説明

電力制御装置およびそれを備えた通信ネットワークシステム

【課題】コアになるネットワークに接続された複数の通信装置を備えた通信ネットワークにおける全体のスループットを向上可能な電力制御装置を提供する。
【解決手段】電力制御装置60は、各アクセスポイント10〜21に隣接するアクセスポイントのローカルネットワークにおける送信電力の影響を考慮したときの各アクセスポイント10〜21のローカルネットワークにおけるスループットをローカルスループットとして演算する。そして、電力制御装置60は、ローカルスループットが最大になるように各アクセスポイント10〜21のローカルネットワークにおける12個の送信電力を決定する。その後、電力制御装置60は、アクセスポイント10〜21に対応する12個のローカルネットワークにおいて隣接する2つのローカルネットワーク間の送信電力差がしきい値δ以下になるように12個の送信電力を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力を制御する電力制御装置およびそれを備えた通信ネットワークシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
無線LAN(Local Area Network)は、学校およびイベント会場等のホットスポットで広く使用されている。そして、カバレッジを確保するために、アクセスポイントが密集して配置される。
【0003】
しかし、オーバーラップしないチャネル数が限られているので(例えば、2.4GHzにおいてオーバーラップしないチャネル数は3個しかない)、多くのアクセスポイントは、同じチャネルを共有する。同じチャネルを共有する隣接アクセスポイントの数が増加すると、同一チャネル干渉の問題がますます厳しくなり、全ネットワークの性能が劣化する可能性がある。
【0004】
一方、設置されているアクセスポイントが密集している場合、各端末は、近い範囲にアクセスポイントを見つける可能性が高い。端末とアクセスポイントとの間の距離が短くなり、品質の良いリンクが存在する場合、最大送信電力で送信する必要性がなくなる。その代わりに、送信電力を低下させれば、同一チャネル干渉を大幅に減少させ、全ネットワークにおけるスループットを向上できる。
【0005】
しかし、送信電力制御によって、非対称リンク、非公平チャネル利用および隠れ端末問題等が起こる。また、送信電力制御によって縮められた通信範囲外に出現する端末は、アクセスポイントと通信できないことがある。
【0006】
無線LANによく使用されているIEEE802.11は、データの送信後、必ず、確認応答(ACK)が必要であるので、非対称リンクが形成されると、悪影響が非常に大きくなる。この問題を回避するために、全ネットワーク上で共通の送信電力を使用することにより、非対称リンクを回避しながら送信電力を低減させる方法が提案されている(非特許文献1)。
【0007】
また、全てのアクセスポイントが同期しており、チャネルを時間軸に沿ってスロットに分け、同じスロットにおいて全てのアクセスポイントが同じ電力で送信し、スロット毎に送信電力を変えることによって、送信電力制御の効率を向上させる方法が提案されている(非特許文献2)。
【0008】
更に、アクセスポイントと端末装置との間のリンク品質を考慮しながら、送信レートを確保するように送信電力を制御する方法が提案されている(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】V. Kawadia, P. R. Kumar, ”Principles and protocols for power control in wireless ad hoc networks,” IEEE JSAC, Volume 23, Issue 1, Jan. 2005, Page(s): 76-88.
【非特許文献2】Vishnu Navda, Ravi Kokku, Samrat Ganguly, Samir Das, “Slotted Symmetric Power Control in Wireless LANs,” Stony Brook University, Technical report, 2006.
【非特許文献3】Aditya Akella, Glenn Judd, Srinivasan Seshan, Peter Steenkiste, “Self Management in Chaotic Wireless Deployments,” MobiCom’05, 2005.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、非特許文献1に開示された方法では、ネットワーク全体で同じ電力を使用する結果、1つのリンクの品質が悪いとネットワーク全体の送信電力が上昇されるので、非効率的である。
【0011】
また、非特許文献2に開示された方法では、スロット毎に送信電力を調整することは、実用上、困難である。そして、パケットを送信するときのスケジューリングを行う必要があり、送信遅延が発生する可能性がある。
【0012】
更に、非特許文献3に開示された方法では、送信レートを確保しているが、アクセスポイント間の協調を考慮して送信電力を決定することは困難である。
【0013】
従って、非特許文献1〜非特許文献3に開示された方法を用いて送信電力を決定すると、複数のアクセスポイントを備えたネットワーク全体のスループットが低下するという問題がある。
【0014】
そこで、この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、コアになるネットワークに接続された複数の通信装置を備えた通信ネットワークにおける全体のスループットを向上可能な電力制御装置を提供することである。
【0015】
また、この発明の別の目的は、コアになるネットワークに接続された複数の通信装置を備えた通信ネットワークにおける全体のスループットを向上可能な電力制御装置を備えた通信ネットワークシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明によれば、電力制御装置は、ネットワークに接続され、かつ、同一チャネルを使用する複数の通信装置における送信電力を制御する電力制御装置であって、決定手段と、調整手段と、通信手段とを備える。決定手段は、複数の通信装置のうちの隣接する通信装置間の第1のリンク品質と、各通信装置に直接接続される端末装置と通信装置との間の第2のリンク品質とに基づいて、複数の通信装置のうちの第1の通信装置と第1の通信装置にアクセスする第1の端末装置とから構成される第1のローカルネットワークにおけるローカルスループットを第1のローカルネットワークに隣接するn(nは正の整数)個の第2のローカルネットワークにおける送信電力の影響を考慮したときの第1のローカルネットワークにおけるスループットとして演算し、その演算したローカルスループットが最大になるように第1のローカルネットワークにおける送信電力を決定する電力決定処理を複数の通信装置に対応する複数のローカルネットワークの全てについて実行する。調整手段は、第1のローカルネットワークとn個の第2のローカルネットワークとの間における送信電力差が第1のしきい値以下になるように第2のローカルネットワークにおける送信電力を調整する電力調整処理を複数の通信装置に対応する複数のローカルネットワークの全てについて実行する。通信手段は、調整手段によって調整された送信電力を複数の通信装置へ送信する。
【0017】
好ましくは、決定手段は、n個の第2のローカルネットワークにおけるn個の第2のリンク品質に基づいて各第2のローカルネットワークにおける1ビット当たりの送信所要時間を演算する処理をn個の第2のローカルネットワークの全てについて実行するとともに、第2のローカルネットワークからパケットを受信したときの受信信号強度が第1のローカルネットワークにおけるキャリアセンス閾値を超えるm(mは1≦m≦nを満たす整数)個の第2のローカルネットワークを前記n個の第2のローカルネットワークから抽出し、その抽出したm個の第2のローカルネットワークにおけるm個の送信所要時間の総和の逆数が最大になるときの第2のローカルネットワークにおける送信電力を第1のローカルネットワークにおける送信電力として決定する。
【0018】
好ましくは、決定手段は、複数の通信装置の隣接関係を示す隣接リストに基づいて、同一チャネルを使用し、かつ、隣接関係を有する通信装置の集合である接続関係集合に複数の通信装置を分類し、その分類した接続関係集合ごとに電力決定処理を実行する。調整手段は、分類された接続関係集合ごとに電力調整処理を実行する。
【0019】
好ましくは、決定手段は、1つの接続関係集合に含まれる通信装置の個数が第2のしきい値を超えると、接続関係集合を複数の接続関係集合に分割し、その分割した複数の接続関係集合の各々について電力決定処理を実行する。調整手段は、分割された複数の接続関係集合の各々について電力調整処理を実行する。
【0020】
また、この発明によれば、通信ネットワークシステムは、複数の通信装置と、複数の端末装置と、電力制御装置とを備える。複数の通信装置は、ネットワークに接続される。複数の端末装置の各々は、複数の通信装置のいずれかと無線通信を行う。電力制御装置は、ネットワークに接続され、同一チャネルを使用する複数の通信装置における送信電力を制御する。そして、電力制御装置は、決定手段と、調整手段と、通信手段とを含む。決定手段は、複数の通信装置のうちの隣接する通信装置間の第1のリンク品質と、各通信装置に直接接続される端末装置と通信装置との間の第2のリンク品質とに基づいて、複数の通信装置のうちの第1の通信装置と第1の通信装置にアクセスする第1の端末装置とから構成される第1のローカルネットワークにおけるローカルスループットを第1のローカルネットワークに隣接するn(nは正の整数)個の第2のローカルネットワークにおける送信電力の影響を考慮したときの第1のローカルネットワークにおけるスループットとして演算し、その演算したローカルスループットが最大になるように第1のローカルネットワークにおける送信電力を決定する電力決定処理を複数の通信装置に対応する複数のローカルネットワークの全てについて実行する。調整手段は、第1のローカルネットワークとn個の第2のローカルネットワークとの間における送信電力差が第1のしきい値以下になるように第2のローカルネットワークにおける送信電力を調整する電力調整処理を複数の通信装置に対応する複数のローカルネットワークの全てについて実行する。通信手段は、調整手段によって調整された送信電力を複数の通信装置へ送信する。複数の通信装置の各々は、第1および第2のリンク品質を電力制御装置へ送信し、電力制御装置の通信手段から受信した送信電力で自己のローカルネットワーク内に存在する端末装置と無線通信を行う。複数の端末装置の各々は、自己が直接接続する第2の通信装置における送信電力と同じ送信電力で第2の通信装置と無線通信を行う。
【0021】
好ましくは、複数の通信装置の各々は、自己のローカルネットワーク内であって、かつ、縮められた通信範囲の外側に新たに参加した端末装置を検知すると、受信した送信電力よりも大きい送信電力で自己のローカルネットワーク内に存在する端末装置と無線通信を行う。
【0022】
好ましくは、第1の通信装置は、受信した送信電力よりも大きい送信電力で自己のローカルネットワーク内であって、かつ、縮められた通信範囲の外側に存在する第1の端末装置と無線通信を行う。第1の通信装置に隣接する第2の通信装置は、第1の端末装置が自己のローカルネットワーク内に新たに参加したことを検知すると、第1の端末装置が縮められた通信範囲の外側に位置すれば、受信した送信電力よりも大きい送信電力で自己のローカルネットワーク内に存在する端末装置と無線通信を行う。
【0023】
好ましくは、第1の端末装置は、第1の通信装置との間のリンク品質が所望のリンク品質になるように送信所要電力を決定し、その決定した送信所要電力が現在の自己の送信電力よりも大きく、かつ、一定時間の間、第1の通信装置へパケットを送信しない場合、送信所要電力を含む送信電力制御要求を最大送信電力で第1の通信装置へ送信する。第1の通信装置は、送信電力制御要求を受信し、その受信した送信電力制御要求に含まれる送信所要電力と、電力制御装置から受信した送信電力とのうち、大きい方の電力を新たな送信電力として決定し、その決定した新たな送信電力を第1の端末装置へ送信する。
【発明の効果】
【0024】
この発明においては、第1のローカルネットワークに隣接するn個の第2のローカルネットワークにおける送信電力の影響を考慮したときの第1のローカルネットワークにおけるスループットであるローカルスループットが演算され、その演算されたローカルスループットが最大になるように第1のローカルネットワークにおける送信電力が決定される。この電力決定処理は、複数の通信装置に対応する複数のローカルネットワークの全てについて実行される。そして、電力決定処理によって決定された複数のローカルネットワークの複数の送信電力は、隣接する2つのローカルネットワーク間の送信電力差が第1のしきい値以下になるように調整される。
【0025】
その結果、複数のローカルネットワークの各々において、スループットが最大になるとともに、複数のローカルネットワーク全体で送信電力の差が第1のしきい値以下になる。
【0026】
従って、この発明によれば、コアになるネットワークに接続された複数の通信装置を備えた通信ネットワークにおける全体のスループットを向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の実施の形態による通信ネットワークシステムの構成を示す概略図である。
【図2】図1に示す端末装置1の構成図である。
【図3】図1に示すアクセスポイントの構成図である。
【図4】図1に示す電力制御装置の構成図である。
【図5】直接隣接のアクセスポイントおよび間接隣接のアクセスポイントの概念図である。
【図6】ネイバーリストを示す図である。
【図7】CSGの具体例を示す図である。
【図8】CSGの分割の具体例を示す図である。
【図9】送信電力の調整の具体例を示す図である。
【図10】新たな端末装置が参入した場合の送信電力の制御方法を説明するための図である。
【図11】端末装置がハンドオーバーする場合の送信電力の制御方法を説明するための図である。
【図12】この発明の実施の形態による電力制御方法の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0029】
図1は、この発明の実施の形態による通信ネットワークシステムの構成を示す概略図である。図1を参照して、この発明の実施の形態による通信ネットワークシステム100は、端末装置1〜9と、アクセスポイント10〜21と、ネットワーク40と、監視サーバ50と、電力制御装置60とを備える。
【0030】
なお、この発明の実施の形態においては、アクセスポイント10〜21の各々は、制御フレーム(それに対するACKを含む)を最大送信電力で送信し、データフレーム(それに対するACKを含む)を後述した方法によって制御した電力で送信する。
【0031】
端末装置1〜9は、無線通信空間に配置される。そして、端末装置1〜9の各々は、例えば、WiFiの無線インターフェースを備え、その備えた無線インターフェースによってインフラストラクチャモードでアクセスポイント10〜21のいずれかに接続する。
【0032】
この場合、端末装置1〜9の各々は、未使用チャネルを自己とアクセスポイントとの間の無線通信のみに用いた場合のスループットである潜在スループットが最大になるアクセスポイントを接続先のアクセスポイントとして選択する。
【0033】
そして、端末装置1〜9の各々は、接続したアクセスポイントから受信した送信電力を用いて無線通信を行う。
【0034】
また、端末装置1〜9の各々は、アクセスポイント10〜21からビーコンフレームを定期的に受信し、その受信したビーコンフレームに基づいて、自己に隣接するアクセスポイントを示す隣接アクセスポイントリストを作成する。そして、端末装置1〜9の各々は、その作成した隣接アクセスポイントリストをネットワーク40を介して監視サーバ50へ送信する。
【0035】
アクセスポイント10〜21の各々は、WiFiの無線インターフェースを備える。そして、アクセスポイント10〜21の各々は、電力制御装置60から送信電力を受け、その受けた送信電力を用いてWiFiの無線インターフェースによって端末装置1〜9と無線通信を行うとともに、ネットワーク40を介して監視サーバ50および電力制御装置60と通信を行う。
【0036】
また、アクセスポイント10〜21の各々は、無線通信によってビーコンフレームを定期的に送信する。そして、アクセスポイント10〜21の各々は、他のアクセスポイントから送信されたビーコンフレームを受信することによって自己に隣接するアクセスポイントを定期的に検出し、後述する隣接アクセスポイントリストを作成する。
【0037】
更に、アクセスポイント10〜21の各々は、インフラストラクチャモードで自己に接続している端末装置を定期的に検出し、後述する端末リストを作成する。
【0038】
そうすると、アクセスポイント10〜21の各々は、隣接アクセスポイントリストおよび端末リストを監視サーバ50へ定期的に送信する。
【0039】
ネットワーク40は、例えば、インターネットからなる。
【0040】
監視サーバ50は、ネットワーク40に接続される。そして、監視サーバ50は、端末装置1〜9の各々から隣接アクセスポイントリストをネットワーク40を介して定期的に受信するとともに、アクセスポイント10〜21の各々から隣接アクセスポイントリストおよび端末リストをネットワーク40を介して定期的に受信し、その受信した隣接アクセスポイントリストおよび端末リストを管理する。
【0041】
電力制御装置60は、ネットワーク40に接続される。そして、電力制御装置60は、ネットワーク40を介して監視サーバ50から隣接アクセスポイントリストおよび端末リストを定期的に取得する。その後、電力制御装置60は、その取得した隣接アクセスポイントリストおよび端末リストに含まれるアクセスポイント間のリンク品質およびアクセスポイントと端末装置との間のリンク品質とに基づいて、後述する方法によって、同一チャネルを共有するアクセスポイント10〜21の各々のローカルネットワーク内で使用する送信電力を決定する。
【0042】
引き続いて、電力制御装置60は、各アクセスポイント10〜21のローカルネットワーク内で使用する送信電力を後述する方法によって調整し、その調整後の送信電力をネットワーク40を介してアクセスポイント10〜21へ送信する。
【0043】
図2は、図1に示す端末装置1の構成図である。図2を参照して、端末装置1は、アンテナ101と、無線インターフェース102と、通信手段103と、アプリケーションモジュール104とを含む。
【0044】
無線インターフェース102は、WiFiの無線通信方式によって無線通信を行う。また、無線インターフェース102は、アクセスポイント(アクセスポイント10〜21のいずれか)からビーコンフレームまたはデータを受信し、そのビーコンフレームまたはデータを受信したときの受信信号強度を検出する。そして、無線インターフェース102は、その検出した受信信号強度を通信手段103へ出力する。
【0045】
更に、無線インターフェース102は、アクセスポイント(アクセスポイント10〜21のいずれか)からデータの送信電力を含むビーコンフレームを受信し、その受信したビーコンフレームから送信電力を取り出す。
【0046】
そして、無線インターフェース102は、インフラストラクチャモードでアクセスポイント(アクセスポイント10〜21のいずれか)に接続し、その取り出した送信電力でアクセスポイント(アクセスポイント10〜21のいずれか)との間でパケットを送受信する。
【0047】
即ち、無線インターフェース102は、通信手段103から受けたパケットをアンテナ101を介してアクセスポイント(アクセスポイント10〜21のいずれか)へ送信する。また、無線インターフェース102は、アンテナ101を介してパケットをアクセスポイント(アクセスポイント10〜21のいずれか)から受信し、その受信したパケットを通信手段103へ出力する。
【0048】
通信手段103は、通信ネットワークシステム100における最大送信電力(各アクセスポイント10〜21がビーコンフレームを送信するときの送信電力)を予め保持している。
【0049】
また、通信手段103は、無線インターフェース102から受信信号強度を受ける。そして、通信手段103は、最大送信電力および受信信号強度に基づいて、後述する方法によって、ビーコンフレームを受信するときのビーコン受信RSSIを算出する。
【0050】
そうすると、通信手段103は、ビーコン受信RSSI、端末装置1のMAC(Media Access Control)アドレスおよび無線インターフェース102が使用するチャネルのIDを含む隣接アクセスポイントリストAPLMNを作成し、その作成した隣接アクセスポイントリストAPLMNを無線インターフェース102を介して監視サーバ50へ送信する。
【0051】
更に、通信手段103は、アプリケーションモジュール104からパケットを受け、その受けたパケットを無線インターフェース102を用いて送信する。
【0052】
更に、通信手段103は、無線インターフェース102からパケットを受け、その受けたパケットをアプリケーションモジュール104へ出力する。
【0053】
アプリケーションモジュール104は、パケットを生成して通信手段103へ出力するとともに、通信手段103からパケットを受ける。
【0054】
なお、図1に示す端末装置2〜9の各々も、図2に示す端末装置1と同じ構成からなる。
【0055】
図3は、図1に示すアクセスポイント10の構成図である。図3を参照して、アクセスポイント10は、アンテナ111と、無線インターフェース112と、通信手段113と、有線インターフェース114とを含む。
【0056】
無線インターフェース112は、WiFiの無線通信方式によって無線通信を行う。そして、無線インターフェース112は、通信手段113からパケットを受け、その受けたパケットを通信手段113から受けた送信電力でアンテナ111を介して送信する。また、無線インターフェース112は、アンテナ111を介してパケットを受信し、その受信したパケットを通信手段113へ出力する。
【0057】
通信手段113は、ビーコンフレームを定期的に生成し、その生成したビーコンフレームを無線インターフェース112を介して端末装置(端末装置1〜9の少なくとも1つ)へ送信する。
【0058】
また、通信手段113は、アクセスポイント10のローカルネットワーク内で使用する送信電力を有線インターフェース114を介して電力制御装置60から受信し、その受信した送信電力を無線インターフェース112に設定する。そして、通信手段113は、電力制御装置60から受信した送信電力をビーコンフレームに含めて端末装置(端末装置1〜9の少なくとも1つ)へ送信する。
【0059】
更に、通信手段113は、端末リストTLと、隣接アクセスポイントリストAPLAPとを作成する。端末リストTLは、アクセスポイント10にアクセスする端末装置のMACアドレスと、ビーコン受信RSSIとからなる。また、隣接アクセスポイントリストAPLAPは、アクセスポイント10に隣接するアクセスポイントのMACアドレスと、ビーコン受信RSSIとからなる。そして、通信手段113は、アクセスポイント10のMACアドレスと、無線インターフェース112が使用するチャネルのIDと、端末リストTLと、隣接アクセスポイントリストAPLAPとを有線インターフェース114を介して監視サーバ50へ送信する。
【0060】
更に、通信手段113は、無線インターフェース112からパケットを受け、その受けたパケットを有線インターフェース114を介して送信する。また、通信手段113は、有線インターフェース114を介してパケットを受信し、その受信したパケットを無線インターフェース112へ出力する。
【0061】
有線インターフェース114は、通信手段113からパケットを受け、その受けたパケットをネットワーク40を介して監視サーバ50へ送信する。
【0062】
また、有線インターフェース114は、ネットワーク40を介して電力制御装置60から送信電力を受信し、その受信した送信電力を通信手段113へ出力する。
【0063】
なお、図1に示すアクセスポイント11〜21の各々も、図3に示すアクセスポイント10と同じ構成からなる。
【0064】
図4は、図1に示す電力制御装置60の構成図である。図4を参照して、電力制御装置60は、有線インターフェース61と、通信手段62と、決定手段63と、調整手段64とを含む。
【0065】
有線インターフェース61は、ネットワーク40を介してパケットを受信し、その受信したパケットを通信手段62へ出力する。
【0066】
また、有線インターフェース61は、通信手段62からパケットを受け、その受けたパケットを送信する。
【0067】
通信手段62は、有線インターフェース61を介して監視サーバ50から端末リストTLおよび隣接アクセスポイントリストAPLMN,APLAPを定期的に取得する。そして、通信手段62は、その取得した端末リストTLおよび隣接アクセスポイントリストAPLMN,APLAPを決定手段63および調整手段64へ出力する。
【0068】
また、通信手段62は、調整後の送信電力を調整手段64から受け、その受けた送信電力を有線インターフェース61を介してアクセスポイント10〜21へ送信する。
【0069】
決定手段63は、端末リストTLおよび隣接アクセスポイントリストAPLMN,APLAPを通信手段62から受け、その受けた端末リストTLおよび隣接アクセスポイントリストAPLMN,APLAPに基づいて、後述する方法によって、各アクセスポイント10〜21のローカルネットワーク内で使用する送信電力を決定する。そして、決定手段63は、その決定したアクセスポイント10〜21の12個の送信電力を調整手段64へ出力する。
【0070】
調整手段64は、端末リストTLおよび隣接アクセスポイントリストAPLMN,APLAPを通信手段62から受け、アクセスポイント10〜21の12個の送信電力を決定手段63から受ける。
【0071】
そして、調整手段64は、端末リストTL、隣接アクセスポイントリストAPLMN,APLAPおよびアクセスポイント10〜21の12個の送信電力に基づいて、後述する方法によって、アクセスポイント10〜21の12個の送信電力を調整し、その調整後の12個の送信電力を通信手段62へ出力する。
【0072】
この発明の実施の形態における用語の定義について説明する。
【0073】
[パスロスおよびビーコン受信RSSIの算出]
端末装置1〜9の各々は、アクセスポイント(アクセスポイント10〜21のいずれか)からフレームを受信するとき、以下の手順に従ってパスロス(PL:Path Loss)を算出する。
【0074】
また、アクセスポイント10〜21の各々は、他のアクセスポイントまたは端末装置(端末装置1〜9のいずれか)からフレームを受信するとき、以下の手順に従ってPLを算出する。なお、送信電力およびRSSIは、dBm単位で算出され、PLは、dB単位で算出される。
(1)端末装置1〜9の各々またはアクセスポイント10〜21の各々は、受信フレームがビーコンフレーム等の制御フレームまたはそれに応答するACKであるとき、PL=ビーコン送信電力−受信RSSIによってPLを算出する。なお、受信RSSIは、制御フレームまたはACKを受信したときの受信信号強度である。また、ビーコン送信電力は、通信ネットワークシステム100において、予め設定されている最大送信電力である。
【0075】
(2)端末装置1〜9の各々またはアクセスポイント10〜21の各々は、受信フレームがデータフレームまたはそれに応答するACKであるとき、PL=データ送信電力−受信RSSIによってPLを算出する。なお、受信RSSIは、データフレームまたはACKを受信したときの受信信号強度である。
【0076】
(3)端末装置1〜9の各々またはアクセスポイント10〜21の各々は、フェージング等の影響を無くすために、次式によってPLの平均値を算出する。
【0077】
newPL平均値=oldPL平均値×α+newPL値×(1−α)・・・(1)
なお、式(1)において、αは、例えば、0.9である。また、式(1)を用いて算出されるPLの平均値は、2番目以降の平均値である。
【0078】
そして、端末装置1〜9の各々またはアクセスポイント10〜21の各々は、ビーコン受信RSSI=ビーコン送信電力−PL平均値によってビーコン受信RSSIを算出する。
【0079】
[隣接アクセスポイントの種類]
隣接アクセスポイントは、直接隣接(Direct neighbor)のアクセスポイントと、間接隣接(Indirect neighbor)のアクセスポイントとからなる。
【0080】
直接隣接(Direct neighbor)のアクセスポイントは、同じチャネル上で動作し、互いにビーコンフレームを直接受信できる2つのアクセスポイントである。
【0081】
また、間接隣接(Indirect neighbor)のアクセスポイントは、同じチャネル上で動作し、共通の端末装置によって繋がっている2つのアクセスポイントである。
【0082】
図5は、直接隣接のアクセスポイントおよび間接隣接のアクセスポイントの概念図である。
【0083】
図5の(a)を参照して、監視サーバ50は、アクセスポイント10から収集した隣接アクセスポイントリストAPLAP1=[MACadd11/ビーコン受信RSSI1]およびチャネルID=CH1と、アクセスポイント11から収集した隣接アクセスポイントリストAPLAP2=[MACadd10/ビーコン受信RSSI2]およびチャネルID=CH1とに基づいて、アクセスポイント10,11が同じチャネルCH1上で動作し、かつ、お互いのビーコンフレームを直接受信できるアクセスポイントであることを検知し、アクセスポイント10,11を直接隣接のアクセスポイントとする。
【0084】
図5の(b)を参照して、端末装置1は、アクセスポイント10からビーコンフレームを受信することによってアクセスポイント10を隣接アクセスポイントとして検知し、上述した方法によってビーコン受信RSSI3を算出する。
【0085】
また、端末装置1は、アクセスポイント11からビーコンフレームを受信することによってアクセスポイント11を隣接アクセスポイントとして検知し、上述した方法によってビーコン受信RSSI4を算出する。
【0086】
そして、端末装置1は、隣接アクセスポイントリストAPLMN1=[MACadd10,MACadd11/チャネルID=CH1/ビーコン受信RSSI3,ビーコン受信RSSI4]を定期的に生成して監視サーバ50へ送信する。
【0087】
一方、アクセスポイント10は、自己のMACアドレスMACadd10、自己のチャネルID=CH1、自己の端末リストTL1=[MACadd1/ビーコン受信RSSI5]および自己の隣接アクセスポイントリストAPLAP3=[・・・/・・・]を監視サーバ50へ送信する。
【0088】
また、アクセスポイント11は、自己のMACアドレスMACadd11、自己のチャネルID=CH1、自己の端末リストTL2=[MACadd1/ビーコン受信RSSI6]および自己の隣接アクセスポイントリストAPLAP4=[・・・/・・・]を監視サーバ50へ送信する。
【0089】
この場合、アクセスポイント10,11は、ビーコンフレームを相互に直接受信できないので、隣接アクセスポイントリストAPLAP3,APLAP4にデータを含めないで隣接アクセスポイントリストAPLAP3,APLAP4を監視サーバ50へ送信する。
【0090】
そうすると、監視サーバ50は、端末装置1から受信した隣接アクセスポイントリストAPLMN1=[MACadd10,MACadd11/チャネルID=CH1/ビーコン受信RSSI3,ビーコン受信RSSI4]と、アクセスポイント10から受信したMACアドレスMACadd10、チャネルID=CH1、端末リストTL1=[MACadd1/ビーコン受信RSSI5]および隣接アクセスポイントリストAPLAP3=[・・・/・・・]と、アクセスポイント11から受信したMACアドレスMACadd11、チャネルID=CH1、端末リストTL2=[MACadd1/ビーコン受信RSSI6]および自己の隣接アクセスポイントリストAPLAP4=[・・・/・・・]とに基づいて、アクセスポイント10,11が同じチャネル上で動作し、かつ、端末装置1を介して繋がっていることを検知する。そして、監視サーバ50は、アクセスポイント10,11を間接隣接のアクセスポイントとする。
【0091】
[CSG(Connected sub graph)]
CSGは、上述した定義に従って隣接アクセスポイントと判定されたアクセスポイント同士の接続関係を示すグラフである。
【0092】
なお、CSGは、直接隣接のアクセスポイントのみからなる場合もあり、直接隣接のアクセスポイントと間接隣接のアクセスポイントとからなる場合もある。
【0093】
各アクセスポイント10〜21は、端末装置(端末装置1〜9のいずれか)からのassociationによって端末リストTLを作成して管理する。各アクセスポイント10〜21は、端末装置(端末装置1〜9のいずれか)からフレームを受信することによって、上述した方法によってビーコン受信RSSIを算出する。
【0094】
また、各アクセスポイント10〜21は、他のアクセスポイントからビーコンフレームを受信することによって隣接するアクセスポイントを検知し、上述した方法によってビーコン受信RSSIを算出する。そして、各アクセスポイント10〜21は、自己の端末リストTL(=自己に接続する端末装置のMACアドレスおよびビーコン受信RSSI)と、隣接アクセスポイントリストAPLAP(=自己に隣接するアクセスポイントのMACアドレスおよびビーコン受信RSSI)とを監視サーバ50へ定期的に送信する。
【0095】
一方、各端末装置1〜9は、アクセスポイント(アクセスポイント10〜21のいずれか)からビーコンフレームを受信することによって隣接するアクセスポイントを検知する。そして、各端末装置1〜9は、自己の隣接アクセスポイントリストAPLMN(=自己に隣接するアクセスポイントのMACアドレス、チャネルIDおよびビーコン受信RSSI)を監視サーバ50へ定期的に送信する。
【0096】
電力制御装置60は、各アクセスポイント10〜21の隣接アクセスポイントリストAPLAP(=各アクセスポイント10〜21に隣接するアクセスポイントのMACアドレスおよびビーコン受信RSSI)および各端末装置1〜9の隣接アクセスポイントリストAPLMN(=各端末装置1〜9に隣接するアクセスポイントのMACアドレス、チャネルIDおよびビーコン受信RSSI)を監視サーバ50から定期的に取得する。
【0097】
そして、電力制御装置60は、各アクセスポイント10〜21の隣接アクセスポイントリストAPLAP(=各アクセスポイント10〜21に隣接するアクセスポイントのMACアドレスおよびビーコン受信RSSI)および各端末装置1〜9の隣接アクセスポイントリストAPLMN(=各端末装置1〜9に隣接するアクセスポイントのMACアドレス、チャネルIDおよびビーコン受信RSSI)に基づいて、後述する方法によって、CSGを構築および分割する。
【0098】
[送信電力の算出]
12個のアクセスポイント10〜21によって形成される12個のローカルネットワークにおける送信電力を算出する方法について説明する。
【0099】
電力制御装置60の通信手段62は、アクセスポイント10〜21の端末リストTLと隣接アクセスポイントリストAPLAPとを有線インターフェース61を介して監視サーバ50から取得し、その取得した端末リストTLおよび隣接アクセスポイントリストAPLAPを決定手段63へ出力する。
【0100】
電力制御装置60の決定手段63は、RSSIと送信レートとのテーブルTBLを予め保持している。そして、電力制御装置60の決定手段63は、テーブルTBLを参照して、最小の送信レートを満足できる最小のRSSI(=RSSIminrate)を検出する。
【0101】
そして、電力制御装置60の決定手段63は、端末リストTLにおける端末装置毎にビーコン受信RSSIの平均値(=RSSIbeacon)を取り出す。その後、電力制御装置60の決定手段63は、予め保持しているビーコン送信電力(=最大送信電力)Pbeaconと、ビーコン受信RSSIの平均値(=RSSIbeacon)と、最小のRSSI(=RSSIminrate)とを次式に代入して最小送信電力Pminrateを算出する。
【0102】
minrate=RSSIminrate+Pbeacon−RSSIbeacon・・・(2)
アクセスポイントj(j=10〜21)の通信範囲(=データの通信範囲)からなる領域をセルjとする。そうすると、セルjの最低送信電力は、セルjの最低送信電力=max{セルjに含まれる全ての端末装置i(i=1〜9)の最低送信電力(=Pminrate)}によって決定される。
【0103】
また、送信電力pは、p=セルjの最低送信電力〜最大送信電力の範囲からなる。
【0104】
端末装置iがアクセスポイントjからビーコンフレームを受信するときのRSSIをRSSIij(Pbeacon)とすると、電力制御装置60の決定手段63は、端末装置iがアクセスポイントjから送信電力pで送信されたデータを受信するときのデータ受信RSSI(=RSSIij(P))を次式によって算出する。
【0105】
RSSIij(P)=p−Pbeacon+RSSIij(Pbeacon)・・・(3)
そして、電力制御装置60の決定手段63は、テーブルTBLを参照して、データ受信RSSI(=RSSIij(P))に対応する送信レートrij(P)を検出する。
【0106】
引き続いて、電力制御装置60の決定手段63は、セルjにおける1ビット当たりの送信所要時間t(p)を次式によって算出する。
【0107】
(p)=Σ(1/rij(P))/(セルjの端末装置の個数)・・・(4)
なお、送信所要時間t(p)は、平均の送信所要時間である。
【0108】
セルjの周辺での最低送信電力は、セルjの周辺での最低送信電力=max{セルjとその隣接セルの最低送信電力(=Pminrate)}によって決定される。
【0109】
また、送信電力p’は、p’=セルjの周辺での最低送信電力〜最大送信電力の範囲からなる。
【0110】
送信電力がp’である場合、アクセスポイントjの同一チャネル競争のアクセスポイントリストがN(p’)である。
【0111】
(p’)は、最初、空であるので、アクセスポイントjは、N(p’)に入れられる。
【0112】
アクセスポイントjに直接隣接(ビーコンフレームを直接受信できる)するアクセスポイントをアクセスポイントk(k=10〜21,k≠j)とする。
【0113】
電力制御装置60の決定手段63は、アクセスポイントkが送信電力p’で送信したパケットがアクセスポイントjへ届くときのRSSI(=RSSIkj(p’))を次式によって算出する。
【0114】
RSSIkj(p’)=p’−Pbeacon+RSSIkj(Pbeacon))・・・(5)
なお、RSSIkj(Pbeacon)は、アクセスポイントjがアクセスポイントkからビーコンフレームを受信するときのビーコン受信RSSIであり、アクセスポイントjからの隣接アクセスポイントリストAPLAPに含まれている。従って、電力制御装置60の決定手段63は、式(5)によってRSSI(=RSSIkj(p’))を演算できる。
【0115】
そして、電力制御装置60の決定手段63は、RSSIkj(p’)がアクセスポイントjのキャリアセンス閾値よりも大きいとき、アクセスポイントk(=ローカルネットワーク)をN(p’)に入れる。
【0116】
電力制御装置60の決定手段63は、RSSIkj(p’)の演算と、その演算したRSSIkj(p’)とキャリアセンス閾値との比較をアクセスポイントjに隣接するアクセスポイントkの全てについて実行する。
【0117】
そして、電力制御装置60の決定手段63は、アクセスポイントjのローカルネットワークにおけるローカルスループットγ(p’)を次式により演算する。
【0118】
γ(p’)=1/[Σk∈Nj(P’)1/t(p’)]・・・(6)
なお、t(p’)は、上述した式(4)を用いて演算されたアクセスポイントkにおけるビット当たりの送信所要時間である。
【0119】
また、アクセスポイントjのローカルネットワークを第1のローカルネットワークとし、アクセスポイントkのローカルネットワークの全てをn(nは正の整数)個の第2のローカルネットワークとしたとき、N(p’)に入れられたアクセスポイントkは、「m(mは1≦m≦nを満たす整数)個の第2のローカルネットワーク」を構成する。
【0120】
引き続いて、電力制御装置60の決定手段63は、ローカルスループットγ(p’)が最大になる電力p’をアクセスポイントjのローカルネットワークにおける送信電力Pとして決定する。
【0121】
なお、この発明の実施の形態においては、ローカルスループットとは、アクセスポイントjに隣接するアクセスポイントkのローカルネットワークにおける送信電力の影響を考慮したときのアクセスポイントjのローカルネットワークにおけるスループットを言う。
【0122】
[CSGの構築および分割]
(i)CSGの構築
電力制御装置60の通信手段62は、アクセスポイント10〜21の[MACアドレスMACadd10/チャネルID=CH1/端末リストTL10/隣接アクセスポイントリストAPLAP10]〜[MACアドレスMACadd21/チャネルID=CH1/端末リストTL21/隣接アクセスポイントリストAPLAP21]を監視サーバ50から取得し、その取得した[MACアドレスMACadd10/チャネルID=CH1/端末リストTL10/隣接アクセスポイントリストAPLAP10]〜[MACアドレスMACadd21/チャネルID=CH1/端末リストTL21/隣接アクセスポイントリストAPLAP21]を決定手段63へ出力する。
【0123】
そして、電力制御装置60の決定手段63は、[MACアドレスMACadd10/チャネルID=CH1/端末リストTL10/隣接アクセスポイントリストAPLAP10]〜[MACアドレスMACadd21/チャネルID=CH1/端末リストTL21/隣接アクセスポイントリストAPLAP21]に基づいて、CSGを構築する。
【0124】
以下、CSGを構築する方法を具体的に説明する。図6は、ネイバーリストを示す図である。また、図7は、CSGの具体例を示す図である。
【0125】
電力制御装置60の決定手段63は、アクセスポイント10〜21のチャネルID=CH1および隣接アクセスポイントリストAPLAP10〜APLAP21に基づいて、ネイバーリストNBL1(図6の(a)参照)を作成する。この場合、CSGのIDは、アクセスポイント10〜21の全てに対して“0”に設定される。そして、電力制御装置60の決定手段63は、ネイバーリストNBL1に基づいてアクセスポイント10〜21が同じチャネルCH1を共有していることを検知する。
【0126】
そうすると、電力制御装置60の決定手段63は、同じチャネルCH1を共有するアクセスポイント10〜21に対して1つのグラフGRP(図7の(a)参照)を作成する。
【0127】
その後、電力制御装置60の決定手段63は、次の手順によってグラフGRPを2つのCSG1,CSG2に分ける。
【0128】
(C1)新しいCSGm(m=1,2,3,・・・)を用意する。
【0129】
(C2)既存のCSGに入っていないアクセスポイントj(CSG=0)を選択し、CSGmに入れる。
【0130】
(C3)アクセスポイントjに隣接するアクセスポイントもCSGmに入れる。
【0131】
(C4)CSGmに入っていないアクセスポイント(CSG=0)からアクセスポイントkを選択し、上記の(C1)〜(C3)の処理を行なう。
【0132】
(C5)CSGmにおけるアクセスポイントの隣接アクセスポイントが全てCSGmに含まれると、このCSGが構築される。
【0133】
(C6)既存のCSGに入っていないアクセスポイントが残れば、上記の(C1)〜(C5)の処理を繰り返す。
【0134】
上記の(C1)〜(C6)に従ってCSGの構築を具体的に説明する。
【0135】
電力制御装置60の決定手段63は、まず、アクセスポイント10をCSG1に入れる。次に、電力制御装置60の決定手段63は、アクセスポイント10に隣接するアクセスポイント11をCSG1に入れる。同様に、電力制御装置60の決定手段63は、アクセスポイント11に隣接するアクセスポイント12をCSG1に入れ、アクセスポイント12に隣接するアクセスポイント13,14,15をCSG1に入れ、アクセスポイント15に隣接するアクセスポイント16,17をCSG1に入れる。これによって、アクセスポイント10〜17に隣接するアクセスポイントがCSG1に含まれるので、CSG1の構築が完了する。
【0136】
電力制御装置60の決定手段63は、同様にして、アクセスポイント18〜21を含むCSG2を構築する。
【0137】
その結果、電力制御装置60の決定手段63は、ネイバーリストNBL2(図6の(b)参照)を作成し、CSG1,CSG2(図7の(b)参照)を作成する。
【0138】
(ii)CSGの分割
電力制御装置60の決定手段63は、以下の手順に従ってCSGを分割する。
【0139】
(D1)全てのチャネル上の全てのCSGは、1つのCSGセットを構成する。電力制御装置60の決定手段63は、CSGセットにおける各CSGに対して、そのCSGに含まれるアクセスポイントの個数が閾値(=例えば、20)を超えれば、このCSGに分割可能フラグflag_DVを付ける。
【0140】
(D2)電力制御装置60の決定手段63は、分割可能フラグflag_DVが付いているCSGから1つのCSGを選択する。
【0141】
(D2−1)電力制御装置60の決定手段63は、選択したCSGに含まれる全てのアクセスポイントを分割可能アクセスポイントとし、分割可能アクセスポイントに隣接するアクセスポイントを次のようにオーバーラップしないようにサブセットに分ける。
【0142】
(D2−1−1)新しいサブセットsubset(p=1,2,3,・・・)を用意する。
【0143】
(D2−1−2)分割可能アクセスポイントに隣接するアクセスポイントから既存のサブセットに入っていないアクセスポイントjを選択し、サブセットsubsetに入れる。
【0144】
(D2−1−3)分割可能アクセスポイントに隣接するアクセスポイントに属しており、かつ、既存のサブセットに入っていない各アクセスポイントに対して、それがサブセットsubsetに属するアクセスポイントに隣接するかどうかを確認する。そして、隣接すれば、それをサブセットsubsetに入れる。サブセットsubsetに入れるアクセスポイントがなくなるまで、この処理を繰り返す。
【0145】
(D2−1−4)既存のサブセットに入っていないアクセスポイントが残れば、上記の(D2−1−1)〜(D2−1−3)の処理を繰り返す。
【0146】
(D2−1−5)分割可能アクセスポイントに隣接するアクセスポイントをオーバーラップしない2以上のサブセットに分けれれば、それを分割候補とする。
【0147】
(D2−2)電力制御装置60の決定手段63は、各分割候補に対して、そこでCSGを分割できるかどうかを以下の方法によって確認する。
【0148】
(D2−2−1)分割候補をCSGから抽出する。
【0149】
(D2−2−2)元のCSGが2つに分割されると、分割候補をその隣接アクセスポイントが多いCSGに属させる。そして、分割された2つの新しいCSGをCSGセットに入れる。新しいCSGに含まれるアクセスポイントの個数が閾値(=20)を超えれば、そのCSGに分割可能flag_DVを付ける。全ての分割候補で元のCSGが2つのCSGに分割されなければ、このCSGの分割可能flag_DVをクリアする。
【0150】
(D3)電力制御装置60の決定手段63は、CSGセットにおける全てのCSGに対して分割可能flag_DVがセットされていなければ、CSGの分割を終了する。一方、電力制御装置60の決定手段63は、CSGセットのいずれかのCSGに対して分割可能flag_DVがセットされていれば、上記の(D2)を繰返し実行する。
【0151】
図8は、CSGの分割の具体例を示す図である。図8を参照して、アクセスポイント10〜21は、1つのCSG3を構成する。そして、電力制御装置60の決定手段63は、4個のアクセスポイント11,12,13,14がアクセスポイント10に隣接することを検知する。
【0152】
その後、電力制御装置60の決定手段63は、まず、アクセスポイント11をサブセットsuset1に入れる。電力制御装置60の決定手段63は、次に、アクセスポイント12がサブセットsuset1に入れたアクセスポイント11に隣接するかどうかを確認する。
【0153】
アクセスポイント12がアクセスポイント11に隣接するので、電力制御装置60の決定手段63は、アクセスポイント12をサブセットsuset1に入れる。
【0154】
引き続いて、電力制御装置60の決定手段63は、アクセスポイント13がサブセットsuset1に入れたアクセスポイント11,12に隣接するかどうかを確認する。
【0155】
アクセスポイント13は、アクセスポイント11,12のいずれにも隣接しないので、電力制御装置60の決定手段634は、アクセスポイント13をサブセットsubset2に入れる。
【0156】
その後、電力制御装置60の決定手段63は、アクセスポイント14がアクセスポイント13に隣接するので、アクセスポイント14をサブセットsubset2に入れる。
【0157】
アクセスポイント10の隣接するアクセスポイント11〜14は、オーバーラップしない2つのサブセットsuset1,subset2に分かれているので、CSG3は、アクセスポイント10のところで分割される可能性がある。従って、電力制御装置60の決定手段63は、アクセスポイント10を分割候補とする。
【0158】
そして、電力制御装置60の決定手段63は、分割候補(=アクセスポイント10)を隣接アクセスポイントが多いアクセスポイント11,12,15〜19に属させる。これによって、CSG3は、2つのCSG4,CSG5に分割される。その後、電力制御装置60の決定手段63は、CSG3に付けられた分割可能flag_DVをクリアする。これによって、電力制御装置60の決定手段63は、CSG3の分割を終了する。
【0159】
電力制御装置60の決定手段634は、上述した方法によってCSGを構築または分割する。そして、電力制御装置60の決定手段63および調整手段64は、構築または分割した最終的な各CSG毎に、1つのCSGに含まれるアクセスポイント間の送信電力を以下の方法によって算出し、その算出した送信電力を調製する。
【0160】
(ADJ1)降順でアクセスポイントの送信電力Pをソートし、初期の送信電力Pとする。
【0161】
(ADJ2)ソート後のアクセスポイントのIDを1,2,3,・・・とし、P≧P≧P≧・・・を設定する。
【0162】
(ADJ3)アクセスポイントごとに送信電力制御済flag_CFを設定する。この場合、最初、flag_CF(M)(M=1,2,3,・・・)=0とする。
【0163】
(ADJ4)アクセスポイントMの送信電力Pを算出する。
【0164】
(ADJ4−1)flag_CFが“0”でなければ、そのアクセスポイントをスキップする。
【0165】
(ADJ4−2)P=max{アクセスポイントMに隣接するアクセスポイントのPの最大値−δ,P}を演算し、フラグflag_CF(M)を付ける。ここで、δは、隣接するアクセスポイント間の送信電力の差のしきい値である。
【0166】
(ADJ4−3)Pの更新によってアクセスポイントMと、アクセスポイントMに隣接するアクセスポイントLとの間の送信電力の差|P−P|がδを超えると、アクセスポイントLのフラグflag_CFをクリアする。
【0167】
(ADJ5)フラグflag_CFが“0”であるアクセスポイントに対して(ADJ4)の処理を行ない、再び、送信電力を調整する。
【0168】
図9は、送信電力の調整の具体例を示す図である。なお、図9においては、しきい値δは、1dBmであるとする。
【0169】
図9を参照して、アクセスポイント10〜14の送信電力Pは、それぞれ、15dBm,14dBm,13dBm,14dBm,9dBmと算出されている。
【0170】
アクセスポイント15の送信電力Pが算出される際、アクセスポイント13の影響で送信電力Pが13dBmと算出される。
【0171】
その結果、アクセスポイント14とアクセスポイント15との間の送信電力の差(=4dBm)がしきい値δ(=1dBm)を超えてしまうので、電力制御装置60の調整手段64は、アクセスポイント14のフラグflag_CFをクリアする。
【0172】
その後、アクセスポイント16,17の送信電力P,Pがそれぞれ13dBm,12dBmと算出される。
【0173】
そうすると、電力制御装置60の調整手段64は、アクセスポイント14の送信電力P(=9dBm)がアクセスポイント15の送信電力P(=13dBm)との差がしきい値δ(=1dBm)を超えないようにアクセスポイント14の送信電力Pを9dBmから12dBmに調整する。
【0174】
このように、この発明の実施の形態においては、電力制御装置60の調整手段64は、隣接する2つのアクセスポイント間の送信電力Pの差がしきい値δ(=1dBm)を超えないように、1つのCSGに含まれるアクセスポイント10〜17の送信電力P〜Pを調整する。
【0175】
そして、電力制御装置60の調整手段64は、その調整後の送信電力P〜Pを通信手段62へ出力し、通信手段62は、送信電力P〜Pをアクセスポイント10〜17へ送信する。
【0176】
アクセスポイント10〜17は、電力制御装置60からそれぞれ送信電力P〜Pを受信し、その受信した送信電力P〜Pをビーコンフレームに含めて自己のローカルネットワーク内に存在する端末装置(端末装置1〜9の少なくとも1つ)へ送信する。
【0177】
そして、アクセスポイント10〜17は、それぞれ、送信電力P〜Pで自己のローカルネットワーク内に存在する端末装置(端末装置1〜9の少なくとも1つ)とデータフレームを送受信する。
【0178】
この発明の実施の形態においては、端末装置1〜9およびアクセスポイント10〜21の各々は、フレームを送信するとき、基本的に、RTS(Request To Send)/CTS(Clear To Send)を使用せず、制御フレーム(およびそれに対する応答(ACK))を既知のビーコンフレーム用の送信電力(=最大送信電力)で送信し、データフレーム(およびそれに対する応答(ACK))を上述した方法によって決定された送信電力Pで送信する。
【0179】
[例外対応]
図10は、新たな端末装置が参入した場合の送信電力の制御方法を説明するための図である。図10を参照して、端末装置1,4,5,7は、インフラストラクチャモードでアクセスポイント10と接続している。領域REG1は、アクセスポイント10からのデータフレームが到達する範囲であり、領域REG2は、アクセスポイント10からのビーコンフレームが到達する範囲である。
【0180】
そして、端末装置1,4,5,7およびアクセスポイント10は、電力制御装置60から受信した送信電力P10を用いてデータフレームを相互に送受信する。
【0181】
このような状況において、新たな端末装置3が領域REG1外の領域REG2内に新規に参入する。この場合、端末装置3は、アクセスポイント10からのビーコンフレームを受信できるが、アクセスポイント10からのデータフレームを受信できない。
【0182】
そこで、アクセスポイント10は、送信電力P10を暫時的に大きくして端末装置3と無線通信を行なう。
【0183】
図11は、端末装置がハンドオーバーする場合の送信電力の制御方法を説明するための図である。
【0184】
図11を参照して、端末装置7は、最初、アクセスポイント10に接続しているが、アクセスポイント11に向かって移動している。端末装置7は、アクセスポイント10からアクセスポイント11へ切り替わる前に端末装置7−アクセスポイント10間のリンク品質が徐々に劣化するので、送信電力P10を暫時的に大きくし、端末装置7を救済する。
【0185】
また、端末装置7がアクセスポイント11のローカルネットワークに新規に参入すると、アクセスポイント11は、送信電力P11を暫時的に大きくし、端末装置7と無線通信を行なう。
【0186】
これによって、端末装置7がアクセスポイント10のローカルネットワークからアクセスポイント11のローカルネットワークへハンドオーバーする場合も、連続して通信を行なうことができる。
【0187】
また、この発明の実施の形態においては、次の方法によって活性な端末装置に対する対応が行なわれる。
【0188】
各アクセスポイント10〜21は、常に、端末装置(端末装置1〜9の少なくとも1つ)からのパケット(新規参入する場合の制御メッセージ、または移動する場合のデータメッセージ)を観測し、端末装置におけるデータ受信RSSIを上述した方法によって算出する。
【0189】
また、各アクセスポイント10〜21は、上述した式(2)、または次式を用いて、端末装置(端末装置1〜9の少なくとも1つ)との間のリンク品質を満足できるように送信電力p(=PminrateまたはPmaxrate)を周期的(ビーコンフレームを送信する直前)に算出する。
【0190】
maxrate=RSSImaxrate+Pbeacon−RSSIbeacon・・・(7)
式(7)において、RSSImaxrateは、RSSIと送信レートとのテーブルTBLを参照して検出された最大の送信レートを満足する最小のRSSIである。また、Pmaxrateは、最小送信電力である。
【0191】
各アクセスポイント10〜21は、送信電力pを算出すると、max(p,P)によって選択された送信電力(p,Pのうち、大きい方)を新たな送信電力Pとし、その新たな送信電力Pをビーコンフレームに含めて自己のローカルネットワーク内に存在する端末装置へ送信する。
【0192】
そして、次の電力制御タイミングになると、アクセスポイント10〜21間の送信電力が上述した方法によって調整され、隣接するアクセスポイント間の送信電力の差が小さくなる。
【0193】
更に、この発明の実施の形態においては、次の方法によって不活性な端末装置に対する対応が行なわれる。
【0194】
各端末装置1〜9は、アクセスポイント(アクセスポイント10〜21のいずれか)に接続していても、通信をしないで移動する場合がある。この場合、各アクセスポイント10〜21は、端末装置へのリンク品質の変化を把握していないので、それに対応する送信電力制御を行なわない。
【0195】
その結果、各端末装置1〜9がアクセスポイントから離れてから通信を再開すると、データフレームが通信相手に届かない可能性がある。
【0196】
そこで、このような問題を解決するために、各端末装置1〜9は、常に、アクセスポイント(アクセスポイント10〜21のいずれか)からのビーコン受信RSSIを観測し、その観測したビーコン受信RSSIに基づいて、データの受信RSSIを算出し、式(2)または式(7)を用いてリンク品質を満足できる所要送信電力pを算出する。
【0197】
pが現在の送信電力よりも大きく、かつ、一定時間(この時間をパラメータとする)以内にアクセスポイントへの送信(データまたはACK)がない場合、各端末装置1〜9は、自己の送信電力pを含む送信電力制御要求フレームを最大送信電力でアクセスポイント(アクセスポイント10〜21のいずれか)へ送信する。
【0198】
アクセスポイント(アクセスポイント10〜21のいずれか)は、max(p,P)によって選択された送信電力(p,Pのうち、大きい方)を新たな送信電力Pとし、その新たな送信電力Pをビーコンフレームに含めて自己のローカルネットワーク内に存在する端末装置へ送信する。
【0199】
図12は、この発明の実施の形態による電力制御方法の流れを示す図である。なお、図12においては、端末装置1,2およびアクセスポイント10,11を例としてアクセスポイント10,11のローカルネットワーク内における送信電力を制御する場合の流れを説明する。また、図12においては、端末装置1は、アクセスポイント10へアクセスし、端末装置2は、アクセスポイント11へアクセスするものとする。
【0200】
図12を参照して、端末装置1は、アクセスポイント10との間で上述した方法によってパスロスPL1を算出し(ステップS1)、端末装置2は、アクセスポイント11との間で上述した方法によってパスロスPL2を算出する(ステップS2)。
【0201】
その後、アクセスポイント10は、自己のアドレスAP10、チャネルID=CH4、端末リストNL=[STA1](STA1は、端末装置1を表す)および隣接アクセスポイントリストNB=[AP11]を監視サーバ50へ送信する(ステップS3)。
【0202】
同様に、アクセスポイント11は、自己のアドレスAP11、チャネルID=CH4、端末リストNL=[STA2](STA2は、端末装置2を表す)および隣接アクセスポイントリストNB=[AP10]を監視サーバ50へ送信する(ステップS4)。
【0203】
その後、電力制御装置60は、情報要求を監視サーバ50へ送信し(ステップS5)、監視サーバ50は、チャネルID、端末リストおよび隣接アクセスポイントリスト等の必要な情報を電力制御装置60へ送信する(ステップS6)。
【0204】
そして、電力制御装置60は、必要な情報に基づいて、上述した方法によって、セルjごとに送信電力Pを算出する(ステップS7)。
【0205】
その後、電力制御装置60は、上述した方法によってCSGを構築・分割する(ステップS8)。引き続いて、電力制御装置60は、上述した方法によって、CSG毎に送信電力Pを送信電力Pに調整する(ステップS9)。
【0206】
そうすると、電力制御装置60は、アクセスポイント10のローカルネットワークにおける調整された送信電力Pをアクセスポイント10へ送信する(ステップS10)。また、電力制御装置60は、アクセスポイント11のローカルネットワークにおける調整された送信電力Pをアクセスポイント11へ送信する(ステップS11)。
【0207】
アクセスポイント10,11は、それぞれ、送信電力P,Pを電力制御装置60から受信し、その受信した送信電力P,Pをハンドオーバー等への対応に応じて暫時的に調整する(ステップS12)。
【0208】
そして、アクセスポイント10は、調整後の送信電力Pを端末装置1へ送信し(ステップS13)、アクセスポイント11は、調整後の送信電力Pを端末装置2へ送信する(ステップS14)。
【0209】
これによって、送信電力を制御する動作が終了する。
【0210】
この発明の実施の形態によれば、1つのローカルネットワークに隣接するn(nは正の整数)個の隣接ローカルネットワークにおける送信電力の影響を考慮したときの1つのローカルネットワークにおけるスループットであるローカルスループットが演算され、その演算されたローカルスループットが最大になるように1つのローカルネットワークにおける送信電力が決定される。この電力決定処理は、複数のアクセスポイント10〜21に対応する複数のローカルネットワークの全てについて実行される。そして、電力決定処理によって決定された複数のローカルネットワークの複数の送信電力は、隣接する2つのローカルネットワーク間の送信電力差がしきい値δ以下になるように調整される。
【0211】
その結果、複数のローカルネットワークの各々において、スループットが最大になるとともに、複数のローカルネットワーク全体で送信電力の差がしきい値δ以下になる。
【0212】
従って、この発明によれば、コアになるネットワークに接続された複数のアクセスポイント10〜21を備えた通信ネットワークシステム100における全体のスループットを向上できる。
【0213】
なお、この発明の実施の形態においては、アクセスポイント10〜21は、「複数の通信装置」を構成し、端末装置1〜9は、「複数の端末装置」を構成する。
【0214】
また、この発明の実施の形態においては、CSGは、「接続関係集合」を構成する。
【0215】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0216】
この発明は、コアになるネットワークに接続された複数の通信装置を備えた通信ネットワークにおける全体のスループットを向上可能な電力制御装置に適用される。また、この発明は、コアになるネットワークに接続された複数の通信装置を備えた通信ネットワークにおける全体のスループットを向上可能な電力制御装置を備えた通信ネットワークシステムに適用される。
【符号の説明】
【0217】
1〜9 端末装置、10〜21 アクセスポイント、40 ネットワーク、50 監視サーバ、60 電力制御装置、61,114 有線インターフェース、62,103,113 通信手段、63 決定手段、64 調整手段、100 通信ネットワークシステム、101 アンテナ、102,112 無線インターフェース、104 アプリケーションモジュール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークに接続され、かつ、同一チャネルを使用する複数の通信装置における送信電力を制御する電力制御装置であって、
前記複数の通信装置のうちの隣接する通信装置間の第1のリンク品質と、各通信装置に直接接続される端末装置と前記通信装置との間の第2のリンク品質とに基づいて、前記複数の通信装置のうちの第1の通信装置と前記第1の通信装置にアクセスする第1の端末装置とから構成される第1のローカルネットワークにおけるローカルスループットを前記第1のローカルネットワークに隣接するn(nは正の整数)個の第2のローカルネットワークにおける送信電力の影響を考慮したときの前記第1のローカルネットワークにおけるスループットとして演算し、その演算したローカルスループットが最大になるように前記第1のローカルネットワークにおける送信電力を決定する電力決定処理を前記複数の通信装置に対応する複数のローカルネットワークの全てについて実行する決定手段と、
前記第1のローカルネットワークと前記n個の第2のローカルネットワークとの間における送信電力差が第1のしきい値以下になるように第2のローカルネットワークにおける送信電力を調整する電力調整処理を前記複数の通信装置に対応する複数のローカルネットワークの全てについて実行する調整手段と、
前記調整手段によって調整された送信電力を前記複数の通信装置へ送信する通信手段とを備える電力制御装置。
【請求項2】
前記決定手段は、前記n個の第2のローカルネットワークにおけるn個の前記第2のリンク品質に基づいて各第2のローカルネットワークにおける1ビット当たりの送信所要時間を演算する処理を前記n個の第2のローカルネットワークの全てについて実行するとともに、前記第2のローカルネットワークからパケットを受信したときの受信信号強度が前記第1のローカルネットワークにおけるキャリアセンス閾値を超えるm(mは1≦m≦nを満たす整数)個の第2のローカルネットワークを前記n個の第2のローカルネットワークから抽出し、その抽出したm個の第2のローカルネットワークにおけるm個の送信所要時間の総和の逆数が最大になるときの前記第2のローカルネットワークにおける送信電力を前記第1のローカルネットワークにおける送信電力として決定する、請求項1に記載の電力制御装置。
【請求項3】
前記決定手段は、前記複数の通信装置の隣接関係を示す隣接リストに基づいて、同一チャネルを使用し、かつ、隣接関係を有する通信装置の集合である接続関係集合に前記複数の通信装置を分類し、その分類した接続関係集合ごとに前記電力決定処理を実行し、
前記調整手段は、前記分類された接続関係集合ごとに前記電力調整処理を実行する、請求項1に記載の電力制御装置。
【請求項4】
前記決定手段は、1つの接続関係集合に含まれる通信装置の個数が第2のしきい値を超えると、前記接続関係集合を複数の接続関係集合に分割し、その分割した複数の接続関係集合の各々について前記電力決定処理を実行し、
前記調整手段は、前記分割された複数の接続関係集合の各々について前記電力調整処理を実行する、請求項3に記載の電力制御装置。
【請求項5】
ネットワークに接続された複数の通信装置と、
各々が前記複数の通信装置のいずれかと無線通信を行う複数の端末装置と、
前記ネットワークに接続され、同一チャネルを使用する前記複数の通信装置における送信電力を制御する電力制御装置とを備え、
前記電力制御装置は、
前記複数の通信装置のうちの隣接する通信装置間の第1のリンク品質と、各通信装置に直接接続される端末装置と前記通信装置との間の第2のリンク品質とに基づいて、前記複数の通信装置のうちの第1の通信装置と前記第1の通信装置にアクセスする第1の端末装置とから構成される第1のローカルネットワークにおけるローカルスループットを前記第1のローカルネットワークに隣接するn(nは正の整数)個の第2のローカルネットワークにおける送信電力の影響を考慮したときの前記第1のローカルネットワークにおけるスループットとして演算し、その演算したローカルスループットが最大になるように前記第1のローカルネットワークにおける送信電力を決定する電力決定処理を前記複数の通信装置に対応する複数のローカルネットワークの全てについて実行する決定手段と、
前記第1のローカルネットワークと前記n個の第2のローカルネットワークとの間における送信電力差が第1のしきい値以下になるように第2のローカルネットワークにおける送信電力を調整する電力調整処理を前記複数の通信装置に対応する複数のローカルネットワークの全てについて実行する調整手段と、
前記調整手段によって調整された送信電力を前記複数の通信装置へ送信する通信手段とを含み、
前記複数の通信装置の各々は、前記第1および第2のリンク品質を前記電力制御装置へ送信し、前記電力制御装置の前記通信手段から受信した送信電力で自己のローカルネットワーク内に存在する端末装置と無線通信を行い、
前記複数の端末装置の各々は、自己が直接接続する第2の通信装置における送信電力と同じ送信電力で前記第2の通信装置と無線通信を行う、通信ネットワークシステム。
【請求項6】
前記複数の通信装置の各々は、自己のローカルネットワーク内であって、かつ、縮められた通信範囲の外側に新たに参加した端末装置を検知すると、前記受信した送信電力よりも大きい送信電力で自己のローカルネットワーク内に存在する端末装置と無線通信を行う、請求項5に記載の通信ネットワークシステム。
【請求項7】
前記第1の通信装置は、前記受信した送信電力よりも大きい送信電力で自己のローカルネットワーク内であって、かつ、縮められた通信範囲の外側に存在する前記第1の端末装置と無線通信を行い、
前記第1の通信装置に隣接する第2の通信装置は、前記第1の端末装置が自己のローカルネットワーク内に新たに参加したことを検知すると、前記第1の端末装置が縮められた通信範囲の外側に位置すれば、前記受信した送信電力よりも大きい送信電力で自己のローカルネットワーク内に存在する端末装置と無線通信を行う、請求項5に記載の通信ネットワークシステム。
【請求項8】
前記第1の端末装置は、前記第1の通信装置との間のリンク品質が所望のリンク品質になるように送信所要電力を決定し、その決定した送信所要電力が現在の自己の送信電力よりも大きく、かつ、一定時間の間、前記第1の通信装置へパケットを送信しない場合、前記送信所要電力を含む送信電力制御要求を最大送信電力で前記第1の通信装置へ送信し、
前記第1の通信装置は、前記送信電力制御要求を受信し、その受信した送信電力制御要求に含まれる送信所要電力と、前記電力制御装置から受信した送信電力とのうち、大きい方の電力を新たな送信電力として決定し、その決定した新たな送信電力を前記第1の端末装置へ送信する、請求項5に記載の通信ネットワークシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−44894(P2011−44894A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191477(P2009−191477)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、支出負担行為担当官、総務省大臣官房会計課企画官、研究テーマ「異種無線システム動的利用による信頼性向上技術の研究開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(393031586)株式会社国際電気通信基礎技術研究所 (905)
【Fターム(参考)】