説明

電力ケーブル端末の防水処理構造

【課題】ゴム製の絶縁用終端部材や絶縁用接続部材の近傍で電力ケーブルが曲がった際の電力ケーブルの防食層とゴム製の絶縁用終端部材や絶縁用接続部材の間のズレを吸収するとともに、防水特性及び低温特性にも優れた電力ケーブル端末の防水処理構造を提供する。
【解決手段】防水処理部40は、変形層41(41a、41b)と形状安定層42(42a、42b、42c)と絶縁層44と防水層45(45a、45b)と遮水層46とが積層された構造である。自己融着性を有するバルコテープを巻き付けて変形層41(41a、41b)が形成されている。絶縁層44の端部を覆うようにブチルゴム製水密テープを巻き付けて防水層45が形成されている。防水層45(45a、45b)の表面全体と防水層45によって覆われていない絶縁層44の表面とを覆うように、シリコーンテープを巻き付けて遮水層46が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力ケーブル端末の防水処理構造に関する。特に、絶縁用終端部材(絶縁用端末部材)が設けられた電力ケーブルの終端部における電力ケーブルと絶縁用終端部材との間の防水処理構造、及び、絶縁用接続部材が設けられた電力ケーブル同士の接続部における電力ケーブルと絶縁用接続部材との間の防水処理構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電力ケーブルの終端部や電力ケーブル同士の接続部においては、電力ケーブル端末の絶縁や機械的保護のために、合成ゴム等で形成されたゴム製の絶縁用終端部材や絶縁用接続部材が設けられている。
【0003】
従来、ゴム製の絶縁用終端部材や絶縁用接続部材は、EPR(エチレンプロピレンゴム)等が材料として使用されていたが、最近になりシリコーンゴムの優れた撥水性及び撥水性の復元能力の高さが広く知られるようになり、シリコーンゴム製の外皮を有する絶縁用終端部材や絶縁用接続部材が開発されている(特許文献1、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−117425号公報
【特許文献2】特開2000−37027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、ゴム製の絶縁用終端部材の端部は、水分が侵入してこないようにする必要があり、例えば、特許文献1や特許文献2に記載されているように、絶縁テープを巻きつけて水分の侵入を防止している。
【0006】
また、上述したゴム製の絶縁用終端部材は、33kV以下の配電用として使用されていたが、66kV以上の高電圧ではあまり使用されていなかった。また、ゴム製の絶縁用終端部材は、磁器碍子やEPRパイプにゴムを被覆した高分子碍管を使用する電力ケーブル終端とは異なり、磁器やEPRパイプ等の機械的に強度のある構造を持たないため、風や温度変化等の影響で曲がりを生じていた。そこで、ゴム製の絶縁用終端部材を設ける電力ケーブルを66kV以上の高電圧で使用する場合、ケーブルが太くなり、防食層も肉厚で曲がりにくいものとなっていた。特に、遮水層としてアルミコルゲート等を使用している場合、アルミコルゲートが硬いため、ケーブル防食層は更に曲がりにくいものとなっていた。
【0007】
そのため、ゴム製の絶縁用終端部材の近傍で電力ケーブルが曲がった際には、曲がりにくい電力ケーブルの防食層と曲がりやすいゴム製の絶縁用終端部材との間にズレが生じやすく、電力ケーブルの防食層とゴム製の絶縁用終端部材との間に跨って巻きつけられていた絶縁テープが剥がれて、防水が保てなくなるという問題があった。
【0008】
また、シリコーンゴムは従来使用している絶縁テープとは接着しにくく、更に、防水性能を悪化させる要因となっており、防水特性が低下すると、ゴム製の絶縁用終端部材の内部に水分が侵入することとなり、絶縁破壊を生じる危険性があった。
【0009】
また、従来使用している絶縁テープは、低温で割れが発生する事例があり、極低温地域での使用を考えたとき、割れ目の隙間から水分が侵入する危険性もあった。
【0010】
そこで、本発明は、以上のような問題点を解決するためになされたもので、ゴム製の絶縁用終端部材や絶縁用接続部材の近傍で電力ケーブルが曲がった際の電力ケーブルの防食層とゴム製の絶縁用終端部材や絶縁用接続部材の間のズレを吸収するとともに、防水特性及び低温特性にも優れた電力ケーブル端末の防水処理構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した従来の問題点を解決すべく下記の発明を提供する。
本発明の第1の態様にかかる電力ケーブル端末の防水処理構造は、絶縁用端末部材が設けられた終端部を有する電力ケーブル端末の防水処理構造であって、前記電力ケーブルの最外層端部と、前記最外層端部に近い前記絶縁用端末部材の入口端部と、を覆うように設けられた自己融着特性を有する変形部材から形成される変形層と、前記変形層の端部を覆うように設けられた水密性を有する防水部材から形成される防水層と、前記変形層及び前記防水層を覆うように設けられた低温耐性を有する遮水部材から形成される遮水層と、を備えていることを特徴とする。
【0012】
尚、例えば、ゴム差し込み端末が設けられた電力ケーブルにおいて、ゴム差し込み端末と電力ケーブルとの間の防食処理が施された防食処理部を備えている場合、ゴム差し込み端末と防食処理部とをまとめて絶縁用端末部材と呼ぶ。
【0013】
本発明の第2の態様にかかる電力ケーブル端末の防水処理構造は、2本の電力ケーブルを接続する絶縁用接続部材が設けられた接続部を有する電力ケーブル端末の防水処理構造であって、前記接続部における前記電力ケーブルの最外層端部と、前記最外層端部に近い前記絶縁用接続部材の入口端部と、を覆うように設けられた自己融着特性を有する変形部材から形成される変形層と、前記変形層の端部を覆うように設けられた水密性を有する防水部材から形成される防水層と、前記変形層及び前記防水層を覆うように設けられた低温耐性を有する遮水部材から形成される遮水層と、を備えていることを特徴とする。
【0014】
本発明の第3の態様にかかる電力ケーブル端末の防水処理構造は、上記の本発明の第1または第2の態様にかかる電力ケーブル端末の防水処理構造において、前記遮水部材はシリコーンテープであり、前記遮水層は前記シリコーンテープを巻くことによって形成されることを特徴とする。
【0015】
本発明の第4の態様にかかる電力ケーブル端末の防水処理構造は、上記の本発明の第1乃至第3のいずれか1つの態様にかかる電力ケーブル端末の防水処理構造において、前記防水部材はブチルゴム製水密テープであり、前記防水層は前記ブチルゴム製水密テープを巻くことによって形成されることを特徴とする。
【0016】
本発明の第5の態様にかかる電力ケーブル端末の防水処理構造は、上記の本発明の第1乃至第4のいずれか1つの態様にかかる電力ケーブル端末の防水処理構造において、前記変形部材は自己融着テープであり、前記変形層は前記自己融着テープを巻くことによって形成されることを特徴とする。
【0017】
本発明の第6の態様にかかる電力ケーブル端末の防水処理構造は、上記の本発明の第1乃至第5のいずれか1つの態様にかかる電力ケーブル端末の防水処理構造において、前記変形層と、前記防水層及び前記遮水層と、の間に、前記変形層の形状を押さえて安定させる形状安定部材から形成される形状安定層が設けられていることを特徴とする。
【0018】
本発明の第7の態様にかかる電力ケーブル端末の防水処理構造は、上記の本発明の第6の態様にかかる電力ケーブル端末の防水処理構造において、前記形状安定部材はエポキシ含浸ガラステープ及び/またはPVCテープであり、前記形状安定層は、前記エポキシ含浸ガラステープのみを巻くことによって、前記PVCテープのみを巻くことによって、または、前記エポキシ含浸ガラステープを巻き続いて前記エポキシ含浸ガラステープの上に前記PVCテープを巻くことによって形成されることを特徴とする。
【0019】
本発明の第8の態様にかかる電力ケーブル端末の防水処理構造は、上記の本発明の第6または第7の態様にかかる電力ケーブル端末の防水処理構造において、前記形状安定層と、前記防水層及び前記遮水層と、の間に、絶縁層が設けられていることを特徴とする。
【0020】
本発明の第9の態様にかかる電力ケーブル端末の防水処理構造は、上記の本発明の第8の態様にかかる電力ケーブル端末の防水処理構造において、前記絶縁層は、絶縁テープによって形成されることを特徴とする。
【0021】
本発明の第10の態様にかかる電力ケーブル端末の防水処理構造は、上記の本発明の第1乃至第9のいずれか1つの態様にかかる電力ケーブル端末の防水処理構造において、前記遮水層の端部を覆うように設けられた水密性を有する前記防水部材から形成される第2の防水層と、前記遮水層と前記第2の防水層とを覆うように設けられた低温耐性を有する前記遮水部材から形成される第2の遮水層と、の2層からなる積層体が、前記遮水層の上に1層以上積層されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、シリコーンゴム製の絶縁用終端部材や絶縁用接続部材を66kV以上(110〜140kV)の高電圧に適用した場合、電力ケーブルの防食層と絶縁用終端部材や絶縁用接続部材の端部とを覆うように設けられた自己融着テープ等で形成した変形層により、風等の振動や温度変化に伴う熱挙動等によって生ずる電力ケーブルの防食層と絶縁用終端部材や絶縁用接続部材との間のズレを吸収することができる。更に、変形層の端部を覆うように設けられたブチルゴム製水密テープ等で形成された防水層と、変形層及び防水層を覆うように設けられた低温耐性を有するシリコーンテープ等で形成した遮水層と、により、電力ケーブルの防食層と絶縁用終端部材や絶縁用接続部材との間を防水するとともに安定した接着性を確保し、低温環境(−50℃)においても長期間にわたり防水性能を確保することができる。また、自己融着テープ、シリコーンテープ、シリコーンテープ等のテープによって構成することにより、防水処理作業を、最後にテープを巻くだけで行うことができる。そのため、作業手順の順番を間違うことなく簡単に防水処理作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態にかかる電力ケーブル端末の防水処理構造を有する電力ケーブルの終端部の一部断面図である。
【図2】図1の防水処理部を拡大した一部断面図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる電力ケーブル端末の防水処理構造を有する電力ケーブルの接続部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は説明のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。従って、当業者であればこれらの各要素もしくは全要素をこれと均等なもので置換した実施形態を採用することが可能であるが、これらの実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態にかかる電力ケーブル端末の防水処理構造を有する電力ケーブルの終端部の一部断面図である。また、図2は、図1の防水処理部を拡大した一部断面図である。
【0026】
図1及び図2に示すように、本発明の一実施形態にかかる電力ケーブル端末の防水処理構造を有する電力ケーブルの終端部100は、段剥ぎ処理の施された電力ケーブル10にゴム差し込み端末20が設けられ、電力ケーブル10のアルミ被13の端部13aとゴム差し込み端末20の端部20aとを覆うように形成された防食処理部30と、防食処理部30の端部30aと電力ケーブル10の最外層である防食層14の端部14aとを覆うように形成された防水処理部40と、を備えている。
【0027】
本発明の一実施形態にかかる電力ケーブル端末の防水処理構造によって構成される防水処理部40は、防食処理部30の端部30aと電力ケーブル10の防食層14の端部14aとを覆うように、自己融着性を有するバルコテープを1/2ラップで2層巻き付け変形層41(41a、41b)が形成されている。ここで、変形層41は、防食処理部30の端部30aと電力ケーブル10のアルミ被13を覆うように形成された変形層41bと、電力ケーブル10の防食層14の端部14aとアルミ被13とを覆うように形成された変形層41aとによって構成される。変形層41(41a、41b)は、防食処理部30と電力ケーブル10のアルミ被13との間の段差や隙間をなくすためや、電力ケーブル10の防食層14とアルミ被13との段差や隙間をなくすためや、変形層41の上に形成する後述の遮水層46の接着性を有する形状を確保するために用いられている。尚、変形層41bは、防水性能を高めるため、防食処理部30の端部30aを覆うように粘着水密テープ51が1層巻きつけられ上に、粘着水密テープ51を覆うようにバルコテープを巻き付けて形成されている。
【0028】
また、変形層41bの上には、変形層41bの表面全体を覆うように、PVCテープを1/2ラップで2層巻き付けた形状安定層42cが形成されている。また、変形層41aの上には、変形層41aの表面全体を覆い、かつ、形状安定層42cの端部43cを覆うように、エポキシ含浸ガラステープを1/2ラップで8層巻き付けた第1形状安定層42aが形成され、第1形状安定層42aの上には、第1形状安定層42aの表面全体を覆うように、PVCテープを1/2ラップで2層巻き付けた第2形状安定層42bが形成されている。形状安定層42(42a、42b、42c)は、変形層41(41a、41b)にエポキシ含浸ガラステープやPVCテープで巻き付けることにより、変形層41(41a、41b)の形状を安定させ、後述の遮水層46の接着性を確保するために用いられている。
【0029】
また、第2形状安定層42bの上には、第2形状安定層42bの表面全体を覆うように、絶縁テープ(エフコテープ)を1/2ラップで2層巻き付けた絶縁層44が形成されている。
【0030】
また、絶縁層44の端部を覆うように、ブチルゴム製水密テープを1層巻きつけた防水層45が形成されている。ここで、防水層45は、絶縁層44の端部44aを覆うように形成した防水層45aと、絶縁層44の端部44bを覆うように形成した防水層45bと、によって構成されている。防水層45(45a、45b)は、電力ケーブル10の防食層14と防食処理部30との間からの水侵入を防止するために用いられている。
【0031】
また、防水層45(45a、45b)の表面全体と、防水層45によって覆われていない絶縁層44の表面とを覆うように、低温耐性を有するシリコーンテープを1/2ラップで3層巻き付けた遮水層46が形成されている。遮水層46は、外部からの水侵入や、低温環境(−50℃)においても長期間にわたり防水性能を確保するために用いられている。
【0032】
上述したように、本発明の一実施形態にかかる電力ケーブル端末の防水処理構造によって構成される防水処理部40は、変形層41(41a、41b)と形状安定層42(42a、42b、42c)と絶縁層44と防水層45(45a、45b)と遮水層46とが積層された構造を有している。
【0033】
尚、上述した防水処理部40は、防水層45(45a、45b)と遮水層46とからなる積層体が1層で構成されているが、この積層体を2層以上重ねた構成であっても良い。積層体の積層数を多くすることにより、防水処理部40の強度を高めることができる。
【0034】
次に、防食処理部30について簡単に説明する。
防食処理部30は、ゴム差し込み端末20の端部20aと電力ケーブル10のアルミ被13の端部13aとを覆うように、Cテープ31が1/2ラップで2層巻き付けてられている。また、Cテープ31の上に、ゴム差し込み端末20の端部20aを覆ったCテープ31の部分31aとアルミ被13の端部13a側のCテープ31の端部31bを覆うように、Cテープ31の表面にシールドメッシュテープ32が1/2ラップで1層巻き付けられており、Cテープ31とシールドメッシュテープ32とゴム差し込み端末20の一部外皮20bとを覆うように、絶縁テープ33が5層巻き付けられている。
【0035】
また、絶縁テープ33の上に、絶縁テープ33を覆うように、ラプコチューブ34が設けられている。また、ラプコチューブ34の端部34aには、端部34aを覆うように、粘着水密テープ35が1層巻き付けられており、粘着水密テープ35を覆うようにバルフロンテープ36が1/2ラップで2層巻き付けられている。また、バルフロンテープ36とラプコチューブ34の一部を覆うように、シリコーン収縮チューブ37が設けられている。尚、シリコーン収縮チューブ37の一部に、接地に関係する役割を持たすための銅テープ60が巻き付けられている。
【0036】
また、ラプコチューブ34に一部にバルコテープ38が1/2ラップで2層巻き付けられており、バルコテープ38の表面全体とシリコーン収縮チューブ37の端部37aと銅テープ60の一部とを覆うように、PVCテープ39が1/2ラップで2層巻き付けられている。以上のような構成で防食処理部30は形成されている。
【0037】
上述したような発明の一実施形態にかかる電力ケーブル端末の防水処理構造によって構成される防水処理部40により、ゴム差し込み端末20を66kV以上(110〜140kV)の高電圧に適用した場合であっても、風等の振動や温度変化に伴う熱挙動等によって生ずる電力ケーブル10の防食層14とゴム差し込み端末20との間のズレを吸収することができる。更に、電力ケーブル10の防食層14とゴム差し込み端末20との間を防水するとともに安定した接着性を確保し、低温環境(−50℃)においても長期間にわたり防水性能を確保することができる。また、自己融着テープ、シリコーンテープ、シリコーンテープ等のテープによって防水処理構造を構成することにより、防水処理作業を、最後にテープを巻くだけで行うことができる。そのため、作業手順の順番を間違うことなく簡単に防水処理作業を行うことができる。
【0038】
次に、本発明の一実施形態にかかる別の電力ケーブル端末の防水処理構造について説明する。
【0039】
図3は、本発明の一実施形態にかかる電力ケーブル端末の防水処理構造を有する電力ケーブルの接続部の断面図である。
【0040】
図3に示すように、本発明の一実施形態にかかる電力ケーブル端末の防水処理構造を有する電力ケーブルの接続部200は、2本の電力ケーブル70a及び70bを接続している部分を覆うように、シリコーンゴム製の絶縁用接続部材79が設けられ、絶縁用接続部材79の端部79aと電力ケーブル70aの防食層71aの端部72aとを覆うように第1防水処理部80と、絶縁用接続部材79の端部79bと電力ケーブル70bの防食層71bの端部72bとを覆うように第2防水処理部90と、を備えている。
【0041】
更に、電力ケーブルの接続部200は、電力ケーブル70aの防食層71a、第1防水処理部80、シリコーンゴム製の絶縁用接続部材79、第2防水処理部90、及び電力ケーブル70bの防食層71bを銅管76で覆っている。
【0042】
発明の一実施形態にかかる電力ケーブル端末の防水処理構造によって構成される第1防水処理部80は、絶縁用接続部材79の端部79aと電力ケーブル70aの防食層71aの端部72aとを覆うように、自己融着性を有するバルコテープを1/2ラップで2層巻き付けた変形層81が形成されている。また、変形層81の上には、変形層81の表面全体を覆うように、エポキシ含浸ガラステープを1/2ラップで8層巻き付けた第1形状安定層82aが形成され、第1形状安定層82aの上には、第1形状安定層82aの表面全体を覆うように、PVCテープを1/2ラップで2層巻き付けた第2形状安定層82bが形成されている。
【0043】
また、第2形状安定層82bの上には、第2形状安定層82bの表面全体を覆うように、絶縁テープ(エフコテープ)を1/2ラップで2層巻き付けた絶縁層84が形成されている。また、絶縁層84の端部を覆うように、ブチルゴム製水密テープを1層巻きつけた防水層85が形成されている。ここで、防水層85は、絶縁層84の端部84aを覆うように形成した防水層85aと、絶縁層84の端部84bを覆うように形成した防水層85bと、によって構成されている。また、防水層85(85a、85b)の表面全体と、防水層85によって覆われていない絶縁層84の表面とを覆うように、低温耐性を有するシリコーンテープを1/2ラップで3層巻き付けた遮水層86が形成されている。
【0044】
上述したように、本発明の一実施形態にかかる電力ケーブル端末の防水処理構造によって構成される防水処理部80は、変形層81と形状安定層82(82a、82b)と絶縁層84と防水層85(85a、85b)と遮水層86とが積層された構造を有している。
【0045】
尚、上述した防水処理部80は、防水層85(85a、85b)と遮水層86とからなる積層体が1層で構成されているが、この積層体を2層以上重ねた構成であっても良い。積層体の積層数を多くすることにより、防水処理部80の強度を高めることができる。
【0046】
発明の一実施形態にかかる電力ケーブル端末の防水処理構造によって構成される第2防水処理部90は、第1防水処理部80と同様で、変形層91と形状安定層92(92a、92b)と絶縁層94と防水層95(95a、95b)と遮水層96とが積層された構造を有している。
【0047】
上述したような発明の一実施形態にかかる電力ケーブル端末の防水処理構造によって構成される第1防水処理部80及び第2防水処理部90により、絶縁用接続部材79を66kV以上(110〜140kV)の高電圧に適用した場合であっても、温度変化に伴う熱挙動等によって生ずる電力ケーブル70a及び70bの防食層71a及び71bと絶縁用接続部材79との間のズレを吸収することができる。更に、電力ケーブル70a及び70bの防食層71a及び71bと絶縁用接続部材79との間を防水するとともに安定した接着性を確保し、低温環境(−50℃)においても長期間にわたり防水性能を確保することができる。また、自己融着テープ、シリコーンテープ等のテープによって防水処理構造を構成することにより、防水処理作業を、最後にテープを巻くだけで行うことができる。そのため、作業手順の順番を間違うことなく簡単に防水処理作業を行うことができる。
【0048】
また、従来、防水のために銅管76の内部にコンパウンドを充填しているが、本発明の一実施形態にかかる電力ケーブル端末の防水処理構造によって構成される第1防水処理部80及び第2防水処理部90により、銅管76の内部にコンパウンドを充填する必要が無くなる。
【符号の説明】
【0049】
10、70a、70b : 電力ケーブル
20 : ゴム差し込み端末
30 : 防食処理部
40 : 防水処理部
41、41a、42b : 変形層
42、42c : 形状安定層
42a : 第1形状安定層
42b : 第2形状安定層
44 : 絶縁層
45、45a、45b : 防水層
46 : 遮水層
79 : 絶縁用接続部材
80 : 第1防水処理部
90 : 第2防水処理部
100 : 終端部
200 : 接続部




【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁用端末部材が設けられた終端部を有する電力ケーブル端末の防水処理構造であって、
前記電力ケーブルの最外層端部と、前記最外層端部に近い前記絶縁用端末部材の入口端部と、を覆うように設けられた自己融着特性を有する変形部材から形成される変形層と、
前記変形層の端部を覆うように設けられた水密性を有する防水部材から形成される防水層と、
前記変形層及び前記防水層を覆うように設けられた低温耐性を有する遮水部材から形成される遮水層と、
を備えていることを特徴とする電力ケーブル端末の防水処理構造。
【請求項2】
2本の電力ケーブルを接続する絶縁用接続部材が設けられた接続部を有する電力ケーブル端末の防水処理構造であって、
前記接続部における前記電力ケーブルの最外層端部と、前記最外層端部に近い前記絶縁用接続部材の入口端部と、を覆うように設けられた自己融着特性を有する変形部材から形成される変形層と、
前記変形層の端部を覆うように設けられた水密性を有する防水部材から形成される防水層と、
前記変形層及び前記防水層を覆うように設けられた低温耐性を有する遮水部材から形成される遮水層と、
を備えていることを特徴とする電力ケーブル端末の防水処理構造。
【請求項3】
前記遮水部材はシリコーンテープであり、前記遮水層は前記シリコーンテープを巻くことによって形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の電力ケーブル端末の防水処理構造。
【請求項4】
前記防水部材はブチルゴム製水密テープであり、前記防水層は前記ブチルゴム製水密テープを巻くことによって形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電力ケーブル端末の防水処理構造。
【請求項5】
前記変形部材は自己融着テープであり、前記変形層は前記自己融着テープを巻くことによって形成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電力ケーブル端末の防水処理構造。
【請求項6】
前記変形層と、前記防水層及び前記遮水層と、の間に、前記変形層の形状を押さえて安定させる形状安定部材から形成される形状安定層が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電力ケーブル端末の防水処理構造。
【請求項7】
前記形状安定部材はエポキシ含浸ガラステープ及び/またはPVCテープであり、前記形状安定層は、前記エポキシ含浸ガラステープのみを巻くことによって、前記PVCテープのみを巻くことによって、または、前記エポキシ含浸ガラステープを巻き続いて前記エポキシ含浸ガラステープの上に前記PVCテープを巻くことによって形成されることを特徴とする請求項6に記載の電力ケーブル端末の防水処理構造。
【請求項8】
前記形状安定層と、前記防水層及び前記遮水層と、の間に、絶縁層が設けられていることを特徴とする請求項6または7に記載の電力ケーブル端末の防水処理構造。
【請求項9】
前記絶縁層は、絶縁テープによって形成されることを特徴とする請求項8に記載の電力ケーブル端末の防水処理構造。
【請求項10】
前記遮水層の端部を覆うように設けられた水密性を有する前記防水部材から形成される第2の防水層と、
前記遮水層と前記第2の防水層とを覆うように設けられた低温耐性を有する前記遮水部材から形成される第2の遮水層と、
の2層からなる積層体が、前記遮水層の上に1層以上積層されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の電力ケーブル端末の防水処理構造。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−217522(P2011−217522A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83344(P2010−83344)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(502308387)株式会社ビスキャス (205)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】