説明

電力変換装置

【課題】半導体モジュール及び冷却管への過負荷を防ぎつつ、半導体モジュールの冷却効率を高めることができる電力変換装置を提供すること。
【解決手段】電力変換回路の一部を構成する半導体モジュール21と、半導体モジュール21を冷却する冷却管22とを交互に積層してなる半導体積層ユニット2を有する電力変換装置1。半導体積層ユニット2の積層方向の端部には、半導体積層ユニット2を積層方向に加圧する加圧部材3が配されている。加圧部材3は、冷却管22の主面221に当接する当接面311を有する当接プレート31と、当接プレート31における当接面311と反対側の面に配されたばね部材32とを有する。ばね部材32は、加圧方向へ変形する際の弾性力が、減圧方向へ復元する際の弾性力よりも大きくなるようなヒステリシスを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換回路の一部を構成する半導体モジュールと、該半導体モジュールを冷却する冷却管とを交互に積層してなる半導体積層ユニットを有する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、DC−DCコンバータ回路やインバータ回路等の電力変換回路は、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車等の動力源である交流モータに通電する駆動電流の生成に用いられることがある。
一般に、電気自動車やハイブリッド自動車等では、交流モータから大きな駆動トルクを確保するため大きな駆動電流が必要となってきている。
それ故、その交流モータ向けの駆動電流を生成する上記電力変換回路においては、該電力変換回路を構成するIGBT等の電力用半導体素子を含む半導体モジュールからの発熱が大きくなる傾向にある。
【0003】
そこで、図9に示すごとく、電力変換回路を構成する複数の半導体モジュール921を均一に冷却することができるように、冷却媒体の供給及び排出を担う一対のヘッダ923の間に多数の冷却管922が配置されている電力変換装置9が提案されている(特許文献1参照)。そして、該電力変換装置9は、冷却管922の間に半導体モジュール921を挟持した半導体積層ユニット92と、該半導体積層ユニット92の積層方向の端部に半導体積層ユニット92を積層方向に加圧するばね部材932とを有する。
【0004】
また、ばね部材932の両端部933は、電力変換装置9のケース911内に固定された固定ピン913に係止させてあり、ばね部材932は、その中央部において、冷却管922と半導体モジュール921とを積層方向に押圧するように付勢された状態で配設されている。
【0005】
上記ばね部材932を配設するに当たっては、電力変換装置9のケース911内に半導体積層ユニット92を配置した後、ばね部材932を半導体積層ユニット92の積層方向の端部に配置する。次いで、ばね部材932を変位させつつ、ばね部材932の中央部分において半導体積層ユニット92を積層方向に押圧する。そして、ばね部材932の両端部933の後方位置におけるケース911内に固定ピン913を固定する。
次いで、ばね部材932を減圧方向に復元させながら、ばね部材932の両端部933を固定ピン913に支承させる。これにより、ばね部材932は、所定の変位において、所定の押圧力を半導体積層ユニット92に与えた状態で落ち着く。
【0006】
ここで、電力変換装置9の小型化の要請から、上記ばね部材932の配設スペースを大きくとることは困難であるため、ばね部材932による半導体積層ユニット92への押圧力を充分に確保するためには、変位が小さくても大きな弾性力が得られるばね部材932を用いる必要がある。
【0007】
しかしながら、変位に対する弾性力の変化が大きいばね部材932を用いると、半導体積層ユニット92への押圧力の調整が困難となるという問題がある。即ち、小さな変位で大きな弾性力変化が生ずるため、所望の押圧力に調整することが困難となる。
そして、ばね部材932の弾性力は、大きすぎると、半導体モジュール921や冷却管922に負荷がかかりすぎ、変形、損傷等の原因となるおそれがある。一方、弾性力が小さすぎると、半導体モジュール921と冷却管922との密着を充分に確保することができず、両者間の伝熱効率が不充分となり、半導体モジュール921の冷却効率が不充分となるおそれがある。
【0008】
【特許文献1】特開2005−143244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、半導体モジュール及び冷却管への過負荷を防ぎつつ、半導体モジュールの冷却効率を高めることができる電力変換装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、電力変換回路の一部を構成する半導体モジュールと、該半導体モジュールを冷却する冷却管とを交互に積層してなる半導体積層ユニットを有する電力変換装置であって、
上記半導体積層ユニットの積層方向の端部には、該半導体積層ユニットを積層方向に加圧する加圧部材が配されており、
該加圧部材は、上記冷却管の主面に当接する当接面を有する当接プレートと、該当接プレートにおける上記当接面と反対側の面に配されたばね部材とを有し、
上記ばね部材は、加圧方向へ変形する際の弾性力が、減圧方向へ復元する際の弾性力よりも大きくなるようなヒステリシスを有することを特徴とする電力変換装置にある(請求項1)。
【0011】
次に、本発明の作用効果につき説明する。
上記ばね部材は、加圧方向へ変形する際の弾性力が、減圧方向へ復元する際の弾性力よりも大きくなるようなヒステリシスを有する。そのため、同じ変位において、ばね部材を加圧する際には大きな弾性力が作用し、ばね部材を減圧する際には比較的小さな弾性力が作用する。従って、半導体積層ユニットの端部に加圧部材を配設するにあたり、ばね部材を変位させながら半導体積層ユニットを積層方向に押圧する際には、狭いスペースにおいても、充分な押圧力を半導体積層ユニットに作用させることができる。これにより、半導体モジュールと冷却管との密着を充分に確保することができる。
【0012】
そして、半導体積層ユニットに大きな押圧力を与えた後、ばね部材を減圧方向にある程度復元させた状態で、押圧部材が電力変換装置に組み付けられる。このとき、ばね部材の変位量に対する弾性力の変化が小さいため、所望の押圧力を半導体積層ユニットに与えた状態で、ばね部材を組付けることができる。即ち、半導体積層ユニットへ与える押圧力を容易に調整することができる。これにより、半導体モジュールや冷却管に過負荷を与えることを防ぎつつ、半導体モジュールと冷却管との間の密着を確保することができる。そのため、半導体モジュールや冷却管の損傷、変形を防ぎつつ、半導体モジュールの冷却効率を向上させることができる。
【0013】
以上のごとく、本発明によれば、半導体モジュール及び冷却管への過負荷を防ぎつつ、半導体モジュールの冷却効率を高めることができる電力変換装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明(請求項1)において、上記電力変換装置としては、例えば、DC−DCコンバータやインバータ等がある。また、上記電力変換装置は、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車等の動力源である交流モータに通電する駆動電流の生成に用いることができる。
なお、上記半導体モジュールと上記冷却管とは、直接密着していてもよいし、絶縁材等を介して密着していてもよい。
【0015】
また、上記ばね部材は、上記電力変換装置に組み付けられた状態の変位において、加圧方向へ変形する際の弾性力が、減圧方向へ復元する際の弾性力の1.05倍以上であることが好ましい(請求項2)。
この場合には、半導体積層ユニットを押圧する際のばね部材の弾性力と、加圧部材をセットする際のばね部材の弾性力との差を充分に確保することができる。これにより、加圧時には、狭いスペースにおいても半導体積層ユニットを大きな力で押圧することができ、半導体モジュールと冷却管との密着を充分に確保することができる。一方、加圧部材をセットする際には、ばね部材の弾性力の調整を行いやすく、所望の押圧力で半導体積層ユニットを押圧することができる。
そのため、一層容易に、半導体モジュール及び冷却管への過負荷を防ぎつつ、半導体モジュールの冷却効率を高めることができる。
【0016】
また、上記ばね部材は、上記電力変換装置に組み付けられた状態の変位において、加圧方向へ変形する際の単位変位量当りの弾性力の変化量が、減圧方向へ復元する際の単位変位量当りの弾性力の変化量の1.05倍以上であることが好ましい(請求項3)。
この場合には、半導体積層ユニットを押圧する際のばね部材の変位に対する弾性力の変化と、加圧部材をセットする際のばね部材の変位に対する弾性力の変化との差を充分に確保することができる。これにより、加圧時には、ばね部材の変位を大きくすることが困難な狭いスペースにおいても、半導体モジュールと冷却管との密着を充分に確保することができる。一方、加圧部材をセットする際には、ばね部材の弾性力の調整を行いやすく、所望の押圧力で半導体積層ユニットを押圧することができる。
そのため、一層容易に、半導体モジュール及び冷却管への過負荷を防ぎつつ、半導体モジュールの冷却効率を高めることができる。
【0017】
また、上記ばね部材は、複数枚の板ばねを積層してなることが好ましい(請求項4)。
この場合には、上述したようなヒステリシスを有するばね部材を容易に得ることができる。
【0018】
また、上記ばね部材は、上記当接プレートに当接する前方板ばねと、該前方板ばねの後方に配された後方板ばねとからなり、上記前方板ばねは、少なくとも該前方板ばねの両端部において上記後方板ばねに接触していることが好ましい(請求項5)。
この場合には、上述したようなヒステリシスを有するばね部材を一層容易に得ることができる。
【実施例】
【0019】
本発明の実施例にかかる電力変換装置につき、図1〜図5を用いて説明する。
本例の電力変換装置1は、図1に示すごとく、電力変換回路の一部を構成する半導体モジュール21と、該半導体モジュール21を冷却する冷却管22とを交互に積層してなる半導体積層ユニット2を有する。
【0020】
半導体積層ユニット2の積層方向の端部には、該半導体積層ユニット2を積層方向に加圧する加圧部材3が配されている。
該加圧部材3は、冷却管22の主面221に当接する当接面311を有する当接プレート31と、該当接プレート31における当接面311と反対側の面に配されたばね部材32とを有する。
【0021】
そして、図4に示すごとく、ばね部材32は、加圧方向へ変形する際の弾性力が、減圧方向へ復元する際の弾性力よりも大きくなるようなヒステリシスを有する。
図4において、実線L1が加圧時におけるばね部材32の変位と弾性力との関係を示し、破線L2が減圧時におけるばね部材32の変位と弾性力との関係を示す。なお、図4に示すばね特性は一例であって、本発明におけるばね部材32は、このばね特性を有するものに限られるものではない。
【0022】
また、ばね部材32は、電力変換装置1に組み付けられた状態の変位において、加圧方向へ変形する際の弾性力が、減圧方向へ復元する際の弾性力の1.05倍以上である。
また、ばね部材32は、電力変換装置1に組み付けられた状態の変位において、加圧方向へ変形する際の単位変位量当りの弾性力の変化量(L1の傾き)が、減圧方向へ復元する際の単位変位量当りの弾性力の変化量(L2の傾き)の1.05倍以上である。
【0023】
図4に示すばね特性を有するばね部材32において、例えば組み付け状態の変位が4.3mmの場合、加圧方向へ変形する際の弾性力は2200Nであり、減圧方向へ復元する際の弾性力は1900Nである。また、加圧方向へ変形する際の単位変位量当りの弾性力の変化量(L1の傾き)は512N/mmであり、減圧方向へ復元する際の単位変位量当りの弾性力の変化量(L2の傾き)は442N/mmである。
【0024】
また、図2、図3に示すごとく、ばね部材32は、複数枚の板ばねを積層してなる。即ち、ばね部材32は、当接プレート31に当接する前方板ばね33と、該前方板ばね33の後方に配された後方板ばね34とからなる。前方板ばね33は、少なくとも前方板ばね33の両端部331において後方板ばね34に接触している。また、前方板ばね33と後方板ばね34とは、互いにリベット(図示略)によって留め付けられている。
【0025】
後方板ばね34は、中央部が大きな円弧状に湾曲してなると共に、長さ方向の両端部が小さな円弧状に湾曲してなる。また、前方板ばね33は、円弧状に湾曲してなり、その曲率半径は、上記後方板ばね34の中央部における円弧の曲率半径よりも若干小さい。そして、前方板ばね33は、後方板ばね34の中央部の前方に重ね合わせるように配置されている。これにより、前方板ばね33は、その両端部331において後方板ばね34に当接する。
【0026】
また、当接プレート31は、半導体積層ユニット2の積層方向の端部に配された冷却管22の主面に面接触できるような平坦な当接面311を有する。
そして、当接プレート31及びばね部材32は、いずれも、炭素工具鋼(SK5)等の金属からなる。
【0027】
また、加圧部材3は、図1に示すごとく、ばね部材32の中央部を当接プレート31に当接させ、当接プレート31の当接面311を半導体積層ユニット2に当接させた状態で電力変換装置1内に組み付けられる。また、ばね部材32の両端部321を電力変換装置1のケース11内に固定された2個の固定ピン13に係止させている。そして、ばね部材32は、中央部において、当接プレート31を介して半導体積層ユニット2を積層方向に押圧するように付勢された状態で配設されている。
【0028】
また、図1に示すごとく、半導体積層ユニット2においては、半導体モジュール21を両面から挟持するように冷却管22を複数配設してなる。即ち、冷却管22と半導体モジュール21とが交互に積層されている。各冷却管22は、内部に冷媒流路(図示略)を設けてなる扁平形状の管である。この冷媒流路に、例えばエチレングリコール系の不凍液を混入した水、水やアンモニア等の自然冷媒、フロリナート等のフッ化炭素系冷媒、HCFC123、HFC134a等のフロン系冷媒、メタノール、アルコール等のアルコール系冷媒、アセトン等のケトン系冷媒等の冷却媒体を流通させることができるよう構成してある。
【0029】
また、複数の冷却管22の両端をそれぞれ連結するように連結パイプ222を配置し、2箇所のヘッダ部223を形成してある。また、該2箇所のヘッダ部223の端部には、半導体積層ユニット2の一方の端部に配された冷却管22に接続された、冷媒導入口224と冷媒排出口225とがそれぞれ設けてある。
【0030】
これらの冷却管22と連結パイプ222と冷媒導入口224と冷媒排出口225とによって、アルミニウム製の冷却器220が構成されている。
そして、半導体モジュール21は、冷却器220における隣り合う冷却管221の間に2個づつ並列配置された状態で挟持されている。半導体モジュール21は両面に放熱板を露出させており、この放熱板と扁平形状の上記冷却管22の主面221とを密着させることにより、両者の間で熱交換を行うことができるよう構成されている。
なお、冷却器220においては、例えば連結パイプ222を蛇腹状にしたり、連結パイプ222と冷却管22との取付部にダイヤフラム部を設けたりすることにより、隣り合う冷却管22の間の間隔をある程度変化させることができるよう構成してある。
【0031】
上記加圧部材3を配設するに当たっては、電力変換装置1のケース11内に半導体積層ユニット2を配置した後、加圧部材3を半導体積層ユニット2の積層方向の端部に配置する。次いで、ばね部材32を変位させつつ、ばね部材32の中央部分において当接プレート31を介して半導体積層ユニット2を積層方向に押圧する。そして、ばね部材32の両端部321の後方位置におけるケース11内に固定ピン13を固定する。
【0032】
次いで、ばね部材32を減圧方向に復元させながら、ばね部材32の両端部321を固定ピン13に支承させる。これにより、ばね部材32は、所定の変位において、所定の押圧力を半導体積層ユニット2に与えた状態で落ち着く。
このようにして、加圧部材3によって半導体積層ユニット2を積層方向に押圧した状態で、電力変換装置1を構成する。
【0033】
なお、電力変換装置1は、例えば、DC−DCコンバータやインタバータ等であり、電気自動車やハイブリッド自動車等の動力源である交流モータに通電する駆動電流の生成に用いることができる。また、電力変換装置1は、半導体積層ユニット2のほか、半導体モジュール21に制御信号を入力する図示しない制御基板や、コンデンサやリアクトル等から構成される図示しない電力回路等を有している。
【0034】
また、図4に示すばね部材32のばね特性の測定は、以下の方法によって測定した。
即ち、図5に示すごとく、下側加圧治具41にばね部材32を載置する。このとき、ばね部材32の中央部が下側加圧治具41に当接するようにする。そして、ばね部材32の両端部321の上に、調整治具42をそれぞれ載置する。更に、この調整治具42の上から、上側加圧治具43を載置する。
【0035】
上記調整治具42は、上側加圧治具43の下面に対してスライド可能なコロ421を有している。これにより、ばね部材32が変形するに伴い両端部321の間の距離が変化したときにも、加圧方向以外の力がばね部材32にかからないようにして、正確な測定値を得ることができるようにしてある。
【0036】
上記の状態で、矢印fにて示すごとく、下側加圧治具41と上側加圧治具43とを互いに近付ける方向に動かし、加圧する。このときの加圧速度は20mm/分である。
これにより、徐々にばね部材32が変位してゆき、そのときのばね部材32の弾性力(ばね部材32にかかっている荷重)を逐次測定する。この測定結果が、図4における破線L2である。
また、所定の変位に達した後は、逆にばね部材32を徐々に減圧方向に復元させていく。即ち、下側加圧治具41と上側加圧治具43とを互いに離れる方向に動かす。このときの減圧速度も20mm/分である。そして、このときのばね部材32の弾性力も逐次測定する。この測定結果が、図4における破線L2である。
【0037】
次に、本例の作用効果につき説明する。
図4に示すごとく、上記ばね部材32は、加圧方向へ変形する際の弾性力が、減圧方向へ復元する際の弾性力よりも大きくなるようなヒステリシスを有する。そのため、同じ変位において、ばね部材32を加圧する際には大きな弾性力が作用し、ばね部材32を減圧する際には比較的小さな弾性力が作用する。従って、半導体積層ユニット2の端部に加圧部材3を配設するにあたり、ばね部材32を変位させながら半導体積層ユニット2を積層方向に押圧する際には、狭いスペースにおいても、充分な押圧力を半導体積層ユニット2に作用させることができる。
【0038】
これにより、半導体モジュール21と冷却管22との密着を充分に確保することができる。即ち、上述した連結パイプ222或いはダイヤフラム部等を変形させて、隣り合う冷却管22の間の間隔を充分に狭めて、半導体モジュール21の両面に冷却管22を密着させることができる。
【0039】
そして、半導体積層ユニット2に大きな押圧力を与えた後、ばね部材32を減圧方向にある程度復元させた状態で、押圧部材3が電力変換装置1に組み付けられる。このとき、ばね部材32の変位量に対する弾性力の変化が小さいため、所望の押圧力を半導体積層ユニット2に与えた状態で、ばね部材32を組付けることができる。即ち、半導体積層ユニット2へ与える押圧力を容易に調整することができる。これにより、半導体モジュール21や冷却管22に過負荷を与えることを防ぎつつ、半導体モジュール21と冷却管22との間の密着を確保することができる。そのため、半導体モジュール21や冷却管22の損傷、変形を防ぎつつ、半導体モジュール21の冷却効率を向上させることができる。
【0040】
また、ばね部材32は、電力変換装置1に組み付けられた状態の変位において、加圧方向へ変形する際の弾性力が、減圧方向へ復元する際の弾性力の1.05倍以上であり、加圧方向へ変形する際の単位変位量当りの弾性力の変化量(図4のL1の傾き)が、減圧方向へ復元する際の単位変位量当りの弾性力の変化量(図4のL2の傾き)の1.05倍以上である。
【0041】
そのため、半導体積層ユニット2を押圧する際のばね部材32の変位に対する弾性力の変化と、加圧部材3をセットする際のばね部材32の変位に対する弾性力の変化との差を充分に確保することができる。これにより、加圧時には、ばね部材32の変位を大きくすることが困難な狭いスペースにおいても、半導体モジュール21と冷却管22との密着を充分に確保することができる。一方、加圧部材3をセットする際には、ばね部材32の弾性力の調整を行いやすく、所望の押圧力で半導体積層ユニット2を押圧することができる。
そのため、一層容易に、半導体モジュール21及び冷却管22への過負荷を防ぎつつ、半導体モジュール21の冷却効率を高めることができる。
【0042】
また、ばね部材32は、複数枚の板ばねを積層してなる。そのため、上述したようなヒステリシスを有するばね部材32を容易に得ることができる。
また、ばね部材32は、前方板ばね33と後方板ばね34とからなり、前方板ばね33は、少なくとも前方板ばね33の両端部331において後方板ばね34に接触している。これにより、上述したようなヒステリシスを有するばね部材32を一層容易に得ることができる。
【0043】
以上のごとく、本例によれば、半導体モジュール及び冷却管への過負荷を防ぎつつ、半導体モジュールの冷却効率を高めることができる電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施例における、電力変換装置の説明図。
【図2】実施例における、ばね部材の斜視図。
【図3】実施例における、ばね部材の平面図。
【図4】実施例における、ばね部材のばね特性を示す線図。
【図5】実施例における、ばね部材のばね特性の測定方法を示す説明図。
【図6】実施例における、電力変換装置の説明図。
【符号の説明】
【0045】
1 電力変換装置
2 半導体積層ユニット
21 半導体モジュール
22 冷却管
221 主面
3 加圧部材
31 当接プレート
311 当接面
32 ばね部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換回路の一部を構成する半導体モジュールと、該半導体モジュールを冷却する冷却管とを交互に積層してなる半導体積層ユニットを有する電力変換装置であって、
上記半導体積層ユニットの積層方向の端部には、該半導体積層ユニットを積層方向に加圧する加圧部材が配されており、
該加圧部材は、上記冷却管の主面に当接する当接面を有する当接プレートと、該当接プレートにおける上記当接面と反対側の面に配されたばね部材とを有し、
上記ばね部材は、加圧方向へ変形する際の弾性力が、減圧方向へ復元する際の弾性力よりも大きくなるようなヒステリシスを有することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1において、上記ばね部材は、上記電力変換装置に組み付けられた状態の変位において、加圧方向へ変形する際の弾性力が、減圧方向へ復元する際の弾性力の1.05倍以上であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記ばね部材は、上記電力変換装置に組み付けられた状態の変位において、加圧方向へ変形する際の単位変位量当りの弾性力の変化量が、減圧方向へ復元する際の単位変位量当りの弾性力の変化量の1.05倍以上であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、上記ばね部材は、複数枚の板ばねを積層してなることを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項4において、上記ばね部材は、上記当接プレートに当接する前方板ばねと、該前方板ばねの後方に配された後方板ばねとからなり、上記前方板ばねは、少なくとも該前方板ばねの両端部において上記後方板ばねに接触していることを特徴とする電力変換装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−166819(P2007−166819A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−361530(P2005−361530)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】