説明

電力供給装置、電力受電装置及び電力供給方法

【課題】電力と情報とが周波数分割されて同時に利用でき、なおかつ効果的な電力供給制御が可能な電力供給装置を提供すること。
【解決手段】電力の供給について電力仕様の合意を確立した他の装置に対して電力を供給する電力供給部と、電力供給部が供給する電力と周波数分割されて他の装置との間で通信を実行する通信部と、他の装置との間で電力仕様の合意を実行し、合意が確立した他の装置へ電力供給部が電力を供給している際に通信部が別の他の装置から電力供給の要求を受信すると、電力供給中の他の装置との間で優先度を比較して電力供給先の他の装置を決定し電力供給部による電力の供給を制御する電力供給制御部と、を備える、電力供給装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力供給装置、電力受電装置及び情報通知方法に関し、より詳細には、電力と情報とが周波数分割されて同時に利用できる電力供給装置、電力受電装置及び情報通知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータやゲーム機のような電子機器の多くは、機器の動作やバッテリの充電のために、商用電源より交流(AC)の電力を入力して機器に合わせた電力を出力するACアダプタが用いられている。通常、電子機器では直流(DC)によって動作するが、電圧や電流はそれぞれの機器で異なる。従って、機器に合わせた電力を出力するACアダプタの規格も、機器毎に異なることになり、同じような形状を有するACアダプタであっても互換性を有しないことになる、機器の増加に伴ってACアダプタの数も増加してしまう問題があった。
【0003】
このような問題に対して、バッテリやACアダプタ等の機器に電力を供給する電源供給ブロックと、当該電源供給ブロックから電力が供給される電源消費ブロックとを、直流の1つの共通バスラインに接続した電源バスシステムが提案されている(例えば特許文献1、特許文献2)。かかる電源バスシステムにおいては直流の電流がバスラインを流れている。また、かかる電源バスシステムにおいては、各ブロックは自らがオブジェクトとして記述されており、各ブロックのオブジェクトがバスラインを介して相互に情報(状態データ)の送受信を行っている。また各ブロックのオブジェクトは、他のブロックのオブジェクトからの要求に基づいて情報(状態データ)を生成し、回答データとして送信している。そして、回答データを受信したブロックのオブジェクトは、受信した回答データの内容に基づいて電力の供給や消費を制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−306191号公報
【特許文献2】特開2008−123051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の電源バスシステムでは、任意の数の電力供給源(電源サーバ)と、消費者(クライアント)とがシステムに動的に接続され、電源サーバとクライアントとの間でその合意に基づいた電力供給が実施される。このような電源バスシステムは、限られた供給量のもとでの電力供給の最大効率化を図るシステムとも考えられて、最近議論が高まっている、既存グリッドにおけるスマートグリッドが目指す事を、ローカルレベルで実現するものとも考えられる。
【0006】
既存グリッドでは、電力供給量は常に需要よりも多いように制御され、停電や電力不足が発生しないように考えられてきたが、今後、電気自動車が広く普及すること想定すると、電力需要の急増がグリッドの基盤(発電所の発電量、電力網の送配電可能量)に追いつかないことが予想される。これを解決するための手段がスマートグリッドの中のデマンドサイド制御である。
【0007】
一方、上述の電源バスシステムは、そもそも需給バランスが崩れてしまうような状態では、明示的にベストエフォートで動作する。従って、当然すべての負荷(クライアント)の要求を満たせないことがあり、スマートグリッドによるデマンドサイド制御よりもさらに一歩踏み込んだ制御が必要となる。しかし、この点においては上述の電源バスシステムでは明確にされておらず、具体的な電力供給制御が考えられていないという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、電力と情報とが周波数分割されて同時に利用でき、なおかつ効果的な電力供給制御が可能な、新規かつ改良された電力供給装置、電力受電装置及び電力供給方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、電力の供給について電力仕様の合意を確立した他の装置に対して電力を供給する電力供給部と、前記電力供給部が供給する電力と周波数分割されて前記他の装置との間で通信を実行する通信部と、他の装置との間で前記電力仕様の合意を実行し、合意が確立した他の装置へ前記電力供給部が電力を供給している際に前記通信部が別の他の装置から電力供給の要求を受信すると、電力供給中の他の装置との間で優先度を比較して電力供給先の他の装置を決定し前記電力供給部による電力の供給を制御する電力供給制御部と、を備える、電力供給装置が提供される。
【0010】
前記電力供給制御部は、前記優先度として、前記他の装置の種類に応じて設定される動作期待値に乱数を組み合わせたものを使用して電力供給先を決定するようにしてもよい。
【0011】
前記電力供給制御部は、前記動作期待値の設定を状況に応じて変更可能であるようにしてもよい。
【0012】
前記電力供給制御部は、前記優先度の比較により電力供給を断った前記他の装置に対しては、所定の時間が経過した後に該他の装置の前記動作期待値を一時的に高く設定するようにしてもよい。
【0013】
前記電力供給制御部は、前記電力供給部が他の装置へ電力を供給している際に前記通信部が別の他の装置から電力供給の要求を受信すると、電力供給中の他の装置との間で優先度を比較して、電力供給中の他の装置の優先度より新たに電力供給を要求した他の装置の優先度が高ければ電力供給中の他の装置への電力供給を停止し、新たに電力供給を要求した他の装置へ電力を供給するように前記電力供給部を制御するようにしてもよい。
【0014】
前記電力供給制御部は、前記電力供給部が他の装置へ電力を供給している際に前記通信部が別の他の装置から電力供給の要求を受信すると、電力供給中の他の装置との間で優先度を比較して、電力供給中の他の装置の優先度より新たに電力供給を要求した他の装置の優先度が高ければ電力供給中の他の装置に対して合意した電力仕様と異なる仕様で電力供給が可能かどうか前記通信部に問い合わせさせるようにしてもよい。
【0015】
前記電力供給制御部は、前記電力供給部が他の装置へ電力を供給している際に別の他の装置が電力の供給を一時的に中止している場合には、予め定めた前記他の装置への電力供給時間が終了するタイミングで前記別の他の装置への合意を開始するようにしてもよい。
【0016】
前記電力供給部は、前記他の装置へ間歇的に電力を供給するようにしてもよく、また前記電力供給部は、前記他の装置へ連続的に電力を供給するようにしてもよい。
【0017】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、電力の供給について電力仕様の合意が確立された電力供給装置から所定のバスラインを介して電力を受電する電力受電部と、前記電力受電部が受電する電力と周波数分割されて前記電力供給装置との間で通信を実行する通信部と、前記通信部での通信によって前記電力供給装置へ電力仕様の合意を確立しようとする際に自身の優先度の情報を前記通信部での通信に付加する電力要求制御部と、を備える、電力受電装置が提供される。
【0018】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、電力の供給について電力仕様の合意を確立した他の装置に対して電力を供給する電力供給ステップと、前記電力供給ステップで供給される電力と周波数分割されて前記他の装置との間で通信を実行する通信ステップと、前記電力供給ステップで他の装置へ電力が供給されている際に前記通信ステップで別の他の装置から電力供給の要求を受信すると、電力供給中の他の装置との間で優先度を比較して電力供給先を決定して前記電力供給ステップによる電力供給を制御する電力供給制御ステップと、を備える、電力供給方法が提供される。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明によれば、電力と情報とが周波数分割されて同時に利用でき、なおかつ効果的な電力供給制御が可能な、新規かつ改良された電力供給装置、電力受電装置及び電力供給方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態にかかる電力供給システムの構成について示す説明図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる電力供給システム1による電力供給処理を示す説明図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる電源サーバ100の構成を示す説明図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかるクライアント200の構成を示す説明図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかるプライオリティー制御を示す流れ図である。
【図6】本発明の一実施形態にかかるプライオリティー制御を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0022】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
<1.本発明の一実施形態>
[1−1.電力供給システムの構成]
[1−2.電力供給システムによる電力供給処理]
[1−3.電源サーバの構成]
[1−4.クライアントの構成]
[1−5.電源サーバ及びクライアントの動作]
<2.まとめ>
【0023】
<1.本発明の一実施形態>
[1−1.電力供給システムの構成]
まず、本発明の一実施形態にかかる電力供給システムの構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる電力供給システムの構成について示す説明図である。以下、図1を用いて本発明の一実施形態にかかる電力供給システムの構成について説明する。
【0024】
図1に示したように、本発明の一実施形態にかかる電力供給システム1は、電源サーバ100と、クライアント200と、を含んで構成される。電源サーバ100とクライアント200とは、バスライン10を介して接続されている。
【0025】
電源サーバ100は、クライアント200に対して直流電力を供給するものである。また、電源サーバ100は、クライアント200との間で情報信号を送受信する。本実施形態においては、電源サーバ100とクライアント200との間の直流電力の供給および情報信号の送受信は、バスライン10で共用されている。
【0026】
電源サーバ100は、情報信号の送受信のための通信用モデム、電力の供給を制御するためのマイクロプロセッサ、直流電力の出力を制御するスイッチ等を含んで構成されている。
【0027】
クライアント200は、電源サーバ100から直流電力の供給を受けるものである。また、クライアント200は、電源サーバ100との間で情報信号を送受信する。図1では、2つのクライアント200を図示している。
【0028】
クライアント200は、情報信号の送受信のための通信用モデム、電力の供給を制御するためのマイクロプロセッサ、直流電力の出力を制御するスイッチ等を含んで構成されている。
【0029】
なお、図1に示した電力供給システム1では、1つの電源サーバ100と、2つのクライアント200とを図示しているが、本発明においては、電源サーバの数とおよびクライアントの数はかかる例に限定されないことは言うまでも無い。
【0030】
図1に示した電力供給システム1、2における電力の供給方法については、上記特許文献2(特開2008−123051号公報)において説明されているので、ここでは詳細な説明は省略するが、以下において、本発明の一実施形態にかかる電力供給システム1による電力供給処理について簡単に説明する。
【0031】
[1−2.電力供給システムによる電力供給処理]
図2は、本発明の一実施形態にかかる電力供給システム1による電力供給処理について説明する説明図である。以下、図2を用いて、本発明の一実施形態にかかる電力供給システム1による電力供給処理について説明する。
【0032】
図2に示したように、電源サーバ100は、バスライン10に対して定期的に同期パケットA1、A2、A3、・・・を出力する。また、電源サーバ100は、クライアント200に電力を供給するために、クライアント200との間で送受信される情報信号である情報パケットB1、B2、B3、・・・および電力エネルギーをパケット化した電力パケットC1、C2、C3、・・・を出力する。一方、クライアント200は、電源サーバ100から電力の供給を受けるために、電源サーバ100との間で送受信される情報信号である情報パケットD1、D2、D3、・・・を出力する。
【0033】
電源サーバ100は、所定の間隔(例えば1秒間隔)のタイムスロットの開始時に、同期パケットA1、A2、A3、・・・を出力する。タイムスロットは、情報パケットが送信される情報スロットと、電力パケットが送信される電力スロットとからなる。情報スロットIS1、IS2、IS3、・・・は、電源サーバ100とクライアント200との間で情報パケットのやり取りが行われる区間である。また電源スロットPS1、PS2、PS3、・・・は、電源サーバ100からクライアント200へ供給される電力パケットC1、C2、C3、・・・が出力される区間である。情報パケットは、情報スロットIS1、IS2、IS3、・・・の区間においてのみ出力可能なパケットである。従って、1つの情報スロットにおいて情報パケットの送受信が完了しない場合には複数の情報スロットに渡って情報パケットが送信される。一方、電力パケットは、電源スロットPS1、PS2、PS3、・・・の区間においてのみ出力可能なパケットである。
【0034】
電源サーバ100は、自身が供給可能な電力仕様を示すサーバ電源プロファイルを1または2以上有しており、クライアント200は、自身の仕様に適合する電力を供給可能な電源サーバ100から、電力の供給を受けるものとする。このとき、クライアント200は、電源サーバ100からサーバ電源プロファイルを取得して、自身に対する電源サーバ100の仕様(サーバ電源プロファイル)を決定する。このためにまず、クライアント200は、電源サーバ100が出力する同期パケットA1を検出して、同期パケットA1に含まれる電源サーバ100のアドレスを取得する。アドレスは、例えばMACアドレスとすることができる。次いで、クライアント200は、電源サーバ100に対して、電源サーバ100が有するサーバ電源プロファイルの数の送信を要求する情報パケットD1を送信する。
【0035】
情報パケットD1を受信した電源サーバ100は、情報パケットB1において、電源サーバ100が有するサーバ電源プロファイルの数であるサーバ電源プロファイル数を送信する。情報パケットB1を受信したクライアント200は、電源サーバ100のサーバ電源プロファイルの数だけサーバ電源プロファイルの内容を電源サーバ100から取得する。例えば電源サーバ100が2つのサーバ電源プロファイルを有する場合、クライアント200は、まず、1つめのサーバ電源プロファイルを取得する。1つめのサーバ電源プロファイルを取得したクライアント200は、電源の使用を要求する情報パケットD2として電源サーバ100に送信する。
【0036】
情報パケットD2を受信した電源サーバ100は、電源サーバ100の内部に設けられた記憶部(図示せず)に記憶された第1のサーバ電源プロファイルを、情報パケットB2としてクライアント200に送信する。電源サーバ100から情報パケットB2を受信したクライアント200は、第2のサーバ電源プロファイルを取得するための情報パケットを送信する。しかし、この時点では情報スロットIS1が終了し、電源パケットを送信するための電源スロットPS1が開始している。従って、かかる情報パケットは次の情報スロットIS2において送信される。また、電源スロットPS1においては、クライアント200が電源サーバ100から供給を受ける電源仕様が確定していないため、電力の供給は行われない。
【0037】
電源スロットPS1が終了し、次のタイムスロットの開始を示す同期パケットA2が電源サーバ100から出力される。その後、電源サーバ100から情報パケットB2を受信したクライアント200は、第2のサーバ電源プロファイルを取得するための情報を情報パケットD3として送信する。
【0038】
情報パケットD3を受信した電源サーバ100は、電源サーバ100の内部に設けられた記憶部(図示せず)に記憶された第2のサーバ電源プロファイルを、情報パケットB3としてクライアント200に送信する。情報パケットB3を受信して電源サーバ100の有する2つのサーバ電源プロファイルを取得したクライアント200は、自身に適合する電源仕様のサーバ電源プロファイルを選択する。そして、クライアント200は、電源サーバ100に対して選択したサーバ電源プロファイルを確定させるための情報パケットD4を送信する。
【0039】
情報パケットD4を受信した電源サーバ100は、クライアント200に対して第1のサーバ電源プロファイルを確定したことを通知するため、情報パケットB4として電源仕様が確定した旨の応答を表す情報を、クライアント200に送信する。その後、情報スロットIS2が終了して電源スロットPS2が開始すると、電源サーバ100はクライアント200に対して電源パケットC1を出力し、電源供給を行う。なお、電力パケットの送信のタイミングについては、送信開始時間設定リクエストを表す情報を用いることにより、電力供給開始時間をクライアント200から電源サーバ100に指定することができる。
【0040】
以上、本発明の一実施形態にかかる電力供給システム1による電力供給処理の一例について説明した。なお、本発明においては、電力供給システム1による電力供給処理はかかる例に限定されない。このように電力が間歇的に電源サーバから送電されるのではなく、連続的に電源サーバから送電されるようにしてもよい。次に、本発明の一実施形態にかかる電源サーバ100の構成について説明する。
【0041】
[1−3.電源サーバの構成]
図3は、本発明の一実施形態にかかる電源サーバ100の構成について示す説明図である。以下、図3を用いて本発明の一実施形態にかかる電源サーバ100の構成について説明する。
【0042】
図3に示したように、本発明の一実施形態にかかる電源サーバ100は、コネクタ101と、接続線102、106と、主スイッチ103と、モデム104と、マイクロプロセッサ105と、電力供給源107と、DC/DCコンバータ108と、キャパシタC1、C2と、インダクタL1と、を含んで構成される。
【0043】
コネクタ101は、バスライン10のコネクタ11と接続することで、電源サーバ本体とバスライン10とを接続するものである。接続線102は、コネクタ101と、電源サーバ本体とを接続するためのものである。主スイッチ103は、電力の出力を制御するものであり、主スイッチ103がオンになっていれば、電源サーバ100は電力供給源107からの電力をバスライン10へ供給することができる。一方、主スイッチ103がオフになっていれば、電源サーバ100は電力供給源107からの電力の供給を停止することができる。
【0044】
モデム104は、バスライン10に接続されている他の電源サーバやクライアントとの間で情報の送受信を行うためのものであり、モデム104からはバスライン10に通信用高周波信号を送出し、またバスライン10に流れる通信用高周波信号を受信する。なお、バスライン10とモデム104との間にはキャパシタC1、C2が備えられており、バスライン10を流れる直流電流のモデム104への流入を防いでいる。
【0045】
マイクロプロセッサ105は、電源サーバ100の動作を制御するものである。電源サーバ100とクライアント(例えば図1のクライアント200)との間でネゴシエーションが完了すると、マイクロプロセッサ105は電力供給源107から電力を供給するために主スイッチ103をオンにする。
【0046】
接続線106は、電源サーバ本体と電力供給源107とを接続するためのものである。電力供給源107は、例えば直流電圧からなる電力を供給することができるものであり、電源サーバ100の主スイッチ103がオンになっていると、直流の電力をバスライン10に供給することができる。電力供給源107としては、例えば太陽光の照射によって発電する太陽光パネルのようなものを用いても良い。
【0047】
DC/DCコンバータ108は、電力供給源107から供給される電力の電圧を、ある適当な電圧に変換するものである。DC/DCコンバータ108で電圧を変換することで、電源サーバ100からの電力の供給を受けるクライアントからの要求に適合する電圧で電力の供給が可能となる。なお、DC/DCコンバータ108は、例えば7V〜30V程度を入力とする降圧型DC/Dコンバータであってもよい。
【0048】
以上、図3を用いて本発明の一実施形態にかかる電源サーバ100の構成について説明した。次に、本発明の一実施形態にかかるクライアント200の構成について説明する。
【0049】
図4は、本発明の一実施形態にかかるクライアント200の構成を示す説明図である。以下、図4を用いて本発明の一実施形態にかかるクライアント200の構成について説明する。
【0050】
[1−4.クライアントの構成]
図4に示したように、本発明の一実施形態にかかるクライアント200は、コネクタ201と、接続線202、206と、主スイッチ203と、モデム204と、マイクロプロセッサ205と、負荷210と、チャージ制御回路211と、バッテリ212と、キャパシタC1、C2と、を含んで構成される。
【0051】
コネクタ201は、バスラインのコネクタ12と接続することで、クライアント本体とバスライン10とを接続するものである。接続線202は、コネクタ201と、クライアント本体とを接続するためのものである。主スイッチ203は、電力の入力を制御するものであり、主スイッチ203がオンになっていれば、クライアント200はバスライン10を通じて電源サーバから供給される電力を受け取ることができる。一方、主スイッチ203がオフになっていれば、クライアント200は電源サーバから供給される電力を受け取ることはできない。
【0052】
モデム204は、バスライン10に接続されている他の電源サーバやクライアントとの間で情報の送受信を行うためのものであり、モデム204からはバスライン10に通信用高周波信号を送出し、またバスライン10に流れる通信用高周波信号を受信する。なお、バスライン10とモデム204との間にはキャパシタC1、C2が備えられており、バスライン10を流れる直流電流のモデム204への流入を防いでいる。
【0053】
マイクロプロセッサ205は、クライアント200の動作を制御したり、クライアント200の内部の電圧や電流をモニタしたりするものである。電源サーバ(例えば図1の電源サーバ100)とクライアント200との間でネゴシエーションが完了すると、マイクロプロセッサ205は電源サーバから電力を受け取るために主スイッチ203をオンにする。
【0054】
接続線206は、クライアント本体と負荷210とを接続するためのものである。
【0055】
負荷210は、電源サーバから供給される電力を消費するものである。チャージ制御回路211は、バッテリ212に対する充放電を制御する回路である。そしてバッテリ212は電源サーバから供給される電力をチャージ制御回路211の制御下で蓄え、蓄えた電力をチャージ制御回路211の制御下で負荷210等に放出するものである。
【0056】
以上、本発明の一実施形態にかかるクライアント200の構成例について説明した。次に、上述した本発明の一実施形態にかかる電源サーバ100及びクライアント200の動作について説明する。
【0057】
[1−5.電源サーバ及びクライアントの動作]
本発明の一実施形態にかかる電力供給システム1では、電源サーバ100はクライアント200とネゴシエートした結果に基づいて電力供給を実行する。すなわち、電源サーバ100がクライアント200からの電力供給要請を許可すれば電源サーバ100はクライアント200へ電力を供給するが、電源サーバ100がクライアント200からのネゴシエート条件を満足せず、電力供給要請を拒否すれば電源サーバ100はクライアント200へ電力を供給しない。従って、電源サーバ100とクライアント200との間のネゴシエーションには電力供給拒否構造が含まれている。従って、本発明の一実施形態にかかる電力供給システム1は、電源サーバ100とクライアント200との間のネゴシエート条件に、クライアントの優先度を示すクライアントプライオリティーという概念を導入することで、効果的な電力供給を可能とする。
【0058】
電源サーバ100とクライアント200との間のネゴシエート条件として最も頻繁に使用されるのは供給電圧、および最大電流であろう。ある電源サーバにとって、最初の電力供給対象となるクライアントは、ネゴシエートの適否をこれらの電力条件のみで判断し、ネゴシエーション条件としてクライアントのプライオリティーを入れなくてもよい。しかし、その後に同一の電源サーバに対して別のクライアントがネゴシエーションを開始し、クライアントプライオリティーの条件以外で合意が成立したならば、ここで初めてクライアントプライオリティーを考慮することが望ましい。
【0059】
ここで、本実施形態にかかる電力供給システム1では、クライアントプライオリティーを表すクライアントプライオリティー変数が定義される。このクライアントプライオリティーの値は例えば1バイトとし、例えば次のような重み付けを行う。
255:クライアントプライオリティー無効
0:クライアントプライオリティー最高値
1:
2:


254:クライアントプライオリティー最低値
【0060】
本発明の一実施形態にかかる電力供給システム1の配下にある電源サーバ100は、このクライアントプライオリティー変数の値を基に、電力供給の優先度を判断する。このクライアントプライオリティー変数の値はもちろんダイナミックに変更することができるが、まずはクライアントプライオリティー変数の初期値の設定方法について説明する。
【0061】
上述した254段階のクライアントプライオリティー変数を、クライアントの設計者にそのまま申告させるのは、通常は難しい。クライアントプライオリティー変数の決定を設計者の良心に依存させると、ほとんど1が設定されるであろう。
【0062】
そこで、本実施形態にかかる電力供給システム1は、クライアントに対して、例えば次のような分類を行う。
(1)無設定
(2)非常時に動作するデバイス、非常電力無し。
(3)非常時に動作するデバイス、非常電力有り。
(4)日常的に動作するデバイス(非常時には動作しなくてもいいデバイス)、バックアップ電力なし。
(5)日常的に動作するデバイス、バックアップ電力あり。
(6)一日の動作時間が1時間以下バックアップ電力なし。
(7)一日の動作時間が1時間以下、バックアップ電力あり。
(8)未使用
【0063】
クライアントの設計者は、上記の分類に基づいて各クライアントのプライオリティー期待値を設定する。そして、このプライオリティー期待値を254段階に読み替え、各クライアントに割り当てる動作は、電力供給システム1の電源サーバ100が実行する。すなわち、電源サーバ100は、自分が電力を供給するクライアントに対してこのプライオリティー期待値を割り当て、このプライオリティー期待値に基づいて電力を供給するクライアントを決定する。電力供給システム1の同期サーバ(電源サーバ100)は、電力供給システム1の配下にあるアクティブな電源サーバについては、プライオリティー処理は実行せず、アクティブな電源サーバの数だけタイムスロットを公平に割り当てていく。つまり、もしアクティブな電源サーバが1台であれば(つまり同期サーバが電力供給も行い、この同期サーバしか動作していない場合)、電力供給システム1のタイムスロットはすべて同期サーバに割り当てられるが、このタイムスロットをどのクライアント200にどう割り当てていくかをその同期サーバが設定する時点で、プライオリティー付けが実施される。
【0064】
一方、アクティブな電源サーバが2台、または3台以上存在するならば、それぞれの電源サーバが持つタイムスロットは公平に分割され、それぞれの電源サーバの中でプライオリティー付けが行われる。
【0065】
各電源サーバが電力の供給を要求するクライアントに対してプライオリティーを付与するに際しては、例えば次のようなアルゴリズムを使用することができる。以下において電源サーバが電力の供給を要求するクライアントに対して付与するプライオリティーのアルゴリズムの一例を示す。
【0066】
まず、電源サーバ100はパラメータとして非常バイトを定義しておく。この非常バイトは、現在の電力供給システム1の状態が通常状態か非常状態か、また仮に非常状態ならばどういう内容の非常状態かを示すパラメータである。本実施形態では、説明の単純化のため、非常バイトが0の場合を通常状態とし、非常バイトが1の場合を非常事態とする(つまり、非常バイトを単なるフラグとして使用する)。なお、非常バイトにはその他の値を設定することができ、ここで説明する例に限られないことは言うまでもない。
【0067】
(1)非常バイト=0の場合
非常バイトが0の場合は、クライアント200からの電力供給要求を受け取った電源サーバ100は、マイクロプロセッサ105において、プライオリティー期待値をクライアントプライオリティー変数に次のように変換する。
【0068】
1バイトの上位3ビットに対して、プライオリティー期待値は以下のような順位で割り当てられる。
000:(4)日常的に動作するデバイス、バックアップ電力なし。
001:(5)日常的に動作するデバイス、バックアップ電力あり。
010:(2)非常時に動作するデバイス、非常電力無し。
011:(3)非常時に動作するデバイス、非常電力有り。
100;(6)一日の動作時間が1時間以下、バックアップ電力なし。
101:(7)一日の動作時間が1時間以下、バックアップ電力あり。
111:(1)無設定
【0069】
一方、下位5ビットに関しては、登録されたクライアント順に乱数を割り当てる。このように乱数を割り当てる事で、各クライアントにはランダムな優先順位が割り当てられる。もし、クライアントが1台ならば、どんな乱数値が割り当てられても、この乱数値が最小値なので、このクライアントが最優先に電力供給される。そして、2台目以降のクライアントは割り当てられた値とは別のランダムな値が割り当てられる。
【0070】
この値は決定した時点でランダム性があるので、公平であるが一旦値が確定してしまうと優先順位も確定してしまうので、この値に関して、ある時間毎(例えば1日)に振り直すようにしてもよい。
【0071】
(2)非常バイト=1の場合
非常バイトが1の場合は、クライアント200からの電力供給要求を受け取った電源サーバ100は、マイクロプロセッサ105において、プライオリティー期待値をクライアントプライオリティー変数に次のように変換する。非常バイトが1の場合は、1バイトの上位3ビットの優先順位を、非常バイトが0の場合から以下のように変更する。
000:(2)非常時に動作するデバイス、非常電力無し。
001:(3)非常時に動作するデバイス、非常電力有り。
010:(4)日常的に動作するデバイス、バックアップ電力なし。
011:(5)日常的に動作するデバイス、バックアップ電力あり。
100;(6)一日の動作時間が1時間以下、バックアップ電力なし。
101:(7)一日の動作時間が1時間以下、バックアップ電力あり。
111:(1)無設定
【0072】
なお、下位5バイトについては、非常バイト=0と同様である。
【0073】
この方式では各電源サーバの管理可能なクライアントの最大値は254に制限されるが、本実施形態にかかる電力供給システム1はそもそも電源サーバ100からクライアント200へは間歇的な電力供給を行うので、この最大値が問題とはならない。しかし、必要ならば、このバイト数を増やして対応可能としてもよい。
【0074】
以上のように、電源サーバ100はクライアントプライオリティー変数を基に電力を供給するクライアントの選択を実行するが、電源サーバの電力供給能力不足が発生すると、クライアントプライオリティー変数の値にかかわらず、ネゴシエーション条件に満たないクライアントから順に電源サーバ100からの電力供給を受けられなくなる。クライアントプライオリティー変数は、電力供給条件のうち電力量に関しては満たせている場合のプライオリティー付けに用いられる。従って、クライアントの(例えば電圧や電流の)許容範囲が広ければ、この電力供給条件を満たしているという点からのプライオリティーは自動的に高くなることになる。
【0075】
次に、電源サーバ100が複数のクライアント200に同時に電力を供給する場合のプライオリティー制御について説明する。電源サーバ100が複数のクライアント200に同時に電力を供給する場合は、電力供給側の現在の供給量は電源サーバ100の供給量の合計となるので、現在の発電量や電源サーバ100の(特に電源サーバ100に備えられる電力貯蔵手段)の潜在能力により、電力供給側の現在の供給量がダイナミックに変化する点が、間歇的な電力供給の場合とは異なる点である。
【0076】
一方、電力供給システム1に接続されるクライアント200にはバッテリ212のような電力貯蔵手段が用意され、クライアント200も潜在的な電力供給能力を有している。しかし、このクライアント200の電力貯蔵手段に関しては、クライアント200が電源サーバとしても電力供給システム1に登録されていない限り、システム上の潜在供給能力としては認識されないこととする(つまり、バッテリ212を持つクライアント200は、もしそのバッテリ212をシステムに公開する意思があれば、クライアントとして電力供給システム1に登録されると同時に電源サーバとしても電力供給システム1に登録される。電源サーバとして電力供給システム1に登録されても、電力供給能力を0にするプロファイルに設定しておけば、他のクライアントからの電力要求に応えないようにすることが可能である)。従って、電力供給総量の把握は電源サーバの電力供給総量の合計でいい。
【0077】
また、電力供給システム1に最初のクライアント200が接続され、そのクライアント200が電源サーバ100に対して電力を要求する場合、そのクライアント200のプライオリティーはネゴシエーション条件とはならない。最初は単に、電源サーバ100の電力供給量とその電力仕様がクライアント200の要求に合うか否かで、クライアント200への電力供給の可否が判断される。一方、既に(1以上の)電源サーバ100と(1以上の)クライアント200との間で電力供給が行われている場合に別のクライアント200が電力供給システム1に加わろうとし、さらに電源サーバ100からの電力供給量が全てのクライアント200の需要を満たせないときに、上述したクライアントプライオリティー変数が意味を持つ。
【0078】
本実施形態にかかる電力供給システム1では、電力の供給を受けようとするクライアント200は、現状の供給電圧を満たすことを確認した上で電源サーバ100との間で電流量をネゴシエートする。現状の供給電圧は電源サーバ100に問い合わせて確認することになるが、クライアント200がバスライン10の電圧を物理的に測定することでもある程度予想できる。ただし後者の場合、クライアント200の主スイッチ203の他にバスライン10の電圧を物理的に測定するための測定経路を設けることが望ましい。ここで、電源サーバ100とクライアント200との間のネゴシエートの過程で、現状の供給電圧の変更もありうる。クライアント200はこの電圧変更にも対応可能であり、電源サーバ100が現在供給可能な余裕電流に対して、新しく電力供給システム1に接続されたクライアント200からの要求電流が大きくなってしまう場合において、上述したクライアントプライオリティー変数が意味を持ってくる。
【0079】
電源サーバ100が複数のクライアント200に同時に電力を供給する場合も、クライアントプライオリティー変数の初期設定は上述したものと同様とする。すなわち、各クライアントは大凡の値を設定しておき、クライアント200が電力供給システム1に接続され、クライアント200が電力供給システム1に登録された(同期サーバに登録された)時点でクライアントプライオリティー変数が確定する。ただし、上述したものとは異なり、クライアントのクライアントプライオリティー変数の下位5ビットは、電源サーバ単位でユニークではなく、このシステム単位でユニークとなるように設定される。
【0080】
具体的には、クライアントプライオリティー変数は同期サーバ(例えば電源サーバ100)によって決定され、同期サーバにより管理される。このような方式とすることで、同期サーバはクライアント200が電力供給システム1に追加される毎にクライアントプライオリティー変数を確定し、クライアントプライオリティー変数をリスト化して管理する。またこのクライアントプライオリティー変数の値(特に下位5ビット)に関しては、同期サーバは最初に決定した時点だけではなく、ある一定期間毎に新たに決定し直すことで、クライアント間の公平性を改善することができる。
【0081】
上述した条件の下で、電力供給システム1に新規に接続されるクライアント200に対して、電源サーバがどのように処理するかの一例を示す。図5は、電源サーバ100が複数のクライアント200に同時に電力を供給する場合のプライオリティー制御の一例を示す流れ図である。以下、図5を用いて電源サーバ100が複数のクライアント200に同時に電力を供給する場合のプライオリティー制御について説明する。なお、以下の一連の処理はマイクロプロセッサ105の制御によって行われるものとして説明する。
【0082】
電力供給システム1に新規にクライアント200が接続されると、同期サーバとして選定されている電源サーバ100は、新たに接続されたクライアント200のクライアントプライオリティー変数の上位3ビットを、既に接続されているクライアント200のクライアントプライオリティー変数の上位3ビットとを比較し(ステップS101)、新規に接続されたクライアント200のクライアントプライオリティー変数(の上位3ビット)が既存のクライアント200のクライアントプライオリティー変数(の上位3ビット)より大きいかを判断する(ステップS102)。このクライアントプライオリティー変数の比較及び大小判断は、例えばマイクロプロセッサ105が実行する。
【0083】
上記ステップS102の判断の結果、新規に接続されたクライアント200のクライアントプライオリティー変数が既存のクライアント200のクライアントプライオリティー変数より大きい場合には、電源サーバ100はこの新規に接続されたクライアント200へは電力を給電しないことを決定する(ステップS103)。一方、上記ステップS102の判断の結果、新規に接続されたクライアント200のクライアントプライオリティー変数が既存のクライアント200のクライアントプライオリティー変数より大きく無い場合には、続いて電源サーバ100は、新規に接続されたクライアント200のクライアントプライオリティー変数(の上位3ビット)と既存のクライアント200のクライアントプライオリティー変数(の上位3ビット)が同じであるかどうかを判断する(ステップS104)。
【0084】
上記ステップS104の判断の結果、新規に接続されたクライアント200のクライアントプライオリティー変数の上位3ビットと、既存のクライアント200のクライアントプライオリティー変数の上位3ビットとが同じである場合には、続いて電源サーバ100は、新規に接続されたクライアント200のクライアントプライオリティー変数の下位5ビットと、既存のクライアント200のクライアントプライオリティー変数の下位5ビットとを比較し(ステップS105)、新規に接続されたクライアント200のクライアントプライオリティー変数の下位5ビットが、既存のクライアント200のクライアントプライオリティー変数の下位5ビットより大きいか否かを判断する(ステップS106)。
【0085】
上記ステップS106の判断の結果、新規に接続されたクライアント200のクライアントプライオリティー変数の下位5ビットが既存のクライアント200のクライアントプライオリティー変数の下位5ビットより大きい場合には、電源サーバ100はこの新規に接続されたクライアント200へは電力を給電しないことを決定する(ステップS103)。一方、上記ステップS106の判断の結果、新規に接続されたクライアント200のクライアントプライオリティー変数が既存のクライアント200のクライアントプライオリティー変数より大きく無い場合、及び上記ステップS104の判断の結果、新規に接続されたクライアント200のクライアントプライオリティー変数の上位3ビットと、既存のクライアント200のクライアントプライオリティー変数の上位3ビットとが同じでない場合には、電源サーバ100は既存のクライアント200に対する給電を停止し、新規に接続されたクライアント200に対する給電を開始する(ステップS107)。
【0086】
なお、既存のクライアント200よりも新規に接続されたクライアント200の方のプライオリティーが高い場合、電源サーバ100は、単純に既存のクライアント200への電力の供給を止める前に、(新規に接続されたクライアント200よりプライオリティーの低い)既存のクライアント200に対して、電流を減少させた電力供給の可否を問い合わせる。既存のクライアント200は、電流を減少させた電力供給が可能ならばその旨を電源サーバ100に返答し、電源サーバ100は既存のクライアント200へ電流を減少させて供給し、新規に接続されたクライアント200に対して電流の割り当てを行う。この時、既存のクライアント200が複数存在している場合には、電源サーバ100は、1つのクライアント200への割り当てを減少するだけでなく、適当な台数のクライアント200に対する電力を減少させるようにしてもよい。
【0087】
従って、クライアント200も電流容量を規定したプロファイルを複数持つか、または電流容量範囲を広く設定したプロファイルを持つように設計すると、電源サーバ100からの電力供給が受けやすくなる。もちろんクライアント200のプライオリティーを高く設定すれば電源サーバ100からの電力供給が可能となるが、プライオリティー設定は上述のルールに基づいて正しく申告されたものと仮定する。
【0088】
同一の上位プライオリティー(1バイトのクライアントプライオリティー変数の上位3ビット)を持ったクライアント200に関しては、同期サーバ側で下位プライオリティー(1バイトのクライアントプライオリティー変数の下位5ビット)を適宜設定し直すことにより、クライアントプライオリティー変数が固定され続けることを排除できるが、上位プライオリティーが低いクライアント200は、永久にシステムから電力が供給されなくなる可能性が発生し、クライアント200間の公平性を保てない場合がある。
【0089】
そこで、クライアント200間の公平性を保つために、電力供給システム1は、例えば同期サーバでクライアントの電力供給状況をモニタし、プライオリティー制御のために、しばらく電力供給が断られたクライアント200に関しては、上位プライオリティーを高く設定し直して電源サーバ100からの電力供給の機会を与えるようにしてもよい。このような処理は一時的なものであるべきで、一旦この処理でクライアント200へ電力供給がされたならば、同期サーバは上位プライオリティーを元の数値に戻してもよい。
【0090】
クライアント200が電力供給システム1に新規に接続された時に、プライオリティーが低いためにそのクライアント200は電源サーバ100に対する電力要求が断られることが生じる場合がある。特に、クライアント200がユーザによって電力供給システム1に動的に接続、切断するようなデバイスの場合、ユーザは電力を必要とするためにそのクライアント200を接続したと考えられるので、このような場合には単にプライオリティーの高低だけで電力の供給を判断するのは適切な動作とは言えない。
【0091】
そこで、このようなデバイスには、例えばLED等の表示手段と、プライオリティーモディファイスイッチ(ボタン)を設けてもよい。すなわち、クライアント200が電力供給システム1に接続されても電力が供給されない事が分かった場合には、クライアント200はLEDを点灯する等によりユーザに対して注意を促して、ユーザによるマニュアルプライオリティー設定を可能とすることができる。
【0092】
ユーザによるマニュアルプライオリティー設定は、具体的な数値をユーザに入力させるようにしてもよいが、単にユーザにボタンを1回だけ押下させて、プライオリティーの設定を一時的に最高レベルに設定するというようにしてもよい。プライオリティーを一時的に最高レベルに設定する場合、そのデバイス電力供給が実行された後は、プライオリティーの設定をそのデバイスのデフォルト値に戻すようにしてもよい。
【0093】
デバイスのプライオリティー状況の表示や、プライオリティーの変更をユーザに対して促す手段を用意し、ユーザによるプライオリティー変更手段を用意することで、限定した容量しか持たない電力供給システム1における現実的な電力供給が実現される。
【0094】
もちろん、各クライアントのプライオリティーは工場出荷時に設定されるデフォルト値の他に、ユーザによるオーバーライト機能をサポートするのが実用的であるが、このオーバーライトの方法として、例えばPC等を経由してクライアントのプライオリティーデータを書き換える方法や、ボタンによる書き換え、ボタンによる一時的な変更が可能である。PCを経由してクライアントのプライオリティーデータを書き換える場合には、例えばクライアント自身にUSB等のインターフェースを用意する他に、電力供給システム1に接続される、PCと同等の機能を有するモニタシステムで実施する事もできる。
【0095】
既存のクライアント200に電源サーバ100から給電されている状況で既存のクライアント及び新規に接続されたクライアント200に対する給電制御は上述したように実行されるが、電圧仕様等の関係で、現在は電力が供給されずスタンバイ状態となっているクライアントが存在し得る。このスタンバイ状態にあるクライアントの中に、電力供給プライオリティーの高いものがあり得る。以下において、このようなクライアントに対する制御方式を示す。
【0096】
一番簡単な制御は、電力供給システム1が最初に供給を開始したクライアントに対して、プリエンプティブに最大供給時間を定めてその間は連続的に電力供給を行い、次に、スタンバイ状態にあるクライアントに対して電源サーバから電力供給ネゴシエーションを開始することである。電力供給ネゴシエーションは、電力供給システム上に存在しているクライアントに対して、最初に供給を開始したクライアントに対するプリエンプティブな供給が完了することを示すパケットを同期サーバから出力することで開始することができるが、時間削減のため、プリエンプティブな供給の完了に近付いた時点で当該パケットの出力を開始してもよい。同期サーバはこのプリエンプティブな供給の完了時間を知っているからである。
【0097】
この時、今まで電力を供給してきたクライアントよりも、スタンバイ状態にあったクライアントとのネゴシエーションを優先させる。ここでいう優先とは、クライアントのクライアントプライオリティー変数とは関係ない。すると、スタンバイ状態にあったクライアントは電源サーバとネゴシエーションを開始し、ネゴシエーションが成立すれば、電源サーバからの電力供給が受けられる。
【0098】
結局、クライアントのプラリオリティー変数は考慮に入れず、同期サーバが用意するプリエンプティブな電力供給時間を単位として、次の(スタンバイ状態にある)クライアントに優先的な交渉権を与えることで、スタンバイ状態にあるクライアントへの電力供給を実現することができる。
【0099】
上述してきた説明では、クライアントに用意されたクライアントプライオリティー変数は、スタンバイ状態にあるクライアントのプライオリティーには影響せず、複数のクライアント間の優先度制御に用いていた。ここで、スタンバイ状態にあるクライアントの中で、クライアントプライオリティー変数で優先度の高いクライアントがある場合には、優先的に交渉する場合について述べる。
【0100】
本実施形態にかかる電力供給システム1は、電力供給可否の交渉はクライアントが開始する。これは、電力を受電する方がその意思を表明する方が自然であるということに基づくものである。すなわち、自身の電力要求トリガとしてクライアントは電源サーバとネゴシエーションを開始するが、上述の説明では、電源サーバとのネゴシエーションが不調に終わった場合(すなわちこれは、電源サーバにはクライアントの仕様を満たす範囲の供給能力を持っているが、現在設定された値はクライアントの要求に合わない場合である)には、次のネゴシエーションは新規に電源サーバが追加されるか、あるいはプリエンプティブな供給が完了することを示すパケットがバスライン10に送出されてくるまで待機する。
【0101】
その一方、まずクライアント200が同期サーバからサーバプロファイルを取得後、自身のプロファイルと比較し、電力需給が可能であると判断したならば、次に、クライアントプライオリティー変数の上位3ビットを見て、これが所定の範囲、例えば000から001の範囲にあるクライアントは、電源サーバに対して、適宜プリエンプティブ時間の見直し要求を行う。もしここで現状の電源サーバのプロファイルはクライアントの要求仕様を満たせない事が分かった場合には、クライアントはこれ以上の動作はしない(次に電力供給のチャンスが発生するのは電力供給システムに電源サーバが追加されたことを検出した時となる)。
【0102】
プリエンプティブ時間の見直し要求を受信した電源サーバ100は、現在電力を供給している1以上のクライアント200と、要求元のクライアント200とのクライアントプライオリティー変数を比較する。新規に接続されたクライアント200(要求元のクライアント200)と現在電力を供給している1以上のクライアント200のクライアントプライオリティー変数をすべて比較し、新規に接続されたクライアント200が全ての既存クライアントよりもプライオリティーが高いならば、電源サーバ100は既存クライアントに対する給電を停止し、新規に接続されたクライアント200とネゴシエーションを開始する。これにより、新規に接続されたクライアント200は電源サーバ100との間のネゴシエーションが合意に達する筈である。
【0103】
図6は、電源サーバ100が複数のクライアント200に同時に電力を供給する場合のプライオリティー制御の別の例を示す流れ図であり、新規に接続されたクライアント200(要求元のクライアント200)と現在電力を供給している1以上のクライアント200のクライアントプライオリティー変数をすべて比較してプライオリティー制御を実行する場合について示したものである。この場合は、電源サーバ100からの電力供給は、図2に示したように間歇的に行われるのではなく、連続的に行われることが望ましい。以下、図6を用いて電源サーバ100が複数のクライアント200に同時に電力を供給する場合のプライオリティー制御の別の例について説明する。なお、以下の一連の処理はマイクロプロセッサ105の制御によって行われるものとして説明する。
【0104】
電源サーバ100は、新規に接続されたクライアント200と、現在電力を供給している全てのクライアント200との間でクライアントプライオリティー変数を比較するため、まず現在電力を供給しているクライアント200の内、最初のクライアント200に対してクライアント番号Nを1に設定する(ステップS111)。次に、電源サーバ100は、新たに接続されたクライアント200のクライアントプライオリティー変数の上位3ビットを、当該最初のクライアント200のクライアントプライオリティー変数の上位3ビットと比較し(ステップS112)、新規に接続されたクライアント200のクライアントプライオリティー変数(の上位3ビット)が既存のクライアント200のクライアントプライオリティー変数(の上位3ビット)より大きいかを判断する(ステップS113)。このクライアントプライオリティー変数の比較及び大小判断は、例えばマイクロプロセッサ105が実行する。
【0105】
上記ステップS113の判断の結果、新規に接続されたクライアント200のクライアントプライオリティー変数が既存のクライアント200のクライアントプライオリティー変数より大きい場合には、電源サーバ100はこの新規に接続されたクライアント200へは電力を給電しないことを決定する(ステップS114)。一方、上記ステップS102の判断の結果、新規に接続されたクライアント200のクライアントプライオリティー変数が既存のクライアント200のクライアントプライオリティー変数より大きく無い場合には、続いて電源サーバ100は、新規に接続されたクライアント200のクライアントプライオリティー変数(の上位3ビット)と既存のクライアント200のクライアントプライオリティー変数(の上位3ビット)が同じであるかどうかを判断する(ステップS115)。
【0106】
上記ステップS115の判断の結果、新規に接続されたクライアント200のクライアントプライオリティー変数の上位3ビットと、既存のクライアント200のクライアントプライオリティー変数の上位3ビットとが同じである場合には、続いて電源サーバ100は、新規に接続されたクライアント200のクライアントプライオリティー変数の下位5ビットと、既存のクライアント200のクライアントプライオリティー変数の下位5ビットとを比較し(ステップS116)、新規に接続されたクライアント200のクライアントプライオリティー変数の下位5ビットが、既存のクライアント200のクライアントプライオリティー変数の下位5ビットより大きいか否かを判断する(ステップS117)。
【0107】
上記ステップS117の判断の結果、新規に接続されたクライアント200のクライアントプライオリティー変数の下位5ビットが既存のクライアント200のクライアントプライオリティー変数の下位5ビットより大きい場合には、電源サーバ100はこの新規に接続されたクライアント200へは電力を給電しないことを決定する(ステップS114)。一方、上記ステップS117の判断の結果、新規に接続されたクライアント200のクライアントプライオリティー変数が既存のクライアント200のクライアントプライオリティー変数より大きく無い場合、及び上記ステップS115の判断の結果、新規に接続されたクライアント200のクライアントプライオリティー変数の上位3ビットと、既存のクライアント200のクライアントプライオリティー変数の上位3ビットとが同じでない場合には、電源サーバ100はクライアント番号Nの値を1つインクリメントし(ステップS118)、既存の全てのクライアント200に対する調査が完了したかどうかを判断する(ステップS119)。完了していない場合には上記ステップS112に戻るが、完了している場合には、電源サーバ100は既存のクライアント200に対する給電を停止し、新規に接続されたクライアント200に対するネゴシエーション及び給電を開始する(ステップS120)。
【0108】
以上、図6を用いて電源サーバ100が複数のクライアント200に同時に電力を供給する場合のプライオリティー制御の別の例について説明した。
【0109】
<2.まとめ>
以上説明したように本発明の一実施形態によれば、クライアントプライオリティー変数という概念を導入することで、電力供給システム1にクライアント200が新規に接続された場合の効率的なプライオリティー制御が可能となる。このプライオリティー制御は、電源サーバ100からの間歇的な電力供給の場合だけでなく、連続的な電力供給の場合にも有効であり、クライアント200のプライオリティーに応じた電力供給を可能とすることができる。
【0110】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、電力供給装置、電力受電装置及び情報通知方法に適用可能であり、特に電力と情報とが周波数分割されて同時に利用できる電力供給装置、電力受電装置及び情報通知方法に適用可能である。
【符号の説明】
【0112】
1 電力供給システム
10 バスライン
100 電源サーバ
101 コネクタ
102、106 接続線
103 主スイッチ
104 モデム
105 マイクロプロセッサ
107 電力供給源
108 DC/DCコンバータ
200 クライアント
201 コネクタ
202、206 接続線
203 主スイッチ
204 モデム
205 マイクロプロセッサ
210 負荷
211 チャージ制御回路
212 バッテリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力の供給について電力仕様の合意を確立した他の装置に対して電力を供給する電力供給部と、
前記電力供給部が供給する電力と周波数分割されて前記他の装置との間で通信を実行する通信部と、
他の装置との間で前記電力仕様の合意を実行し、合意が確立した他の装置へ前記電力供給部が電力を供給している際に前記通信部が別の他の装置から電力供給の要求を受信すると、電力供給中の他の装置との間で優先度を比較して電力供給先の他の装置を決定し前記電力供給部による電力の供給を制御する電力供給制御部と、
を備える、電力供給装置。
【請求項2】
前記電力供給制御部は、前記優先度として、前記他の装置の種類に応じて設定される動作期待値に乱数を組み合わせたものを使用して電力供給先を決定する、請求項1に記載の電力供給装置。
【請求項3】
前記電力供給制御部は、前記動作期待値の設定を状況に応じて変更可能である、請求項2に記載の電力供給装置。
【請求項4】
前記電力供給制御部は、前記優先度の比較により電力供給を断った前記他の装置に対しては、所定の時間が経過した後に該他の装置の前記動作期待値を一時的に高く設定する、請求項2に記載の電力供給装置。
【請求項5】
前記電力供給制御部は、前記電力供給部が他の装置へ電力を供給している際に前記通信部が別の他の装置から電力供給の要求を受信すると、電力供給中の他の装置との間で優先度を比較して、電力供給中の他の装置の優先度より新たに電力供給を要求した他の装置の優先度が高ければ電力供給中の他の装置への電力供給を停止し、新たに電力供給を要求した他の装置へ電力を供給するように前記電力供給部を制御する、請求項1に記載の電力供給装置。
【請求項6】
前記電力供給制御部は、前記電力供給部が他の装置へ電力を供給している際に前記通信部が別の他の装置から電力供給の要求を受信すると、電力供給中の他の装置との間で優先度を比較して、電力供給中の他の装置の優先度より新たに電力供給を要求した他の装置の優先度が高ければ電力供給中の他の装置に対して合意した電力仕様と異なる仕様で電力供給が可能かどうか前記通信部に問い合わせさせる、請求項1に記載の電力供給装置。
【請求項7】
前記電力供給制御部は、前記電力供給部が他の装置へ電力を供給している際に別の他の装置が電力の供給を一時的に中止している場合には、予め定めた前記他の装置への電力供給時間が終了するタイミングで前記別の他の装置への合意を開始する、請求項1に記載の電力供給装置。
【請求項8】
前記電力供給部は、前記他の装置へ間歇的に電力を供給する、請求項1に記載の電力供給装置。
【請求項9】
前記電力供給部は、前記他の装置へ連続的に電力を供給する、請求項1に記載の電力供給装置。
【請求項10】
電力の供給について電力仕様の合意が確立された電力供給装置から所定のバスラインを介して電力を受電する電力受電部と、
前記電力受電部が受電する電力と周波数分割されて前記電力供給装置との間で通信を実行する通信部と、
前記通信部での通信によって前記電力供給装置へ電力仕様の合意を確立しようとする際に自身の優先度の情報を前記通信部での通信に付加する電力要求制御部と、
を備える、電力受電装置。
【請求項11】
電力の供給について電力仕様の合意を確立した他の装置に対して電力を供給する電力供給ステップと、
前記電力供給ステップで供給される電力と周波数分割されて前記他の装置との間で通信を実行する通信ステップと、
前記電力供給ステップで他の装置へ電力が供給されている際に前記通信ステップで別の他の装置から電力供給の要求を受信すると、電力供給中の他の装置との間で優先度を比較して電力供給先を決定して前記電力供給ステップによる電力供給を制御する電力供給制御ステップと、
を備える、電力供給方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−135748(P2011−135748A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295580(P2009−295580)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】