラム可能型回路を広範に指す。本書に記載する方法は、患者の設定で説明されているが、本発明の利点は、小動物研究に典型的に用いられるシステムのような人体向け以外のイメージング・システムにおいても享受されるものと思量される。本書に記載する方法は、医療の設定で説明されているが、本発明の利点は、産業設定、又は例えば限定しないが空港若しくは他の輸送拠点での小荷物走査用CTシステムのような輸送設定において典型的に用いられるシステムのような医用以外のイメージング・システムにおいても享受されるものと思量される。
【0020】
本書で用いる場合には、単数形で記載されており単数不定冠詞を冠した要素またはステップとの用語は、排除を明記していない限りかかる要素又はステップを複数備えることを排除しないものと理解されたい。さらに、本発明の「一実施形態」に対する参照は、所載の特徴を同様に組み入れている追加の実施形態の存在を排除しないものと解釈されたい。
【0021】
以上、実施形態の例について詳細に説明した。これらのアセンブリ及び方法は、本書に記載する特定の実施形態に限定されておらず、各々のアセンブリ及び/又は方法の構成要素を本書に記載する他の構成要素とは独立に且つ別個に用いてよい。
【0022】
様々な特定的な実施形態について本発明を説明したが、当業者は、特許請求の範囲の要旨及び範囲内にある変形を施して本発明を実施し得ることを認められよう。また、図面の符号に対応する特許請求の範囲中の符号は、単に本願発明の理解をより容易にするために用いられているものであり、本願発明の範囲を狭める意図で用いられたものではない。そして、本願の特許請求の範囲に記載した事項は、明細書に組み込まれ、明細書の記載事項の一部となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】公知の容積計算機式断層写真法を示す図である。
【図2】施設電力線から要求されるピーク電力を低減するために、大容量キャパシタを用いてエネルギをローカルで蓄積する一実施形態を示す図である。
【図3】大容量キャパシタの制御用のインバータのトポロジの可能な具現化形態の概略図である。
【図4】大容量キャパシタを用いて補助電力負荷用の短期的予備電力を供給することのできる代替的な実施形態を示す図である。
【図5】昇圧コンバータが大容量キャパシタとX線インバータとの間に挿入されているもう一つの代替的な実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0024】
10 CTシステム
12 絶縁変圧器
14 低電力電子回路
16 ソフト・スタート・サーキットリ
18 整流平滑回路
20 X線インバータ
22 高電圧電源
24 X線管
26 整流器/インバータ
28 大容量キャパシタ・バンク
29 制御回路
32 電力コンバータ
34 モータ・ドライブ
36 ガントリ・モータ
38 昇圧コンバータ
50 三相整流器ブリッジ
52 Hブリッジ・インバータ
54 直列共振インダクタ
56 キャパシタ
58 高周波変圧器
60 複数の整流器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電力線のピーク負荷要件を軽減するために、電力送達を前記入力電力線と分担するように構成されている蓄積装置(28)を含む固定式計算機式断層写真法(CT)システムを備えた装置。
【請求項2】
前記蓄積装置は複数の大容量キャパシタ(28)を含んでいる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記複数の大容量キャパシタ(28)の電圧を制御するように構成されている直列共振コンバータ(26)をさらに含んでいる請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記複数の大容量キャパシタ(28)の出力に接続されている昇圧コンバータ(38)をさらに含んでいる請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記複数の大容量キャパシタ(28)の出力に接続されている昇圧コンバータ(38)をさらに含んでいる請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記エネルギ蓄積装置は、ガントリ(36)を減速する及び/又は管ロータを減速することにより給電される、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
入力電力線のピーク負荷要件を軽減するために、電力送達を前記入力電力線と分担するように構成されており複数の大容量キャパシタ(28)を含んでいる蓄積装置を含む計算機式断層写真法(CT)システムを備えた装置。
【請求項8】
前記複数の大容量キャパシタ(28)の電圧を制御するように構成されている直列共振コンバータ(26)をさらに含んでいる請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記複数の大容量キャパシタ(28)の出力に接続されている昇圧コンバータ(38)をさらに含んでいる請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記複数の大容量キャパシタ(28)の出力に接続されている昇圧コンバータ(38)をさらに含んでいる請求項7に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−124022(P2008−124022A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−290251(P2007−290251)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】