説明

電力ケーブル及びそれに用いる半導電性樹脂組成物

【課題】耐スコーチ特性に優れた半導電性樹脂組成物、及び当該樹脂組成物を用いた環境ストレスクラック耐性に優れた電力ケーブルを提供する。
【解決手段】外部半導電層が半導電性樹脂組成物を用いて被覆された電力ケーブルであって、該半導電性樹脂組成物がポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、カーボンブラックと、分解温度が半減期10時間で118℃以上130℃以下である架橋剤0.1〜0.3質量部と、架橋助剤0.5〜3.0質量部とを含有する電力ケーブル、及び該電力ケーブルに用いる半導電性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力ケーブル及びそれに用いる半導電性樹脂組成物に関し、さらに詳しくは優れた耐スコーチ特性と耐環境ストレスクラック性とを備えた電力ケーブル及びそれに用いる半導電性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電力ケーブルは、導体と導体上に順次形成された内部半導電層、絶縁層及び外部半導電層によって構成されている。また、この電力ケーブルの製造は、通常、各層を形成する樹脂組成物を導体上に同時に押出して(3層同時押出成形)被覆した後、これを架橋ゾーンに導いてシリコーンオイルや窒素ガス下で加圧加熱することにより該組成物を架橋することにより行っている。
半導電層用樹脂組成物には、導電性を付与するため一般的にカーボンブラックが配合されているが、これが半導電層用材料の溶融粘度の上昇を招き、押出し時の剪断発熱量が大きくなって押出被覆時にスコーチ(早期架橋)が生じてしまう。これを避けるため、通常は絶縁材料よりも分解温度の高い架橋剤が選択され使用される。
しかしながら、本発明者の知見によれば、電力ケーブルは、押出被覆した樹脂組成物を架橋ゾーンでシリコーンオイルや窒素ガス下で加圧加熱することにより架橋して製造されるため、外部半導電層用の樹脂組成物に配合された架橋剤の一部が架橋反応に寄与する前にシリコーンオイルや窒素ガス中に拡散、揮発してしまう。特に、分解温度の高い架橋剤を用いるほど架橋反応前に拡散、揮発する割合が高くなり、これが外部半導電層の外表面付近の架橋度の低下を招く原因となっている。外部半導電層の外表面が十分に架橋されない状態で電力ケーブルが運転に供された場合、外導クラック(環境ストレスクラック)が発生し問題となる。
【0003】
前記スコーチの問題を回避するために架橋剤を添加しない半導電層用材料を用いることが提案されている(特許文献1及び2)。例えば、特許文献1では半導電層用材料に架橋助剤を添加し、半導電層と絶縁層との境界面において、押出成形後の同時架橋時に絶縁層から移行してくる架橋剤によって架橋反応を促進し、半導電層の耐熱性、並びに絶縁層との密着性を向上させることを試みている。しかしながらこの方法でも、やはり架橋剤が絶縁層から移行し外部半導電層の外表面付近に到達する前にそのほとんどが分解してしまい、外部半導電層の外表面付近まで十分に架橋がなされているとはいえないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平07−105172号公報
【特許文献2】特開昭57−210504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、耐スコーチ特性に優れた半導電性樹脂組成物を提供することを課題とする。また、本発明は、外部半導電層に当該樹脂組成物を用い環境ストレスクラック(環境応力劣化)耐性に優れた電力ケーブルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題に鑑み、押出時にスコーチを発生せず且つ外部半導電層の外表面付近まで十分な架橋がなされた電力ケーブルを得るために鋭意検討を行った。その結果、架橋剤とともに架橋助剤を併用し、さらに樹脂組成物中における両者の配合量を特定の範囲とした半導電性樹脂組成物を用いることで、成形時にスコーチの発生を抑制できることを見出した。さらに、当該樹脂組成物を外部半導電層として用いた電力ケーブルは、外部半導電層の外表面まで均一かつ十分に架橋がなされ、使用時に環境ストレスクラックを発生しにくいことを見出した。本発明は、これらの知見に基づき成されたものである。
【0007】
上記の課題は下記の手段によって解決された。
(1)外部半導電層が半導電性樹脂組成物を用いて被覆された電力ケーブルであって、該半導電性樹脂組成物がポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、カーボンブラックと、分解温度が半減期10時間で118℃以上130℃以下である架橋剤0.1〜0.3質量部と、架橋助剤0.5〜3.0質量部とを含有することを特徴とする電力ケーブル。
(2)前記外部半導電層の外表面架橋度が該層の内部架橋度に対して80%以上となることを特徴とする前記(1)項に記載の電力ケーブル。
(3)ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、カーボンブラックと、分解温度が半減期10時間で118℃以上130℃以下である架橋剤0.1〜0.3質量部と、架橋助剤0.5〜3.0質量部とを含有することを特徴とする半導電性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐スコーチ特性に優れた半導電性樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、外部半導電層に当該樹脂組成物を用いることで、押出被覆時にスコーチを生じることなく、かつ耐環境ストレスクラック性に優れた電力ケーブルを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の電力ケーブル及びそれに用いる半導電性樹脂組成物について詳細に説明する。
本発明の半導電性樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、カーボンブラックと、分解温度が半減期10時間で118℃以上130℃以下である架橋剤0.1〜0.3質量部と、架橋助剤0.5〜3.0質量部とを含有するものである。
ここで、分解温度が半減期10時間で118℃以上とは、半減期が10時間となる温度が118℃以上であるという意味である。
また、分解温度が半減期10時間で130℃以下とは、半減期が10時間となる温度が130℃以下であるという意味である。
本発明の電力ケーブルは、外部半導電層がこの半導電製樹脂組成物で形成されたものである。
【0010】
本発明で用いるポリオレフィン系樹脂としては、エチレン単独重合体、エチレン−α−オレフィン(炭素数3〜12)共重合体、エチレン−α,β−不飽和カルボン酸(あるいはそのエステル誘導体)共重合体、エチレンカルボン酸ビニルエステル共重合体等が挙げられる。より具体的には、高圧ラジカル重合法で製造される高圧法低密度ポリエチレン、高圧法中密度ポリエチレン、高圧法高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸ブチル共重合体等を例示できる。これら基体樹脂は、単独でも2種以上の混合物であってもよい。効率良く導電性を発揮する、カーボンブラックとの混合性が良いなどの観点から、ポリエチレンと、エチレン−α−オレフィン(炭素数3〜12)共重合体、エチレン−α,β−不飽和カルボン酸(あるいはそのエステル誘導体)共重合体、エチレンカルボン酸ビニルエステル共重合体等から選ばれるいずれか1種類とを混合して基体樹脂とすることが好ましく、ポリエチレンとエチレン−酢酸ビニル共重合体とを混合して基体樹脂とすることがより好ましい。
【0011】
本発明で用いるカーボンブラックとしては、通常用いられるカーボンブラックであればよく、特に制限はない。例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック及びケッチェンブラック等が例示できる。カーボンブラックは、1種でも2種以上を混合して使用してもよい。
カーボンブラックの配合量は、一般に、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して20〜100質量部、好ましくは30〜100質量部、より好ましくは40〜80質量部である。カーボンブラックの配合量が20質量部未満であると、半導電層として必要な導電性を付与することが困難となる。カーボンブラックの配合量が100質量部を超えると、押出特性や半導電層の機械的特性が低下することが知られている。
【0012】
本発明では架橋剤として、分解温度が半減期10時間で118℃以上130℃以下であり、ポリオレフィン系樹脂の架橋に効果があるものを使用する。架橋剤の分解温度が高過ぎると、架橋ゾーンで架橋剤が架橋反応に寄与する前にシリコーンオイルや窒素ガス中に拡散、揮発し易くなるため、外部半導電層の外表面付近の架橋度の低下を招く。架橋剤の分解温度が半減期10時間で118℃未満であると、押出過程でスコーチが発生し、絶縁体層と半導電層界面の平滑性が低下してしまう。
このような架橋剤の例として、t−ブチルクミルパ−オキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキシン−3、ジ−t−ブチルパーオキシド、ジ−(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、架橋剤は1種あるいは2種以上混合して使用することもできる。中でも、t−ブチルクミルパ−オキシド、ジ−(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンを用いることが好ましい。
架橋剤は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して0.1〜0.3質量部配合される。特に、『JIS C 3005 4.25項 架橋度』に規定された方法で測定した半導電層の架橋度が、50%以上となるように架橋剤を配合することが好ましい。また、共配合される架橋助剤の量に応じて配合量を調整することも好ましい態様である。より好ましい架橋剤の配合量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して0.1〜0.25質量部であり、特に好ましくは0.1〜0.2質量部である。0.1質量部未満では有効な架橋が得られず、0.3質量部を超えるとスコーチが発生する。
【0013】
本発明では架橋助剤として、その分子構造内に炭素−炭素二重結合を有するものが好ましく用いられる。具体的な架橋助剤としては、例えば、トリアリルイソシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、N,N−m−フェニレンジマレイミド、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、N,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、架橋助剤は1種あるいは2種以上混合して使用することもできる。スコーチを引き起こしにくいという観点から、トリアリルイソシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレートが好ましい。
架橋助剤の配合量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して0.5〜3.0質量部であり、好ましくは1.0〜2.0質量部である。上述の架橋剤と同様に、JIS C 3005 4.25項に規定される方法で測定した半導電層の架橋度が、50%以上となるように架橋助剤を配合することが好ましい。また、共配合される架橋剤の量に応じて配合量を調整することも好ましい態様である。架橋助剤の配合量が0.5質量部未満では外表面まで十分に架橋することができず、3.0質量部を超えて配合してもその効果は飽和する傾向がありスコーチを生じてしまう。特に、融点が50℃以下の架橋助剤を3.0質量部より多く配合した場合には、一度コンパウンドとして練り込んだ架橋助剤がそのコンパウンド保管中にペレット表面に滲み出してしまい、押出工程においてスリップと呼ばれる押出機スクリューの空回り現象が生じ、コンパウンドを正常に押し出すことが困難になる。
【0014】
本発明の半導電性樹脂組成物は、半導電層の架橋度が最適な値となり外表面まで均一かつ十分に架橋されるよう、樹脂中に共配合される架橋剤と架橋助剤の配合量を特定の範囲に規定したことを特徴とする。基材樹脂に対する架橋剤及び架橋助剤のそれぞれの配合量については、上述のとおりである。さらに、本発明においては、架橋剤と架橋助剤との配合比率が質量比で、架橋剤:架橋助剤=1:5/3〜1:30であり、好ましくは1:2〜1:30であり、より好ましくは1:2.5〜1:30、特に好ましくは1:5〜1:20である。
本発明者の検討したところによると、外部半導電層の外表面において所望の架橋度を得るためには、単に樹脂組成物中の架橋剤配合量を増やすことでも可能であった。しかしながら、外表面付近で十分な架橋度を担保しようとすると相当量の架橋剤を配合することが必要で、そのため外部半導電層全体としての架橋度が非常に高くなり層全体を均一に架橋することが困難であった。さらには、多量の架橋剤を配合することでスコーチが生じてしまい押出被覆が困難となった。これに対し、本発明の半導電性樹脂組成物では、架橋剤の配合量が抑えられているため、押出被覆時のスコーチ発生を抑えることが可能となる。さらに、本発明では特定量の架橋助剤を用いることにより、架橋剤から発生したラジカルにより活性化されてポリオレフィン分子鎖を効率よく架橋しうる。そのため、架橋助剤の配合量を相対的に増やすことで、架橋剤の配合量を低く抑えても、半導電層の外表面まで十分な架橋度が得られる。
【0015】
具体的には、本発明の半導電性樹脂組成物を用いて外部半導電層が被覆された電力ケーブルでは、外部半導電層の外表面架橋度が外部半導電層の内部架橋度に対して80%以上となることが好ましい。本発明において、「外部半導電層の外表面架橋度」とは、外部半導電層の厚さの75%より外側から外表面までの範囲における架橋度をいう。「外部半導電層の内部架橋度」とは、外部半導電層の厚さの33%より外側から67%より内側の範囲における架橋度をいう。これらの架橋度は、いずれもJIS C 3005 4.25項に規定される方法に基づいて測定された架橋度(ゲル分率)であり、内部架橋度に対する外表面架橋度は、(外表面架橋度)÷(内部架橋度)×100により求められる。
【0016】
本発明の半導電性樹脂組成物には、必要に応じて老化防止剤などその他の添加剤を配合することができる。老化防止剤としては、一般に使用される老化防止剤を適宜選択して配合することができ、特にフェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系の老化防止剤を用いることが好ましい。また、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)は、押出時の樹脂組成物の架橋反応抑制効果がある点で好ましい。
【0017】
本発明の電力ケーブルは、上述の半導電性樹脂組成物を用いて外部半導電層が被覆された電力ケーブルであり、好適には、上記半導電性樹脂組成物を混練し導体上に内部半導電層及び絶縁層とともに被覆して、さらにこれを加圧下で加熱することで該樹脂組成物を架橋させ、形成される。組成物の混練工程、外部半導電層や他層(内部半導電層、絶縁層等)の押出被覆工程及び架橋処理工程については、定法にしたがって行うことができる。架橋条件は、樹脂組成によって適宜選択され、特に限定されるものではないが、例えば、シリコーンオイルや窒素ガス下において、架橋反応温度160〜320℃、圧力0.2〜3MPaとすることが好ましい。
また、本発明の電力ケーブルに用いる導体は、その用途により適宜選択することができとくに限定されず、電力ケーブルに通常用いられる導体を使用することができる。
【実施例】
【0018】
以下に本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0019】
[半導電性樹脂組成物の製造]
基体樹脂、カーボンブラック、架橋剤、架橋助剤及び老化防止剤を、表1及び2に示した配合量でバンバリーミキサー、ニーダー等の通常用いられる混合装置により混練し、造粒工程を経て半導電性樹脂コンパウンドとして供給し、表1及び2に示した組成の半導電性樹脂組成物(実施例1〜6及び比較例1〜7)を得た。
【0020】
[電力ケーブルの製造]
導体側から順に内部半導電層、絶縁層、外部半導電層となるよう、導体上に内部半導電層用の半導電性樹脂組成物、絶縁層用の絶縁性樹脂組成物、外部半導電層用の半導電性樹脂組成物を3層同時に押出被覆し、引き続いて、加熱架橋ゾーンに導いて圧力8kg/cmのシリコーンオイル中で温度220℃の加熱下で加圧加熱を行い、架橋反応を完了させた。外部半導電層には表1,2に示した組成の半導電性樹脂組成物(実施例1〜6及び比較例1〜7)を用い、内部半導電層には市販されている半導電コンパウンドNUCV−9563(ダウケミカル日本株式会社製)、絶縁体には市販されている絶縁コンパウンドNUCV−9253(ダウケミカル日本株式会社製)を用いた。次いで、常法により、金属遮蔽層および防食層を設け、電力ケーブルを製造した。電力ケーブルの導体は断面積200mm、内部半導電層の厚さは1.0mm、絶縁層の厚さは3.5mm、さらにその上の外部半導電層は厚さ1.0mmとした。
【0021】
【表1】

【0022】
【表2】

【0023】
[半導電性樹脂組成物および電力ケーブルの評価]
下記(1)(2)の項目について評価を行った。評価結果を表3及び4に示す。
(1)スコーチ時間
表1及び2の実施例1〜6、比較例1〜67に示された組成の半導電性樹脂コンパウンドを120℃、10分、8MPaにて厚さ4mmのシート形状にプレス成型し、東洋精機製オシレーティングディスクレオメータを用いて170℃でのスコーチ時間を評価した。スコーチ時間は、トルク最小値から最大トルク値の10%まで上昇するのに要する時間として求めた。長尺の電力ケーブルを製造するための目安として、ここで評価されるスコーチ時間が15分以上であれば電力ケーブルを製造中にスコーチが生じないものと判断することができる。
【0024】
(2)外部半導電層の外表面の架橋割合
電力ケーブル後口側における外部半導電層について、(A)外表面架橋度:外表面から0.25mmまでの範囲の架橋度、および、(B)内部架橋度:外部半導電層の外表面から0.33〜0.67mmまでの範囲における架橋度、これら2点について、JIS C 3005 4.25項 架橋度 に記載された方法を用いて架橋度の測定を行った。内部架橋度に対する外表面架橋度の比率を外表面の架橋割合とし、(A)÷(B)×100%の計算式より算出した。外導クラック(環境ストレスクラック)を生じないためには、外部半導電層の外表面から内部にかけて均一に架橋を行うことが有効であり、上記式により算出される外表面の架橋割合の値が少なくとも80%以上であることが好ましい。
【0025】
【表3】

【0026】
【表4】

【0027】
表3から明らかなように、実施例1〜6では分解温度が半減期10時間で118℃以上130℃以下である架橋剤を0.1〜0.3質量部、架橋助剤を0.5〜3.0質量部の範囲で配合することにより、スコーチを生じることなく、かつ外部半導電層の外表面まで十分に架橋することができた。
一方、表4に示すように、比較例1では分解温度が118℃より低い架橋剤を用いており、架橋剤の配合量が少ないにもかかわらずスコーチ時間が短く押出中にスコーチを生じた。比較例2では、架橋助剤を併用せず、架橋剤の配合量を増やしたが、外部半導電層の外表面まで十分に架橋することはできず、さらにスコーチ時間が短くなり押出中にスコーチを生じてしまう結果となった。比較例3は、外部半導電層に架橋剤を配合せずに、絶縁体から拡散・移行してくる架橋剤と外部半導電層に配合した架橋助剤とにより外部半導電層を架橋しようとするものであるが、外部半導電層の外表面まで十分に架橋することはできなかった。比較例4〜6では、分解温度が半減期10時間で118℃以上である架橋剤を配合量0.2〜0.3質量部用いているものの、比較例4では架橋助剤の配合量が多過ぎるためにスコーチ時間が短くスコーチを生じてしまい、比較例5及び6では架橋助剤の配合量が少なすぎるために外部半導電層の外表面まで十分に架橋することができない結果となった。比較例7は、分解温度が130℃より高い架橋剤を用いたため、外部半導電層の外表面を十分に架橋することができなかった。これは、押出成形後の架橋ゾーンで外部半導層を形成する樹脂組成物から架橋剤が拡散・揮発してしまったためであると思われる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部半導電層が半導電性樹脂組成物を用いて被覆された電力ケーブルであって、該半導電性樹脂組成物がポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、カーボンブラックと、分解温度が半減期10時間で118℃以上130℃以下である架橋剤0.1〜0.3質量部と、架橋助剤0.5〜3.0質量部とを含有することを特徴とする電力ケーブル。
【請求項2】
前記外部半導電層の外表面架橋度が該層の内部架橋度に対して80%以上となることを特徴とする請求項1記載の電力ケーブル。
【請求項3】
ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、カーボンブラックと、分解温度が半減期10時間で118℃以上130℃以下である架橋剤0.1〜0.3質量部と、架橋助剤0.5〜3.0質量部とを含有することを特徴とする半導電性樹脂組成物。

【公開番号】特開2011−222324(P2011−222324A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90802(P2010−90802)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(502308387)株式会社ビスキャス (205)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】