説明

電力供給システム

【課題】電力供給システムの設置の際に必要な工数が抑制される。
【解決手段】軌道100側の給電ユニット110は、磁心117L及び117R、並びに、これらの磁心に巻かれたコイル111L及び111Rを有している。コイル111L及び111Rに電流を流すことで、対向レール部115及び116間に磁界を発生させることができる。一方、搬送台車200側の受電ユニット210は、磁心212及び磁心212に巻かれたコイル211を有している。搬送台車200が軌道100に沿って走行すると、対向レール部115及び116間を受電ユニット210が通過する。このとき、磁心212を通る磁束の時間変化によってコイル211に誘導起電力が生じる。これによって、受電ユニット210が給電ユニット110から電力供給を受ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動用の電力を移動体に供給する電力供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
搬送台車のような移動体に非接触で電力を供給する場合がある。特許文献1はこのような電力供給システムに関する。特許文献1の搬送台車は軌道上を走行するものである。搬送台車には、非接触給電用のピックアップユニットが設置されている。ピックアップユニットはE型コアを有している。軌道には給電線が敷設されており、E型コアは搬送台車が軌道に沿って走行する際に給電線を挟むように配置されている。給電線に高周波電流を供給することにより、給電線の周囲に発生した磁束がE型コアに巻かれたピックアップコイルに誘導起電力を発生させる。これによって、給電線から搬送台車へと電力が供給される。
【0003】
【特許文献1】特開2002−354713号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の給電線は、軌道に沿って延びるように敷設されている。この場合、給電線は搬送台車が軌道に沿って走行する際に、搬送台車のE型コアに接触しないように、弛ませずに敷設しなければならない。軌道の全域にわたって弛ませないように給電線を敷設するためには、多大な工数が必要となるおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、システム設置の際に必要な工数が抑制された電力供給システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本発明の電力供給システムは、駆動用の電力を移動体に供給する電力供給システムであって、第1の磁心、及び、前記第1の磁心に巻かれた第1のコイルを有する給電ユニットと、第2の磁心、及び、前記第2の磁心に巻かれた第2のコイルを有する、前記移動体に設けられた受電ユニットと、前記第1のコイルに電流を流す電源とを備えている。そして、前記移動体が、前記第1のコイルから発生した磁界中を通過する際に前記第2のコイルに生じる誘導起電力によって前記受電ユニットが前記給電ユニットから電力供給を受けるように、前記給電ユニットの近傍の所定の移動経路に沿って移動する。
【0007】
本発明の電力供給システムによると、給電ユニットが磁心にコイルを巻いた構成を有している。したがって、変形しにくい材料から磁心を形成したり、変形しにくい形状を有するように磁心を形成したりできる。これによって、例えば移動経路に沿って給電線を弛まずに敷設しなければならない場合と比べて、システム設置に必要な工数が抑制される。
【0008】
また、本発明においては、前記第1の磁心が、一方向に関して互いに対向し且つ所定の距離だけ互いに離隔した第1及び第2の対向面を有しており、前記第2の磁心が、前記移動体が前記所定の移動経路に沿って移動する際に、実質的に前記第1及び第2の磁心内のみを通る閉経路に沿った磁路が形成されるように前記第1及び第2の対向面との間を通過することが好ましい。これによると、ほぼ第1及び第2の磁心に沿った閉経路の磁路が形成されやすくなるので、漏れ磁束を抑制し、移動体に効率よく電力を供給することができる。
【0009】
また、本発明においては、前記第1の磁心が、前記所定の移動経路に直交する方向に関して概略的にC字型の断面形状を有しており、前記第1及び第2の対向面が、前記第1の磁心において前記C字型の開口部に形成されており、前記第2の磁心において、前記移動体が前記所定の移動経路に沿って移動する際に前記第1及び第2の対向面のそれぞれに対向する第3及び第4の対向面が、前記一方向に関する両端に形成されていることが好ましい。これによると、第1及び第2の磁心によって閉経路の磁路がより確実に形成される。
【0010】
また、本発明においては、前記移動体を支持する軌道をさらに備えており、前記第1の磁心において、前記C字型の断面形状を有する部分が前記軌道に沿って所定の間隔で複数配列されるように形成されており、前記軌道が、前記移動体が前記軌道に沿って走行する際に前記所定の移動経路に沿って移動するように敷設されていることが好ましい。これによると、C字型の断面形状を有する部分を受電ユニットが通過する際には受電ユニットに確実に電力を供給できるのに対して、C字型の断面形状を有する部分に受電ユニットが位置していない場合に前記第1の対向面と前記第2の対向面との間の磁気抵抗を大きくして、漏れ磁束が発生しにくいようにできる。したがって、移動体への電力供給の効率をより良好にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の好適な一実施形態である搬送システム1について説明する。図1は、搬送システム1の概略構成図である。
【0012】
搬送システム1は、例えば半導体基板の製造工場等に設置され、種々の荷を工場内で搬送するためのものである。搬送システム1は、軌道100、及び、軌道100上を走行する搬送台車200を有している。軌道100は工場内の異なる位置間を結ぶように水平に敷設されている。搬送台車200は種々の荷を支持しつつ軌道100に沿って走行し、工場内の異なる位置間で荷を搬送する。本実施形態においては、搬送台車200は軌道100に沿った一定の方向に走行する。図1において搬送台車200近傍の矢印は、各搬送台車200の走行方向を示している。軌道100は分岐部100aにおいて、1本の経路から複数の経路に分岐している。これらの複数の経路は合流部100bにおいて再び1本の経路に合流している。搬送台車200は分岐部100aにおいて、これらの複数の経路のいずれかを荷の搬送元や搬送先に応じて選択し、選択した経路に沿って走行する。軌道100内には搬送台車200へと電力を供給する後述の給電ユニット110が設けられており、電源盤300から給電ユニット110へと供給された電力が搬送台車200へと供給される。
【0013】
以下、軌道100と搬送台車200の構成について説明する。図2は、図1のII−II線断面図である。図3は、軌道100上を走行する搬送台車200の左側面図である。軌道100は、搬送台車200を支持する軌道本体101と、軌道本体101に固定された給電ユニット110を有している。軌道本体101は、上方に開口したコの字型の形状を概略的に有している。給電ユニット110は、軌道本体101の上方に配置されている。給電ユニット110は、給電ユニット110L及び110Rの一対が設けられている。給電ユニット110L及び110Rは、軌道100の幅方向の中心軸Aに関して対称な形状を有しており、軸Aに関して対称に配置されている。
【0014】
給電ユニット110L及び110Rは、軸Aに関して左右対称に配置された一対のコイル111L及び111Rを有している。また、軸Aに関して左右対称に配置された一対の磁心117L及び117Rを有している。コイル111L及び111Rは磁心117L及び117Rにそれぞれ巻かれている。磁心117L及び117Rは、互いに対称な形状を有しており対称に配置されている。給電ユニット110L及び110Rは、互いに同じ構成を有しているため、以下においては一方の給電ユニット110Lについてのみ説明する。
【0015】
磁心117Lは鉄などの磁性材料から形成されている。磁性材料には、鉄損の小さい電気鉄板やアモルファス金属板などが用いられることが好ましい。磁心117Lは、支柱部112、磁心下部113、磁心上部114、対向レール部115、及び、対向レール部116を有している。磁心下部113は、図2及び図3に示すように水平方向に沿っており、軌道100の長さ方向に沿って延びた平板状の形状を有している。磁心下部113は、軌道本体101の上面に、ボルトやナットを介して固定されている。磁心下部113は、図2に示すように軌道本体101の左側面から右方へと延びており、その先端は上方に向かって湾曲している。湾曲部の先端には対向レール部116が固定されている。
【0016】
磁心117Lは、図2において一点鎖線に沿って延びたC型部117Cを有している。C型部117Cは、磁心下部113の上方へと突出している。かかるC型部117Cは、図2に示すように、軌道100の長さ方向から見た場合に概略的にC字型の形状を有しており、軸Aに向かって開口している。つまり、搬送台車200の走行方向に直交する断面に関して、C字型の形状を有している。対向レール部115及び116は、C型部117Cの開口部に相当する。C型部117Cは複数設けられており、図3に示すように、一定の間隔L1で軌道100の長さ方向に関して配列されている。
【0017】
C型部117Cは、図2に示すように、支柱部112、磁心下部113、磁心上部114、対向レール部115及び116によって構成されている。支柱部112は、磁心下部113の上面に固定されている。支柱部112は、磁心下部113の図2において左端から鉛直方向に沿って延びている。各支柱部112の上端には、磁心上部114が固定されている。磁心上部114は、支柱部112の上端から図2において右方に向かって延びており、その先端は下方に向かって湾曲している。湾曲部の先端には対向レール部115が固定されている。
【0018】
対向レール部115及び116は、図2及び図3に示すように、いずれも水平方向に沿って延びており、軌道100の長さ方向に沿って延びた平板状の形状を有している。また、対向レール部115及び116は、軌道100の幅方向に関して互いに同じ幅を有している。対向レール部115の下面(第1の対向面)と対向レール部116の上面(第2の対向面)とは軌道100の幅方向に関して同じ位置にあり、鉛直方向に関して互いに対向している。また、これらの面は、後述の受電ユニット210Lの高さより若干長い距離だけ互いに離隔するように配置されている。
【0019】
コイル111Lは、磁心117Lの支柱部112の周囲に巻かれている。これによって、コイル111Lに電流が流れると、コイル111の周囲に磁界が発生し、支柱部112、磁心下部113及び磁心上部114に沿って磁路が形成される。そして、対向レール部115及び116の間の空間において、対向レール部115の下面と対向レール部116の上面とを繋ぐ経路に沿って磁束が発生するようになっている。搬送台車200は後述のとおり、対向レール部115及び116間に発生した磁界との磁気的な相互作用によって電力供給を受ける。
【0020】
以下、分岐部100a及び合流部100bにおける対向レール部115及び116の構成について説明する。図4(a)は、図1の一点鎖線で囲まれた軌道100の分岐部100a近傍の平面図である。図4(b)は、図1の一点鎖線で囲まれた軌道100の合流部100b近傍の平面図である。分岐部100aにおいて軌道100は、図4(a)の左方から右方に向かって、2つの分岐経路100c及び100dに分岐している。分岐経路100c及び100dは、図4(b)の左方から右方に向かって1つの経路に合流している。図4(a)において軌道100の分岐前の部分に敷設された対向レール部115の一方を対向レール部115a、他方を対向レール部115bとする。このとき、対向レール部115aは、分岐経路100cに沿って真っ直ぐに延びている。これに対して、対向レール部115bは分岐経路100dに沿って湾曲している。
【0021】
そして、分岐経路100cには、軌道100の幅方向に関して対向レール部115aと対になる対向レール部115cが敷設されている。また、分岐経路100dには、軌道100の幅方向に関して対向レール部115bと対になる対向レール部115dが敷設されている。対向レール部115c及び115dは、図4(a)及び図4(b)の一点鎖線で囲まれた箇所には延びておらず、対向レール部115a及び115bのいずれとも連続していない。なお、対向レール部116は、分岐部100a及び合流部100bや分岐経路100c及び100dを含む、軌道100のいずれの箇所においても、平面視においてちょうど対向レール部115bと重なるように配置されている。搬送台車200は、一点鎖線で囲まれた領域外の位置(例えば、図4の200aの位置)においては、図2の左右一対の対向レール部115及び116から電力供給を受ける。しかし、図4の一点鎖線内の位置(例えば、図4の200bの位置)においては、左右どちらかの対向レール部115及び116のみから電力供給を受けることとなる。
【0022】
搬送台車200は、荷台221と、荷台221を支持するフレーム222を有している。フレーム222は、搬送台車200が軌道100上を走行する際、軌道100内に配置される。また、荷台221は、軌道100の上方に位置するようにフレーム222に支持される。
【0023】
搬送台車200は、走行車輪231、ガイドローラ232及び233を有している。走行車輪231は、車軸234を介してフレーム222に支持されており、搬送台車200全体を軌道本体101の底面上で支持している。搬送台車200が軌道100に沿って移動すると、これに従動して走行車輪231も車軸234を回転軸として回転する。ガイドローラ232及び233は、それぞれ支持軸235及び236によってフレーム222に支持されている。また、支持軸235及び236は、ガイドローラ232及び233を水平面内で回転するように支持している。ガイドローラ232及び233は、いずれも軌道本体101の内側面に、水平方向から当接している。そして、搬送台車200が軌道100に沿って移動すると、これに従動して回転する。このような走行車輪231、ガイドローラ232及び233により、搬送台車200は、軌道100の幅方向にずれることなく軌道100に沿って水平に走行できるようになっている。
【0024】
搬送台車200はいわゆるリニアモータ方式で走行するように構成されている。このため、搬送台車200は、リニアモータ走行用の1次側コイル鉄心241を有している。フレーム222内には、1次側コイル鉄心241のコイルに電流を流すリニアモータ駆動回路(不図示)が設けられている。一方、軌道本体101内の底面において、1次側コイル鉄心241に対向する位置には、リニアモータ走行用の2次側永久磁石120が固定されている。上記のリニアモータ駆動回路は、1次側コイル鉄心241のコイルに流す電流を、永久磁石120と1次側コイル鉄心241との磁気的相互作用で搬送台車200が軌道100に沿って移動するように制御する。
【0025】
搬送台車200は、上記のリニアモータ駆動回路等へ供給する電力を受けるための受電ユニット210を有している。受電ユニット210は受電ユニット210L及び210Rの一対が設けられている。受電ユニット210L及び210Rは、図2に示すように、軸Aに関して対称な形状を有しており、軸Aに関して対称に配置されている。受電ユニット210L及び210Rは、給電ユニット110から発生した磁界中を通過する際に生じる誘導起電力によって給電ユニット110から電力供給を受けるものである。なお、受電ユニット210L及び210Rは、図2の軸Aに関して互いに対称な形状を有しており対称に配置されている。それ以外に関してはこれらは互いに同じ構成を有しているため、以下においては一方の受電ユニット210Lについてのみ説明する。
【0026】
受電ユニット210Lは、コイル211と磁心212とを有している。コイル211は磁心212に巻かれている。コイル211は、上記のリニアモータ駆動回路等と接続されており、コイル211に生じた誘導起電力によってリニアモータ駆動回路等に電力を供給するように構成されている。磁心212は磁心117と同様に、鉄などの磁性材料から形成されており、支持フレーム213を介してフレーム222に固定されている。磁心212は、対向部212a、対向部212b及び支柱部212cを有している。支柱部212cは鉛直方向に沿って延びており、その上端に対向部212aが、下端に対向部212bが固定されている。対向部212a及び212bは、いずれも水平方向に沿って延びる平板状の形状を有している。対向部212a及び212bは、図3に示すように、いずれも軌道100の長さ方向に関して延びており、かかる方向に関して上記のL1より小さいL2の長さを有している。
【0027】
対向部212aの上面(第3の対向面)は、図2に示すように、磁心117Lの対向レール部115の下面と近接し且つ対向している。また、対向部212aの上面は、対向レール部115の下面と軌道100の幅方向に関してほぼ同じ幅を有しており、軌道100の幅方向に関して対向レール部115の下面と重なるように配置されている。対向部212bの下面(第4の対向面)も、図2に示すように、磁心117Lの対向レール部116の上面と近接し且つ対向している。また、対向部212bの下面も、対向レール部116の上面と軌道100の幅方向に関してほぼ同じ幅を有しており、軌道100の幅方向に関して対向レール部116の下面と重なるように配置されている。搬送台車200側の対向部212a及び軌道100側の対向レール部115間の距離、並びに、台車側の対向部212b及び軌道側の対向レール部116間の距離は、いずれも所定の大きさに一定に保たれるている。
【0028】
図5は、軌道100側のコイル111L及び111Rに電流を流す電気的構成を示す回路図である。コイル111L及びコイル111Rは、いずれも給電線302に、互いに並列に接続されている。電源盤300は、交流電流源301を有しており、給電線302に所定の周波数の交流電流を流すように構成されている。
【0029】
以下、搬送台車200が電力供給を受ける仕組みについて説明する。給電ユニット110のコイル111L及び111Rに電流が流れると、その電流値及びコイルの巻数に応じた強さの磁界がこれらのコイルの周囲に発生する。この磁界は磁心117L及び117Rを通る磁束を発生させる。ここで、かかる磁束の密度は、磁心117L及び117Rの透磁率に応じて大きくなる。そして、C型部117Cの開口部である対向レール部115及び116間の空間に磁界が発生する。
【0030】
一方、搬送台車200が軌道100に沿って走行すると、受電ユニット210が対向レール部115及び116間を通過する。そして、受電ユニット210は、給電ユニット110においてC型部117Cが形成された箇所を次々と通過する。以下、給電ユニット110Lから受電ユニット210Lへの電力供給について説明する。なお、給電ユニット110Rから受電ユニット210Rへの電力供給についても同様であるので説明を省略する。
【0031】
図6(a)及び図6(b)は、給電ユニット110LにおいてC型部117Cが形成された箇所に受電ユニット210Lが位置しているときを示している。また、図6(c)及び図6(d)は、C型部117Cが形成された箇所に受電ユニット210Lが位置していないときを示している。図6(a)及び図6(c)は、C型部117Cが形成された箇所の正面図である。図6(b)及び図6(d)は、図6(a)及び図6(c)を左側面から見た図である。
【0032】
図6(a)及び図6(b)が示すように、受電ユニット210Lは、対向レール部115及び対向レール部116間に発生した磁界中を通過することとなる。対向レール部115及び対向レール部116間の磁界は、受電ユニット210Lの磁心212を通る磁束を発生させる。かかる磁束の密度は、磁心212の透磁率に応じて大きくなる。そして、受電ユニット210Lのコイル211を通る磁束の時間変化に応じた大きさの誘導起電力がコイル211に発生する。これによって、リニアモータ駆動回路等に電力が供給される。
【0033】
ここで、対向レール部115及び対向部212a間の距離や対向レール部116及び対向部212b間の距離は、できるだけ小さくなるように調整されていることが好ましい。これによって、例えば図6(a)において二点鎖線で描かれた長方形Cのように、空気中をほとんど通ることなくほぼC型部117C及び磁心212の内部のみを通る閉経路が形成される。したがって、磁心の内部のみを通る閉経路に沿った磁路が形成されやすくなるため、漏れ磁束が少なく、効率の良い電力供給が実現する。
【0034】
図6(c)及び図6(d)が示すように、C型部117Cが形成された箇所に受電ユニット210Lが位置していないときには、対向レール部115及び116間の空間が大きく開放される。したがって、図6(a)及び図6(b)と比べてかかる空間の磁気抵抗が非常に大きくなる。このように、C型部117Cが形成された箇所に受電ユニット210Lが位置していないときには、実質的に漏れ磁束がないものとみなせる。つまり、C型部117Cが形成された箇所に受電ユニット210Lが位置していないときには、この箇所の漏れ磁束によって給電ユニット110側に生じる電力の損失は十分に小さい。
【0035】
以下、本実施形態の構成と、図7に示す参考形態とを比較する。図7の参考形態は、上記の実施形態とは異なる給電方式の構成を示している。この参考形態は、軌道900に沿って敷設された給電線901を有している。搬送台車側には、給電線901から電力供給を受けるトランス910が設けられている。図7は、トランス910周辺の正面図であり、軌道900の側板と給電線901の縦断面を含んでいる。給電線901は図7の前後方向に関して延びており、軌道900に支持部902を介して軌道900に支持されている。トランス910は、E字型の形状を有するトランスコア912と、トランスコア912に巻かれたコイル911とを有している。コイル911は、鉛直方向に並んだトランスコア912の3本の足部のうち、中央の足部の根元付近に配置されている。給電線901は3本の足部の間に配置されている。給電線901に電流が流れると、給電線901の周囲に磁界が発生し、トランスコア912を通る磁束が発生する。かかる磁束がコイル911を通過する量が時間変化することにより、コイル911に誘導起電力が生じる。
【0036】
図7の参考形態には以下の問題がある。まず、給電線901は軌道900に沿って延びるように敷設されるが、トランスコア912に接触しないように、軌道900の全域にわたって弛ませずに敷設しなければならない。しかし、給電線901は、自重や温度変化によって変形するため、軌道900の全域にわたって弛まないように敷設するのは困難である。また、一本の連続した給電線901を軌道900の全域にわたって敷設すると、給電線901の全体のインピーダンスが大きくなり、電力供給が困難になるため、適宜の長さに区切って給電線901を敷設する必要がある。このように、図7の参考形態は、給電線901を敷設するために多大の工数を要するおそれがある。
【0037】
また、トランスコア912のようなE字型のコアは一方向(図7の左方)に開放されている。したがって、トランスコア912に巻かれたコイル911と給電線901との磁気的結合において、大きな漏れ磁束が発生する。したがって、漏れ磁束による電力の損失が大きくなるおそれがある。
【0038】
これに対して、上述の本実施形態によると、給電ユニット110は、磁心117L及び117Rとコイル111L及び111Rとから構成されている。磁心117L及び117Rは軌道100に沿って延びているが、対向レール部115及び116や磁心下部113は、鉄などからなる板状の部材であり、給電線901と比べて弛んだりしにくい。このため、長い給電線を弛ませずに敷設するといった困難がなく、図7の参考形態のような多大な工数を必要としない。
【0039】
また、本実施形態によると、給電ユニット110においてC型部117Cが設けられた箇所を受電ユニット210が通過する際に、受電ユニット210が給電ユニット110から電力供給を受ける。このとき、トランスコア912と異なり磁心117L及び117Rが一方に開口したりせず(図6(a)参照)、磁心に沿った閉経路の磁路が形成されやすいため、効率良く電力供給がなされる。その一方で、C型部117Cが設けられた箇所に受電ユニット210が存在しないときには、この箇所における磁気抵抗が大きくなるため漏れ磁束が小さく、漏れ磁束による電力の損失は小さい。
【0040】
また、本実施形態によると、対向レール部115及び116を区切る必要はなく、一体に形成できる。したがって、搬送台車200が軌道100に沿って走行する際に、対向レール部115及び116から切れ目なく電力供給を受けることができる。
【0041】
さらに、図4のような分岐部100aや合流部100bにおいても、少なくとも一方の対向レール部115及び116から搬送台車200に電力を供給することができる。したがって、分岐部100aや合流部100bにおいても、連続して電力を供給することが可能である。
【0042】
<変形例>
以上は、本発明の好適な実施形態についての説明であるが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、課題を解決するための手段に記載された範囲の限りにおいて様々な変更が可能なものである。
【0043】
例えば、上述の実施形態においては搬送台車200への電力供給が想定されている。しかし、その他の移動体に対する電力供給に利用されてもよい。また、搬送台車200は軌道100に沿って走行することが想定されているが、移動方向が軌道等に制約されず自由に移動する移動体に本発明が適用されてもよい。
【0044】
また、上述の実施形態においては、1台の搬送台車200に2つの受電ユニット210が設けられているものとしている。しかし、1台の搬送台車200に1つの受電ユニット210が設けられていてもよいし、3つ以上設けられていてもよい。
【0045】
また、上述の実施形態においては、図2に示すように、磁心117L及び117RにC型部117Cが設けられており、受電ユニット210側の磁心212がI字型の形状を有している。そして、これによって、実質的に磁心の内部のみを通る閉経路の磁路が形成されている。しかし、給電ユニット110側の磁心と受電ユニット210側の磁心とによって閉経路の磁路が形成されやすい形状であれば、磁心の形状はどのようなものであってもよい。例えば、給電ユニット110側の磁心がI字型の形状を有しており、受電ユニット210側の磁心212がC字型の形状を有していてもよい。また、一方がコ字型の形状を、他方がコ字型の左右を逆にした形状を有しており、コ字型の開口同士を合わせるように近接することでロ字型の閉経路の磁路が形成されるようになっていてもよい。
【0046】
また、上述の実施形態においては、給電ユニット110の磁心117L及び117Rが角張った形状を有している。しかし、これらの磁心に角が丸く湾曲した形状が採用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施形態に係る搬送システムの正面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図1の軌道上を走行する搬送台車の左側面図である。
【図4】図1の軌道の分岐部及び合流部近傍の平面図である。
【図5】図1の軌道側のコイルに電流を流す電気的構成を示す回路図である。
【図6】図6(a)及び図6(c)は、図1の軌道においてC型部が形成された箇所の正面図である。図6(b)及び図6(d)は、図6(a)及び図6(c)の軌道を左側面から見た図である。
【図7】本発明とは異なる参考形態の給電構成の正面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 搬送システム
100 軌道
110 給電ユニット
117C C型部
200 搬送台車
210 受電ユニット
300 電源盤
111、211 コイル
115、116 対向レール部
117、212 磁心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動用の電力を移動体に供給する電力供給システムであって、
第1の磁心、及び、前記第1の磁心に巻かれた第1のコイルを有する給電ユニットと、
第2の磁心、及び、前記第2の磁心に巻かれた第2のコイルを有する、前記移動体に設けられた受電ユニットと、
前記第1のコイルに電流を流す電源とを備えており、
前記移動体が、前記第1のコイルから発生した磁界中を通過する際に前記第2のコイルに生じる誘導起電力によって前記受電ユニットが前記給電ユニットから電力供給を受けるように、前記給電ユニットの近傍の所定の移動経路に沿って移動することを特徴とする電力供給システム。
【請求項2】
前記第1の磁心が、一方向に関して互いに対向し且つ所定の距離だけ互いに離隔した第1及び第2の対向面を有しており、
前記第2の磁心が、前記移動体が前記所定の移動経路に沿って移動する際に、実質的に前記第1及び第2の磁心内のみを通る閉経路が形成されるように前記第1及び第2の対向面との間を通過することを特徴とする請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項3】
前記第1の磁心が、前記所定の移動経路に直交する方向に関して概略的にC字型の断面形状を有しており、
前記第1及び第2の対向面が、前記第1の磁心において前記C字型の開口部に形成されており、
前記第2の磁心において、前記移動体が前記所定の移動経路に沿って移動する際に前記第1及び第2の対向面のそれぞれに対向する第3及び第4の対向面が、前記一方向に関する両端に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の電力供給システム。
【請求項4】
前記移動体を支持する軌道をさらに備えており、
前記第1の磁心において、前記C字型の断面形状を有する部分が前記軌道に沿って所定の間隔で複数配列されるように形成されており、
前記軌道が、前記移動体が前記軌道に沿って走行する際に前記所定の移動経路に沿って移動するように敷設されていることを特徴とする請求項3に記載の電力供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−119965(P2009−119965A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−294482(P2007−294482)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【出願人】(302059274)アシスト テクノロジーズ ジャパン株式会社 (146)
【Fターム(参考)】