説明

電力ケーブル気中終端接続部

【課題】温度変化環境下でも優れた耐久性・信頼性を発揮し、加えてコスト高を抑制することができる電力ケーブル気中終端接続部を提供する。
【解決手段】終端接続部1におけるストレスコーン14は、電力ケーブル11が挿通される貫通孔を有しており、絶縁部141および半導電部142からなる本体と、この本体の外表面を被覆する保護層143とを有している。保護層143はフロロシリコーンゴムを主成分とする。保護層143は、フロロシリコーンゴムを含有する塗料を絶縁部141の外表面に塗布することにより形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、碍管内に電力ケーブルの端部を収容し、該端部にシリコーンゴムストレスコーンを取り付けると共に、碍管内にシリコーンオイル等の絶縁充填物を充填してなる電力ケーブル気中終端接続部に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、CVケーブル(架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル)等の電力ケーブルと発電所等に配置される電力機器や架空送電線とを接続する場合、電力ケーブルの終端部に施す端末処理、すなわち電力ケーブル気中終端接続部として、碍管内に電力ケーブルの端部を収容し、この碍管内に油を充填した構造(いわゆる油浸式の終端接続部)が知られている。これらの終端接続部にはエポキシとゴムストレスコーンを用いた構造や油止め金具と一体化させてゴムをモールドする構造が代表的であるが、前者は部品点数が多くてコスト高になり、後者は作業に時間と熟練した技術が必要となる問題点がある。
【0003】
そこで、最近では特許文献1に記載された終端接続部のように部品点数が少なく、施工が容易な終端接続部が開発されているが、常温収縮性ゴム製ストレスコーンとそれを経年劣化させないような高分子ゲルを組み合わせる必要がある。
【0004】
従来の終端接続部では、絶縁充填物として鉱油よりも安定した電気特性を示すシリコーンオイル等のシリコーン系化合物を使用し、ストレスコーンとしてエチレン・プロピレンゴム(EPR)製のものが主に使用されてきた。
【0005】
ところで、近年はストレスコーンの材料として安定した電気特性を示し、耐熱性、耐寒性、伸び特性の良いシリコーンゴムを使用したいという要請がある。なお、シリコーンゴムとしては、ジメチルシリコーンゴム、ビニルメチルシリコーンゴムが一般的である。
【0006】
しかしながら、これらシリコーンゴムはシリコーンオイルやシリコーングリースなどを吸収(膨潤)する性質を持ち、吸収後のシリコーンゴムは機械特性や電気特性が劣化してしまう。それにより、内部半導電層においては機械特性の変化だけでなく体積抵抗率が上昇し、設計通りの電界緩和ができなくなり、絶縁層においては機械特性が変化して面圧が下がることにより、ケーブルとの密着性が低下する等の問題点がある。
【0007】
このような問題点を解消するために、シリコーンゴム製のストレスコーンにフッ素樹脂膜を形成し、シリコーンオイル等のシリコーン系化合物によるシリコーンゴム製ストレスコーンの膨潤を防ぐなどの対策が提案されている(特許文献2及び3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−17035号公報
【特許文献2】特開平4−347519号公報
【特許文献3】特開2006−42421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、フッ素樹脂はシリコーンゴムに対する密着性が低いため、フッ素樹脂とシリコーンゴムが温度変化環境で熱膨張・熱収縮を繰り返すことにより、フッ素樹脂膜とシリコーンゴムストレスコーンとの界面に剥離が生じ、シリコーンオイルによってシリコーンゴムストレスコーンが膨潤する可能性がある。フッ素樹脂とシリコーンゴムとの密着性を高めるために、シリコーンゴム製ストレスコーン表面にプライマーを塗布する等の前処理を行う方法があるが、その作業が煩雑であると共にコスト高を招くこととなる。したがって、終端接続部のように長時間に亘って温度変化環境の影響を受ける部材には、絶縁性能や密着性の高い材料が使用される必要がある。
【0010】
本発明の目的は、温度変化環境下でも優れた耐久性・信頼性を発揮し、加えてコスト高を抑制することができる電力ケーブル気中終端接続部を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題を解決するために、本発明に係る電力ケーブル気中終端接続部は、ストレスコーンが取り付けられた電力ケーブルの端部が碍管に収容され、前記碍管内にシリコーン系化合物が絶縁充填物として充填されてなる電力ケーブル気中終端接続部であって、前記ストレスコーンは、絶縁部と半導電部とからなるシリコーンゴム製の本体の外表面にフロロシリコーンゴムからなる保護層を設けたものであることを特徴とする。
【0012】
本願明細書において、「フロロシリコーンゴムからなる」という表現は、「フロロシリコーンゴム単体で形成されている」というだけでなく、「フロロシリコーンゴムを主要な成分とする樹脂によって形成されている」ことも含む意味で用いている。
【0013】
また、前記保護層は、フロロシリコーンゴムを含有する塗料を前記本体の外表面に塗布することにより形成される。
【0014】
さらに、前記保護層は、フロロシリコーンゴムをケトン系溶剤で希釈して塗料を作製し、前記塗料を前記本体の外表面に直接塗布することにより形成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ストレスコーンのシリコーンゴム製本体の外表面をフロロシリコーンゴムを主成分とする保護層で覆ったので、本体と保護層との密着性を大幅に向上することができ、絶縁部と保護層との界面に剥離が生じるのを防止することができる。これにより、絶縁充填物による絶縁部或いは半導電部の膨潤を防止することができる。したがって、シリコーンゴム製ストレスコーンの良好な絶縁性能や伸び特性を低下させることなく、安定した耐久性・信頼性を有する終端接続部を実現することができる。また、保護層形成時にプライマー等を使用する必要がないため、煩雑な作業を省くことができ、コスト高を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る電力ケーブル気中終端接続部の構成を概略的に示す部分断面図である。
【図2】図1の終端接続部の要部の構成を示す部分拡大図である。
【図3】図1におけるシリコーンゴムストレスコーンの構成を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、以下のような知見を得た。すなわち、フロロシリコーンゴム製保護層はシリコーンゴム製本体との密着性が良く、シリコーンゴム製本体と保護層との界面に剥離が生じるのを防止することができることを見出した。また、フロロシリコーンゴムは、シリコーン系化合物による膨潤も少ない。そして、これにより、リコーン系化合物中でのシリコーンゴム製のストレスコーンの膨潤を防止できるから、絶縁充填物にシリコーン系化合物を用いた終端接続部にシリコーンゴム製のストレスコーンを用いることができ、長期に亘って耐久性・信頼性の高い終端接続部を実現できることを見出した。
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る電力ケーブル気中終端接続部の構成を概略的に示す部分断面図であり、図2は、図1の終端接続部の要部の構成を示す部分拡大図である。
【0020】
図1及び図2において、電力ケーブル11は、ゴム又はプラスチック絶縁が施された電力ケーブル、例えばCVケーブルである。電力ケーブル11は、導体111と、導体111の外周に形成された絶縁層112と、絶縁層112の外周に形成された外部半導電層113と、外部半導電層113の外周に形成された不図示の遮蔽層と、シース114とを有しており、所定長で段剥ぎすることにより、導体111、絶縁層112及び外部半導電層113が露出している。また、導体111の端部には、導電性を有する導体引出棒13が接続されている。
【0021】
碍管12は、例えば、繊維強化プラスチック(FRP)製の中空筒体121と、中空筒体121の外周を被覆するゴム又はプラスチック製の外套122とを有する。外套122の外表面には複数の襞部122aが形成されている。碍管12の上端12aには上部金具15が、底面12bには下部金具16が夫々取り付けられており、上部金具15及び下部金具16によって中空筒体121の上下開口が閉塞されることにより、電力ケーブル11の端部を収容する小室Aが形成される。下部金具16の下面には電力ケーブル11を保持する下部銅管17が延設されており、下部銅管17は下部金具16と一体的に成形されている。また、下部銅管17の端部(図1では下端)には、絶縁充填物10の漏出を防止するシール処理18が施されている。
【0022】
導体引出棒13は、その内部に導体111が挿通されており、上部金具15を貫通して外部に突出している。
【0023】
碍管12の小室Aにおいて、電力ケーブル11の外周面には、絶縁層112から外部半導電層113に亘って常温収縮型のストレスコーン14が装着されている。
【0024】
終端接続部1では、電力ケーブル11の端部と、該電力ケーブルの導体端部とが碍管12内の小室Aに収容され、この小室A内に絶縁充填物10が充填されている。絶縁充填物10はシリコーン系化合物で形成されている。シリコーン系化合物としては、好ましくはジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルであるが、シリコーングリースなどの他のシリコーン系化合物であってもよい。
【0025】
碍管12、導体引出棒13、ストレスコーン14、上部金具15、下部金具16、下部銅管17、シール材18、そして絶縁充填物10は、電力ケーブル気中終端接続部1を構成する。
【0026】
図3は、図1におけるストレスコーン14の構成を概略的に示す断面図である。
【0027】
図3において、ストレスコーン14は、電力ケーブル11が挿通される貫通孔を有するもので、絶縁部141および半導電部142からなる本体と、この本体の外表面を被覆する保護層143とを有している。
【0028】
ストレスコーン14は、電力ケーブル11が貫通孔141aに挿通されることにより拡径され、この拡径によって生じた弾性力により絶縁層112及び外部半導電層113の外周面に密着する。
【0029】
ストレスコーン14の半導電部142は半導電性のシリコーンゴムで形成された略ラッパ状であり、略中空円柱状の本体の一端側に貫通孔の内周面に細径側の端部が露出するように配置されている。本体の他の部分は、絶縁性のシリコーンゴムで形成された絶縁部141となっている。
【0030】
本体を形成するシリコーンゴムには、メチルシリコーンゴム、ビニルメチルシリコーンゴムあるいはフェニルメチルシリコーンゴムなど、フロロシリコーンゴム以外のシリコーンゴムが用いられる。本体の絶縁部141を形成するシリコーンゴムとしては、ジメチルシリコーンゴムである旭化成ワッカーシリコーン株式会社製のLR3303/20(引張強さ:8.5MPa、伸び率:780%)が市販されている。また、半導電部142を形成するシリコーンゴムとしては、ジメチルシリコーンゴムである同社製のLR3162(引張強さ:5.5MPa、伸び:400%)が市販されている。
【0031】
保護層143は、絶縁部141の外周面に形成された外周面側保護層143aと、絶縁部141の両端面に形成された端面側保護層143b,143cとを有している。
【0032】
ここで、本実施の形態では、保護層143はフロロシリコーンゴムから成り、シリコーンオイル等のシリコーン系化合物によるストレスコーン14の膨潤を防ぐ役割を果たす。保護層143は、後述するように、フロロシリコーンゴムを含有する塗料を絶縁部141の外表面に塗布することにより形成される。フロロシリコーンゴムは、耐燃料性、耐油性、耐溶剤性、耐薬品性に加え、高引張強さ、高引裂き強さ等の特性を有し、広い温度範囲において安定的である。また、高温にて高速加硫され、高温環境下では高離型性を示す。尚、保護層143はフロロシリコーンゴムから成るが、これに限るものではなく、フロロシリコーンゴムを主成分とする材料から成っていてもよい。
【0033】
フロロシリコーンゴムは、現在はそれ自体では塗料として市販されておらず、二液型の射出成型用エラストマーとして原料が市販されている。そこで、この原料を用いて塗料を作成する。市販されているフロロシリコーンゴムとしては、例えば、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製FSL7208(引張強さ:4.5MPa、伸び:380%)や東レ・ダウコーニング社製FL−40−9201(液状タイプの100%フロロシリコーンゴム)がある。
【0034】
保護層143を形成するフロロシリコーンゴムの引張強さ及び伸びは、絶縁部141や半導電部142からなる本体に使用されるシリコーンゴムより小さくても良いが、本体の伸縮に対して保護層が追従し易いように、同等かそれ以上である方が望ましい。
【0035】
上記のフロロシリコーンゴムを塗料にする目的は、様々な形状のストレスコーンをフロロシリコーンゴムでコーティングすることを可能にするためと、フロロシリコーンゴムを主成分とする保護層の薄膜化を実現するためである。フロロシリコーンゴムを塗料とするには、フロロシリコーンゴムの原料を硬化前に溶剤に希釈する必要がある。フロロシリコーンゴムを溶解することができる溶剤であれば如何なる溶剤を使用してもよいが、高揮発性であれば塗布作業の効率が向上するため、作業効率性の観点からケトン系溶剤を使用するのが好ましい。
【0036】
また本実施の形態では、フロロシリコーンゴムを溶剤で希釈して塗料を作製し、この塗料をストレスコーン14の絶縁部141に塗布する。塗料の塗布によって形成された保護層143の厚さは約数μm以上であることが望ましい。保護層143の厚さが約数μm以上あれば、シリコーンオイルによるストレスコーンの膨潤を防止する効果を発揮する。保護層の厚さは、好ましくは約数μm〜500μmであり、これによりストレスコーンの膨潤を防止しつつ塗布作業の効率を向上することができる。
【0037】
上記塗料をストレスコーンに塗布する際には、プライマーを使用せず、ストレスコーン14の本体に塗料を直接塗布する。これにより、煩雑な作業を省くことができ、コスト高を抑制することができる。具体的には、絶縁部141の表面を洗浄して油分やダスト等を除去した後、洗浄後の表面に刷毛や吹き付けによって塗料を塗布する。塗布作業後、塗装面を室温で十分に乾燥させ、次いで加熱して一次硬化及び二次硬化を行って焼付けする。
【0038】
図1に示す終端接続部1を施工する場合、先ず、段剥ぎした電力ケーブル11の端部に、下部銅管17及び下部金具16を取り付け、ストレスコーン14を装着すると共に、導体111の端部に導体引出棒13を接続する。この電力ケーブル11の端部に碍管12を被せた後、碍管12の下端を下部金具16上に封止固定する。また、電力ケーブル11と下部銅管17とをシール材18にてシールする。
【0039】
次に、シリコーンオイル等のシリコーン系化合物を小室A内に所定量流し込み、小室Aの容積の80〜90%にシリコーン系化合物を充填する。その後、上部金具15を碍管12の上端に取り付けて碍管12の上端を閉塞する。
【0040】
上述したように、本実施形態によれば、ストレスコーン14の保護層143がフロロシリコーンゴムから成るので、本体と保護層143との密着性を大幅に向上することができ、本体と保護層143との界面に剥離が生じるのを防止することができる。これにより、絶縁充填物10による絶縁部141或いは半導電部142の膨潤を防止することができる。したがって、シリコーンゴム製のストレスコーン14の良好な絶縁性能や伸び特性(弾性力)を低下させることなく、安定した耐久性・信頼性を有する終端接続部1を実現することができる。また、保護層143の形成時にプライマー等を使用する必要がないため、煩雑な作業を省くことができ、コスト高を抑制することができる。
【0041】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0042】
また、上記実施形態は全ての点で例示であり、制限的なものではないと考えられるべきである。また、本発明の技術的範囲は上記実施形態に限定解釈されず、特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、また、特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして解される範囲を含むことが意図される。
【実施例】
【0043】
以下、本発明の実施例を説明する。
【0044】
この実施例では、絶縁性のシリコーンゴムには旭化成ワッカーシリコーン株式会社製のLR3303/20を用い、半導電性のシリコーンゴムには同社製のLR3162を用いた。また、塗料するフロロシリコーンゴムには、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のFSL7208を用いた。なお、後述する比較例のフッ素樹脂には、株式会社金陽社のパーフロンを用いた。
【0045】
LR3303/20及びLR3162の電気特性初期値を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
(1)膨潤試験
膨潤試験はストレスコーンの初期重量を測定しておき、当該ストレスコーンを用いて製造した終端接続部に所定期間通電した後に再びストレスコーンの重量(膨潤後重量)を測定することで膨潤率を求めた。すなわち、「 膨潤率=(膨潤重量−初期重量)/初期重量 」とした。試験後にストレスコーンの半導電部の一部を切り出して体積抵抗率ρを測定した。
【0048】
このとき使用した電力ケーブルは、電圧66kV、導体サイズ500sq、絶縁膜層の厚さ10mmであり、該電力ケーブルの端部を110kV級のポリマー碍管12(内径290mm、高さ1350mm)に収容して終端接続部を製作した。電力ケーブルの端部には、フロロシリコーンゴムで保護層が形成されたストレスコーンを装着した。保護層の厚さは、短期間で試験結果を得られるように薄くした(平均膜厚:10μm)。そして、碍管には絶縁充填物として、シリコーンオイル、東レ・ダウコーニング株式会社製のSH200(動粘度:25℃、50cst)30kgを注入した。
【0049】
(2)剥離試験
剥離試験(界面密着性試験)は、絶縁性のシリコーンゴムであるLR3303/20を用いて厚さ0.5mmのシートを作成し、その表面にフロロシリコーンゴムを主成分とする塗料を塗布して焼付けて平均0.2mmの膜を形成し、このシートから幅1.2mmの短冊状の試験片を切り出した。次いで、剥離試験を行う引張試験機のチャックで把持する部分を形成するために、試験片の一端部をヘキサンに浸漬し、この箇所のフロロシリコーンゴム膜を剥がした(口出し処理)。一日室温で放置した後、剥離試験を実施し、JISK6866に準拠して破壊様式を確認しつつ、界面密着性を評価した。
【0050】
(3)電気試験
電気試験として、膨潤試験で使用したものと同様の終端接続部を作製し、Imp破壊試験及びヒートサイクル試験(HC試験)を実施した。Imp破壊試験では±605kV、±715kV、±800kVの課電を夫々10回行い、HC試験ではIEC62067(高圧CVケーブル試験法)に準拠し、152kVの電圧を20日間印加し、導体到達温度を90〜95℃とした。
【0051】
また、比較例1として、保護層が形成されてないストレスコーンを使用すること以外は実施例と同一構成である終端接続部を作製し、実施例と同様にして、上記膨潤試験及び電気試験を実施した。比較例2として、フロロシリコーンゴムに代えてフッ素樹脂を使用する以外は実施例と同様にして、上記膨潤試験、剥離試験及び電気試験を実施した。結果を表2に示す。
【0052】
【表2】

【0053】
表1に示すように、フロロシリコーンゴムから成る保護層が形成された場合(実施例)、シリコーンオイルによるシリコーンゴム製のストレスコーンの膨潤を防止できることが分かった。また、実施例では剥離強度が大きく、電気試験も良好な結果が得られた。
【0054】
一方、比較例1では、保護層が形成されていないため、シリコーンオイルによってシリコーンゴム製のストレスコーンが膨潤し、半導電部(半導電部を形成するシリコーンゴム)の体積抵抗率が上昇した。また、短時間で試験が終わるImp破壊試験(終端接続部組立て直後に実施)ではストレスコーンが破壊されなかった(実施例と同等の結果であった)が、時間をかけて試験するHC試験ではシリコーンゴムストレスコーンが破壊された。
【0055】
フッ素樹脂で保護層を形成した比較例2では、シリコーンオイルによるシリコーンゴム製のストレスコーンの膨潤を抑制することができるものの、剥離試験の結果は0.25kgfと小さく保護層が剥離しやすい、Imp破壊試験やHC試験においては絶縁性能がフロロシリコーンゴムを用いて保護層を形成した場合(実施例)より格段に劣っていた。
【0056】
以上の結果から、長期運転の条件下では、保護層を形成していないストレスコーンは膨潤して破壊する可能性があり、フッ素樹脂から成る保護層が形成されたストレスコーンは絶縁性能が低く、破壊する可能性があることが分かった。一方、フロロシリコーンゴムから成る保護層が形成されたストレスコーンは、長期運転の条件下であっても絶縁性能の低下を防ぐことができ、良好な電気特性を維持できることが分かった。
【符号の説明】
【0057】
1 終端接続部
10 絶縁充填物
11 電力ケーブル
111 導体
112 絶縁層
113 外部半導電層
114 シース
12 碍管
121 中空筒体
122 外套
13 導体引出棒
14 ストレスコーン
141 絶縁部
142 半導電部
143 保護層
15 上部金具
16 下部金具
17 下部銅管
18 シール材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストレスコーンが取り付けられた電力ケーブルの端部が碍管に収容され、前記碍管内にシリコーン系化合物が絶縁充填物として充填されてなる電力ケーブル気中終端接続部であって、
前記ストレスコーンは、絶縁部と半導電部とからなるシリコーンゴム製の本体の外表面にフロロシリコーンゴムからなる保護層を設けたものであることを特徴とする電力ケーブル気中終端接続部。
【請求項2】
前記保護層は、フロロシリコーンゴムを含有する塗料を前記本体の外表面に塗布することにより形成されていることを特徴とする請求項1記載の電力ケーブル気中終端接続部。
【請求項3】
前記保護層は、フロロシリコーンゴムをケトン系溶剤で希釈して塗料を作製し、前記塗料を前記本体の外表面に直接塗布することにより形成されることを特徴とする請求項2記載の電力ケーブル気中終端接続部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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