説明

電力変換装置の制御装置

【課題】系統事故時などで電力系統の電圧が三相不平衡である場合でもベクトル制御を用いて電力変換装置と三相交流系統との間で良好に電力を変換する。
【解決手段】三相交流電力系統に接続された電力変換装置の制御装置において,三相交流電力系統の系統電圧の逆相回転方向に出力電流をdqベクトル座標変換して逆相d軸電流および逆相q軸電流を求める逆相座標変換回路、逆相座標変換回路の逆相d軸電流および逆相q軸電流を帰還値とし、これら電流の指令値と比較して指令値に制御する第1の電流制御器、逆相座標変換回路の逆相d軸電流および逆相q軸電流に含まれる正相電流による2次の振動成分を抽出する第1の振動成分抽出回路とを備え、抽出した正相電流による2次の振動成分を逆相座標変換回路の逆相d軸電流および逆相q軸電流から除外して、第1の電流制御器において電流指令値と比較する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,三相交流電力系統に連系され,前記三相交流電力系統から電力を授受する電力変換装置の制御装置に関し,特に前記三相交流電力系統へ出力する逆相電流を制御する電力変換装置の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常運転状態における三相交流系統(以後,単に電力系統と称す)では、三相不平衡電圧成分である逆相電圧は三相平衡電圧成分である正相電圧に比べ十分に小さい。このため,ベクトル制御を実施する電力変換装置では、正相回転方向に座標変換して電力を制御する制御方式を採用しており、このことが通常運転状態において電力変換装置をベクトル制御するうえで支障になることは無かった。
【0003】
しかし,1線地絡や2線地絡など不平衡な系統事故時では、逆相電圧や逆相電流が大きく含まれる。この場合に、先の制御方式を適用して逆相電圧や逆相電流を正相回転方向に座標変換すると、2次の振動成分を生じる。他方、電力変換装置の制御装置として、出力電流を制御する電流制御系に積分制御が適用されていると、2次の振動成分により位相遅れや定常偏差が残ってしまうなど制御性能が低下してしまう。
【0004】
そこで,例えば非特許文献1ではベクトル制御ではなく正相電流と逆相電流を含む電流指令値を90°位相のずれた二相交流に逆座標変換し,二相交流信号上で電流制御を実施している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】加藤,伊藤,相原,生田目著「フリッカ抑制機能付き自励式無効電力補償装置」,日立論評,89巻2号,2007年,p204−207
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、特許文献1のようにベクトル制御を用いず交流信号を交流信号のまま制御する場合、あるいはベクトル制御を適用しても制御対象が振動している場合には、積分制御を適用しても位相遅れが発生し,定常偏差を0にするのが困難である。
【0007】
そこで本発明は,例えば,系統事故時などで電力系統の電圧が三相不平衡である場合でもベクトル制御を用いて電力変換装置と三相交流系統との間で良好に電力を変換することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の目的を達成するために本発明においては、三相交流電力系統に接続された電力変換装置の制御装置において,三相交流電力系統の系統電圧の逆相回転方向に出力電流をdqベクトル座標変換して逆相d軸電流および逆相q軸電流を求める逆相座標変換回路、逆相座標変換回路の逆相d軸電流および逆相q軸電流を帰還値とし、これら電流の指令値と比較して指令値に制御する第1の電流制御器、逆相座標変換回路の逆相d軸電流および逆相q軸電流に含まれる正相電流による2次の振動成分を抽出する第1の振動成分抽出回路とを備え、抽出した正相電流による2次の振動成分を逆相座標変換回路の逆相d軸電流および逆相q軸電流から除外して、第1の電流制御器において電流指令値と比較する。
【0009】
以上の目的を達成するために本発明においては、三相交流電力系統に接続された電力変換装置の制御装置において,三相交流電力系統の系統電圧の正相回転方向に出力電流をdqベクトル座標変換して正相d軸電流および正相q軸電流を求める正相座標変換回路、正相座標変換回路の正相d軸電流および正相q軸電流を帰還値とし、これら電流の指令値と比較して指令値に制御する第2の電流制御器、正相座標変換回路の正相d軸電流および正相q軸電流に含まれる逆相電流による2次の振動成分を抽出する第2の振動成分抽出回路とを備え、抽出した逆相電流による2次の振動成分を正相座標変換回路の正相d軸電流および正相q軸電流から除外して、第2の電流制御器において電流指令値と比較する。
【0010】
以上の目的を達成するために本発明においては、三相交流電力系統の系統電圧の逆相回転方向に出力電流をdqベクトル座標変換して逆相d軸電流および逆相q軸電流を求める逆相座標変換回路、逆相座標変換回路の逆相d軸電流および逆相q軸電流を帰還値とし、これら電流の指令値と比較して指令値に制御する逆相電流制御器、逆相座標変換回路の逆相d軸電流および逆相q軸電流に含まれる正相電流による2次の振動成分を抽出する第1の振動成分抽出回路、抽出した正相電流による2次の振動成分を逆相座標変換回路の逆相d軸電流および逆相q軸電流から除外して、逆相電流制御器に帰還値として与える第1の加算部、三相交流電力系統の系統電圧の正相回転方向に出力電流をdqベクトル座標変換して正相d軸電流および正相q軸電流を求める正相座標変換回路、正相座標変換回路の正相d軸電流および正相q軸電流を帰還値とし、これら電流の指令値と比較して指令値に制御する正相電流制御器、正相座標変換回路の正相d軸電流および正相q軸電流に含まれる逆相電流による2次の振動成分を抽出する第2の振動成分抽出回路、抽出した逆相電流による2次の振動成分を正相座標変換回路の正相d軸電流および正相q軸電流から除外して、正相電流制御器に帰還値として与える第2の加算部とを備える。
【0011】
また、第1の振動成分抽出回路は、第2の電流制御器の指令値である正相d軸電流指令値および正相q軸電流指令値を逆相回転方向に二度dqベクトル座標変換する回路である。
【0012】
また、第2の振動成分抽出回路は、第1の電流制御器の指令値である逆相d軸電流指令値および逆相q軸電流指令値を正相回転方向に二度dqベクトル座標変換する回路である。
【0013】
また、第1の振動成分抽出回路は、出力電流に含まれる正相電流振幅を抽出する正相電流振幅抽出器および系統電圧の二倍の周波数の正弦波信号および余弦波信号を出力する二次発振器を有し,正弦波信号および余弦波信号の位相は三相交流電力系統の系統電圧位相の2倍と出力電流の力率角の和であり,正相電流振幅抽出器の出力と余弦波信号の積および正相電流振幅抽出器の出力と正弦波信号の積を出力する回路である。
【0014】
また、第2の振動成分抽出回路は、出力電流に含まれる逆相電流振幅を抽出する逆相電流振幅抽出器および系統電圧の二倍の周波数の正弦波信号および余弦波信号を出力する二次発振器を有し,正弦波信号および余弦波信号の位相は系統電圧位相の−2倍と逆相電流の力率角の差であり,正相電流振幅抽出器の出力と余弦波信号の積および正相電流振幅抽出器の出力と正弦波信号の積を出力する回路である。
【0015】
また、正相電流振幅抽出器は,三相二相変換器により電力変換装置の出力電流を互いに90°位相のずれた二相の電流Ia,Ibに変換し,FFT演算を実施するFFT演算器により,二相の電流Ia,Ib各々の系統電圧Vsと同じ周波数f0の正弦波成分Iare,Ibreと余弦波成分Iaim,Ibimに分解し,IareとIbimとの和とIbreとIaimの差を入力として二乗平均演算器により二乗平均演算を実施し,出力電流の正相成分振幅を算出する。
【0016】
また、逆相電流振幅抽出器は,三相二相変換器により電力変換装置の出力電流を互いに90°位相のずれた二相の電流Ia,Ibに変換し,FFT演算を実施するFFT演算器により,Ia,Ib各々の系統電圧Vsと同じ周波数f0の正弦波成分Iare,Ibreと余弦波成分Iaim,Ibimに分解し,IbimとIareとの差とIbreとIaimの和を入力として二乗平均演算器により二乗平均演算を実施し,出力電流の逆相成分振幅のみを算出する。
【0017】
以上の目的を達成するために本発明においては、三相交流電力系統に変圧器を介して接続された電力変換装置の制御装置において,三相交流電力系統の系統電圧の逆相回転方向に出力電流をdqベクトル座標変換して逆相d軸電流および逆相q軸電流を求める逆相座標変換回路、逆相座標変換回路の逆相d軸電流および逆相q軸電流を帰還値とし、これら電流の指令値と比較して指令値に制御する逆相電流制御器、逆相座標変換回路の逆相d軸電流および逆相q軸電流に含まれる正相電流による2次の振動成分を抽出する第1の振動成分抽出回路、抽出した正相電流による2次の振動成分を逆相座標変換回路の逆相d軸電流および逆相q軸電流から除外して、逆相電流制御器に帰還値として与える第1の加算部、三相交流電力系統の系統電圧の正相回転方向に出力電流をdqベクトル座標変換して正相d軸電流および正相q軸電流を求める正相座標変換回路、正相座標変換回路の正相d軸電流および正相q軸電流を帰還値とし、これら電流の指令値と比較して指令値に制御する正相電流制御器、正相d軸電流指令値に変圧器のリアクトル値を乗じた値を正相q軸電流側の正相電流制御器出力から差し引き、正相q軸電流指令値に変圧器のリアクトル値を乗じた値を逆相d軸電流側の正相電流制御器出力に加算する補償回路を備えるとともに、逆相電流制御器の指令値を0に設定しておく。
【発明の効果】
【0018】
本発明の電力変換装置は,1線地絡事故や2線地絡事故など電力系統の電圧が三相不平衡の状態でも,正相電流および逆相電流を定常偏差0で制御でき制御性能が向上する。
【0019】
また,本発明の実施例では電力変換装置が正相電流だけを出力すればよい場合,電力変換装置の出力する逆相電流の電流指令値を0とすれば,電力系統の電圧が三相不平衡の状態でも電力変換装置の各相に流れる電流を三相平衡にできるため,装置容量を小さくすることができ,装置の小型化および低損失化が実現できる。
【0020】
また,本実施例によれば不平衡補償装置のように出力する逆相電流を制御する必要がある場合でも,逆相電流と正相電流を独立して制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例1の電力変換装置の制御装置の構成を示す図。
【図2】電力変換装置を含む電力系統の構成例を示す図。
【図3】本発明の実施例2の電力変換装置の制御装置の構成を示す図。
【図4】逆相電流振幅抽出器の1例を示す図。
【図5】正相電流振幅抽出器の1例を示す図。
【図6】本発明の実施例3の電力変換装置の制御装置の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下,本発明の実施例について,図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0023】
図2は,電力変換装置を含む電力系統の構成例を示す。
【0024】
本実施例の電力変換装置1は,直流コンデンサ111とIGBTやGCTなどの自己消弧形素子112を有する電圧形インバータ装置(以後,単にインバータ装置と称す)11と,インバータ装置11の出力電圧を制御するための出力電圧指令値Vcrを出力する制御装置12と,インバータ装置11の直流コンデンサ111の端子電圧Vdcを計測する直流電圧センサ15と,インバータ装置11と三相交流電力系統2を連系する漏れリアクタンス成分Xcをもつ連系用変圧器14と,インバータ装置11の出力する電流Icを測定する電流センサ16と,三相交流電力系統2の系統電圧Vsを測定する交流電圧センサ17と,制御装置12から与えられる出力電圧指令Vcrに応じてインバータ装置11の自己消弧形素子112のオン,オフを制御するためのゲートパルスGPを生成するPWM回路13を備えて構成される。
【0025】
なお,本実施例では電流センサ16は連系用変圧器14の三相交流電力系統2側(以後,一次側と称す)に設置してあるが,連系用変圧器14のインバータ装置11側(以後,二次側と称す)に設置してもよい。
【0026】
次に,電力変換装置1の動作について説明する。電力変換装置1の制御装置12は,インバータ装置11から直流コンデンサ111の端子電圧Vdcと,三相交流電力系統2の系統電圧Vsと,電力変換装置1の出力する電流Icを入力とし,インバータ装置11の出力電圧Vcの指令値Vcrを出力する。
【0027】
PWM回路13は,出力電圧指令値Vcrと三角波などのキャリアとの大小関係に基づき,インバータ装置11の自己消弧形素子112のオン,オフを制御するためのゲートパルスGPを出力する。
【0028】
インバータ装置11は,PWM回路13の出力するゲートパルスGPに基づきインバータ装置11の出力電圧Vcを連系用変圧器14へ出力することで,三相交流電力系統1との間で電力を変換する。
【0029】
次に,制御装置12の構成について述べる。図1は,図2で示した制御装置12の制御ブロックの概略を示した図である。ここでは、まず電力変換装置1のベクトル制御の基本的構成を説明し、その後で2次の振動成分に対する対応策を説明する。
【0030】
図1の制御装置12は,その実施する機能を大きく4つのブロックに分けて考えることができる。第1のブロックは、系統電圧Vsから系統電圧の正相電圧位相θを検出する位相検出部A(位相検出器21)である。第2のブロックは正相電流演算部Bであり、第3のブロックは逆相電流演算部Cである。第4のブロックは電流合成部Dである。このうち、正相電流演算部Bと逆相電流演算部Cは取り扱う電気量が相違するが、基本的に同一回路構成とされている。
【0031】
第1のブロックAの位相検出器21は、周知のPLL(Phase Locked Loop)回路やDFT(Discrete Fourier Transform)回路などにより、系統電圧Vsの正相電圧位相θを検出する。
【0032】
正相電流演算部Bでは、まず三相二相変換器51において、電力変換装置1の3相の出力電流Icを入力して、90度位相の相違する二相の電流IαとIβに変換する。さらに正相座標変換器22において、位相検出器21で求めた正相電圧位相θと、三相二相変換器51で求めた二相の電流IαとIβを用いて周知のdq座標変換を行い,正相回転方向に座標変換したd軸電流Id1(以後,単に正相d軸電流Id1と称す)および正相回転方向に座標変換したq軸電流Iq1(以後,単に正相q軸電流Iq1と称す)を算出する。ここで正相d軸電流Id1、正相q軸電流Iq1に付した番号「1」は、正相分であることを意味する。この正相電流演算部Bは、電力系統の正相電圧と同期した方向に座標変換した正相dqベクトル座標系として構成したものであり、以後,単に正相座標系と称することにする。
【0033】
同様に逆相電流演算部Cでは、まず三相二相変換器51において、電力変換装置1の3相の出力電流Icを入力して、90度位相の相違する二相の電流Iαと、Iβに変換する。さらに逆相座標変換器23において、位相検出器21で求めた正相電圧位相θと逆方向に回転する逆相電圧位相(−θ)と、三相二相変換器51で求めた二相の電流IαとIβを用いて周知のdq座標変換を行い,逆相回転方向に座標変換したd軸電流Id2(以後,単に逆相d軸電流Id2と称す)および逆相回転方向に座標変換したq軸電流Iq2(以後,単に逆相q軸電流Iq2と称す)を算出する。ここで逆相d軸電流Id2、逆相q軸電流Iq2に付した番号「2」は、逆相分であることを意味する。この逆相電流演算部Cは、電力系統の逆相電圧と同期した方向に座標変換した逆相dqベクトル座標系として構成したものであり、以後,単に逆相座標系と称することにする。
【0034】
なお,正相電流演算部Bあるいは逆相電流演算部Cで実施されるdq座標変換,三相二相変換,さらにはdq逆座標変換及び二相三相変換については周知であるため,ここでの詳しい説明は省略する。
【0035】
上記のようにして求められた正相d軸電流Id1、正相q軸電流Iq1、さらには逆相d軸電流Id2、逆相q軸電流Iq2は、三相交流系統が平衡状態にあるときには直流量として導出される。これらの直流量は、ベクトル制御の帰還信号であり、これらに対するベクトル制御の指令値(正相d軸電流指令値Id1r、正相q軸電流指令値Iq1r、さらには逆相d軸電流指令値Id2r、逆相q軸電流指令値Iq2r)が与えられて、電流制御系を構成する。
【0036】
正相電流演算部Bと逆相電流演算部Cの電流制御器28(28a、28b,28c,28d)は、その前段に設けた減算器AD(AD1,AD2,AD3,AD4)にベクトル制御の帰還信号と指令値を導入し、その差分に基づいて電流制御を行う。
【0037】
なお、電流制御器28aは、正相d軸電流Id1についての電流制御器、電流制御器28bは、正相q軸電流Iq1についての電流制御器、電流制御器28cは、逆相d軸電流Id2についての電流制御器、電流制御器28dは、逆相q軸電流Iq2についての電流制御器である。
【0038】
これらの電流制御器28の出力はそれぞれVd1、Vq1,Vd2,Vq2である。このうちVd1、Vq1の意味するものは、電力変換装置1の出力電流Icを電流指令値Id1r,Iq1rに制御するための正相d軸補正電圧(Vd1)、および正相q軸補正電圧(Vq1)である。またVd2,Vq2の意味するものは、電力変換装置1の出力電流Icを電流指令値Id2r,Iq2rに制御するための逆相d軸補正電圧(Vd2)、および逆相q軸補正電圧(Vq2)である。
【0039】
補正電圧Vd1、Vq1,Vd2,Vq2は、電流指令値と変圧器14の漏れリアクタンス成分Xcの積による干渉を排除してから、後段の制御に使用される。例えば、乗算器32aは正相d軸電流指令値Id1rと変圧器の漏れリアクタンス成分Xcを乗算したId1r×Xcを演算し、補償回路CP2において補正電圧Vq1から減算する。また乗算器32bは正相q軸電流指令値Iq1rと変圧器の漏れリアクタンス成分Xcを乗算したIq1r×Xcを演算し、補償回路CP1において補正電圧Vd1に加算する。
【0040】
同様に、乗算器32cは逆相d軸電流指令値Id2rと変圧器の漏れリアクタンス成分Xcを乗算したId2r×Xcを演算し、補償回路CP4において補正電圧Vq2から減算する。また乗算器32dは逆相q軸電流指令値Iq2rと変圧器の漏れリアクタンス成分Xcを乗算したIq2r×Xcを演算し、補償回路CP3において補正電圧Vd2に加算する。
【0041】
なお、電流制御器28に与えられるベクトル制御の指令値(正相d軸電流指令値Id1r、正相q軸電流指令値Iq1r、逆相d軸電流指令値Id2r、逆相q軸電流指令値Iq2r)は、直流電圧Vdcを一定に制御し、あるいは交流電圧を一定に維持するために作られる。指令値の作り方は本発明に直接関係しないため詳しい説明は省略するが、一般には上位制御系で作成された信号とされる。つまり、電力変換装置を電動機制御に適用する場合であれば、電動機の速度あるいはトルク制御に関する上位制御系において電流制御の指令値を作成する。また、電力変換装置により電圧制御を行う場合には、電圧制御系が上位制御系とされる。
【0042】
次に正相逆座標変換器29では、補償回路CP1の信号(Iq1r×Xcと補正電圧Vd1との加算値)と,補償回路CP2の信号(Id1r×Xcと補正電圧Vq1との減算値)と,系統電圧位相θを入力とし、周知の逆dq座標変換を行い、90度位相の相違する二相の電流IαとIβに逆変換する。続いて二相三相変換器52において、三相成分を復元し正相座標系における電力変換装置1の出力電圧指令値Vc1rを出力する。
【0043】
同様にして、逆相逆座標変換器30では、補償回路CP3の信号(Iq2r×Xcと補正電圧Vd2との加算値)と,補償回路CP4の信号(Id2r×Xcと補正電圧Vq2との減算値)と,系統電圧逆位相(−θ)を入力とし、周知の逆dq座標変換を行い、90度位相の相違する二相の電流IαとIβに逆変換する。続いて二相三相変換器52において、三相成分を復元し逆相座標系における電力変換装置1の出力電圧指令値Vc2rを出力する。
【0044】
最後に第4のブロックの電流合成部Dでの処理が行われる。ここで位相回転器31は,系統電圧Vsを入力とし,図1の連系用変圧器14の1次側の電圧位相を2次側の電圧位相になるように位相を回転させる。例えば,連系用変圧器14の1次側がスター巻線,2次側がΔ巻線の場合,位相を30度進ませればよい。ただし,前記連系用変圧器の各巻線は上記に限るものではない。そのうえで、位相回転器31の出力とVc1rとVc2rの加算値を、インバータ装置11の出力電圧指令値VcrとしてPWM回路12に出力する。
【0045】
ベクトル制御を実行する電力変換装置の制御装置は、通常は図1のように構成されている。本発明では、逆相電流による正相座標系における系統電圧周波数の2倍の変動成分(以後,単に逆相2次電流と称す)を再現する。また、正相電流による逆相座標系における系統電圧周波数の2倍の変動成分(以後,単に正相2次電流と称す)を再現する。また再現した逆相2次電流を正相電流から差し引き、再現した正相2次電流を逆相電流から差し引く。
【0046】
具体的には、1線地絡や2線地絡など不平衡系統事故時に、正相座標変換器22あるいは逆相座標変換器23の出力(正相d軸電流Id1、正相q軸電流Iq1、逆相d軸電流Id2、逆相q軸電流Iq2)に含まれる二次の振動成分を求めて、減算回路ad(ad1,ad2,ad3,ad4)で除外する。
【0047】
逆相2次電流と正相2次電流を再現するに当り、図1の実施例では電流指令値(正相d軸電流指令値Id1r、正相q軸電流指令値Iq1r、さらには逆相d軸電流指令値Id2r、逆相q軸電流指令値Iq2r)から、二次の振動成分を再現する。
【0048】
この再現処理を、正相電流演算部Bでは以下のように実施する。まず出力電流Icに逆相電流が含まれる場合,正相d軸電流Id1,正相q軸電流Iq1には逆相電流による系統電圧の2倍の周波数の振動成分が重畳している。
【0049】
本発明の正相電流演算部Bの処理では,インバータ装置11に出力させたいd軸およびq軸の逆相電流指令値Id2r,Iq2rを、電流制御器28c,28dの制御応答遅れを模擬するローパスフィルタLPF53a,53bに入力する。そして,正相座標変換器22を2段に構成して、これにより2度正相方向に座標変換する。このことで,逆相電流による系統電圧の2倍の周波数の振動成分を再現したd軸電流Id12,q軸電流Iq12(以後単に逆相再現d軸電流Id12,逆相再現q軸電流Iq12と称す)を得る。減算器ad1において逆相再現d軸電流Id12を正相d軸電流Id1から差し引き,また減算器ad2において逆相再現q軸電流Iq12を正相q軸電流Iq1から差し引くことで振動成分を除去することができる。
【0050】
この正相電流演算部Bでの考え方は要するに、正相電流に含まれる二次振動成分を逆相電流指令値から再現したことにある。またこの再現は、dq軸ごとに行われる。
【0051】
またこの再現処理を、逆相電流演算部Cでは以下のように実施する。まず出力電流Icに逆相電流が含まれる場合,逆相d軸電流Id2,逆相q軸電流Iq2には逆相電流による系統電圧の2倍の周波数の振動成分が重畳している。
【0052】
本発明の逆相電流演算部Cの処理では,インバータ装置11に出力させたいd軸およびq軸の正相電流指令値Id1r,Iq1rを、電流制御器28a,28bの制御応答遅れを模擬するローパスフィルタLPF53c,53dに入力する。そして,逆相座標変換器23を2段に構成して、これにより2度逆相方向に座標変換する。このことで,逆相電流による系統電圧の2倍の周波数の振動成分を再現したd軸電流Id22,q軸電流Iq22(以後単に正相再現d軸電流Id22,正相再現q軸電流Iq22と称す)を得る。減算器ad3において正相再現d軸電流Id22を逆相d軸電流Id2から差し引き,また減算器ad4において正相再現q軸電流Iq22を逆相q軸電流Iq2から差し引くことで振動成分を除去することができる。
【0053】
この逆相電流演算部Cでの考え方は要するに、逆相電流に含まれる二次振動成分を正相電流指令値から再現したことにある。またこの再現は、dq軸ごとに行われる。
【0054】
この結果、電流制御器28での演算は、二次振動成分の影響を受けないものとすることができる。
【0055】
本実施例の構成にすることで,正相座標系における逆相成分による2次の振動成分、および逆相座標系における正相成分による2次の振動成分を除去でき,不平衡補償装置のように出力する逆相電流を制御する必要がある場合でも,逆相電流と正相電流を独立して制御することができる。
【0056】
また,電流制御器28a〜28dに、積分制御を適用することができるので、定常偏差を0とすることができ,制御性能を向上できる。
【0057】
また,電力変換装置が正相電流だけを出力すればよい場合,電力変換装置の出力する逆相電流の電流指令値を0とすれば,電力系統の電圧が三相不平衡の状態でも電力変換装置の各相に流れる電流を三相平衡にできるため,装置容量を小さくすることができ,装置の小型化および低損失化が実現できる。
【0058】
なお,図1の説明において、ここでは乗算器32a,32bの入力は指令値Id1rとIq1rとしたが,Id1,iq1からId12,iq12をそれぞれ差し引いた信号としてもよい。同様に乗算器32c,32dの入力は指令値Id2refとIq2refとしたが,Id2,iq2からId22,iq22をそれぞれ差し引いた信号としてもよい。
【実施例2】
【0059】
図3は,実施例2に係る電力変換装置1の制御装置12の制御ブロックの概略を示した図である。
【0060】
以下実施例2の構成および動作について説明するが、実施例1と同じまたは相当する部分については説明を省略し,異なる部分のみを説明する。
【0061】
実施例2では,正相座標系における逆相電流、および逆相座標系における正相電流による系統電圧の2倍の振動成分を推定する手法が実施例1とは異なる。他の回路部分は、実施例1と同じである。
【0062】
実施例2における2次電流推定の考え方について、式を用いて説明する。まず,三相の出力電流Icを三相二相変換した二相電流をiα、iβ、系統電圧の正相電圧位相をθとすると,出力電流Icを逆相回転方向にdq座標変換したd軸逆相電流id2、q軸逆相電流iq2は二相電流iαとiβを用いて(1)式で表すことができる。
【0063】
【数1】

またここで,二相電流iαとiβは、正相電流振幅I1,力率角θ(以後単に正相力率角)の正相電流が含まれており、(2)式で示すことができる。
【0064】
【数2】

(1)(2)式の関係から,d軸逆相電流id2とq軸逆相電流iq2は、正相電流を用いて(3)式で表すことができる。
【0065】
【数3】

(3)式は、d軸逆相電流id2とq軸逆相電流iq2が,その大きさはI1つまり正相電流の振幅であり,位相は正相電圧位相θの2倍と正相力率角θの和である信号として求められることを示している。
【0066】
また同様に,出力電流Icを正相回転方向にdq座標変換したd軸正相電流id1、q軸正相電流iq1は、二相電流iαとiβを用いて(4)式で表すことができる。
【0067】
【数4】

また二相電流iα、iβは、逆相電流振幅I2,力率角θ(以後単に逆相力率角)の逆相電流が含まれており、(5)式で示すことができる。
【0068】
【数5】

このとき(4)式から,d軸正相電流id1、q軸正相電流iq1は、(6)式で表すことができる。
【0069】
【数6】

(6)式は,d軸正相電流id1、q軸正相電流iq1が、その大きさはI2,つまり逆相電流の振幅であり,位相は逆相電圧位相θの2倍と逆相力率角θの差である信号として求められることを示している。
【0070】
以上の関係から,正相座標系における逆相電流、および逆相座標系における正相電流による系統電圧の2倍の振動成分を再現するには,正相電流および逆相電流の振幅と振動成分と同期した正弦波,余弦波信号を作ればよいことがわかる。
【0071】
上記の解析を元に本発明の第2の実施例では,正相電流演算部Bに、出力電流Icの逆相成分のみの振幅である逆相電流振幅I2を抽出する逆相電流振幅抽出器60と,逆相電流振幅抽出器60から出力される逆相電流振幅I2と系統電圧の逆相電圧位相θと前記逆相力率角θを入力とし,正相座標系における逆相電流による二次の振動電流を再現した信号Id12,Iq12を出力する逆相2次発振器63とを備える。逆相2次発振器61では、これらの入力を用いて(7)(8)式を演算する。
【0072】
[数7]
Id12= I×cos(2θ+θ) (7)
【0073】
[数8]
Iq12= I×sin(2θ+θ) (8)
上記の解析を元に本発明の第2の実施例では,逆相電流演算部Cに、出力電流Icの正相成分のみの振幅である正相電流振幅I1を抽出する正相電流振幅抽出器62と,正相電流振幅抽出器62から出力される正相電流振幅I1と系統電圧の正相電圧位相θと正相力率角θを入力とし,逆相座標系における正相電流による二次の振動電流を再現した信号Id22,Iq22を出力する正相2次発振器63とを備える。正相2次発振器63では、これらの入力を用いて(9)(10)式を演算する。
【0074】
[数9]
Id22= I×cos(2θ+θ) (9)
【0075】
[数10]
Iq22= I×sin(2θ+θ) (10)
その上で本発明の第2の実施例では、正相2次発振器61と逆相2次発振器63の出力をそれぞれd軸正相電流Id1,q軸正相電流Iq1,d軸逆相電流Id2,q軸逆相電流Iq2から差し引くことで振動成分を除去することができる。
【0076】
図4に逆相電流振幅抽出器60の一例を示す。逆相電流振幅抽出器60では、まず三相二相変換演算器41により三相二相変換演算を実施し,三相電流である出力電流Icを互いに90°位相のずれた二相の電流Ia,Ibに変換する。
【0077】
次に,周知のFFT(Fast Fourier Transform)演算を実施するFFT演算器42により,Ia,Ib各々の系統電圧Vsと同じ周波数f0の正弦波成分Iare,Ibreと、余弦波成分Iaim,Ibimに分解する。
【0078】
次に,IareとIbimの差と、IbreとIaimの和を入力として二乗平均演算器43により二乗平均演算を実施する。これにより、出力電流の逆相成分のみの振幅である逆相電流振幅I2を算出することができる。
【0079】
また,図5は正相電流振幅抽出器62の一例である。正相電流振幅抽出器62は、三相二相変換演算器41により周知の三相二相変換演算を実施し,三相電流である出力電流Icを互いに90°位相のずれた二相の電流Ia,Ibに変換する。
【0080】
次に,周知のFFT演算を実施するFFT演算器42により,Ia,Ib各々の系統電圧Vsと同じ周波数f0の正弦波成分Iare,Ibreと余弦波成分Iaim,Ibimに分解する。
【0081】
次に,IareとIbimとの和とIbreとIaimの差を入力として二乗平均演算器43により二乗平均演算を実施することで出力電流の正相成分のみの振幅である正相電流振幅I1を算出することができる。
【0082】
以上,本実施例の構成にすることで,正相座標系における逆相成分による2次の振動成分、および逆相座標系における正相成分による2次の振動成分を除去でき,不平衡補償装置のように出力する逆相電流を制御する必要がある場合でも,前記逆相電流と正相電流を独立して制御することができる。
【0083】
また,電力変換装置が正相電流だけを出力すればよい場合,前記電力変換装置の出力する逆相電流の電流指令値を0とすれば,電力系統の電圧が三相不平衡の状態でも電力変換装置の各相に流れる電流を三相平衡にできるため,装置容量を小さくすることができ,装置の小型化および低損失化が実現できる。
【0084】
また,電流制御器28a〜28dに周知の積分制御が適用することで定常偏差を0とすることができ,制御性能を向上できる。
【実施例3】
【0085】
図6は,本発明の実施例3に係る電力変換装置1の制御装置12の制御ブロックの概略を示した図である。図6の実施例3は、基本的に図3の実施例2の考え方を踏襲しているので、以下においては実施例2と同じまたは相当する部分についての説明を省略し,異なる部分のみを説明する。
【0086】
図6で示す電力変換装置1の制御装置12の制御ブロックは,図3で示した制御ブロックのうち逆相電流振幅抽出器60および逆相二次発振器61を省略し,かつd軸逆相電流指令値Id2rを0とし,q軸逆相電流指令値Iq2rを0とするところが異なる。
【0087】
次に,制御装置12の動作および効果について,実施例2と異なる部分のみ述べる。まず、図6の実施例3では、正相電流演算部Bに逆相電流振幅抽出器60と逆相二次発振器61を備えていない。このため,Id1およびIq1には逆相電流による2次の振動成分を含む。かつこの回路構成では、これを除去することはできない。
【0088】
これに対し、逆相電流演算部Cでは、d軸逆相電流指令値Id2r,q軸逆相電流指令値Iq2rを0としているので,電力変換装置の出力電流Icに含まれる逆相電流を,電流制御器28a,28bの制御応答時間後には抑制可能である。このため,Id1およびIq1に含まれる逆相電流による2次の振動成分は小さくなる。
【0089】
この結果、電力変換装置1の制御性能に大きな影響は与えず,逆相電流振幅抽出器60および逆相二次発振器61を削減できるため制御装置12の演算負荷低減が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は,IGBTやGCTなどの自己消弧形素子を用いた電力変換装置のうち特に,逆相電流を制御可能な機能を有する電力変換装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0091】
1:電力変換装置
2:三相交流系統
11:インバータ装置
12:制御装置
13:PWM回路
14:連系用変換器
15:直流電圧センサ
16:電流センサ
17:交流電圧センサ
21:位相検出器
22:正相座標変換器
23:逆相座標変換器
28a〜28d:電流制御器
29:正相逆座標変換器
30:逆相逆座標変換器
31:位相回転器
32a〜d:乗算器
41:三相二相変換器
42:FFT演算器
43:二乗平均演算器
51:三相二相変換器
52:二相三相変換器
60:逆相電流振幅抽出器
61:逆相二次発振器
62:正相電流振幅抽出器
63:正相二次発振器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相交流電力系統に接続された電力変換装置の制御装置において,
前記三相交流電力系統の系統電圧の逆相回転方向に前記出力電流をdqベクトル座標変換して逆相d軸電流および逆相q軸電流を求める逆相座標変換回路、該逆相座標変換回路の逆相d軸電流および逆相q軸電流を帰還値とし、これら電流の指令値と比較して指令値に制御する第1の電流制御器、前記逆相座標変換回路の逆相d軸電流および逆相q軸電流に含まれる正相電流による2次の振動成分を抽出する第1の振動成分抽出回路とを備え、抽出した正相電流による2次の振動成分を前記逆相座標変換回路の逆相d軸電流および逆相q軸電流から除外して、前記第1の電流制御器において電流指令値と比較することを特徴とする電力変換装置の制御装置。
【請求項2】
三相交流電力系統に接続された電力変換装置の制御装置において,
前記三相交流電力系統の系統電圧の正相回転方向に前記出力電流をdqベクトル座標変換して正相d軸電流および正相q軸電流を求める正相座標変換回路、該正相座標変換回路の正相d軸電流および正相q軸電流を帰還値とし、これら電流の指令値と比較して指令値に制御する第2の電流制御器、前記正相座標変換回路の正相d軸電流および正相q軸電流に含まれる逆相電流による2次の振動成分を抽出する第2の振動成分抽出回路とを備え、抽出した逆相電流による2次の振動成分を前記正相座標変換回路の正相d軸電流および正相q軸電流から除外して、前記第2の電流制御器において電流指令値と比較することを特徴とする電力変換装置の制御装置。
【請求項3】
三相交流電力系統に接続された電力変換装置の制御装置において,
前記三相交流電力系統の系統電圧の逆相回転方向に前記出力電流をdqベクトル座標変換して逆相d軸電流および逆相q軸電流を求める逆相座標変換回路、該逆相座標変換回路の逆相d軸電流および逆相q軸電流を帰還値とし、これら電流の指令値と比較して指令値に制御する逆相電流制御器、前記逆相座標変換回路の逆相d軸電流および逆相q軸電流に含まれる正相電流による2次の振動成分を抽出する第1の振動成分抽出回路、抽出した正相電流による2次の振動成分を前記逆相座標変換回路の逆相d軸電流および逆相q軸電流から除外して、前記逆相電流制御器に帰還値として与える第1の加算部、前記三相交流電力系統の系統電圧の正相回転方向に前記出力電流をdqベクトル座標変換して正相d軸電流および正相q軸電流を求める正相座標変換回路、該正相座標変換回路の正相d軸電流および正相q軸電流を帰還値とし、これら電流の指令値と比較して指令値に制御する正相電流制御器、前記正相座標変換回路の正相d軸電流および正相q軸電流に含まれる逆相電流による2次の振動成分を抽出する第2の振動成分抽出回路、抽出した逆相電流による2次の振動成分を前記正相座標変換回路の正相d軸電流および正相q軸電流から除外して、前記正相電流制御器に帰還値として与える第2の加算部とを備えることを特徴とする電力変換装置の制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電力変換装置の制御装置において,
前記第1の振動成分抽出回路は、第2の電流制御器の指令値である正相d軸電流指令値および正相q軸電流指令値を逆相回転方向に二度dqベクトル座標変換する回路であることを特徴とする電力変換装置の制御装置。
【請求項5】
請求項3に記載の電力変換装置の制御装置において,
前記第2の振動成分抽出回路は、第1の電流制御器の指令値である逆相d軸電流指令値および逆相q軸電流指令値を正相回転方向に二度dqベクトル座標変換する回路であることを特徴とする電力変換装置の制御装置。
【請求項6】
請求項3に記載の電力変換装置の制御装置において,
前記第1の振動成分抽出回路は、前記出力電流に含まれる正相電流振幅を抽出する正相電流振幅抽出器および系統電圧の二倍の周波数の正弦波信号および余弦波信号を出力する二次発振器を有し,前記正弦波信号および前記余弦波信号の位相は前記三相交流電力系統の系統電圧位相の2倍と前記出力電流の力率角の和であり,前記正相電流振幅抽出器の出力と前記余弦波信号の積および前記正相電流振幅抽出器の出力と前記正弦波信号の積を出力する回路であることを特徴とする電力変換装置の制御装置。
【請求項7】
請求項3に記載の電力変換装置の制御装置において,
前記第2の振動成分抽出回路は、前記出力電流に含まれる逆相電流振幅を抽出する逆相電流振幅抽出器および系統電圧の二倍の周波数の正弦波信号および余弦波信号を出力する二次発振器を有し,前記正弦波信号および前記余弦波信号の位相は前記系統電圧位相の−2倍と前記逆相電流の力率角の差であり,前記正相電流振幅抽出器の出力と前記余弦波信号の積および前記正相電流振幅抽出器の出力と前記正弦波信号の積を出力する回路であることを特徴とする電力変換装置の制御装置。
【請求項8】
請求項6に記載の電力変換装置の制御装置において,
前記正相電流振幅抽出器は,三相二相変換器により前記電力変換装置の出力電流を互いに90°位相のずれた二相の電流Ia,Ibに変換し,FFT演算を実施するFFT演算器により,二相の電流Ia,Ib各々の系統電圧Vsと同じ周波数f0の正弦波成分Iare,Ibreと余弦波成分Iaim,Ibimに分解し,前記IareとIbimとの和とIbreとIaimの差を入力として二乗平均演算器により二乗平均演算を実施し,出力電流の正相成分振幅を算出することを特徴とした電力変換装置の制御装置。
【請求項9】
請求項7に記載の電力変換装置の制御装置において,
前記逆相電流振幅抽出器は,三相二相変換器により前記電力変換装置の出力電流を互いに90°位相のずれた二相の電流Ia,Ibに変換し,FFT演算を実施するFFT演算器により,Ia,Ib各々の系統電圧Vsと同じ周波数f0の正弦波成分Iare,Ibreと余弦波成分Iaim,Ibimに分解し,前記IbimとIareとの差とIbreとIaimの和を入力として二乗平均演算器により二乗平均演算を実施し,出力電流の逆相成分振幅のみを算出することを特徴とした電力変換装置の制御装置。
【請求項10】
三相交流電力系統に変圧器を介して接続された電力変換装置の制御装置において,
前記三相交流電力系統の系統電圧の逆相回転方向に前記出力電流をdqベクトル座標変換して逆相d軸電流および逆相q軸電流を求める逆相座標変換回路、該逆相座標変換回路の逆相d軸電流および逆相q軸電流を帰還値とし、これら電流の指令値と比較して指令値に制御する逆相電流制御器、前記逆相座標変換回路の逆相d軸電流および逆相q軸電流に含まれる正相電流による2次の振動成分を抽出する第1の振動成分抽出回路、抽出した正相電流による2次の振動成分を前記逆相座標変換回路の逆相d軸電流および逆相q軸電流から除外して、前記逆相電流制御器に帰還値として与える第1の加算部、
前記三相交流電力系統の系統電圧の正相回転方向に前記出力電流をdqベクトル座標変換して正相d軸電流および正相q軸電流を求める正相座標変換回路、該正相座標変換回路の正相d軸電流および正相q軸電流を帰還値とし、これら電流の指令値と比較して指令値に制御する正相電流制御器、前記正相d軸電流指令値に前記変圧器のリアクトル値を乗じた値を正相q軸電流側の正相電流制御器出力から差し引き、前記正相q軸電流指令値に前記変圧器のリアクトル値を乗じた値を逆相d軸電流側の正相電流制御器出力に加算する補償回路を備えるとともに、前記逆相電流制御器の指令値を0に設定しておくことを特徴とする電力変換装置の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−21848(P2013−21848A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154471(P2011−154471)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】